説明

自動車車体のピラー構造

【課題】補強部材のプレス成形性の向上と共に、部品点数を少なくしても、側部衝突時の乗員の安全保護を充分果たすことができる。
【解決手段】補強部材5を、分割構成されたルーフサイドレール側補強パネル6及びサイドシル側補強パネル7の一端同士を連結した上で、ルーフサイドレール側補強パネル6の他端を連結用補強パネル9を介在させてルーフサイドレール11に連結し、サイドシル側補強パネル7の他端をサイドシル12側に連結し、ルーフサイドレール側補強パネル6に、サイドシル側補強パネル7側に張出フランジ部6bが切除されて延在する一方の補強用延在部6cが形成され、サイドシル側補強パネル7には、ルーフサイドレール側補強パネル6側に張出フランジ部7bが切除さて延在する他方の補強用延在部7cが形成されて、これら両補強用延在部同士を互いに重合結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車における車体側部骨格を構成する自動車車体のピラー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車車体のピラー構造は、車体側部骨格を構成すべく、ルーフサイドレールとサイドシルとの間にピラー本体を橋渡すことによって構成しており、かかるピラー本体は、車外側に配設されるアウターパネルと車室側に配設されるインナーパネル同士を重合することにより構成している。
【0003】
そして、かかるピラー構造、例えば車室側部中央に配置されるセンターピラー構造は、自動車が側面衝突を受けたことによってピラー本体が着座状態の乗員の胸部或いは腹部に対向する部位において局所的に変形するのを防止するために、アウターパネルとインナーパネルとが形成する内部空間内に補強部材を配置して構成するようになっている。
【0004】
このように補強部材を配置した従来のピラー構造として、図13に記載されたものが知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−18254号公報。
【0006】
図13によれば、従来のピラー構造としてのセンターピラーaは、不図示のサイドシル(ロッカ)からルーフサイドレールに延在するアウターパネルbとインナーパネルcとを互いに接合することによって構成している。
【0007】
アウターパネルb及びインナーパネルcによって形成される内部空間には、補強部材としてのアウターリインホースメントd、ロア側のヒンジリインホースメントr及びアッパー側のヒンジリインホースメントsが配置されている。
【0008】
アウターリインホースメントdは、レーザー溶接分割線fを介して高張力鋼板を継ぎ合わすことによって形成されており、 その下端部はサイドシルに接続され、その上端部はルーフサイドレールに接続されている。
【0009】
アウターリインホースメントdにおけるレーザー溶接分割線fより上側を構成する高張力鋼板は、例えば板厚を厚くする或いは材質強度を上げるなどして、レーザー溶接分割線fより下側の高張力鋼板より強度的に高くしている。
【0010】
更に、アウターリインホースメントdは、外壁gと一対の側壁iとによって形成される一対の外側稜線jを切り欠くようにビード(補強部材において脆弱化された部分)k、mが設けられている。
【0011】
ビードkは、レーザー溶接分割線fよりも下方に位置している。ビードmは、レーザー溶接分割線fよりも上方に位置している。これにより、センターピラーaは、ビードkによって実現された第1の脆弱部n、及びビードmによって実現された第2の脆弱部oを有することになる。
【0012】
アウターリインホースメントdにおいては、ビードkとビードmとの間の部分においてセンターピラーaから車幅方向外側に突出するロアー側ドアヒンジpが装備されている。アウターリインホースメントdにおけるロアー側ドアヒンジpが取付けられる部分に対応するように、アウターリインホースメントdのレーザー溶接分割線fの下部側の内側には、ロアー側のヒンジリインホースメントrが配置されている。
【0013】
又、アウターリインホースメントdにおけるアッパー側ドアヒンジqが取付けられる部分に対応するように、アウターリインホースメントdのレーザー溶接分割線fの上部側の内側には、比較的長尺のアッパー側のヒンジリインホースメントsが配置されている。
【0014】
このような構成を有するピラー構造においては、センターピラーaの強度が第1の脆弱部n及び第2の脆弱部oで折れ曲がり、側面衝突時の曲げモーメントを抑制することができる。
【0015】
そして、センターピラーaにおける側面衝突時の曲げモーメントを抑制するために折れ曲がった第1の脆弱部n及び第2の脆弱部oが存する部位は、乗員の腰骨等が存して比較的頑丈な腰部辺りに存することになる。これに対して、センターピラーaにおける第1の脆弱部nより上部における乗員の比較的弱部である胸部或いは腹部が存する部位においては、側面衝突による変形強度が確保されることになって、乗員を安全に保護するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上記従来の技術においては、アウターリインホースメントdは、第1の脆弱部n及び第2の脆弱部oを有すると共に、レーザー溶接分割線fを境界にして上側を下側に対して板厚を厚くする或いは材質強度を上げるなどして、互いに強度差を有するように構成されているので、プレス成形する場合のプレス成形性を悪くしている。
【0017】
又、アウターリインホースメントdは、ビードk、mの形成により構成した第1の脆弱部n及び第2の脆弱部oを設けて構成しているので、ロアー側のヒンジリインホースメントr及びアッパー側のヒンジリインホースメントsを設置することになる。この結果、ロアー側ドアヒンジp及びアッパー側ドアヒンジqにおける所定の取付け強度を高めていた。このため、従来におけるピラー構造は、ロアー側のヒンジリインホースメントr及びアッパー側のヒンジリインホースメントsの存在分、部品点数を増加させていることになる。
【0018】
そこで、この発明は、アウターパネルとインナーパネルとが形成する内部空間内に配置する補強部材のプレス成形性を向上させると共に、ヒンジリインホースメントを廃止することにより部品点数を少なくしている。しかも、自動車の側部衝突時における乗員の安全保護を充分果たすことができる自動車車体のピラー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明に係る自動車車体のピラー構造は、互いに車体側部骨格を構成するルーフサイドレールとサイドシルとの間に橋渡されるピラー本体をアウターパネル及びインナーパネル同士を重合することにより構成し、アウターパネル及びインナーパネルにより形成される内部空間内に配置した補強部材を備えた自動車車体のピラー構造であって、補強部材は、互いに分割構成されたルーフサイドレール側補強パネル及びサイドシル側補強パネルの長手方向一端同士を連結した上で、ルーフサイドレール側補強パネルの長手方向他端を連結用補強パネルを介在させてルーフサイドレールに連結すると共に、サイドシル側補強パネルの長手方向他端をサイドシル側に連結することにより構成されており、且つ、ルーフサイドレール側補強パネルとサイドシル側補強パネルとは、その長手方向両側部にそれぞれ外方に張り出す張出フランジ部が形成されて、該両張出フランジ部をアウターパネル及びインナーパネルの各連結フランジ部にそれぞれ接合することによって、内部空間内において、ルーフサイドレール側補強パネルがアウターパネル側に隣接すると共にサイドシル側補強パネルがインナーパネル側に隣接するように、配置されており、又、ルーフサイドレール側補強パネル6には、サイドシル側補強パネル側に張出フランジ部が切除された状態で延在する一方の補強用延在部が形成されていると共に、サイドシル側補強パネルには、ルーフサイドレール側補強パネル側に前記張出フランジ部が切除された状態で延在する他方の補強用延在部が形成されて、これら両補強用延在部同士を互いに重合結合しており、更に、ルーフサイドレール側補強パネルに形成した一方の補強用延在部の先端が、アウターパネルに取付けられるドアヒンジの取付け部周辺まで重合延在していることを特徴とする。
【0020】
かかる構成を採用することによって、この発明は、ルーフサイドレール側補強パネルにおける張出フランジ部が切除された状態で延在形成される一方の補強用延在部と、サイドパネル側補強パネルにおける張出フランジ部が切除された状態で延在形成された他方の補強用延在部とが、互いに重合結合されていることになる。
【0021】
従って、この発明においては、補強部材が両補強用延在部の重合結合によって、従来のような互いに板厚或いは材質の異なる部材を使用することなく、ピラー本体における乗員の胸部或いは腹部に対向する部位において局所的に変形するのを防止して、自動車の側部衝突時における乗員の安全保護を充分果たすことができる。
【0022】
又、この発明においては、補強部材が両補強用延在部の重合結合によって高強度に構成することができることから、従来のような互いに板厚或いは材質の異なる部材を使用せず結果的にプレス成形性を向上させることができる。
【0023】
更には、この発明においては、補強部材が両補強用延在部の重合結合によって高強度に構成することができることから、従来のような別部品であるヒンジリインホースメントを使用せず、直接ドアヒンジを補強部材に装着したとしても、ドアの取付け強度を充分出すことができ、結果的に部品点数を少なくすることができる。
【0024】
しかも、この発明においては、ルーフレール側補強パネルに形成した一方の補強用延在部の先端が、アウターパネルに取付けられるドアヒンジの取付け部周辺まで重合延在していることからも、従来のような別部品であるヒンジリインホースメントを使用せず、直接ドアヒンジを補強部材に装着したとしても、ドアの取付け強度を充分出すことができ、結果的に部品点数を少なくすることができることになる。
【0025】
加えて、この発明は、ルーフサイドレール側補強パネルの一方の補強用延在部の先端がサイドシル側補強パネルに対してドアヒンジの取付け部周辺まで重合延在していることから、ドアヒンジの取付け部位周辺よりサイドシルまでの間には、一方の補強用延在部が存在せずにサイドシル側補強パネルが存在するだけであることから、かかる部位が脆弱部になって自動車の側面衝突時の曲げモーメントにより折り曲がることになって、乗員の側面衝突による衝撃を緩和して、乗員の安全保護を果たし得ることになる。
【0026】
そして、この発明におけるルーフサイドレール側補強パネル6は、サイドシル側補強パネルに対して高強度部材により構成するようにしても良い。
【0027】
かかる構成により、この発明は、高張力鋼板部材等の高強度部材からなるルーフサイドレール側補強パネル6がアウターパネル側に隣接して対向していることになって、ピラー本体の断面重心位置より遠ざけることができる。この結果、ピラー本体における乗員の胸部或いは腹部に対応する部位において局所的に変形するのを更に効率よく防止することができて、自動車の側部衝突時の乗員の安全保護機能を更に向上させることができる。
【0028】
又、この発明におけるサイドシル側補強パネルの他方の補強用延在部は、連結用補強パネルの近傍まで到達するように構成するようにしても良い。かかる構成を採用することによって、この発明は、ピラー本体における乗員の胸部或いは腹部に対応する部位において局所的に変形するのを防止する機能を、他方の延在部の存在によりさらに高めることができる。
【0029】
又、この発明における連結用補強パネルは、ルーフサイドレールに一体形成しても良い。このような発明は、ルーフサイドレールの成形性を低下させない範囲内で採用されるもので、部品点数を少なくする方向に寄与することができる。
【0030】
又、この発明におかる連結用補強パネルが、ルーフサイドレール側補強パネルに一体形成しても良い。 このような発明は、ルーフサイドレール側補強パネルの成形性を低下させない範囲内で採用されるもので、部品点数を少なくする方向に寄与することができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明は、ルーフサイドレール側補強パネルにおける張出フランジ部が切除された状態で延在形成されたする一方の補強用延在部と、サイドパネル側補強パネルにおける張出フランジ部が切除された状態で延在形成された他方の補強用延在部とが、互いに重合結合させていることになる。
【0032】
従って、この発明においては、補強部材が両補強用延在部の重合結合によって、従来のような互いに板厚或いは材質の異なる部材を使用しない。この結果、ピラー本体における乗員の胸部或いは腹部に対向する部位において局所的に変形するのを防止して、自動車における側部衝突時の乗員の安全保護を充分果たすことができる。
【0033】
又、この発明においては、補強部材が両補強用延在部の重合結合によって高強度に構成することができる。このことから、従来のような互いに板厚或いは材質の異なる部材を使用せず結果的にプレス成形性を向上させることができる。
【0034】
更には、この発明においては、補強部材が両補強用延在部の重合結合によって高強度に構成することができることから、従来のような別部品であるヒンジリインホースメントを使用せず、直接ドアヒンジを補強部材に装着したとしても、ドアの取付け強度を充分出すことができ、結果的に部品点数を少なくすることができる。
【0035】
しかも、この発明においては、ルーフレール側補強パネルに形成した一方の補強用延在部の先端が、アウターパネルに取付けられるドアヒンジの取付け部周辺まで重合延在している。この結果、従来のような別部品であるヒンジリインホースメントを使用せず、直接ドアヒンジを補強部材に装着したとしても、ドアの取付け強度を充分だしことができ、部品点数を少なくすることができる。
【0036】
加えて、この発明は、ルーフサイドレール側補強パネルの一方の補強用延在部の先端がサイドシル側補強パネルに対してドアヒンジの取付け部周辺まで重合延在している。従って、ドアヒンジの取付け部位周辺よりサイドシルまでの間には、一方の補強用延在部が存在せずにサイドシル側補強パネルが存在するだけとなる。この結果、かかる部位が脆弱部になって自動車の側面衝突時の曲げモーメントにより折り曲がることになり、乗員の側面衝突による衝撃を緩和して、乗員の安全保護を果たし得ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明に係る実施の一形態として採用して構成する自動車のセンターピラーを車外側から描画した側面図である。
【図2】図1に示す自動車のセンターピラーを分解して描画した斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】図1のC−C断面図である。
【図6】図1のD−D断面図である。
【図7】図1に示すルーフサイドレール側補強パネルと連結用補強パネルとの結合状態を描画した説明図である。
【図8】図1に示すルーフサイドレール側補強パネルとサイドシル側補強パネルとの結合状態を車体側方側から描画した説明図である。
【図9】図1に示すルーフサイドレール側補強パネルとサイドシル側補強パネルとの結合状態を車体前方側から描画した説明図である。
【図10】この発明に係る実施の他の形態における連結用補強パネルとルーフサイドレールの一部を描画した斜視図である。
【図11】この発明に係る実施の更に他の形態におけるルーフサイドレール側補強パネルと連結用補強パネルとを描画した斜視図である。
【図12】この発明に係る実施の更に他の形態におけるサイドシル側補強パネルと連結用補強パネルとを描画した斜視図である。
【図13】従来のにおける自動車のセンターピラーを分解して描画した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本実施の形態は、自動車車体のピラー構造としてセンターピラーに採用した場合であり、アウターパネルとインナーパネルとが形成する内部空間内に配置する補強部材のプレス成形性を向上させる。と共に、ヒンジリインホースメントを廃止することにより部品点数を少なくしており、しかも、自動車の側部衝突時の乗員の安全保護を充分果た得るように構成している。
【0039】
次に、図を用いて、この発明に係る実施の形態として、自動車特に乗用車における車体側部骨格を構成すべく、車室側部中央に配置されるセンターピラーに適用した場合の実施例について、説明する。
【0040】
先ず、図1及び図2において、センターピラー1は、車体下部側側部の骨格を構成するサイドシル12から車体上部側側部の骨格を構成するルーフサイドレール11の間を橋渡し延在して、その上下端部がそれぞれサイドシル12及びルーフサイドレール11に互いに接合することにより構成している。
【0041】
そして、センターピラー1は、車外側に位置する一般断面略ハット型に形成されたアウターパネル2と車室側に位置するほぼ平板状に形成されたインナーパネル3を有している。加えて、アウターパネル2とインナーパネル3とは、互いに外周部に形成したフランジ部2a、3a同士を接合することによって、内部空間4を形成している。内部空間4内には、補強部材5が配置されている。
【0042】
補強部材5は、互いに分割されたルーフサイドレール側補強パネル6とサイドシル側補強パネル7とで分割構成されている。ルーフサイドレール側補強パネル6は、高張力鋼板から構成されている。そして、略断面コ字状を呈する本体部6aと、本体部6aの長手方向(車体の上下方向)両側部にそれぞれ外方に張り出す張出フランジ部6bとを有して構成されている。
【0043】
更に、本体部6aの下端部側には、張出フランジ部6bが切除された状態で、一方の補強用延在部6cが延在形成されている。一方の補強用延在部6cは、本体部6aが延長される如く、断面コ字状を呈している。
【0044】
サイドシル側補強パネル7は、ルーフサイドレール側補強パネル6を構成する高張力鋼板より比較的に低張力の鋼板から構成されており、やはり、断面コ字状を呈する本体部7aと、本体部7aの長手方向(車体の上下方向)両側部にそれぞれ外方に張り出す張出フランジ部7bとを有して構成されている。更に、本体部7aの上端部側には、張出フランジ部7bが切除された状態で、他方の補強用延在部7cが延在形成されている。他方の補強用延在部7cは、本体部7aがそのまま延長される如く、断面コ字状を呈している。
【0045】
そして、ルーフサイドレール側補強パネル6とサイドシル側補強パネル7とは、ルーフサイドレール側補強パネル6の本体部6aに他方の補強用延在部7cを重ね合わせる。と共に、サイドシル側補強パネル7の本体部7aに一方の補強用延在部6cを重ね合わせた状態で、図8及び図9の黒点でに示すようにスポット溶接することによって、本体部6aの長手方向一端(下端)及び本体部7aの長手方向一端(上端)同士が連結された状態で、一体構成されている。この際、張出フランジ部6bの下端部と張出フランジ部7bの上端部同士とが、同様に重合して、スポット溶接により連結されている。
【0046】
又、ルーフサイドレール側補強パネル6の長手方向他端(上端)には、略T字状を呈するように成形された連結用補強パネル9の縦向き片9aが連結されている。かかる状態において、連結用補強パネル9の横向き片9bは、ルーフサイドレール側補強パネル6の長手方向他端(上端)側から突出した状態になっている。このように構成された補強部材5は、ルーフサイドレール側補強パネル6をアウターパネル2側に対向させると共に、サイドシル側補強パネル7をインナーパネル3側に対向させた状態で、内部空間4内に配設される。
【0047】
そして、ルーフサイドレール側補強パネル6の張出フランジ部6b及びサイドシル側補強パネル7の張出フランジ部7bは、両者を重ね合わせた状態で、アウターパネル2のフランジ部2aとインナーパネル3のフランジ部3aとの間に挿入した状態で、フランジ部2a、3aと共に、スポット溶接される。かかる結果、アウターパネル2及びインナーパネル3によって形成された内部空間4内に補強部材5を配置した状態で、ピラー本体10が構成されることになる。
【0048】
そして、ピラー本体10は、その上端部を、連結用補強パネル9の横向き片9bを介して、ルーフサイドレール11にスポット溶接等により連結すると共に、下端部をサイドシル12にスポット溶接等により連結される。かかる結果、センターピラー1は、ルーフサイドレール11サイドシル12との間に橋渡されて、車体側部骨格を構成することになる。
【0049】
次に、図3〜図6を用いて、アウターパネル2及びインナーパネル3と、補強部材5との構成上の関係を更に詳細に説明する。すなわち、先ず、図1において、ピラー本体10のルーフサイドレール11側となる上端部を断面して描画した図3に示すように、アウターパネル2及びインナーパネル3が形成する内部空間4内において、アウターパネル2側でルーフサイドレール側補強パネル6が隣接して対向している。と共に、インナーパネル3側で連結用補強パネル9が隣接して対向している。
【0050】
このような状態において、アウターパネル2のフランジ部2aとインナーパネル3のフランジ部3aとの間に、ルーフサイドレール側補強パネル6の張出フランジ部6b及び連結用補強パネル9の縦向き片9aに形成された取付けフランジ部9cが挟合された状態となっている。
【0051】
かかる部位において、ルーフサイドレール側補強パネル6と連結用補強パネル9とを、張出フランジ部6b及び取付けフランジ部9cを含む状態で、図7の黒点で示すようにスポット溶接を施すことによって予め接合しておけば、図3に示すようなアウターパネル2、ルーフサイドレ−ル側補強パネル6、連結用補強パネル9及びインナーパネル3において4枚重ねスポット溶接を回避することができる。
【0052】
次に、図1においてピラー本体10のルーフサイドレール11側に寄った上方側中央部を断面して描画した図4に示すように、アウターパネル2及びインナーパネル3が形成する内部空間4内において、アウターパネル2側でルーフサイドレール側補強パネル6が対向している。と共に、インナーパネル3側でサイドシル側補強パネル7の他方の補強用延在部7cがルーフサイドレール側補強パネル6に重合した状態で対向している。
【0053】
このように、かかる部位においては、サイドシル側補強パネル7の他方の補強用延在部7cには張出フランジ部7bが切除された状態となっている。このことから、アウターパネル2のフランジ部2a、ルーフサイドレール側補強パネル6の張出フランジ部6b及びインナーパネル3のフランジ部3aの3枚重ね構成を採っていることになり、スポット溶接による接合を可能にしている。
【0054】
又、図1においてピラー本体10のサイドシル側に寄った下方側中央部を断面して描画した図5に示すように、アウターパネル2及びインナーパネル3が形成する内部空間4内において、アウターパネル2側にルーフサイドレール側補強パネル6が対向すると共に、インナーパネル側にサイドシル側補強パネル7が対向している。
【0055】
このような状態において、アウターパネル2のフランジ部2aとインナーパネル3のフランジ部3aとの間に、ルーフサイドレール側補強パネル6の張出フランジ部6b及びサイドシル側補強パネル7の張出フランジ部6bが挟合された状態となっている。
【0056】
かかる部位において、アウターパネル2のフランジ部2a、ルーフサイドレール側補強パネル6の張出フランジ部6b及びサイドシル側補強パネル7の張出フランジ部7bを予めスポット溶接して結合しておけば、インナーパネル3のかかる部位におけるフランジ部にはスポット溶接を施さようにして、4枚重ねスポット溶接を回避することができる。
【0057】
更に、図1においてピラー本体10のサイドシル12側となる下端部を断面して描画した図6に示すように、アウターパネル2及びインナーパネル3が形成する内部空間4内において、インナーパネル3側でサイドシル側補強パネル7が隣接して対向している。と共に、アウターパネル2側でルーフサイドレール側補強パネル6の一方の補強用延在部6cが延在しサイドシル側補強パネル7に重合対向した状態で終端となっている。
【0058】
このように、かかる部位においては、ルーフサイドレール側補強パネル6の一方の補強用延在部6cには張出フランジ部6bが切除された状態となっている。このことから、アウターパネル2のフランジ部2a、サイドシル側補強パネル7の張出フランジ部7b及びインナーパネル3のフランジ部3aの3枚重ね構成を採っていることになり、スポット溶接による接合を可能にしている。
【0059】
以上説明した通りの構成を採用することによって、この発明に係る実施例は、ルーフサイドレール側補強パネル6における張出フランジ部6bが切除された状態で延在形成された一方の補強用延在部6cと、サイドパネル側補強パネル7における張出フランジ部7bが切除された状態で延在形成された他方の補強用延在部7cとが、互いに重合結合させていることになる。しかも、一方の補強用延在部6cと他方の補強用延在部7cとは、それぞれの稜線において重合結合していることになる。
【0060】
従って、補強部材5が両補強用延在部6c、7cの重合結合によって、従来のような互いに板厚或いは材質の異なる部材を使用することなく、ピラー本体10における乗員の胸部や腹部に対向する部位において局所的に変形するのを防止して、自動車の側部衝突時の乗員の安全保護を充分果たすことができる。
【0061】
又、補強部材5が両補強用延在部6c、7cの重合結合によって高強度に構成することができる。このことから、従来のような互いに板厚或いは材質の異なる部材を使用するような構成を採らず、結果的にプレス成形性を向上させることができる。
【0062】
更には、補強部材5が両補強用延在部6c、7cの重合結合によって高強度に構成することができる。このことから、従来のような別部品であるヒンジリインホースメントを使用せず、アウターパネル2に形成したヒンジ取付け孔2bと共に、ルーフサイドレール側補強パネル6に形成したヒンジ取付け孔6d及びサイドシル側補強パネル7に形成したヒンジ取付け孔7dを使用して、不図示のドアヒンジを補強部材5に直接装着したとしても、ドアの取付け強度を充分出すことができ、結果的に部品点数を少なくすることができる。
【0063】
しかも、ルーフサイドレール側補強パネル6に形成した一方の補強用延在部6cの先端が、アウターパネル2に取付けられるドアヒンジの取付け部周辺まで重合延在している。このことからも、従来のような別部品であるヒンジリインホースメントを使用せず、直接ドアヒンジを補強部材に装着したとしても、ドアの取付け強度を充分出すことができ、結果的に部品点数を少なくすることができることになる。
【0064】
加えて、ルーフサイドレール側補強パネル6の一方の補強用延在部6cの先端がサイドシル側補強パネル7に対してドアヒンジの取付け部周辺まで重合延在している。このことから、ドアヒンジの取付け部位周辺よりサイドシル12までの間には、一方の補強用延在部6cが存在せずにサイドシル側補強パネル7のみが存在するだけになる。この結果、かかる部位が脆弱部になって自動車の側面衝突時の曲げモーメントにより折り曲がることになって、乗員の側面衝突による衝撃を緩和して、乗員の安全保護を果たし得ることになる。
【0065】
又、高張力鋼板部材からなるルーフサイドレール側補強パネル6は、アウターパネル2側に隣接して対向されていることから、ピラー本体10の断面重心位置より遠ざかることになる。このことから、ピラー本体10における乗員の胸部或いは腹部に対応する部位において局所的に変形するのを更に効率よく防止することができて、自動車における側部衝突時の乗員の安全保護機能を更に向上させることができる。
【0066】
更に又、サイドシル側補強パネル7の他方の補強用延在部7cは、連結用補強パネル9の近傍まで到達するように構成していることから、ピラー本体10における乗員の胸部或いは腹部に対応する部位において局所的に変形するのを防止する機能を、他方の補強用延在部7cの存在によりさらに高めることができる。
【0067】
次に、図10及び図11を用いて、この発明に係る他の実施例について、説明する。先ず、図10に示す他の実施例においては、連結用補強パネル9は、プレス成形性が良好な形状を有する場合として、ルーフサイドレール11に一体形成している。かかる構成を有する他の実施例は、ルーフサイドレール11の成形性を低下させない範囲内で採用され、部品点数を少なくする方向に寄与することができる。
【0068】
又、この発明に係るさらに他の実施例においては、やはり、プレス成形性が良好な形状を有する場合として、図11に示すように、連結用補強パネル9が、ルーフサイドレール側補強パネル6に一体形成する場合、或いは、図12に示すように、連結用補遺強パネル9が、サイドシル側補強パネル7に一体形成する場合がある。 かかる構成を有するさらに他の実施例は、ルーフサイドレール側補強パネル6の成形性を低下させない範囲内で採用され、部品点数を少なくする方向に寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したこの発明は、アウターパネルとインナーパネルとが形成する内部空間内に配置する補強部材のプレス成形性を向上させ、かつ、ヒンジリインホースメントを廃止することにより部品点数を少なくすると共に、自動車の側部衝突時の乗員の安全保護を充分果たすことができることから、自動車における車体側部骨格を構成する自動車車体のピラー構造等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0070】
1 センターピラー
2 アウターパネル
2a フランジ部
2b ヒンジ取付け孔
3 インナーパネル
3a フランジ部
4 内部空間
5 補強部材
6 ルーフサイドレール側補強パネル
6a 本体部
6b 張出フランジ部
6c 一方の補強用延在部
6d ヒンジ取付け孔
7 サイドシル側補強パネル
7a 本体部
7b 張出フランジ部
7c 他方の補強用延在部
7d ヒンジ取付け孔
9 連結用補強パネル
10 センターピラー本体
11 ルーフサイドレール
12 サイドシル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに車体側部骨格を構成するルーフサイドレールとサイドシルとの間に橋渡されるピラー本体をアウターパネル及びインナーパネル同士を重合することにより構成し、前記アウターパネル及び前記インナーパネルにより形成される内部空間内に配置された補強部材を備えた自動車車体のピラー構造であって、
前記補強部材は、互いに分割構成されたルーフサイドレール側補強パネル及びサイドシル側補強パネルの長手方向一端同士を連結した上で、前記ルーフサイドレール側補強パネルの長手方向他端を連結用補強パネルを介在させて前記ルーフサイドレールに連結すると共に、前記サイドシル側補強パネルの長手方向他端を前記サイドシル側に連結することにより構成されており、
且つ、前記ルーフサイドレール側補強パネルと前記サイドシル側補強パネルとは、その長手方向両側部にそれぞれ外方に張り出す張出フランジ部が形成されて、該両張出フランジ部を前記アウターパネル及び前記インナーパネルの各連結フランジ部にそれぞれ接合することによって、前記内部空間内において、前記ルーフサイドレール側補強パネルが前記アウターパネル側に隣接すると共に前記サイドシル側補強パネルが前記インナーパネル側に隣接するように、配置されており、
又、前記ルーフサイドレール側補強パネル6には、前記サイドシル側補強パネル側に前記張出フランジ部が切除された状態で延在する一方の補強用延在部が形成されていると共に、前記サイドシル側補強パネルには、前記ルーフサイドレール側補強パネル側に前記張出フランジ部が切除された状態で延在する他方の補強用延在部が形成されて、これら両補強用延在部同士を互いに重合結合しており、
更に、前記ルーフサイドレール側補強パネルに形成した一方の補強用延在部の先端が、前記アウターパネルに取付けられるドアヒンジの取付け部周辺まで重合延在していることを特徴とする自動車車体のピラー構造。
【請求項2】
前記ルーフサイドレール側補強パネル6は、前記サイドシル側補強パネルに対して高強度部材により構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車車体のピラー構造。
【請求項3】
前記サイドシル側補強パネルの前記他方の補強用延在部が、前記連結用補強パネルの近傍まで到達していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車車体のピラー構造。
【請求項4】
前記連結用補強パネルが、前記ルーフサイドレールに一体形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載の自動車車体のピラー構造。
【請求項5】
前記連結用補強パネルが、前記ルーフサイドレール側補強パネルに一体形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載の自動車車体のピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−251659(P2011−251659A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128340(P2010−128340)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
【Fターム(参考)】