説明

船舶推進機およびその運転方法

【課題】エンジンおよび電動モータを簡単に制御できかつトローリング時の排気ガスや騒音を抑制できる、船舶推進機およびその運転方法を提供する。
【解決手段】船舶推進機10は、運転モードの種類とともに駆動源の出力の大きさを指示するための操作レバー46、および操作レバー46による指示に応じてプロペラ駆動モードを設定するコントローラ42を備える。コントローラ42は、操作レバー46によってトローリングモードが指示されているとき、プロペラ駆動モードを、プロペラ12を電動モータ16によって駆動しかつ電動モータ16の出力の大きさを操作レバー46からの指示に応じて調整する第1モードに設定し、操作レバー46によって通常航行モードが指示されているとき、プロペラ駆動モードを、プロペラ12をエンジン14によって駆動しかつエンジン14の出力の大きさを操作レバー46からの指示に応じて調整する第2モードに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は船舶推進機およびその運転方法に関し、より特定的には、エンジンと電動モータとをプロペラの駆動源として備えたハイブリッド型の船舶推進機およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術が特許文献1および2において開示されている。
特許文献1には、エンジンの駆動力を電動モータの駆動力によってアシストして動力伝達装置を駆動する、いわゆる加速アシストによる航行を行う場合について開示されている。かかる加速アシストによる航行時において、操作レバーの操作速度と、エンジンのスロットル開度速度と、操作レバーの操作時間と、エンジンの回転変動時間とに基づいて、電動モータの出力が調整される。
【0003】
また、特許文献2では、バーハンドルには回動操作自在なスロットルグリップが設けられ、スロットルグリップの近傍に制御スイッチが設けられている。制御スイッチの操作によってエンジンと電動モータの運転と停止、および電動モータの回転方向を制御でき、スロットルグリップの回動操作に応じて電動モータとエンジンの回転数を調整できる。
【特許文献1】特開2004−257294号公報
【特許文献2】特開2006−36086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、航行中常にエンジンが駆動しているという前提で電動モータとの整合性をとるための技術であるので、トローリング時の排気ガスや騒音を防ぐことはできない。
【0005】
また、特許文献2では、エンジンおよび電動モータの運転、停止および回転数といった制御を、制御スイッチおよびスロットルグリップの2つの操作手段によって行わなければならず、その操作が煩雑であった。
【0006】
それゆえにこの発明の主たる目的は、エンジンおよび電動モータを簡単に制御できかつトローリング時の排気ガスや騒音を抑制できる、船舶推進機およびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の船舶推進機は、プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含む船舶推進機であって、運転モードの種類とともに前記駆動源の出力の大きさを指示するための指示手段、および前記指示手段による指示に応じてプロペラ駆動モードを設定する設定手段を備え、前記設定手段は、前記指示手段によってトローリングモードが指示されているとき、前記プロペラ駆動モードを、前記プロペラを前記電動モータによって駆動しかつ前記電動モータの出力の大きさを前記指示手段からの指示に応じて調整する第1モードに設定し、前記指示手段によって通常航行モードが指示されているとき、前記プロペラ駆動モードを、前記プロペラを前記エンジンによって駆動しかつ前記エンジンの出力の大きさを前記指示手段からの指示に応じて調整する第2モードに設定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の船舶推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記指示手段は、回動可能でありかつその位置によって前記運転モードの種類および前記駆動源の出力の大きさを指示可能な操作レバーを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の船舶推進機は、請求項2に記載の船舶推進機において、前記トローリングモードにおける前記操作レバーの変位に対する前記電動モータの出力の変化量は、前記通常航行モードにおける前記操作レバーの変位に対する前記エンジンの出力の変化量より小さく設定されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の船舶推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記電動モータに与える電力を蓄える電池、前記電池の残量を検出する残量検出手段、および前記第1モードにおいて前記残量検出手段の検出結果に基づいて、エンジン発電によって電力を前記電池へ充電するか否かを決定する第1決定手段をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の船舶推進機は、請求項4に記載の船舶推進機において、前記第1モードにおいて前記エンジンと前記プロペラとの接続が切り離されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の船舶推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段、および前記第2モードにおいて前記回転数検出手段の検出結果と第1所定値との比較に基づいて、前記エンジンを前記プロペラに接続するか否かを決定する第2決定手段をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の船舶推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記第2モードにおいて前記回転数検出手段の検出結果と第2所定値との比較に基づいて、加速する前記電動モータをも用いて前記プロペラを駆動するか前記電動モータを停止して前記プロペラを駆動するかを決定する第3決定手段をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の船舶推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記第1モードにおいて前記電動モータを前記電池からの電力によって駆動するとき、前記エンジンをアイドリング運転させることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の船舶推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記電動モータに与える電力を蓄える電池、および前記電池の残量を検出する残量検出手段をさらに含み、前記設定手段は、さらに前記残量検出手段の検出結果と第1閾値との比較結果をも考慮して、前記プロペラ駆動モードを前記第1モードか前記第2モードかに設定することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の船舶推進機は、請求項9に記載の船舶推進機において、前記第1モードにおいて前記残量検出手段の検出結果と第2閾値との比較結果に基づいて、エンジン発電によって電力を前記電池へ充電するか否かを決定する第1決定手段をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の船舶推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記プロペラの駆動に前記電動モータを用いるか否かを切り替えるための切替手段をさらに含み、前記設定手段は、さらに前記切替手段による設定をも考慮して、前記プロペラ駆動モードを前記第1モードか前記第2モードかに設定することを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の船舶推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記電動モータに与える電力を蓄える電池、前記電池の残量を検出する残量検出手段、および前記第1モードにおいて前記残量検出手段の検出結果に基づいて、前記電動モータを出力制限して前記電池からの電力によって駆動するか前記電動モータを出力制限することなく前記電池からの電力によって駆動するかを決定する第4決定手段をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の船舶推進機の運転方法は、プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含む船舶推進機の運転方法であって、運転モードの種類とともに前記駆動源の出力の大きさの指示を受ける第1ステップ、および前記第1ステップにおける指示に応じてプロペラ駆動モードを設定する第2ステップを備え、前記第2ステップでは、前記第1ステップにおいてトローリングモードが指示されているとき、前記プロペラ駆動モードを、前記プロペラを前記電動モータによって駆動しかつ前記電動モータの出力の大きさを前記第1ステップでの指示に応じて調整する第1モードに設定し、前記第1ステップにおいて通常航行モードが指示されているとき、前記プロペラ駆動モードを、前記プロペラを前記エンジンによって駆動しかつ前記エンジンの出力の大きさを前記第1ステップでの指示に応じて調整する第2モードに設定することを特徴とする。
【0020】
請求項1に記載の船舶推進機では、運転モードの種類と駆動源の出力の大きさとを同時に指示することができるので、駆動源であるエンジンおよび電動モータを簡単に制御できる。また、トローリングモードが指示されているとき、プロペラを電動モータによって駆動することによって、トローリング時の排気ガスや騒音を抑制できる。請求項13に記載の船舶推進機の運転方法についても同様である。
【0021】
請求項2に記載の船舶推進機では、操作レバーの回動操作によって運転モードの種類と駆動源の出力の大きさとを簡単かつ連続的に指示することができ、操作性が格段に向上する。
【0022】
請求項3に記載の船舶推進機では、トローリングモードにおける操作レバーの変位に対する電動モータの出力の変化量が、通常航行モードにおける操作レバーの変位に対するエンジンの出力の変化量より小さく設定される。これによってトローリングモードにおける出力の微調整が容易になる。
【0023】
請求項4に記載の船舶推進機では、第1モードにおいて、電池残量が十分である場合には電動モータを電池からの電力によって駆動し、電池残量が比較的少ない場合にはエンジン発電によって電池を充電しながら電動モータを駆動することによって、過放電による電池の劣化を防止できる。
【0024】
請求項5に記載の船舶推進機では、第1モードにおいてエンジン発電によって電力を供給する場合、プロペラの回転速度に関係なくエンジン回転数を制御でき、十分な充電電力を得ることができる。
【0025】
請求項6に記載の船舶推進機では、第2モードにおいて、エンジンの回転数が第1所定値以上になればエンジンをプロペラに接続することによって、エンジンをプロペラに円滑に接続できる。
【0026】
請求項7に記載の船舶推進機では、第2モードにおいて、エンジンの回転数が第2所定値に達するまでは加速する電動モータをも用いてプロペラを駆動させることによって船舶の加速を良くすることができる。
【0027】
請求項8に記載の船舶推進機では、第1モードにおいて、電動モータを電池からの電力によって駆動するときエンジンをアイドリング運転させることによって、その後、エンジンを再始動することなく第2モードに迅速に移行できる。
【0028】
請求項9に記載の船舶推進機では、運転モードだけではなく残量検出手段の検出結果と第1閾値との比較結果をも考慮して、プロペラ駆動モードを第1モードか第2モードかに設定する。たとえば、運転モードがトローリングモードに指示されていても電池残量がかなり少なければ、第1モードによってプロペラを電動モータで駆動するのは困難な場合があるが、このような場合に第2モードでプロペラを駆動できる。
【0029】
請求項10に記載の船舶推進機では、第1モードにおいて、電池残量が十分である場合には電動モータを電池からの電力によって駆動し、電池残量が比較的少ない場合にはエンジン発電によって電池を充電しながら電動モータを駆動することによって、過放電による電池の劣化を防止できる。
【0030】
請求項11に記載の船舶推進機では、電動モータを用いないように切替手段によって予め設定しておけば、たとえトローリングモードであっても第2モードでプロペラを駆動できる。このようにオペレータの要求に柔軟に対応できる。
【0031】
請求項12に記載の船舶推進機では、第1モードにおいて、電池残量に応じて電動モータ出力を調整することによってプロペラを確実に駆動することができる。
【0032】
なお、この発明において、「トローリングモード」とは、船舶を0ノット〜数ノットで微速前進させる状態をいう。
【0033】
「通常航行モード」とは、トローリングモードの速度以上の速度域で航行する状態をいう。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、エンジンおよび電動モータを簡単に制御できかつトローリング時の排気ガスや騒音を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態の船舶推進機10は、プロペラ12とプロペラ12の駆動源としてのエンジン14と電動モータ16とを含むハイブリッド型であり、電動モータ16がエンジン14とプロペラ12との間に設けられるモータ中央タイプの船舶推進機である。なお、船舶推進機10および10a(後述)は、船外機として構成されても船舶の一部として構成されてもよい。
【0036】
船舶推進機10では、エンジン14のクランクシャフト18と電動モータ16のロータ20との間には電磁クラッチ22が設けられ、電磁クラッチ22のオン/オフによってクランクシャフト18とロータ20とが接続/離間される。電動モータ16のロータ20にはドライブシャフト24が連結され、ドライブシャフト24は前後進切替装置26を介してプロペラ12に接続される。プロペラ12の回転方向は、前後進切替装置26によって決定される。前後進切替装置26は、たとえば船外機における周知のドッグクラッチ機構を電動アクチュエータによって作動させるものである。
【0037】
エンジン14の上部にはエンジン発電用の発電体28が配置され、発電体28はクランクシャフト18の上端に設けられている。また、エンジン14には、排気ガスを排出するための排気管30、エンジン14の点火のため点火装置32、エンジン14への燃料供給量を調整するためのスロットルバルブ34、およびエンジン回転数を検出するためのエンジン回転数センサ36が設けられている。スロットルバルブ34には、スロットルバルブ34を駆動するためのスロットルモータ38およびスロットルバルブ34の開度を検出するためのスロットル開度センサ40が設けられている。排気管30は、その排気口がプロペラ12より後方に位置するように設けられる。
【0038】
電動モータ16、電磁クラッチ22、前後進切替装置26、発電体28、点火装置32、エンジン回転数センサ36、スロットルモータ38およびスロットル開度センサ40にはコントローラ42が接続される。また、コントローラ42には、船舶推進機10の運転をオン/オフためのメインスイッチ44、運転モードの種類とともに駆動源の出力の大きさを指示するための操作レバー46、駆動か発電かを設定するための駆動/発電スイッチ48、異常を報知するための異常ランプ50、たとえば24Vバッテリからなる電池52、および電池52の電圧を検出するための電池電圧センサ54が接続される。
【0039】
コントローラ42には、スロットル開度センサ40からスロットルバルブ34の開度を示す信号が与えられ、エンジン回転数センサ36からエンジン14の回転数を示す信号が与えられ、メインスイッチ44からのオン/オフ信号が入力され、操作レバー46から運転モードの種類および駆動源の出力の大きさを示すレバー位置信号が与えられ、駆動/発電スイッチ48から駆動か発電かの設定信号が与えられ、電池電圧センサ54から電池電圧を示す信号が与えられる。また、発電体28でのエンジン発電によって得られた電力はコントローラ42を介して電池52を充電する。
【0040】
また、コントローラ42は、点火装置32へ点火指示を与え、スロットルモータ38へ駆動信号を与え、電磁クラッチ22へオン/オフ信号を与え、電動モータ16へ駆動信号や電池52からの電力を与え、前後進切替装置26へ前後進の設定信号を与え、異常ランプ50へランプ点灯信号を与える。
【0041】
さらに、コントローラ42はメモリ42aを含む。メモリ42aには、図4〜図10に示す動作を実行するためのプログラムが格納されている。また、メモリ42aには、演算データ、エンジン14の回転数と比較される第1所定値および第2所定値、電池電圧と比較される規定値、第1閾値および第2閾値、ならびに図3に示す操作レバー46の位置と駆動源の出力との対応関係を示すテーブルデータ等が格納されている。
【0042】
この実施形態において、操作レバー46が指示手段に相当する。コントローラ42が、設定手段、第1ないし第3決定手段に相当する。電池電圧センサ54が残量検出手段に相当する。エンジン回転数センサ36が回転数検出手段に相当する。
【0043】
ついで、図2および図3を参照して、操作レバー46の位置と運転モードの種類および駆動源からの出力との関係について説明する。
操作レバー46は、図2に示すように前後方向に回動可能でありかつその位置によって運転モードの種類(通常航行、トローリング、停止、後退)を指示でき、かつ図3に示すようにその位置によって駆動源の出力の大きさを指示できる。
【0044】
操作レバー46の中立点を挟む前後所定範囲は停止モード、それより前進方向の所定範囲がトローリングモード、さらにそれより前進方向が通常航行モードとなる。また、停止モードより後退方向が後退モードとなる。また、通常航行モードよりもトローリングモードの方が、操作レバー46の変位に対する駆動源の出力変化量が小さくなる。
【0045】
これによれば、操作レバー46の回動操作によって運転モードの種類と駆動源の出力の大きさとを簡単かつ連続的に指示することができ、操作性が格段に向上する。また、トローリングモードにおける出力の微調整が容易になり、極低速航行時の速度制御が容易になる。
【0046】
また、図3に示すように、操作レバー46を中立点から遠ざける開操作時と中立点に近づける閉操作時とでは、操作レバー46のモード切替位置が異なり所謂ヒステリシスが設けられている。これによって、モード切替処理に「遊び」を設けることができ、隣接するモードの境目付近でモード切替が頻繁に生じることを防ぐことができる。
【0047】
図4を参照して、このような船舶推進機10の全体動作について説明する。
まず、メインスイッチ44が押されると(ステップS1)、システムが初期化される(ステップS3)。システム初期化ではたとえば電磁クラッチ22がオフに設定される。
【0048】
ついで、コントローラ42に、操作レバー46のレバー位置信号が入力され(ステップS5)、電池電圧センサ54によって検出された電池電圧を示す信号が入力される(ステップS7)。さらに、コントローラ42に、駆動/発電スイッチ48からの設定信号が入力され(ステップS9)、スロットル開度センサ40によって検出されたスロットルバルブ34の開度(スロットル位置)を示す信号が入力され(ステップS11)、エンジン回転数センサ36によって検出されたエンジン回転数を示す信号が入力される(ステップS13)。コントローラ42では、これらの入力情報に基づいて船舶推進機10の異常の有無が検出され(ステップS15)、異常がなければ運転モードが判断される(ステップS17)。
【0049】
運転モードが停止モードであれば停止処理が施され(ステップS19)、前進モードであれば前進処理が施され(ステップS21)、後退モードであれば後退処理が施され(ステップS23)、発電モードであれば発電処理が施され(ステップS25)、その後ステップS5に戻る。
【0050】
一方、ステップS15において、船舶推進機10に異常が検出されればコントローラ42からの指示によって異常ランプ50が点灯され(ステップS27)、異常停止処理が施され(ステップS29)、終了する。
【0051】
ここで、図4のステップS17における運転モードの判定処理について、図5を参照して詳しく説明する。
まず、コントローラ42によって、駆動/発電スイッチ48からの設定信号が発電を示すか駆動を示すかが判断され(ステップS51)、駆動に設定されていれば、操作レバー46の位置に変化があるか否かが判断される(ステップS53)。レバー位置に変化があれば、操作レバー46の位置は中立点またはそれより前進側に位置しているか否かが判断される(ステップS55)。操作レバー46の位置が中立点またはそれより前進側に位置していれば、操作レバー46の操作方向は前進の開方向か否かが判断される(ステップS57)。操作レバー46の操作方向は、前回の制御サイクルと今回の制御サイクルとにおけるレバー位置に基づいて判断できる。
【0052】
ステップS57において、レバー操作方向が前進の開方向であれば、操作レバー46の位置は前進開操作時の停止範囲か否かが判断される(ステップS59)。レバー位置がその停止範囲であれば、運転モードは停止モードであると判定される(ステップS61)。一方、ステップS59において、レバー位置が前進開操作時の停止範囲でなければ、運転モードは前進モードであると判定される(ステップS63)。なお、運転モードが前進モードと判定されたとき初期的には、運転モードはトローリングモードと判定され、前後進切替装置26が前進モードに設定される。
【0053】
ステップS57において、操作レバー46の操作方向が前進の閉方向であると判断されれば、レバー位置は前進閉操作時の停止範囲か否かが判断される(ステップS65)。レバー位置がその停止範囲であれば、運転モードは停止モードと判定される(ステップS67)。一方、ステップS65において、レバー位置が前進閉操作時の停止範囲でなければ、運転モードは前進モードと判定される(ステップS69)。
【0054】
また、ステップS55において、操作レバー46の位置が中立点より後退側であれば、ステップS71に進む。ステップS71において、操作レバー46の操作方向は後退の開方向か否かが判断され、後退の開方向であれば、レバー位置は後退開操作時の停止範囲か否かが判断される(ステップS73)。レバー位置がその停止範囲であれば、運転モードは停止モードと判定される(ステップS75)。一方、ステップS73において、レバー位置が後退開操作時の停止範囲でなければ、運転モードは後退モードと判定される(ステップS77)。
【0055】
ステップS71において、操作レバー46の操作方向が後退の閉方向であると判断されれば、レバー位置は後退閉操作時の停止範囲か否かが判断される(ステップS79)。そして、レバー位置がその停止範囲にあれば、運転モードは停止モードと判定される(ステップS81)。一方、ステップS79において、レバー位置が後退閉操作時の停止範囲になければ、運転モードは後退モードと判定される(ステップS83)。
【0056】
また、ステップS51において、駆動/発電スイッチ48が発電に設定されていれば、運転モードは発電モードと判定される(ステップS85)。
【0057】
ステップS53において、操作レバー46の位置に変化がなければ、現モードは発電モードか否かが判断される(ステップS87)。現モードが発電モードであれば、運転モードは停止モードと判定される(ステップS89)。一方、ステップS87において、現モードが発電モードでなければ、現モードが維持される(ステップS91)。
【0058】
ついで、図4のステップS21の前進処理の一動作例について、図6を参照して説明する。
まず、運転モードがトローリングモードか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS101)。トローリングモードであれば、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが、プロペラ12を電動モータ16によって駆動しかつ電動モータ16の出力の大きさが操作レバー46からの指示に応じて調整される第1モードに設定される。すなわち、ステップS103に進み、以下の処理が行われる。
【0059】
ステップS103では、電磁クラッチ22をオフする処理が行われる。そして、電池52の電圧は規定値以下か否かがコントローラ42によって判断される(ステップS105)。
【0060】
電池電圧が規定値以下であれば、コントローラ42によってモータ駆動モードが、電池52からの電力によって電動モータ16が駆動され、並行してエンジン発電による電力を電池52へ充電する第3モードに決定される。すなわち、ステップS107に進む。そして、ステップS107においてエンジン始動前か否かが判断され、エンジン始動前であれば、エンジン始動処理が行われ(ステップS109)、ステップS111に進む。
【0061】
一方、ステップS107においてエンジン始動前でなければ、所定の発電量が得られるようにエンジン回転数を制御し、エンジン発電が行われ(ステップS113)、ステップS111に進む。
【0062】
一方、ステップS105において電池電圧が規定値を超えていれば、コントローラ42によってモータ駆動モードが、電池52からの電力によってモータ16が駆動される第4モードに決定される。すなわち、ステップS115に進む。第4モードではエンジンを始動する必要がないので、ステップS115においてエンジン14が停止しているか否かが判断される。エンジン14が停止していればステップS111に進み、一方、エンジン14が稼働中であれば、点火装置32をオフする処理が行われ(ステップS117)、スロットルバルブ34が閉鎖され(ステップS119)、ステップS111に進む。
【0063】
ステップS111において、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたモータ出力が得られるように、電動モータ16に与えられる電動モータ駆動電流が計算される。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS121)、電動モータ16の正回転出力処理が行われ(ステップS123)、終了する。
【0064】
一方、ステップS101においてトローリングモードでなければ、通常航行モードと判定される。そして、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが、プロペラ12をエンジン14によって駆動しかつエンジン14の出力の大きさが操作レバー46からの指示に応じて調整される第2モードに設定される。すなわち、ステップS125に進み、以下の処理が行われる。
【0065】
ステップS125ではエンジン始動前か否かが判断され、エンジン始動前であれば、エンジン始動処理が行われ(ステップS127)、終了する。
【0066】
ステップS125においてエンジン始動前でなければ、エンジン14を接続するか否かすなわち電磁クラッチ22をオンするか否かが決定される(ステップS129)。これは、コントローラ42によって、エンジン回転数が第1所定値(たとえば1200rpm)以上か否かに基づいて決定される。エンジン回転数が第1所定値以上であれば、エンジン14を接続できると判断され、電磁クラッチ22のオン処理が行われ(ステップS131)、ステップS133に進む。電磁クラッチ22がオンされることによってエンジン14とプロペラ12とが連結される。
【0067】
一方、ステップS129において、エンジン回転数が第1所定値未満であり未だエンジン14を接続できる状態でなければ、直接ステップS133に進む。
【0068】
ステップS133において、電動モータ16の加速が必要であるか否かが決定される。これは、コントローラ42によって、エンジン14の回転数が第2所定値(たとえば3000rpm)以上か否かに基づいて決定される。エンジン14の回転数が第2所定値未満であれば、電動モータ16の加速が必要であると決定され、電動モータ16が加速され(ステップS135)、ステップS137に進む。一方、ステップS133において電動モータ16の加速が不要であれば、電動モータ16が停止され(ステップS139)、ステップS137に進む。
【0069】
ステップS137において、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたエンジン出力が得られるようにスロットルバルブ34の開度が計算される。そして、スロットルバルブ34の開度が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS141)、エンジン14の出力処理が施され(ステップS143)、終了する。
【0070】
上述の動作例によれば、1本の操作レバー46の回動操作によって運転モードの種類とともに駆動源の出力の大きさを簡単かつ連続的に指示することができ、エンジン14および電動モータ16を簡単に制御できる。特に、操作レバー46によって通常航行モードからトローリングモードへと切り替えるとき、エンジン14によるプロペラ駆動から電動モータ16によるプロペラ駆動へ円滑に移行できる。さらに、1本の操作レバー46によって前後進の切り替えも容易になる。
【0071】
また、トローリングモードが指示されているとき、プロペラ12を電動モータ20によって駆動することによって、トローリング時の排気ガスや騒音を抑制できる。
【0072】
さらに、第1モードにおいて電池電圧が規定値を超えている場合には電動モータ16を電池52からの電力によって駆動し、電池電圧が規定値以下の場合には電池52からの電力によってモータ16を駆動し、並行してエンジン発電による電力を電池52へ充電することによって、過放電による電池52の劣化を防止することができる。
【0073】
また、第1モードにおいて、電磁クラッチ22をオフしてエンジン14とプロペラ12とを切り離すことによって、エンジン発電によって電力を供給する場合、プロペラ12の回転速度に関係なくエンジン回転数を制御でき、十分な充電電力を得ることができる。
【0074】
さらに、第2モードにおいて、エンジン14の回転数が第1所定値以上になれば電磁クラッチ22をオンしてエンジン14をプロペラ12に接続することによって、エンジン14をプロペラ12に円滑に接続できる。また、第2モードにおいて、エンジン14の回転数が第2所定値に達するまでは加速する電動モータ16をも用いてプロペラ12を駆動させることによって船舶の加速を良くすることができる。
【0075】
ついで、図7を参照して、トローリングモードか否かの判定処理について説明する。
まず、コントローラ42によって、操作レバー46の位置に変化があるか否かが判断され(ステップS201)、変化があれば、操作レバー46の操作方向は開方向か否かが判断される(ステップS203)。
【0076】
操作レバー46の操作方向が開方向であれば、操作レバー46の位置は開操作時のトローリング範囲か否かが判断され(ステップS205)、トローリング範囲であればトローリングモードと判定され(ステップS207)、終了する。一方、ステップS205においてレバー位置がトローリング範囲でなければ、通常航行モードと判定され(ステップS209)、終了する。
【0077】
ステップS203において、操作レバー46の操作方向が閉方向と判断されると、操作レバー46の位置は閉操作時のトローリング範囲か否かが判断され(ステップS211)、トローリング範囲であればトローリングモードと判定され(ステップS213)、終了する。一方、ステップS211においてレバー位置がトローリング範囲でなければ、通常航行モードと判定され(ステップS215)、終了する。
【0078】
ついで、図8を参照して、前進処理の他の動作例について説明する。
まず、エンジン14の始動前か否かが判断される(ステップS301)。エンジン始動前であれば、電磁クラッチ22をオフする処理が行われ(ステップS303)、エンジン始動処理が行われ(ステップS305)、ステップS307に進む。一方、ステップS301においてエンジン始動前でなければ、ステップS307に進む。
【0079】
ステップS307において、運転モードがトローリングモードか否かが判断され、トローリングモードであれば、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第1モードに設定され、ステップS309に進み、エンジン始動前か否かが判断される(ステップS309)。エンジン始動前であればステップS311へ進み、一方、エンジン始動前でなければ、電池52の電圧は規定値以下か否かが判断される(ステップS313)。電池電圧が規定値以下であればエンジン発電が行われ(ステップS315)、ステップS311に進む。
【0080】
一方、ステップS313において電池電圧が規定値を超えていれば、コントローラ42によってスロットルバルブ34がアイドリング位置に制御され(ステップS317)、ステップS311に進む。
【0081】
ステップS311において、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたモータ出力が得られるように電動モータ駆動電流が計算される。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS319)、電動モータ16の正回転出力処理が行われ(ステップS321)、終了する。
【0082】
一方、ステップS307においてトローリングモードでなければ、通常航行モードと判定され、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第2モードに設定され、ステップS323に進み、エンジン14を接続するか否かすなわち電磁クラッチ22をオンするか否かが決定される。エンジン回転数が第1所定値以上であれば、エンジン14を接続できると判断され、電動モータ16が停止され(ステップS325)、電磁クラッチ22のオン処理が行われ(ステップS327)、ステップ329に進む。
【0083】
一方、ステップS323において、エンジン回転数が第1所定値未満であり未だエンジン14を接続できる状態でなければ、直接ステップS329に進む。
【0084】
ステップS329において、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたエンジン出力が得られるようにスロットルバルブ34の開度が計算される。そして、スロットルバルブ34の開度が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS331)、エンジン14の出力処理が施され(ステップS333)、終了する。
【0085】
この動作例では、第1モードにおいて、電動モータ16を電池52からの電力によって駆動するときエンジン14をアイドリング運転させることによって、その後、エンジン14を再始動することなく第2モードに迅速に移行できる。
【0086】
さらに、図9を参照して、前進処理のその他の動作例について説明する。
まず、運転モードがトローリングモードか否かが判断され(ステップS401)、トローリングモードであれば、電磁クラッチ22をオフする処理が行われる(ステップS403)。そして、電池52の電圧と第1閾値および第2閾値とがコントローラ42によって比較される(ステップS405)。第1閾値<電池電圧であれば、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第1モードに設定される。
【0087】
その中でも、第1閾値<電池電圧<第2閾値であれば、コントローラ42によってモータ駆動モードが第3モードに決定され、エンジン始動前か否かが判断される(ステップS407)。エンジン始動前であれば、エンジン始動処理が行われ(ステップS409)、ステップS411に進む。
【0088】
一方、ステップS407においてエンジン始動前でなければ、所定の発電量が得られるようにエンジン回転数を制御し、エンジン発電が行われ(ステップS413)、ステップS411に進む。
【0089】
ステップS405において電池電圧≧第2閾値であれば、コントローラ42によってモータ駆動モードが第4モードに決定され、エンジン14が停止しているか否かが判断される(ステップS415)。エンジン14が停止していればステップS411に進み、一方、エンジン14が稼働中であれば、点火装置32をオフする処理が行われ(ステップS417)、スロットルバルブ34が閉鎖され(ステップS419)、ステップS411に進む。
【0090】
ステップS411において、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたモータ出力が得られるように電動モータ駆動電流が計算される。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS421)、電動モータ16の正回転出力処理が行われ(ステップS423)、終了する。
【0091】
一方、ステップS401においてトローリングモードではなく通常航行モードのときや、トローリングモードであってもステップS405において電池電圧≦第1閾値のときには、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第2モードに設定され、ステップS425に進み、エンジン始動前か否かが判断される。エンジン始動前であれば、電磁クラッチ22のオフ処理が行われ(ステップS427)、電動モータ16の停止処理が行われ(ステップS429)、エンジン始動処理が行われ(ステップS431)、終了する。
【0092】
ステップS425においてエンジン始動前でなければ、電動モータ停止処理が行われる(ステップS433)。そして、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたエンジン出力が得られるようにスロットルバルブ34の開度が計算され(ステップS435)、スロットルバルブ34の開度が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS437)、エンジン14の出力処理が施される(ステップS439)。そして、エンジン14を接続するか否かすなわち電磁クラッチ22をオンするか否かが決定される(ステップS441)。エンジン回転数が第1所定値以上であれば、エンジン14を接続できると判断され、電磁クラッチ22のオン処理が行われ(ステップS443)、終了する。一方、ステップS441において、エンジン回転数が第1所定値未満であり未だエンジン14を接続できる状態でなければ、終了する。
【0093】
この動作例によれば、運転モードだけではなく電池電圧と第1閾値との比較結果をも考慮して、プロペラ駆動モードを第1モードか第2モードかに設定する。たとえば、運転モードがトローリングモードに指示されていても電池電圧≦第1閾値であれば、第1モードによってプロペラ12を電動モータ16で駆動するのは困難な場合があるが、このような場合に第2モードでプロペラ12を駆動できる。
【0094】
また、第1モードにおいて、電池電圧≧第2閾値である場合には電動モータ16を電池52からの電力によって駆動し、第1閾値<電池電圧<第2閾値である場合にはエンジン発電によって電池を充電しながら電動モータ16を駆動することによって、過放電による電池の劣化を防止できる。
【0095】
さらに、図10を参照して、前進処理のさらにその他の動作例について説明する。
この動作を実行する場合、エンジン船舶推進機10は、図1に示すようにコントローラ42に接続されるエンジンスイッチ56をさらに備える。エンジンスイッチ56は、プロペラ駆動に電動モータ16を用いるか否かを切り替えるための切替手段に相当する。
【0096】
まず、コントローラ42によって、運転モードがトローリングモードか否かが判断され(ステップS501)、トローリングモードであれば、エンジンスイッチ56がオフされているか否かが判断される(ステップS503)。エンジンスイッチ56がオフされていれば、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第1モードに設定され、ステップS505に進み、電磁クラッチ22をオフする処理が行われる。そして、電池52の電圧は規定値以下か否かが判断される(ステップS507)。電池電圧が規定値以下であれば、コントローラ42によってモータ駆動モードが第3モードに決定され、エンジン始動前か否かが判断される(ステップS509)。エンジン始動前であれば、エンジン始動処理が行われ(ステップS511)、ステップS513に進む。
【0097】
一方、ステップS509においてエンジン始動前でなければ、所定の発電量が得られるようにエンジン回転数を制御し、エンジン発電が行われ(ステップS515)、ステップS513に進む。
【0098】
一方、ステップS507において電池電圧が規定値を超えていれば、コントローラ42によってモータ駆動モードが第4モードに決定され、エンジン14が停止しているか否かが判断される(ステップS517)。エンジン14が停止していればステップS513に進み、一方、エンジン14が稼働中であれば、点火装置32をオフする処理が行われ(ステップS519)、スロットルバルブ34が閉鎖され(ステップS521)、ステップS513に進む。
【0099】
ステップS513において、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたモータ出力が得られるように電動モータ駆動電流が計算される。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS523)、電動モータ16の正回転出力処理が行われ(ステップS525)、終了する。
【0100】
一方、ステップS501においてトローリングモードではなく通常航行モードのときや、トローリングモードであってもステップS503においてエンジンスイッチ56がオンされているときには、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第2モードに設定され、ステップS527に進み、エンジン始動前か否かが判断される(ステップS527)。ステップS527においてエンジン始動前であれば、電磁クラッチ22をオフする処理が行われ(ステップS529)、電動モータ16が停止され(ステップS531)、エンジン始動処理が行われ(ステップS533)、終了する。
【0101】
ステップS527においてエンジン始動前でなければ、エンジン14を接続するか否かすなわち電磁クラッチ22をオンするか否かが決定される(ステップS535)。エンジン回転数が第1所定値以上であれば、エンジン14を接続できると判断され、電磁クラッチ22のオン処理が行われ(ステップS537)、ステップS539に進む。
【0102】
一方、ステップS535において、エンジン回転数が第1所定値未満であり未だエンジン14を接続できる状態でなければ、直接ステップS539に進む。
【0103】
ステップS539において、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたエンジン出力が得られるようにスロットルバルブ34の開度が計算される。そして、スロットルバルブ34の開度が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS541)、エンジン14の出力処理が施され(ステップS543)、終了する。
【0104】
この動作例によれば、電動モータ16を用いないようにエンジンスイッチ56を予めオンしておけば、たとえトローリングモードであっても第2モードですなわちエンジン14によってプロペラ12を駆動でき、オペレータの要求に柔軟に対応できる。
【0105】
ついで、図11を参照して、この発明の他の実施形態の船舶推進機10aについて説明する。
船舶推進機10aは、エンジン14の上側に電動モータ16が設けられるモータ上部タイプに構成され、電磁クラッチ22を用いない。そして、エンジン14のクランクシャフト18の下端部にはドライブシャフト24が連結され、クランクシャフト18の上端部には電動モータ16のロータ20が連結され、ロータ20の上端には発電体28が設けられている。メモリ42aには、図12〜図14に示す動作を実行するためのプログラム等が格納されている。コントローラ42が、設定手段、第3および第4決定手段に相当する。その他の構成については船舶推進機10と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0106】
図12を参照して、船舶推進機10aの前進処理の動作例について説明する。
まず、運転モードがトローリングモードか否かが判断される(ステップS601)。トローリングモードであれば、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第1モードに設定され、ステップS603に進み、電池52の電圧は規定値以下か否かがコントローラ42によって判断される(ステップS603)。
【0107】
電池電圧が規定値以下であれば、コントローラ42によってモータ駆動モードが、電動モータ16を出力制限して電池52からの電力によって駆動する第5モードに決定される。すなわち、ステップS605に進む。ステップS605では、電動モータ16の出力制限が設定され、ステップS607に進む。
【0108】
一方、電池電圧が規定値以下でなければ、コントローラ42によってモータ駆動モードが、電動モータ16を出力制限することなく電池52からの電力によって駆動する第6モードに決定される。すなわち、ステップS609に進む。ステップS609では、電動モータ16の出力制限が解除され、ステップS607に進む。
【0109】
ステップS607において、エンジン14が停止しているか否かが判断される。エンジン14が稼働中であれば、点火装置32のオフ処理が行われ(ステップS611)、スロットルバルブ34が閉鎖され(ステップS613)、終了する。
【0110】
一方、ステップS607においてエンジン14が停止していれば、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたモータ出力が得られるように電動モータ駆動電流が計算される(ステップS615)。そして、電動モータ駆動電流の急変制限処理が行われ(ステップS617)、電動モータ16の正回転出力処理が行われ(ステップS619)、終了する。
【0111】
一方、ステップS601においてトローリングモードでなければ、通常航行モードと判定され、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第2モードに設定され、ステップS621に進み、エンジン始動前か否かが判断される。エンジン始動前であれば、エンジン14の上部に設けられた電動モータ16を始動モータとしてエンジン始動処理が行われ(ステップS623)が行われ、終了する。一方、ステップS621においてエンジン始動前でなければ、電動モータ16の加速が必要か否かが決定される(ステップS625)。電動モータ16の加速が必要であれば、電動モータ16が加速され(ステップS627)、ステップS629に進む。一方、ステップS625において電動モータ16の加速が必要でなければ、電動モータ16が停止され(ステップS631)、ステップS629に進む。
【0112】
ステップS629において、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたエンジン出力が得られるようにスロットルバルブ34の開度が計算される。そして、スロットルバルブ34の開度が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS633)、エンジン14の出力処理が行われ(ステップS635)、終了する。
【0113】
この動作例によれば、第1モードにおいて、電池電圧に応じて電動モータ16の出力を調整することによってプロペラ12を確実に駆動することができ、トローリングは電動モータ16によって行うことができる。
【0114】
ついで、図13を参照して、前進処理の他の動作例について説明する。
まず、運転モードがトローリングモードか否かが判断される(ステップS701)。トローリングモードであれば、ステップS703に進み、電池52の電圧は規定値以下か否かがコントローラ42によって判断される。電池電圧が規定値を超えていれば、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第1モードに設定され、エンジン14が停止しているか否かが判断される(ステップS705)。エンジン14が稼働中であれば、点火装置32のオフ処理が行われ(ステップS707)、スロットルバルブ34が閉鎖され(ステップS709)、終了する。
【0115】
一方、ステップS705においてエンジン14が停止していれば、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたモータ出力が得られるように電動モータ駆動電流が計算される(ステップS711)。そして、電動モータ駆動電流の急変制限処理が行われ(ステップS713)、電動モータ16の正回転出力処理が行われ(ステップS715)、終了する。
【0116】
一方、ステップS701においてトローリングモードではなく通常航行モードのときや、トローリングモードであってもステップS703において電池電圧≦規定値のときには、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第2モードに設定され、ステップS717に進み、エンジン始動前か否かが判断される。エンジン始動前であれば、エンジン14の上部に設けられた電動モータ16を始動モータとしてエンジン始動処理が行われ(ステップS719)、終了する。一方、ステップS717においてエンジン始動前でなければ、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたエンジン出力が得られるようにスロットルバルブ34の開度が計算される(ステップS721)。そして、スロットルバルブ34の開度が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS723)、エンジン14の出力処理が行われ(ステップS725)、終了する。
【0117】
この動作例によれば、運転モードだけではなく電池電圧と規定値との比較結果をも考慮して、プロペラ駆動モードを第1モードか第2モードかに設定する。たとえば、運転モードがトローリングモードに指示されていても電池電圧≦規定値であれば、第1モードによってプロペラ12を電動モータ16で駆動するのは困難な場合があるが、このような場合に第2モードでプロペラ12を駆動できる。
【0118】
さらに、図14を参照して、前進処理のさらにその他の動作例について説明する。
この動作を実行する場合、船舶推進機10aは、図11に示すようにコントローラ42に接続されるエンジンスイッチ56をさらに備える。
【0119】
まず、運転モードがトローリングモードか否かが判断され(ステップS801)、トローリングモードであれば、エンジンスイッチ56がオフされているか否かが判断される(ステップS803)。エンジンスイッチ56がオフされていれば、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第1モードに設定され、ステップS805に進み、エンジン14が停止しているか否かが判断される。エンジン14が稼働中であれば、点火装置32をオフする処理が行われ(ステップS807)、スロットルバルブ34が閉鎖され(ステップS809)、終了する。
【0120】
ステップS805においてエンジン14が停止していれば、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたモータ出力が得られるように電動モータ駆動電流が計算される(ステップS811)。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS813)、電動モータ16の正回転出力処理が行われ(ステップS815)、終了する。
【0121】
一方、ステップS801においてトローリングモードではなく通常航行モードのときや、トローリングモードであってもステップS803においてエンジンスイッチ56がオンされているときには、コントローラ42によってプロペラ駆動モードが第2モードに設定され、ステップS817に進み、エンジン始動前か否かが判断される(ステップS817)。エンジン始動前であれば、エンジン14の上部に設けられた電動モータ16を始動モータとしてエンジン始動処理が行われ(ステップS819)が行われ、終了する。一方、ステップS817においてエンジン始動前でなければ、コントローラ42によって、図3の対応関係を示すテーブルデータを参照して操作レバー46の位置に応じたエンジン出力が得られるようにスロットルバルブ34の開度が計算される(ステップS821)。そして、スロットルバルブ34の開度が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS823)、エンジン14の出力処理が行われ(ステップS825)、終了する。
【0122】
この動作例によれば、電動モータ16を用いないようにエンジンスイッチ56を予めオンしておけば、たとえトローリングモードであっても第2モードですなわちエンジン14によってプロペラ12を駆動でき、オペレータの要求に柔軟に対応できる。
【0123】
なお、指示手段はジョイスティックレバーであってもよい。
【0124】
また、上述の実施形態では、残量検出手段として電池電圧センサ54を用いたが、これに限定されず、電流と時間とに基づいて電池残量を検出する手段等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】この発明の一実施形態の船舶推進機を示す図解図である。
【図2】操作レバーを示す図解図である。
【図3】操作レバーの位置と駆動源の出力との対応関係を示すグラフである。
【図4】船舶推進機の全体動作を示すフロー図である。
【図5】図4のステップ17における運転モードの判定処理を示すフロー図である。
【図6】図1に示す実施形態の前進処理の一例を示すフロー図である。
【図7】トローリング判定動作の一例を示すフロー図である。
【図8】前進処理の他の例を示すフロー図である。
【図9】前進処理のその他の例を示すフロー図である。
【図10】前進処理のさらにその他の例を示すフロー図である。
【図11】この発明の他の実施形態の船舶推進機を示す図解図である。
【図12】図11に示す実施形態の前進処理の一例を示すフロー図である。
【図13】前進処理の他の例を示すフロー図である。
【図14】前進処理のその他の例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0126】
10,10a 船舶推進機
12 プロペラ
14 エンジン
16 電動モータ
22 電磁クラッチ
26 前後進切替装置
28 発電体
32 点火装置
34 スロットルバルブ
36 エンジン回転数センサ
38 スロットル電動モータ
40 スロット開度センサ
42 コントローラ
44 メインスイッチ
46 操作レバー
48 駆動/発電スイッチ
50 異常ランプ
52 電池
54 電池電圧センサ
56 エンジンスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含む船舶推進機であって、
運転モードの種類とともに前記駆動源の出力の大きさを指示するための指示手段、および
前記指示手段による指示に応じてプロペラ駆動モードを設定する設定手段を備え、
前記設定手段は、
前記指示手段によってトローリングモードが指示されているとき、前記プロペラ駆動モードを、前記プロペラを前記電動モータによって駆動しかつ前記電動モータの出力の大きさを前記指示手段からの指示に応じて調整する第1モードに設定し、
前記指示手段によって通常航行モードが指示されているとき、前記プロペラ駆動モードを、前記プロペラを前記エンジンによって駆動しかつ前記エンジンの出力の大きさを前記指示手段からの指示に応じて調整する第2モードに設定する、船舶推進機。
【請求項2】
前記指示手段は、回動可能でありかつその位置によって前記運転モードの種類および前記駆動源の出力の大きさを指示可能な操作レバーを含む、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項3】
前記トローリングモードにおける前記操作レバーの変位に対する前記電動モータの出力の変化量は、前記通常航行モードにおける前記操作レバーの変位に対する前記エンジンの出力の変化量より小さく設定される、請求項2に記載の船舶推進機。
【請求項4】
前記電動モータに与える電力を蓄える電池、
前記電池の残量を検出する残量検出手段、および
前記第1モードにおいて前記残量検出手段の検出結果に基づいて、エンジン発電によって電力を前記電池へ充電するか否かを決定する第1決定手段をさらに含む、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項5】
前記第1モードにおいて前記エンジンと前記プロペラとの接続が切り離される、請求項4に記載の船舶推進機。
【請求項6】
前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段、および
前記第2モードにおいて前記回転数検出手段の検出結果と第1所定値との比較に基づいて、前記エンジンを前記プロペラに接続するか否かを決定する第2決定手段をさらに含む、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項7】
前記第2モードにおいて前記回転数検出手段の検出結果と第2所定値との比較に基づいて、加速する前記電動モータをも用いて前記プロペラを駆動するか前記電動モータを停止して前記プロペラを駆動するかを決定する第3決定手段をさらに含む、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項8】
前記第1モードにおいて前記電動モータを前記電池からの電力によって駆動するとき、前記エンジンをアイドリング運転させる、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項9】
前記電動モータに与える電力を蓄える電池、および
前記電池の残量を検出する残量検出手段をさらに含み、
前記設定手段は、さらに前記残量検出手段の検出結果と第1閾値との比較結果をも考慮して、前記プロペラ駆動モードを前記第1モードか前記第2モードかに設定する、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項10】
前記第1モードにおいて前記残量検出手段の検出結果と第2閾値との比較結果に基づいて、エンジン発電によって電力を前記電池へ充電するか否かを決定する第1決定手段をさらに含む、請求項9に記載の船舶推進機。
【請求項11】
前記プロペラの駆動に前記電動モータを用いるか否かを切り替えるための切替手段をさらに含み、
前記設定手段は、さらに前記切替手段による設定をも考慮して、前記プロペラ駆動モードを前記第1モードか前記第2モードかに設定する、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項12】
前記電動モータに与える電力を蓄える電池、
前記電池の残量を検出する残量検出手段、および
前記第1モードにおいて前記残量検出手段の検出結果に基づいて、前記電動モータを出力制限して前記電池からの電力によって駆動するか前記電動モータを出力制限することなく前記電池からの電力によって駆動するかを決定する第4決定手段をさらに含む、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項13】
プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含む船舶推進機の運転方法であって、
運転モードの種類とともに前記駆動源の出力の大きさの指示を受ける第1ステップ、および
前記第1ステップにおける指示に応じてプロペラ駆動モードを設定する第2ステップを備え、
前記第2ステップでは、
前記第1ステップにおいてトローリングモードが指示されているとき、前記プロペラ駆動モードを、前記プロペラを前記電動モータによって駆動しかつ前記電動モータの出力の大きさを前記第1ステップでの指示に応じて調整する第1モードに設定し、
前記第1ステップにおいて通常航行モードが指示されているとき、前記プロペラ駆動モードを、前記プロペラを前記エンジンによって駆動しかつ前記エンジンの出力の大きさを前記第1ステップでの指示に応じて調整する第2モードに設定する、船舶推進機の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−62905(P2008−62905A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246081(P2006−246081)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】