説明

自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法および装置

【課題】自動車用ヘッドランプのガス放電ランプのバラスト管理のための方法を提供する。
【解決手段】自動車用ヘッドランプのガス放電ランプの管理に適する方法であって、起動段階、点火段階、および安定状態の段階を含むランプの動作段階で、制御信号によって、ランプの初期供給電力および公称供給電力を制御するタイプのものに関する。この制御信号は、バラストの外部で生成され、かつ各供給電力を、各動作段階に応じて、一連の所定の電力(P1)、(P2)、(P3)、(P4)、(P5)から選択される値にする命令信号を含んでいる。この方法により、AFS型の新規則によって定義される異なるモードの管理、およびランプの耐用寿命の最長化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ヘッドランプのガス放電ランプのバラストを管理するための方法および装置、ならびに先進照明システムまたは適応照明システムにおけるこのような方法および装置の使用に関する。このようなガス放電ランプのバラストの管理においては、例えば、AFS型の新規則によって定義される異なったモードを管理して、ヘッドランプの耐用寿命を最長にするために、D1型、D2型、D3型、またはD4型の標準キセノンランプの供給電力を変更する。
【背景技術】
【0002】
自動車照明装置、特にヘッドランプの発光出力、およびエネルギー収量の両方を改善する目的で、従来の技術では、フィラメントランプの代わりに、ガス放電ランプを用いている。自動車のバッテリに直接接続するように設計された従来のランプとは異なり、このような新しいランプは、ガス中に電気放電を発生させ、これを維持するために、動作モードによって、ACまたはDCの高電圧を必要とする。
【0003】
ランプの種類によって異なるこのような高電圧(キセノンランプの点火では約25kV)は、「バラスト」という名称で知られている電力を制御する供給モジュールによって、搭載電圧から生成される。
【0004】
この供給モジュールは、通常は、バッテリの低い電圧から高いDC電圧を生成するためのDC/DC変換器、ランプの電力供給に必要なAC電圧を生成するためのDC/AC変換器、および起動パルスを生成するための回路を、既知の要領で備えている。
【0005】
このような様々なブロックは、動作段階およびランプの有効寿命によって変動するランプの電流/電圧特性に応じて、そのランプに供給される電力を制御する電子制御ブロックによって制御される。
【0006】
したがって、これは、ランプ自体の動作に関連した固有の電力制御である。
【0007】
これとは対照的に、自動車用のAFS型(先進前方照明システム(Advanced Front lighting SystemまたはAdaptive Front lighting System))の高度照明システムまたは先進照明システムの開発により、バラスト外部から、電力を制御または変更する必要があることが明らかになった。
【0008】
新しい動的照明技術DBL(Dynamic Bending Light)は、自動車の速度および道路の曲がり具合に応じて、フロントヘッドランプの方向を調節する。
【0009】
先進照明システムは、夜間には、周囲の光も考慮し、日中には、トンネルに入ったときにヘッドライトをオンにし、トンネルを出たときにオフにすることができるようになっている。
【0010】
単純な手動制御システムでは、ハイビームとロービームの切り替え、またはヘッドライトのフラッシュによって、ヘッドライトの強度を迅速に変更できなければならない。
【0011】
ランプは、ヘッドライトのフラッシュの場合は、その公称電力を超えて、短時間作動しなければならないが、他の場合は、公称電力で動作し続ける必要はない。
【0012】
要求に応じてランプに供給される電力を正確に調節することにより、一般に搭載エネルギーの消費を低減させることができ、ランプの耐用寿命を改善できることが分かっている。
【0013】
供給する電力を管理するためのシステムは、ガス放電ランプが使用されている様々な技術分野で知られている。
【0014】
しかし、自動車用のバラストを管理するための方法および装置に関しては、通常は他の用途では存在しない次のような特定の制約がある。
・ある動作モードから別の動作モードに移行する速度。
・故障(故障診断)を遠隔に知らせることができること。
・自動車に搭載できること。
・既存の電子機器、特に標準搭載ネットワーク、例えばLIN(ローカル・インターコネクト・ネットワーク)またはCAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)に対して互換性を有すること。
【0015】
自動車の装備品の分野では、供給電力が外部信号によって制御される放電ランプ用のバラストが知られている。このようなバラストは、2000年4月18日公開の米国特許第6,051,939号に開示されている。
【0016】
この装置は、ランプの電流/電圧特性の保存および使用に、本質的に関係している。したがって、耐用寿命に視点をおいた動作モードを選択するための技術ではなく、ランプの電力を常に外部から制御するための技術に関するものである。
【0017】
一方、このような方法では、点火段階の際に、ランプの耐用寿命を効果的に延ばすために自動車外部の光度を表わすパラメータに応じて、ランプの電流または供給電力の強さが制御される。この方法は、例えば、2002年10月9日公開の欧州特許出願第1248498号に開示されている。
【0018】
しかし、この方法の適用範囲は、特に、周囲の照明に応じて、ヘッドライトを制御する場合に限定される。
【0019】
上記した従来技術の文献に示されているように、自動車用の様々な現在または未来のインテリジェント照明システムに利用できる、放電ランプの耐用寿命を最長にするために、放電ランプのバラストを制御する一般的な方法または装置は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、ガス放電ランプの耐用寿命を最長にし、かつ規則および診断故障に関連した新規の要求を満たすために、自動車用ヘッドランプのガス放電ランプのバラストを管理するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の方法は、起動段階、点火段階、および安定状態の段階などのランプの異なる動作段階で、制御信号によって、ランプの初期供給電力および公称供給電力を制御するようにした方法である。
【0022】
本発明による方法は、制御信号が、バラストの外部で生成され、かつ各供給電力を各動作段階に応じて一連の所定の電力から選択される値にする命令信号を含むという点で、注目に値する。
【0023】
このような命令信号が存在しない場合、起動段階および点火段階の供給電力の値は、所定のデフォルト初期電力であり、安定状態の段階の電力は、同様に所定のデフォルト公称電力であり、極めて有利である。
【0024】
各命令信号は、ランプの特定の動作モード(3つのモードが有利である)に応じて、供給電力を、このような各段階に対して、所定の各初期電力および所定の各公称電力にする。
【0025】
単独または組み合わせによる本発明の方法の別の特徴は、制御信号が、次の信号を含むことである。
・バラストの外部で生成される命令信号を確認するための確認信号。
・動作異常の場合にバラストによって生成される異常信号。
・異常信号を受信した後、バラストの外部で生成される状態リクエスト信号。
・状態リクエスト信号を受信した後、バラスによって生成される異常コード。
【0026】
各命令信号が、所定の周波数、および所定のデューティサイクルの第1の方形波パルス列からなり、確認信号が、好ましくは2つの周期であるパルス列の最小の周期数と少なくとも等しい期間の間、命令信号と同時に送信されるため、有利である。
【0027】
第1の列および第1の確認パルスの振幅は、好ましくは正であって、バッテリまたは自動車の類似の電源の電圧に等しい。この第1のパルスは、低レベルでアクティブであり、バッテリの電圧レベルは、信号が存在しないことと対応している。
【0028】
本発明による方法では、異常信号は第2の方形波パルス、状態リクエスト信号は第3の方形波パルス、異常コードは第2の方形波列であり、第2の列の各パルスの期間は、異常の種類を表しているので有利である。
【0029】
好ましくは、第2のパルス、第3のパルス、および第2の列の振幅は、正であって、バッテリまたは自動車の類似の電源の電圧に等しい。第2のパルスおよび第3のパルスは、低レベルでアクティブであり、バッテリの電圧レベルは、信号が存在しないことと対応している。
【0030】
本発明は、上記した方法を実施するのに適した、自動車用ヘッドランプのガス放電ランプのバラストを管理するための装置にも関する。
【0031】
この装置は、外部電子命令ユニットが、DC/DC変換器、DC/AC変換器、およびランプを起動するための起動ブロックを制御するバラストの電子制御ブロックに接続されているタイプである。
【0032】
本発明による装置は、外部電子命令ユニットとバラストの電子制御ブロックとの接続に、電子命令ユニットが信号を伝達するために第1の双方向データ伝送ライン、および第2の一方向信号伝達ラインを含む専用の2本のワイヤ接続線を用いているという点で注目に値する。
【0033】
本発明による装置のある変更形態においては、外部電子命令ユニットとバラストの電子制御ブロックとの間の接続に、LIN型またはCAN型の標準の1本のワイヤ接続を用いており、この1本のワイヤ接続により、この電子命令ユニットが、標準の1本のワイヤ接続線と2本のワイヤ接続線との間のプロトコル変換を行うインターフェイスモジュールに接続されているが、この点にも注目すべきである。
【0034】
本発明の別の類似の変更形態によると、インターフェイスモジュールは、少なくとも2つのヘッドランプの電力を制御し、これらのヘッドランプの各バラストに、それぞれ、専用の2本のワイヤ接続線によって接続されているということも利点である。
【0035】
本発明は、ハイビームとロービームの切り替え、周囲光に対する調節、および蛇行した道路を進むときのビーム強度の変更のために、AFS型の先進照明システムまたは適応照明システムに、上記した方法または装置を有利に使用することにも関する。
【0036】
当業者であれば、上記した少数の本質的な詳細事項から、従来技術に比べて、自動車用のガス放電ランプの耐用寿命を延ばすべく、バラストを管理するための本発明の方法によって得られる利点を想到しうると思う。
【0037】
次に、本発明の方法、およびこの方法を実施するのに適した装置の詳細を、添付の図面を参照しながら説明する。添付の図面は、単なる例示をすることだけが目的であり、本発明の範囲を一切限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
例えばキセノンランプなどのガス放電ランプの「オフ」の状態から「オン」の状態への切り替えは、単に白熱電球に電圧を加えることに比して、大幅に複雑なプロセスである。
【0039】
ランプの最適な能力および最長の耐用寿命を得るには、起動段階、点火段階、および安定状態の段階で供給される電力は、ランプの種類によって異なる所定の法律に従って時間の関数として変更しなければならない。ある段階で供給される電力は、別の段階で供給される電力に影響を及ぼす。例えば、起動段階および点火段階で供給される電力が不十分な場合、ランプの温度が十分に上がらず、安定状態での収量が低下する。そのため、この安定状態では、同じ発光出力を得るのにより多くの電力が必要である。
【0040】
白熱電球の動作は、動作「点」(すなわち、加えられる電圧の値および電流の大きさの値)によって単純に特徴付けられるが、ガス放電ランプの動作は、時間の関数として、供給電力の変動を示す曲線により表される動作「モード」によって特徴付けられる。
【0041】
一例として、キセノンシステムの3つの異なる動作モードを、デフォルト動作モードと共に図1に示してある。
【0042】
デフォルトモードAでは、起動時すなわち最初の2、30ミリ秒の間に供給される初期電力P1は高い。このモードAでは、2、30秒後(t2よりも大きいt)に、供給電力は平均公称値P4で安定する。
【0043】
このデフォルトモードは、電気機械リレーまたは固体リレーの何れかのリレーによって、ランプの切り替えが制御される単純なケースに相当する。
【0044】
AFS型のシステムの場合、または状況に応じて、必要な発光出力を最適に調節し、ランプの耐用寿命を延ばすのが望ましい一般的な先進システムの場合、ランプは、一時的に電力が過剰に供給されるモード、または逆の節約モードである他のモードB、C、Dに切り替えられる。
【0045】
例えばヘッドランプをフラッシュさせる際は、ランプをモードDに切り替える。このモードでは、起動時に供給される初期電力P1は、デフォルトモードAで供給される電力と同じであるが、点火段階(t1とt2の間)で、この電力(P3)はデフォルトモードAよりも大きくなる。
【0046】
実際には、供給される初期電力P2が、デフォルトモードAの初期電力よりも低いか、または安定状態P4およびP5の公称電力が、デフォルトモードAの公称電力よりも低いか等しい節約モードBおよびCは、「ロービーム」位置または日中の照明に相当する。
【0047】
ある実施形態では、電力P3からP5、またはP3からP4への電力の突然の低下に相当する動作モードEを設けることもできる。モードEは、例えば、AFSの場合に、DBL機能などの動作の安全性(デフォルト条件ではノングレア)についての要求と一致する。
【0048】
本発明による方法は、これらのモードの切り替えの管理を目的とする。
【0049】
上記したように、ある段階におけるランプの動作は、その前の段階における動作に左右される。したがって、本発明による方法は、命令信号COM1に基づいており、この命令信号COM1は、値S1、S2、S3の関数として直接動作点とするのではなく、あるモードから別のモードへの移行を制御する。すなわち、所定の命令信号S1、S2、またはS3に応答してランプに供給される電力は、その動作段階に依存する。
【0050】
後に示す表1は、一例として、ランプの動作段階によって3つの命令信号S1、S2、S3を受信したときに、上記した4つのモードA、B、C、Dへの可能な移行を示している(「Pi」は「初期電力」、「Pn」は「公称電力」を意味する)。
【表1】

【0051】
本発明の好適な実施形態では、命令信号がない場合に、キセノンシステムによって供給されるデフォルト初期電力は、例えば65Wの所定値P1を有する。
【0052】
同じ状況では、安定状態のデフォルト初期電力は、例えば34Wの所定値P4を有する。
【0053】
3つの命令信号S1、S2、S3は、次のようであると有利である。
−起動段階で、バラストが命令を受信する場合は、P2=50W、P2=50W、またはP4=65Wの所定値を有する特定の初期電力、およびP4=34W、P5=30W、またはP3=38Wの所定値を有する特定の公称電力と一致する。
−点火段階で、バラストが命令を受信する場合には、P1=65W、P1=65W、またはP1=65Wの所定値を有する特定の初期電力、およびP4=34W、P5=30W、またはP3=38Wの所定値を有する特定の公称電力と一致する。
−安定状態の段階で、バラストが命令を受信する場合には、P4=34W、P5=30W、またはP1=38Wの所定値を有する特定の公称電力と一致する。
【0054】
ヘッドランプのキセノンシステムPの異なる動作モードA、B、C、D間の外部システムXによる移行の制御の信頼性は、命令信号COM1を確認するための確認信号COM2によって、本発明による方法で保証される。
【0055】
キセノンシステムPは、また、外部システムXに対して動作障害を知らせることができ、かつこのシステムXのリクエスト時に、異常コードA1、A2、A3を送信することができる。
【0056】
図2は、時間軸1に対するキセノンシステムPと外部システムXとの間の通信プロトコルを示すブロック図である。
【0057】
起動ステップ2で、キセノンシステムPは、そのシステムPの正常または異常の動作条件を、命令信号S1、S2、S3に用いられるのと同じ第1の通信チャネルCOM1で、外部システムXに二進数で示す。
【0058】
外部システムXは、プロトコルの第2のステップ3で、キセノンシステムPの動作条件を読み取り、その動作条件が異常であるか否かを、評価4で決定する。
【0059】
キセノンシステムPが異常(COM1=0)を示す場合は、第3のステップ5で、外部システムXが状態リクエスト(COM2=0)を、命令信号S1、S2、S3を確認するための確認信号に用いられるのと同じ第2の通信チャネルCOM2で、キセノンシステムPに送信する。
【0060】
第4のステップ6で、キセノンシステムPは、この状態リクエストを受信すると、第1の通信チャネルCOM1で、異常コードA1、A2、A3を送信する。
【0061】
第5のステップ7で、外部システムXが、この異常コードA1、A2、A3を異常コードと共に読み取ることができる。
【0062】
第2のステップ3の後の評価4で、外部システムXが、キセノンシステムPの動作条件が正常(COM1=1)であると決定すると、外部システムXは、第6のステップ8で、モードA、B、C、Dの変更に適切な命令信号S1、S2、S3および確認信号(COM=0)を送信する。
【0063】
プロトコルの最終ステップ9で、キセノンシステムPは、命令信号S1、S2、S3を解読する。
【0064】
上記した通信プロトコル、特に、「連続」型の接続、またはLIN型またはCAN型の搭載ネットワークの接続をサポートできる物理層を構成するための様々な技術的解決法が存在する。
【0065】
多くの標準的な解決法は、比較的複雑であって、組込みに比較的コストが嵩む電子部品を使用するという不都合がある。
【0066】
さらに、このような標準的な解決法は、通常、プロトコルの単純さおよび低速の情報送信が要求される場合には、適していない高い性能レベルを有する。
【0067】
最後に、このような解決法の故障の診断には、専用の機器を必要とする場合が多い。
【0068】
逆に、図3に示す本発明による方法において使用する信号は、単純なオシロスコープで容易に表示することができ、動作障害を単純な電圧計で検出することができる。
【0069】
外部システムXによって、正常な動作条件N下で、第1の通信チャネルCOM1でキセノンシステムPに送信される命令信号S1、S2、S3は、好ましくは400Hzに等しいが、常に380Hz〜420Hzの範囲の所定の固定周波数を有する第1の方形波パルス列10からなっている。
【0070】
このようなパルス列10は、搭載電源の電圧レベル、すなわちバッテリによる標準電源の12Vと0Vとの間の正の振幅を有する。
【0071】
命令信号S1、S2、S3の符号化は、パルス10の幅を変調して行われる。アクティブなレベルは、1V未満の電圧レベルであり、バッテリの電圧などの6Vを超える電圧レベルは、信号のない状態に相当する。
【0072】
本発明の好適な実施形態では、パルス10のデューティサイクルは、表1に示す所望の動作モードB、C、Dによって、30%、60%、または80%の値を有する。デフォルト動作モードAは、信号が存在しないときに得られる。
【0073】
命令信号S1、S2、S3の送信は、外部システムXが第1の方形波パルス11からなる確認信号を、第2の通信チャネルCOM2で送信して、キセノンシステムPに知らせる。このパルス11は、バッテリの電圧レベル、すなわち通常は12Vと0Vとの間の振幅を有する。アクティブなレベルは、1V未満のレベルであり、6Vを超える電圧レベルは、信号の存在しない状態に相当する。
【0074】
確認パルス11は、命令信号S1、S2、S3のパルス列10の全送信期間、または少なくともこれらの信号を検出するのに十分な期間DLの間、送信される。この期間DLは、パルス列10の少なくとも2つの周期に一致しているのが好ましい。
【0075】
命令信号S1、S2、S3が解読されると、すぐに、キセノンシステムPの状態Eは、図3のタイミングダイアグラムに示すように変化する(12)。
【0076】
キセノンシステムPの動作異常Fの場合、第2の方形波パルス13が、第1の通信チャネルCOM1の後半で生成される。このパルス13は、好ましくは、このチャネルの通信方向で、電圧レベルが3V未満の低レベルでアクティブである。
【0077】
この低レベルが、第1の通信チャネルCOM1で検出されるとすぐ、外部システムXが、第3の方形波パルス14を第2の通信チャネルCOM2で生成する。この第3の方形波パルス14は、キセノンシステムPによる第1のチャネルCOM1への第2のパルス列15の送信をトリガするように設計されている。第2のパルス列15の期間Tは、異常A1、A2、A3のタイプを符号化する。
【0078】
第3の方形波パルス14は、低レベル、すなわち、その電圧レベルが1V未満でアクティブである。第2のパルス列15は、その電圧レベルが3V未満のときに、アクティブと見なすことができる。
【0079】
本発明の好適な実施形態では、第2のパルス列15は、キセノンシステムPによって、好ましくは10ミリ秒である所定の時間間隔Δで、状態リクエストパルス14の全期間に亘って、第2の通信チャネルCOM2で送信される。
【0080】
第2のパルス列15の各期間は、例えば、異常がないことを示す0.5ミリ秒、電流が高いことを示す1ミリ秒、電圧が高いことを示す1.5ミリ秒、電流が低いことを示す2ミリ秒、電圧が低いことを示す2.5ミリ秒、またはランプの点火の失敗やキセノンシステムPのバラストの短絡を示す3ミリ秒とすることができる。
【0081】
外部システムXによって送信される状態リクエストパルス14(COM=2)が全く存在しない場合には、キセノンシステムPが、第1の通信チャネルCOM1を低いレベルに維持する。操作者が、単純な電圧計によって、この状態を容易に検出することができるため、キセノンシステムPの動作異常を容易に診断できる。
【0082】
本発明による方法のプロトコル2、3、4、5、6、7、8、9および制御信号10、11、13、14、15は、図4および図5に示されているタイプの外部システムXとキセノンシステムPで容易に実現できる。
【0083】
キセノンシステムPは、搭載電源+Alimから電力供給され、かつキセノンランプ17に必要な電力を供給するバラスト16を、既知の要領で備えている。
【0084】
バラスト16は、DC/DC変換器19、DC/AC変換器20、およびランプ17の起動ブロック21を制御する電子制御ブロック18からなっている。別の実施形態では、起動ブロック21を、バラスト16に組み込まずに、小型のランプアセンブリのランプに接続することができる。
【0085】
電子制御ブロック18は、専用の2本のワイヤ接続線COM1およびCOM2によって、外部システムXの電子命令ユニット22に接続されている。第1の双方向線COM1は、命令信号S1、S2、S3、および異常信号A1、A2、A3を送信し、第2の一方向線COM2は、確認信号および状態リクエスト信号を送信する。
【0086】
制御ブロック18の論理は、ASIC、具体的には、内部電力制御、電力曲線の保存、および通信プロトコルの管理によって、有利に実現される。
【0087】
図5に示す別の実施形態によると、バラスト16は、専用の2本のワイヤ接続線COM1およびCOM2によって、インターフェイスモジュール24に接続されている。このインターフェイスモジュール24は、LIN型またはCAN型の標準的の1本のワイヤ接続線によって通信する標準の電子命令ユニット23からのプロトコルを変換し、かつその命令ユニット24に対してプロトコルを変換する。
【0088】
図6に示すさらに別の実施形態によると、2つのバラスト16が、ダブルインターフェイスモジュール25に接続されている。
【0089】
この構成の利点は、標準プロトコルの管理の複雑さが、インターフェイスモジュール24および25にシフトしているため、開発、製造、および修理が単純なシステムだけにヘッドランプを設けることができる点である。
【0090】
さらに別の実施形態によると、1または複数のインターフェイスモジュールが、LCS、特にDBL照明機能を完全または部分的に管理するか、または照明を含む多数の前方機能を制御するグローバルモジュールに組み込まれている。用途によって、インターフェイスモジュールは、ヘッドランプなどの照明または指示器に完全に組み入れたり、ヘッドランプのケーシングに取り付けられた電子モジュールの形態で、指示器に接続したり、または自動車の他の部分に取り付ける別個の要素を構成したりすることができる。
【0091】
本発明は、上記した好適な実施形態に限定されるものではなく、本発明は、全ての他の可能な実施形態を含むものである。
【0092】
特に、上記した本発明による方法によって用いられる通信プロトコルの物理層の構成についての詳細は、限定の目的のものではない。
【0093】
実施が添付の特許請求の範囲に基づくものである限り、このような実施は、本発明の範囲から逸脱するものでない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明による方法のランプの異なる動作モードでバラストが供給する供給電力の曲線、ならびに外部からの命令に応じた動作モードの可能な移行を模式的に示すグラフである。
【図2】本発明による方法が用いる、バラストと外部電子制御ユニットとの間の通信プロトコルの模式的な線図である。
【図3】本発明による方法に用いる制御信号の模式的な線図である。
【図4】本発明による方法を実施するのに適した装置のブロック線図である。
【図5】本発明による方法をLIN型またはCAN型の車載ネットワーク上で実施するための、単独型ヘッドランプの場合の装置を示すブロック図である。
【図6】本発明による方法をLIN型またはCAN型の車載ネットワーク上で実施するための、ツイン型ヘッドランプの場合の装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0095】
1 時間軸
2 起動ステップ
3 第2のステップ
4 評価
5 第3のステップ
6 第4のステップ
7 第5のステップ
8 第6のステップ
9 最終ステップ
10 第1の方形波パルス列
11 第1の方形波パルス
12 状態Eの変化
13 第2の方形波パルス
14 第3の方形波パルス
15 第2の方形波パルス列
16 バラスト
17 ランプ
18 電子制御ブロック
19 DC/DC変換器
20 DC/AC変換器
21 起動ブロック
22、23 電子命令ユニット
24 インターフェイスモジュール
25 ダブルインターフェイスモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ヘッドランプにおけるガス放電ランプ(17)の耐用寿命を長くするべく、前記ランプ(17)のバラスト(16)を管理する方法であって、
起動段階、点火段階、および安定状態の段階を含む前記ランプ(17)の動作段階において、制御信号によって、前記ランプ(17)の初期供給電力、または公称供給電力を制御するタイプのものにおいて、
前記制御信号は、前記バラスト(16)の外部で生成され、かつ前記各供給電力を、前記各段階に応じて、一連の所定の電力(P1)、(P2)、(P3)、(P4)、(P5)から選択される値にする命令信号(S1)、(S2)、(S3)を含むことを特徴とする、自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項2】
命令信号(S1)、(S2)、(S3)が存在しない場合、起動段階および点火段階の初期供給電力の値は、所定のデフォルト初期電力(P5)であり、安定状態の段階の公称供給電力は、所定のデフォルト公称電力(P1)であることを特徴とする、請求項1に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項3】
各命令信号(S1)、(S2)、(S3)は、ガス放電ランプ(17)の特定の動作モード(B)、(C)、(D)に応じて、各供給電力を、各段階に対して所定の各初期電力(P1)、(P2)、および所定の各公称電力(P3)、(P4)、(P5)にすることを特徴とする、請求項2に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項4】
制御信号は、バラスト(16)の外部で生成される命令信号(S1)、(S2)、(S3)を確認するための確認信号も含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項5】
制御信号は、動作異常(F)の場合にバラスト(16)によって生成される(2)異常信号も含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項6】
制御信号は、異常信号の受信(3)、(4)の後で、バラスト(16)の外部で生成される状態リクエスト信号も含むことを特徴とする、請求項5に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項7】
制御信号は、状態リクエスト信号の受信(5)の後で、バラスト(16)によって生成される異常コード(A1)、(A2)、(A3)も含むことを特徴とする、請求項6に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項8】
各命令信号(S1)、(S2)、(S3)は、所定の周波数および所定のデューティサイクルを有する第1の方形波パルス列(10)からなり、
確認信号は、好ましくは2つの周期である前記パルス列(10)の最小の周期数と少なくとも等しい期間(DL)の間、前記命令信号(S1)、(S2)、(S3)と同時に送信される第1の方形波パルス(11)であることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項9】
第1の方形波パルス列(10)および第1の方形波パルス(11)の振幅は、正であって、バッテリ(+Alim)または自動車の類似の電源の電圧に等しく、第1の確認パルス(11)は、低レベルでアクティブであり、前記バッテリ(+Alim)の電圧レベルは、信号が存在しないことに相当することを特徴とする、請求項8に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項10】
所定の各初期電力は約65W(P1)であり、所定のデフォルト公称電力は約34W(P4)であり、
デューティサイクルは、
・起動段階でバラスト(16)が命令を受信する場合は、約50W(P2)、約50W(P2)、または約65W(P1)の所定の各初期電力、および約34W(P4)、約30W(P5)、または約38W(P3)の所定の各公称電力、
・点火段階でバラスト(16)が命令を受信する場合は、約65W(P1)、約65W(P1)、または約65W(P1)の所定の各初期電力、および約34W(P4)、約30W(P5)、または約38W(P3)の所定の各公称電力、
・安定状態の段階でバラスト(16)が命令を受信する場合は、約34W(P4)、約30W(P5)、または約38W(P3)の所定値を有する特定の公称電力に一致する約30%の値、約60%の値、または約80%の値を有することを特徴とする、請求項9に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項11】
異常信号は、第2の方形波パルス(13)であり、状態リクエスト信号は第3の方形波パルス(14)であり、異常コード(A1)、(A2)、(A3)は、第2の方形波パルス列(15)であり、前記第2の列の各パルス(15)の期間(T)は、異常の種類を表していることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項12】
第2のパルス(13)、第3のパルス(14)、および第2のパルス列(15)の振幅は、正であって、バッテリ(+Alim)または自動車の類似の電源の電圧に等しく、第2のパルス(13)および第3のパルス(14)は、低レベルでアクティブであり、前記バッテリ(+Alim)の電圧レベルは、信号が存在しないことに相当することを特徴とする、請求項11に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項13】
第2のパルス列(15)は、第3のパルス列(14)の全期間に亘って所定の時間間隔(Δ)でバラスト(16)によって送信され、
前記第2の列の各パルス(15)の期間(T)は、異常がないことを示す0.5ミリ秒、電流が高いことを示す1ミリ秒、電圧が高いことを示す1.5ミリ秒、電流が低いことを示す2ミリ秒、電圧が低いことを示す2.5ミリ秒、またはランプの点火の失敗や前記バラスト(16)の短絡を示す3ミリ秒であることを特徴とする、請求項12に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法を実施するのに適した、自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理装置であって、
電子命令ユニット(22)、(23)が、DC/DC変換器、DC/AC変換器(20)、および前記ランプ(17)を起動するための起動ブロック(21)を制御する前記バラスト(16)の電子制御ブロック(18)に接続されているタイプであり、
前記電子命令ユニット(22)、(23)と前記制御ブロック(18)との接続に、前記電子命令ユニット(22)、(23)が信号を伝達するために第1の双方向データ伝送ライン(COM1)および第2の一方向信号伝達ライン(COM1)を含む専用の2本のワイヤ接続線(COM1)、(COM2)を用いていることを特徴とする、自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理装置。
【請求項15】
電子命令ユニット(23)と制御ブロック(18)との間の接続に、LIN型またはCAN型の標準の1本のワイヤ接続線(LIN)、(CAN)を用いており、この1本のワイヤ接続(LIN)、(CAN)により、前記電子命令ユニット(23)が、前記標準の1本のワイヤ接続線(LIN)、(CAN)と2本のワイヤ接続線(COM1)、(COM2)との間のプロトコル変換を行うインターフェイスモジュール(24)、(25)に接続されていることを特徴とする、請求項14に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理装置。
【請求項16】
インターフェイスモジュール(25)は、少なくとも2つのこのようなバラスト(16)に、それぞれ専用の2つのワイヤ接続線(COM1)、(COM1)によって接続されていることを特徴とする、請求項15に記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理装置。
【請求項17】
特に、ハイビームとロービームの切り替え、周囲光に対する調節、および蛇行した道路を進むときのビーム強度の変更のために、AFS型の先進照明システムまたは適応照明システムに、請求項1〜16のいずれかに記載の自動車用ヘッドランプにおけるバラスト管理方法または装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−351542(P2006−351542A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−166771(P2006−166771)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】