説明

航空機の地上走行誘導装置

【課題】
管制官が運用状況を随時把握することにより最終的な安全を確保できる航空機の地上走行誘導装置を提供することにある。
【解決手段】
対物センサS1,…,S7は、地上に設置され、通路を通過する航空機を検出する。センサ情報処理部1は、画面表示装置3に、航空機の通路の地図を表示し、かつ誘導予定位置で誘導予定の航空機の外形図を表示し、かつ対物センサによって検出された航空機の検知情報に基づいて、対物センサ及び通路の対物センサが設置されている区間を色別で表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の地上走行誘導装置に係り、特に、空港内を走行する航空機の予定走行位置と実際の走行位置の偏差を空港の管制官に認識させるに好適な航空機の地上走行誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空港の路面を移動する航空機の監視には種々の装置が用いられているが、誘導指示は管制官が航空機のパイロットに対して無線通信を使用して行っている。また、人為的な情報伝達の誤りによる航空機の交通事故を避ける為、管制官の人数は最小限に抑えられている。そのため、離発着量の多い空港などでは管制官の精神的負荷が高くなっている。
【0003】
そこで、管制官の代わりに航空機の誘導を行う方法として、例えば、特開平9−282600号公報,特開平10−269500号公報,特開2003−30800号公報などに記載のように、航空機の離発着情報,航空機の大きさ等の機体情報,誘導路の距離等の経路情報を元に、事前に設けたルールを適用し、航空機の誘導経路の模擬を行い、誘導路上の灯火の点滅や誘導情報を表示する案内板により航空機を模擬経路に倣って誘導する方法が知られている。
【0004】
また、例えば、特開平5−166100号公報に記載のように、管制官が航空機を直接目視せずに航空機の渋滞又は誤進入を検知する手段として、航空機の誘導路が一方通行でのみ運用されることを利用し、誘導路の進入経路毎に航空機を検知する手段を設け、既に航空機の進入情報のある区画に新たな航空機が進入した場合に警告を発する方法が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−282600号公報
【特許文献2】特開平10−269500号公報
【特許文献3】特開2003−30800号公報
【特許文献4】特開平5−166100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、航空機の監視及び誘導を自動処理している場合において、管制官にとって状況の把握が困難であり、航空機が連続して移動していることに起因して自動で状態判定ができない場合もある。
【0007】
また、自動処理に問題が発生し、手動に切り替えることを考えた場合、切り替え時における航空機の誘導の遅延は極力避ける必要があり、さらにそのような場合は航空機が予定経路通りに移動しておらず至急の対応が必要となる場合も想定されることから、装置により自動で監視及び誘導が行われている時においても管制官は監視及び誘導の状態を詳細に把握している必要があると考えられる。
【0008】
本発明の目的は、管制官が運用状況を随時把握することにより最終的な安全を確保できる航空機の地上走行誘導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、空港において地上を走行する航空機を誘導するための地上走行誘導装置において、地上に設置され、前記航空機を検出する複数の航空機検出手段と、前記航空機の通路の地図を表示し、かつ誘導予定位置で誘導予定の航空機の外形図を表示し、かつ前記航空機検知手段によって検出された航空機の検知情報に基づいて、前記航空機検知手段及び通路の航空機検知手段が設置されている区間を色別で表示する情報処理部を備えるようにしたものである。
かかる構成により、管制官が運用状況を随時把握することにより最終的な安全を確保できるものとなる。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記航空機検知手段の検知結果を、任意の一つの検知手段が出力する検知情報、任意の連続する検知手段が出力する検知情報、及び設定時間をしきい値とした検知情報に対し、表示画面における地図上での検知位置における表示色及び表示時間を設定する設定情報手段を備えるようにしたものである。
(3)上記(1)において、好ましくは、前記情報処理部は、前記航空機検出手段によって検出された航空機の検知情報から検出された航空機の全長を予測し、予測された全長と、前記航空機検出手段の検知位置を通過中の可能性のある航空機の全長とから、航空機を識別するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、管制官が運用状況を随時把握することができ、最終的な安全を確保できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1〜図4を用いて、本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による航空機の地上走行誘導装置のシステム構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置の構成を示すシステムブロック図である。
【0013】
図1において、破線で囲んだ範囲OUTは、空港の滑走路、誘導路、エプロン等の屋外を示し、破線で囲んだ範囲INは、管制塔等の屋内を示している。
【0014】
屋外を示す範囲OUT内には、誘導路などの通路Pの近傍に、対物センサS1,…,S7が設置されている。対物センサS1,…,S7としては、地上型又は路面埋設型のマイクロ波レーダー等を用いる。対物センサS1,…,S7は、誘導路などの通路Pを移動する小型航空機A1と大型航空機A2の位置を検知するために、進行方向に平行に設置されている。対物センサS1,…,S7の有効範囲は、例えば、通路Pの奥側端部付近をカバーするものとし、もし、通路Pの奥に別の通路がある場合には、その別の通路を移動する航空機は検知しないものとする。対物センサS1,…,S7の有効範囲は、一例を挙げると、100〜150m程度である。また、マイクロ波の照射角は狭めとして、対物センサS1,…,S7の正面の通路P上を横切る航空機を検知するようにしている。対物センサS1,…,S7の検知情報は、情報中継装置8A,ネットワーク11,情報中継装置8Bを用いて、屋内の範囲IN内のセンサ情報処理部1に送信される。
【0015】
なお、対物センサS1,…,S7としては、説明の簡略化のため7台を記載しているが、実際には対物センサの有効範囲及び通路を移動する航空機に対する検知分解能の実際の必要性から検討した上で設置間隔を決定することになる。通路Pを移動する航空機は、旅客用で例を挙げれば、全長約63mのボーイング777から全長約20mのサーブ340Bまであり、機体の大きさの差が著しい。そこで、大型機と小型機を識別するためには、対物センサの設置間隔は、例えば、22m置きとする。これにより、同時に、単一の対物センサでのみ検知される航空機は、サーブ340Bのような小型機であり、並置された2個若しくは3個の対物センサで同時に検知された場合には、大型機と識別することができる。
【0016】
また、通路Pの脇には、航空機誘導情報表示装置9が設置されている。航空機誘導情報表示装置9は、情報中継装置8A,8C及びネットワーク11を介して、屋内INの航空機誘導経路設定処理部2から航空機の誘導経路情報を受信し表示する。航空機の誘導経路情報としては、進むべき誘導路の番号等がある。なお、航空機誘導情報表示装置9を、航空機の操縦室内に設置することも可能である。航空機誘導情報表示装置9を誘導路などの通路脇または航空機の操縦室内のどちらに設置するかについては、空港及び航空機の整備方針に依存するものである。
【0017】
また、屋内を示す範囲IN内は、センサ情報処理部1,航空機誘導経路設定処理部2,画面表示装置3,管制官設定情報入力部4,機器配置情報データベース5,航空機機体情報データベース6,航空機離発着情報データベース7が備えられている。
【0018】
航空機誘導経路設定処理部2は、空港路面及び機器配置情報データベース5から誘導路などの空港の路面の地図情報を入手し、航空機離発着情報データベース7から航空機の離発着順序及び到着した航空機及び出発準備が完了した航空機の情報を入手し、航空機機体情報データベース6から航空機の大きさ,移動能力,及び離陸に必要な滑走路の距離などの機体情報を入手し、到着した航空機に対してはエプロンまでの誘導経路を、出発する航空機に対しては滑走路までの誘導経路を算出する。なお、誘導経路算出手法は、従来技術に掲げた方法等による。
【0019】
航空機誘導経路設定処理部2は、図示するように、算出された誘導経路に従って、画面表示装置3に、誘導路などの通路の図形情報GPと、航空機の誘導予定位置における航空機の外形を示すシンボルマークGA1,GA2を予定の進行方向の向きで随時表示させる。
【0020】
センサ情報処理部1は、対物センサS1,…,S7から得られる検知情報を集約し、空港路面及び機器配置データベース6から得られる対物センサの相対位置から、空間的に隣接する複数の対物センサが連続して検知状態にあるか、及び特定の単一の対物センサが時間的に連続して検知状態にあるかを判定する。空間的に隣接する複数の対物センサが連続して検知状態にある場合としては、大型機が通過している場合等がある。また、特定の単一の対物センサが時間的に連続して検知状態にある場合としては、検知された航空機が停止状態の場合等がある。
【0021】
センサ情報処理部1は、機器配置情報データベース5から得られる誘導路などの通路に対する対物センサS1,…,S7の位置を、図形情報(対物シンボルマーク)GS1,…,GS7として、画面表示装置3に表示する。また、センサ情報処理部1は、検知状態の判定結果に基づいて、管制官設定情報入力部4が設定した表示条件に従って対物センサの図形GS1,…,GS7及び対物センサ間における通路の図形GP1a,GP1b,…,GP7bの色別表示を行う。なお、判定結果と色別表示の具体例については、図2を用いて後述する。また、例えば、対物センサS1の有効範囲は、通路の図形GP1a,GP1bの範囲であり、対物センサS2の有効範囲は、通路の図形GP2a,GP2bの範囲というようになっている。
【0022】
次に、図2を用いて、本実施形態による航空機の地上走行誘導装置における画面表示装置3上の色別表示について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置における画面表示装置上の色別表示の説明図である。
【0023】
センサ情報処理部1は、対物センサS1,…,S7から得られる検知情報を用いて、図2に示す表示色変更条件に基づいて、画面表示装置3上の対物センサGS1,…,GS7及及び誘導路等の通路の区間GP1a,GP1b,…,GP7bの色別表示を行う。
【0024】
図2のNo.1の表示色変更条件は、対物センサS1,…,S7のそれぞれが、非検知状態から検知状態に変化したとき、その対物センサ及び対物センサの検知範囲を、「青」で表示する。No.1の表示色変更条件のときは、移動中の航空機が検知されたものと推定される。
【0025】
また、No.2の表示色変更条件は、対物センサS1,…,S7のそれぞれが、設定時間以内において連続して検知状態にあるとき、その対物センサ及び対物センサの検知範囲を、「緑」で表示する。No.2の表示色変更条件のときは、航空機が対物センサの前の通過中と推定される。設定時間は、航空機の大きさや移動速度に基づいて設定される。例えば、航空機が時速50km/hで移動するものとすると、その移動速度は、14m/sである。航空機の全長を最大63mとすると、1個の対物センサの前を航空機が横切るのに要する時間は、5秒程度である。そこで、例えば、設定時間を10秒とする。連続して10秒以内検知している場合には、表示条件No.2を満たしているものと判定する。また、表示条件No.1は、非検知状態から検知状態に変化して1秒程度の時間とし、検知状態が1〜10秒の間は、表示条件No.2を満たしているものと判定する。
【0026】
No.3の表示色変更条件は、対物センサS1,…,S7のそれぞれが、設定時間を超えて連続して検知状態にあるとき、その対物センサ及び対物センサの検知範囲を、「黄」で表示する。No.3の表示色変更条件のときは、航空機が対物センサの前で停止中若しくは渋滞中と推定される。
【0027】
No.4の表示色変更条件は、対物センサS1,…,S7のそれぞれが、検知状態から非検知状態に変化したとき、その対物センサ及び対物センサの検知範囲を、「白」で表示する。No.4の表示色変更条件のときは、航空機が対物センサの前を通過したものと推定される。
【0028】
No.5の表示色変更条件は、対物センサS1,…,S7のそれぞれが、非検知状態が長時間経過したとき、その対物センサ及び対物センサの検知範囲を、「黄」で表示する。No.5の表示色変更条件のときは、航空機が対物センサの前を通過してない、若しくはセンサ不良と推定される。
【0029】
No.6の表示色変更条件は、隣り合う対物センサS1,…,S7が、両方とも検知状態となったとき、その対物センサ間の通路を、「緑」で表示する。No.6の表示色変更条件のときは、大型航空機が対物センサの前を通過しているか、若しくは渋滞が開始したと推定される。
【0030】
No.7の表示色変更条件は、隣り合う対物センサS1,…,S7が、両方とも設定時間以内において検知状態となったとき、その対物センサ間の通路を、「黄」で表示する。No.7の表示色変更条件のときは、大型航空機が対物センサの前を通過中か、若しくは複数機が渋滞したと推定される。設定時間は、例えば、10秒とする。
【0031】
No.8の表示色変更条件は、隣り合う対物センサS1,…,S7が、両方とも設定時間を超えて検知状態となったとき、その対物センサ間の通路を、「黄」で表示する。No.8の表示色変更条件のときは、大型航空機が対物センサの前を通過中か、若しくは複数機が渋滞したと推定される。
【0032】
No.9の表示色変更条件は、連続して並ぶ3台以上の対物センサS1,…,S7について、両脇の対物センサが非検知状態のまま、内側の対物センサが非検知状態から検知状態となったとき、その対物センサ及び対物センサの検知範囲を、「赤」で表示する。No.9の表示色変更条件のときは、センサの動作不良や、通路に侵入物があると推定される。
【0033】
No.10の表示色変更条件は、対物センサS1,…,S7のそれぞれについて、故障情報を出力しているとき、その対物センサ及び対物センサの検知範囲を、「赤」で表示する。対物センサS1,…,S7はセンサが動作中に物体を検知したときに検知信号を出力し、検知継続中も検知信号を出力し、また電源異常等の自己判定による故障信号の出力を出力する機能を持つものである。したがって、No.10の表示色変更条件のときは、センサ故障と推定される。
【0034】
安全性を向上させる観点から、管制官に対しては実際の状態を示す情報が少しでも多く提供されることが望ましいため、センサ情報処理部1に集約した対物センサの情報を、条件No.1〜No.3若しくはNo.6〜No.8のように、極力細分化して出力するようにしている。そのため、信号が検知から非検知又は非検知から検知に変化した瞬間、検知状態が設定時間内及び設定時間以上継続している場合、隣り合う複数のセンサが検知状態にある場合、連続して配置された状態の両脇のセンサが非検知の状態が続いたまま内側のセンサが非検知から検知状態に変化した場合、故障信号が出力された場合、などについて異なる表示を行う。
【0035】
ここで、図1の画面表示装置3の表示例について、図2の表示条件に照らして説明する。
画面表示装置3には、誘導路などの通路の図形情報GPと、航空機の誘導予定位置における航空機の外形を示すシンボルマークGA1,GA2が、予定の進行方向の向きで表示されている。シンボルマークGA1,GA2は、航空機誘導経路設定処理部2によって算出された例えば、出発する航空機に対しては滑走路までの誘導経路に基づいて求められた、通路Pにおける航空機A1,A2の予定位置を示している。すなわち、画面表示装置3に表示された時点において、対物センサS5,S6(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS5,GS6)の付近の通路Pの上を、航空機A1が移動予定であり、対物センサS1(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS1)の付近の通路Pの上を、航空機A2が移動予定であることを表示している。
【0036】
図示の例では、対物センサS5,S6(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS5,GS6)が検知状態となっている。対物センサS6(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS6)が非検知状態から検知状態に変化し、対物センサS5(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS5)は設定時間内において連続して検知状態にあるとする。従って、対物センサS6は、図2の表示条件No.1を満たしているため、通路の図形GP6bを「青」表示とする。一方、対物センサS6が非検知状態から検知状態に変化したとき、対物センサS5は設定時間内において連続して検知状態にあるので、隣り合う2個の対物センサS5,S6が両方とも検知状態となったため、図2の表示条件No.6を満たしているため、通路の図形GP5a,GP5b,GP6aを「緑」表示とする。通路の図形GP6aについては、図2の表示条件No.1と表示条件No.6の両方を満たしているが、このように、2つの条件を同時に満たす場合には、いずれを優先するか優先順位をつけておくことで、ここでは、表示条件No.6を優先して表示している。
【0037】
このように、航空機のシンボルマークGA1に対して、通路の図形GP5a,GP5b,GP6aを「緑」表示とすることで、大型機が通過中であることを推定でき、しかも、その場所に航空機のシンボルマークGA1が表示されているので、航空機A1は予定通りの位置にあることが一目で判別できる。しかも、通路の図形GP6bは「青」表示であるから、対物センサが非検知状態から検知状態に切り替わったばかりであることがわかり、航空機A1が移動中であることも判別できる。
【0038】
一方、通路の図形GP4a,GP4bは、「白」表示となっている。すなわち、図2の表示条件No.4のように、対物センサS4(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS4)が検知状態から非検知状態に変化した場合の表示をすることで、航空機A1が対物センサの前を通過したことも判別できる。
【0039】
また、このとき、対物センサS3(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS3)が非検知状態から検知状態に変化したため、通路の図形GP3a,GP3bを「青」表示としている。ここで、通路の図形GP3a,GP3bの位置には、航空機のシンボルマークは表示されておらず、一方では、対物センサS1の前に相当する位置に、航空機のシンボルマークGA2が表示されていることから、対物センサS3の前を通過中の航空機は、航空機A2と推定され、しかも、予定位置(航空機のシンボルマークGA2の図示位置)よりも、先行する航空機A1に近い場所に表示されることから、航空機A2が予定位置よりも先行する航空機A1に近づきすぎていることも、判別できる。2機の航空機が予定位置よりも接近しすぎていると管制官が判断すれば、無線通信等を用いて、操縦者に指示を送ることができる。
【0040】
また、管制官は、画面表示装置3の表示から航空機の相対位置を推定し、航空機が縦列で移動中に対物センサが複数検知状態にあるような、対物センサから得られる情報のみでは状態を確定出来ない点があれば、別途無線通信を使用して航空機の操縦者に状況の確認を行うことができる。
【0041】
また、表示画面の表示色を切り替える条件については、任意に設定することができる。すなわち、管制官設定情報入力部4を用いて、センサ情報処理部1に対して、1)条件成立時の画面上の図形の表示色,2)条件成立時の表示色の表示時間,3)連続検知状態判定時間のしきい値,4)条件重複時の優先順位などについて、必要に応じて再設定することにより管制官にとって最適な理解し易い画面表示条件に変更を行うことができる。
【0042】
例えば、1)条件成立時の画面上の図形の表示色は、図2の表示条件No.1の表示色は、デフォルト色では「青」であるが、これを「紫」等に変更することも可能である。また、2)条件成立時の表示色の表示時間は、図2の表示条件No.1の対物センサが非検知状態から検知状態に変化した後、1秒間をデフォルト値とした場合、その時間を2秒に変更したり、また、図2の表示条件No.2の設定時間を、デフォルト値の10秒から、12秒に変更したりすることが可能である。さらに、3)連続検知状態判定時間のしきい値は、図2の表示条件No.7の設定時間を、デフォルト値の10秒から、12秒に変更したりすることが可能である。また、4)条件重複時の優先順位は、上述したように、図2の表示条件No.1に対して、表示条件No.6を優先して表示するのがデフォルト状体の場合に、その優先順位を変更することも可能である。
【0043】
次に、図3及び図4を用いて、本実施形態による航空機の地上走行誘導装置のセンサ情報処理部1の他の処理動作について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置のセンサ情報処理部の他の処理動作の内容を示すフローチャートである。図4は、本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置のセンサ情報処理部の他の処理動作時の表示例の説明図である。
【0044】
図4に示すように、画面表示装置3には、誘導路などの通路の図形情報GPと、航空機の誘導予定位置における航空機の外形を示すシンボルマークGA1,GA2が、予定の進行方向の向きで表示されている。シンボルマークGA1,GA2は、航空機誘導経路設定処理部2によって算出された例えば、出発する航空機に対しては滑走路までの誘導経路に基づいて求められた、通路Pにおける航空機A1,A2の予定位置を示している。すなわち、画面表示装置3に表示された時点において、対物センサS5,S6(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS5,GS6)の付近の通路Pの上を、航空機A1が移動予定であり、対物センサS1(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS1)の付近の通路Pの上を、航空機A2が移動予定であることを表示している。
【0045】
また、図示の例では、対物センサS2,S3(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS2,GS3)が検知状態となっている。対物センサS3(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS3)が非検知状態から検知状態に変化し、対物センサS2(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS2)は設定時間内において連続して検知状態にあるとする。従って、対物センサS3は、図2の表示条件No.1を満たしているため、通路の図形GP3bを「青」表示とする。一方、対物センサS3が非検知状態から検知状態に変化したとき、対物センサS2は設定時間内において連続して検知状態にあるので、隣り合う2個の対物センサS2,S3が両方とも検知状態となったため、図2の表示条件No.6を満たしているため、通路の図形GP2a,GP2b,GP3aを「緑」表示とする。
【0046】
一方、通路の図形GP1a,GP1bは、「白」表示となっている。すなわち、図2の表示条件No.4のように、対物センサS1(画面表示おける図形情報(対物シンボルマーク)GS1)が検知状態から非検知状態に変化した場合の表示をしている。
【0047】
以上のように、通路の図形GP2a,GP2b,GP3a,GP3bの場所が、あたかも、航空機A2の通過を示しているような場合、センサ情報処理部1は、以下の処理により、航空機の識別処理を実行する。
【0048】
図3のステップs10において、センサ情報処理部1は、対物センサが物体を検知したか否かを判定する。対物センサとしては、対物センサS1,…,S7の内、通路Pの左側(航空機が通路Pの左側から右側に移動する場合、最初に航空機などの物体を検知する側)の対物センサS1を用いる。物体が検知されるまでステップs10の処理を続け、物体が検知されると、ステップs20に進む。
【0049】
ステップs20において、センサ情報処理部1は、対物センサS1が非検知状態から検知状態となり、さらに、非検知状態となるまでの連続検知時間Tをカウントする。
【0050】
次に、ステップs30において、センサ情報処理部1は、空港路面及び機器配置情報データベース5の地図情報を元に、検知中の物体の移動速度Vを算出し、さらに、ステップs20で求めた連続検知時間Tを用いて、移動物体の全長の予測値Lを、移動速度V×連続検知時間Tとして算出する。
【0051】
次に、ステップs40において、センサ情報処理部1は、航空機誘導経路設定処理部2から検知位置を通過中の可能性のある航空機を、予定位置を元に複数抽出し、可能性の高い順にAIR1,AIR2,…と割り付ける。例えば、航空機の外形を示すシンボルマークGA2の航空機A2に対して、「AIR1」が割り付けられ、航空機の外形を示すシンボルマークGA1の航空機A1に対して、「AIR2」が割り付けられる。
【0052】
次に、ステップs50において、センサ情報処理部1は、航空機機体情報データベース6から航空機AIR1,AIR2,…の機体の全長L1,L2,…を取得する。
【0053】
そして、ステップs60において、センサ情報処理部1は、ステップs30で予測した移動物体の全長の予測値Lと、ステップs50で取得した全長L1を比較する。両者が一致した場合は、問題がないため、処理を終了する。一方、図4に示したような場合には、不一致となるので、ステップs70に進む。
【0054】
次に、ステップs70において、センサ情報処理部1は、検知中の通路帯及びAIR1の外形図を、警報色ベル1で表示する。例えば、対物センサS1の代わりに、対物センサS2で検知しており、図4に示したような状態の場合では、通路の図形GP2a,GP2bを、「黄色の点滅」表示し、また、対物センサS2の図形情報(対物シンボルマーク)GS2を、「黄」表示する。
【0055】
次に、ステップs80において、センサ情報処理部1は、ステップs30で予測した移動物体の全長の予測値Lと、ステップs50で取得した全長L2を比較し、また、ステップs30で予測した移動物体の全長の予測値Lと、ステップs50で取得した全長L1,L2の和を比較する。
【0056】
L=L2の場合には、ステップs90において、センサ情報処理部1は、「AIR1はAIR2の可能性あり」との文字情報を、検知中の通路帯及びAIR1の外形図の脇に表示し、また、L=L1+L2の場合には、ステップs90において、センサ情報処理部1は、「AIR1,AIR2は接近中の可能性あり」との文字情報を、検知中の通路帯及びAIR1の外形図の脇に表示する。また、ステップs40において、AIR3,AIR4等の航空機を抽出している場合には、L=L3?,L=L1+L3?,L=L2+L3?,L=L1+L2+L3?かなどの判定も行い、判定された状況に応じた文字情報を検知中の通路帯及びAIR1の外形図の脇に表示する。
【0057】
ステップs40で抽出された航空機の情報のいずれとも一致しない場合には、ステップs100において、センサ情報処理部1は、「状況不明」との文字情報を、検知中の通路帯及びAIR1の外形図の脇に、警報色レベル2(例えば、赤色の点滅)で表示する。
【0058】
以上のようにして、移動物体の全長の予測値Lと、航空機誘導経路設定処理部2及び航空機機体情報データベース6との情報に基づいて、対物センサで検出された移動物体の固体識別を行え、表示との不一致を一目で分かるように表示することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、管制官が航空機の誘導予定位置と実際の状況の偏差を視覚的に理解することを可能となり、また、自動による誘導を行っている時の状態監視を行うことができる。したがって、自動から手動に切り替わった時の状況把握のための時間を短縮することも可能となり、航空交通の円滑な運用及び安全の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置の構成を示すシステムブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置における画面表示装置上の色別表示の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置のセンサ情報処理部の他の処理動作の内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による航空機の地上走行誘導装置のセンサ情報処理部の他の処理動作時の表示例の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…センサ情報処理部
2…航空機誘導経路設定処理部
3…画面表示装置
4…管制官設定情報入力部
5…空港路面及び機器配置情報データベース
6…航空機機体情報データベース
7…航空機離発着情報データベース
8A,8B,8C…情報中継装置
9…航空機誘導情報表示装置
11…通信ネットワーク
A1…小型航空機(実物)
A2…大型航空機(実物)
IN…屋内の範囲
OUT…空港のフィールドの範囲
P…航空機の通路(実物)
S1,S2,…,S7…対物センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空港において地上を走行する航空機を誘導するための地上走行誘導装置において、
地上に設置され、前記航空機を検出する複数の航空機検出手段と、
前記航空機の通路の地図を表示し、かつ誘導予定位置で誘導予定の航空機の外形図を表示し、かつ前記航空機検知手段によって検出された航空機の検知情報に基づいて、前記航空機検知手段及び通路の航空機検知手段が設置されている区間を色別で表示する情報処理部を備えたことを特徴とする航空機の地上走行誘導装置。
【請求項2】
請求項1記載の航空機の地上走行誘導装置において、
前記航空機検知手段の検知結果を、任意の一つの検知手段が出力する検知情報、任意の連続する検知手段が出力する検知情報、及び設定時間をしきい値とした検知情報に対し、表示画面における地図上での検知位置における表示色及び表示時間を設定する設定情報手段を備えたことを特徴とする航空機の地上走行誘導装置。
【請求項3】
請求項1記載の航空機の地上走行誘導装置において、
前記情報処理部は、前記航空機検出手段によって検出された航空機の検知情報から検出された航空機の全長を予測し、予測された全長と、前記航空機検出手段の検知位置を通過中の可能性のある航空機の全長とから、航空機を識別することを特徴とする航空機の地上走行誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−221543(P2006−221543A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36393(P2005−36393)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】