説明

自立型ケーブル

【課題】上下変動を抑制することができる自立型のケーブルを提供すること。
【解決手段】自立型ケーブル1は、上下に配置された、往復移動する可動部61と固定された固定部62に、一端側と他端側がそれぞれ連結される。前記一端側から所定長のケーブル部分1aにて、前記他端側に向かって逓減するように一体化された自立補助部材20を備える。これにより、自立補助部材が可動部に隣接するケーブル部分を適度な剛性を持って支えるので、当該ケーブルをケーブルベア内部に収納しなくても、可動部移動時の当該ケーブルの上下変動を抑制することができる。更に、自立補助部材はケーブルと一体化されているので擦れることは無く、ケーブルベアは不要となるので、ケーブルベアで発生した課題は解消されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に配置された、往復移動する可動部と固定された固定部に、一端側と他端側がそれぞれ連結される自立型ケーブルに関し、例えば機械加工ライン、半導体製造装置、電子部品実装装置等に組み込まれたロボット走行装置等に用いられる自立型ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工ライン、半導体製造装置、電子部品実装装置には、加工材、ウエハ、基板等のワークを把持して搬送するためのロボット走行装置が組み込まれている。例えば特許文献1(特開2005−96018号公報)には、ロボット走行装置の軌道の両側に複数の加工機械を配置した機械加工ラインが開示されている。ロボット走行装置は、軌道上を移動する走行台車に、ワークをハンドリングするロボットが搭載されている。このロボットのアームのハンドを動作させることにより、ワークをハンドに把持させ、該ワークを各加工機械に着脱することができる。また、走行台車を軌道に沿って移動させることにより、ワークを各加工機械の間で移動させ、複数の機械加工を該ワークに施すことができる。
【0003】
このようなロボット走行装置では、軌道の側部にケーブルベア(登録商標)が敷設されている。ケーブルベアは、一列に並べた複数の略矩形のフレームをピンによって回動可能に結合し、上下方向に屈曲可能としたものである。そして、ケーブルベア内部に形成された空間には、信号ラインや電力、油圧、空圧の動力ラインのケーブルやチューブ(以下、単にケーブルという)が収納されている。ケーブルベアは、一端側がU字型に折り返され、その先端部が走行台車に連結されている。これにより、ケーブルベアの摺動に合わせたケーブルの配線及び配管ができ、自立不可なケーブルであっても該ケーブルの上下変動を抑えることができる。そして、走行台車の移動を妨げることなく、走行台車及びロボットに必要な制御信号及び動力等を供給することができる。
【0004】
ところが、ケーブルベアとケーブルとの擦れにより、発塵や振動・騒音が生じる場合がでてきた。そこで、例えば特許文献2(特開2006−228841号公報)には、ケーブルを平面的に並べて結束して帯状体とする結束部材と、帯状体を部分的に接触して支持する支持体を備えたケーブルベアが提案されている。このケーブルベアによれば、ケーブルとの擦れが発生せず、発塵を防止することができる。また、例えば特許文献3(特開2006−159346号公報)には、ベルト・プーリ機構を備えたケーブルベアが提案されている。このケーブルベアによれば、プーリ駆動機構が可動部と一体に軸方向に移動することがないため、ケーブルベアによる振動・騒音の発生を抑制することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−96018号公報
【特許文献2】特開2006−228841号公報
【特許文献3】特開2006−159346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のケーブルベアは、ケーブル全体を収納可能な容積が必要であるため、摺動させるための動力やスペースが余分に必要である。また、ケーブルベアの重量分の慣性により摺動停止位置の精度が取り難くなる。また、ケーブルベアの分のコストが余分に掛かる。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、上下変動を抑制することができる自立型のケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明の自立型ケーブルでは、上下に配置された、往復移動する可動部と固定された固定部に、一端側と他端側がそれぞれ連結される自立型ケーブルであって、前記一端側から所定長のケーブル部分にて、前記他端側に向かって逓減するように一体化された自立補助部材を備えていることを特徴としている。
これにより、自立補助部材が可動部に隣接するケーブル部分を適度な剛性を持って支えるので、当該ケーブルをケーブルベア内部に収納しなくても、可動部移動時の当該ケーブルの上下変動を抑制することができる。更に、自立補助部材はケーブルと一体化されているので擦れることは無く、ケーブルベアは不要となるので、ケーブルベアで発生した課題は解消されることになる。
【0009】
前記自立補助部材のケーブル長方向の長さが、ケーブル幅方向の両外側から内側に向かうに従って段階的もしくは漸次に短くなるように形成されていることを特徴としている。
これにより、当該ケーブルの自重によるケーブル両外側の垂れ下がりを防止することができ、可動部移動時の当該ケーブルの上下変動を更に抑制することができる。
【0010】
また、前記自立補助部材が、樹脂チューブの融着、樹脂シートの融着もしくは樹脂材の充填により一体化されていることを特徴としている。
これにより、自立補助部材を当該ケーブルに簡易に取り付けることができる。
【0011】
前記自立補助部材が、前記一端側から所定長のケーブル部分を被覆する樹脂チューブであって、当該チューブ径方向に延びる切り込みを有する樹脂チューブであることを特徴としている。
これにより、自立補助部材を当該ケーブルに更に簡易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る自立型ケーブルの実施形態について説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1(A)は、本発明に係る自立型ケーブルの第1の実施形態を示す平面図、同図(B)は、そのA−A線断面図である。この自立型ケーブル1は、9本のケーブルユニット10を並列させて融着し、一側のケーブル面の各ケーブルユニット10間に自立補助部材20を融着して一体化した自立型平型ケーブルである。自立型ケーブル1の図示下端が図5に示す可動部61に連結される連結端部であり、後述する所定長の8本の自立補助部材20が該連結端部を始点として各ケーブルユニット10間の谷間に融着されて一体化されている。
【0014】
ケーブルユニット10は、複数本の同軸ケーブル等を筒状の束に纏めた信号ラインや電力の動力ラインのケーブルである。尚、ケーブルユニット10と共に油圧、空圧の動力ラインのケーブルを並列させて融着し、一側のケーブル面の各ケーブルユニット10等の間に自立補助部材20を融着した自立型複合平型ケーブルとしても良い。また、ケーブルユニット10等の並列本数は任意の本数であって良い。
【0015】
自立補助部材20は、例えばウレタン(UH)等の樹脂チューブが用いられている。この自立補助部材20のケーブル長方向の長さは、ケーブル幅方向の両外側のケーブルユニット10間から内側のケーブルユニット10間に向かうに従って段階的に短かくなるように形成されている。即ち、両側のケーブルユニット10間に融着されている自立補助部材20が最長となり、中央のケーブルユニット10間に融着されている自立補助部材20が最短となる。この自立補助部材20を設けることにより、可動部61から延びる自立型ケーブル1の自立補助部材20が存在する部分(以下、単にケーブル自立部分という)1aの剛性を高めることができる。
【0016】
但し、ケーブル自立部分1aの剛性が高過ぎると、可動部61が移動したときにケーブル自立部分1aが上方に撓み易くなり、逆にケーブル自立部分1aの剛性が低過ぎると、可動部61が移動したときにケーブル自立部分1aが下方に撓み易くなる。また、ケーブル自立部分1aの両外側は自重により垂れ下がり易い。そこで、可動部61が移動したときにケーブル自立部分1aの上下変動を抑制可能であって両外側の垂れ下がりを防止可能、即ち略水平に保持可能なケーブル自立部分1aの剛性を最適値に調整する必要がある。上述したように、自立補助部材20をケーブル幅方向の両外側のケーブルユニット10間から内側のケーブルユニット10間に向かうに従って段階的に短かくなるように形成することにより、ケーブル自立部分1aの剛性を最適値に調整することができる。
【0017】
自立補助部材20に用いられるUHチューブには、例えば径がφ3やφ4といった種類があり、剛性がそれぞれ異なる。よって、φ3のUHチューブを使用する場合はφ4のUHチューブを使用する場合よりもケーブル長方向の長さを長くすることで、ケーブル自立部分1aの剛性を最適値に調整することができる。
【0018】
図2(A)は、本発明に係る自立型ケーブルの第2の実施形態を示す平面図、同図(B)は、そのA−A線断面図である。この自立型ケーブル2は、図1に示す9本のケーブルユニット10と同一のものを並列させて融着し、一側のケーブル面に自立補助部材30を融着して一体化した自立型平型ケーブルである。自立型ケーブル2の図示下端が可動部61に連結される連結端部であり、後述する所定形状の自立補助部材30が該連結端部を始点としてケーブル面に融着されて一体化されている。
【0019】
自立補助部材30は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂シートが用いられている。この自立補助部材30のケーブル長方向の長さは、ケーブル幅方向の両外側から内側に向かうに従って漸次に短かくなるように形成されている。即ち、自立型ケーブル2の幅の1/2を底辺とし、自立型ケーブル2の連結端部から所定長を高さとした2つの直角三角形を斜辺が対向するように配置した形状に形成されている。この自立補助部材30を設けることにより、ケーブル自立部分2aの剛性を高めることができる。
【0020】
そして、第1の実施形態の自立型ケーブル1と同様の理由により、自立補助部材30をケーブル幅方向の両外側から内側に向かうに従って漸次に短かくなるように形成することにより、ケーブル自立部分2aの剛性を最適値に調整することができる。自立補助部材30に用いられているPVCシートには、例えば厚さがt1やt2(t1<t2)といった種類があり、剛性がそれぞれ異なる。よって、厚さt1のPVCシートを使用する場合は厚さt2のPVCシートを使用する場合よりもケーブル長方向の長さを長くすることで、ケーブル自立部分2aの剛性を最適値に調整することができる。
【0021】
図3(A)は、本発明に係る自立型ケーブルの第3の実施形態を示す平面図、同図(B)は、そのA−A線断面図である。この自立型ケーブル3は、図1に示す9本のケーブルユニット10と同一のものを並列させて融着し、一側のケーブル面の各ケーブルユニット10間に自立補助部材40を充填して一体化した自立型平型ケーブルである。自立型ケーブル3の図示下端が可動部61に連結される連結端部であり、後述する所定形状の自立補助部材40が該連結端部を始点として各ケーブルユニット10間の谷間も含むケーブル面に充填されて一体化されている。
【0022】
自立補助部材40は、例えばウレタン等の樹脂材が用いられている。この自立補助部材40のケーブル長方向の長さは、第1の実施形態の自立型ケーブル1と同様にケーブル幅方向の両外側のケーブルユニット10間から内側のケーブルユニット10間に向かうに従って段階的に短かくなるように形成されている。即ち、両側のケーブルユニット10間に融着されている自立補助部材40が最長となり、中央のケーブルユニット10間に融着されている自立補助部材40が最短となる。この自立補助部材40を設けることにより、ケーブル自立部分3aの剛性を高めることができる。
【0023】
そして、第1の実施形態の自立型ケーブル1と同様の理由により、自立補助部材40をケーブル幅方向の両外側のケーブルユニット10間から内側のケーブルユニット10間に向かうに従って段階的に短かくなるように形成することにより、ケーブル自立部分3aの剛性を最適値に調整することができる。自立補助部材40に用いられているウレタン樹脂は、充填量を変化させることにより厚さを変化させて剛性を異ならせることができ、ケーブル自立部分3aの剛性を最適値に調整することができる。尚、自立補助部材40を第2の実施形態の自立型ケーブル2と同様にケーブル幅方向の両外側から内側に向かうに従って漸次に短かくなるように充填しても同様の効果を得ることができる。
【0024】
図4(A)は、本発明に係る自立型ケーブルの第4の実施形態を示す平面図、同図(B)は、そのA−A線断面図である。この自立型ケーブル4は、図1に示す9本のケーブルユニット10と同一のものを並列させて融着し、該ケーブルユニット10の図示下部を自立補助部材50で被覆した自立型平型ケーブルである。自立型ケーブル4の図示下端が可動部61に連結される連結端部であり、後述する所定形状の自立補助部材50が該連結端部を始点として所定長で被覆されている。
【0025】
自立補助部材50は、例えば塩化ビニル等の熱収縮チューブが用いられている。自立補助部材50には、6個のチューブ径方向に延びる楕円形状の切り込み51がチューブ軸方向に所定間隔で形成されている。そして、各切り込み51の大きさは、自立型ケーブル4の連結端部側から順に大きくなるように形成されている。この自立補助部材50を設けることにより、ケーブル自立部分4aの剛性を高めることができる。
【0026】
そして、第1の実施形態の自立型ケーブル1と同様の理由により、自立補助部材50の各切り込み51の大きさを、自立型ケーブル4の連結端部側から順に大きくなるように形成することにより、ケーブル自立部分4aの剛性を最適値に調整することができる。自立補助部材50は、各切り込み51の大きさを変化させることにより剛性を異ならせることができ、ケーブル自立部分4aの剛性を最適値に調整することができる。尚、切り込み51の数や形状は6個の楕円形状に限定されるものではなく、例えば任意の個数の矩形状、円形状、スリット状もしくは1個の略三角形状等、任意の形状としても同様の効果を得ることができる。
【0027】
次に、第1の実施形態の自立型ケーブルと、比較のために9本のケーブルユニットを並列させて融着したのみであって自立補助部材が融着されていない従来のケーブルを、移動試験装置に組み込んで移動繰り返し試験を行った。
図5は、移動試験装置を示す平面図である。この移動試験装置60は、上下にそれぞれ所定間隔で配置された可動部61と固定部62を備えている。可動部61は、水平な移動面63に沿って図示矢印a方向に往復移動するようになっている。固定部62は、移動面63に平行な基準面64上に固定されている。そして、後述する自立型ケーブル1A、1B、1C、1Dもしくはケーブル9の一端側が可動部61に連結され、他端側がU字型に折り返され、その先端部が固定部62に連結されている。
【0028】
移動試験装置60の移動繰り返し試験は、以下の条件とした。
可動部61のストローク:1000mm
可動部61の移動速度:1500mm/sec
可動部61の移動速度到達時間:50ms
可動部61(移動面63)と固定部62(基準面64)との間隔:200mm
このような移動試験装置60に組み込まれる本実施形態の実施例である自立型ケーブル1A、1B、1C、1D及び従来の比較例であるケーブル9を以下説明する。
【0029】
[実施例]
3種類のケーブルユニット10A、10B、10Cを並列させ融着して3連平型ケーブルとし、更に3つの3連平型ケーブルをケーブルユニット10A、10B、10C、10C、10B、10A、10A、10B、10Cの順になるように並列させ融着して9連平型ケーブルとした。そして、一側のケーブル面の各ケーブルユニット10A、10B、10C、10C、10B、10A、10A、10B、10C間に、両外側のケーブルユニット10A、10B間及びケーブルユニット10B、10C間から内側のケーブルユニット間に向かうに従って後述するように段階的に短かくなるように形成した8本のUHチューブを融着して一体化し、4種類の自立型ケーブル1A、1B、1C、1Dを製作した。
ケーブルユニット10A、10B、10Cのケーブル長は、900mmであり、ケーブル重量は、910g/mである。
【0030】
ケーブルユニット10Aの構成を説明する。錫めっき軟銅線からなる導体素線(AWG23)を撚って外径0.82mmとした導体の周囲に、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の絶縁体を被覆して形成した外径1.32mmの第1単純線を6本(1〜6)、綿糸介在の周囲に撚り合わせて第1コアケーブル体を形成する。
この第1コアケーブル体の周囲に、同様に、錫めっき軟銅線からなる導体素線(AWG27)を撚って外径0.51mmとした導体の周囲に、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の絶縁体を被覆して外径0.91mmの第2単純線を6本(7〜12)、綿糸介在と共に撚り合わせて第1ケーブル体を形成する。
この第1ケーブル体の周囲に、多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(厚さ0.1mm)を押さえテープとして巻回し、さらにこの押さえテープの周囲にポリ塩化ビニルからなるシースを押出し被覆し、全体として外径8.5mmのケーブルユニット10Aを製作した。
【0031】
ケーブルユニット10Bの構成を説明する。錫めっき軟銅線からなる導体素線(AWG27)を撚って外径0.51mmとした導体の周囲に、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の絶縁体を被覆して形成した外径0.91mmの第2単純線を2ヶ撚りして、撚り外径1.82mmの2ケ撚り電線を形成し、この2ケ撚り電線を4対(1〜4)、撚り合わせて第2コアケーブル体を形成する。
この第2コアケーブル体の周囲に、同様に、錫めっき軟銅線からなる導体素線(AWG27)を撚って外径0.51mmとした導体の周囲に、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の絶縁体を被覆して外径0.91mmの第2単純線を9本(5〜13)、綿糸介在と共に撚り合わせて第2ケーブル体を形成する。
この第2ケーブル体の周囲に、ポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(厚さ0.1mm)を押さえテープとして巻回し、さらにこの押さえテープの周囲に錫めっき錫入り銅合金からなる素線を巻回してシールド層を形成して外径を6.4mmとし、このシールド層の周囲に、ポリ塩化ビニルからなるシースを押出し被覆し、全体として外径8.5mmのケーブルユニット10Bを製作した。
【0032】
ケーブルユニット10Cの構成を説明する。錫めっき軟銅線からなる導体素線(AWG25)を撚って外径0.56mmとした中心導体の周囲に、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の絶縁体を被覆して外径1.7mmとし、この絶縁体の周囲に、銀めっき錫入り銅合金からなる素線を巻回してシールド層を形成して外径が1.9mmとし、このシールド層の周囲に、ポリ塩化ビニルからなるシースを押出し被覆し、外径2.3mmの同軸ケーブルを形成する。
この同軸ケーブルを4本(1〜4)、撚り合わせて第3コアケーブル体を形成する。この第3コアケーブル体の周囲に、同様に、錫めっき軟銅線からなる導体素線(AWG27)を撚って外径0.51mmとした導体の周囲に、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の絶縁体を被覆して形成した外径0.91mmの第2単純線を3本(5〜7)、綿糸介在と共に撚り合わせて第3ケーブル体を形成する。
この第3ケーブル体の周囲に、ポリテトラフルオロエチレンからなるテープ(厚さ0.1mm)を押さえテープとして巻回し、さらにこの押さえテープの周囲に、錫めっき錫入り銅合金からなる素線を巻回してシールド層を形成して外径を6.0mmとし、このシールド層の周囲に、ポリ塩化ビニルからなるシースを押出し被覆し、全体として外径8.5mmのケーブルユニット10Cを製作した。
【0033】
1種類目の自立型ケーブル1AのUHチューブは、φ4mmのものを用いて、ケーブル長の1/2の部位、即ち450mmの部位に4段階で短くなるよう、即ち450mm、337.5mm、225mm、112.5mmとなるように形成し融着して一体化した。
2種類目の自立型ケーブル1BのUHチューブは、φ4mmのものを用いて、ケーブル長の2/3の部位、即ち600mmの部位に4段階で短くなるよう、即ち600mm、450mm、300mm、150mmとなるように形成し融着して一体化した。
3種類目の自立型ケーブル1CのUHチューブは、φ3mmのものを用いて、ケーブル全長の部位、即ち900mmの部位に4段階で短くなるよう、即ち900mm、675mm、450mm、225mmとなるように形成し融着して一体化した。
4種類目の自立型ケーブル1DのUHチューブは、φ6mmのものを用いて、ケーブル長の1/2の部位、即ち450mmの部位に4段階で短くなるよう、即ち450mm、337.5mm、225mm、112.5mmとなるように形成し融着して一体化した。
【0034】
[比較例]
3種類のケーブルユニット10a、10b、10cを並列させ融着して3連平型ケーブルとし、更に3つの3連平型ケーブルをケーブルユニット10a、10b、10c、10c、10b、10a、10a、10b、10cの順になるように並列させ融着して9連平型のケーブル9を製作した。
【0035】
図6は、移動繰り返し試験の結果を示す図である。試験結果は、可動部61の移動中における実施例の自立型ケーブル1A、1B、1C、1D及び比較例のケーブル9の上方への最大撓み量(+で示す)及び下方への最大撓み量(−で示す)、及び可動部61が図5の左端から右端に移動するときの途中位置(可動部61の最右端位置を基点として図示左方向に300mm、400mm、500mmの位置)における最大撓み量を示している。
【0036】
図6から明らかなように、比較例のケーブル9では、最大撓み量が+20mm〜−100mmに達し、更に移動途中においても最大撓み量が−60mm、−90mm、−60mmに達している。これに対し、実施例の自立型ケーブル1A、1B、1Cでは何れも、最大撓み量が+20mm〜0mmと良好であり、更に移動途中においても自立型ケーブル1Aの最大撓み量が+5mm、0mm、0mm、自立型ケーブル1Bの最大撓み量が+10mm、0mm、0mm、自立型ケーブル1Cの最大撓み量が0mm、+5mm、+10mmと良好である。また、実施例の自立型ケーブル1Dでも、最大撓み量は+10mm〜−20mmと良好であり、更に移動途中においても最大撓み量が+10mm、0mm、−20mmと良好である。このように、UHチューブの径やチューブ長を変化させることにより、自立型ケーブル1A、1B、1C、1Dのケーブル自立部分の剛性を最適値に調整することができ、上下変動を抑制することができる。
【0037】
以上のように本実施形態の自立型ケーブル1、2、3、4によれば、自立補助部材20、30、40、50が、可動部61との連結端部から所定長のケーブル部分にて、固定部62との連結端部に向かって逓減するように一体化されているので、該ケーブル部分を適度な剛性を持って支えることになり、当該ケーブル1、2、3、4をケーブルベア内部に収納しなくても、可動部61の移動時の当該ケーブル1、2、3、4の上下変動を抑制することができる。更に、自立補助部材20、30、40、50は当該ケーブル1、2、3、4と一体化されているので擦れることは無く、ケーブルベアは不要となるので、ケーブルベアで発生した課題は解消されることになる。
【0038】
尚、本発明の範囲は上述した実施形態や実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に反しない限り、他の様々な実施形態に適用可能である。
例えば、上記実施例では、図5において、61を可動部及び62を固定部としたが、61を固定部及び62を可動部とした場合、あるいは61及び62を可動部とした場合にも、本発明は適用できることは言うまでもないことである。
更に、上記実施形態では、自立補助部材20、30、40、50を一側のケーブル面の各ケーブルユニット10間に設けたが、両側のケーブル面の各ケーブルユニット10間に設けても良い。
また、上記実施形態では、自立補助部材20、30、40、50をケーブル幅方向の両外側のケーブルユニット10間から内側のケーブルユニット10間に向かうに従って段階的に、もしくは漸次に短かくなるように形成したが、並列融着されたケーブルユニット10自体の剛性が高い場合は上記形態に限定されない。即ち、ケーブル自立部分1a、2a、3a、4aの両外側は自重により垂れ下がり難い場合は、ケーブル幅方向の両外側のケーブルユニット10間の自立補助部材20、30、40、50を最長にする必要は無く、また、内側のケーブルユニット10間の自立補助部材20、30、40、50を最短にする必要も無い。例えば、自立補助部材20、30、40、50をケーブル幅方向の両外側のケーブルユニット10間から内側のケーブルユニット10間に向かうに従って段階的に、もしくは漸次に長くなるように形成し、あるいは一旦長く形成した後に短かくなるように形成しても良い。
また、上述した各実施形態の自立型ケーブル1、2、3、4は平型としたが、これに限定されるものでは無く、筒型等のケーブルであっても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る自立型ケーブルは、例えば機械加工ライン、半導体製造装置、電子部品実装装置等に組み込まれたロボット走行装置等に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る自立型ケーブルの第1の実施形態を示す平面図及びA−A線断面図である。
【図2】本発明に係る自立型ケーブルの第2の実施形態を示す平面図及びA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る自立型ケーブルの第3の実施形態を示す平面図及びA−A線断面図である。
【図4】本発明に係る自立型ケーブルの第4の実施形態を示す平面図及びA−A線断面図である。
【図5】移動試験装置を示す平面図である。
【図6】移動繰り返し試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1、2、3、4、1A、1B、1C、1D 自立型ケーブル、1a、2a、3a、4a ケーブル自立部分10 ケーブルユニット、20、30、40、50 自立補助部材、51 切り込み、60 移動試験装置、61 可動部、62 固定部、63 移動面、64 基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配置された、往復移動する可動部と固定された固定部に、一端側と他端側がそれぞれ連結される自立型ケーブルであって、
前記一端側から所定長のケーブル部分にて、前記他端側に向かって逓減するように一体化された自立補助部材を備えていることを特徴とする自立型ケーブル。
【請求項2】
前記自立補助部材のケーブル長方向の長さが、ケーブル幅方向の両外側から内側に向かうに従って段階的もしくは漸次に短くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自立型ケーブル。
【請求項3】
前記自立補助部材が、樹脂チューブの融着、樹脂シートの融着もしくは樹脂材の充填により一体化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自立型ケーブル。
【請求項4】
前記自立補助部材が、前記一端側から所定長のケーブル部分を被覆する樹脂チューブであって、当該チューブ径方向に延びる切り込みを有する樹脂チューブであることを特徴とする請求項1に記載の自立型ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−102773(P2009−102773A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276852(P2007−276852)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000145530)株式会社潤工社 (71)
【Fターム(参考)】