説明

良好な機械的特性を有する、耐引掻性、耐衝撃性のポリカーボネート成形材料I

本発明は、良好な機械的性質と化学薬品に対する高い耐性と共に、良好な防炎性を有し、および加工の間に改良された流動特性を示す、耐引掻性、耐衝撃性のポリカーボネート(PC)組成物および成形材料に関し、それらは、以下のものを含有する:
A)10〜90重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)0.5〜30重量部のゴム変性グラフトポリマー、
C)0〜40重量部のビニル(コ)ポリマー(C.1)および/またはポリアルキレンテレフタレート(C.2)、
D)0.1〜50重量部の中空セラミック球、
E)0.2〜5.0重量部の少なくとも1種のポリオルガノシロキサン
F)0〜20重量部の少なくとも1種のリン含有防炎加工剤、
G)0〜10重量部の、少なくとも1種の更なる添加剤、
ただし、全ての重量部は、組成物中の全成分A+B+C+D+E+F+Gの重量部の合計が100となるように標準化される。更に、本発明は、組成物の調製方法と、造形品、特にフラットスクリーン装置のハウジングの製造に関するそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐引掻性、耐衝撃性のポリカーボネート(PC)組成物、良好な機械的特性および化学薬品に対する高い耐性を有すると共に良好な防炎化特性を有し、および加工の間に改良されたフロー特性を示す成形材料、それらの調製法、および造形品、特にフラットスクリーン装置のハウジングの製造に関するそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
JP-A05-070653は、マレイミド変性ABS成形材料における添加剤として高い圧縮強度を有するガラス中空球を開示する。成形材料は減少した密度、高い曲げ弾性率および良好な加熱歪み温度を有する。溶接強度、化学薬品に対する耐性、または増加した耐引掻性におけるこの添加剤の有利な効果は報告されていない。
【0003】
EP−A391413は、衝撃性改良ポリカーボネートにおける充填剤としてタルクの使用を開示する。耐引掻性または加工特性における影響は開示されていない。
【0004】
JP-A01-104637は、それらに対してAl-SiOの中空細粒が添加されている、結晶性ポリプロピレンと変性ポリプロピレンの混合物を開示する。タルクを有する対応する混合物と比べて、減少した曲げ弾性率を備える改良された耐引掻性は、これらの細粒により得られた。溶接強度または薬品に対する耐性における効果は記載されていない。
【0005】
JP2003-326623は、中間層が断熱および防音用に中空セラミック球を備えるポリカーボネートからなる多層シートを開示する。しかしながら、球は、ポリカーボネートと混合した状態で存在しない。
【0006】
EP2087478A1は、機械的特性の改良された要求と改良された流動性を有し、および充填剤含量を示す耐衝撃性改質ポリカーボネート組成物を開示し、それは、中空セラミック球の添加により得られる。しかしながら、衝撃強度および溶接強度における好ましい効果はもたらされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05-070653号公報
【特許文献2】欧州特許第391413号A明細書
【特許文献3】特開平01-104637号公報
【特許文献4】特開2003-326623号公報
【特許文献5】欧州特許第2087478号A1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い流動性(溶融粘度として測定した)、急激な衝撃応力下における良好な機械的特性、例えば、高い衝撃強度、および高い溶接強度などにより特徴づけられ、および不変の高いもしくは良好な耐引掻性を備え良好な耐化学薬品性(ESC特性)により特徴づけられる組成物を提供することである。好ましくは、組成物は、薄い壁厚(すなわち、1.5mmの壁厚)にてUL94 V-0の要求を満足し、および不燃性である。
【0009】
また、本発明は、組成物の調製方法を同様に提供し、および造形品の製造における該組成物の使用に関する。
【0010】
本発明に係る組成物はあらゆる種類の造形品の製造に使用できる。これらは、射出成形、押出およびブロー成形法により製造できる。加工の更なる形態は、予め製造したシートまたはフィルムからの熱成形による製造である。
【0011】
このような造形品の例は、フィルム、異形材、あらゆる種類のハウジング部材、例えば、屋内電気器具、例えばジュース絞り器、コーヒーメーカー、ミキサーなど;オフィス用設備、例えばモニター、フラットスクリーン、ノートブック、プリンター、コピーなど;シート、チューブ、電気装置用導管、窓、ドアおよび建設分野(内部建具および外部用途)に関する更なる異形材、ならびに電気および電子部品、例えばスイッチ、プラグおよびソケット、ならびに実用車、特に自動車分野用の室内部品である。
【0012】
特に、本発明に係る成形組成物は、例えば、以下の造形品または成形品の製造にも使用できる:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび他の自動車用の内装仕上げ部品、小型変圧器を有する電気装置のハウジング、情報処理および変換装置用のハウジング、医療機器用のハウジングおよびライニング、マッサージ装置およびマッサージ装置用のハウジング、子供向けの乗物玩具、平面壁板、安全装置用のハウジング、熱的に絶縁された輸送コンテナー、衛生設備用の成形品およびバスルーム用付属品、換気口用のカバー格子板、および庭設備用のハウジング。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、以下のものを含有する組成物が見出されている:
A)10〜90重量部、好ましくは50〜85重量部、特に好ましくは60〜75重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)0.5〜30.0重量部、好ましくは1.0〜25.0重量部、より好ましくは2.0〜20.0重量部、特に好ましくは4.0〜9.0重量部のゴム変性グラフトポリマー、
C)0〜40.0重量部、好ましくは1.0〜30.0重量部、特に好ましくは1.5〜10.0重量部の、ビニル(コ)ポリマー(C.1)および/またはポリアルキレンテレフタレート(C.2)、
D)0.1〜50.0重量部、好ましくは0.3〜30.0重量部、より好ましくは1.0〜20.0重量部、特に好ましくは2.0〜12.0重量部の中空セラミック球、
E)0.2〜10.0重量部、好ましくは0.5〜5.0重量部、より好ましくは0.8〜3.0重量部、および特に好ましくは1.0〜2.0重量部の、少なくとも1種の、好ましくは直鎖状のポリオルガノシロキサン、
F)0〜20重量部、好ましくは1.0〜18.0重量部、より好ましくは2.0〜16.0重量部、特に好ましくは3.0〜15.0重量部の、少なくとも1種のリン含有防炎加工剤、
G)0〜10.0重量部、好ましくは0.5〜8.0重量部、特に好ましくは1.0〜6.0重量部の添加剤、
ただし、本出願における記載された全ての重量部は、特性が所望のプロファイルを有し、組成物中の全成分A+B+C+D+E+F+Gの重量部の合計が100となるように標準化される。
【0014】
好ましい実施態様において、成分Eに対する成分Dの比は、2:1〜10:1、好ましくは4:1〜6:1および特に好ましくは5:1である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
成分A
本発明において適当な成分Aに係る芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献から既知であるか、または以下の文献から既知の方法により調製できる。芳香族ポリカーボネートの調製に関しては、例えば、シュネル著「ポリカーボネートの化学と物理」、インターサイエンスパブリッシャーズ、1964年、ならびにDE−AS1495626、DE-A2232877、およびDE-A2703376、DE-A2714544、DE-A3000610およびDE-A3832396を参照。また、芳香族ポリエステルカーボネートの調製に関しては、例えばDE-A3077934を参照できる。
【0016】
芳香族ポリカーボネートは、例えば、ジフェノールと、炭酸ハロゲン化物(好ましくはホスゲン)および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物(好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物)を、界面重合法により、所望により連鎖停止剤(例えばモノフェノール)を使用し、また所望により、三官能性以上の分枝剤(例えばトリフェノールまたはテトラフェノール)を用いて反応させることにより調製される。ジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートの反応による溶融重合法による調製も同様に可能である。
【0017】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを調製するためのジフェノールは、好ましくは以下の式(I)のジフェノールである:
【化1】


式中、
Aは単結合、C−C−アルキレン、C−Cアルキリデン、C−C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C−C12−アリーレン(該アリーレンには、必要に応じてヘテロ原子を含有する更なる芳香族環を結合させてもよい)、あるいは、以下の式(II)若しくは(III)の基である;
【化2】

【化3】

Bは、いずれの場合もC-C12-アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xは、いずれの場合も相互に独立して0、1または2であり、
pは、1または0であり、および
およびRは、各Xに対して独立して選択され、相互に独立して水素またはC−C-アルキル、好ましくは水素、メチル若しくはエチルから選択でき、
は炭素であり、ならびに
mは、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、但し、少なくとも1つのX原子上においては、RおよびRは同時にアルキルである。
【0018】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス-(ヒドロキシフェニル)−C−C−アルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)−C−C−シクロアルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス-(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス-(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-スルホンおよびα,α-ビス-(ヒドロキシフェニル)-ジイソプロピル-ベンゼン、並びに環を臭素化および/または環を塩素化させたそれらの誘導体である。
【0019】
特に好ましいジフェノールは、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびこれらのジ−およびテトラ臭素化若しくは塩素化誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス-(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)-プロパンまたは2,2−ビス-(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンなどである。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0020】
ジフェノールを単独で使用してもよく、任意の混合物として使用してもよい。ジフェノールは文献において既知であり、または文献において既知の方法に従い得ることができる。
【0021】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネート調製するために適当な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール、例えば4-[2-(2,4,4-トリメチルペンチル)]-フェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)-フェノール(DE-A2842005参照)など、またはアルキル置換基中に合計で8個〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノール若しくはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、および2−(3,5−ジメチルヘプチル)-フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)-フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、使用される具体的なジフェノールのモル数の合計に基づき、一般に、0.5モル%〜10モル%の間である。
【0022】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートは、10000〜200000g/モル、好ましくは15000〜80000g/モル、特に好ましくは24000〜32000g/モルの平均分子量(ポリカーボネート標準試薬を用い、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)により測定される重量平均M)を有する。
【0023】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートは、既知の方法、好ましくは、使用するジフェノールの合計量に基づき0.05〜2.0モル%の三官能価以上の化合物(例えば、3個以上のフェノール基を有する化合物)を組み込む方法により分枝化できる。好ましくは、直鎖状ポリカーボネート、より好ましくはビスフェノールAに基づくものが使用される。
【0024】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートが共に適当である。本発明に係る成分Aのコポリカーボネートを調製するために、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを、使用されるジフェノールの全量に基づいて、1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%使用できる。これらは、US3419634において既知であり、文献から既知の方法に従って調製できる。また、ポリジオルガノシロキサンを含有するコポリカーボネートも同様に適当であり、ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの調製は、例えば、DE-A3334782に記載されている。
【0025】
ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAと、ジフェノールのモル総量に基づき15モル%以下の、上記好ましいまたは特に好ましいとして上述したジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとのコポリカーボネートである。
【0026】
芳香族ポリエステルカーボネートを調製するための芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0027】
1:20〜20:1の割合で、イソフタル酸とテレフタル酸の二酸ジクロリドの混合物が特に好ましい。
【0028】
ポリエステルカーボネートの調製において、炭酸ハロゲン化物(好ましくはホスゲン)が二官能性の酸誘導体として更に共に使用される。
【0029】
上述したモノフェノールに加えて、芳香族ポリエステルカーボネートを調製に使用できる連鎖停止剤は、それらのクロロ炭酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物(必要に応じて、C−C22−アルキル基またはハロゲン原子により置換されてもよい)、並びに脂肪族C−C22−モノカルボン酸塩化物である。
【0030】
連鎖停止剤の量は、フェノール系の連鎖停止剤の場合ジフェノールのモル量に基づき、モノカルボン酸塩化物系の連鎖停止剤の場合ジカルボン酸二塩化物のモル量に基づき、いずれの場合も0.1〜10モル%である。
【0031】
芳香族ポリエステルカーボネートの調製において、1種以上の芳香族ヒドロキシカルボンサンを更に使用できる。
【0032】
芳香族ポリエステルカーボネートは直鎖状であってもよく、既知の方法で分枝化させてもよい(DE-A2940024および同3007934参照)。直鎖状のポリエステルカーボネートが好ましい。
【0033】
分枝剤としては、以下のものが使用できる:例えば、三官能性以上のカルボン酸塩化物、例えばトリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3'-,4,4'−ベンゾフェノン−テトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロリド若しくはピロメリット酸テトラクロリドなど(使用したジカルボン酸ジクロリド)に基づき0.01〜1.0mol%の量;または三官能性以上のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−へプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル-イソプロピル)-フェノール、テトラ-(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]−フェノキシ)−メタン、1,4−ビス[4,4'−(ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼンなど、使用するジフェノールに基づき0.01〜1.0mol%の量。フェノール系分枝剤はジフェノールと共に最初に導入してもよく、酸塩化物系分枝剤は酸二塩化物と共に導入できる。
【0034】
熱可塑性の芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構造単位の含有量は、所望に応じて変化できる。好ましくは、カーボネート基の含有量は、エステル基とカーボネート基の合計量に基づき、100モル%以下、特に80モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。芳香族ポリエステルカーボネート中に含有されるエステルおよびカーボネート含量は、ブロック状またはランダムに分布した状態で重縮合生成物中に存在できる。
【0035】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独で使用してもよく、任意に混合させて使用してもよい。
【0036】
成分B
成分Bは、以下のものから成る1種以上のグラフトポリマーを含む:
B.1 5〜95、好ましくは20〜90wt%、特に好ましくは30〜60wt%の少なくとも1種のビニルモノマー、および
B.2 95〜5wt%、好ましくは80〜10wt%、特に好ましくは70〜40wt%の、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を有する1種以上のグラフトベース。
【0037】
グラフトベースB.2は、一般に、0.05〜10.00μm、好ましくは0.10〜5.00μm、より好ましくは0.20〜1.00μmおよび特に好ましくは0.25〜0.50μmの平均粒径(d50値)を有する。
【0038】
モノマーB.1は、以下のものから成る混合物である:
B.1.1 50〜99重量部の、ビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、および
B.1.2 1〜50重量部の、シアン化ビニル(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸。
【0039】
好ましいモノマーB.1.1は、モノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートのうちの少なくとも一つから選択され、好ましいモノマーB.1.2は、モノマーアクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートのうちの少なくとも一つから選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1がスチレンであり、B.1.2がアクリロニトリルである。
【0040】
グラフトポリマーBに関する適当なグラフトベースB.2は、例えばジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび所望によるジエンに基づくゴム、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムである。
【0041】
好ましいグラフトベースB.2は、ジエンゴム、例えばブタジエンおよびイソプレンに基づくもの、またはジエンゴムの混合物またはジエンゴムもしくはそれらの混合物と別の共重合性モノマー(例えばB.1.1およびB.1.2に係る)とのコポリマーである。ただし、成分B.2のガラス転移温度は10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−10℃未満である。純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0042】
ガラス転移温度は、中間位置測定(タンジェント法)としてのTg測定により、10K/分の加熱速度にてDIN EN61006に従い示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定する。
【0043】
特に好ましいポリマーBは、例えばABSポリマー(エマルジョン、塊状および懸濁ABS)であり、例えば、DE−OS 2035390(=US3644574)またはDE−OS 2248242(=GB1409275)およびUllmanns,Enzyklopaedie der Technischen Chemie,第19巻(1980年),280頁以降に記載されている。グラフトベースB.2のゲル含有量は、少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも40wt%(トルエン中で測定)である。
【0044】
グラフトコポリマーBは、ラジカル重合によって、例えば乳化、懸濁、溶液または塊状重合によって、好ましくは乳化または塊状重合によって製造される。
【0045】
また、特に適当なグラフトゴムは、US4937285に従い、有機ヒドロペルオキシドとアスコルビン酸を含有する開始剤系を用いるレドックス開始による乳化重合法で調製されたABSポリマーである。
【0046】
既知であるように、グラフト反応の間に、グラフトモノマーは、グラフトベース上に完全にグラフト化される必要はないので、本発明に係るグラフトポリマーBは、グラフトベースの存在下においてグラフトモノマーの(共)重合により得られるこれらの生成物と、後処理(work-up)の間に同時に得られるこれらの生成物としても理解される。
【0047】
ポリマーBのB.2に係る適当なアクリレートゴムは、好ましくは、アクリル酸アルキルエステルのポリマーであり、所望により、B.2に基づき40wt%以下の別の重合性のエチレン性不飽和モノマーを有する。好ましい重合性アクリル酸エステルは、C〜C−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロC〜Cアルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、並びにこれらのモノマーの混合物である。
【0048】
架橋のために、一つよりも多くの重合性二重結合を有するモノマーを共重合できる。架橋モノマーの好ましい例は、炭素原子3〜8個を有する不飽和モノカルボン酸と、炭素原子3〜12個を有する不飽和一価アルコール、またはOH基2〜4個と炭素原子2〜20個とを有する飽和ポリオールとのエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;多価不飽和複素環化合物、例えばトリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えばジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン;および更にトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する複素環化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、グラフトベースB.2に基づき、好ましくは0.02〜5.00wt%、特に0.05〜2wt.%である。少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、グラフトベースB.2に基づき1wt%未満の量に限定することが有利である。
【0049】
アクリル酸エステルに加えて、グラフトベースB.2を調製するための所望により使用できる、好ましい「別の」重合性のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンである。グラフトベースB.2として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60wt%のゲル含量を有するエマルジョンポリマーである。
【0050】
B.2に係る他の適当なグラフトベースは、グラフト活性部位を有するシリコーンゴムであり、例えばDE−OS 3704657、DE−OS 3704655、DE−OS 3631540およびDE−OS 3631539に記述されている。
【0051】
グラフトベースB.2のゲル含有量は適当な溶媒中で25℃にて測定される(M.Hoffman,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I and II,Georg Thieme−Verlag,シュトゥットガルト 1977年参照)。
【0052】
平均粒径d50は、その上下にそれぞれ50wt.%の粒子が存在する直径である。それは、超遠心分離測定法によって決定できる(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid,Z.and Z.Polymere 250(1972年),782〜1796頁参照)。
【0053】
成分C
成分Cは、1種以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーC.1および/またはポリアルキレンテレフタレートC.2を含む。
適当なビニル(コ)ポリマーC.1は、ビニル芳香族化合物、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)-アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)からなる群からの少なくとも1種のモノマーからなるポリマーである。特に好ましくは、適当な(コ)ポリマーは、以下のC.1.1およびC.1.2からなる(コ)ポリマーである:
C.1.1 50〜99重量部の、好ましくは60〜80重量部のビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、および
C.1.2 1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部の、シアン化ビニル(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)。
【0054】
ビニル(コ)ポリマーC.1は樹脂状の熱可塑性でありゴムを含有しない。C.1.1スチレンおよびC.1.2アクリロニトリルからなるコポリマーが特に好ましい。
【0055】
C.1に係る(コ)ポリマーは、既知であり、フリーラジカル重合、特に乳化、懸濁、溶液または塊状重合により調製できる。(コ)ポリマーは、好ましくは15000〜200000g/モル、特に好ましくは100000〜150000g/モルの平均分子量Mw(重量平均、光り散乱または沈殿法により測定される)を有する。
【0056】
特に好ましい実施態様において、C.1は、130000g/モルの重量平均分子量Mwを有する、77wt%スチレンと23wt%アクリロニトリルからなるコポリマーである。
【0057】
成分C.2のポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはそれら反応性誘導体、例えば、ジメチルエステルまたは無水物と、脂肪族、脂環式またはアラリファティックジオールの反応生成物、ならびにこのような反応生成物の混合物である。
【0058】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に基づき、少なくとも80wt%、好ましくは少なくとも90wt%のテレフタル酸基、およびジオール成分に基づき、少なくとも80wt%、好ましくは少なくとも90wt%の、エチレングリコールおよび/またはブタン-1,4-ジオール基を含有する。
【0059】
テレフタル酸基を含有することと同様に、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、8〜14個の炭素原子を有する他の芳香族若しくは脂環式ジカルボン酸、または4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、4,4'-ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸およびシクロヘキサンジ酢酸などの基を、20モル%以下、好ましくは10モル%以下含有できる。
【0060】
エチレングリコールまたはブタン-1,4-ジオール基に加えて、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、20モル%以下、好ましくは10モル%以下の、3〜12個の炭素原子を有する他の脂肪族ジオール、または6〜21個の炭素原子を有する脂環式ジオール、例えば、プロパン-1,3-ジオール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、3-エチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパン(DE-A2407674、同2407776、および同2715932参照)を含有できる。
【0061】
例えばDE-A1900270およびUS3692744に規定されるように、3価−若しくは4価アルコールまたは3塩基−若しくは4塩基カルボン酸を比較的少量取り込ませることにより、ポリアルキレンテレフタレートを分岐させることができる。好ましい分岐剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンならびにペンタエリトリトールである。
【0062】
テレフタル酸およびそれらの反応性誘導体(例えばそれらのジアルキルエステル)と、エチレングリコールおよび/またはブタン-1,4-ジオールから単に調製されたポリアルキレンテレフタレート、およびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0063】
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、1〜50wt%、好ましくは1〜30wt%のポリエチレンテレフタレートと、50〜99wt%、好ましくは70〜99wt%のポリブチレンテレフタレートを含有する。
【0064】
一般的に使用される好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ウベローデ粘度計を用い、25℃にてフェノール/o-ジクロロベンゼン(1:1重量部)で測定した場合、0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.2dl/gの極限粘度を有する。
【0065】
ポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法によって調製できる(例えば、プラスチックハンドブック(Kunststoff-Handbuch)第VIII巻、第695頁以降、カール・ハンサー、バーグ社、ミュンヘン、1973年)。
【0066】
成分D
本発明に係る成形材料は、中空セラミック球、好ましくは中空ケイ素-アルミニウムセラミック球を成分Dとして含有する。好ましい中空セラミック球は、5.0〜25.0wt%、好ましくは7.5〜20.0wt%、および特に好ましくは10.0〜15.0wt%のAlの含有量を有する。
【0067】
好ましい実施態様において、中空セラミック球は、2.0〜3.0g/cm、好ましくは2.2〜2.6g/cmの特定の密度を有する。特に好ましい中空セラミック球は、50〜700MPa、好ましくは200〜500MPaの圧縮強度を有する。記載された圧縮強度は、液体カラム中でそれらに該圧力を施す場合に、80%の球が損傷無く存在する条件下での平衡圧(isostatic pressure)に対する抵抗である。
【0068】
中空セラミック球は、好ましくは0.1〜100.0μm、好ましくは0.5〜50.0μm、より好ましくは1.0〜30.0μmおよび特に好ましくは2.0〜10.0μmの平均粒径(d50)を有する。平均粒径(d50値)は、Sedigraph 5100(Micrometrics Instruments社、Norcross社、ジョージア、USA)を用いて水性媒体中で沈殿法により測定される。
【0069】
成分E
本発明に係る成分Eとしてのポリオルガノシロキサンは、一般式IVのユニットを含有する:
【0070】
【化4】

式中、Rはそれぞれ相互に独立して、置換または非置換炭化水素基を示し、rは、0、1、2または3を表わし、ただし、rの平均数値は1.9〜2.1の範囲内である。
【0071】
好ましい基Rは、例えば、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルまたはシクロアルキル基であり、いずれの場合も置換または非置換であってもよく、および所望によりヘテロ原子により遮断されてもよい。
【0072】
炭化水素基Rの例は、アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、ヘキシル基、例えば、n-ヘキシル基、ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基、オクチル基、例えば、n-オクチル基、およびイソオクチル基、例えば、2,2,4-トリメチルペンチル基、またはエチルヘキシル基、ノニル基、例えば、n-ノニル基、デシル基、例えば、n−デシル基、ドデシル基、例えば、n−ドデシル基、オクタデシル基、例えばn-オクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびアントリルおよびフェナントリル基;アルカリール基、例えばo-、m-、p-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基;アラルキル基、例えば、ベンジル基、αおよびβ-フェニルエチニル基である。
【0073】
置換炭化水素基Rの例は、ハロゲン化アルキル基、例えば3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルおよびペルフルオロヘキシルエチル基、ハロゲン化アリール基、例えば、p-クロロフェニルおよびp-クロロベンジル基である。
【0074】
好ましくは、基Rは、水素および/または1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基、特に好ましくはメチルである。
【0075】
基Rのさらに好ましい例は、ビニル、アリル、メタリル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル基、5-ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギルおよび1-プロピニル基である。
【0076】
本発明に係る更なる好ましい実施態様において、基Rは、2〜8個の炭素原子を有するアルケニル基、特に好ましくはビニル基である。
【0077】
1〜8個の炭素原子を有する所望により置換された炭化水素基の場合、メチル、ビニル、フェニルおよび3,3,3-トリフルオロプロピル基が置換基として特に好ましい。
【0078】
好ましくは、アルキル基、特にメチル基は、式(IV)のユニットのポリオルガノシロキサンE中に含有されるSi原子の少なくとも70モル%と結合する。
【0079】
ケイ素に結合する、メチルまたは3,3,3-トリフルオロプロピル基および2つの組合せに加えて、ポリオルガノシロキサンが、ケイ素に結合する、ビニルまたはフェニル基、および2つの組合せを含む場合、後者は、0.001〜30モル%の量で好ましく存在する。
【0080】
好ましくは、ポリオルガノシロキサンEは、ジオルガノシロキサンユニットを大部分に含有する。ポリオルガノシロキサンの末端基は、トリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基又はジメチルビニルシロキシ基であることができ、しかし、これらのアルキル基のうち1つ以上を、ヒドロキシ基またはアルコキシ基、例えばメトキシまたはエトキシ基により置換できる。
【0081】
ポリオルガノシロキサンEは、液体または高粘性物質であってもよい。ポリオルガノシロキサンEは、50000〜1000000mm/sの間、好ましくは100000〜800000mm/sの間、特に200000〜600000mm/sの間、正に特に好ましくは500000mm/sの、25℃で測定した粘度を有し、ただし、成分Eの平均分子量は、200000g/モル未満である。
【0082】
1種のポリオルガノシロキサンまたは種々のポリオルガノシロキサンの混合物を、成分Eとして使用できる。
【0083】
好ましくは、本発明によるオルガノポリシロキサン細粒中に、架橋剤は使用されない。
【0084】
しかしながら、ある使用に関して、例えば、熱可塑性物質に対してオルガノポリシロキサンの結合が所望される場合、架橋剤を使用することが有利になり得る。この場合、過酸化物、例えば、ジベンゾイル過酸化物、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)過酸化物、ジクミル過酸化物、ビス-4-メチルベンゾイル過酸化物、2,5-ジメチル-ヘキサン-2,5-ジ-tert-ブチル過酸化物、または2,5-ビス-(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンおよびそれらの混合物が、架橋剤として、本発明に係るポリオルガノシロキサン細粒に好ましく添加される。
【0085】
好ましくは、25℃にて測定した、500000mm/sの粘度を有する直鎖状ポリジメトキシシロキサンが、本発明において使用される。
【0086】
成分F
本発明の範囲内におけるリン含有防炎加工剤Fは、モノ−およびオリゴマーのリン酸およびホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンから成る群から好ましく選択され、これらの群のうち、1種または複数種から選択される複数の成分から成る混合剤を防炎加工剤として使用できる。ここで特に言及されていない他のハロゲンフリーのリン化合物を単独でまたは他のハロゲンフリーのリン化合物の任意所望の組合せを使用できる。
【0087】
好ましいモノ−およびオリゴマーリン酸またはホスホン酸エステルは、一般式(V)のリン化合物である:
【0088】
【化5】

式中、
、R、RおよびRは、相互に独立して、いずれの場合も所望によりハロゲン化されたC〜Cアルキル、いずれの場合も所望によりアルキル置換された、好ましくはC-Cアルキル置換された、および/またはハロゲン置換された、好ましくは塩素または臭素置換された、C〜Cシクロアルキル、C〜C20−アリールもしくはC〜C12−アラルキルであり、
nは、相互に独立して0または1を示し、
qは、0〜30を示し、および
Xは、炭素原子を6〜30個有する単核−もしくは多核芳香族基、または炭素原子を2〜30個有する直鎖もしくは分枝脂肪族基であって、これらはOH置換されていても8個以下のエーテル結合を有してもよい。
【0089】
好ましくは、R、R、RおよびRは、相互に独立して、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニルC〜Cアルキルを示す。芳香族基R、R、RおよびRは、順にハロゲン基および/またはアルキル基、好ましくは塩素、臭素および/またはC〜Cアルキルによって置換されていてもよい。特に好ましいアリール基は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニル並びにそれらの対応臭素化および塩素化誘導体である。
【0090】
式(V)における、Xは、好ましくは、炭素原子を6〜30個有する単核もしくは多核芳香族基である。これは、式(I)のジフェノールから好ましく誘導される。
【0091】
式(V)における置換基nは、相互に独立して、0または1であることができ、nは、好ましくは1である。
【0092】
qは、0〜30、好ましくは0〜20、特に好ましくは0〜10の整数値であり、混合物の場合、平均値は、0.8〜5.0、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.05〜2.00および特に好ましくは1.08〜1.60である。
【0093】
Xは、特に好ましくは、以下の化合物、
【0094】
【化6】

【0095】
またはそれらの塩素化もしくは臭素化誘導体である。特にXは、レソルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールAまたはジフェニルフェノールから誘導される。特に好ましくは、Xは、ビスフェノールAから誘導される。
【0096】
式(V)のリン化合物は、特に、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレシルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レソルシノールブリッジオリゴホスフェートおよびビスフェノールAブリッジオリゴホスフェートである。ビスフェノールAから誘導される式(V)のオリゴマーリン酸エステルの使用が特に好ましい。
【0097】
式(Va)に係るビスフェノールA系オリゴリン酸が、成分Fとして最も好ましい。
【0098】
【化7】

【0099】
成分Fに係るリン化合物は既知であるか(例えば、EP-A0363608、EP-A0640655参照)、または既知の方法により同様の方法で製造できる(例えば,Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie,第18巻,301頁以降,1979年;Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie,第12/1巻,43頁;Beilstein 第6巻,177頁)。
【0100】
異なる化学構造および/または同じ化学構造と異なる分子量のリン酸エステルの混合物を、本発明に係る成分Fとして使用できる。
【0101】
好ましくは、同じ構造と異なる鎖長を有する混合物が使用され、付与されるq値は平均q値である。平均q値は、適当な方法(ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))を用いてリン化合物の組成(分子量分布)を測定し、それらからqに関する平均値を計算することによって決定できる。
【0102】
WO 00/00541およびWO 01/18105に記述されているような、ホスホネートアミンおよびホスファゼンを、防炎加工剤として更に使用できる。
【0103】
防炎加工剤は単独で使用してもよく、または相互に任意所望に混合させて用いてもよく、他の防炎加工剤と混合して用いてもよい。
【0104】
更なる添加剤G
組成物は、他の常套のポリマー添加剤、例えば防炎相乗剤、ドリップ抑制剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーンおよびアラミド繊維から成る物質の分類からの化合物)、潤滑剤および離型剤(例えばペンタエリトリトールテトラステアレート)、核形成剤、安定剤、帯電防止剤(例えば、導電性ブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブおよび有機帯電防止剤、例えばポリアルキレンエーテル、アルキルスルホン酸エステルまたはポリアミド含有ポリマー)および染料、顔料、充填剤、および補強剤、特にガラス繊維、無機補強剤および炭素繊維を含有できる。
【0105】
特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはPTFE含有組成物、例えば、スチレン-またはメチルメタクリレート-含有ポリマーもしくはコポリマーを有するPTFEのマスターバッチなどが、ドリップ抑制剤として使用される。立体障害フェノールおよび亜リン酸エステルまたはそれらの混合物、例えばIrganox(登録商標)B900(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)が安定剤として好ましく使用される。ペンタエリトリトールステアレートは、離型剤として好ましく使用される。
【0106】
成形材料の調製および試験
【0107】
表1に記載した出発物質を、260℃の装置温度にて、20kg/時の処理量および225rpmの回転速度にて、2軸押出機(ZSK-25)(Werner und Pfleiderer)を用いて配合し、粒状化する。得られた細粒を、射出成形機で加工して、対応する試験片をもたらす(溶融温度240℃、金型温度80℃、フロー前面速度240mm/秒)。
【0108】
試験片の特性を評価するために以下の方法を使用した:
流動性は、ISO11443(溶融粘度)に従い測定した。
【0109】
溶接強さは、両側から射出成形した80×10×4mmの寸法の試験バーを用いて、ISO179/1eUに従い測定した。
【0110】
衝撃強度は、片側から射出成形した80×10×4mmの寸法の試験バーを用いて、ISO179/1eUに従い測定した。
【0111】
熱変形温度は、片側から射出成形した80×10×4mmの寸法の試験バーを用いて、DIN ISO306(ビカー軟化温度、50N加重と120K/時の加熱速度を用いる方法B)に従い測定した。
【0112】
耐引掻性は、鉛筆硬度としてASTM D-3363(重量750g)に従い測定した。この試験において、3H、2H、H,F、HB、B、2Bおよび3B(硬度が減少する)の硬度の鉛筆を、一定の圧力下、表面全体にわたり通過させる。鉛筆硬度は、表面上に引掻傷が認められない最も硬い鉛筆を示す。
【0113】
応力亀裂性能(ESC性能)を、80×10×4mm寸法のバーを用いて導く。使用した具体的な試験媒体を表1に示す。試験片を、湾曲した型板を用いることにより事前伸展し(事前伸展ex=2.4%)、室温にて試験媒体中に該試験片を保持する。応力亀裂性能は、亀裂の形成(「CF」)または亀裂の形成無し(「NCF」)または破砕(「FR」)を観察することにより評価される。
【0114】
燃焼特性は、127×12.7×1.5mm寸法のバーをUL94Vに従い測定する。
【0115】
以下に続く例は、本発明を更に説明する役割を果たす。
【実施例】
【0116】
成分A
27500g/モルの重量平均分子量Mw(基準としてのポリカーボネートを用いて塩化メチレン中でGPCにより測定した)を有する、ビスフェノールAに基づく直鎖状ポリカーボネート。
【0117】
成分B
粒状形態(平均粒径d50=0.35μm)で架橋されたポリブタジエンゴムを57wt%(ABSポリマーに基づく)存在させ、27wt%アクリロニトリルと73wt%スチレンから成る混合物43wt%(ABSポリマーに基づく)を乳化重合させることにより調製されたABSポリマー。
【0118】
成分C
塊状法により調製された、130000g/モルの重量平均分子量M(ポリスチレン標準を用い、テトラヒドロフラン中でGPCにより測定した)を有する77wt%スチレンと23wt%アクリロニトリルのコポリマー。
【0119】
成分D
12%のAl含有量を有するケイ素-アルミニウムセラミックから構成される中空セラミック球。セラミック中空球は2.5g/cmの特定密度を有し、420MPaの平衡圧縮強度を有する。球は、4μmの平均径を有する。
【0120】
成分E
25℃にて測定した、500000mm/sの粘度を有する直鎖状のポリジメチルシロキサン(分子量160000g/モル)。
【0121】
成分F
ビスフェノールAに基づくオリゴリン酸
【0122】
【化8】

【0123】
成分G
G1:ポリテトラフルオロエチレン粉末、CFP6000N、デュポン
G2:潤滑剤/離型剤としてのペンタエリトリトールテトラステアレート
G3:亜リン酸エステル安定剤、Irganox(登録商標)B900、チバスペシャリティ・ケミカルズ社
【0124】
【表1】

【0125】
表1における組成物において、実施例1および4(特定のセラミック球と直鎖状のポリジメチルシロキサンの組合せを含有する)に係る本発明による組成物のみが、本発明による目的を達成する。すなわち、良好な耐引掻性を備え、応力亀裂に対して改良された耐性を示し、良好な機械的特性(すなわち、高い衝撃強度と溶接強度)を示し、ならびに改良された流動性を有する。
【0126】
セラミック球のみを使用した場合(比較例2および5)、耐引掻性は実に高い程度であるが、溶接強度、衝撃強度および流動特性における著しい欠点が観察される。シロキサンのみを使用する場合(比較例3および6)、溶接強度と衝撃強度が実に高いレベルであるが、耐引掻性、熱変形温度および応力亀裂に対する耐性は、著しく悪化している。
【0127】
組成物の提供に加えて、また、本発明は射出成形品または熱成形した造形品の製造に関するそれらの使用と、本発明による組成物を含有する造形品を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含有する組成物、
A)10〜90重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)0.5〜30重量部のゴム変性グラフトポリマー、
C)0〜40重量部のビニル(コ)ポリマー(C.1)および/またはポリアルキレンテレフタレート(C.2)、
D)0.1〜50重量部の中空セラミック球、
E)0.2〜5.0重量部の少なくとも1種のポリオルガノシロキサン
F)0〜20重量部の少なくとも1種のリン含有防炎加工剤、
G)0〜10重量部の、少なくとも1種の更なる添加剤、
ただし、記載される全ての重量部は、組成物における全成分A+B+C+D+E+F+Gの重量部の合計が100となるように標準化される。
【請求項2】
成分(E)に対する成分(D)の割合が2:1〜10:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリオルガノシロキサン(E)が一般式(IV)のユニットを含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物:
【化1】

式中、
-Rは相互に独立して、置換または非置換の炭化水素基であり、
-rは、0、1、2または3であり、および
-rの平均数値は、1.9〜2.1の範囲である。
【請求項4】
Rが、ビニル、アリル、メタリル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル基、5-ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギル、1-プロピニル、メチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、ペルフルオロヘキシルエチル、p-クロロフェニルおよびp-クロロベンジル基を含む群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
アルキル基が、ポリオルガノシロキサン(E)中に含まれるSi原子の少なくとも70モル%と結合されることを特徴する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
ポリオルガノシロキサン(E)が、25℃で測定された、50000〜1000000mm/sの間に粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
中空セラミック球が、5〜25wt%のAl含量を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
中空セラミック球が、50〜700MPaの圧縮強度を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
中空セラミック球が、0.1〜100.0μmの平均粒径(d50)を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
成分Bのグラフトベースが、0.05〜10.00μmの平均粒径(d50値)を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
成分Bのグラフトベースが、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
グラフトポリマー(B)が以下のものから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物:
B.1) 27wt%のアクリロニトリルと73wt%のスチレンから成るエマルジョンポリマーを43wt%および、
B.2) 0.35μmの平均粒径d50を有する粒状で架橋したポリブタジエンゴムを57wt%。
【請求項13】
リン含有防炎加工剤(D)が一般式(V)の防炎加工剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物:
【化2】

式中、
、R、RおよびRは、相互に独立して、いずれの場合も所望によりハロゲン化されたC〜Cアルキル、いずれの場合も所望によりアルキル置換された、好ましくはC-Cアルキル置換された、および/またはハロゲン置換された、好ましくは塩素または臭素置換された、C〜Cシクロアルキル、C〜C20−アリールもしくはC〜C12−アラルキルをしめし、
nは、相互に独立して0または1を示し、
qは、0.80〜5.00を示し、および
Xは、炭素原子を6〜30個有する単核−もしくは多核芳香族基、または炭素原子を2〜30個有する直鎖もしくは分枝脂肪族基であって、これらはOH置換されていてもよく8個以下のエーテル結合を有してもよい。
【請求項14】
防炎相乗剤、ドリップ抑制剤、潤滑剤および離型剤、核形成剤、安定剤、帯電防止剤、染料、顔料および充填剤、ならびに補強剤を含む群から選択される少なくとも1種の添加剤を成分Gとして含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
射出成形品または熱成形された造形品を製造するための請求項1〜7のいずれか1つに記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2013−514410(P2013−514410A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543736(P2012−543736)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069831
【国際公開番号】WO2011/073289
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】