説明

自動車用暖房装置

【課題】従来の自動車用暖房装置は、エンジンの廃熱を利用するため暖房の速暖性に欠けるという課題があった。
【解決手段】電気ヒータ11と、電気ヒータ11を一体に配置するシート状部材10と、シート状部材10を収容する収納装置12と、収納装置12を備えた座席とを有する暖房装置9であるため、エンジン始動直後のエンジンが充分に暖まっていない状態であっても、電気ヒータを用いていることによりすぐに暖まり、速暖性が高い暖房装置を提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車の車内暖房装置としては、袋状の膝掛にエアコンの温風を吹き込むことで暖房し、非使用時はインパネに巻取り収納するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図7は特許文献1に記載された従来の自動車用暖房装置の構成図であり、袋状の膝掛1がダッシュボード2に配置されている。使用していないときはダッシュボード2の内部に巻込む形で収容されており、使用時は、座席3に座る使用者が、ダッシュボード2から膝掛1を引き出し、膝掛1の内部の空間4に自動車のエアコンの温風を吹き込むことで暖房する。
【特許文献1】特開2008−38308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の自動車用暖房装置は、エアコンの温風により暖房するため、エンジンの暖気が終わるまで実質的な暖かさを得にくいため、速暖性に欠けるものであった。さらに、燃費性能が高くエネルギー効率の高いハイブリッド自動車などは、エンジンの廃熱が小さいため、エンジンの廃熱を利用することを前提とした従来型自動車の暖房は、暖房性能を得ることが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動車用暖房装置は、電気ヒータと、前記電気ヒータを一体に配置するシート状部材と、前記シート状部材を収容する収納装置と、前記収納装置を備えた座席とを有し、前記シート部材が前記収納装置から引き出されたときに、前記電気ヒータに通電することで暖房する構成とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明の自動車用暖房装置は、エンジンの暖気にかかわらず、バッテリーから電力による電気ヒータを使用して暖房を開始するため、速暖性の高く、また、非使用時に収納し必要なときのみ取り出して使用できるため効率が高く、膝掛状にすることで、冷えた外気を遮断し、より効率よく暖房することができる暖房装置を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明は、電気ヒータと、前記電気ヒータを一体に配置するシート状部材と、前記シート状部材を収容する収納装置と、前記収納装置を備えた座席とを有することで、バッテリーから電力による電気ヒータを使用して暖房を開始するため、速暖性の高く、また、非使用時に収納し必要なときのみ取り出して使用できるため効率が高く、膝掛状にすることで、冷えた外気を遮断し、より効率よく暖房することができる暖房装置を提供することができる。
【0008】
第2の発明は、特に第1の発明において、ハイブリッド自動車に設置する構成とした。ハイブリッド自動車のエアコンは、走行中であってもエンジンが停止している時間があるため、エンジンの廃熱を利用するエアコンの暖房は効きにくいが、電気ヒータを用いているためすぐに暖まり、速暖性が高い暖房装置を提供することできる。
【0009】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、電気ヒータを備えたシート状部材が、収納装置に収納された状態で、前記電気ヒータに通電しない構成としたので、暖房を必要としていない箇所を不必要に暖房しない効率の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0010】
第4の発明は、特に第3の発明において、電気ヒータを備えたシート状部材の、収容状態を検出するスイッチを収納装置に配置する構成としたので、暖房を必要としていない箇所を不必要に暖房しない効率の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0011】
第5の発明は、特に第3の発明において、座席に、人の着座の有無を検出する在席検出手段を有する構成としたので、不在時に通電しないので無駄な電力消費を抑えることが出来る効率の高い暖房装置を提供できる。
【0012】
第6の発明は、特に第1から第5のいずれか1項記載の発明において、電気ヒータはPTC特性を持つ電気ヒータとしたので、ヒータ自身の温度上昇とともに電気抵抗地が上昇することで、温度が上がりすぎることもなく快適な温度を維持することが出来、快適な環境を提供する暖房装置を提供できる。
【0013】
第7の発明は、特に第1から第6のいずれか1項記載の発明において、自動車の後部座席に配置したので、温風が回りにくい後部座席14bに座る人にも速暖性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0014】
第8の発明は、特に第1から第7のいずれか1項記載の発明において、車内空調装置と連動する構成としたので、使用者が個別にオンオフ操作をする必要のない利便性の高い暖房装置を提供することが出来る。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における自動車用暖房装置について図1から5を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態における自動車用暖房装置の構成図。図2は自動車用暖房装置が配置された座席の正面図。図3は本発明の自動車用暖房装置を組み込んだ自動車の平面断面図。図4は温度調節部の構成図。図5は収納装置の構成図である。
【0016】
図1において、本発明の暖房装置9は、布や毛織物等の材質で出来たシート状部材である膝掛10に、PTC特性を持つ面状のヒータ11が、膝掛10の内部に挟み込まれるように配置されており、ヒータ11は、ハイブリッド自動車のバッテリーから電力を得て発熱する。膝掛10の一端には収納装置12が配置されており、膝掛10を使用しないときには収納装置12の内部に巻取り収納される。膝掛10の他方の一端には固定具13が2個配置されている。
【0017】
そして、図2に示すように、座席14の側面に収納装置12は座席の側面に取り付けられ、そこから膝掛10を引き出して使用する。また、座席14には、例えば背面に圧電センサなどの在席検知手段15などが配置されている。
【0018】
また、図3に示すように、例えば4人載の自動車の場合、前部座席14aと後部座席14bに4人分の暖房装置9を配置する。
【0019】
以下に動作作用を説明する、本発明の暖房装置9を使用する場合は、図2に示すように、座席14の側面に取り付けられた収納装置12から膝掛10を引き出し、膝の上を渡し
、収納装置12の反対側の側面に取り付けられたバックル16に固定具13を固定して使用する。
【0020】
そして暖房装置9は、図4に示す自動車のエアコン(車内空調装置)動作ダイヤル17と温度調節ダイヤル17に連動して動作する。例えば、エアコン動作ダイヤル17がauto状態でかつ温度調節ダイヤル18が暖房領域Aであるときに、エアコンが動作するのと同時に暖房装置9にも通電される。そのため、4つの暖房装置9を一括して電源投入し、温度調節をすることができるため、利便性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0021】
また、ハイブリッド自動車のエアコンは、走行中であってもエンジンが停止している時間があるため、エンジンの廃熱を利用するエアコンの暖房は効きにくいが、電気ヒータを用いている暖房装置9はすぐに暖まり、速暖性が高い。また、PTC特性を持つヒータ11を用いているため、ヒータ自身の温度上昇とともに電気抵抗地が上昇することで、温度が上がりすぎることもなく快適な温度を維持することが出来、快適な環境を提供することが出来る。このときの温度調節範囲は、エアコンの温度調節ダイヤル18温度と同じでなくてもよく、例えば、体温を中心に30度から40度の範囲で温度調節してもよく、また電気毛布などと同じ程度でもよい。
【0022】
また図5(a)、(b)暖房装置9の要部断面図に示すように、収納装置12にマイクロスイッチ19が配置されており、暖房装置9を使用するために膝掛10が引き出されたときには図5(a)のようにスイッチ19が入り通電可能状態になり、エアコンの動作と連動して暖房を行う。また、暖房装置9を使用せず収納装置12に収納された状態では、図5(b)のように固定具13と収納装置12が勘合することでスイッチ19が切られ通電しないため、エアコンが動作してもヒータ11は発熱しない。これにより、使用者が個別にオンオフ操作をする必要のない利便性の高く、かつ、暖房を必要としていない箇所を不必要に暖房しない効率の高い暖房装置を提供することが出来る。さらに、座席14に設けられた圧電センサ15により人体着座時の圧力変動がある場合のみ通電可能としている。そのため、未使用および不在時に通電しないので無駄な電力消費を抑えることが出来る効率の高い暖房装置を提供できる。
【0023】
また、収納装置12に内蔵されたバネにより、膝掛10には常に巻取り方向Bに力がかかっており、使用者は容易に膝掛10を収納装置12に収納することが出来る。また、使用時に膝掛10が収納装置12に戻ってしまうことがないように、収納装置12にはストッパ機構を有している。膝掛10を収納する際には、引き出された膝掛10をさらに引き出すことでストッパ機構が解除され容易に収納することが出来る。
【0024】
また、後部座席14bに暖房装置9を設けたことで、温風が回りにくい後部座席14bに座る人にも速暖性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0025】
尚、膝掛10の材質は、本実施の形態に限られることはなく、例えば化学繊維や合成繊維の織物や不織布、樹脂シートやゴムシートでもかまわない。使用者の触感の良い材質、耐久性の高い材質等、適宜選択可能である。
【0026】
尚、ヒータ11は線状ヒータを膝掛10に蛇行配置する構成でもかまわない。
尚、在席検知手段15は圧電センサ以外にもマイクロスイッチでもかまわないし、赤外線センサを用いて、人体の熱を検知してもかまわない。また設置場所も、座席14の背面ではなく座面でもかまわない。
【0027】
尚、膝掛10の収納装置12として、巻取り機構を有さずに、箱状のものに膝掛をたたんで収納するものとしてもよい。
【0028】
また尚、暖房装置9をエアコンと連動せずに、図6のように、エアコンのダイヤルとは別の温度コントローラ20でエアコンとは別にオンオフ、および温度調節ができるようにしてもかまわない。寒さを不快に感じにくい人と、寒さを不快に感じやすい人が同乗したとしても個別に暖房効果が得られるため、快適性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明にかかる自動車用暖房装置は、システムのエネルギー効率が高く、エンジンの廃熱の小さいハイブリッド自動車のエアコン暖房の効き始めの遅さを補い、快適な暖房空間を提供できるため、エンジンの廃熱がなくエアコン暖房の効きにくい電気自動車用の暖房装置としてもかまわない。またさらに、効率を高めることでエンジン廃熱を抑制したディーゼルエンジンや、高効率のガソリンエンジン自動車の暖房装置としても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置を搭載した座席の構成図
【図3】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置を搭載した自動車の構成図
【図4】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置の温度調節部の構成図
【図5】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置の収納装置の構成図
【図6】本発明の実施の形態1における別の例の自動車用暖房装置の温度調節部の構成図
【図7】従来の自動車用暖房装置の構成図
【符号の説明】
【0031】
9 暖房装置
10 膝掛(シート状部材)
11 PTCヒータ(PTC特性を持つ電気ヒータ)
12 収納装置
14 座席
14b 後部座席
15 圧電センサ(在席検出手段)
19 スイッチ(収納状態を検出するスイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ヒータと、前記電気ヒータを一体に配置するシート状部材と、前記シート状部材を収容する収納装置と、前記収納装置を備えた座席とを有する自動車用暖房装置。
【請求項2】
ハイブリッド自動車に設置する、請求項1記載の自動車用暖房装置。
【請求項3】
電気ヒータを備えたシート状部材が、収納装置に収納された状態で、前記電気ヒータに通電しない構成とした請求項1または2記載の自動車用暖房装置。
【請求項4】
電気ヒータを備えたシート状部材の、収容状態を検出するスイッチを収納装置に配置する構成とした請求項3記載の自動車用暖房装置。
【請求項5】
座席に、人の着座の有無を検出する在席検出手段を有する構成とした請求項3記載の自動車用暖房装置。
【請求項6】
電気ヒータはPTC特性を持つ電気ヒータである請求項1から5のいずれか1項記載の自動車用暖房装置。
【請求項7】
自動車の後部座席に配置した請求項1から6のいずれか1項記載の自動車用暖房装置。
【請求項8】
車内空調装置と連動する請求項1から7のいずれか1項記載の自動車用暖房装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−23782(P2010−23782A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190582(P2008−190582)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】