説明

自動車用レーダシステムおよびその使用方法

【課題】標的ゾーン46内の物体34,36の存在を示すための検出信号を生じる。
【解決手段】車両用レーダシステム44は送信部56および受信部58を備え、送信部56が、標的ゾーン46に無線信号を出力するための単一ビームアンテナ72を含む。受信部58は直接受信信号78および間接受信信号80を受信するための単一ビームアンテナ76を含む。受信信号78、80は、標的ゾーン46内の物体34、36から無線信号の反射である。間接受信信号80は物体34、36から車両42の反射パネル54に反射され、受信アンテナ76で受信するために間接受信信号80は反射パネルに反射される。標的ゾーン46内の物体34、36の存在を指示する検出信号を生じるために受信信号78、80は合算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には車両用レーダシステムに関するものであり、さらに詳しくは単一ビームアンテナのマルチパス信号成分を用いて標的ゾーンに物体を検出するためのレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の車両周囲の物体について向上された認識を運転者に提供するために、自動車、トラック、バス、等のような商業的に利用し得る自動車用商品にレーダシステムを設ける傾向が増大している。自動車が物体(例えば、他の車、歩行者、および障害物)を接近すること、または物体が車両を接近することに従って、運転者が物体を検出し、物体と衝突することを回避するために必要な介入行動の実行は常に可能ではない。例えば、車両の運転者は車両のいわゆる死角の中の物体を検出することはできない可能性がある。この死角の領域は、車両の種類、運転者の体の大きさ、および座席の位置、外側ミラーの種類および位置、等に依存して変化する。車両に取り付けられた自動車用レーダシステムは、車両近傍の他の自動車を含む物体の存在を検出することができ、運転者が可能な介入行動を実行する可能性があるように適時な情報を運転者に提供する。死角のように視認しにくい領域内の物体の存在を有効に検出するために、広範なカバーエリアを提供するように自動車用レーダシステムは典型的に複数のビームアンテナを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1は、車両20の側面に配置された従来自動車用レーダシステム22を有する車両20を示す。自動車用レーダシステム22は側面物体検出システム(SOD)として提供されてもよく、しばしば死角検出システムと呼ばれる。レーダシステム22のような典型的従来自動車用レーダシステムは、複数のアンテナビームパターンまたは放射パターンを生成可能な平坦なアレイアンテナを含む。この図において、4つのアンテナビームパターン(または単に「ビーム」)24A、24B、24C、および24Dが示される。自動車用レーダの用途において、ビームパターン24A、24B、24C、および24Dは、これらの垂直パターン(または高さ)は狭く、および道路26の表面と平行になるように配置され、これらの水平方向(またはアジマス角、方位角)のパターンが道路26の表面と平行で、車両20の端部および車両20におけるレーダシステム22の位置によって制限される、公称1/4平面を網羅する。
【0004】
レーダシステム22は、レーダシステム22が配置された車両20の経路と平行な経路28に沿って移動する物体、例えば他の車両を高い可能性で検出することが可能である。この物体は、例えば車両20に接近し、および追い越す他の車両であってよい。この代表的シナリオにおいて、車両20が移動するレーン32と隣接するレーン30に2つの物体が存在する。Aとラベルを付されている1つの物体34が車両20に隣接し、Bとラベルを付されている別の物体36が車両20を接近または追い抜く可能性がある。効果的に物体34,36を検出するために、十分な角度のカバレッジとアンテナ利得を7与えるべく、レーダアンテナから複数のアンテナビームパターン(例えば、ビーム24A、24B、24C、および24D)が必要とされる。例えば、レーダシステム22から送信された無線信号に応答して、物体34から反射され、およびビームパターン24D内にて検出可能な受信信号38がレーン30における物体34の存在の可能性を認識し得る。同様に、レーダシステム22から送信された無線信号に応答して、物体36から反射され、およびビームパターン24A以内にて検出可能な受信信号40がレーン30における物体36の存在の可能性を認識し得る。
【0005】
間接受信信号41と呼ばれる追加的マルチパス信号成分もレーダシステム22で受信され得る。間接受信信号41は、例えば車両20の反射パネルへの、物体(例えば、物体34および/または物体36)の無線信号の反射である可能性がある。この反射は、次に、反射パネルに反射され、レーダシステム22の受信アンテナで受信される。間接受信信号は干渉または迷惑信号と考えられ、そして多くのレーダ構成(例えば、レーダシステム22の複数ビームアンテナ)によって典型的にフィルタまたは減衰される。
【0006】
相対的に厳格な要件は物理的サイズ、動作の性能、自動車用レーダシステムのコストに課される。複数のビームアンテナは複雑であり、したがって、相対的に高いコストシステムを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車両の側面に配置された従来自動車用レーダシステムを有する車両を示す図。
【図2】実施形態にしたがって、車両の側に配置された自動車用レーダシステムを有する車両を示す図。
【図3】自動車用レーダシステムの部分的斜視図。
【図4】自動車用レーダシステムのブロック図。
【図5】自動車用レーダシステムの送信部または受信部として具体化され得るモジュールの分解図。
【図6】自動車用レーダシステムの送信および受信部によって生じられたそれぞれの送信および受信アンテナパターンのグラフ。
【図7】自動車用レーダシステムの標的ゾーンにおける物体からの無線信号の直接および間接伝搬受信された反射のための単一ビームレーダアンテナの指向性のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態にしたがって、側面物体検出システム内の物体を検出するためにマルチパスおよび直接伝搬信号成分、例えば直接および間接反射された無線信号の組み合わせを適用する自動車用レーダシステムおよび方法が開示される。側面物体検出システムにおける直接および間接反射された無線信号のこのような組み合わせは、複雑かつ高価な複数のビームスイッチングまたはスキャニングアンテナシステムを要することに代えて、単一ビームアンテナの使用が感知度および角度カバレッジを提供することを可能にする。
【0009】
図2、3を参照する。図2は、実施形態にしたがって車両42の側面に配置された自動車レーダシステム44を有する自動車42の図を示す。図3は、車両42に取り付けられた自動車レーダシステム44の部分的斜視図を示す。自動車レーダシステム44は、例えば車両42の外部の標的ゾーン46における物体を検出するための側面物体検出システムに利用され得る。したがって、自動車42が道路50のレーン48に移動するとき、この標的ゾーン46はレーン48に隣接するレーン52における領域に配置され得る。
【0010】
この図において、自動車レーダシステム44は、車両42の側面54における最も外側の位置に配置される。例えば、側面54は車両42の助手席側であってよい。自動車レーダシステム44の送信部56および受信部58は車両42の側面54における外側ミラー60に取り付けまたは固定されてもよい。代替的または追加的に、送信部56および受信部58は、それぞれ車両42の運転者側に配置されてもよい。自動車レーダシステム44は外側ミラー60に固定されているように図示しているが、送信部56および受信部58はそれぞれ自動車42の金属表面(助手席側および/または運転者側)に隣接するいかなる適切な位置に配置されてもよいことを理解されるべきである。適切な位置には、例えば、フェンダ、バンパ、ドアパネル、窓、ルーフ領域、等、を含む。
【0011】
標的ゾーン46は、車両42の側面54にすぐ隣接する第1領域62および車両42の後方パネル66の外側かつ後方に設けられた第2領域64を含むように定められる。標的ゾーン46の第1領域62が車両の死角、すなわち現在の状況下で、直接監視できない車両42の周囲に相当する。以下に説明するように、自動車レーダシステム44は、例えば車両42に隣接する第1領域62(すなわち、死角)にてAのラベルを付した物体34および、接近しおよび、追い抜こうとする車両42の後方の第2領域64にてBのラベルを付した物体36を検出することが可能である。標的ゾーン46が2つの領域62,64を有することが記載されるが、特定標的ゾーン46が別個の重なり合っていない領域を有する必要がないことを理解されるべきである。むしろ、第1領域62および第2領域64のそれぞれは、車両42の外側に設けられ、車両42に隣接し、かつ後方にある物体の存在を検出するように自動車レーダシステム44を構成され得る。
【0012】
図2,3に関連して図4を参照する。図4は自動車レーダシステム44のブロック図を示す。一般に、自動車レーダシステム44は、信号プロセッサ68と通信する送信部56および受信部58を含む。信号プロセッサ68は物体指示手段70と追加的に通信することが可能であり、両者を以下に説明する。公知の開発されているレーダシステムにしたがって、自動車レーダシステム44が、アナログ・デジタル変換器、増幅器、電圧制御された発振器、同調制御の特徴、信号分析の特徴、等を追加的に有していてもよい。
【0013】
代表的構成において、自動車レーダシステム44が、例えば76〜81GHzの周波数スペクトルを用いる周波数変調された連続波レーダであってもよい。代表的技術は、衝突警告および回避のための77GHzレーダ技術である。77GHzレーダ技術は長距離または中距離機能を提供し得ることにより、自動車システムが衝突防止を促進するために車両周囲の環境を監視することを可能にする。長距離は、車のすぐ前および後ろにおける長いおよび狭い領域のカバレッジを典型的に有し、車間距離制御および車線逸脱警告のために用いられる。短距離機能は、より短い距離をカバーする、相対的に広い空間視野で車の近傍周囲を監視し、したがって、死角検出や、プリクラッシュおよび適正速度制御(sto p and go)での用途に有用である。77GHzレーダ技術が本発明に記載されるが、他の適切なレーダシステムは代替実施形態において実行されてもよい。
【0014】
一実施形態にしたがって、送信部56は、標的ゾーン46へのレーダ信号74の出力のための単一ビーム送信アンテナ72を有する。同様に、受信部58は、直接受信信号78および間接受信信号80を受信可能な単一ビーム受信アンテナ76を含んでなる。直接受信信号78および間接受信信号80の各々は、標的ゾーン46における物体、例えば、物体34,36のいずれかからのレーダ信号74の反射である。一実施形態において、直接受信信号78および間接受信信号80は、アンテナパターン到着の個別方向におけるアンテナパターンの指向性によって重み付けられ、受信アンテナ76で加算される。組み合わせた信号が次に受信され、物体、例えば物体34,36が標的ゾーン46に存在することを指示する検出信号81を与えるために処理される。
【0015】
標的ゾーン46以内の物体の相対的に位置を決定するために適切な信号分析のために、および/または標的ゾーン46における物体、例えば物体34および36の存在について車両42の運転者を通知する必要性を決定するために検出信号81をプロセッサ68に通信されてもよい。物体表示器70は、表示子機能を提供する車両制御コンピュータであってよい。車両42の操作者に通知を提供するために表示器70が、車両42内の可聴な音、視認できる信号、振動信号、またはいかなる適切な信号を生じてもよい。
【0016】
図5は、自動車レーダシステム44の送信部56または受信部58として具体化され得るモジュール82の分解図を示す。送信部56および受信部58を形成するために同様な構造および部品が用いられる。したがって、モジュール82の以下の一般的説明がそれぞれの送信および受信部56および58に同等に適用する。
【0017】
モジュール82は、モジュール82の部品を内部に配置するためのハウジング84を有する。一実施形態において、自動車レーダシステム44は、互いに分離および隔離された送信部56(図4)および受信部58(図4)を有する。したがって、ハウジング84を形成する材料は、送信部56(図4)から出力される無線信号74(図4)が、受信部58(図4)で受信された直接受信信号78および間接受信信号80と干渉またはこれを低減しないように選択される。図3示す代替え実施形態において、送信部56および受信部58の両方は2つの中空部を有したハウジング設計で互いに隔離される。
【0018】
従来の実務のように、ハウジング84は成形された吸収材料86を取り付けた構造であってもよい。吸収材料86が、ハウジング84内にて反射する電波を吸収するために機能する。さらに、チップパッケージ90、フィードアンテナ92、および外部コネクタ(図示せず)を有するモジュール固有プリント回路板88がハウジング84に収容される。誘電性レンズ94は、フィードアンテナ92が誘電性レンズ94の裏面95近傍に取り付けられ、かつ背面カバー96がハウジング84の裏面に取り付けられるように、ハウジング84に取り付けられる。フィードアンテナと誘電性レンズ94の組み合わせが単一ビームアンテナ97を形成する。チップパッケージ90は送信部56のための送信チップパッケージであってよく、あるいは、受信部58の受信チップパッケージであってよい。同様に、単一ビームアンテナ97は送信部56における単一ビーム送信アンテナ72であってよく、あるいは、受信部58の単一ビーム受信アンテナ78であってよい。
【0019】
一実施形態において、単一ビームアンテナ97(単一ビーム送信アンテナ72または単一ビーム受信アンテナ78のいずれか)におけるフィードアンテナ92は、空間と等しいアンテナパターンを生じるために固定された単一パッチ素子98を有するパッチアンテナであってよい。パッチアンテナとは、パッチ素子98が例えばシリコンまたはセラミック基板100に取り付けられたアンテナである。一実施形態において、メタマテリアルを用いて空間と等しいアンテナパターンを生じるためにパッチ素子98安定化され得る。メタマテリアルとは、化学組成よりではなく物理的構造からその電磁特性を得られる材料である。例として、メタマテリアルは、電磁放射線の分類の波長より小さなサイズの特徴を有するように設計された材料であってよい。電磁波、例えば無線信号74(図4)、は基板の端部から反射され、パッチ素子98の放射パターンに歪みを引起こす。この電磁波が、基板の表面で伝搬または移動する。パッチ素子98周囲の基板100の表面におけるメタマテリアルの使用によって、電磁波の反射が減少される。反射が減少されたために、パッチ素子98の放射パターンは空間における理論パッチに近い。空間と等しいアンテナパターンを生じるためにメタマテリアルを用いて固定された、得られたフィードアンテナ92が誘電性レンズ94に優れたフィードを提供する。すなわち、メタマテリアルによって安定化されたパッチアンテナ92が無線信号の源として働き、これはさらに誘電性レンズ94によって集束される。
【0020】
パッチ素子98を固定するためにメタマテリアルを用いることによって所望レベルの性能のための相対的に単純な製造工程および小さなサイズを得られる。しかしながら、表面電磁波を抑制するために代替えおよび/または追加的技術はパッチ素子98と共に実行され得る。この代替えおよび/または追加的技術には、例えば吸収器およびスロット構造が含まれる。さらに、メタマテリアルによって固定されたパッチアンテナ92は上述に記載されたが、所望アンテナ放射パターンは、種々の準光学アンテナ(すなわち、典型的ミリメタ波周波数の光学設計方法に基づくアンテナ)と共に緩やかなテーパー状フィード(すなわち、所望側ローブレベルを生じる)によって生じるものであってもよい。
【0021】
図6は自動車レーダシステム44の送信部56および受信部58のそれぞれから生成された送信アンテナパターン104と受信アンテナパターン106を示すグラフ102である。送信アンテナパターン104はグラフ102において実線で示され、受信アンテナパターン106はグラフ102において鎖線で示されている。
【0022】
用語「アンテナパターン」はアンテナから放射の指向性依存関係を一般的に称する。したがって、アンテナパターンは、アンテナ放射パターン、ビームパターン、ビーム、放射パターン、等としても知られているもので、それに相当するアンテナの放射特性を示す。送信アンテナパターン104および受信アンテナパターン106は、相当する単一ビーム送信アンテナ72および受信アンテナ76(図4)から放射された放射強度、電解強度、または放射力密度をアンテナから方向の関数として示すことができる。
【0023】
最大放射強度の方向または強度がアンテナパターンのメインローブを定める。メインローブより弱い他の局所的なローブは、アンテナパターンの二次ローブまたは側部ローブを定める。したがって、アンテナパターンが、メインローブの放射密度より少ない放射密度の側ローブを含んでもよい。送信アンテナ72(図4)は、標的ゾーン46(図2)を指向した送信アンテナパターン104を生じる。同様に、受信アンテナ76が、標的ゾーン46に送られた送信アンテナパターン106を生じる。
【0024】
一実施形態において、送信アンテナパターン104は、メインローブ108および、メインローブ108の各側部につながる、または隣接する第1側部ローブ110,112を含む。送信アンテナパターン104のメインローブ108と第1側部ローブ110および112との間の関係はグラフ102で視覚化され得る。同様に、受信アンテナパターン106は、メインローブ114および、メインローブ114の各側部につながる、または隣接する第1側部ローブ116,118を含む。また、アンテナパターン106のメインローブ114と第1側部ローブ116,118との間の関係はグラフ102で視覚化され得る。本発明に用いられた用語「第1側部ローブ」は、アンテナパターンのメインローブにすぐ隣接するアンテナパターンの側部ローブを称する。当業者が、アンテナパターンが、メインローブの各側における追加的または二次ローブを含んでも良くが、図示の明確化のために示されていないことを理解される。
【0025】
一実施形態によると、送信アンテナパターン104および受信アンテナパターン106の各々は、ショルダー型の第1側部ローブを有する。すなわち、送信アンテナパターン104のショルダー型第1側部ローブ110,112は比較的に広く、メインローブ108の周囲に明確かつ鋭い減少部を有しない。同様に、送信アンテナパターン106のショルダー型第1側部ローブ116,118は比較的に広く、メインローブ1114の周囲に明確かつ鋭い減少部を有しない。側部ローブ110、112、116、および118におけるパワーレベルは、対応するメインローブ108および114のパワーレベルと比べて、15dB〜30dBだけ低いものであってもよい。上記のように、このタイプのアンテナパターンは、緩やかテーパー状フィードを有する様々の準光学アンテナによって生じ得る。
【0026】
側部ローブは望ましくない方向における放射線であり、該放射線は典型的に受信アンテナが受信している迷惑信号からの雑音を受信しやすくし、送信アンテナから送信している信号を検出しにくくする。しかしながら、一実施形態によると、送信アンテナパターン104のメインローブ108に隣接する第1側部ローブ110および112の存在は、第1および第2領域62および64(図2)を含む標的ゾーン46全体に無線信号72(図4)を送信するために利用される。同様に、受信アンテナパターン106のメインローブ114に隣接する第1側ローブ116および118の存在は、第1および第2領域62および64を含む標的ゾーン46全体に直接受信信号78および間接受信信号80(図4)を受信するために利用される。
【0027】
再び図2を参照する。送信アンテナ72によって生じられた送信アンテナパターン104が示される。受信アンテナパターン106(図6)が示されていないが、以下の説明も受信アンテナパターン106に等しく適用する。一実施形態において、アンテナパターン104および106の各々はアジマスすなわち道路50の平面と概略平行な平面は、高さ、すなわち道路50の面と垂直な方向における幅より広い。図2に示すように、アジマスは3次元グラフ120におけるX座標およびY座標で示され、高さはZ座標で示されている。道路50のレーン52に実際に配置されるように高すぎるまたは低すぎる物体から反射された信号の不適切受信を阻止または回避するために、アンテナパターン104および106の各々の幅は高さ方向で相対的に狭い。
【0028】
送信アンテナパターン104は自動車レーダシステム104から離れる方向に導かれる矢印を有する鎖線によって示される。送信アンテナ72(図4)は、送信アンテナパターン104に対応するレーダ信号74(図4)を送信する。図示の明確化のために、受信アンテナパターン106(図6)が示されていない。実際、受信部58(図3)がミラー60に取り付けられた送信部56(図3)に近接するために、受信パターン106が送信アンテナパターンを一般に重なり合わせる。しかしながら、受信アンテナ76は受信アンテナパターン106に対応するレーダ信号74の反射を受信する。
【0029】
受信アンテナパターン106を示す代わりに、自動車レーダシステム44を指向する矢印を有する直接受信信号78および間接受信信号80が示されている。直接および間接受信信号78Aおよび80Aは、Aのラベルを付けられた物体34からレーダ信号74の反射である。同様に、直接および間接信号78Bおよび80Bは、Bのラベルを付けられたレーダ信号74の反射である。一例において、図2示されている符号80Aは、受信アンテナ76で受信するために物体34から反射し、次に車両42の側面54から反射した間接受信信号80を示している。同様に、図2示されている符号80Bが、受信アンテナ76で受信するため物体36から反射し、次に車両42の側面54から反射した間接受信信号80を示している。
【0030】
直接受信信号78および間接受信信号80は、標的ゾーン46内の物体によるレーダ信号74の反射のマルチパス成分を示している。マルチパスは、マルチパス電波伝搬、マルチパス干渉、またはマルチパスひずみ、等としても知られているもので、複数の伝搬パスを介して送信源と受信器との間を移動する線である。反射に起因する同一信号の複数の経路の到達により、多くの条件下でマルチパスは干渉を受ける結果となる。パス長の差が異なる到達時間を形成し、したがって、信号キャンセレーションおよび低下を及ぼす。マルチパス干渉が信号キャンセレーションおよび低下を及ぼす可能性があることを考えると、多くのレーダおよび通信構成が、このマルチパス干渉を緩和または減少することを試みる。従来レーダおよび通信構成に比較すると、標的ゾーン46全体の物体、例えば物体34および36を検出するために、本発明の自動車レーダシステム44は直接および間接信号マルチパス信号成分を利用する。
【0031】
送信アンテナ72(図4)は、送信アンテナ104を車両42の側面54から外側を指向して標的ゾーン46に向くように配置される。しかしながら、アンテナパターン82すなわちアンテナパターン104の第1側ローブ112の放射された電磁波が車両42の反射可能なボディパネルに入射される。この放射された電磁波すなわち第1側ローブ112におけるレーダ信号74が側面54のボディパネルから第1領域62すなわち死角に反射する。両方の側部ローブ110,112をメインローブ108の同一側に配置する状況が図2に示される。側部ローブ112は車両42の側面54によるレーダ信号74の反射であり、よって側部ローブ110に対してわずかに変更されている。したがって、レーダ信号74(図3)が車両42の第1領域62(すなわち、死角)を指向するために、送信アンテナ72は、車両42の反射可能なボディパネルから送信アンテナパターン(すなわち、側部ローブ112)の反射部分を最適化するように配置される。
【0032】
例えば第1領域62に配置された物体34によって反射された直接受信信号78および間接受信信号80の各々を、受信アンテナ76(図4)で受信するために、受信アンテナ76(図4)は、車両42の側面54の反射ボディパネルから外側を指向して受信アンテナパターン106(図6)の方向を最適化するために配置される。すなわち、受信した電磁波、より詳細には、間接受信信号80は、車両42の側面54のボディパネルにおける反射に関連する方向から受けられる。例として、間接受信信号80Aは物体34から車両42の反射パネルすなわち側面54に向けて反射され、間接受信信号80Aは次に、受信アンテナ76(図4)で受信するために車両42の側面54から反射される。車両42のボディパネルは、例えばミリメートル波周波数の反射すなわち導電性外部表面を有するいかなる平滑な外部構造成分であってよい。最適反射性能を提供するために、反射ボディパネルの曲率半径は空間波長よりさらに大きくあるべきである(例えば、十倍大きい)。
【0033】
一実施形態において、送信および受信アンテナパターン104および106の方向を最適化するためのチューニングパラメータとしては、例えば車両42の側54における反射パネルに対してアンテナパターンの傾き、アジマスにおけるアンテナパターンの幅、第1側ローブにおけるパワーレベルが含まれ得る。チューニングパラメータは車両42に適合するように調整されるべきであり、特に、幅および側部ローブレベルはアセンブリの設計によって制御される可能性がある。誘電性レンズ94(図5)のサイズとフィードアンテナ92との間の空間および誘電性レンズ94は主要な要素である。誘電性レンズ94のサイズがアンテナパターン104および106の幅を決定し、フィードアンテナ92と誘電性レンズ94との間の空間が側部ローブレベルおよび側部ローブ形状の調整を可能にする。
【0034】
一実施形態において、自動車レーダシステム44は多種類の車両に共通に用いることができる。したがって、誘電性レンズ94のサイズおよびフィードアンテナ92と誘電性レンズ94との間の空間は様々な車両を包含するように決定されるべきである。自動車44の性能は、送信部56および受信部58の傾きを制御することによって各車両ベースでさらに調整され得る。例えば、最良の信号対雑音比を得るために、送信部56および受信部58の軸との間の角度は、各車両42の所望反射位置のために最適化されるべきである。
【0035】
物体34を検出するために、反射されたレーダ信号74(図4)のマルチパス成分すなわち直接受信信号78Aおよび間接受信信号80Aの合算は受信部58(図4)で受信され、標的ゾーン46内の物体34、例えば別の車両の存在の可能性について車両42の操作者に後の通知のために検出信号81(図4)を生じる。同様に、物体36を検出するために、反射されたレーダ信号74(図4)のマルチパス成分すなわち直接受信信号78Bおよび間接受信信号80Bの加算は、受信部58(図4)で受信され、標的ゾーン46内の物体36、例えば別の車両の存在の可能性について車両42の操作者に後の通知のために検出信号81(図4)を生じる。各場合において、2つの信号78および80のいずれの1つは支配的である。
【0036】
図7は、自動車レーダシステム44の標的ゾーン46内の物体からレーダ信号74(図4)の反射として直接受信信号78および間接受信信号80における単一ビームレーダアンテナの指向性のグラフ122を示す。指向性はレーダシステム44すなわち取り付けられた位置に対応する地表面から後方に向かう距離に対してプロットされる。用語「指向性」はアンテナによって所与方向における電磁波の強度の測定基準を称する。直接受信信号78の信号強度124として表される指向性は鎖線の曲線によって示され、間接受信信号80の信号強度126として表される指向性は実線の曲線によって示されている。
【0037】
受信アンテナ76(図4)に近い、例えば3メートル以内の物体において、間接受信信号80の信号強度126が信号強度124を支配し、したがって標的ゾーン46の第1領域62すなわち死角に配置された物体34の検出を提供する。しかしながら、受信アンテナ76からより遠い、例えば3メートル以上の物体において、直接受信信号78の信号強度124が信号強度126を支配し、したがって標的ゾーン46の第2領域64に配置された物体36の検出を提供する。幾つかの場合において、第1領域62と第2領域64の間に小さな重なり合わせた領域が存在する可能性がある、ここで、この重なり合わせた領域における標的が検出できるように狭い範囲のために信号対雑音比は十分高い。したがって、標的ゾーン46全体内の物体の存在の可能性を検出するために自動車レーダシステム44の相対的に簡単な単一ビームアンテナ構成の実行を可能にするために直接および間接受信信号78および80の組み合わせが十分な感知度および角度カバレッジを提供する。
【0038】
自動車レーダシステム44を実施する場合において、車両42の外部の標的ゾーン46内の物体、例えば物体34および36を検出する方法は、送信部56(図4)の単一ビーム送信アンテナ72(図4)からレーダ信号74(図4)を送信するステップを含む。物体、例えば物体34および/または36が標的ゾーン46に存在する時、さらなる方法が、受信部58(図4)の単一ビーム受信アンテナ76(図4)で直接受信信号78および間接受信信号80を受信するステップを含み、ここで、信号78および80は物体から無線信号74の反射である。直接受信信号78および間接受信信号80は、標的ゾーン46内の物体、例えば物体34および/または物体36の存在の可能性を指示する検出信号81(図4)を生じるために加算される。つまり、マルチパス信号成分の効果を最小化するための従来技術の代わりに、反射されたレーダ信号74のマルチパス信号成分は組み合わせられ、検出信号81を生じる。車両の死角内の物体の認識および/または操作者が車線変更を準備すると、車両42に接近し得る物体の認識を提供するために、検出信号81に応答して、この物体、例えば物体34および/または物体36の存在の可能性を車両42の操作者に注意を適切に促す。
【0039】
実施形態が、側面物体検出システムで物体を検出するためにマルチパス信号伝搬成分、例えば直接および間接無線信号の組み合わせを印加する自動車レーダシステムおよび方法を含む。特に、送信および受信部の各々が単一ビームアンテナを含む。単一ビームアンテナを介して送信された無線信号は、自動車レーダシステムの標的ゾーン内の物体からの反射として検出され得る。この反射が、物体から反射され受信部で受信された直接受信信号および物体から反射パネルに反射され、次に受信部で受信された間接受信信号を含んでもよい。側面物体検出ための自動車レーダシステムにおける直接および間接無線信号の組み合わせが、盲点内の物体と共に車両に接近またはその後ろの物体を検出するために十分な感知度および角度カバーを提供するために簡単な単一ビームアンテナの使用を可能にする。したがって、実施形態が、盲点の緩和および車線変更のための簡単、費用効果なレーダ設計の設計を向上するためにレーダおよびマルチパスの特性を利用する。
【0040】
前述の詳細な説明は、具体的な例示の実施の形態を参照しながら本発明を説明するものである。しかし、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更が加えられ得ることが理解されよう。詳細な説明および添付図面は限定するものではなく、単に例と見なされるべきであり、そのような修正又は変更は、すべて本明細書で説明され定義された本発明の範囲内に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のレーダシステムにおいて、
前記車両の外部標的ゾーンにレーダ信号を出力するための単一ビーム送信アンテナを含む送信部と、
直接受信信号および間接受信信号を受信可能な単一ビーム受信アンテナを含む受信部とを備え、
前記直接および間接受信信号の各々は前記標的ゾーンにある物体からの前記レーダ信号の反射であり、前記直接受信信号および間接受信信号を合算することによって、前記標的ゾーンにある前記物体の存在を表示する検出信号を生じる、車両のレーダシステム。
【請求項2】
前記単一ビーム送信および単一ビーム受信アンテナの各々が、メインローブおよび前記メインローブの各側につながる第1側部ローブを有するアンテナパターンを生じ、前記第1側ローブはショルダー型の側部ローブである、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項3】
前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々において、パッチアンテナ素子を有するフィードアンテナを含む、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項4】
前記フィードアンテナは誘電性レンズの裏面の近傍に取り付けられる、請求項3記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記空間と等しいアンテナパターンを生じるように前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々が固定される、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項6】
前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々が高さ方向のアンテナパターンより広いアジマスのアンテナパターンを示す、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項7】
前記レーダ信号は、前記標的ゾーンの前記物体を指向し、かつ車両のパネルによって反射した間接送信信号であり、前記間接受信信号は前記パネルで反射されて前記受信アンテナで受信される、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項8】
前記標的ゾーンが、前記車両の側面に隣接する第1領域および前記車両の後方パネルの外側およびその後ろに設けられた第2領域を含み、前記物体が前記第2領域に配置される時、前記直接受信信号の第1信号強度が前記検出信号における前記間接受信信号の第2信号強度よりも支配的であり、前記物体が前記第1領域に配置される時、前記間接受信信号の前記第2信号強度が前記検出信号における前記直接受信信号の第1信号強度よりも支配的であるように、前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々が、前記第2領域に向くメインローブおよび前記第1領域に前記車両のパネルから側部ローブを有するアンテナパターンを示す、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項9】
前記送信部が配置された第1ハウジングと、
前記単一ビーム送信アンテナを前記単一ビーム受信アンテナから分離および隔離するために、前記受信部が配置される前記第1ハウジングから分離した第2ハウジングとをさらに備える、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項10】
前記標的ゾーンを指向する前記送信アンテナおよび受信アンテナのそれぞれを有する前記送信部および前記受信部は前記車両の外部ミラーに取り付けられるよう構成される、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項11】
前記標的ゾーン内における前記物体の存在について前記車両の操作者に注意を促すために前記受信部が前記検出信号を生じる、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項12】
車両の外部の標的ゾーンにある物体を検出するための方法において、
送信部の単一ビーム送信アンテナから前記標的ゾーンにレーダ信号を送信するステップと、
前記物体から前記レーダ信号の反射である、直接受信信号および間接受信信号を受信部の単一ビーム受信アンテナで受信するステップと、
前記標的ゾーンに前記物体が存在することを指示する検出信号を生じるように前記直接受信信号および間接受信信号を合算するステップとを備える、方法。
【請求項13】
メインローブおよび前記メインローブの各側部につながる第1側部ローブを有するアンテナパターンを生じる前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々を選択するステップをさらに備える、請求項12記載の方法。
【請求項14】
高さ方向のアンテナパターンより広いアジマスのアンテナパターンを生じる前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々を選択するステップをさらに備える、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記間接受信信号は前記標的ゾーン内の前記物体から前記車両のパネルによって反射され、前記受信信号アンテナで受信するために前記間接受信信号は前記パネルによって反射される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記車両の側面に隣接する第1領域および前記車両の後方パネルの外側かつ後方を指向するように設けられた第2領域を含んでなる前記標的ゾーンを画定するステップと、
アンテナパターンの側部ローブが前記車両のパネルから前記第1領域に反射されるように前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々における前記アンテナパターンのメインローブを指向させるステップであって、前記物体が前記第2領域に配置される時には、前記直接受信信号の第1信号強度が前記検出信号における前記間接受信信号の第2信号強度よりも支配的であり、前記物体が前記第1領域に配置される時には、前記間接受信信号の前記第2信号強度が前記検出信号における前記直接受信信号の前記第1信号強度よりも支配的である、前記アンテナパターンのメインローブを指向させるステップと
をさらに備える、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記検出信号に応答して前記標的ゾーン内の前記物体の存在について前記車両の操作者に注意を促すステップをさらに備える、請求項12記載の方法。
【請求項18】
車両用レーダシステムにおいて、
前記車両の外部の標的ゾーンにレーダ信号を出力するための単一ビーム送信アンテナを含む送信部と、
直接受信信号および間接受信信号を受信可能な単一ビーム受信アンテナを含む受信部を備え、
前記直接受信信号および間接受信信号の各々は前記標的ゾーン内の物体からの前記無線信号の反射であり、
前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々が、メインローブおよび前記メインローブの各側部につながる第1側部ローブを有するアンテナパターンを生じ、および前記第1側部ローブはショルダー型の側部ローブであり、
アジムスのアンテナパターンは高さ方向のアンテナパターンより広く、
前記直接受信信号をおよび前記間接受信信号を合算することによって、前記標的ゾーン内の前記物体の存在を指示する検出信号を生じる、車両用レーダシステム。
【請求項19】
前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナは、誘電性レンズの裏面の近傍に取り付けられた単一パッチアンテナ素子を有するフィードアンテナを備え、空間と等しいアンテナパターンを生じるために前記フィードバックアンテナを固定する、請求項18に記載の車両用レーダシステム。
【請求項20】
前記標的ゾーンが前記車両の側面に隣接する第1領域および前記車両の後方パネルから外側かつ後方を指向して設けられた第2領域を含んでなり、
前記物体が前記第2領域に配置される時には、前記直接受信信号の第1信号強度が前記検出信号における前記間接受信信号の第2信号強度よりも支配的であり、前記物体が前記第1領域に配置される時には、前記間接受信信号の前記第2信号強度が前記検出信号における前記直接受信信号の第1信号強度よりも支配的であるように、前記単一ビーム送信アンテナおよび単一ビーム受信アンテナの各々が、前記第2領域を指向するメインローブおよび前記第1領域に前記車両のパネルから側部ローブを有するアンテナパターンを示す、請求項18記載のレーダシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−118072(P2012−118072A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259676(P2011−259676)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】