説明

自動電気ロースター

【課題】簡単に肉を美味しく調理することができる自動電気ロースターを提供する。
【解決手段】被調理物(図示せず)を収納する加熱室1と、被調理物を加熱調理する上・下発熱体2、3と、加熱室1内の温度を検知する温度検知手段9と、調理メニューを選択する選択手段7と、調理メニューに適した調理シーケンスを複数記憶している記憶手段12と、温度検知手段9の出力に応じて上・下発熱体2、3を制御する制御手段10を備え、記憶手段12が記憶している肉調理に適した調理シーケンスは、加熱工程と調理工程とを有し、加熱工程において、温度検知手段9が所定の温度を検知すると、調理工程に移行し、調理工程では、その工程が経過するに従って通電比を下げて加熱調理するもので、選択手段7で肉調理を選択したとき、肉調理に適した調理シーケンスで加熱調理することができて、予熱の必要がなく、厚みのある肉でも適度な時間で簡単に美味しく調理できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動肉調理機能が付いた自動電気ロースターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィッシュロースター等の自動電気ロースターでは、魚焼き系統とオーブン系統のメニューを備え、オーブン系統のメニューを選択した時は、上部発熱体と下部発熱体を断続通電して通電比を下げて、弱火で調理庫内を暖めて加熱調理し、食材の表面を焦がしすぎることなく、内部まで火が通る美味しい仕上がりとするようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、上記特許文献1に記載された従来の自動電気ロースターのオーブン調理時の調理手順の動作図である。ここで、図6を参照しながら従来のオーブン系統のメニューを加熱調理する場合の自動電気ロースターの動作を説明する。
【0004】
図6に示すように、調理を開始すると、まず排気ファンと触媒ヒータに通電され、触媒ヒータにより調理庫内の空気を加熱する。この状態で所定の時間t2(約30秒)経過すると調理庫の内部温度が安定し、この時の温度検知手段の検知温度を初期温度T0として制御手段のマイコンにてメモリーする。続いて、上部発熱体、下部発熱体の通電時において、連続通電ではなく、断続で通電される。この結果、調理庫内が温度上昇し、判定温度T1に達する。このときの経過時間を検出時間t0とする。判定温度T1に達したとき、残時間t1を検出時間t0による補正を加えた残時間計算式により決定する。計算により決定した残時間t1を表示部に表示し、以後表示している残時間を、時間の経過と共に減算していく。この状態から残時間が、(1/4)t1になると、上部発熱体をオフし、下部発熱体をオンにする。次に時間t1が経過し、残時間表示が0になったとき、下部発熱体の通電を停止し、ブザーを鳴動して使用者に調理終了を報知する。この後、表示部は、除煙中を表す表示状態となり、所定の時間t3(約1分間)排気ファンと触媒ヒータに通電して、調理後の除煙を行う。
【0005】
また、従来のオーブングリルレンジなどの自動電気ロースターでは、同一の調理メニューに対して、本格コース用加熱プログラムと、快速コース用加熱プログラムとを備え、強火で短時間または長時間加熱するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図7は、前記特許文献2に記載された従来の自動電気ロースターのローストビーフの加熱パターンを示すものである。図7を参照しながら、従来のローストビーフを加熱調理するときの自動電気ロースターの動作を説明する。
【0007】
図7(b)に示すように、調理メニューが「ローストビーフ」であって、「本格コース」が選択されたときには、熱風ヒータ及び熱風ファンを通電駆動して、熱風ヒータ(加熱出力1300W)及び熱風ファンを50分間通電駆動する。また、 図7(a)に示すように、調理メニューが「ローストビーフ」であって、「快速コース」が選択されたときには、マグネトロンにより加熱出力600Wで10分間駆動する。
【特許文献1】特開2000−189325号公報
【特許文献2】特開平6−281151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の自動電気ロースターでは、魚焼き調理は適度な焦げ目をつけて、
うまく調理できるが、肉調理は、弱火で調理庫内を暖めてゆっくり加熱されるため、厚みのある肉を調理する場合は肉表面は焼けるが中まで火が通りにくい、または肉の表面が焼き固められないため、肉汁が流れ出てしまい、旨みがなく、うまく調理できないという課題を有していた。
【0009】
また、従来のオーブングリルレンジといった自動電気ロースターでは、肉の表面をすばやく焼き固めるために予熱が必要であり、また予熱がない場合は庫内温度が上がりにくいため、調理時間が長い。また、調理量が少ない場合は加熱比率が調整できないため、乾燥してパサパサした仕上がりとなり、しっとり美味しく焼き上げることができないという課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、肉調理に適した調理シーケンスで加熱調理し、予熱が必要なく、適度な時間で簡単に自動で肉汁を保って肉を美味しく調理できる自動電気ロースターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動電気ロースターは、被調理物を収納する加熱室と、前記被調理物を加熱調理する加熱手段と、前記被調理物を載置する調理網と、前記加熱室内の温度を検知する温度検知手段と、調理メニューを選択する選択手段と、調理メニューに適した調理シーケンスを複数記憶している記憶手段と、前記温度検知手段の出力に応じて前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記記憶手段が記憶している肉調理に適した調理シーケンスは、加熱工程と調理工程とを有し、前記加熱工程において、前記温度検知手段が所定の温度を検知すると、調理工程に移行すると共に、前記調理工程では、その工程が経過するに従って通電比を下げて加熱調理するもので、選択手段により肉調理を選択したとき、肉調理に適した調理シーケンスで加熱調理することができて、予熱の必要がなく、厚みのある肉でも適度な時間で簡単に美味しく調理することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動電気ロースターは、予熱の必要がなく、肉調理選択時に、厚みのある肉でも肉の表面を焼きかためて肉汁を逃がさず、また焦がすことなく内部まで適度に火を通して、自動で簡単に早く美味しく調理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、被調理物を収納する加熱室と、前記被調理物を加熱調理する加熱手段と、前記被調理物を載置する調理網と、前記加熱室内の温度を検知する温度検知手段と、調理メニューを選択する選択手段と、調理メニューに適した調理シーケンスを複数記憶している記憶手段と、前記温度検知手段の出力に応じて前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記記憶手段が記憶している肉調理に適した調理シーケンスは、加熱工程と調理工程とを有し、前記加熱工程において、前記温度検知手段が所定の温度を検知すると、調理工程に移行すると共に、前記調理工程では、その工程が経過するに従って通電比を下げて加熱調理するもので、選択手段により肉調理を選択したとき、肉調理に適した調理シーケンスで加熱調理することができて、予熱の必要がなく、厚みのある肉でも適度な時間で簡単に美味しく調理することができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、選択手段により肉調理を選択した時は、加熱工程において温度検知手段が所定の温度を検知すると調理工程に移行し、前記調理工程では、その工程が経過するに従って加熱室内の温度を下げるように制御するもので、加熱室内の温度の上がり過ぎを防止し、焦がすことなく内部まで適度に火を通し、肉を美味しく調理することができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の加熱手段として、加熱室内に遠赤外線を発生する遠赤外線発生手段を用いたもので、遠赤外線発生手段により発生する遠赤外線により肉表面をすばやく焼きかためて肉汁を逃がさず、内部まで適度に火を通して、肉を美味しく調理することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における自動電気ロースターのブロック図、図2は、同電気ロースターの断面図、図3は、同電気ロースターの斜視図、図4は、同自動電気ロースターの動作プログラムチャートである。
【0018】
図1および図2に示すように、1は、被調理物(図示せず)を収納する加熱室である。加熱手段として、加熱室1の内部の上部には、上発熱体2が、下部には下発熱体3がそれぞれ取り付けられている。加熱手段としての発熱体の種類としては、シーズヒータやミラクロンヒータ、ハロゲンヒータ等があげられる。
【0019】
4は、下発熱体5の下方に配置された凹状の受け皿であり、加熱室1の開口1aを覆う扉5の開閉と連動して加熱室1内に着脱されるようになっている。6は、被調理物を載せるための調理網で、受け皿4に設置され、受け皿4と共に加熱室1に対し着脱される。8は、扉を開閉するための把手である。
【0020】
7は、加熱室1の前面側部に設けられ調理メニューを選択する選択手段である。選択手段7で選択できる調理メニューは、肉調理、魚焼き、焼きなす、焼き芋等の自動調理がある。9は、加熱室1内に設けられ、加熱室1内の温度を検知する温度検知手段である。この温度検知手段9で検知された温度は、制御手段10に伝えられている。
【0021】
記憶手段12は、調理網6の上で加熱調理される被調理物の調理メニューに応じた調理シーケンスを複数記憶している。制御手段10は、マイクロコンピュータなどで構成され、温度検知手段9の出力を入力とし、双方向性サイリスタやリレーなどで構成した駆動手段11を介して加熱手段である上・下発熱体2、3を制御する。ここで、選択手段9により肉調理を選択したとき、記憶手段12に記憶した肉調理に適した調理シーケンスにより加熱調理するように構成している。なお、制御装置は、記憶手段12、選択手段7、制御手段10、駆動手段11などで構成されている。
【0022】
ここで、記憶手段12に複数記憶され肉調理に適した調理シーケンスについて説明する。厚みのある肉をおいしく調理するためには、軟らかい部位の肉を用い、出る肉汁ができるだけ少なくするように強火で短時間加熱し、表面は焦げすぎないように、中心の加熱具合を加減する。はじめに強火で加熱すると、肉の表面のたんぱく質が凝固し、うま味成分を含んだ肉汁の滲出を少なくすることができる。
【0023】
また、軟らかい肉でも長く加熱すると、硬くなる。肉は加熱温度により保水性が変化し、加熱温度が40〜50℃で保水性の低下が著しくなり、55℃以上になると、保水性が減少し、80℃で肉の熱変性が完了する。肉の焼き加減には、Rare、Medium、Well−doneがあり、Rareは、内部温度を50〜65℃以下に、Mediumは内部温度を65〜70℃に、Well−doneは内部温度を70〜80℃にしたものである。
【0024】
従って、肉表面をできるだけ早く焼き固めるために最初の通電率(火力)を高めに設定
する。最初から低い通電率(火力)で長時間加熱すると、保水性が低下するため、肉汁がでてしまい、旨みがなく、パサついた硬い仕上がりになるため、また通電率(火力)を高いまま加熱すると、中まで適度に火が通るまで加熱する間にこげが発生し、調理量が少ない場合は、肉の温度が急激に上がるため、蛋白質が強度に変性し、熱変性が進みすぎることによって、乾燥して硬い仕上がりになるため、最初は、通電率(火力)を高めに設定し、工程が経過するに従って通電率(火力)を下げて加熱調理する。このような加熱をすることにより、肉汁を保ちながら内部温度を適度にすることができるため、厚みのある肉をおいしく焼き上げることができるのである。
【0025】
以上のように構成された本実施の形態における自動電気ロースターで、肉を加熱調理する場合の動作を、図4を参照しながら説明する。
【0026】
まず、調理網6の上に肉(図示せず)をのせて加熱室1内に入れる。次に選択手段7から肉調理を選択し、好みにより焼き加減を選択し、調理を開始する。調理を開始すると、上・下発熱体2、3が電力Wで加熱する加熱工程に入る。加熱工程では、温度検知手段9により第1の所定の温度θ1を検知してから、それより高い第2の所定の温度θ2を検知するまで電力Wで加熱し、その際の温度上昇率から調理量を判定し、調理量に応じた火力及び時間で次の調理1工程または調理2工程を行なう。
【0027】
第2の所定の温度θ2は、被調理物の種類によって異なり、例えば、肉と魚では蛋白質凝固温度が違っており、肉は焦げやすいので肉は魚に比べ、温度を少し低めに設定する。調理1工程では、加熱工程時の通電率(火力)より低い通電率(火力)で加熱し、一定時間T1を経過すると、調理2工程に移行する。調理2工程では、調理1工程より低い通電率(火力)で加熱し、調理開始から一定時間T2を経過すると調理を終了する。本実施の形態では、Wは、1000W、第1の所定温度θ1は80℃、第2の所定温度θ2は140℃、T1は4分、T2は21分としている。
【0028】
以上の加熱調理工程を通して、予熱の必要がなく、肉調理に適した調理シーケンスで加熱調理することができ、厚みのある肉でも適度な時間で簡単に美味しく調理することができる。なお、本実施の形態におけるW、第1の所定温度θ1、第2の所定温度θ2、T1、T2の値は、あくまでも一例であり、状況に応じて数値を設定することができる。
【0029】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態における自動電気ロースターの動作プログラムチャートを示したものである。なお、上記第1の実施の形態における自動電気ロースターと同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
本実施の形態における自動電気ロースターの加熱工程までの動作は、上記第1の実施の形態における自動電気ロースターと同じであるので、加熱工程以降の動作について説明する。
【0031】
図5において、加熱工程が終了すると、調理1工程に入り、調理1工程において第2の所定温度θ2より低い温度で温調するようにし、第3の所定の温度θ3または一定時間T1を経過すると、調理2工程に移行する。調理2工程では調理1工程より低い第4の所定温度θ4で温調するようにし、調理開始から一定時間T2を経過すると、調理を終了する。本実施の形態では、第3の所定の温度θ3は150℃、第4の所定の温度θ4は、100℃としている。
【0032】
このことにより、加熱室1内の温度の上がり過ぎを防止し、焦がすことなく内部まで適度に火を通し、厚みのある肉でも適度な時間で美味しく調理することができる。なお、本
実施の形態における第3の所定の温度θ3、第4の所定の温度θ4の値は、あくまでも一例であり、状況に応じて数値を設定することができる。
【0033】
また、当然のことながら、さらに別の実施の形態として、これらの実施の形態の中の一部の調理シーケンスのみを組み合わせて採用してもよい。
【0034】
また、加熱手段である上発熱体2、下発熱体3として遠赤外線を発生する遠赤外線ヒータ等からなる遠赤外線発生手段を用いても良い。遠赤外線は、被調理物の表面に効果的に吸収されて加熱するものであり、一般に遠赤効果と称される加熱効果を有しており、被調理物の調理性能を高めるものである。また、熱風加熱と異なり、加熱効率がよく、表面温度がすばやく上昇するため、物体深部温度上昇が速い。このことにより、肉表面をすばやく焼きかためて肉汁を逃がさず、内部まで適度に火を通して、適度な時間で肉を美味しく調理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように本発明にかかる自動電気ロースターは、肉調理選択時に、肉専用の調理シーケンスで調理することが可能となるので、電子レンジ、オーブンレンジ、オーブンあるいはグリラーなどの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態における自動電気ロースターのブロック図
【図2】同自動電気ロースターの断面図
【図3】同自動電気ロースターの斜視図
【図4】同自動電気ロースターの動作プログラムチャート
【図5】本発明の第2の実施の形態における電気ロースターの動作プログラムチャート
【図6】従来の自動電気ロースターのオーブン調理時の調理手順の動作図
【図7】(a)従来の他の自動電気ロースターのローストビーフの加熱パターンを示す図(快速コース)(b)同自動電気ロースターのローストビーフの加熱パターンを示す図(本格コース)
【符号の説明】
【0037】
1 加熱室
2 上発熱体(加熱手段)
3 下発熱体(加熱手段)
4 受け皿
5 扉
6 調理網
7 選択手段
8 把手
9 温度検知手段
10 制御手段
11 駆動手段
12 記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収納する加熱室と、前記被調理物を加熱調理する加熱手段と、前記被調理物を載置する調理網と、前記加熱室内の温度を検知する温度検知手段と、調理メニューを選択する選択手段と、調理メニューに適した調理シーケンスを複数記憶している記憶手段と、前記温度検知手段の出力に応じて前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記記憶手段が記憶している肉調理に適した調理シーケンスは、加熱工程と調理工程とを有し、前記加熱工程において、前記温度検知手段が所定の温度を検知すると、調理工程に移行すると共に、前記調理工程では、その工程が経過するに従って通電比を下げて加熱調理することを特徴とする自動電気ロースター。
【請求項2】
制御手段は、選択手段により肉調理を選択した時は、加熱工程において温度検知手段が所定の温度を検知すると調理工程に移行し、前記調理工程では、その工程が経過するに従って加熱室内の温度を下げるように制御する請求項1に記載の自動電気ロースター。
【請求項3】
加熱手段として、加熱室内に遠赤外線を発生する遠赤外線発生手段を用いた請求項1または2に記載の自動電気ロースター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−54091(P2010−54091A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217695(P2008−217695)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】