自動車用燃料タンク
【課題】内蔵部品が強固に燃料タンクの外壁内面に融着することができ、燃料タンクの外壁に衝撃等が加わっても、燃料タンクの外壁を保護することができる燃料タンクを提供する。
【解決手段】ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品20を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンク1において、内蔵部品20には、燃料タンク1の外壁の内面に融着して内蔵部品20を取付ける取付部材30が複数設けられる。取付部材30は、燃料タンク1の外壁の内面に当接する当接部32が形成され、当接部32は、当接面33と当接面33から突出する複数の当接ピン34が形成される。当接ピン34は断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成されるとともに、当接ピン34の頂部の半径または長径と、当接ピン34の当接面33からの高さは、燃料タンク1の外壁の肉厚よりも小さく形成される。
【解決手段】ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品20を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンク1において、内蔵部品20には、燃料タンク1の外壁の内面に融着して内蔵部品20を取付ける取付部材30が複数設けられる。取付部材30は、燃料タンク1の外壁の内面に当接する当接部32が形成され、当接部32は、当接面33と当接面33から突出する複数の当接ピン34が形成される。当接ピン34は断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成されるとともに、当接ピン34の頂部の半径または長径と、当接ピン34の当接面33からの高さは、燃料タンク1の外壁の肉厚よりも小さく形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクに関するものであり、特に、熱可塑性合成樹脂部材をブロー成形することにより外壁が形成され、内部に内蔵部品を有する燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用等の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
熱可塑性合成樹脂製の自動車用燃料タンクの製造は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した熱可塑性合成樹脂部材のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、自動車用燃料タンクを製造していた。
【0003】
一方、ブロー成形方法においても、燃料タンクの内部にバルブ類や燃料の流動音を抑制するためのバッフルプレート等の内蔵部品を設けることが求められている。
そこで、内蔵部品を樹脂枠にセットして、その樹脂枠を金型内にセットして、ブロー成形して樹脂枠を燃料タンクの外壁の内周面に固着して内蔵部品を燃料タンク内部に取付けるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしこの場合には、内蔵部品を樹脂枠にセットして燃料タンクの外壁の内周面に固着するため、成形後に樹脂枠を切除する手間が必要であり、小さい内蔵部品では、樹脂枠が大きくなり、重量が増加する場合がある。
【0005】
また、燃料タンクの内部に内蔵部品を設けるには、図10〜図11に示すように行っている場合もある(例えば、特許文献2参照。)。
それは、まず、図10に示すように、パリソン108がブロー成形金型140内に入る前に内蔵部品120を支持棒141に載せて、ブロー成形金型140を開いて、その内部に位置させる。その後、ブロー成形金型140を開いたままで、パリソン108を下降させて、パリソン108の内部に内蔵部品120が位置するようにする。
【0006】
その後、図11に示すように、ブロー成形金型140を閉じる前に、ブロー成形金型140の両側から押圧ピン142を出し、パリソン108を押圧して、パリソン108を内蔵部品120の側端に押付ける。このとき、パリソン108の内面はまだ固化していないので、パリソン108と内蔵部品120の側端は、融着することができる。
そして、支持棒141を下降させて、ブロー成形金型140を閉じて、空気を吹き込み、ブロー成形を行う。
【0007】
この場合は、内蔵部品120の先端に形成したパリソン108と当接する当接面133とパリソン108の内面とは単に接触するのみで、パリソン108の内部に当接面133が侵入せず、接着性が弱く、充分に融着強度が大きくなく、燃料の振動や、燃料タンクの膨張等により、剥離する恐れがあった。
【0008】
また、燃料タンクの強度を向上させるために、その上下の外壁同士を凹ませて、数箇所に亘り融着するものもある。しかし、この場合には、部分的に外壁同士を凹ませて融着するため、燃料タンクの内部容積が減少してしまうことになる。
【0009】
そのため、図12に示すように、内蔵部品の取付部材の当接面133に断面形状が三角形の複数の円弧状の突条135を形成したものがある(例えば、特許文献3参照。)。なお、突条135の間に形成されているのはエア抜き溝136である。
しかしながら、この突条135は円弧状に長く形成されているため、燃料タンクの外壁に衝撃や曲げ応力が加わる場合には、突条135が変形するのではなく、燃料タンクの外壁が変形する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1−301227号公報
【特許文献2】特開平6−143396号公報
【特許文献3】特開2009−132297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、本発明は、内蔵部品が強固に燃料タンクの外壁内面に融着することができ、燃料タンクの外壁に衝撃等が加わっても、内蔵部品の取付部材の当接面側に応力が加わり、燃料タンクの外壁を保護することができる燃料タンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
内蔵部品には、燃料タンクの外壁の内面に融着して内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられ、取付部材は、燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成され、当接部は、燃料タンクの外壁の内面に対向する当接面と、当接面から燃料タンクの外壁の内面に向けて突出する複数の当接ピンが形成され、当接ピンは断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐柱状に形成されるとともに、当接ピンの頂部の直径または長径と、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚よりも小さく形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンクである。
【0013】
請求項1の本発明では、内蔵部品には、燃料タンクの外壁の内面に融着して内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられているため、内蔵部品を複数個所で燃料タンクの外壁の内面に融着して固定することができ、安定して取り付けることができる。
取付部材は、燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成されているため、当接部が燃料タンクの外壁の内面に融着して、取付部材が固定されることができる。
【0014】
当接部は、燃料タンクの外壁の内面に対向する当接面と、当接面から燃料タンクの外壁の内面に向けて突出する複数の当接ピンが形成されている。このため、複数の当接ピンが燃料タンクの外壁の内部に侵入して、融着し、取付部材を強固に燃料タンクの外壁と固着することができる。
【0015】
当接ピンは断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成されるため、当接ピンはそれぞれ孤立して形成され連続していないので、燃料タンクの外壁と比べて強度が小さく、燃料タンクの外壁に衝撃や曲げ応力撓み等が加わっても、個々の当接ピンが破損して、破損が外壁や隣接する当接ピンに広がることがなく、外壁に影響が及ぼされることがない。当接ピンは断面形状が円形又は楕円形であるため、鋭角部分がなく、特定部分に燃料タンクの外壁の衝撃が集中することがない。
【0016】
当接ピンの頂部の直径または長径と、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚よりも小さく形成されたため、当接ピンは、燃料タンクの外壁と比べて強度が小さく、燃料タンクの外壁に衝撃や曲げ応力撓み等が加わっても、当接ピンが破損して、外壁に影響が及ぼされることがない。また、取付部材を燃料タンクの外壁に融着するときに当接ピンが外壁内部に侵入する寸法の最大値を制御することができる。
【0017】
請求項2の本発明は、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚の30〜70%である自動車用燃料タンクである。
【0018】
請求項2の本発明では、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚の30〜70%であるため、当接ピンは燃料タンクの外壁の内部に充分に進入することができ、燃料タンクの外壁の内部の溶融した部分と接触して、当接ピンの頂点部分は燃料タンクの外壁と融着しやすく、強固に融着することができる。さらに、燃料タンクの外壁の肉厚の30〜70%であるため当接ピンが外壁の内部に侵入しすぎて、強度を低下させることがない。当接ピンの当接面からの高さが30%未満では、充分な融着力を得ることができず、70%を超える場合には、当接ピンが外壁内に入りすぎて外壁の強度を低下させる恐れがある。
【0019】
請求項3の本発明は、当接ピンは、隣接する当接ピンとの間の間隔は、1〜3mmである自動車用燃料タンクである。
【0020】
請求項3の本発明では当接ピンは、隣接する当接ピンとの間の間隔は、1〜3mmであるため、当接ピンが燃料タンクの外壁の内部に充分に進入することができるとともに、当接ピンの数を多くすることができ、燃料タンクの外壁との融着強度を確保することができる。隣接する当接ピンとの間の間隔が1mm未満の場合には、当接ピンの間隔が狭すぎて当接ピンと当接ピンの間に外壁の溶融樹脂が入り込みにくく、当接ピンが燃料タンクの外壁の内部に充分に進入することができない。隣接する当接ピンとの間の間隔が3mmを超える場合には、当接ピンの間隔が広くなり、当接ピンの数が少なくなり、燃料タンクの外壁との融着強度が低下する。
【0021】
請求項4の本発明は、当接ピンは、当接面の略全面に形成された自動車用燃料タンクである。
【0022】
請求項4の本発明では、当接ピンは、当接面の略全面に形成されたため、当接ピンの数を多くすることができ、当接面の全面に融着させることができ、燃料タンクの外壁との融着強度を確保することができる。
【0023】
請求項5の本発明は、取付部材は、内蔵部品とは別体又は一体で形成された後、内蔵部品と係合された自動車用燃料タンクである。
【0024】
請求項5の本発明では、取付部材は、内蔵部品とは別体又は一体で形成された後、内蔵部品と係合された。このため、別体で形成された場合は、取付部材の成形が容易であり、取付部材の当接面の形状を自由に形成することができる。また、取付部材の材質を選択することが容易で、耐燃料油性で、燃料タンクの外壁と融着しやすい材料を選択することができる。一体で形成された場合には、一度の成形で形成できるため安価である。
【0025】
請求項6の本発明は、燃料タンクの外壁は、外壁の外側から、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層と内部本体層の5層で形成され、外部本体層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、バリヤ層はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成され、外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成された自動車用燃料タンクである。
【0026】
請求項6の本発明では、外部本体層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されたため、燃料タンクの外側は、充分な剛性と耐衝撃性を有するとともに、内部本体層に燃料が浸透しても燃料タンクの剛性を確保し、耐衝撃性を向上させることができる。
【0027】
バリヤ層はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成されるため、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下において、あるいはアルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有する。
【0028】
外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成されたため、外部接着剤層と内部接着剤層は、バリヤ層と、外部本体層及び内部本体層とをそれぞれ強固に接着して、燃料タンクの各層間を強固に接着し、一体化させて、燃料タンクの燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
【0029】
請求項7の本発明は、内蔵部品は、燃料の流動音抑制のためのバッフルプレート又は、バルブが形成された自動車用燃料タンクである。
【0030】
請求項7の本発明では、内蔵部品は、燃料の流動音抑制のためのバッフルプレート又は、バルブが形成されたため、燃料タンクをブロー成形すると同時にバッフルプレート又は、バルブを取付けて燃料の排出、燃料蒸気の排出防止、燃料の流動音抑制をすることができる燃料タンクを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
燃料タンクの内蔵部品の取付部材は、当接部を有し、当接部は、当接面と当接ピンが形成されているため、当接面が燃料タンクの外壁の内面に密着して、当接ピンの燃料タンクの外壁の内部に侵入する寸法の最大値を制御することができるともに、当接ピンが燃料タンクの外壁の内部に侵入して、強固に燃料タンクの外壁と融着することができる。
当接ピンは断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成されるため、燃料タンクの外壁に衝撃、曲げ応力や撓み等が加わっても、当接ピンが個々に衝撃を吸収し、広がることがなく、外壁に影響が及ぼされることがない。
【0032】
当接ピンの頂部の直径または長径と、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚よりも小さく形成されたため、当接ピンは、燃料タンクの外壁と比べて強度が小さく、燃料タンクの外壁に衝撃や曲げ応力撓み等が加わっても、当接ピンが破損して、外壁に影響が及ぼされることがない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態である燃料タンク斜視図である。
【図2】本発明の燃料タンクの外壁の構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明の燃料タンクの内部に取付けられる内蔵部品の斜視図である。
【図4】本発明の取付部材の平面図である。
【図5】本発明の取付部材の断面図であり、図4のA−A線に沿った断面図である。
【図6】本発明の取付部材の底面図である。
【図7】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を開いた状態の断面図である。
【図8】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型の押圧ピンをスライドさせた状態の断面図である。
【図9】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を閉じた状態の断面図である。
【図10】従来の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を閉じた状態の断面図である。
【図11】従来の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型の押圧ピンをスライドさせた状態の断面図である。
【図12】従来の取付部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態である自動車用の燃料タンク1について、図1〜図9に基づき説明する。
本発明の実施の形態では、燃料タンク1は、図1に示すように、その燃料タンク1に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするためにポンプユニット取付孔4が上面に形成されている。また、燃料タンク1の側面又は上面には、インレットパイプ(図示せず)から燃料を注入する燃料注入孔5が形成されている。
【0035】
また、燃料タンク1の周囲には外周リブ2が全周に亘り形成されており、外周リブ2のコーナー部等の所定箇所には、数箇所に亘り取付用孔3が形成され、取付用孔3と車体をボルト締めすることにより、燃料タンク1を車体に取付けている。取付用孔3ではなく、燃料タンク1の外周にベルトをかけてそのベルトにより燃料タンク1を車体に取り付けることもできる。
さらに、燃料タンク1の上面には、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する各所の取付孔6が形成されている。
【0036】
本実施の形態において、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、その外壁10は、図2に示すように、外側から順に表皮層11、外部本体層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されている。
ブロー成形においては、上記の6層から構成されるパリソンが使用される。6層以上の層構成を有するパリソンを使用することもできる。また、後述するように、表皮層11は外部本体層12に再生部材や、フィラー等を混入する場合に使用されるが、表皮層11を省略することもできる。さらに、剛性と耐燃料油性を有する材料を使用すれば、1層構成のパリソンを使用することもできる。
【0037】
表皮層11、外部本体層12は、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されることが好ましい。外部本体層12が、無機フィラーを含有した場合には、外部本体層12の表面を覆うため、表皮層11が使用され、表面に無機フィラーが出ることがなく、表面を円滑にすることができる。
【0038】
表皮層11と外部本体層12と、後述する内部本体層16に使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、例えば、具体的には以下のポリエチレンを使用することができる。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、溶融流動速度(MRF:21.6kg/10min)が5〜7であって、密度(g/cm3)が0.944〜0.950のものを使用することができる。
【0039】
外部本体層12は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材を主材として形成してもよい。高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材は、例えば、使用後に回収された燃料タンク1を粉砕してリサイクルして使用する場合や、燃料タンク1の製造工程中で発生する製造工程中で発生する切れ端や不良品を粉砕してリサイクルして使用する場合がある。燃料タンク1は、主として高密度ポリエチレン(HDPE)から構成されているため、燃料タンク1を粉砕した再生材は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主として有している。
これ等の再生材を100%使用する場合と、再生材に新材の高密度ポリエチレン(HDPE)を混合して使用する場合がある。
【0040】
バリヤ層14は、燃料油の透過が極めて少ない熱可塑性合成樹脂から形成されている。バリヤ層14を構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、半芳香族ナイロン(PPA)を使用することができるが、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
バリヤ層14を有するため、後述する内部本体層16を浸透してきたガソリン等の燃料油を、バリヤ層14で透過を防ぐことができ、大気中に燃料油が蒸発することを防止できる。
【0041】
バリヤ層14として、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を使用する場合は、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下においても、ガソリンの透過防止性に優れている。さらに、アルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有することができる。
【0042】
外部接着剤層13は、外部本体層12とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着し、内部接着剤層15は、内部本体層16とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着する。外部接着剤層13と内部接着剤層15は、同じ材料で形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層14の両方に接着性を有する合成樹脂で形成される。このため、外部接着剤層13と内部接着剤層15は、バリヤ層14と、外部本体層12及び内部本体層16とをそれぞれ強固に接着して、それぞれの層が一体的に密着して、燃料タンク1の燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
【0043】
外部接着剤層13と内部接着剤層15に使用される接着性の熱可塑性合成樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を使用することができ、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、特に不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂が好ましい。これは、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸を共重合又はグラフト重合させることにより製造することができる。
【0044】
内部本体層16は、表皮層11で述べたように、表皮層11の使用するものと同じ材料である高密度ポリエチレン(HDPE)を使用する。
内部本体層16は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの15%〜67%の厚さを有する。外壁10は全体として3mm〜8mmの肉厚を有するため、0.45mmから5.36mmの範囲の肉厚を有する。これにより、燃料タンク1の外壁10は、内部本体層16が充分な肉厚を有するため、燃料で膨潤しても剛性を保ち、耐衝撃性を確保することができる。
【0045】
燃料タンク1の内部には、例えば、図3に示す内蔵部品20が取付けられている。内蔵部品20の取付け方法については後述する。
次に、図3に基づき、内蔵部品20について説明する。内蔵部品20は、燃料タンク1の外壁の内面の上下を支える複数の柱部材21と、柱部材21を相互に連結する梁部材22を有する。
【0046】
柱部材21の燃料タンク1の外壁の内面に当接する先端部分には、取付部材30が取付けられている。本実施の形態では、取付部材30は、柱部材21の先端に柱部材21とは別体で形成されて係止されているが、柱部材21と取付部材30を一体的に形成してもよい。
取付部材30については、後述する。
【0047】
柱部材21は、燃料タンク1の内部の所定の位置に取付けられて、後述するように取付部材30が燃料タンク1の外壁の内面に融着されることにより、燃料タンク1内に取付けられて、燃料タンク1の外壁の複数の部分を保持することができる。このため、燃料タンク1の外壁の強度を増加させることができるとともに、燃料タンク1の膨張や収縮を防止できるとともに、衝撃に対しても強度を維持することができる。
【0048】
また、柱部材21は、図3の左端部に示すように、上側の取付部材30と下側の取付部材30が梁部材22の部分で若干ずれて設けられてもよい。
さらに、柱部材21の一部に燃料タンク1の外壁の収縮あるいは膨張に対応するために寸法変化防止部材23を形成することができる。
【0049】
梁部材22は、柱部材21を相互に連結して、梁部材22を燃料タンク1の外壁内面の所定の位置に取付けられるようにすることができる。梁部材22は、軽量化と剛性を確保するため、断面コ字形又は中空状に形成することができる。
また、図3に示すように、梁部材22にバッフルプレート24を一体的に形成することができる。この場合には、燃料タンク1内の燃料の波打ちを防止して、流動音抑制をすることができる。
【0050】
また、バッフルプレート24以外にも、各種のホース類と接続するバルブ類や、燃料タンク1の内部に設けられるサブタンク等を梁部材22に設けることができる。
さらに、梁部材22の一部に燃料タンク1の外壁の収縮あるいは膨張に対応するために寸法変化防止部材23を形成することができる。
【0051】
内蔵部品20は、ポリアセタール、高密度ポリエチレン(HDPE)等の耐燃料油性の熱可塑性合成樹脂で形成することができる。これにより燃料タンク1の強度を向上させることができるとともに、燃料タンク1の内部に取付けられても、燃料油による膨潤等で剛性が低下することがない。
【0052】
つぎに、取付部材30について説明する。取付部材30は、図3に示すように円筒状又は四角形の筒状に形成する場合や、平板状に形成する場合がある。
円筒状又は四角形の筒状に形成する場合について、図4〜図6に基づき説明する。図4は、取付部材30の平面図、図5は底面図、図6は取付部材の底面図である。
【0053】
取付部材30は、内蔵部品20と連結又は連続する連結部31と、燃料タンク1の外壁の内面に当接する当接部32から形成される。
本実施の形態では、取付部材30は内蔵部品10と別体で形成され、連結部31は、柱部材21の形状に合わせて円筒状に形成され、内部が中空状である。柱部材21が四角柱状の場合には、四角柱状に形成される。連結部31の下端には、係止部38が形成され、連結部31が柱部材21の先端に嵌め込まれたときに、図5と図6に示すように、係止部38の爪が柱部材21の先端部に形成された凹部又は孔に係合されて、取付部材30が強固に取付けられる。取付部材30は、燃料タンク1の外壁と融着するために、外壁の材料と同種類の材料を使用する。
【0054】
なお、取付部材30が柱部材21と一体的に形成される場合は、連結部31は柱部材21と連続して形成される。
平板状の取付部材30の場合は、連結部31はなく、当接部32の下面に設けられた突起や、接着面で直接、柱部材21の先端に係止又は接着して取付けられる。
【0055】
当接部32は、燃料タンク1の外壁の内面に対向する円形の当接面33と、当接面33から燃料タンク1の外壁に向けて突出する複数の当接ピン34が形成されている。当接ピン34は断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成される。本実施の形態では、当接ピン34は円柱状に形成されている。当接ピン34は円錐台状に形成することも、楕円柱状や断面が楕円で円錐台状に形成することもできる。
【0056】
当接ピン34はそれぞれが1本ずつ孤立して形成され連続していないため、燃料タンク1の外壁と比べて強度が小さく、燃料タンク1の外壁に衝撃や曲げ応力撓み等が加わっても、当接ピン34が破損して、外壁に影響が及ぼされることがない。また、当接ピン34の破損が隣接する当接ピン34に広がることもない。当接ピン34は断面形状が円形又は楕円形であるため、鋭角部分がなく、燃料タンク1の外壁の衝撃加わっても特定部分にその応力が集中することがないので、取付部材30を融着するときに、当接ピン34が外壁と融着したときに、燃料タンク1の外壁の強度を保持することができる。
【0057】
当接ピン34の頂部35が円形の場合は、当接ピン34の頂部35の直径と、当接ピン34の頂部35が楕円形の場合は、当接ピン34の頂部35の長径とは、燃料タンク1の外壁の肉厚よりも小さく形成されている。当接ピン34の頂部35の直径又は長径は、燃料タンク1の外壁の肉厚の30%〜70%であることが好ましい。本実施の形態では、燃料タンク1の外壁の肉厚は前述のとおり、3〜8mmであるため、0.9〜5.6mm程度である。図5に示す実施の形態では、当接ピン34の頂部35の直径は1.5mmである。
このため、当接ピン34は、燃料タンク1の外壁と比べて強度が小さく、燃料タンク1の外壁に衝撃や曲げ応力、撓み等が加わっても、当接ピン34の側に亀裂が生じて、破損するため、外壁に影響が及ぼされることがない。
【0058】
さらに、当接ピン34の当接面33からの高さは、燃料タンク1の外壁の肉厚よりも小さく形成されている。このため、当接面33が燃料タンク1の外壁の内面に密着して、当接ピン34が燃料タンク1の外壁の内部に侵入する寸法の最大値を制御することができるともに、当接ピン34が燃料タンク1の外壁の内部に侵入して、強固に燃料タンクの外壁と融着することができる。
【0059】
当接ピン34の当接面33からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚の30%〜70%であることが好ましい。本実施の形態では、燃料タンク1の外壁の肉厚が3mm〜8mm程度であり、従って、当接ピン34の高さは1.5mm〜5mm程度である。図5に示す実施の形態では、当接ピン34の当接面33からの高さは、1.5mmである。
【0060】
このため、燃料タンク1の外壁に当接面33を押圧するときに、当接ピン34は、燃料タンク1の外壁の内部に充分に進入することができ、燃料タンク1の外壁の内部の溶融した部分と接触して、当接ピン34の頂部35は燃料タンク1の外壁と融着することができる。したがって、燃料タンク1の外壁と当接部32は、強固に融着することができる。さらに、当接ピン34の高さは、燃料タンク1の外壁の肉厚の30%〜70%であるため当接ピン34が外壁に食い込みすぎることがなく、外壁の強度を低下させることがない。
【0061】
本実施の形態では、当接ピン34は、隣接する当接ピン34との間の間隔は、1〜3mmに形成されている。このため、取付部材30を燃料タンク1の外壁に融着するときに、当接ピン34と当接ピン34の間に、溶融した外壁の内面が侵入することができ、当接ピン34が燃料タンク1の外壁の内部に充分に進入することができる間隔を有している。さらに、隣接する当接ピン34との間の間隔が広すぎないため、当接ピン34の数を多くすることができ、燃料タンク1の外壁との融着強度を確保することができる。
【0062】
この場合は、当接部32を燃料タンク1の外壁内面に押し当てると、当接ピン34がパリソン8である燃料タンク1の外壁に侵入し、当接ピン34と当接ピン34の間に溶融した燃料タンク1の外壁が入り込むことができ、燃料タンク1の外壁と当接面33が強固に固定されることができる。
【0063】
隣接する当接ピン34との間の間隔が1mm未満の場合には、当接ピン34の間隔が狭すぎて当接ピン34が燃料タンク1の外壁の内部に充分に進入することができない。隣接する当接ピン34との間の間隔が3mmを超える場合には、当接ピン34の間隔が広くなり、当接面33状に形成される当接ピン34の数が少なくなり、燃料タンク1の外壁との融着強度が低下する。
【0064】
本実施の形態では、図4に示すように、当接ピン34は、当接面33の略全面に形成されている。このため、当接面33に当接ピン34の数を多く形成することができ、当接面33の全面に燃料タンク1の外壁を融着させることができ、燃料タンク1の外壁との融着強度を確保することができる。
【0065】
また、当接面33から円錐台状に当接ピン34を形成することができる。この場合は、当接ピン34の頂上の部分は断面積が小さくなるので、燃料タンク1の外壁と当接ピン34を融着するときに、当接ピン34の頂点が外壁の内部に侵入したときに、溶融した外壁が当接ピン34と当接ピン34の間に入り易く、外壁と当接ピン34がなじみ易く、強固に融着することができる。また、当接ピン34は、円錐台状であるため、外壁に侵入すると、当接ピン34と当接ピン34の間の溶融樹脂が妨げとなり、当接ピン34が外壁内に大きく進入することを防止できる。
【0066】
次に、ブロー成形による本件発明の燃料タンク1の製造方法を、図7〜図9に基づき説明する。
まず、図7に示すように、内蔵部品20を支持棒41に保持して、ブロー成形金型40が開いた内部に位置させる。その後、パリソン8を下降させて、内蔵部品20をパリソン8の内部に位置させる。
【0067】
そして、図8に示すように、第1ピンチ板43をスライドさせて、パリソン8の下端を支持棒41とともに挟持する。それとともに、ブロー成形金型40に設けられた複数の押圧ピン42をスライドさせて、パリソン8を内蔵部品20に取付けられた取付部材30と押圧ピン42で挟むように押圧する。
【0068】
そうすると、パリソン8の内面はまだ溶融状態にあるため、上述のように、取付部材30の当接部32の当接ピン34がパリソン8の内面に進入し、当接部32とパリソン8が融着することができる。このとき、内蔵部品20は、支持棒41により保持されているので、取付部材30と内蔵部品20は、燃料タンク1の外壁の所定の位置に確実に取付けられることができる。
【0069】
その後、図9に示すように、支持棒41を下降させてブロー成形金型40から抜き、第2ピンチ板44をスライドさせてパリソン8を閉じるとともに、ブロー成形金型40を閉じて、スライドカッター46でパリソン8を切断する。ブロー成形金型40を閉じるときには、押圧ピン42は、そのままパリソン8を押圧続ける。これにより、内蔵部品20を所定位置に保持し続けることができる。
【0070】
そして、エアノズル45からパリソン8の内部に空気を吹き込み、パリソン8の外面をブロー成形金型40に押圧して、燃料タンク1を形成する。このとき、押圧ピン42の先端面とブロー成形金型40のキャビティー内面とは同一平面になることができる。
その後、ブロー成形金型40を開き、燃料タンク1を取出す。
【符号の説明】
【0071】
1 燃料タンク
8 パリソン
10 外壁
20 内蔵部品
30 取付部材
31 連結部
32 当接部
33 当接面
34 当接ピン
40 ブロー成形金型
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクに関するものであり、特に、熱可塑性合成樹脂部材をブロー成形することにより外壁が形成され、内部に内蔵部品を有する燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用等の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
熱可塑性合成樹脂製の自動車用燃料タンクの製造は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した熱可塑性合成樹脂部材のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、自動車用燃料タンクを製造していた。
【0003】
一方、ブロー成形方法においても、燃料タンクの内部にバルブ類や燃料の流動音を抑制するためのバッフルプレート等の内蔵部品を設けることが求められている。
そこで、内蔵部品を樹脂枠にセットして、その樹脂枠を金型内にセットして、ブロー成形して樹脂枠を燃料タンクの外壁の内周面に固着して内蔵部品を燃料タンク内部に取付けるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしこの場合には、内蔵部品を樹脂枠にセットして燃料タンクの外壁の内周面に固着するため、成形後に樹脂枠を切除する手間が必要であり、小さい内蔵部品では、樹脂枠が大きくなり、重量が増加する場合がある。
【0005】
また、燃料タンクの内部に内蔵部品を設けるには、図10〜図11に示すように行っている場合もある(例えば、特許文献2参照。)。
それは、まず、図10に示すように、パリソン108がブロー成形金型140内に入る前に内蔵部品120を支持棒141に載せて、ブロー成形金型140を開いて、その内部に位置させる。その後、ブロー成形金型140を開いたままで、パリソン108を下降させて、パリソン108の内部に内蔵部品120が位置するようにする。
【0006】
その後、図11に示すように、ブロー成形金型140を閉じる前に、ブロー成形金型140の両側から押圧ピン142を出し、パリソン108を押圧して、パリソン108を内蔵部品120の側端に押付ける。このとき、パリソン108の内面はまだ固化していないので、パリソン108と内蔵部品120の側端は、融着することができる。
そして、支持棒141を下降させて、ブロー成形金型140を閉じて、空気を吹き込み、ブロー成形を行う。
【0007】
この場合は、内蔵部品120の先端に形成したパリソン108と当接する当接面133とパリソン108の内面とは単に接触するのみで、パリソン108の内部に当接面133が侵入せず、接着性が弱く、充分に融着強度が大きくなく、燃料の振動や、燃料タンクの膨張等により、剥離する恐れがあった。
【0008】
また、燃料タンクの強度を向上させるために、その上下の外壁同士を凹ませて、数箇所に亘り融着するものもある。しかし、この場合には、部分的に外壁同士を凹ませて融着するため、燃料タンクの内部容積が減少してしまうことになる。
【0009】
そのため、図12に示すように、内蔵部品の取付部材の当接面133に断面形状が三角形の複数の円弧状の突条135を形成したものがある(例えば、特許文献3参照。)。なお、突条135の間に形成されているのはエア抜き溝136である。
しかしながら、この突条135は円弧状に長く形成されているため、燃料タンクの外壁に衝撃や曲げ応力が加わる場合には、突条135が変形するのではなく、燃料タンクの外壁が変形する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1−301227号公報
【特許文献2】特開平6−143396号公報
【特許文献3】特開2009−132297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、本発明は、内蔵部品が強固に燃料タンクの外壁内面に融着することができ、燃料タンクの外壁に衝撃等が加わっても、内蔵部品の取付部材の当接面側に応力が加わり、燃料タンクの外壁を保護することができる燃料タンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
内蔵部品には、燃料タンクの外壁の内面に融着して内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられ、取付部材は、燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成され、当接部は、燃料タンクの外壁の内面に対向する当接面と、当接面から燃料タンクの外壁の内面に向けて突出する複数の当接ピンが形成され、当接ピンは断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐柱状に形成されるとともに、当接ピンの頂部の直径または長径と、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚よりも小さく形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンクである。
【0013】
請求項1の本発明では、内蔵部品には、燃料タンクの外壁の内面に融着して内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられているため、内蔵部品を複数個所で燃料タンクの外壁の内面に融着して固定することができ、安定して取り付けることができる。
取付部材は、燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成されているため、当接部が燃料タンクの外壁の内面に融着して、取付部材が固定されることができる。
【0014】
当接部は、燃料タンクの外壁の内面に対向する当接面と、当接面から燃料タンクの外壁の内面に向けて突出する複数の当接ピンが形成されている。このため、複数の当接ピンが燃料タンクの外壁の内部に侵入して、融着し、取付部材を強固に燃料タンクの外壁と固着することができる。
【0015】
当接ピンは断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成されるため、当接ピンはそれぞれ孤立して形成され連続していないので、燃料タンクの外壁と比べて強度が小さく、燃料タンクの外壁に衝撃や曲げ応力撓み等が加わっても、個々の当接ピンが破損して、破損が外壁や隣接する当接ピンに広がることがなく、外壁に影響が及ぼされることがない。当接ピンは断面形状が円形又は楕円形であるため、鋭角部分がなく、特定部分に燃料タンクの外壁の衝撃が集中することがない。
【0016】
当接ピンの頂部の直径または長径と、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚よりも小さく形成されたため、当接ピンは、燃料タンクの外壁と比べて強度が小さく、燃料タンクの外壁に衝撃や曲げ応力撓み等が加わっても、当接ピンが破損して、外壁に影響が及ぼされることがない。また、取付部材を燃料タンクの外壁に融着するときに当接ピンが外壁内部に侵入する寸法の最大値を制御することができる。
【0017】
請求項2の本発明は、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚の30〜70%である自動車用燃料タンクである。
【0018】
請求項2の本発明では、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚の30〜70%であるため、当接ピンは燃料タンクの外壁の内部に充分に進入することができ、燃料タンクの外壁の内部の溶融した部分と接触して、当接ピンの頂点部分は燃料タンクの外壁と融着しやすく、強固に融着することができる。さらに、燃料タンクの外壁の肉厚の30〜70%であるため当接ピンが外壁の内部に侵入しすぎて、強度を低下させることがない。当接ピンの当接面からの高さが30%未満では、充分な融着力を得ることができず、70%を超える場合には、当接ピンが外壁内に入りすぎて外壁の強度を低下させる恐れがある。
【0019】
請求項3の本発明は、当接ピンは、隣接する当接ピンとの間の間隔は、1〜3mmである自動車用燃料タンクである。
【0020】
請求項3の本発明では当接ピンは、隣接する当接ピンとの間の間隔は、1〜3mmであるため、当接ピンが燃料タンクの外壁の内部に充分に進入することができるとともに、当接ピンの数を多くすることができ、燃料タンクの外壁との融着強度を確保することができる。隣接する当接ピンとの間の間隔が1mm未満の場合には、当接ピンの間隔が狭すぎて当接ピンと当接ピンの間に外壁の溶融樹脂が入り込みにくく、当接ピンが燃料タンクの外壁の内部に充分に進入することができない。隣接する当接ピンとの間の間隔が3mmを超える場合には、当接ピンの間隔が広くなり、当接ピンの数が少なくなり、燃料タンクの外壁との融着強度が低下する。
【0021】
請求項4の本発明は、当接ピンは、当接面の略全面に形成された自動車用燃料タンクである。
【0022】
請求項4の本発明では、当接ピンは、当接面の略全面に形成されたため、当接ピンの数を多くすることができ、当接面の全面に融着させることができ、燃料タンクの外壁との融着強度を確保することができる。
【0023】
請求項5の本発明は、取付部材は、内蔵部品とは別体又は一体で形成された後、内蔵部品と係合された自動車用燃料タンクである。
【0024】
請求項5の本発明では、取付部材は、内蔵部品とは別体又は一体で形成された後、内蔵部品と係合された。このため、別体で形成された場合は、取付部材の成形が容易であり、取付部材の当接面の形状を自由に形成することができる。また、取付部材の材質を選択することが容易で、耐燃料油性で、燃料タンクの外壁と融着しやすい材料を選択することができる。一体で形成された場合には、一度の成形で形成できるため安価である。
【0025】
請求項6の本発明は、燃料タンクの外壁は、外壁の外側から、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層と内部本体層の5層で形成され、外部本体層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、バリヤ層はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成され、外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成された自動車用燃料タンクである。
【0026】
請求項6の本発明では、外部本体層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されたため、燃料タンクの外側は、充分な剛性と耐衝撃性を有するとともに、内部本体層に燃料が浸透しても燃料タンクの剛性を確保し、耐衝撃性を向上させることができる。
【0027】
バリヤ層はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成されるため、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下において、あるいはアルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有する。
【0028】
外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成されたため、外部接着剤層と内部接着剤層は、バリヤ層と、外部本体層及び内部本体層とをそれぞれ強固に接着して、燃料タンクの各層間を強固に接着し、一体化させて、燃料タンクの燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
【0029】
請求項7の本発明は、内蔵部品は、燃料の流動音抑制のためのバッフルプレート又は、バルブが形成された自動車用燃料タンクである。
【0030】
請求項7の本発明では、内蔵部品は、燃料の流動音抑制のためのバッフルプレート又は、バルブが形成されたため、燃料タンクをブロー成形すると同時にバッフルプレート又は、バルブを取付けて燃料の排出、燃料蒸気の排出防止、燃料の流動音抑制をすることができる燃料タンクを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
燃料タンクの内蔵部品の取付部材は、当接部を有し、当接部は、当接面と当接ピンが形成されているため、当接面が燃料タンクの外壁の内面に密着して、当接ピンの燃料タンクの外壁の内部に侵入する寸法の最大値を制御することができるともに、当接ピンが燃料タンクの外壁の内部に侵入して、強固に燃料タンクの外壁と融着することができる。
当接ピンは断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成されるため、燃料タンクの外壁に衝撃、曲げ応力や撓み等が加わっても、当接ピンが個々に衝撃を吸収し、広がることがなく、外壁に影響が及ぼされることがない。
【0032】
当接ピンの頂部の直径または長径と、当接ピンの当接面からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚よりも小さく形成されたため、当接ピンは、燃料タンクの外壁と比べて強度が小さく、燃料タンクの外壁に衝撃や曲げ応力撓み等が加わっても、当接ピンが破損して、外壁に影響が及ぼされることがない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態である燃料タンク斜視図である。
【図2】本発明の燃料タンクの外壁の構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明の燃料タンクの内部に取付けられる内蔵部品の斜視図である。
【図4】本発明の取付部材の平面図である。
【図5】本発明の取付部材の断面図であり、図4のA−A線に沿った断面図である。
【図6】本発明の取付部材の底面図である。
【図7】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を開いた状態の断面図である。
【図8】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型の押圧ピンをスライドさせた状態の断面図である。
【図9】本発明の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を閉じた状態の断面図である。
【図10】従来の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型を閉じた状態の断面図である。
【図11】従来の燃料タンク製造方法を示すブロー成形金型の押圧ピンをスライドさせた状態の断面図である。
【図12】従来の取付部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態である自動車用の燃料タンク1について、図1〜図9に基づき説明する。
本発明の実施の形態では、燃料タンク1は、図1に示すように、その燃料タンク1に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするためにポンプユニット取付孔4が上面に形成されている。また、燃料タンク1の側面又は上面には、インレットパイプ(図示せず)から燃料を注入する燃料注入孔5が形成されている。
【0035】
また、燃料タンク1の周囲には外周リブ2が全周に亘り形成されており、外周リブ2のコーナー部等の所定箇所には、数箇所に亘り取付用孔3が形成され、取付用孔3と車体をボルト締めすることにより、燃料タンク1を車体に取付けている。取付用孔3ではなく、燃料タンク1の外周にベルトをかけてそのベルトにより燃料タンク1を車体に取り付けることもできる。
さらに、燃料タンク1の上面には、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する各所の取付孔6が形成されている。
【0036】
本実施の形態において、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、その外壁10は、図2に示すように、外側から順に表皮層11、外部本体層12、外部接着剤層13、バリヤ層14、内部接着剤層15及び内部本体層16から形成されている。
ブロー成形においては、上記の6層から構成されるパリソンが使用される。6層以上の層構成を有するパリソンを使用することもできる。また、後述するように、表皮層11は外部本体層12に再生部材や、フィラー等を混入する場合に使用されるが、表皮層11を省略することもできる。さらに、剛性と耐燃料油性を有する材料を使用すれば、1層構成のパリソンを使用することもできる。
【0037】
表皮層11、外部本体層12は、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されることが好ましい。外部本体層12が、無機フィラーを含有した場合には、外部本体層12の表面を覆うため、表皮層11が使用され、表面に無機フィラーが出ることがなく、表面を円滑にすることができる。
【0038】
表皮層11と外部本体層12と、後述する内部本体層16に使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、例えば、具体的には以下のポリエチレンを使用することができる。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、溶融流動速度(MRF:21.6kg/10min)が5〜7であって、密度(g/cm3)が0.944〜0.950のものを使用することができる。
【0039】
外部本体層12は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材を主材として形成してもよい。高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材は、例えば、使用後に回収された燃料タンク1を粉砕してリサイクルして使用する場合や、燃料タンク1の製造工程中で発生する製造工程中で発生する切れ端や不良品を粉砕してリサイクルして使用する場合がある。燃料タンク1は、主として高密度ポリエチレン(HDPE)から構成されているため、燃料タンク1を粉砕した再生材は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主として有している。
これ等の再生材を100%使用する場合と、再生材に新材の高密度ポリエチレン(HDPE)を混合して使用する場合がある。
【0040】
バリヤ層14は、燃料油の透過が極めて少ない熱可塑性合成樹脂から形成されている。バリヤ層14を構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、半芳香族ナイロン(PPA)を使用することができるが、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
バリヤ層14を有するため、後述する内部本体層16を浸透してきたガソリン等の燃料油を、バリヤ層14で透過を防ぐことができ、大気中に燃料油が蒸発することを防止できる。
【0041】
バリヤ層14として、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を使用する場合は、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下においても、ガソリンの透過防止性に優れている。さらに、アルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有することができる。
【0042】
外部接着剤層13は、外部本体層12とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着し、内部接着剤層15は、内部本体層16とバリヤ層14の間に設けられて、この2層を接着する。外部接着剤層13と内部接着剤層15は、同じ材料で形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層14の両方に接着性を有する合成樹脂で形成される。このため、外部接着剤層13と内部接着剤層15は、バリヤ層14と、外部本体層12及び内部本体層16とをそれぞれ強固に接着して、それぞれの層が一体的に密着して、燃料タンク1の燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
【0043】
外部接着剤層13と内部接着剤層15に使用される接着性の熱可塑性合成樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を使用することができ、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、特に不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂が好ましい。これは、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸を共重合又はグラフト重合させることにより製造することができる。
【0044】
内部本体層16は、表皮層11で述べたように、表皮層11の使用するものと同じ材料である高密度ポリエチレン(HDPE)を使用する。
内部本体層16は、燃料タンク1の外壁10の全体の厚さの15%〜67%の厚さを有する。外壁10は全体として3mm〜8mmの肉厚を有するため、0.45mmから5.36mmの範囲の肉厚を有する。これにより、燃料タンク1の外壁10は、内部本体層16が充分な肉厚を有するため、燃料で膨潤しても剛性を保ち、耐衝撃性を確保することができる。
【0045】
燃料タンク1の内部には、例えば、図3に示す内蔵部品20が取付けられている。内蔵部品20の取付け方法については後述する。
次に、図3に基づき、内蔵部品20について説明する。内蔵部品20は、燃料タンク1の外壁の内面の上下を支える複数の柱部材21と、柱部材21を相互に連結する梁部材22を有する。
【0046】
柱部材21の燃料タンク1の外壁の内面に当接する先端部分には、取付部材30が取付けられている。本実施の形態では、取付部材30は、柱部材21の先端に柱部材21とは別体で形成されて係止されているが、柱部材21と取付部材30を一体的に形成してもよい。
取付部材30については、後述する。
【0047】
柱部材21は、燃料タンク1の内部の所定の位置に取付けられて、後述するように取付部材30が燃料タンク1の外壁の内面に融着されることにより、燃料タンク1内に取付けられて、燃料タンク1の外壁の複数の部分を保持することができる。このため、燃料タンク1の外壁の強度を増加させることができるとともに、燃料タンク1の膨張や収縮を防止できるとともに、衝撃に対しても強度を維持することができる。
【0048】
また、柱部材21は、図3の左端部に示すように、上側の取付部材30と下側の取付部材30が梁部材22の部分で若干ずれて設けられてもよい。
さらに、柱部材21の一部に燃料タンク1の外壁の収縮あるいは膨張に対応するために寸法変化防止部材23を形成することができる。
【0049】
梁部材22は、柱部材21を相互に連結して、梁部材22を燃料タンク1の外壁内面の所定の位置に取付けられるようにすることができる。梁部材22は、軽量化と剛性を確保するため、断面コ字形又は中空状に形成することができる。
また、図3に示すように、梁部材22にバッフルプレート24を一体的に形成することができる。この場合には、燃料タンク1内の燃料の波打ちを防止して、流動音抑制をすることができる。
【0050】
また、バッフルプレート24以外にも、各種のホース類と接続するバルブ類や、燃料タンク1の内部に設けられるサブタンク等を梁部材22に設けることができる。
さらに、梁部材22の一部に燃料タンク1の外壁の収縮あるいは膨張に対応するために寸法変化防止部材23を形成することができる。
【0051】
内蔵部品20は、ポリアセタール、高密度ポリエチレン(HDPE)等の耐燃料油性の熱可塑性合成樹脂で形成することができる。これにより燃料タンク1の強度を向上させることができるとともに、燃料タンク1の内部に取付けられても、燃料油による膨潤等で剛性が低下することがない。
【0052】
つぎに、取付部材30について説明する。取付部材30は、図3に示すように円筒状又は四角形の筒状に形成する場合や、平板状に形成する場合がある。
円筒状又は四角形の筒状に形成する場合について、図4〜図6に基づき説明する。図4は、取付部材30の平面図、図5は底面図、図6は取付部材の底面図である。
【0053】
取付部材30は、内蔵部品20と連結又は連続する連結部31と、燃料タンク1の外壁の内面に当接する当接部32から形成される。
本実施の形態では、取付部材30は内蔵部品10と別体で形成され、連結部31は、柱部材21の形状に合わせて円筒状に形成され、内部が中空状である。柱部材21が四角柱状の場合には、四角柱状に形成される。連結部31の下端には、係止部38が形成され、連結部31が柱部材21の先端に嵌め込まれたときに、図5と図6に示すように、係止部38の爪が柱部材21の先端部に形成された凹部又は孔に係合されて、取付部材30が強固に取付けられる。取付部材30は、燃料タンク1の外壁と融着するために、外壁の材料と同種類の材料を使用する。
【0054】
なお、取付部材30が柱部材21と一体的に形成される場合は、連結部31は柱部材21と連続して形成される。
平板状の取付部材30の場合は、連結部31はなく、当接部32の下面に設けられた突起や、接着面で直接、柱部材21の先端に係止又は接着して取付けられる。
【0055】
当接部32は、燃料タンク1の外壁の内面に対向する円形の当接面33と、当接面33から燃料タンク1の外壁に向けて突出する複数の当接ピン34が形成されている。当接ピン34は断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成される。本実施の形態では、当接ピン34は円柱状に形成されている。当接ピン34は円錐台状に形成することも、楕円柱状や断面が楕円で円錐台状に形成することもできる。
【0056】
当接ピン34はそれぞれが1本ずつ孤立して形成され連続していないため、燃料タンク1の外壁と比べて強度が小さく、燃料タンク1の外壁に衝撃や曲げ応力撓み等が加わっても、当接ピン34が破損して、外壁に影響が及ぼされることがない。また、当接ピン34の破損が隣接する当接ピン34に広がることもない。当接ピン34は断面形状が円形又は楕円形であるため、鋭角部分がなく、燃料タンク1の外壁の衝撃加わっても特定部分にその応力が集中することがないので、取付部材30を融着するときに、当接ピン34が外壁と融着したときに、燃料タンク1の外壁の強度を保持することができる。
【0057】
当接ピン34の頂部35が円形の場合は、当接ピン34の頂部35の直径と、当接ピン34の頂部35が楕円形の場合は、当接ピン34の頂部35の長径とは、燃料タンク1の外壁の肉厚よりも小さく形成されている。当接ピン34の頂部35の直径又は長径は、燃料タンク1の外壁の肉厚の30%〜70%であることが好ましい。本実施の形態では、燃料タンク1の外壁の肉厚は前述のとおり、3〜8mmであるため、0.9〜5.6mm程度である。図5に示す実施の形態では、当接ピン34の頂部35の直径は1.5mmである。
このため、当接ピン34は、燃料タンク1の外壁と比べて強度が小さく、燃料タンク1の外壁に衝撃や曲げ応力、撓み等が加わっても、当接ピン34の側に亀裂が生じて、破損するため、外壁に影響が及ぼされることがない。
【0058】
さらに、当接ピン34の当接面33からの高さは、燃料タンク1の外壁の肉厚よりも小さく形成されている。このため、当接面33が燃料タンク1の外壁の内面に密着して、当接ピン34が燃料タンク1の外壁の内部に侵入する寸法の最大値を制御することができるともに、当接ピン34が燃料タンク1の外壁の内部に侵入して、強固に燃料タンクの外壁と融着することができる。
【0059】
当接ピン34の当接面33からの高さは、燃料タンクの外壁の肉厚の30%〜70%であることが好ましい。本実施の形態では、燃料タンク1の外壁の肉厚が3mm〜8mm程度であり、従って、当接ピン34の高さは1.5mm〜5mm程度である。図5に示す実施の形態では、当接ピン34の当接面33からの高さは、1.5mmである。
【0060】
このため、燃料タンク1の外壁に当接面33を押圧するときに、当接ピン34は、燃料タンク1の外壁の内部に充分に進入することができ、燃料タンク1の外壁の内部の溶融した部分と接触して、当接ピン34の頂部35は燃料タンク1の外壁と融着することができる。したがって、燃料タンク1の外壁と当接部32は、強固に融着することができる。さらに、当接ピン34の高さは、燃料タンク1の外壁の肉厚の30%〜70%であるため当接ピン34が外壁に食い込みすぎることがなく、外壁の強度を低下させることがない。
【0061】
本実施の形態では、当接ピン34は、隣接する当接ピン34との間の間隔は、1〜3mmに形成されている。このため、取付部材30を燃料タンク1の外壁に融着するときに、当接ピン34と当接ピン34の間に、溶融した外壁の内面が侵入することができ、当接ピン34が燃料タンク1の外壁の内部に充分に進入することができる間隔を有している。さらに、隣接する当接ピン34との間の間隔が広すぎないため、当接ピン34の数を多くすることができ、燃料タンク1の外壁との融着強度を確保することができる。
【0062】
この場合は、当接部32を燃料タンク1の外壁内面に押し当てると、当接ピン34がパリソン8である燃料タンク1の外壁に侵入し、当接ピン34と当接ピン34の間に溶融した燃料タンク1の外壁が入り込むことができ、燃料タンク1の外壁と当接面33が強固に固定されることができる。
【0063】
隣接する当接ピン34との間の間隔が1mm未満の場合には、当接ピン34の間隔が狭すぎて当接ピン34が燃料タンク1の外壁の内部に充分に進入することができない。隣接する当接ピン34との間の間隔が3mmを超える場合には、当接ピン34の間隔が広くなり、当接面33状に形成される当接ピン34の数が少なくなり、燃料タンク1の外壁との融着強度が低下する。
【0064】
本実施の形態では、図4に示すように、当接ピン34は、当接面33の略全面に形成されている。このため、当接面33に当接ピン34の数を多く形成することができ、当接面33の全面に燃料タンク1の外壁を融着させることができ、燃料タンク1の外壁との融着強度を確保することができる。
【0065】
また、当接面33から円錐台状に当接ピン34を形成することができる。この場合は、当接ピン34の頂上の部分は断面積が小さくなるので、燃料タンク1の外壁と当接ピン34を融着するときに、当接ピン34の頂点が外壁の内部に侵入したときに、溶融した外壁が当接ピン34と当接ピン34の間に入り易く、外壁と当接ピン34がなじみ易く、強固に融着することができる。また、当接ピン34は、円錐台状であるため、外壁に侵入すると、当接ピン34と当接ピン34の間の溶融樹脂が妨げとなり、当接ピン34が外壁内に大きく進入することを防止できる。
【0066】
次に、ブロー成形による本件発明の燃料タンク1の製造方法を、図7〜図9に基づき説明する。
まず、図7に示すように、内蔵部品20を支持棒41に保持して、ブロー成形金型40が開いた内部に位置させる。その後、パリソン8を下降させて、内蔵部品20をパリソン8の内部に位置させる。
【0067】
そして、図8に示すように、第1ピンチ板43をスライドさせて、パリソン8の下端を支持棒41とともに挟持する。それとともに、ブロー成形金型40に設けられた複数の押圧ピン42をスライドさせて、パリソン8を内蔵部品20に取付けられた取付部材30と押圧ピン42で挟むように押圧する。
【0068】
そうすると、パリソン8の内面はまだ溶融状態にあるため、上述のように、取付部材30の当接部32の当接ピン34がパリソン8の内面に進入し、当接部32とパリソン8が融着することができる。このとき、内蔵部品20は、支持棒41により保持されているので、取付部材30と内蔵部品20は、燃料タンク1の外壁の所定の位置に確実に取付けられることができる。
【0069】
その後、図9に示すように、支持棒41を下降させてブロー成形金型40から抜き、第2ピンチ板44をスライドさせてパリソン8を閉じるとともに、ブロー成形金型40を閉じて、スライドカッター46でパリソン8を切断する。ブロー成形金型40を閉じるときには、押圧ピン42は、そのままパリソン8を押圧続ける。これにより、内蔵部品20を所定位置に保持し続けることができる。
【0070】
そして、エアノズル45からパリソン8の内部に空気を吹き込み、パリソン8の外面をブロー成形金型40に押圧して、燃料タンク1を形成する。このとき、押圧ピン42の先端面とブロー成形金型40のキャビティー内面とは同一平面になることができる。
その後、ブロー成形金型40を開き、燃料タンク1を取出す。
【符号の説明】
【0071】
1 燃料タンク
8 パリソン
10 外壁
20 内蔵部品
30 取付部材
31 連結部
32 当接部
33 当接面
34 当接ピン
40 ブロー成形金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
上記内蔵部品には、上記燃料タンクの外壁の内面に融着して上記内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられ、該取付部材は、上記燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成され、該当接部は、上記燃料タンクの外壁の内面に対向する当接面と、該当接面から上記燃料タンクの外壁の内面に向けて突出する複数の当接ピンが形成され、該当接ピンは断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成されるとともに、上記当接ピンの頂部の直径または長径と、上記当接ピンの上記当接面からの高さは、上記燃料タンクの外壁の肉厚よりも小さく形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンク。
【請求項2】
上記当接ピンの上記当接面からの高さは、上記燃料タンクの外壁の肉厚の30〜70%である請求項1に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項3】
上記当接ピンは、隣接する上記当接ピンとの間の間隔は、1〜3mmである請求項1又は請求項2に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項4】
上記当接ピンは、上記当接面の略全面に形成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項5】
上記取付部材は、上記内蔵部品とは別体又は一体で形成された後、上記内蔵部品と係合された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項6】
上記燃料タンクの外壁は、外壁の外側から、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層と内部本体層の5層で形成され、上記外部本体層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、上記バリヤ層はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成され、上記外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項7】
上記内蔵部品は、燃料の流動音抑制のためのバッフルプレート又は、バルブが形成された請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項1】
ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
上記内蔵部品には、上記燃料タンクの外壁の内面に融着して上記内蔵部品を取付ける取付部材が複数設けられ、該取付部材は、上記燃料タンクの外壁の内面に当接する当接部が形成され、該当接部は、上記燃料タンクの外壁の内面に対向する当接面と、該当接面から上記燃料タンクの外壁の内面に向けて突出する複数の当接ピンが形成され、該当接ピンは断面形状が円形又は楕円形の円柱状又は円錐台状に形成されるとともに、上記当接ピンの頂部の直径または長径と、上記当接ピンの上記当接面からの高さは、上記燃料タンクの外壁の肉厚よりも小さく形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンク。
【請求項2】
上記当接ピンの上記当接面からの高さは、上記燃料タンクの外壁の肉厚の30〜70%である請求項1に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項3】
上記当接ピンは、隣接する上記当接ピンとの間の間隔は、1〜3mmである請求項1又は請求項2に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項4】
上記当接ピンは、上記当接面の略全面に形成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項5】
上記取付部材は、上記内蔵部品とは別体又は一体で形成された後、上記内蔵部品と係合された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項6】
上記燃料タンクの外壁は、外壁の外側から、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層と内部本体層の5層で形成され、上記外部本体層と内部本体層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、上記バリヤ層はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成され、上記外部接着剤層と内部接着剤層は、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層の両方に接着性を有する合成樹脂で形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項7】
上記内蔵部品は、燃料の流動音抑制のためのバッフルプレート又は、バルブが形成された請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−189887(P2011−189887A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59419(P2010−59419)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(308039414)株式会社FTS (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(308039414)株式会社FTS (60)
【Fターム(参考)】
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