説明

航空機用スリーブレス切替バルブ

【課題】強度を向上させ、内部漏洩を生じ難くするとともに、焼き付きを防止することができるようにする。
【解決手段】グルーブドマニホールド3とスプール4との間にスリーブを設けないスリーブレス構造とすることで、部品点数が大幅に削減される。また、グルーブドマニホールド3の材質が、析出硬化型ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であり、スプール4の摺動面4aが硬化処理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に用いられ、流体アクチュエータに対して流体の給排を行う切替バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に用いられる切替バルブは、翼に設けられた可動部を可動させる流体アクチュエータに対して流体の給排を行っている。
【0003】
特許文献1には、ハウジングに収納されたグルーブドマニホールドの油路に連通した電油サーボ弁がハウジングから突出する方向を、流体アクチュエータのピストンロッドがシリンダケースから突出する方向と略反対方向にすることで、グルーブドマニホールドの長手方向及びピストンロッドがシリンダケースから突出する方向に略直交する方向の厚みを、電油サーボ弁がハウジングから突出する方向側と比較してピストンロッドがシリンダケースから突出する方向側で薄くしたアクチュエータユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−170131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、航空機においては、流体アクチュエータの小型化が進んでおり、これに合わせて、小型化した流体アクチュエータで従来と同等の動力を得るために、切替バルブを流れる流体の高圧化が進んでいる。そのため、切替バルブの強度を向上させる必要がある。
【0006】
また、切替バルブにおいては、高圧側から低圧側に流体が漏れる内部漏洩により、動力伝達の効率が悪くなるという問題がある。内部漏洩は、部品点数が多いほど生じ易いのであるが、航空機用の切替バルブは、グルーブドマニホールドの内部に固定されて、内部にスプールを摺動可能に収納したスリーブを有している。
【0007】
また、スリーブ内を摺動するスプールが焼き付き、スプールがスリーブに固着するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、強度を向上させ、内部漏洩を生じ難くするとともに、焼き付きを防止することが可能な航空機用の切替バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の航空機用スリーブレス切替バルブは、マニホールドと、前記マニホールドの内部に収納されて、流体の通路が形成されたグルーブドマニホールドと、前記グルーブドマニホールドの内部に摺動可能に収納されて、前記グルーブドマニホールドの内面に摺接する摺動面を有するスプールと、を有し、前記グルーブドマニホールドの材質が、析出硬化型ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であり、前記スプールの前記摺動面が硬化処理されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、グルーブドマニホールドとスプールとの間にスリーブを設けないスリーブレス構造とすることで、スリーブや、グルーブドマニホールドとスリーブとの間をシールするシール材が不要になり、部品点数が大幅に削減される。これにより、スリーブを備えた構造に比べて、コストダウンを図ることができるとともに、内部漏洩を生じ難くすることができる。また、グルーブドマニホールドの材質が、析出硬化型ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であるので、切替バルブの強度を向上させることができる。また、スプールの摺動面が硬化処理されているので、スプールの焼き付きを防止することができる。
【0011】
また、本発明の航空機用スリーブレス切替バルブにおいては、前記グルーブドマニホールドの前記内面の硬度がRc50〜65であり、前記スプールの前記摺動面の硬度がRc50〜65であってよい。上記の構成によれば、グルーブドマニホールドの内面の硬度とスプールの摺動面の硬度とを同程度とすることで、スプールの焼き付きを一層防止することができる。
【0012】
また、本発明の航空機用スリーブレス切替バルブにおいては、前記グルーブドマニホールドの前記内面と前記スプールの前記摺動面とのクリアランスが3〜5μmであってよい。上記の構成によれば、グルーブドマニホールドとスプールとの間から流体が漏れ難くなるので、内部漏洩を一層生じ難くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の航空機用スリーブレス切替バルブによると、スリーブレス構造とすることで、内部漏洩を生じ難くすることができる。また、グルーブドマニホールドの材質が、析出硬化型ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であるので、切替バルブの強度を向上させることができる。また、スプールの摺動面が硬化処理されているので、スプールの焼き付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態による航空機用スリーブレス切替バルブを有する航空機の概略図である。
【図2】本実施形態による航空機用スリーブレス切替バルブを備えたアクチュエータユニットを示す概略断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】グルーブドマニホールドを示す概略図である。
【図5】アクチュエータユニットを示す側面図である。
【図6】アクチュエータユニットを示す上面図である。
【図7】アクチュエータユニットの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(航空機の構成)
本実施形態による航空機用スリーブレス切替バルブは、図1に示すように、航空機71に設けられている。
【0017】
航空機71には、その飛行姿勢や飛行方向を変化させたり、その受ける揚力を変化させたりするための複数の可動部が翼に設けられている。例えば、主翼76には離着陸時に高揚力を発生させるためのフラップ73や、機体のローリングのためのエルロン72が設けられている。また、水平尾翼77には、機首の上げ下げのためのエレベータ74が設けられている。さらに、垂直尾翼78には機体のヨーイングのためのラダー75が設けられている。これらの可動部は、翼に対する取り付け角が変化したり翼に対して並進移動したりするように変位可能に取り付けられており、このように変位させることで航空機71の飛行姿勢や飛行方向を変化させたり高揚力を発生させたりする。
【0018】
これらの可動部の各々には、航空機用スリーブレス切替バルブにより圧油(流体)が給排される油圧式の流体アクチュエータ20が設けられている。流体アクチュエータ20は、これら可動部の翼への取り付け角度を変化させたり、翼に対して可動部を並進移動させたりするためのアクチュエータであり、圧油が給排されることで動作する。なお、流体アクチュエータ20を動作させる流体として圧油を用いて説明するが、流体は燃料や大気であってもよい。
【0019】
(アクチュエータユニットの構成)
本実施の形態に係る航空機用スリーブレス切替バルブ(切替バルブ)1は、図2に示すように、流体アクチュエータ20とともに、アクチュエータユニット10に設けられている。
【0020】
流体アクチュエータ20は、シリンダ21と、シリンダ21内に摺動可能に収納されたピストン22と、ピストン22と一体に形成され、ピストン22の摺動方向に沿って、シリンダ21の内部から外部にかけて設けられて、図中左端部が航空機71の可動部に連結されたピストンロッド23と、を有している。シリンダ21内には、ピストン22によって、シリンダ室20a及びシリンダ室20bが形成されている。
【0021】
ここで、シリンダ21は、ピストン22を収納した筒体21aと、筒体21aに収納されてピストンロッド23を収納した筒体21bと、筒体21c及び筒体21dと、筒体21a及びピストンロッド23に収納された筒体21eと、を有している。
【0022】
また、シリンダ21は、ピストン22と筒体21aとの間、ピストンロッド23と筒体21cとの間、ピストンロッド23と筒体21dとの間、ピストンロッド23と筒体21eとの間、筒体21aと筒体21bとの間、及び、筒体21aと筒体21eとの間に複数のシールリング24を有している。
【0023】
本実施形態の切替バルブ1は、図2および図3に示すように、筒体21aと一体に形成されたマニホールド2と、マニホールド2の内部に収納された円柱状のグルーブドマニホールド3と、を有している。
【0024】
マニホールド2には、複数の貫通穴2aと、穴2bとが形成されており、穴2bにグルーブドマニホールド3が挿入されることによって、グルーブドマニホールド3を内部に収納するようになっている。
【0025】
グルーブドマニホールド3には、図4に示すように、圧油の通路としての複数の溝3a及び穴3bが形成されている。図3に示すように、グルーブドマニホールド3の溝3a及び穴3bと、マニホールド2の貫通穴2aとによって、切替バルブ1には、圧油を通す複数の流体路1aが形成されている。
【0026】
また、切替バルブ1は、図3に示すように、マニホールド2の穴2bに挿入されてマニホールド2に螺合する螺合部材5及び螺合部材6と、螺合部材5に対してグルーブドマニホールド3を固定するピン7と、グルーブドマニホールド3に螺合する螺合部材8と、を有している。
【0027】
また、切替バルブ1は、グルーブドマニホールド3とマニホールド2との間、及び、グルーブドマニホールド3と螺合部材8との間に、複数のシールリング9を有している。
【0028】
また、切替バルブ1は、グルーブドマニホールド3の内部に収納されて、グルーブドマニホールド3に対して移動することによって、流体路1aの連通状態を切り換える切換弁11を有している。
【0029】
切換弁11は、グルーブドマニホールド3の内部に摺動可能に収納されて、グルーブドマニホールド3の内面3cに摺接する摺動面4aを有するスプール4と、スプール4をグルーブドマニホールド3に対して矢印102で示す方向に付勢するスプリング12と、を有している。
【0030】
ここで、従来の航空機用の切替バルブは、グルーブドマニホールド3の内部に固定されて、内部にスプール4を摺動可能に収納したスリーブを有している。これに対して、本実施形態の切替バルブ1は、グルーブドマニホールド3とスプール4との間にスリーブを設けないスリーブレス構造である。そのため、スリーブや、グルーブドマニホールド3とスリーブとの間をシールするシール材が不要になり、部品点数が大幅に削減されている。これにより、スリーブを備えた構造に比べて、コストダウンを図ることができるとともに、高圧側から低圧側に圧油が漏れる内部漏洩を生じ難くすることができる。
【0031】
また、グルーブドマニホールド3の材質は、析出硬化型ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼である。具体的には、グルーブドマニホールド3の材質は、18−8PH(SUS304)、15−5PH、17−4PH(SUS630)といった析出硬化型ステンレス鋼、または、440C(SUS440C)といったマルテンサイト系ステンレス鋼である。このため、流体アクチュエータ20の小型化に伴い、例えば4000〜5000psi(pound−force per square inch)程度に高圧化が進む圧油に対して、切替バルブ1の強度を向上させることができる。なお、グルーブドマニホールド3の材質が析出硬化型ステンレス鋼の場合、窒化処理によって、内面3cの耐摩耗性が向上されている。
【0032】
また、スプール4の摺動面4aは硬化処理されている。スプール4の材質としては、52100(SUJ2)といった高炭素クロム軸受鋼や、SACM645といった窒化鋼、440C(SUS440C)といったマルテンサイト系ステンレス鋼が挙げられる。スプール4の材質が高炭素クロム軸受鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼の場合、焼き入れによってスプール4の摺動面4aが硬化処理されている。これにより、グルーブドマニホールド3内を摺動するスプール4が焼き付いて、スプール4がグルーブドマニホールド3に固着するのを防止することができる。
【0033】
さらに、グルーブドマニホールド3の内面3cは、硬度がRc50〜65であり、スプール4の摺動面4aは、硬度がRc50〜65となるように硬化処理されている。このように、グルーブドマニホールド3の内面3cの硬度とスプール4の摺動面4aの硬度とを同程度とすることで、スプール4の焼き付きを一層防止することができる。
【0034】
さらに、グルーブドマニホールド3の内面3cとスプール4の摺動面4aとのクリアランスは、3〜5μmである。これにより、グルーブドマニホールド3とスプール4との間から圧油が漏れ難くなるので、内部漏洩を一層生じ難くすることができる。
【0035】
また、切替バルブ1には、図5乃至図7に示すように、流体が供給される供給口1bと、流体が排出される排出口1cとが形成されている。
【0036】
また、アクチュエータユニット10は、図2に示すように、シリンダ21のシリンダ室20aと切替バルブ1の流体路1aとを連通させる連通路40aが形成された連通部40を有している。ここで、切替バルブ1の流体路1aは、切替バルブ1の矢印102で示す方向の端側に開口して、連通部40の連通路40aに連通している。
【0037】
また、アクチュエータユニット10は、図5乃至図7に示すように、流体の逆流を防止する逆止弁51及び逆止弁52と、外部から入力される電気信号に応じた流体の給排を行う電気流体圧サーボ弁53と、外部から入力される電気信号に応じて流体路1aの連通状態を切り換える電磁弁54と、流体路1a内の流体の圧力を計測する圧力計55と、流体路1a内の流体の圧力が予め設定された設定圧力を超えたときに流体路1aの連通状態を変更するリリーフ弁56及びリリーフ弁57と、を有している。
【0038】
逆止弁51、逆止弁52、電気流体圧サーボ弁53、電磁弁54、圧力計55、リリーフ弁56、および、リリーフ弁57は、切替バルブ1に固定されており、図7に示すように、切替バルブ1の流体路1aに連通されている。
【0039】
ここで、逆止弁51は、切替バルブ1の供給口1b側から電気流体圧サーボ弁53側に圧油を通過させて逆流を防止するようになっており、逆止弁52は、逆止弁51及び電気流体圧サーボ弁53側から電磁弁54側に圧油を通過させて逆流を防止するようになっている。
【0040】
また、電気流体圧サーボ弁53は、外部から入力される電気信号に応じて、逆止弁51側から供給された圧油を切換弁11に供給するとともに、切換弁11側から供給された圧油を切替バルブ1の排出口1cに排出するようになっている。これにより、シリンダ室20a及びシリンダ室20bのいずれか一方に圧油が供給されるとともに、シリンダ室20a及びシリンダ室20bの他方から圧油が排出されることとなる。
【0041】
また、電磁弁54は、外部から入力される電気信号に応じて、逆止弁52側から供給された圧油の切換弁11への供給と、逆止弁52側から供給された圧油の排出口1cへの排出と、を切り換えるようになっている。
【0042】
ここで、切換弁11は、電磁弁54によって圧油が供給されるときに、シリンダ室20a及びシリンダ室20bと、電気流体圧サーボ弁53とを連通させる一方、電磁弁54によって圧油が供給されないときに、シリンダ室20a及びシリンダ室20bと、切替バルブ1の排出口1cとを連通させるようになっている。
【0043】
また、圧力計55は、シリンダ室20aに連通する流体路1a内の圧油の圧力、及び、シリンダ室20bに連通する流体路1a内の圧油の圧力を計測するようになっている。
【0044】
また、リリーフ弁56及びリリーフ弁57は、シリンダ室20a及びシリンダ室20bの一方に連通する流体路1a内の圧油の圧力が予め設定された設定圧力を超えたときに、シリンダ室20a及びシリンダ室20bの一方に連通する流体路1a内の圧油を、シリンダ室20a及びシリンダ室20bの他方に連通する流体路1aに通過させるようになっている。
【0045】
また、アクチュエータユニット10は、図5乃至図7に示すように、切替バルブ1に固定されて外部との間で電気信号を中継するコネクタ61と、流体アクチュエータ20の内部に収納されて、シリンダ21に対するピストン22の位置を検出する位置検出器62と、切替バルブ1に固定されて、コネクタ61及び位置検出器62の間で電気信号を中継するコネクタ63と、電気信号を通過させる複数の電線64と、を有している。
【0046】
位置検出器62は、コアの変位量を電気信号に直接変換する変位センサであるLVDT(Linear Variable Differential Transformer)や、計量部の回転変位量に比例した周波数を出力する変位センサであるRVDT(Rotary Variable Differential Transformer)等の各種ポテンショメータであってよい。
【0047】
電線64は、図7に示すように、電気流体圧サーボ弁53、電磁弁54、圧力計55、コネクタ61、位置検出器62、および、コネクタ63を電気的に接続している。
【0048】
また、アクチュエータユニット10は、図5、図6に示すように、コネクタ61と圧力計55とを電気的に接続する電線64を保護する保護部65と、位置検出器62とコネクタ63とを電気的に接続する電線64を保護する保護部66と、を有している。
【0049】
(アクチュエータユニットの動作)
次に、アクチュエータユニット10の動作を通して、切替バルブ1の動作について説明する。
【0050】
アクチュエータユニット10は、図7に示すように、位置検出器62から出力される電気信号を電線64、コネクタ63及びコネクタ61を介して外部に出力するとともに、圧力計55から出力される電気信号を電線64及びコネクタ61を介して外部に出力する。
【0051】
図示しない外部のコンピュータは、位置検出器62及び圧力計55からコネクタ61を介して出力された電気信号や、図示しない操作装置から出力された電気信号に基づいて、電気流体圧サーボ弁53及び電磁弁54に入力する電気信号を算出し、算出した電気信号をコネクタ61及び電線64を介して電気流体圧サーボ弁53及び電磁弁54に入力する。
【0052】
電気流体圧サーボ弁53は、外部のコンピュータから電気信号が入力されると、外部のコンピュータから入力された電気信号に応じて、逆止弁51側から供給された圧油を切換弁11に供給するとともに、切換弁11側から供給された圧油を切替バルブ1の排出口1cに排出する。
【0053】
また、電磁弁54は、外部のコンピュータから電気信号が入力されると、外部のコンピュータから入力された電気信号に応じて、逆止弁52側から供給された圧油の切換弁11への供給と、逆止弁52側から供給された圧油の排出口1cへの排出とを切り換える。
【0054】
ここで、電磁弁54が、逆止弁52側から供給された圧油を切換弁11に供給すると、電磁弁54を介して供給口1bとスプール4とが連通するので、供給口1bから供給される圧油によって、スプール4がグルーブドマニホールド3に対して矢印101で示す方向に移動させられる(図3参照)。これにより、シリンダ室20a及びシリンダ室20bと、電気流体圧サーボ弁53とが連通される。したがって、流体アクチュエータ20は、外部のコンピュータから電気流体圧サーボ弁53に入力された電気信号に応じて動作する。これにより、航空機71の飛行中の姿勢が変更される。
【0055】
また、電磁弁54が、逆止弁52側から供給された圧油を排出口1cに排出すると、電磁弁54を介して排出口1cとスプール4とが連通するので、スプリング12によってスプール4がグルーブドマニホールド3に対して矢印102で示す方向に付勢される(図3参照)。これにより、シリンダ室20a及びシリンダ室20bと、切替バルブ1の排出口1cとが連通される。したがって、流体アクチュエータ20は、外部から与えられた負荷に応じて動作する。
【0056】
具体的には、図3に示すように、航空機71の飛行中の空気抵抗などの外力によって、ピストンロッド23がシリンダ21に対して矢印101で示す方向に付勢されるとき、シリンダ室20bから供給される圧油によって、スプール4はグルーブドマニホールド3に対して矢印101で示す方向に移動させられる。これにより、切換弁11を介してシリンダ室20bとシリンダ室20aとが連通されるので、外力によってピストンロッド23がシリンダ21に対して矢印101で示す方向に移動する。
【0057】
また、ピストンロッド23が外力によってシリンダ21に対して矢印102で示す方向に付勢されるとき、スプリング12によって、スプール4はグルーブドマニホールド3に対して矢印102で示す方向に移動させられる。これにより、切換弁11を介してシリンダ室20bとシリンダ室20aとが連通されないので、ピストンロッド23はシリンダ21に対して移動しない。
【0058】
また、ピストンロッド23が外力によってシリンダ21に対して矢印102で示す方向及び矢印101で示す方向のいずれにも付勢されないとき、スプリング12によって、スプール4はグルーブドマニホールド3に対して矢印102で示す方向に移動させられる。これにより、切換弁11を介してシリンダ室20bとシリンダ室20aとが連通されないので、ピストンロッド23はシリンダ21に対して移動しない。
【0059】
ここで、本実施形態の切替バルブ1は、グルーブドマニホールド3とスプール4との間にスリーブを設けないスリーブレス構造であるので、スリーブを備えた構造に比べて、高圧側から低圧側に圧油が漏れる内部漏洩を生じ難くすることができる。
【0060】
また、グルーブドマニホールド3の材質は、析出硬化型ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であるので、流体アクチュエータ20の小型化に伴い、例えば4000〜5000psi(pound−force per square inch)程度に高圧化が進む圧油に対して、切替バルブ1の強度を向上させることができる。
【0061】
また、スプール4の摺動面4aは硬化処理されているので、グルーブドマニホールド3内を摺動するスプール4が焼き付いて、スプール4がグルーブドマニホールド3に固着するのを防止することができる。
【0062】
さらに、グルーブドマニホールド3の内面3cは、硬度がRc50〜65であり、スプール4の摺動面4aは、硬度がRc50〜65となるように硬化処理されているので、スプール4の焼き付きを一層防止することができる。
【0063】
さらに、グルーブドマニホールド3の内面3cとスプール4の摺動面4aとのクリアランスが3〜5μmであるので、グルーブドマニホールド3とスプール4との間から圧油が漏れ難くなり、内部漏洩を一層生じ難くすることができる。
【0064】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0065】
例えば、本実施形態において、マニホールド2の内部にグルーブドマニホールド3が収納された構成にされているが、マニホールド2とグルーブドマニホールド3とが一体にされていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 切替バルブ(航空機用スリーブレス切替バルブ)
1a 流体路
1b 供給口
1c 排出口
2 マニホールド
3 グルーブドマニホールド
3c 内面
4 スプール
4a 摺動面
10 アクチュエータユニット
11 切換弁
12 スプリング
20 流体アクチュエータ
21 シリンダ
22 ピストン
23 ピストンロッド
40 連通部
53 電気流体圧サーボ弁
54 電磁弁
62 位置検出器
71 航空機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニホールドと、
前記マニホールドの内部に収納されて、流体の通路が形成されたグルーブドマニホールドと、
前記グルーブドマニホールドの内部に摺動可能に収納されて、前記グルーブドマニホールドの内面に摺接する摺動面を有するスプールと、
を有し、
前記グルーブドマニホールドの材質が、析出硬化型ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であり、
前記スプールの前記摺動面が硬化処理されていることを特徴とする航空機用スリーブレス切替バルブ。
【請求項2】
前記グルーブドマニホールドの前記内面の硬度がRc50〜65であり、
前記スプールの前記摺動面の硬度がRc50〜65であることを特徴とする請求項1に記載の航空機用スリーブレス切替バルブ。
【請求項3】
前記グルーブドマニホールドの前記内面と前記スプールの前記摺動面とのクリアランスが3〜5μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の航空機用スリーブレス切替バルブ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17839(P2012−17839A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157165(P2010−157165)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】