説明

航空機および航空宇宙機産業用のメソ構造被膜

本発明は、
−少なくとも特定の1種の分子金属前駆物質からゾルゲル法によって両親媒性界面活性剤の存在下で製造された少なくとも1種のメソ構造層と、
−金属基板と、を含む構造体に係る。また、その製造方法および航空機または航空宇宙機産業での使用方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機および航空宇宙機用のメソ構造被膜を有する構造体に係わる。
【背景技術】
【0002】
航空機産業の分野において腐食からの保護は通常、例えばクロム陽極酸化法または化成被覆法を用いるクロム(VI)利用の表面処理によって行なわれる。
しかし、クロム(VI)は有毒で、発癌性を有し、かつ環境に害を及ぼすことが判明している。その使用はいずれ禁止されよう。
従って、例えば腐食からの保護のみならず掻き傷または摩擦作用などからの保護も実現する、既存の系と同等以上に高性能の新たな系を見出さなければならない。
当該技術分野では、ゾルゲル法で製造される有機/無機ハイブリッド材料がすでに構想されている。
例えば、特許文献1には、酢酸などの有機触媒の存在下にアルコキシジルコニウムなどの有機金属塩、オルガノシラン、およびボラート、亜鉛またはホスファート官能基を有する1種以上の化合物から出発するゾルゲル法により製造される、耐食性を具えた被膜が記載されている。
特許文献2および特許文献3には、それぞれ、鎖中に数個の硫黄原子を有する、多官能シランを主成分とする処理溶液、および二官能シランを主成分とする処理溶液の適用を含む金属腐食防止処理が記載されている。
しかし、これらの材料はマイクロ構造またはナノ構造を有しないという欠点を見せる。すなわち当該材料中での有機領域および無機領域の分布をマイクロメートルスケールまたはナノメートルスケールで制御することができない。このようにランダムな分布は材料の諸特性の再現性を損いかねない。
ゾルゲル処理の利点の一つは、「穏和」条件下で、すなわち従来の表面処理に用いられるものほど環境に対して有毒ではない水性媒質、または水性/溶媒媒質中で200℃より低温で、開始前駆物質から三次元網状組織を形成できることである。
ゾルゲル処理で通常用いられる開始前駆物質は、1個以上の加水分解性基を有する金属アルコキシドである。
最近、耐食性を有する上記以外の「メソ構造」被膜の説明が非特許文献1に記載された。
しかし、これらの被膜は、チタンアルコキシドから製造された光触媒材料であり、日光にさらされると急激に劣化した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/024432号
【特許文献2】米国特許第6,261,638号
【特許文献3】欧州特許第1097259号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】TiOx self−assembled networks prepared by templating approach as nanostructured reservoirs for self−healing anticorrosion pretreatments」、S.V.Lamaka et al.、Electrochemistry Communications、8、2006、421−428
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、特定の材料との有機/無機インターフェイスの性質をナノメートルスケールで制御すれば、より高性能な巨視的特性、すなわち、随意に調節できる耐食性、耐引掻き性および耐擦れ性、機械的強度、膜の厚みおよび品質、密度、色ならびに疎水性などを得られ、また、より高性能な再現性が得られることを、本願出願人は見出した。
上記制御は少なくとも1層の特定のメソ構造層と金属基板とを含む構造によって達成される。
ハイブリッドの無機メソ構造層は、特に知られ、L.Nicole et al.の論文「Mesostructured hybrid organic−inorganic thin films」、J.Mater.Chem.,2005,15,3598−3627に記載されている。
上記のメソ構造層は、気孔率が制御され、すなわち例えばBrunauer、EmmettおよびTeller(BET)法に従って測定された孔径が2〜50nmであり、また、ナノメートルスケールの構造を備えている。
該層は、ゾルゲル前駆物質および界面活性分子から得られる。この具体的な組み合わせが、界面活性分子を囲む無機網状組織またはハイブリッド網状組織の形成を可能とする。網状組織が形成された後に、メソ構造材料を得る。この材料全体に界面活性分子のミセルが定間隔に分布している。
このメソ構造層は、金属基板への良好な付着を示すと共に、金属基板(もしくは表面)、特に例えばアルミニウム合金、チタン合金もしくはマグネシウム合金、またはスチールに対して腐食からの保護、耐引掻き性および耐摩擦性の付与、優れた機械的強度の付与、および/または着色を行なうこと、および/または品質管理用のプローブの形成を可能にする多様な機能を有し得る。
しかもこれらの層は、幾つかの異なる機能の共存を可能にし得、また例えば浸漬塗布、回転する基板への積層(もしくはスピン塗布)、スプリンクル塗布、スプレー塗布または層流塗布(laminar−flow coating)、およびブラシで積層するなどといった通常手法のいずれかで塗布され得る。個々の成分を、その寿命が工業生産サイクルに適合するように、例えば12ヵ月以上となるように形成し、それらを材料適用の直前に混合することも可能である。この材料の調製には、環境規制に抵触しない成分が、特に主として水性媒質として用いられるという付加的な利点も有る。
【0006】
したがって、本発明の主題は、
−少なくとも1種の両親媒性界面活性剤の存在下で、
下記式:
MZ (1)、
R’MZn−x (2)、
MZn−mx (3)、または
(RO)nー1M−R”−M(OR)n−1 (4)
〔式(1)、(2)、(3)および(4)中、
MはAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、Sn(IV)、Nb(V)、V(V)、Ta(V)もしくはHf(V)、好ましくはAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Zr(IV)もしくはNb(V)であるか、またはY(III),La(III)およびEu(III)などの希土類金属であり、括弧内の数字はM原子の原子価を示し、
nはM原子の原子価を示し、
xは1からn−1までの整数であり、
各Zは、互いに独立に、F、Cl、BrおよびI、好ましくはClおよびBrなどのハロゲン原子、または−OR基であり、
Rはアルキル基、好ましくは炭素数1〜4を有する、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基またはt−ブチル基などのアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはエチル基であり、
【0007】
各R’は、互いに独立に、アルキル基、特にC1〜4アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基;アルケニル基、特にビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基およびブテニル基などのC2〜4アルケニル基;アルキニル基、特にアセチレニル基およびプロパルギル基などのC2〜4アルキニル基;アリール基、特にフェニル基およびナフチル基などのC6〜10アリール基;メタクリロイルオキシプロピル基などのメタクリロイルまたはメタクリルロイルオキシ(C1〜10アルキル)基;グリシジルおよびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基などの、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であって、アルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるもの;3−クロロプロピル基などのC2〜10ハロアルキル基;ペルフルオロプロピル基などのC2〜10ペルハロアルキル基;メルカプトプロピル基などのC2〜10メルカプトアルキル基;3−アミノプロピル基などのC2〜10アミノアルキル基;3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基などの(C2〜10アミノアルキル)アミノ(C2〜10アルキル)基;3−[ジエチレントリアミノ]プロピル基などのジ(C2〜10アルキレン)トリアミノ(C2〜10アルキル)基、およびイミダゾリル(C2〜10アルキル)基の中から選択される非加水分解性基であり、
Lは単座または多座の錯化配位子、好ましくは多座錯化配位子、例えば、酢酸などのカルボン酸、アセチルアセトンなどのβ‐ジケトン、メチルアセトアセタートなどのβ‐ケトエステル、乳酸などのα‐またはβ‐ヒドロキシ酸、アラニンなどのアミノ酸、ジエチレントリアミン(もしくはDETA)などのポリアミン、またはホスホン酸、もしくはホスホナートであり、
【0008】
mは配位子Lのヒドロキシル化数を表わし、
R”は、アルキレン基、好ましくはC1〜12アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基およびドデシレン基;N,N−ジエチレンアミノ基などのN,N−ジ(C2〜10アルキレン)アミノ基;ビス[N−(3−プロピレン)−N−メチレンアミノ]基などのビス[N,N−ジ(C2〜10アルキレン)アミノ]基;メルカプトプロピレン基などのC2〜10メルカプトアルキレン基;プロピレンジスルフィド基またはプロピレンテトラスルフィド基などの(C2〜10アルキレン)ポリスルフィド基;アルケニレン基、特にビニレン基などのC2〜4アルケニレン基;アリーレン基、特にフェニレン基などのC6〜10アリーレン基;ジ(エチレン)フェニレン基などのジ(C2〜10アルキレン)(C6〜10アリーレン)基;N,N’−ジプロピレンウレイド基などのN,N’−ジ(C2〜10アルキレン)ウレイド基の中から選択される非加水分解性基である〕を有する金属アルコキシドまたはハロゲン化金属の分子金属先駆物質の少なくとも1種からゾルゲル法によって製造された少なくとも1層のメソ構造層と、
−金属基板と、を含む構造体である。
【0009】
本発明の具体的な実施例では、ゾルゲル法でメソ構造層を製造中に、金属分子前駆物質または一般式(1)、(2)、(3)もしくは(4)の前駆物質に、ケイ素アルコキシド型、有機アルコキシシラン型、またはハロゲン化ケイ素型のケイ素系前駆物質のうち少なくとも1種を組み合わせて用いる。
上記のケイ素アルコキシド型、有機アルコキシシラン型、またはハロゲン化ケイ素型のケイ素系前駆物質は、下記化学式:
SiZ (5)
R’SiZ4−x (6)
SiZ4−mx (7)または
(RO)Si−R”−Si(OR) (8)
〔式(5)、(6)、(7)および(8)中のZ、R’、x、L、mおよびR”は、上記で示したのと同一の意味を有する〕で表されるものであることが好ましい。
特に、式(6)の有機アルコキシシランの例として、3−アミノプロピル−トリアルコキシシラン (RO)Si−(CH−NH、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリアルコキシシラン (RO)Si−(CH−NH−(CH−NH、3−(トリアルコキシシリル)プロピルジエチレントリアミン (RO)Si−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH;3−クロロプロピル−トリアルコキシシラン (RO)Si−(CHCl、3−メルカプトプロピル−トリアルコキシシラン (RO)Si−(CHSH;またはN−(3−トリアルコキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール型の有機シリルアゾールを挙げる。各式中、Rは、上記と同一の意味を有する。
【0010】
式(8)のビスアルコキシシランの例として、ビス[トリアルコキシシリル]メタン (RO)Si−CH−Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリル]エタン (RO)Si−(CH−Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリル]オクタン (RO)Si−(CH−Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]アミン (RO)Si−(CH−NH−(CH−Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]エチレンジアミン (RO)Si−(CH−NH−(CH−NH−(CH−Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]ジスルフィド (RO)Si−(CH−S−(CH−Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]テトラスルフィド (RO)Si−(CH−S−(CH−Si(OR)、ビス[トリアルコキシシリルプロピル]尿素 (RO)Si−(CH−NH−CO−NH−(CH−Si(OR)またはビス[トリアルコキシシリルエチル]フェニル (RO)Si−(CH−C−(CH−Si(OR)が好適に用いられる。各式中、Rは、上記と同一の意味を有する。
【0011】
本発明の構造体は、上記に加えて、酸化セリウムまたは酸化ジルコニウムなどの、酸化物型または水酸化物型の粒状前駆物質など、もう一種類の成分をも含み得る。
本発明で利用可能な両親媒性界面活性剤は、アニオン性もしくはカチオン性などのイオン性、両性、双性イオン性、またはノニオン性の両親媒性界面活性剤であり、さらに、光重合性または熱重合性であってもよい。該界面活性剤は、両親媒性分子または両親媒性構造を有するマクロ分子(もしくは高分子)であろう。
本発明で好適に用いられるアニオン性界面活性剤は、ホスファート、例えばC1225OPO、スルファート、例えばC2p+1OSONa(式中、p=12、14、16または18)、スルホナート、例えばC1633SOHおよびC1225SONa、ならびにカルボン酸、例えばステアリン酸C1735COHなどのアニオン性両親媒性分子である。
特に、カチオン性両親媒性界面活性剤の例として、第四アンモニウム塩またはホスホニウム塩を挙げる。
具体的な第四アンモニウム塩は、特に、下記一般式(I):
【0012】
【化1】

(式中、官能基R〜R11は同一であっても異なっていてもよく、直鎖または分枝鎖の、炭素数が1〜30のアルキル基であり、
Xは塩素原子もしくは臭素原子などのハロゲン原子、またはスルファートである)で表されるものの中から選択される。
【0013】
特に、式(I)の第四アンモニウム塩のうち、例えばジアルキルジメチルアンモニウムまたはアルキルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物など、アルキル官能基の炭素数が約12〜22のハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、特にベヘニルトリメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムまたはベンジルジメチルステアリルアンモニウムのハロゲン化物を挙げる。ハロゲン化物として好ましいのは、塩化物または臭化物である。
特に、両性または双性イオン性の両親媒性界面活性剤の例として、式(R12−CH−CH−COO(式中、同一または異なる各R12は、水素原子、またはドデシルなどのC1〜20アルキル基である)を有するアミノプロピオン酸、より具体的にはドデシルアミノプロピオン酸を挙げる。
本発明で利用可能な分子ノニオン性両親媒性界面活性剤としては、酸化エチレンを2〜30個含むエトキシル化直鎖C12〜22アルコール、または炭素数が12〜22個である脂肪酸およびソルビタンのエステルが好ましい。特に、アルドリッチ社から商標Brij(R)、Span(R)およびTween(R)として販売されている、例えば、Brij(R)56および78、Tween(R)20ならびにSpan(R)80を挙げる。
【0014】
高分子ノニオン性両親媒性界面活性剤とは、親水性および疎水性の両性質を有する両親媒性ポリマーである。特に、かかる共重合体の例として、
−フッ化共重合体 CH−[CH−CH−CH−CH−O]−CO−R(式中、R=CまたはC17)、
−例えばポリリシンなどのポリアミノ酸、およびアルギナートなどの生物学的共重合体、
−デンドリマーで、G.J.A.A.Soler−Illia,L.Rozes,M.K.Boggiano,C.Sanchez,C.O.Turrin,A.M.CaminadeおよびJ.P.Majoral,Angew.Chem.Int.Ed.,2000,39,No.23,4250−4254に記載されたものなど、例えば、(S=)P[O−C−CH=N−N(CH)−P(=S)−[O−C−CH=CH−C(=O)−OH]
−ブロックを2個、A−B−A型もしくはA−B−C型の3個または4個含むブロック共重合体、および
−上記以外の、当業者に公知の、両親媒性を有する共重合体、より具体的には、S.ForsterおよびM.Antonietti、Adv.Mater.,1998,10,195−217、またはS.ForsterおよびT.Plantenberg,Angew.Chem.Int.Ed.,2002,41,688−714,またはH.Colfen,Macromol.Rapid Commun.,2001,22,219−252に記載されたもの、を挙げる。
本発明において、以下の種類の両親媒性ブロック共重合体を用いることが好ましい。
ポリ((メタ)アクリル酸)を単位とした共重合体、
ポリジエンを単位とした共重合体、
水素化ジエンを単位とした共重合体、
ポリ(酸化プロピレン)を単位とした共重合体、
ポリ(酸化エチレン)を単位とした共重合体、
ポリイソブチレンを単位とした共重合体、
ポリスチレンを単位とした共重合体、
ポリシロキサンを単位とした共重合体、
ポリ(2−ビニルナフタレン)を単位とした共重合体、
ポリ(ビニルピリジンおよびN−メチルビニルピリジニウム ヨウ化物)を単位とした共重合体、
ポリ(ビニルピロリドン)を単位とした共重合体。
ポリ(酸化アルキレン)鎖からなるブロック共重合体で、各ブロックが1種類のポリ(酸化アルキレン)鎖からなり、アルキレン基の炭素数は鎖毎に異なる共重合体を好適に用いる。
【0015】
例えば、2ブロック共重合体では、2ブロックのうち一方は親水性のポリ(酸化アルキレン)鎖からなり、他のブロックは疎水性のポリ(酸化アルキレン)鎖からなる。3ブロック共重合体では、ブロックのうち2つが親水性であり、それらの間に配置されたもう1つのブロックは疎水性である。3ブロック共重合体において、親水性のポリ(酸化アルキレン)鎖は(PEO)および(PEO)と記されたポリ(酸化エチレン)鎖であり、疎水性のポリ(酸化ポリアルキレン)鎖は(PPO)と記されポリ(酸化プロピレン)鎖、またはポリ(酸化ブチレン)鎖であり、そうでなければ、それぞれ複数の酸化アルキレンモノマーを混合した混合鎖であることが好ましい。3ブロック共重合体を用いる場合、式(PEO)−(PPO)−(PEO)(式中、5<u<106、33<v<70および5<w<106)の化合物が用いられる。例を挙げると、BASF社またはアルドリッチ社から販売されているPluronic(R)P123(u=w=20およびv=70)またはPluronic(R)F127(u=w=106およびv=70)が用いられる。
【0016】
両親媒性界面活性剤または複数の界面活性剤の好適な利用量は、分子金属前駆物質または複数の前駆物質の総モル数に対して、好ましくは0.05〜2モル%、より具体的には0.2〜1モル%である。分子金属前駆物質または複数の前駆物質の総モル数は、式(1)〜(4)の分子金属前駆物質または複数の前駆物質および場合によりシリコン系前駆物質の総モル数を含むものである。
メソ構造層を製造している間に、さらにラテックスを追加することもできる。
メソ構造層は官能化される。換言すると、メソ構造層に、巨視的特性、すなわち随意に調節できる耐食性、耐引掻き性および耐擦れ性、機械的強度ならびに疎水性を付与する基、および/または品質管理用のプローブを構成する基が含まれる。
「プローブ」という文言は、例えば、特定のカチオンまたはアニオンに対する選択性を有する光学プローブ、pH感受性プローブ、染料または蛍光プローブを意味する。
官能化が実現されるのは、式(2)、(3)、(4)、(6)、(7)または(8)の開始分子金属前駆物質の少なくとも1種における、機能を付与する基(もしくは、メソ構造層に官能基を付与する基)である基R’、Lおよび/またはR”の存在、またはメソ構造層製造中における、少なくとも1種の官能化剤の添加、またはメソ構造層生成後の、少なくとも1種の官能化剤を用いたメソ構造層の処理、またはこれら3つの可能性の組み合わせによる。
「官能化剤」の文言は、本発明の範囲において、メソ構造層に、耐食性、耐引掻き性および耐擦れ性もしくは機械的強度などの機能を付与する薬品、またはpH感受性プローブもしくはハロゲン化化合物を捕獲する蛍光プローブを形成する薬品、または着色をほどこす薬品を意味する。
特に、耐食性を付与する薬品の例として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールおよびイミダゾールなどのアゾール型、アミノピペリジンもしくはアミノピペラジンなどのアミン型、−SHメルカプタン型、アセタートなどの−COOカルボキシラート型、またはホスホナート型の有機防食剤、ならびにモリブダート、ホスファートおよびボラートなどの非酸化イオン型の無機防食剤を挙げる。
【0017】
耐引掻き性および耐擦れ性を付与する薬品として、チタンアルコキシドもしくはアルミニウムアルコキシド、またはシリカナノ粒子もしくはアルミナナノ粒子が用いられる。
特に、機械的強度を付与する薬品の例として、酸化ジルコニウムを挙げる。
ハロゲン化化合物を捕獲する蛍光プローブを構成する薬品は、イミダゾリウム基を含有するアントラセン分子から製剤することができる。
pH感受性プローブを構成する薬品として、メチルオレンジまたはフェノールフタレインが好適に用いられる。
特に、着色をほどこす薬品の例として、ローダミン、フルオレセイン、キニザリン、メチレンブルーおよびエチルバイオレットを挙げる。
本発明の好ましい実施例では、メソ構造層の製造において、開始成分を下記の順番で添加する。
(1)上記で定義した式(1)、(2)、(3)または(4)の分子金属前駆物質もしくは複数の前駆物質、
(2)必要であれば上記で定義した式(5)、(6)、(7)または(8)のケイ素アルコキシド(複数のケイ素アルコキシド)またはハロゲン化ケイ素、
(3)両親媒性界面活性剤または複数の界面活性剤、
(4)水性媒質または水/アルコール媒質、好ましくは、水/エタノール媒質、および
(5)必要であれば官能化剤または複数の官能化剤、また、必要であればラテックス。
【0018】
上記の構造体は、複数のメソ構造層、例えば2〜10層、を含み、各層の多孔率は勾配をなす。すなわち、4層のメソ構造層がそれぞれ2〜50nmの範囲の多孔率P1、P2、P3およびP4を有する場合、P1>P2>P3>P4であり、多孔率P1を有する層が基板と直接接触している。
他にも、同じ一つのメソ構造層内において多孔率が勾配をなす構造体の実施形態が挙げられる。
本発明で利用可能な金属基板は、チタン、アルミニウム、およびこれらそれぞれの合金、例えばTA6Vチタン、2000系アルミニウム、特にめっきされたかもしくはされていないAl 2024、7000系アルミニウム、特にAl 7075もしくは7175、および6000もしくは5000系アルミニウム、またはステンレススチール、例えば35 NCD 16または15−5 PH、またはマグネシウム合金から好適に作製される。
メソ構造層は、例えば浸漬塗布、回転する基板への積層(もしくはスピン塗布)、スプリンクル塗布、スプレー塗布、層流塗布、またはブラシでの積層といった実施し易い手法、好ましくはスプレー塗布を用いて金属基板に積層される。しかも、そのような手法では環境に配慮した製品が用いられる。
上述のように得られる構造体は、随意に調節可能な、腐食からの保護、耐引掻き性および耐擦れ性、色および/または疎水性を特に有し、メソ構造層および金属基板の間には良好な付着が実現している。
【0019】
本発明の一実施形態は、構造体が、さらにゾルゲル法により調製された少なくとも1層の高密度層、例えば仏国特許出願第2899906号に記載された層、を含むものである。
「高密度層」の文言は、走査型電子顕微鏡(SEM)下で可視のマイクロメートルスケールの気孔率を示さない層、より具体的にはBET法での測定によって1μm未満の気孔率を示す層を意味する。
高密度層は、上述したように、特に、少なくとも1つの金属アルコキシド、ハロゲン化金属、ケイ素アルコキシドまたはハロゲン化ケイ素から開始してゾルゲル法によって調製される。
この追加された高密度層は、ナノビルディングブロック(NBB)およびポリマーまたは有機/無機ハイブリッドマトリックスを好適に含む。
ナノビルディングブロックはクラスター状、またはナノ粒子の形態であり得、好ましくは2〜100nmの大きさのナノ粒子で、2〜50nmであればなお好く、2〜20nmであればさらに好い。ナノ粒子の直径は、X線回折および小角X線散乱、透過型電子顕微鏡(TEM)検査、または光散乱によって測定され得る。
ナノビルディングブロックは主として少なくとも1種の金属酸化物、例えばアルミニウム、セリウム(III)もしくは(IV)、ケイ素、ジルコニウム、チタンまたはスズの酸化物を主成分とする。
【0020】
ナノビルディングブロックの合成における、第1の処理では、ナノビルディングブロックを金属塩から沈澱によって合成する。例えばカルボン酸、β‐ジケトン、β‐ケトエステル、α‐またはβ‐ヒドロキシ酸、ホスホナート、ポリアミンおよびアミノ酸などの単座または多座錯化剤でナノブロックの表面の80〜100%を官能化することにより、形成されるナノビルディングブロックの大きさを制御して該ブロックの溶媒中での分散を確実にするべく、反応媒質中に錯化剤を導入してもよい。無機成分と有機成分との質量比は、特に20〜95%とする。
【0021】
ナノビルディングブロックを、少なくとも1種の金属アルコキシドまたはハロゲン化金属から加水分解処理または非加水分解処理によって得ることも可能である。加水分解処理では、一般式:
(Zn1 (9)、
(R’)x1(Zn1−x1 (10)、または
(Lm1x1(Zn1−m1x1 (11)
〔式(9)、(10)および(11)中、
はAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Si(IV)、Zr(IV)、Ti(IV)またはSn(IV)であり、好ましくはZr(IV)またはCe(IV)であり、括弧内の数字は金属原子の原子価を示し、
はM原子の原子価を示し、
は1からn−1までの整数であり、
はF、Cl、BrおよびI、好ましくはClおよびBrなどのハロゲン原子または−ORであり、
はアルキル基、好ましくは炭素数1〜4の、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基またはブチル基などのアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基であり、
’は、アルキル基、特にC1〜4アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基;アルケニル基、特にビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基およびブテニル基などのC2〜4アルケニル基;アルキニル基、特にアセチレニル基およびプロパルギル基などのC2〜4アルキニル基;アリール基、特にフェニル基およびナフチル基などのC6〜10アリール基;メタクリロイルオキシプロピル基などのメタクリロイルまたはメタクリロイルオキシ(C1〜10アルキル)基;および、グリシジルおよびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基などの、エポキシアルキル基またはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される非加水分解性基であり、
は単座または多座の錯化配位子、好ましくは多座錯化配位子、例えば、酸などのカルボン酸、アセチルアセトンなどのβ‐ジケトン、メチルアセトアセタートなどのβ‐ケトエステル、乳酸などのα‐またはβ‐ヒドロキシ酸、アラニンなどのアミノ酸、ジエチレントリアミン(もしくはDETA)などのポリアミン、またはホスホン酸を含むホスホナートであり、
は配位子Lのヒドロキシル化数を表わし、Lが単座配位子であればm=1であり、Lが多座配位子であれば、m=2である〕を有する少なくとも1種の金属アルコキシドまたはハロゲン化金属前駆物質に対して制御加水分解を行なう。
【0022】
「制御加水分解」という文言は、前駆物質の反応性を低下させるべく、媒質中に導入する水の量を制御し、かつ場合によっては、中心金属原子に作用する錯化剤を導入することにより、形成される物質の成長を制限することを意味すると理解される。
好ましくは非晶質または結晶質のナノ粒子の形態を取るナノビルディングブロックは、表面が官能化され得る。ナノビルディングブロックの官能化はNBB用の官能化剤の存在下に、ナノビルディングブロック合成時に直接行なうか、または合成に続く第2の工程の間に行ない、好ましくは第2の工程の間に行なう。これらの官能化のことを、前官能化および後官能化とそれぞれ呼称する。
後官能化は、NBB用の官能化剤として二官能性分子を選択することにより、化学的方法によって行われる。一方の官能基は、ナノビルディングブロックの表面に親和性を示し、他方の官能基はマトリックスと相互作用するが、ナノビルディングブロックの表面に親和性を示さない。化学的方法による官能化は、そのようにナノブロックの表面の改良を可能とするが、それは特に、ナノビルディングブロックを含む溶液とNBB用の官能化剤を含む溶液とを単純に混合することによる。
特に、ナノブロックの表面に親和性を示す官能基の例として、カルボン酸官能基、ジケトン官能基、またはホスファートもしくはホスホナート官能基を挙げる。
特に、マトリックスと相互作用し得る官能基の例として、C1〜8アルキルアミノ基などの第1級アミン、第2級アミンまたは第3級アミン、およびビニル、アクリラートまたはメタクリラート官能基などの重合性官能基を挙げる。
特に、NBB用の官能化剤として用いられる二官能性分子の例として、6−アミノカプロン酸および2−アミノエチル−ホスホン酸を挙げる。
官能化度は50%を上回ることが好ましく、80%を越えればなお好い。
【0023】
合成し、官能化を終えたナノビルディングブロックをポリマーまたは無機/有機ハイブリッドマトリックス、好ましくはゾル/ゲル型のハイブリッドマトリックス、より好ましくはシリカを主成分とするハイブリッドマトリックス、さらに好ましくはシリカまたはシリカ/ジルコニウムの酸化物に基づくハイブリッドマトリックス中に導入する。マトリックスが結合剤(connector)として機能し、その結果ビルディングブロックは三次元網状構造を構成する。
無機/有機ハイブリッドマトリックスは特に、溶媒および場合によっては触媒の存在下に少なくとも2種の金属アルコキシドまたはハロゲン化金属を重縮合させることによって得られる。用いられる金属アルコキシドまたはハロゲン化金属は特に、一般式:
(Zn2 (12)
(Rx2(Zn2−x2 (13)
(Lm2x2(Zn2−m2x2 (14)
(Zn2−1−R−M(Zn2−1 (15)
〔式中、nはM金属原子の原子価を示し、好ましくは3、4または5であり、
は1からn−1までの整数であり、
はAlなどの三価金属原子、Si、Ce、ZrおよびTiなどの四価金属原子、またはNbなどの五価金属原子である。好ましくは、Mはケイ素(n=4)、セリウム(n=4)またはジルコニウム(n=4)で、より好ましくはケイ素であり、
はハロゲン原子、例えばF、Cl、BrおよびI、好ましくはClおよびBr;アルコキシ基、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などのC1〜4アルコキシ基;アリールオキシ基、特にフェノキシ基などのC6〜10アリールオキシ基;アシルオキシ基、特にアセトキシ基およびプロピオニルオキシ基などのC1〜4アシルオキシ基;およびアセチル基などのC1〜10アルキルカルボニル基の中から選択される加水分解性基であり、Zは好ましくはアルコキシ基、特にエトキシまたはメトキシ基であり、
はアルキル基、好ましくはC1〜4アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基;アルケニル基、特にビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基およびブテニル基などのC2〜4アルケニル基;アルキニル基、特にアセチレニル基およびプロパルギル基などのC2〜4アルキニル基;アリール基、特にフェニル基およびナフチル基などのC6〜10アリール基;メタクリロイルオキシプロピル基などのメタクリロイルまたはメタクリロイルオキシ(C1〜10アルキル)基;グリシジルおよびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基などの、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される非加水分解性の1価の基であり、Rは好ましくはメチル基、またはグリシジルオキシプロピル基などのグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基であり、
【0024】
はアルキレン基、好ましくはC1〜4アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基;アルケニレン基、特にビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基およびブテニレン基などのC2〜4アルケニレン基;アルキニレン基、特にアセチレニレン基およびプロパルギレン基などのC2〜4アルキニレン基;アリーレン基、特にフェニレン基およびナフチレン基などのC6〜10アリーレン基;メタクリロイルオキシプロピル基などのメタクリロイル(C1〜10アルキル)基またはメタクリロイルオキシ(C1〜10アルキル)基;ならびに、グリシジルおよびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基などの、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される2価の非加水分解性基であり、Rは好ましくはメチレン基、またはグリシジルオキシプロピル基などのグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基であり、
は、上記Lについて記載されたのと同様の錯化配位子であり、
は配位子Lのヒドロキシル化数を表わし、Lが単座配位子の場合はm=1、Lが多座配位子の場合はm=2である〕を有するものから選択される。
【0025】
マトリックスの調製に用いられた溶媒は主として水から成る。好ましくは、溶媒は溶媒総質量に対して80〜100重量%の水を含み、場合によってはC1〜4アルコール、好ましくはエタノールまたはイソプロパノールをも含む。
触媒は好ましくは酸またはCOであり、酸は酢酸であればなお好い。
場合によっては少なくとも1種の添加剤を、ナノビルディングブロックを調製する工程もしくは官能化されたナノビルディングブロックとマトリックスとを混合する工程の間、または両工程において添加してもよい。
ナノビルディングブロックを調製する工程中に添加剤を添加すると、もたらされる最終材料は、添加剤で構成されたコアと、ナノビルディングブロックで構成されたシェルとを有するコア/シェル型となり得る。
本発明で用い得る添加剤は特に、3Mから商標FC 4432およびFC 4430の下に販売されているノニオン性フルオロポリマーなどの、金属基板に対するゾルの湿潤性を改善するための界面活性剤;染料、例えばローダミン、フルオレセイン、メチレンブルーおよびエチルバイオレット;ジエチレントリアミン(DETA)などの架橋剤;アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)などのカップリング剤;ナノ顔料;およびこれらの混合物である。
【0026】
好ましくはナノビルディングブロックおよび有機/無機ハイブリッドマトリックスを含む前記高密度層は、特に、一方で、
−前述のとおり、ナノビルディングブロックを加水分解性処理または非加水分解性処理により調製し、
−場合によっては官能化しながら、他方で、
−マトリックスを調製し、
その後に、
−場合によっては官能化されているナノビルディングブロックとマトリックスとを混合することによって、得られる。
さらに、前記高密度層を、上述されたメソ構造層を積層する手法の一つにしたがって積層してもよい。
このような高密度層が追加されている場合、メソ構造層は、基板と直接接触するように配置すると好く、それによって活性化した化合物のナノレザーバー(nanoreservoir)の機能を果たす。
特に、該構造体は、上述された少なくとも1層のメソ構造層を含む多層被膜を有し、該多層被膜は、特に、上述された少なくとも1層のメソ構造層と、場合によっては少なくとも1層の上述された高密度層を含む少なくとも2層、好ましくは2〜10層、より好ましくは2〜5層からなる。該多層被覆の総膜厚は、1〜10μmの範囲であると好い。
【0027】
本発明のもう一つの主題は、上記の構造体の製造方法で、以下の工程を含む。
(a)上記式(1)、(2)、(3)または(4)の分子金属前駆物質のうち少なくとも1種を、場合によっては上記式(5)、(6)、(7)または(8)のケイ素アルコキシドまたはハロゲン化ケイ素の少なくとも1種と組み合わせて、水性または水/アルコール媒質、好ましくは水/エタノール媒質中で、少なくとも1種の両親媒性界面活性剤および場合によっては少なくとも1種の官能化剤の存在下、ならびに場合によってはラテックスの存在下で、加水分解/縮合することによってゾルゲル材料を製造する工程、
(b)工程(a)で得られた材料を、例えば浸漬塗布、回転する基板への積層(もしくはスピン塗布)、スプリンクル塗布、スプレー塗布または層流塗布、またはブラシでの積層により、金属基板に積層する工程、
(c)被膜を積層した基板に熱処理もしくは例えばアンモニア蒸気による化学処理、または紫外線放射処理を施すか、あるいは、これら3種の処理を組み合わせて、網状組織を高密度化し、例えばエタノールで、酸または塩基などの触媒を含めてまたは含めずに洗浄する工程、
(d)場合によっては、熱処理あるいは化学抽出、または、必要であればこの2種の手法の組み合わせにより界面活性分子を除去する工程、および
(e)場合によっては腐食からの保護、耐引掻き性および耐擦れ性、機械的強度および着色などの特性を付加するだけではなく、上の層との相溶性を向上させるために、官能化する工程。
省略可能な工程(e)を実現するには、例えば、官能化剤を含有する溶液を調製し、続いて、該溶液に工程(c)または(d)で得られた構造体を数分間から数時間浸漬させて含浸すればよい。溶液の総質量に対して、1〜20質量%の官能化剤が好適に用いられる。
本発明の好ましい実施形態では、工程(a)でゾルゲル材料を製造する際に、以下の順番で開始成分を添加する。
(1)上記式(1)、(2)、(3)または(4)の分子金属前駆物質もしくは複数の前駆物質、
(2)場合によっては上記式(5)、(6)、(7)または(8)のケイ素アルコキシド(複数のケイ素アルコキシド)またはハロゲン化ケイ素(複数のハロゲン化ケイ素)、
(3)両親媒性界面活性剤または複数の界面活性剤、
(4)水性または水/アルコール媒質、好ましくは水/エタノール、および
(5)場合によっては官能化剤または複数の官能化剤、および場合によってラテックス。
分子金属前駆物質の総モル数に対して、好ましくは0.05〜2モル%、より具体的には0.2〜1モル%の両親媒性界面活性剤が用いられる。
【0028】
本発明のさらなる主題は、航空機および航空宇宙機の技術分野における、金属基板の耐食性、耐引掻き性および耐擦れ性、機械的強度、プローブ、着色および/または疎水性を向上させるための本発明に基づく構造体の使用方法である。
本発明とその利点は、実施形態を例示する以下の実施例からより良く理解される。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
−SiO/ZrO+ベンゾトリアゾールによるメソ構造層の製造
前駆物質の混合物から成る溶液を調製した。0.7gのZrClを55.5gのエタノールに室温で攪拌しながら添加した。次に、5.62gのテトラエトキシシラン(TEOS)を滴下した。
商標Pluronic(R)F127の下で販売される、式(EO)106(PO)70(EO)106のトリブロック共重合体を両親媒性界面活性剤として用いた。式中、EOは酸化エチレンであり、POは酸化プロピレンである。この界面活性剤を前述の前駆物質の溶液に2g添加すると、比率s=[界面活性剤]/([TEOS]+[ZrCl])が0.005となった。
最後に、10.8gの水を添加して、加水分解度h=[HO]/([Si]+[Zr])=10を得た。該混合物を室温で1時間攪拌した。
膜を積層する数分前に、腐食防止剤として60mgのベンゾトリアゾール([ベンゾトリアゾール]/([Si]+[Zr]=0.05))を添加して、組成物1を得た。
加えて、Al 2024 T3合金から成る、めっきされていない、80×40×1.6mmの寸法の基板を、アルカリ脱脂に続いて化学的酸洗いを行うなどの当業者に公知の方法で、環境規制に準拠した製剤を用いて準備した。
組成物1中で浸漬塗布することによって、金属基板に膜を積層した。浸漬塗布は、取り出し速度0.28cm.s−1で、制御された環境条件(T=20〜22℃、相対湿度(またはRH)=20〜25%)下で行われた。膜を積層したすぐ後に、その膜を、室温(20〜22℃)および高湿度(50%)で12時間保管した。熟成後、被膜を60℃で1時間、高密度化し、続いて、封止された容器内で1mol/l(またはM)のアンモニア蒸気に10分間さらした。
【0030】
(実施例2)
9.3gのテトラメトキシシラン(TMOS)、37.4gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)および4.9gのジメチルジエトキシシラン(DMDES)の混合物を、室温で、65mlの0.05M水性酢酸溶液に滴下して攪拌した。該溶液を、室温で1日攪拌し続けた。
さらに、酸化セリウム(商標Rhodigard(R)W200の下で販売される、pH=8.5)(第1種のNBB)のナノ粒子を6−アミノカプリン酸(カルボキシラート/Ceモル比=1)で官能化し、4時間後に、前述の溶液に添加した。諸成分を組み合わせた混合物を30分間攪拌した。
また、第2種のNBBを、11.7g/6g/4.5gの質量比を有するプロパノール/CHCOOH/HO中のテトラプロポキシジルコニウム(TPOZ)の70%溶液から成る混合物の形で、予め30分間攪拌して、添加した。その最終溶液を室温で30分間攪拌し、続いて、7.96gの(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンを架橋剤として滴下した。溶液を勢いよく、かつ、均一に攪拌しながら、室温で15時間置いた。
最後に、積層する直前に、該溶液に最終溶液中の濃度が約10−3Mとなるように染料、ローダミンBを添加した。
続いて、NBBを含有するこのゾルゲル溶液を、浸漬塗布によって環境条件(T=20〜22℃、RH=20〜25%)下で実施例1のメソ構造層に塗布した。取り出し速度は0.68cm.s−1に設定した。続いて、積層された被膜をオーブンに入れて60℃で2時間、高密度化した。
【0031】
(実施例3)
−SiO/ZrO+メルカプトコハク酸による第1メソ構造層の製造
まず初めに前駆物質の混合物から成る溶液を調製した。0.7gのZrClを55.5gのエタノールに室温で攪拌しながら添加し、続いて5.62gのTEOSを滴下した。
商標Pluronic(R)F127の下で販売されるトリブロック共重合体を、両親媒性界面活性剤として用いた。この界面活性剤を前述の前駆物質の溶液に2g添加すると、比率s=[界面活性剤]/([TEOS]+[ZrCl])が0.005となった。
最後に、10.8gの水を添加して加水分解度h=[HO]/([Si]+[Zr])=10を得、諸成分を組み合わせた混合物を、その積層前に室温で1時間攪拌して組成物2を得た。
実施例1で記載したのと同様の方法で整えられた、Al2024T3合金から成る、めっきされていない、80×40×1.6mmの寸法の基板に膜を積層した。該積層は、組成物2中で前記基板を、取り出し速度0.28cm.s−1で、制御された環境条件下(T=20〜22℃、RH=20〜25%)で、浸漬塗布することによって行われた。
膜を積層したすぐ後に、その膜を、室温(20〜22℃)および高湿度(50%)で12時間保管した。熟成後、被膜を250℃で1時間、熱処理して界面活性剤を除去し、UV/Oオーブンで15分間処理した。
次に、処理された層を0.01M水性メルカプトコハク酸溶液に浸漬して数時間攪拌することによってメソ構造被膜を官能化した。浸漬後、層を水で注ぎ、空気中で乾燥させた。
この第1メソ構造層の合成を、別の形で、1工程(または1つの容器)で行うことができる。すなわち、界面活性剤を除去せず、メルカプトコハク酸を溶液に直接導入するのである。
−第2高密度層の積層
上記の実施例2で記載したNBBを含有するゾルゲル溶液を、浸漬塗布によって環境条件(T=20〜22℃、RH=20〜25%)下で、上記の官能化されたメソ構造層に塗布した。取り出し速度は、0.68cm.s−1に設定した。続いて、積層された被膜をオーブンに入れて60℃で2時間、高密度化した。
【0032】
(実施例4)
−ZrO/Yによる第1メソ構造層の製造
2種の塩化金属YClとZrClとの混合物([Y]/([Y]+[Zr])=20)0.1モルを、エタノール中に界面活性剤Pluronic(R)F127([F127]/([Y]+[Zr])=0.005)を含有する溶液(4モル)に添加して、処理液を調製した。前駆物質の混合物に[HO]/([Y]+[Zr])=20となるように水を添加して、組成物3を得た。
組成物3中で浸漬塗布することによって、実施例1で述べたように表面が予め整えられたAl 2024 T3基板に膜を積層した。浸漬塗布は、取り出し速度0.5cm.s−1で、制御された温度(T=20〜23℃)および制御された湿度条件(RH=10%)下で行われた。続いて、膜を短時間(1分間)、高湿度(>75%)にさらした。
膜を、室内温度(20〜22℃)および高湿度(>50%)で12時間保管した。熟成後、膜を110℃で1時間、高密度化した。
−第2高密度層の積層
積層する直前に、上記実施例2に記載したNBBを含有するゾルゲル溶液中に、8−ヒドロキシキノリンを1.74g導入した。続いて、該溶液を、環境条件下(T=20〜22℃、RH=20〜25℃)で、浸漬塗布によってメゾ構造層に塗布した。取り出し速度を0.68cm.s−1に設定した。積層した被膜を、その後、オーブンに入れて60℃で2時間、高密度化した。
【0033】
(実施例5)
−SiO/Al+8−ヒドロキシキノリンによる第1メソ構造層の製造
予め、90gの水、43.5gの脱塩水および110μlのHCl(37%)を含む混合物に、4.2gの界面活性剤Pluronic(R)P123を攪拌して溶解させておいた。そこに3.09gのAlCl・6HOを添加し、その後、諸成分を組み合わせた混合物を10分間攪拌し続け、固体を完全に溶解させた。次に、10.77gのTEOSを攪拌しながら添加して、諸成分を組み合わせた混合物をさらに10分間攪拌し続けた。最後に、0.45gの8−ヒドロキシキノリンを積層処理の10分前に添加して、組成物4を得た。
組成物4中で浸漬塗布することによって、実施例1で述べたように表面が予め整えられた金属基板に膜を積層した。浸漬塗布は、取り出し速度0.28cm.s−1で、制御された環境条件(T=20〜22℃、RH=40%)下で行われた。続いて、膜を高湿度(>70%)で保管し、その後、80℃で1時間高密度化した。
−第2高密度層の積層
上記の実施例2に記載したNBBを含有するゾルゲル溶液を、環境条件下(T=20〜22℃、RH=20〜25%)で、浸漬塗布によって官能化されたメソ構造層に塗布した。取り出し速度を0.68cm.s−1に設定した。続いて、積層した被膜を、オーブンに入れて60℃で2時間、高密度化した。
各実施例において得た被膜は、その総膜厚が、500nmから数μm、特に1〜6μm、好ましくは1〜5μmの膜だった。
これらの膜は、そのインターフェイス、すなわち、金属基板および積層された層間、ならびに積層された層および塗料を予備積層された被膜間のインターフェイスの安定性が良く、衝撃および屈曲などの機械的ひずみへの耐性が強い。塗料の有無に関わらず、耐食性は、少なくとも塩化系被膜のものに匹敵し、場合によっては、塩化系被膜のものよりずっと強い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−少なくとも1種の両親媒性界面活性剤の存在下で、一般式:
MZ (1)、
R’MZn−x (2)、
MZn−mx (3)、または
(RO)nー1M−R”−M(OR)n−1 (4)
〔式(1)、(2)、(3)および(4)中、
MはAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、Sn(IV)、Nb(V)、V(V)、Ta(V)もしくはHf(V)または希土類金属であり、括弧内の数字はM原子の原子価を示し、
nはM原子の原子価を示し、
xは1からn−1までの整数であり、
各Zは、互いに独立に、ハロゲン原子または−OR基であり、
Rはアルキル基、好ましくは炭素数1〜4を有するアルキル基であり、
各R’は、互いに独立に、アルキル基、特にC1〜4アルキル基;アルケニル基、特にC2〜4アルケニル基;アルキニル基、特にC2〜4アルキニル基;アリール基、特にC6〜10アリール基;メタクリロイルまたはメタクリルロイルオキシ(C1〜10アルキル)基;エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であって、アルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるもの;C2〜10ハロアルキル基;C2〜10ペルハロアルキル基;C2〜10メルカプトアルキル基;C2〜10アミノアルキル基;(C2〜10アミノアルキル)アミノ(C2〜10アルキル)基;ジ(C2〜10アルキレン)トリアミノ(C2〜10アルキル)基、およびイミダゾリル(C2〜10アルキル)基の中から選択される非加水分解性基であり、
Lは単座または多座の錯化配位子、好ましくは多座錯化配位子であり、
mは配位子Lのヒドロキシル化数を表わし、
R”は、アルキレン基、好ましくはC1〜12アルキレン基;N,N−ジ(C2〜10アルキレン)アミノ基;ビス[N,N−ジ(C2〜10アルキレン)アミノ]基;C2〜10メルカプトアルキレン基;(C2〜10アルキレン)ポリスルフィド基;アルケニレン基、特にC2〜4アルケニレン基;アリーレン基、特にC6〜10アリーレン基;ジ(C2〜10アルキレン)(C6〜10アリーレン)基およびN,N’−ジ(C2〜10アルキレン)ウレイド基の中から選択される非加水分解性基である〕を有する金属アルコキシド型またはハロゲン化金属型の分子金属前駆物質の少なくとも1種からゾルゲル法によって製造された少なくとも1層のメソ構造層と、
−金属基板と、を含む構造体。
【請求項2】
MがAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、Nb(V)、Y(III),La(III)およびEu(III)から選択される請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
ゾルゲル法によるメソ構造層の製造において、一般式(1)、(2)、(3)もしくは(4)の分子金属前駆物質または複数の前駆物質に、ケイ素アルコキシド型、有機アルコキシシラン型、またはハロゲン化ケイ素型のケイ素系前駆物質のうち少なくとも1種を組み合わせて用いる請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
ケイ素系前駆物質または複数の前駆物質は、下記式:
SiZ (5)
R’SiZ4−x (6)
SiZ4−mx (7)または
(RO)Si−R”−Si(OR) (8)
に対応し、式(5)、(6)、(7)および(8)中、Z、R’、x、L、mおよびR”は、請求項1で定義された意味と同一の意味を有する請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基およびt−ブチル基から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の構造体。
【請求項6】
Rはメチル基およびエチル基から選択される請求項5に記載の構造体。
【請求項7】
R’はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、フェニル基、ナフチル基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシプロピル基、グリシジル基、グリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基、3−クロロプロピル基、ペルフルオロプロピル基、メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基、3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基および3−[ジエチレントリアミン]プロピル基から選択される請求項1〜6のいずれかに記載の構造体。
【請求項8】
Lはカルボン酸、β‐ジケトン、β‐ケトエステル、α‐もしくはβ‐ヒドロキシ酸、アミノ酸、ポリアミン、ホスホン酸またはホスホナートを表す請求項1〜7のいずれかに記載の構造体。
【請求項9】
R”はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、N,N−ジエチレンアミノ基、ビス[N−(3−プロピレン)−N−メチレンアミノ]基、メルカプトプロピレン基、プロピレンジスルフィド基、プロピレンテトラスルフィド基、ビニレン基、フェニレン基、ジ(エチレン)フェニレン基およびN,N’−ジプロピレンウレイド基から選択される請求項1〜8のいずれかに記載の構造体。
【請求項10】
両親媒性界面活性剤はイオン性、両性、双性イオン性、またはノニオン性である請求項1〜9のいずれかに記載の構造体。
【請求項11】
イオン性両親媒性界面活性剤はアニオン性界面活性剤である請求項10に記載の構造体。
【請求項12】
アニオン性両親媒性界面活性剤はホスファート、スルファート、スルホナートおよびカルボン酸から選択されるアニオン性両親媒性分子である請求項11に記載の構造体。
【請求項13】
イオン性両親媒性界面活性剤はカチオン性である請求項10に記載の構造体。
【請求項14】
カチオン性両親媒性界面活性剤は第四アンモニウム塩およびホスホニウム塩から選択される請求項13に記載の構造体。
【請求項15】
第四アンモニウム塩は、下記一般式(I):
【化1】

(式中、官能基R〜R11は同一であっても異なっていてもよく、直鎖または分枝鎖の、炭素数が1〜30の脂肪族基であり、
Xはハロゲン原子またはスルファートである)に対応するものの中から選択される請求項14に記載の構造体。
【請求項16】
第四アンモニウム塩はアルキル官能基の炭素数が約12〜22であるジアルキルジメチルアンモニウムまたはアルキルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物から選択される請求項15に記載の構造体。
【請求項17】
ノニオン性両親媒性界面活性剤は酸化エチレンを2〜30個含むエトキシル化直鎖C12〜22アルコール、または炭素数が12〜22個である脂肪酸およびソルビタンのエステルから選択される請求項10に記載の構造体。
【請求項18】
ノニオン性両親媒性界面活性剤は、
ポリ((メタ)アクリル酸)を単位とした共重合体、
ポリジエンを単位とした共重合体、
水素化ジエンを単位とした共重合体、
ポリ(酸化エチレン)を単位とした共重合体、
ポリ(酸化プロピレン)を単位とした共重合体、
ポリイソブチレンを単位とした共重合体、
ポリスチレンを単位とした共重合体、
ポリシロキサンを単位とした共重合体、
ポリ(2−ビニルナフタレン)を単位とした共重合体、
ポリ(ビニルピリジンおよびN−メチルビニルピリジニウム ヨウ化物)を単位とした共重合体、
ポリ(ビニルピロリドン)を単位とした共重合体から選択される両親媒性ブロック共重合体である請求項10に記載の構造体。
【請求項19】
両親媒性界面活性剤または複数の界面活性剤の利用量は、分子金属前駆物質または複数の前駆物質の総モル数に対して、0.05〜2モル%、好ましくは0.2〜1モル%である請求項1〜18のいずれかに記載の構造体。
【請求項20】
メソ構造層の製造中にラテックスが存在する請求項1〜19のいずれかに記載の構造体。
【請求項21】
メソ構造層は官能化されている請求項1〜20のいずれかに記載の構造体。
【請求項22】
メソ構造層のゾルゲル法による製造が少なくとも1種の官能化剤の存在下で行われる請求項21に記載の構造体。
【請求項23】
メソ構造層は少なくとも1種の官能化剤で処理される請求項21に記載の構造体。
【請求項24】
官能化剤は耐食性、耐引掻き性および耐擦れ性、もしくは機械的強度を付与する薬品、またはハロゲン化化合物を捕獲するプローブもしくはpH感受性プローブを構成する薬品、または着色を施す薬品から選択される請求項22または23に記載の構造体。
【請求項25】
官能化剤は、アゾール型、アミン型、メルカプタン型、カルボキシラート型およびホスホナート型の有機防食剤;非酸化イオン型の無機防食剤;チタンアルコキシドまたはアルミニウムアルコキシドおよびシリカナノ粒子またはアルミナナノ粒子;酸化ジルコニウム;イミダゾリウム基を含有するアントラセン分子から成る薬品;メチルオレンジおよびフェノールフタレイン;ローダミン、フルオレセイン、キニザリン、メチレンブルーおよびエチルバイオレットから選択される請求項24に記載の構造体。
【請求項26】
メソ構造層の製造において、開始成分を
(1)上記で定義された式(1)、(2)、(3)または(4)の分子金属前駆物質または複数の前駆物質、
(2)場合によっては上記で定義された式(5)、(6)、(7)または(8)のケイ素アルコキシド(複数のケイ素アルコキシド)またはハロゲン化ケイ素(複数のハロゲン化ケイ素)、
(3)両親媒性界面活性剤または複数の両親媒性界面活性剤、
(4)水性媒質または水/アルコール媒質、好ましくは、水/エタノール媒質、および
(5)場合によっては官能化剤または複数の官能化剤、また、場合によってはラテックス
の順番で添加する請求項1〜25のいずれかに記載の構造体。
【請求項27】
金属基板は、チタン、アルミニウムまたはこれらそれぞれの合金、マグネシウム合金またはスチールから作製される請求項1〜26のいずれかに記載の構造体。
【請求項28】
複数のメソ構造層を含み、各メソ構造層の気孔率が勾配をなす請求項1〜27のいずれかに記載の構造体。
【請求項29】
同じ一つのメソ構造層において気孔率が勾配をなす請求項1〜27のいずれかに記載の構造体。
【請求項30】
ナノビルディングブロックおよびポリマーまたは有機/無機ハイブリッドマトリックスを含む少なくとも1層の高密度層を含む請求項1〜29のいずれかに記載の構造体。
【請求項31】
ナノビルディングブロックは少なくとも1種の金属酸化物を主成分とし、有機/無機ハイブリッドマトリックスは、溶媒および場合によっては触媒の存在下に少なくとも2種の金属アルコキシドまたはハロゲン化金属を重縮合させることによって得られる請求項30に記載の構造体。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれかに記載の構造体の製造方法であって、
(a)請求項1、2および5〜9で定義された式(1)、(2)、(3)または(4):
MZ (1)、
R’MZn−x (2)
MZn−mx (3)または
(RO)nー1M−R”−M(OR)n−1 (4)
の分子金属前駆物質のうち少なくとも1種を、場合によっては請求項4〜9で定義された下記式(5)、(6)、(7)または(8):
SiZ (5)
R’SiZ4−x (6)
SiZ4−mx (7)または
(RO)Si−R”−Si(OR) (8)
のケイ素アルコキシド型、有機アルコキシシラン型またはハロゲン化ケイ素型のケイ素系前駆物質の少なくとも1種と組み合わせて、水性または水/アルコール媒質中で、少なくとも1種の両親媒性界面活性剤および場合によっては少なくとも1種の官能化剤の存在下で、加水分解/縮合することによってゾルゲル材料を製造する工程、
(b)工程(a)で得られた材料を金属基板に積層する工程、
(c)被覆された基板に熱処理もしくは化学処理、または紫外線放射処理を施すか、あるいは、これら3種の処理を組み合わせて、網状組織を高密度化し、洗浄する工程、
(d)場合によっては熱処理あるいは化学抽出、または、この2種の手法の組み合わせにより界面活性分子を除去する工程、および
(e)場合によっては官能化する工程を含む製造方法。
【請求項33】
ゾルゲル材料は工程(a)において、開始成分を、
(1)上記で定義した式(1)、(2)、(3)または(4)の分子金属前駆物質または複数の前駆物質、
(2)場合によっては上記で定義した式(5)、(6)、(7)または(8)のケイ素アルコキシド(複数のケイ素アルコキシド)またはハロゲン化ケイ素(複数のハロゲン化ケイ素)、
(3)両親媒性界面活性剤または複数の界面活性剤、
(4)水性媒質または水/アルコール媒質、好ましくは、水/エタノール媒質、および
(5)場合によっては官能化剤または複数の官能化剤、また、場合によってはラテックス
の順番で添加することによって製造される請求項32に記載の製造方法。
【請求項34】
官能化剤は耐食性、耐引掻き性および耐擦れ性もしくは機械的強度を付与する薬品、またはハロゲン化化合物を捕獲する蛍光プローブもしくはpH感受性プローブを構成する薬品、または着色を施す薬品から選択される請求項32または33に記載の製造方法。
【請求項35】
官能化剤は、アゾール型、アミン型、メルカプタン型、カルボキシラート型およびホスホナート型の有機防食剤;非酸化イオン型の無機防食剤;チタンアルコキシドまたはアルミニウムアルコキシドおよびシリカナノ粒子またはアルミナナノ粒子;酸化ジルコニウム;イミダゾリウム基を含有するアントラセン分子から成る薬品;メチルオレンジおよびフェノールフタレイン;ローダミン、フルオレセイン、キニザリン、メチレンブルーおよびエチルバイオレットから選択される請求項34に記載の製造方法。
【請求項36】
両親媒性界面活性剤はイオン性、両性、双性イオン性、またはノニオン性である請求項32〜35のいずれかに記載の製造方法。
【請求項37】
イオン性両親媒性界面活性剤はアニオン性界面活性剤である請求項36に記載の製造方法。
【請求項38】
アニオン性界面活性剤はホスファート、スルファート、スルホナートおよびカルボン酸から選択されるアニオン性両親媒性分子である請求項37に記載の製造方法。
【請求項39】
イオン性両親媒性界面活性剤はカチオン性である請求項36に記載の製造方法。
【請求項40】
カチオン性両親媒性界面活性剤は第四アンモニウム塩およびホスホニウム塩から選択される請求項39に記載の製造方法。
【請求項41】
第四アンモニウム塩は、下記一般式(I):
【化2】

(式中、官能基R〜R11は同一であっても異なっていてもよく、直鎖または分枝鎖の、炭素数が1〜30の脂肪族基であり、
Xはハロゲン原子またはスルファートである)に対応するものの中から選択される請求項40に記載の製造方法。
【請求項42】
第四アンモニウム塩はアルキル官能基の炭素数が約12〜22であるジアルキルジメチルアンモニウムまたはアルキルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物から選択される請求項41に記載の製造方法。
【請求項43】
ノニオン性両親媒性界面活性剤は酸化エチレンを2〜30個含むエトキシル化直鎖C12〜22アルコールおよび炭素数が12〜22個である脂肪酸およびソルビタンのエステルから選択される請求項36に記載の製造方法。
【請求項44】
ノニオン性両親媒性界面活性剤は、
ポリ((メタ)アクリル酸)を単位とした共重合体、
ポリジエンを単位とした共重合体、
水素化ジエンを単位とした共重合体、
ポリ(酸化エチレン)を単位とした共重合体、
ポリ(酸化プロピレン)を単位とした共重合体、
ポリイソブチレンを単位とした共重合体、
ポリスチレンを単位とした共重合体、
ポリシロキサンを単位とした共重合体、
ポリ(2−ビニルナフタレン)を単位とした共重合体、
ポリ(ビニルピリジンおよびN−メチルビニルピリジニウム ヨウ化物)を単位とした共重合体、
ポリ(ビニルピロリドン)を単位とした共重合体から選択される両親媒性ブロック共重合体である請求項36に記載の製造方法。
【請求項45】
工程(a)においてラテックスが存在する請求項32〜44のいずれかに記載の製造方法。
【請求項46】
両親媒性界面活性剤または複数の界面活性剤の利用量は、分子金属前駆物質または複数の前駆物質の総モル数に対して、0.05〜2モル%、好ましくは0.2〜1モル%である請求項32〜45のいずれかに記載の製造方法。
【請求項47】
金属基板は、チタン、アルミニウムまたはこれらそれぞれの合金、マグネシウム合金またはスチールから作製される請求項32〜46のいずれかに記載の製造方法。
【請求項48】
工程(b)における積層が、浸漬塗布、回転する基板への積層、スプリンクル塗布、スプレー塗布、層流塗布またはブラシでの積層により行われる請求項32〜47のいずれかに記載の製造方法。
【請求項49】
請求項1〜31のいずれかに記載の構造体の使用方法であって、航空機および航空宇宙機の技術分野における、金属基板の耐食性、耐引掻き性および耐擦れ性、機械的強度、プローブ、着色および/または疎水性を向上させるための使用方法。

【公表番号】特表2010−506041(P2010−506041A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530913(P2009−530913)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051985
【国際公開番号】WO2008/040895
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(508228164)ユーロピアン エアロノティック ディフェンス アンド スペース カンパニー イーエーディーエス フランス (5)
【出願人】(507416908)ユニヴェルシテ ピエール エ マリ キュリー パリ 6 (5)
【出願人】(508106611)サントル ナシオナル ド ラ ルシェルシュ シアンティフィック (セーエヌエールエス) (10)
【Fターム(参考)】