説明

舗装用バインダ製造方法

【課題】アスファルトバインダの代替品となる舗装用バインダを製造可能な舗装用バインダ製造方法を提供する。
【解決手段】植物由来油、植物由来油の廃油、食用動物性油脂、食用動物性油脂の廃物、の少なくとも1つを含む原料を、重合、縮合及び架橋の少なくとも1つによって高分子化させ舗装用バインダを得ることを特徴とする舗装用バインダ製造方法である。また、植物由来油は、ジャトロファ油、菜種油、椰子油、大豆油、コーン油、オリーブ油、椿油、ベニバナ油の少なくとも1種であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装用バインダ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装用バインダとして、石油製品であるアスファルトや、アスファルトに各種添加剤を添加した改質アスファルト等のアスファルトバインダが広く知られている(非特許文献1)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】土木学会土構造物および基礎委員会・「舗装工学」編集委員会編集、舗装工学、社団法人土木学会、平成7年5月25日、第1版・第2刷、p.162−177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アスファルトは、限りのある資源であるから、その代替品の開発が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、アスファルトバインダの代替品となる舗装用バインダを製造可能な舗装用バインダ製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、植物由来油、前記植物由来油の廃油、食用動物性油脂、前記食用動物性油脂の廃物、の少なくとも1つを含む原料を、重合、縮合及び架橋の少なくとも1つによって高分子化させ舗装用バインダを得ることを特徴とする舗装用バインダ製造方法である。
【0007】
このような構成によれば、植物由来油、前記植物由来油の廃油、食用動物性油脂、食用動物性油脂の廃物の廃物、の少なくとも1つ含む原料を、重合、縮合及び架橋の少なくとも1つによって高分子化させて舗装用バインダを得ることができる。
すなわち、植物由来油等を含む原料を、重合、縮合及び架橋の少なくとも1つによって高分子化させることにより、その高分子量が大きく、粘度が高くなり、舗装用バインダを得る。
【0008】
また、前記舗装用バインダ製造方法において、植物由来油は、ジャトロファ油、菜種油、椰子油、大豆油、コーン油、オリーブ油、椿油、ベニバナ油の少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アスファルトバインダの代替品となる舗装用バインダを製造可能な舗装用バインダ製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る舗装用バインダ製造方法の実施状況を示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る舗装用バインダ製造方法を説明する図であり、(a)は酸素による酸化重合、(b)は酸素による脱水素縮合、(c)、(d)は硫黄(架橋剤)による架橋、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図2を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係る舗装用バインダ製造方法は、植物由来油等を含む原料Gを、重合、縮合及び架橋の少なくとも1つによって高分子化させ舗装用バインダを得ることを特徴としている。
【0013】
<原料>
原料Gとしては、植物由来油、植物由来油の廃油、食用動物性油脂、食用動物性油脂の廃物、の少なくとも1つを使用できる。すなわち、原料Gは、植物由来油、植物由来油の廃油、食用動物性油脂、食用動物性油脂の廃物のいずれかを単体としても使用できるし、または、これらの複数の混合物、つまり、これらのいくつかを組み合わせたものも使用できる。
【0014】
植物由来油とは、植物から採取される油であり、例えば、ジャトロファ油、菜種油、椰子油、大豆油、コーン油、オリーブ油、椿油、ベニバナ油(サフラワー油)の少なくもの1種を使用できる。また、その他の種類の植物由来油も適宜に使用できる。
植物由来油の廃油とは、前記した植物由来油の廃油である。すなわち、植物由来油の廃油は、例えば、菜種油、コーン油、オリーブ油等の食用の植物由来油の廃油(植物由来油の廃食用油)を含む。
食用動物性油脂とは、例えば、ラード(豚脂)である。
食用動物性油脂の廃物とは、例えば、ラード(豚脂)の廃物である。
【0015】
<高分子化−重合方法>
原料Gを高分子化させるための重合方法としては、例えば、酸化重合方法を採用できる。
具体的には、図1に示すように、原料Gを、適宜な容器11に入れ、ヒータ12(マントルヒータ等、加熱手段)で加熱しながら、撹拌装置13で撹拌する。そして、このように加熱・撹拌しながら、酸素導入管14を介して、原料G内に、酸素又は酸素を含む空気(気体)を吹き込む。そうすると、図2(a)に示すように、酸化重合反応が進行し、つまり、原料Gに含まれる低分子の二重結合が切断し、低分子が酸素原子を介して結合し、高分子化する。
【0016】
この場合において、原料Gと酸素との接触面積が大きくなるにつれて、前記酸化重合反応の進行速度が大きくなるから、例えば、酸素の吹き込み流量を多くしたり、複数の酸素導入管14を使用したりすることが好ましい。
なお、後記する縮合方法、架橋方法によって高分子化する場合についても同様ある。
【0017】
また、この場合において、原料Gの温度が高くなるにつれて、前記酸化重合反応の進行速度が大きくなるから、ヒータ12によって原料Gの温度をなるべく高くすることが好ましい。
なお、後記する縮合方法、架橋方法によって高分子化する場合についても同様ある。
【0018】
また、この場合において、原料Gに触媒15を混入させることにより、前記酸化重合反応を促進できる。このような触媒15としては、銅、鉄、マンガン、クロム、ニッケル等から適宜に選択して使用できる。
なお、後記する縮合方法、架橋方法によって高分子化する場合についても同様ある。
【0019】
また、この場合において、適宜な照射装置16によって、原料Gに光線(紫外線、可視光線等)を照射することで、前記酸化重合反応を促進できる。なお、光線の波長が短くなるにつれて、そのエネルギが大きくなるので、前記酸化重合反応をさらに促進できる。また、このように光線を照射することにより、原料G中にラジカルを生成し、ラジカル重合によって、原料Gを高分子化することもできる。
なお、後記する縮合方法、架橋方法によって高分子化する場合についても同様である。
【0020】
<高分子化−縮合>
原料Gを高分子化させるための縮合方法としては、例えば、脱水素縮合方法を採用できる。
具体的には、図1に示すように、原料Gを、適宜な容器11に入れ、加熱しながら撹拌する。そして、このように加熱・撹拌しながら、原料G内に、酸素又は酸素を含む空気(気体)を吹き込む。そうすると、図2(b)に示すように、脱水素縮合反応が進行し、つまり、原料Gに含まれる低分子の末端の水素が脱離すると共に、この末端が酸素原子を介して結合し、高分子化する。
【0021】
<高分子化−架橋>
原料Gを高分子化させるための架橋方法としては、例えば、原料Gに硫黄等の架橋剤を添加し、原料Gに含まれる低分子を架橋する方法を採用できる(図2(c)、図2(d)参照)。
【0022】
<舗装用バインダ>
このようにして原料Gを高分子化することで得られた舗装用バインダは、植物由来油等を原料Gとするので、枯渇することはない。そして、次の効果を得るので、アスファルトバインダの代替品として使用できる。
舗装用バインダは、高分子化したことによって、一般の舗装用アスファルトのように、感温性、つまり、温度が高くなるにつれて粘度が低くなる特性を有する。また、舗装用バインダは、応力緩和性、つまり、低温であっても適度な粘弾性を有し、低温クラックが発生し難い。
【0023】
そして、舗装用バインダは、一般の舗装用アスファルトと同等の特性を有するので、骨材(天然骨材、人口骨材)、ガラスカレット、ウッドファイバ、土等と混合することで舗装用混合物を製造し、舗装体を施工できる。
【0024】
また、このような舗装用バインダは、一般の脱色アスファルトと同等又はそれ以上の透明度を有するため、明色舗装や着色舗装にも好適に使用できる。
【0025】
また、このような舗装用バインダに、石油樹脂等の粘着性付与剤を添加することにより、骨材への付着性を高めることもできる。
また、このような舗装用バインダに、ゴムやエラストマ等の改質剤を添加することにより、感温性、耐流動性、低温脆性を改善できる。
【0026】
また、このような舗装用バインダを乳化して乳剤とすることにより、常温で使用することも可能となる。このような乳剤は、例えば、タックコートや、常温混合物用のバインダとして使用できる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、適宜に設計変更できる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づいて、本発明を、さらに具体的に説明する。
【0029】
1000mLのビーカー(容器11)に、原料Gとして菜種油(キャノーラ油、味の素食品社製)を700mL投入し、ヒータ12で200℃に加熱しつつ、空気を285(cc/min)で吹き込み、撹拌装置13で85時間にて撹拌し、菜種油を酸化させた。そうすると、菜種油は、高分子化(高粘度化)し、常温域〜高温域で、ゲル状態であった。
なお、高分子化に要する時間(酸化時間、撹拌時間)は、(1)空気に代えて酸素を吹き込み、(2)温度を200℃よりも高くし、(3)紫外線等を照射することにより、さらに短縮可能であると考えられる。ただし、(1)〜(3)の全てではなく、一部のみを実行する構成としてもよい。
【0030】
このようにして高分子化した菜種油をバインダとして、混合物用の骨材(密粒度アスファルト混合物(13))と混合し、マーシャル供試体を作製した。
【0031】
このようにして作製したマーシャル供試体について、気乾20℃の条件(常温・乾燥状態の条件、マーシャル供試体を60℃の水中で養生しない条件)で、マーシャル安定度試験を行った。マーシャル安定度は11.0(KN)、フロー値は42(1/10mm)であった。これにより、高分子化した菜種油は、例えば、歩道用舗装のバインダとして好適に使用可能であると考えられる。
【符号の説明】
【0032】
G 原料
11 容器
12 ヒータ(加熱手段)
13 撹拌装置
14 酸素導入管
15 触媒
16 照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来油、前記植物由来油の廃油、食用動物性油脂、前記食用動物性油脂の廃物、の少なくとも1つを含む原料を、重合、縮合及び架橋の少なくとも1つによって高分子化させ舗装用バインダを得る
ことを特徴とする舗装用バインダ製造方法。
【請求項2】
前記植物由来油は、ジャトロファ油、菜種油、椰子油、大豆油、コーン油、オリーブ油、椿油、ベニバナ油の少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項1に記載の舗装用バインダ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72078(P2013−72078A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214658(P2011−214658)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(390002185)大成ロテック株式会社 (90)
【Fターム(参考)】