説明

船舶用通信・警報システム

【課題】 船乗員の通信、警報通知等を簡便にし、さらにセキュリティの向上を図ることができるような船舶用通信・警報システムを提供する。
【解決手段】
接続された機器の間における信号の伝送経路を制御する交換機20を備え、船舶内のコードレス電話機1間で警報教示を行う。また、コードレス電話機1により、船舶内の機器の遠隔操作、機器操作やドア解錠の認証等を行い、通信、警報通知等を簡便にし、さらにセキュリティの向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶内の船乗員同士が通信を行うための船舶用通信・警報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、船舶内では、発光・文字表示、ブザー音鳴動、音声等により、通信、警報等を行っている。例えば、機関士を呼び出すために押しボタンが設けられており、押しボタンを押すと、機関士居住区通路に設けられたブザーが鳴動する。また、機関室呼び出しは、呼び出しスイッチ、電子ホーン及び表示灯により行われ、機関室内に数ヶ所、清浄機室及び機関室工作室に電子ホーン及び表示灯が装備されている。また、機関室での異常を表示する延長警報盤が各機関誌の部屋に装備されている。さらに機関室で異常が発生すると、当直士官の延長警報盤に表示・ブザー音鳴動により警報発生を知らせている(例えば特許文献1参照)。そして、船舶においては、各船乗員が入室できるエリア等が決まっている場合もある。その他にも、例えば海賊等に対する対策として特殊形状の鍵を利用している。
【特許文献1】特開2000−326891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、各機関士の部屋には延長警報盤が装備されているが、部屋に当直機関士がいないときは、警報が鳴ってもわからない。また、機械式の鍵では複製されたりする可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は上記のような問題点を解決し、船乗員の通信、警報通知等を簡便にし、さらにセキュリティの向上を図ることができるような船舶用通信・警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る船舶用通信・警報システムは、接続された機器の間における信号の伝送経路を制御する交換機を備え、船舶内の携帯端末間で警報教示を行うものである。
【0006】
また、本発明に係る船舶用通信・警報システムは、機器を操作するための操作データを機器に対応した指示データに変換するための変換用データを記憶する変換用データ記憶手段と、携帯端末から直接又は交換機を介して操作データを含む信号が送信されると、記憶手段に記憶された変換用データに基づいて、信号に含まれる操作データを指示データに変換し、指示データを含む信号を送信するデータ変換手段と、データ変換手段から送信された信号に含まれる指示のデータに基づいて、機器に指示信号を送信して制御を行う機器制御手段とを備えた機器制御装置を、さらに交換機に内蔵又は接続するものである。
【0007】
また、本発明に係る船舶用通信・警報システムは、携帯端末が個別に有する固有データを照合するための照合データを記憶する照合データ記憶手段と、携帯端末から直接又は交換機を介して送信された信号に含まれる固有データと照合データとを照合し、照合が一致すると認証用のデータを含む信号を送信する認証処理手段と、認証処理手段から認証用のデータを含む信号が送信されると、機器の操作又はドアの解錠を行わせる機器認証制御手段とを備えた機器認証装置を、さらに交換機に内蔵又は接続するものである。
【0008】
また、本発明に係る船舶用通信・警報システムは、携帯端末としてPHS及び/又はPDAを用いるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コードレス電話機により、定められた位置にしか設けられていない警報盤等によらなくても、例えば船乗員が歩きながらでも警報等の教示を行うことができる。また、個別の通話等も行うことができる。そして、船体内の配線の削減に寄与することができる。
【0010】
また、本発明によれば、警報等を行うに際し、交換機が、あらかじめ定められたコードレス電話機に対しても警報等の教示を行うようにしたので、警報通知をより確実にすることができる。
【0011】
また、本発明によれば、機器制御装置により、コードレス電話機を用いて、遠隔操作で機器を制御することができる。
【0012】
また、本発明によれば、各コードレス電話機が固有に有する固有データに基づいて、機器認証装置が認証処理を行うようにしたので、機器を操作する権限を有する資格者による機器の使用を行うことができる。特にドアの開閉をコードレス電話機を用いて電子的に行えるようにしたので、海賊等に対する防犯対策も行うことができる。
【0013】
また、本発明によれば、汎用のPHSを用いるようにしたので、大規模な設備を設けることなく、小型のベースステーションを複数設けることで船舶内の通信を行うことができる。また、上述のように、通話だけでなく、遠隔操作、認証等を行う手段としても用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る船舶用通信・警報システムの構成を表す図である。デジタルコードレス電話機1−1〜1−n(特に区別しない場合は、代表してデジタルコードレス電話機1という)は、各船乗員が個々に有している通信・通話機器である。各デジタルコードレス電話機1−1〜1−nは、番号等、固有のデータを有している。ここで、本実施の形態では、システムの設備等を簡単に行えることから、例えばPHS(Personal Handyphone System)をデジタルコードレス電話機1として用いることにする。
【0015】
また、無線通信を行うベースステーション10−1〜10−m(特に区別しない場合は、代表してベースステーション10という)は、デジタルコードレス電話機1との間で、音声等の各種データを含む信号の無線通信を行う無線通信手段である。各ベースステーション10−1〜10−mはデジタル交換機20に接続されている。デジタル交換機20(以下、交換機20という)は、信号受信手段21、信号処理手段22及び記憶手段23を有しており、接続された各機器間の通信(信号送受信)を行うための信号の伝送経路を確立、開放等の制御をする。信号受信手段21はデジタルコードレス電話機1から送信される信号を受信し、信号処理手段22に送信する。記憶手段23は、教示指令データと対応する教示手段とを関連づけた指令データを記憶する。また、信号処理手段22は、記憶手段22が記憶する指令データに基づいて、ベースステーション10を介してコードレス電話機1から送信される信号に含まれる教示指令データに対して、教示信号を送信するコードレス電話機1を決定する。そして、決定したコードレス電話機1に教示信号を送信し、連絡、着信音鳴動、文字表示、振動等による警報教示を行わせる。
【0016】
デジタル交換機20には、他にも、船内指令装置30、陸上等、船外との間で海事衛星等を用いた通信を行うための衛星通信装置40、有線で接続された電話機50が少なくとも接続されている。船内指令装置30には、スピーカ(発音手段)31−1〜31−lが接続されており、船舶内での一斉放送等のページング機能を行う際に用いる。
【0017】
以上のように、実施の形態1によれば、各乗船員がコードレス電話機1を有し、ベースステーション10及び交換機20を介してコードレス電話機1から教示指令データを含む信号を他のコードレス電話機1に送信し、警報教示を行わせるようにしたので、例えば船乗員が歩きながらでも警報等の教示を行うことができる。また、コードレス電話機1により個別の通話等も行うことができる。これらを無線通信で行うことができるので、船体内の配線の削減に寄与することができる。例えば、VLCC(超大型タンカ)の場合、電線の長さを従来の1/3以下に削減することができる。例えば、コードレス電話機1として防爆対応の機器を有するPHSを用いるようにしたので、例えば防爆対応に備えることもでき、また、出力電力が小さいので航海計器等に与える影響は極めて少なくてすむ。
【0018】
実施の形態2.
図2は本発明の実施の形態2に係る船舶用通信・警報システムの構成を表す図である。図2において、図1と同じ符号を付しているものは、実施の形態1と同様の動作を行うので説明を省略する。機器制御装置60は船舶内の機器65に設けられており、信号受信手段61、信号処理手段62、記憶手段63及び機器制御手段64で構成される。
【0019】
信号受信手段61はデジタルコードレス電話機1から送信される信号を受信し、信号処理手段62に送信する。ここで、本実施の形態では、交換機20の機器制御装置60(信号受信手段61)に信号送信を行うものとするが、赤外線を搬送波とする信号を用い、コードレス電話機1と信号受信手段61とが無線による信号の送受信を直接行うようにしてもよい。
【0020】
信号処理手段62は、記憶手段63に記憶された変換用データに基づいて、送信された信号に含まれる操作データを機器制御手段64が処理できる指示データに変換し、指示データを含む信号を送信する。記憶手段63には、前述のように、デジタルコードレス電話機1(信号受信手段61)から送信される信号に含まれる操作データと機器制御手段64が処理できる信号に含まれる指示データとを関連づけて、例えばテーブル形式による変換用データとして記憶されている。機器制御手段64は、機器のオン・オフ制御等、指示データに基づいて、機器65の制御を行う。
【0021】
また、照明機器に備えられた照明制御機器70も、信号受信手段71、信号処理手段72、記憶手段73及び機器制御手段74を有しており、デジタルコードレス電話機1から送信される信号に基づいて、例えば船舶内のブロック別又は一斉に照明機器75のオン・オフ制御等を行うことができる。
【0022】
以上のように第2の実施の形態によれば、デジタルコードレス電話機1からの操作データに基づいて、機器制御装置60(照明制御機器70)が処理を行い、照明機器をはじめとする船舶内の機器85を制御するようにしたので、デジタルコードレス電話機1から船舶内の機器85を遠隔操作することができる。
【0023】
実施の形態3.
図3は本発明の実施の形態3に係る船舶用通信・警報システムの構成を表す図である。例えば、船舶内では、有資格者等、権限を有する船乗員に操作が限られている機器が存在する。場合によっては、それらの機器が設置されている室内には権限を有する船乗員しか入室できない場合がある。また、客室、船室等のドアの鍵もそこで、本実施の形態は、各デジタルコードレス電話機1が有する固有のデータに基づいて機器操作又はドア解錠の認証を行おうとするものである。
【0024】
図3において、図1と同じ符号を付しているものは、実施の形態1と同様の動作を行うので説明を省略する。機器認証装置80は、船舶内の認証を必要とするそれぞれの機器に接続されており、信号受信手段81、認証処理手段82、記憶手段83及び認証制御手段84で構成される。
【0025】
信号受信手段81は、実施の形態で説明した信号受信手段61と同様の役割を果たし、デジタルコードレス電話機1から送信される信号を受信し、認証処理手段82に送信する。認証処理手段82は、デジタルコードレス電話機1から送信された信号に含まれる固有データに基づいて、記憶手段83に記憶された照合データとの照合処理を行う。そして、照合データの中に固有データと一致するものが存在すると判断すると、認証のデータを含む信号を認証制御手段84に送信する。ここで、固有データとは、各デジタルコードレス電話機1−1〜1−nが固有に有している数字(番号)等で構成されたデータであるものとする。
【0026】
記憶手段83は、前述したように、デジタルコードレス電話機1(信号受信手段81)から送信される信号に含まれる固有データと照合処理を行うために、接続された機器の操作権限を有する者が所有するデジタルコードレス電話機1の固有データに関するデータが照合データとして記憶されている。認証制御手段84は、認証のデータに基づいて、機器85の操作を受け付けるための処理を行う。
【0027】
また、ドアに備えられたドア解錠認証装置90も信号受信手段91、認証処理手段92、記憶手段93及び認証制御手段94を有しており、デジタルコードレス電話機1から送信される固有データを含む信号に基づいて、例えば接続されたドア95の解錠に関する認証を行うことができる。なお、ここでは解錠としたが、施錠についても認証処理が行えるようにしてもよい。
【0028】
以上のように実施の形態3によれば、各デジタルコードレス電話機1が固有に有する固有データに基づいて、機器認証装置80が認証処理を行うようにしたので、機器85を操作する権限を有する資格者だけが機器を使用することができる。また、ドア解錠認証装置90を設け、少なくともドアの解錠をデジタルコードレス電話機1を用いて電子的に行えるようにしたので、海賊等に対する防犯対策も行うことができる。
【0029】
実施の形態4.
上述の実施の形態では、デジタルコードレス電話機1をPHSで構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばPDA(Personal Digital Assistance :携帯情報端末)、携帯電話機等、無線通信を行うことができる通信機器を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る船舶用通信・警報システムの構成を表す図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る船舶用通信・警報システムの構成を表す図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る船舶用通信・警報システムの構成を表す図である。
【符号の説明】
【0031】
1−1〜1−n デジタルコードレス電話機
10−1〜10−m ベースステーション
20 デジタル交換機
21 信号受信手段
22 信号処理手段
23 記憶手段
30 船内指令装置
31−1〜31−l スピーカ
40 衛星通信装置
50 電話機
60 機器制御装置
61、71、81、91 信号受信手段
62、72 信号処理手段
63、73、83、93 記憶手段
64、74 機器制御手段
70 照明制御機器
80 機器認証装置
82、92 認証処理手段
84、94 認証制御手段
90 ドア解錠認証装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された機器の間における信号の伝送経路を制御する交換機を備え、
船舶内の携帯端末間で警報教示を行うことを特徴とする船舶用通信・警報システム。
【請求項2】
機器を操作するための操作データを前記機器に対応した指示データに変換するための変換用データを記憶する変換用データ記憶手段と、
携帯端末から直接又は前記交換機を介して操作データを含む信号が送信されると、前記記憶手段に記憶された変換用データに基づいて、前記信号に含まれる操作データを指示データに変換し、該指示データを含む信号を送信するデータ変換手段と、
該データ変換手段から送信された信号に含まれる前記指示のデータに基づいて、前記機器に指示信号を送信して制御を行う機器制御手段と
を備えた機器制御装置を、さらに前記交換機に内蔵又は接続することを特徴とする請求項1記載の船舶用通信・警報システム。
【請求項3】
前記携帯端末が個別に有する固有データを照合するための照合データを記憶する照合データ記憶手段と、
携帯端末から直接又は前記交換機を介して送信された信号に含まれる前記固有データと前記照合データとを照合し、照合が一致すると認証用のデータを含む信号を送信する認証処理手段と、
該認証処理手段から前記認証用のデータを含む信号が送信されると、機器の操作又はドアの解錠を行わせる機器認証制御手段と
を備えた機器認証装置を、さらに前記交換機に内蔵又は接続することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の船舶用通信・警報システム。
【請求項4】
前記携帯端末としてPHS及び/又はPDAを用いることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の船舶用通信・警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−345410(P2006−345410A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171205(P2005−171205)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】