説明

臭素およびヨウ素含有フッ素プラスチックポリマーを特徴とする共硬化性ブレンド

【課題】フルオロポリマーを提供すること。
【解決手段】(a)(i)臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせ、(ii)フッ素化モノマーから誘導される単位を含むフッ素プラスチックと、(b)過酸化物硬化性フルオロエラストマーゴムと、を含む共硬化性ブレンドが提供される。本発明は、(i)臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせ、(ii)フッ素化モノマーから誘導される単位を含むフッ素プラスチックと、過酸化物硬化性フルオロエラストマーゴムと、過酸化物硬化剤と、任意に助剤と、を含む組成物も提供する。そのフッ素プラスチックは、5g/10分以下のMFIを有し、および/または100nmを超える平均粒径を有する。本発明は、フルオロポリマーブレンドおよび硬化物品を製造する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、商業的に有用な種類の材料である。フルオロポリマーとしては、
例えば、架橋フルオロエラストマー、非架橋フルオロエラストマーゴム、および半結晶性
プラスチックが挙げられる。フルオロポリマーは、高温および苛酷な化学環境に対して著
しい耐性を示す。それらは特に、封止材、ガスケット、および高温および/または強い化
学薬品にさらされるシステムにおける他の成形品として有用である。かかる部品は、とり
わけ自動車、化学処理、半導体、航空宇宙産業、および石油産業で広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,937,690号明細書
【特許文献2】米国特許第4,035,565号明細書
【特許文献3】米国特許第4,243,770号明細書
【特許文献4】米国特許第5,285,002号明細書
【特許文献5】米国特許第5,378,782号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般に、本発明は、フッ素プラスチックと組み合わせて、過酸化物硬化性フルオロエラ
ストマーゴムを含む共硬化性(co−curable)ブレンド組成物を特徴とする。フ
ッ素プラスチックは、(a)少なくとも1つの臭素原子、ヨウ素原子、またはその組み合
わせと、(b)少なくとも1つのフッ素化モノマーから誘導される単位と、を含む。臭素
および/またはヨウ素原子が存在することによって、フッ素プラスチックをフルオロエラ
ストマーゴムと共硬化することが可能になり、その結果、引張り強さ、引裂き強度、低温
収縮等の向上した物理的性質を有する硬化物品が得られる。一実施形態において、フッ素
プラスチックは、(372℃および5kgで測定した際に)5グラム以下/10分のメル
トフローインデックス(MFI)を有する。高温で応力下にある間、ブレンドの高分子量
(低MFI)フッ素プラスチック相はプラスチック相の流れを低減する。その他の実施形
態において、フッ素プラスチックは、100nmを超えるラテックスの平均粒径を有する
。その他の実施形態において、本発明は、(i)臭素原子、ヨウ素原子、またはその組み
合わせ、(ii)フッ素化モノマーから誘導される単位を含むフッ素プラスチックを提供
する工程であって、前記フッ素プラスチックが、(372℃および5kgで測定した際に
)5以下のメルトフローインデックスを有し、および/または100nmを超える平均粒
径を有する工程と、過酸化物硬化性フルオロエラストマーゴムを提供する工程と、そのフ
ッ素プラスチックおよびフルオロエラストマーゴムをブレンドする工程と、を含む、フル
オロポリマーブレンドを製造する方法を提供する。ブレンドおよび物品の用途としては、
例えば自動車および航空宇宙産業に関連する用途におけるOリング、ガスケット、管材料
、および封止材が挙げられる。
【0005】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の説明で述べられる。本発明の他の
特徴、目的、および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかであるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
このフッ素プラスチックは、臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせ、および少
なくとも1つのフッ素化モノマーから誘導される単位を含む。さらに、フッ素プラスチッ
クは、5以下のメルトフローインデックスおよび/または100nmを超えるラテックス
の粒径を有する。臭素およびヨウ素原子によって、フルオロエラストマーゴムと合わせた
場合に、フッ素プラスチックは硬化反応に関与することが可能となる。フッ素プラスチッ
クは、約0.001モル%〜約15モル%、好ましくは約0.01〜10モル%の様々な
量で、少なくとも1つのエチレン不飽和を含有する1種または複数種のモノマーを有する
、わずかに変性したテトラフルオロエチレンポリマー(約5モルパーセント(モル%)未
満のコモノマー)、またはテトラフルオロエチレンコポリマー(少なくとも約5モル%の
コモノマー)で形成することができる。フッ素プラスチックの融点は、約150〜325
℃、さらに好ましくは約200〜325℃、最も好ましくは約230〜315℃の範囲で
ある。この高い融点は、硬化ブレンドの高温性能特性を高める。
【0007】
フッ素プラスチックに適したモノマーの例としては、オレフィン、フルオロオレフィン
、およびパーフルオロオレフィン(例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプ
ロピレン、フッ化ビニリデン、およびエチレン)および式CF=CF(OCFCF(
CF))(O(CFOR(式中、m=0〜2、n=0〜6、p=0〜6
、およびRは、C〜Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロビニルエー
テルが挙げられる。具体的な例としては、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE
;m=0、n=0、p=0、R=CF)、パーフルオロメトキシプロピルビニルエー
テル(PMPVE;m=0、n=3、p=1、R=CF)、パーフルオロプロピルビ
ニルエーテル(PPVE−1;m=0、n=0、p=0、R=CFCFCF)、
パーフルオロプロピルビニルエーテル−2(PPVE−2;m=1、n=0、p=0、R
=CFCFCF)、およびその組み合わせが挙げられる。パーフルオロアルコキ
シビニルエーテルもまた、単独で、または他のフッ素化モノマーと組み合わせて含まれる
ことができる。好ましいモノマーとしては、パーフルオロオレフィンおよびパーフルオロ
ビニルエーテルが挙げられる。
【0008】
臭素およびヨウ素原子は、いくつかの方法でフッ素プラスチックに組み込むことができ
る。一実施形態において、フッ素化モノマーを、臭素もしくはヨウ素含有モノマー、例え
ばブロモトリフルオロエチレン(BTFE)、臭素もしくはヨウ素含有パーフルオロビニ
ルエーテル、4−ブロモパーフルオロビニルブテンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−
テトラフルオロ−1−ブテンと共重合させる。その他の実施形態において、臭素またはヨ
ウ素含有連鎖移動剤の存在下にて、フッ素化モノマーを重合させる。有用な連鎖移動剤と
しては、ジヨードメタン、ジブロモメタン、ジブロモパーフルオロメタン、1,4−ジヨ
ードパーフルオロブタン、および1,4−ジブロモパーフルオロブタンが挙げられる。
【0009】
目的の結果を達成するために、有効量の硬化部位モノマーがフッ素プラスチックにおい
て使用される。この量を増加して、フルオロエラストマーとの結合を高め、この量を低減
して、フッ素プラスチックの変性を最小限に抑える。フッ素プラスチックにおける硬化部
位モノマーの量は、好ましくは少なくとも約0.001モル%、さらに好ましくは少なく
とも約0.01モル%の範囲である。フッ素プラスチックにおける硬化部位モノマーの量
は、好ましくは約5モル%未満、さらに好ましくは約2モル%未満の範囲である。
【0010】
フッ素プラスチックは、非テロゲン性(non−teleogenic)フッ素含有界
面活性剤の存在下で水性乳化重合によって重合することが好ましい。重合後、ポリマー粒
径は通常、約100〜500nmの範囲である(または約100〜250nmの範囲でさ
えある)。
【0011】
重合全体を通して連続的に、またはプレチャージでのバルク添加として、またはさらに
好ましくはコア・シェル法によって、連鎖移動剤および/または硬化部位モノマーを組み
込むことによって、臭素および/またはヨウ素を本発明のフッ素プラスチックに組み込む
ことができる。他の有用なコア・シェル重合法は、最初に、フッ素化モノマー含有組成物
の少なくとも80重量パーセント(重量%)(好ましくは、少なくとも90重量%)を重
合させ、その後に臭素および/またはヨウ素供給源を反応器内に導入し、フッ素化ポリマ
ーと共重合させる、乳化重合を含む。最終結果は、そのコアが主に、フッ素化モノマーか
ら誘導された単位を含有し、シェルが、ヨウ素および/またはヨウ素含有硬化部位を含有
する、コア・シェル構造を有し得るフッ素プラスチックである。
【0012】
フッ素プラスチックをフルオロエラストマーゴムおよび硬化剤組成物と合わせて、硬化
性ブレンドを形成することができる。ブレンド中のフッ素プラスチックの量は通常、ブレ
ンドの全重量を基準として、約1〜50重量%、好ましくは約5〜50重量%、さらに好
ましくは約10〜30重量%である。フッ素プラスチックは、示差走査熱量測定によりは
っきりと分かる融点を有することによって、フルオロエラストマーと区別される。
【0013】
フルオロエラストマーゴムは、臭素および/またはヨウ素原子を含むことが好ましい。
適切なフルオロエラストマーゴムの例は、(特許文献1)、(特許文献2)および(特許
文献3)に記載されている。
【0014】
有用な硬化剤としては、過酸化物が挙げられる。有用な過酸化物の例としては、ジアル
キル過酸化物が挙げられ、ジ−t−ブチル過酸化物が特に好ましい。具体的な例としては
、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3および2,5
−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサンが挙げられる。有用な過酸
化物の他の例としては、ジクミルペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸t−ブ
チル、およびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルパーオキシ)−ブチル]カーボネ
ートが挙げられる。
【0015】
1種または複数種の助剤(coagent)を過酸化物と合わせてもよい。例としては
、トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート;トリ(メタリル)−イソシア
ヌレート;トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、亜リン酸トリアリル;N,N−
ジアリルアクリルアミド;ヘキサアリルホスホルアミド;N,N,N’N’−テトラアリ
ルテレフタルアミド;N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド;トリビニルイソ
シアヌレート;2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン;およびトリ(5−ノルボ
ルネン−2−メチレン)シアヌレートが挙げられる。
【0016】
硬化性ブレンドは充填剤を含有して、硬化性ブレンドおよび硬化されたブレンドのどち
らの物理的性質も改善することもできる。適切な充填剤の例としては、補強剤(例えば、
サーマルカーボンブラックまたは非黒色顔料)、シリカ、グラファイト、粘土、タルク、
珪藻土、硫酸バリウム、酸化チタンおよびその組み合わせが挙げられる。組成物に単独で
、または1種または複数種の充填剤と組み合わせて添加してもよい他の成分としては、例
えば、酸化金属、可塑剤、潤滑剤、緩染剤、加工助剤、顔料、およびその組み合わせが挙
げられる。
【0017】
このように、本発明は、(i)臭素原子、ヨウ素原子、またはその組み合わせ、(ii
)フッ素化モノマーから誘導される単位を含むフッ素プラスチック、過酸化物硬化性フル
オロエラストマーゴム、過酸化物硬化剤、任意に助剤、任意に1種または複数種の充填剤
または添加剤を含む組成物であって、前記フッ素プラスチックが、5以下のMFIを有し
、および/または100nmを超える平均粒径を有する組成物を提供する。
【0018】
本発明の共硬化性ブレンドを調製するのに好ましい一方法は、所望の比でのフルオロエ
ラストマーおよびフッ素プラスチックラテックスの共凝固(co−coagulatio
n)による方法である。ラテックスのブレンディングによって、フルオロエラストマーゴ
ムおよびフッ素プラスチックが完全かつ均一に混合された、実質的に均一なブレンドが形
成されることから、ラテックスのブレンディングが好ましい。
【0019】
フルオロエラストマーゴムおよびフッ素プラスチックラテックスは、水性乳化重合技術
を用いて製造することが好ましい。この目的に適した重合開始剤としては、過マンガン酸
塩開始剤が挙げられ、過マンガン酸カリウムが特に好ましく、過硫酸塩開始剤が挙げられ
、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウムが特に好ましい。(特許文献4)および(特
許文献5)に記載のように、開始系の一部として、スルフィン酸塩も使用することができ
る。フッ素プラスチックは反応物を均一に、またはコア・シェル材料として組み込むこと
によって製造することができ、実質的な量の臭素/ヨウ素含有コモノマーまたは連鎖移動
剤を添加する前に、組成物の少なくとも75%が重合される。
【0020】
塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム等の塩の添加を含む方法、および超音波および凍
結凝固などの塩を含まない方法などの公知の方法によって、ラテックスを凝固することも
できる。
【0021】
硬化前に、好ましくは、ゴムストック中に細粉固体を粉砕することによって、凝固され
、洗浄かつ乾燥した硬化性ブレンドを硬化剤と合わせる。しかしながら、バンバリーミキ
サーなどの他の従来のゴム混合装置も使用することができる。早すぎる硬化または「スコ
ーチ」を防ぐために、混合中の温度は約120℃を超える温度に上げるべきではない。
【0022】
成形および硬化プロセスは通常、金型、例えば流し込成形金型またはトランスファー成
形用金型で配合ブレンドを圧縮成形し、続いてオーブン硬化させることを含む。配合ブレ
ンドの圧縮成形(プレス加硫)は通常、約95℃〜約230℃、好ましくは約150℃〜
約205℃の温度で5分〜約5時間、通常5分〜30分間行われる。約500kPa〜約
15,000kPa、好ましくは約4,000kPa〜約8,000kPaの圧力が、金
型内の配合混合物にかけられる。次いで、成形された加硫物を通常、試料の断面厚に応じ
て、約150℃〜約260℃、通常約232℃で約2時間〜30時間以上の間、後硬化(
オーブン硬化)する。厚い部分に関しては、後硬化中の温度は通常、その範囲の下限から
、選択される所望の最高温度まで徐々に上げられる。薄い断面、例えば5mm未満につい
ては、加硫物または硬化シート部分を所望の最大温度のオーブン内に入れる。
【0023】
ここで、本発明は以下の実施例によってさらに説明されるだろう。
【実施例】
【0024】
示される結果は、別段の指定がない限り、以下の試験法を用いて得られた。試験結果は
以下の表に示す。
【0025】
試験法
メルトフローインデックス(MFI):メルトフローインデックスは、ゴットフェルト
タイプ(Goettfert Type)011メルトインデクサーで測定される。測定
は、DIN 53735に従って5kgおよび372℃で行った。
【0026】
粒径:重合されたラテックス中のポリマー粒子の平均粒径は、ISO 13321に従
って、マルバーン・ゼータサイザー(Malver zeta sizer)100HS
で測定された。
【0027】
融点:ASTM D 4591−01
【0028】
PPVE−1の重量%:本明細書に記載のポリマー中のポリプロピルビニルエーテル(
PPVE)含有率は、ニコレ(Nicolet)DX 510 FT−IR分光計を使用
して赤外分光法によって決定された。PPVEは993cm−1で赤外バンドから決定さ
れ、993cm−1吸光度と2365cm−1吸光度との比×0.95として計算された

【0029】
BTFEの重量%:リガク(Rigaku)3370波長分散形X線螢光分光計、真空
雰囲気、および直径20mmの測定領域を用いて、XRF(蛍光X線)により半定量的に
試料を分析した。臭素の重量パーセント分析は、検量法を用いて行った。各試料を3回ス
キャンし、その平均を計算した。較正標準のうちの1つも既知の試料として分析し、較正
曲線を確認した。次いで、BTFE重量パーセントを臭素重量パーセントから計算した。
【0030】
硬化レオロジー:ASTM D 5289−93aに従って、177℃、予熱なし、経
過時間12分、および弧0.5度にてアルファテクノロジーズ・可動ダイレオメーター(
Alpha Technologies Moving Die Rheometer)
(MDR)2000モデルを使用して、未硬化の配合試料について試験を行った。プラト
ーまたは最大トルク(M)が得られない場合に、指定の時間の間に得られた最小トルク
(M)および最高トルクの両方を測定した。トルクがMを2単位超えて増加する時間
(「t2」)、トルクがM+0.5(M−M)に等しい値に達する時間(「t’
50」)、およびトルクがM+0.9(M−M)に達する時間(「t’90」)も
また測定した。
【0031】
プレス加硫:物理的性質性質の決定のために、別段の指定がない限り、約6.9メガパ
スカル(MPa)で177℃にて10分間加圧することによって、150×150×2.
0mmの試料シートを作製した。
【0032】
後硬化:後硬化した試料シートを空気中232℃で16時間熱にさらした。試験前に、
試料を周囲温度に戻した。
【0033】
物理的性質:ASTM D 412−92を用いて、後硬化したシートからASTMダ
イDで切断された試料について、破断点引張強さ、破断点伸び、100%伸び率における
モジュラスを決定した。
【0034】
硬度:タイプAショア・デュロメーター(Type A Shore Durom
eter)でASTM D 2240−85法を用いて、試料を測定した。その単位は、
ショアAスケールでのポイントで報告される。
【0035】
圧縮永久ひずみ:ASTM 395−89法B、200℃で70時間、たわみ25%を
用いて、Oリング試料を測定した。Oリングは断面厚3.5mmを有した。その結果は、
元のたわみのパーセンテージとして報告される。
【0036】
引裂き強度:後硬化したシートからASTMダイCで切断された試料について、AST
M D 624−00を用いて引裂き強度を決定した。その単位は、kN/mで報告され
る。
【0037】
収縮の温度(TR):低温での収縮(TR−10)は、ASTM D 1329−88
(1993に再承認された)に従って冷却媒体としてエタノールを用いて決定した。その
単位は、摂氏(℃)で報告される。破断伸びの50%で決定された。
【0038】
材料および製造
フルオロエラストマーA:フッ化ビニリデン(VDF)63.8モル%、テトラフルオ
ロエチレン(TFE)16.0モル%、パーフルオロメトキシプロピルビニルエーテル(
PMPVE)19.8モル%、BTFE0.4モル%の共重合単位を有するフルオロポリ
マーを水性乳化重合によって製造した。
【0039】
フッ素プラスチックB:TFE98.6モル%、PPVE−1 1.4モル%の共重合
単位を有するフルオロポリマーを水性乳化重合によって製造した。230rpmの撹拌器
を備えた40Lステンレス鋼反応器に、脱イオン水29L、ペルフルオロオクタン酸アン
モニウム(APFO)の30重量%溶液150gを装入した。そのシステムをガス抜きし
た後、反応器を63℃に加熱し、エタンを0.11バールに達するまで導入し、続いてP
PVE−1 200gを装入した。圧力13バールに達するまで、TFEを反応器に導入
した。水50gに溶解した重合開始剤ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)1.2g
を導入して、重合を開始した。TFEおよび更なるPPVE−1を1:0.041の比で
供給することによって、圧力を一定に維持した。TFEの総量が7.0kgに達するまで
、重合を続けた。次いで、TFEの供給を閉じることによって、重合を止め、反応器をガ
ス抜きし、排出した。固形分20.1%の分散液36.5kgを得た。このポリマーは表
1に示す特性を有した。
【0040】
フッ素プラスチックC:TFE98.4モル%、PPVE−1 1.6モル%、BTF
E0.001モル%の共重合単位を有するフルオロポリマーを水性乳化重合によって製造
した(「フッ素プラスチックBの製造」を参照)。この手順は、TFEの総量が6.3k
gに達し、BTFE5gが反応器に装入されたことを除いては、フッ素プラスチックBと
同一であった。TFEの総量が7.0kgに達するまで、重合を続けた。次いで、TFE
の供給を閉じることによって、重合を止め、反応器をガス抜きし、排出した。固形分20
.2%の分散液36.8kgを得た。このポリマーは表1に示す特性を有した。
【0041】
フッ素プラスチックD:TFE98.3モル%、PPVE−1 1.6モル%、BTF
E0.06モル%の共重合単位を有するフルオロポリマーを水性乳化重合によって製造し
た(「フッ素プラスチックBの製造」を参照)。この手順は、BTFE25gが反応器に
装入されたことを除いては、フッ素プラスチックCと同一であった。固形分20.1%の
分散液36.6kgを得た。このポリマーは表1に示す特性を有した。
【0042】
フッ素プラスチックE:TFE98.4モル%、PPVE−1 1.5モル%、BTF
E0.13モル%の共重合単位を有するフルオロポリマーを水性乳化重合によって製造し
た(「フッ素プラスチックBの製造」を参照)。この手順は、BTFE50gが反応器に
装入されたことを除いては、フッ素プラスチックCと同一であった。固形分19.9%の
分散液36.8kgを得た。このポリマーは表1に示す特性を有した。
【0043】
フッ素プラスチックF:TFE98.0モル%、PPVE−1 1.7モル%、BTF
E0.33モル%の共重合単位を有するフルオロポリマーを水性乳化重合によって製造し
た(「フッ素プラスチックBの製造」を参照)。この手順は、BTFE100gが反応器
に装入されたことを除いては、フッ素プラスチックCと同一であった。固形分20.2%
の分散液36.8kgを得た。このポリマーは表1に示す特性を有した。
【0044】
実施例1〜4
フルオロエラストマーAのラテックス(固形分30重量%)をフッ素プラスチックC(
固形分20.2重量%)とブレンドした。ブレンドの比は、固形分に基づいて80:20
重量%(A:C)であった。ラテックスのブレンドをMgCl・6HO溶液(脱イオ
ン水2500g中にMgCl60g)で凝固させ、熱水(70℃)で洗浄し、130℃
で16時間乾燥させた。標準法を用いて、2本ロールミルでブレンド125gをTAIC
−DLC−A(ハーウィック社(Harwick)から市販のトリアリルイソシアヌレー
ト、72重量%)3.5g、ヴァロックス(Varox)DBPH−50(R.T.ヴァ
ンダービルト(Vanderbilt)社から市販の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t
−ブチルパーオキシ)−ヘキサン)2.5g、UPS−1(米国ジンク社(Zinc C
orp. of America)から市販の酸化亜鉛)3gと配合した。未硬化の配合
試料について、硬化レオロジー試験を実施した。配合混合物のシートおよびOリングをプ
レス加硫し、続いて後硬化した。後硬化した試料を様々な特性について試験した。すべて
の試験結果が表2に含まれる。実施例2〜4については、ブレンドの比および試験法は実
施例1と同一であった。実施例2については、フルオロエラストマーAのラテックス(固
形分30重量%)をフッ素プラスチックD(固形分20.1重量%)とブレンドした。実
施例3については、フルオロエラストマーAのラテックス(固形分30重量%)をフッ素
プラスチックE(固形分19.9重量%)とブレンドした。実施例4については、フルオ
ロエラストマーAのラテックス(固形分30重量%)をフッ素プラスチックF(固形分2
0.2重量%)とブレンドした。
【0045】
比較例1
フルオロエラストマーAのラテックス(固形分30重量%)をフッ素プラスチックB(
固形分20.1重量%)とブレンドした。ブレンドの比および方法は実施例1と同一であ
った。すべての試験結果は表2に含まれる。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
この結果から、対照のブレンド実施例を他の実施例を比較すると、架橋密度(M−M
)、引張り強さ、伸び、引裂き強度、および低い収縮温度を含む、1つまたは複数の特
性が改善されたことが示されている。
【0049】
本発明の多くの実施例が記述されている。それにもかかわらず、本発明の精神および範
囲から逸脱することなく種々の修正を加えることができることは理解されよう。したがっ
て、他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせ、(ii)フッ素化モノマ
ーから誘導される単位を含むフッ素プラスチックと;(b)過酸化物硬化性フルオロエラ
ストマーゴムと;を含む共硬化性ブレンドであって、前記フッ素プラスチックが、(37
2℃および5kgで測定した際に)5以下のメルトフローインデックスを有する、共硬化
性ブレンド。
【請求項2】
前記臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせが、臭素含有硬化部位モノマー、ヨ
ウ素含有硬化部位モノマー、およびその組み合わせから誘導される、請求項1に記載の共
硬化性ブレンド。
【請求項3】
前記硬化部位モノマーが、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン
、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の共硬化性ブレンド

【請求項4】
前記臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせが、臭素含有連鎖移動剤、ヨウ素含
有連鎖移動剤、およびその組み合わせから誘導される、請求項1に記載の共硬化性ブレン
ド。
【請求項5】
前記連鎖移動剤が、ジヨードメタン、ジブロモメタン、1,4−ジヨードパーフルオロ
ブタン、1,4−ジブロモパーフルオロブタン、およびその組み合わせからなる群から選
択される、請求項4に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項6】
前記フッ素化モノマーが、パーフルオロオレフィン、パーフルオロビニルエーテル、お
よびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項7】
前記パーフルオロオレフィンが、テトラフルオロエチレンを含む、請求項6に記載の共
硬化性ブレンド。
【請求項8】
前記パーフルオロビニルエーテルが、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフル
オロアルコキシビニルエーテル、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求
項6に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項9】
(a)臭素含有硬化部位モノマー、ヨウ素含有硬化部位モノマー、またはその組み合わ
せと、(b)テトラフルオロエチレンと、(c)パーフルオロアルキルビニルエーテルと
の反応生成物を含む、請求項1に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項10】
前記フッ素プラスチックがコア・シェルポリマーの形をとり、そのコアがフッ素化モノ
マーから誘導される単位を含み、かつそのシェルが臭素原子、ヨウ素原子、またはその組
み合わせを含む、請求項1に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項11】
前記ブレンドがラテックスの形をとる、請求項1に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項12】
前記フッ素プラスチックの融点が>230℃である、請求項1に記載の共硬化性ブレン
ド。
【請求項13】
前記フルオロエラストマーが、臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせを含む、
請求項1に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項14】
(a)(i)臭素原子、ヨウ素原子、またはその組み合わせ、(ii)フッ素化モノマ
ーから誘導される単位を含むフッ素プラスチックと;(b)過酸化物硬化性フルオロエラ
ストマーゴムと;(c)過酸化物硬化剤と;任意に(d)助剤と;を含む組成物であって
、前記フッ素プラスチックが、(372℃および5kgで測定した際に)5以下のメルト
フローインデックスを有し、および/または100nmを超える平均粒径を有する、組成
物。
【請求項15】
請求項14に記載の組成物から誘導される硬化された造形品。
【請求項16】
(a)(i)臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせ、(ii)フッ素化モノマ
ーから誘導される単位を含むフッ素プラスチックと;(b)過酸化物硬化性フルオロエラ
ストマーゴムと;含む共硬化性ブレンドであって、前記フッ素プラスチックが100nm
を超える平均粒径を有する、共硬化性ブレンド。
【請求項17】
前記フッ素プラスチックがコア・シェルポリマーの形をとり、そのコアがフッ素化モノ
マーから誘導される単位を含み、かつそのシェルが臭素原子、ヨウ素原子、またはその組
み合わせを含む、請求項16に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項18】
前記ブレンドがラテックスの形をとる、請求項16に記載の共硬化性ブレンド。
【請求項19】
(a)(i)臭素原子、ヨウ素原子、およびその組み合わせ、(ii)フッ素化モノマ
ーから誘導される単位を含むフッ素プラスチックを提供する工程と、
(b)過酸化物硬化性フルオロエラストマーゴムを提供する工程と、
(c)前記フッ素プラスチックおよび前記フルオロエラストマーゴムをブレンドする工
程と、
を含む、フルオロポリマーブレンドを製造する方法であって、
前記フッ素プラスチックが、(372℃および5kgで測定した際に)5以下のメルト
フローインデックスを有し、および/または100nmを超える平均粒径を有する、方法

【請求項20】
フッ素プラスチックとフルオロエラストマーとのブレンドと過酸化物硬化剤をブレンド
することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ブレンドを硬化させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。

【公開番号】特開2010−242108(P2010−242108A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177611(P2010−177611)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2004−566925(P2004−566925)の分割
【原出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】