説明

船倉内の魚の血液成分の回収方法

【課題】 収穫した魚の鮮度を維持するため、船上で魚の血抜きする作業で船倉に混入した多数の魚の血液を、分離して血液成分を回収し、血液の有用成分を飼料・肥料・薬剤の原料として利用できるようにする。又、魚の血液の海中への投棄をなくして海の汚染を防止する。
【解決手段】 船倉の海氷水の貯留海水を、スクリーンによって鱗・挟雑物を除去し、除去した液体分を加熱処理し、加熱後静置して加熱による凝集沈澱を生起させて固液分離して血液成分を回収する。又は加熱後に凝集槽に入れて凝集剤を投入して血液成分を凝集沈澱させて固液分離して血液成分を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁船の船倉の魚体とともに貯った血液中の成分を回収して利用が図れるようにするの処理技術に関する。及び魚の血液分の海中投棄に代わる環境を汚すことが少ない血液の処理技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、魚の流通の有様が変化し、鮮魚として魚体そのままの状態で流通させるときも、加工用とする場合も、鮮度保持、経時的な品質劣化抑制のため、魚を収穫すると即殺、血抜きの処理が行なわれて魚体は船倉に投入される。この際、魚体より流出する血液は、そのほとんどが、船倉の冷却海水中に流入し、加えてこの海水中には、鱗その他の挟雑物が混入する。従来、この船倉内の海水は、そのまま海へ排水されていた。そのため、海が血液で汚染されていた。
又、魚類加工工場での廃水処理法として、血液の蛋白質や脂肪を含む廃水に、Ae,Feイオンを添加して蛋白質・脂肪等を回収して飼料にする技術が、特開昭47−24163号公報で知られているが、漁船で即殺で生じる船倉の海水の血液の処理方法はなかった。
【特許文献1】特開昭47−24163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、従来、海へ投棄されていた魚の血液を廃棄しないで飼料・肥料その他有用物として利用できるようにするための血液成分の回収方法を提供することにある。又同時に海の血液による汚染をなくし、血液投棄をしない有効な対策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 船倉の貯留海水を、スクリーンにより鱗・挟雑物を除去し、除去した液体分を加熱処理し、加熱後、静置して加熱による凝集沈澱を生起させて固液分離させて血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法
2) 船倉の貯留海水を、スクリーンにより鱗・挟雑物を除去し、除去した液体分を加熱処理し、加熱したものを凝集槽にいれて、凝集剤を投入し、血液成分を凝集沈澱させ、固液分離して血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法
3) 船倉の潮流海水をスクリーンにかけて、鱗・挟雑物を除去し、その後の液体分に凝集剤を添加し、静置して固液分離して血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法
4) 船倉の貯留海水をスクリーンにかけた後、pH調整剤を添加してから加熱して又は加熱させずに静置して凝集沈澱させて固液分離して血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法
5) 船倉の貯留海水をスクリーンで鱗・挟雑物を除去した後、有機溶媒を添加して凝集沈澱させ、固液分離して血液成分層と水層に分け、血液成分層を蒸留して血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法
6) 前記5)において、有機溶媒としてエタノールを使用し、血液成分層から蒸留でエタノールを回収して添加用エタノールとして循環使用し、又水層を蒸留してエタノールを回収して添加エタノールとして使用する、船倉内の魚の血液成分の回収方法
7) 船倉の貯留海水をスクリーンにかけて鱗・挟雑物を除去し、その後おり下げ剤を添加し、静置しており下げ剤による沈澱を生起させて固液を分離して、血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法
8) 船倉の貯留海水をスクリーンにかけて鱗・挟雑物を除去し、その後限外濾過によって血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法
にある。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、船倉の海氷水の中に含まれる多量の血液から、その成分を回収して、飼料・肥料・薬剤・その他の有用な活用を図れるようにできる。又魚血液を海中投棄しないので、海洋の汚染を少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で、船倉から回収された魚の血液の組成には、赤血球を多量に、他に白血球,血小板等の有形成分が血液の半分程ある。血液の残りの液体成分(血漿)の部分は水が大部分であるがたんぱく質,糖質,脂質,無機物質である。この血液成分には有用にできる成分が多くある。
本発明では、魚の鮮度を高めるため、集穫した魚は漁船において、機械で即殺し、血抜きの処理がなされ、魚体とともに血液は海氷水が入っている船倉の中に投入される。船倉の海氷水には多くの血液の他に、鱗,挟雑物も混入している。本発明の本処理を行う前に、前処理として船倉中の海氷水をスクリーンにかけて鱗,挟雑物を除去し、その後、氷と海水を除去し、血液成分を回収する。回収の方法は血液の特定成分回収か、全量利用の回収かによって処理工程が異なる。
本発明の複数の実施例で示す回収処理方法は、組み合わされて使用されてもよい。
本発明の血液の回収と再利用処理は、着港した後陸上設備で行ってもよいし、海上の漁船でもって処理されてもよい。
【実施例1】
【0007】
図2に示す実施例1は、船倉の海氷水の液体分(貯留海水)を、スクリーンにより鱗・挟雑物を除去し、除去した液体分を加熱処理し、加熱後、静置して加熱による凝集沈澱を生起させて固液分離させて血液成分を回収する。あるいは加熱後凝集槽に入れて、無機系凝集剤(ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、ポリシリカ鉄等)又は有機系凝集剤(アルギン酸ナトリウム、キトサン等)あるいは合成系凝集剤(ポリアクリルアミド等)等の凝集剤を投入し、血液成分を凝集沈澱させ、固液分離して血液成分を回収してもよい。
【実施例2】
【0008】
図3に示す実施例2は、船倉の液体分(貯留海水)をスクリーンにかけて、鱗・挟雑物を除去し、その後の液体分に凝集剤(ポリ鉄,高分子凝集剤等)を添加し、静置して固液分離して血液成分を回収する。
【実施例3】
【0009】
図4に示す実施例3は、前述の如く、貯留海水をスクリーンにかけた後、pH調整剤(酸)を添加してから加熱して又は加熱させずに静置して凝集沈澱させて固液分離して血液成分を回収する。
【実施例4】
【0010】
図5に示す実施例4は、前述の如く、貯留海水をスクリーンで鱗・挟雑物を除去した後、エタノール(又はその他の有機溶媒)を添加(終濃度60〜80%)して凝集沈澱させ、固液分離して血液成分層と水層に分け、血液成分層は蒸留して血液成分を回収する。又蒸留でエタノールを回収して添加用エタノールとして循環使用する。又水層は蒸留してエタノールを回収して添加エタノールとして同様に使用する。
【実施例5】
【0011】
図6に示す実施例5は、前述の通り、貯留海水をスクリーンにかけて鱗・挟雑物を除去し、その後おり下げ剤(タンニン,カラギーナン,ゼラチン等)を添加し、加熱して又は加熱せずに静置しており下げ剤による沈澱を生起させて固液を分離して、血液成分を回収する。
【実施例6】
【0012】
図7に示す実施例6は、前述の通り、貯留海水をスクリーンにかけて鱗・挟雑物を除去し、その後前処理濾過させて又はしないで限外濾過によって血液成分を回収する。
【0013】
本発明の他の方法として、血液凝固因子(トロンピン)の添加、吸着剤の使用、クロマトグラフィーの使用等の手法がある。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の血液成分の回収方法で回収された血液成分には、前記の如く、有用物が多く含まれていて、飼料・肥料・化粧品・薬品の原料となりうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の基本的流れを示す説明図である。
【図2】実施例1を示す説明図である。
【図3】実施例2を示す説明図である。
【図4】実施例3を示す説明図である。
【図5】実施例4を示す説明図である。
【図6】実施例5を示す説明図である。
【図7】実施例6を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船倉の貯留海水を、スクリーンにより鱗・挟雑物を除去し、除去した液体分を加熱処理し、加熱後、静置して加熱による凝集沈澱を生起させて固液分離させて血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法。
【請求項2】
船倉の貯留海水を、スクリーンにより鱗・挟雑物を除去し、除去した液体分を加熱処理し、加熱したものを凝集槽にいれて、凝集剤を投入し、血液成分を凝集沈澱させ、固液分離して血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法。
【請求項3】
船倉の潮流海水をスクリーンにかけて、鱗・挟雑物を除去し、その後の液体分に凝集剤を添加し、静置して固液分離して血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法。
【請求項4】
船倉の貯留海水をスクリーンにかけた後、pH調整剤を添加してから加熱して又は加熱させずに静置して凝集沈澱させて固液分離して血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法。
【請求項5】
船倉の貯留海水をスクリーンで鱗・挟雑物を除去した後、有機溶媒を添加して凝集沈澱させ、固液分離して血液成分層と水層に分け、血液成分層を蒸留して血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法。
【請求項6】
請求項5において、有機溶媒としてエタノールを使用し、血液成分層から蒸留でエタノールを回収して添加用エタノールとして循環使用し、又水層を蒸留してエタノールを回収して添加エタノールとして使用する、船倉内の魚の血液成分の回収方法。
【請求項7】
船倉の貯留海水をスクリーンにかけて鱗・挟雑物を除去し、その後おり下げ剤を添加し、静置しており下げ剤による沈澱を生起させて固液を分離して、血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法。
【請求項8】
船倉の貯留海水をスクリーンにかけて鱗・挟雑物を除去し、その後限外濾過によって血液成分を回収する、船倉内の魚の血液成分の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−305472(P2006−305472A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131810(P2005−131810)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(596106744)株式会社サンコー・テクノ (4)
【Fターム(参考)】