説明

色合わせされた塗料の製造方法およびそれに使用される装置

本発明は、マッチさせる対象となる自動車車体のような基板上の対象塗装の色のスペクトル測定を使用する方法および装置に関する。本方法では、コーティングに適用したときに対象塗装と外観がマッチし、しかも耐久性、光沢、および接着性のような他の所望のコーティング特性をも提供する色合わせされた塗料を製造するために、顔料混合物モデルを利用する。対象色のスペクトル曲線に実質的にマッチする近似スペクトル曲線を生成するように種々の着色剤の組合せを分析する。その際、最適処方を特定するために着色剤最適化関数を使用する。この関数は、色許容差式に基づくマッチの良さ、メタメリズム指数、スペクトル曲線の形状、コスト、および顔料耐久性のような受容可能性係数を利用する。各因子は、組成物の特定の最終用途に従って重み付けされる。本発明に係る方法は、自動車再仕上げ用途で使用される自動車再仕上げ塗料を製造するのに好適である。その際、自動車車体の非損傷部分に色合わせさせて色合わせされた再仕上げ塗料を製造し、次に、自動車車体の修理部分上に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、対象塗装に色合わせするコーティング組成物の製造方法およびそれに使用される装置に関する。本方法は、自動車再仕上げ用途に使用するのに好適な色合わせされた塗料の製造にとくに適している。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年5月7日出願の米国特許仮出願第60/468,595号(参照により本明細書に援用されるものとする)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
多くの工業では、とくに自動車再仕上げ工業では、顧客は、特別な色効果および良好なカラーマッチ色合わせだけでなく格別良好な外観および耐久性をも要求する。現場で自動車を再仕上げする場合、一般的には、携帯型測色計を用いて、修理される車体のコーティングから離れてターゲット対象色読取り値を測定し、続いて、塗料処方の記憶データベース全体を探索して、車体から離れて測定された色読取り値に最もよくマッチする既存の処方を見いだす。そのような方法により、車体工場では、修理される自動車にマッチする最良塗料処方を直接見いだすことができる。しかしながら、これらの現用の方法では、何千という再仕上げ自動車色を含有する膨大なデータベースの作成および維持が必要であり、これらの色の中から、網羅的探索後、ターゲットコーティング対象塗装に最も近いカラーマッチ色合わせを選択することができる。さらに、再仕上げ工は、塗料サンプルの調製および試験を行わなければならず、その後、ターゲットコーティング対象塗装によくマッチさせるようにできるので、前述の選択法は、費用がかかる。本発明は、膨大な色データベースの作成および維持を必要とすることなく費用効果的な方法で最も近いカラーマッチ色合わせを得るのに役立つ。
【0004】
自動車車体のような表面のカラーコーティングを特性分析する方法については、米国特許公報(特許文献1)に開示されている。利用される方法では、メタリック塗料で典型的に使用されるメタルフレークの存在により減衰される反射光の反射率を測定する。エス・チャンドラセカール(S.Chandrasekhar)の放射伝達方程式により、メタリック対象塗装の減衰測定反射率を、メタリック対象塗装に近い色合わせを与える解により予測された反射率と関連付ける。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,231,472号明細書
【非特許文献1】エイ・ビー・ロドリゲス(A.B.J.Rodrigues)著,色の概念、色合わせ、およびコントロールに関する現代技術の理論と実際(Theory and Implementation of Modern Techniques of Color Conception,Matching and Control),第5回有機コーティング科学技術国際会議録(Fifth International Conference in Organic Coatings Science and Technology Proceedings),第3巻,有機コーティング科学技術の進歩シリーズ(Advances in Organic Coatings Science and Technology Series),p.273−275(1979年)
【非特許文献2】バーンズ・アール・エス(Berns,R.S.)著,“カラー技術のビルマイヤー・ザルツマン原理(Billmeyer and Saltzman’s Principles of Color Technology)”,第3版,p.120−121およびp.117−118,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレーテッド(John Wiley & Sons,Inc.)刊
【非特許文献3】イー・エイ・アレン(E.A.Allen)著,コンピューター色合わせで用いられる基本式(Basic equations used in computer color matching),米国光学会誌(J.Opt.Soc.Am.),第56巻,p.1256−1259(1966年)
【非特許文献4】イー・エイ・アレン(E.A.Allen)著,コンピューター色合わせに使用される基本式,II.三刺激色合わせ,二定数理論(Basic Equations used in computer color matching,II.Tristimulus matching,two−constant theory),米国光学会誌(J.Opt.Soc.Am.),第64巻,p.991−993(1974年)
【非特許文献5】ロドリゲス(Rodrigues)著,第7回国際色彩学会(AIC)会議(7th Congress of the International Colour Association(AIC)),ブダペスト(Budapest),1993年6月
【非特許文献6】ケトラー・ダブリュー・エイチ(Kettler,W.H.),コルブ・エム(Kolb,M.)著,「多重散乱逆輸送法を用いる反射顔料の光単一散乱特性の数値評価(Numerical evaluation of optical single−scattering properties of reflective pigments using multiple−scattering inverse transport methods)」、色彩(Die Farbe),第43巻,p.167(1997年)
【非特許文献7】ケトラー・ダブリュー・エイチ(Kettler,W.H.),コルブ・エム(Kolb,M.)著,「平面平行混濁媒体の逆多重散乱計算:色処方配合物への応用(Inverse multiple scattering calculations for plane−parallel turbid media:application to color recipe formulation)」,電磁光散乱[理論と応用]国際ワークショップ予稿集(Proceedings of the International Workshop,Electromagnetic Light Scattering,Theory and Application),ロモノソフモスクワ国立大学(Lomonosov State University,Moscow),ワイ・エレミン(Y.Eremin)およびティーエイチ・ライエット(Th.Wriedt)編(1997年)
【非特許文献8】ニメロフ・アイ(Nimeroff,I.)およびユロウ・ジェイ・エイ(Yurow,J.A.)著,“メタメリズム度(Degree of Metamerism)”,米国光学会誌J.Opt.Soc.Am.,第55巻,p.185−190(1965年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特定最終用途向けの色合わせされた塗料の製造方法に関する。該方法は、
(i)塗装特性分析装置(coating characterizing device)の分光光度計を用いて一組の事前設定波長で対象塗装の対象部分の反射率を測定して該対象部分の対象スペクトル曲線をプロットする工程と;
(ii)該対象部分の該対象スペクトル曲線から該対象部分の対象色(L,a,bまたはL,C,h)値を計算する工程と;
(iii)該対象色値に色合わせするように組合せ選択基準に従って既知の着色剤の記憶リストから1つ以上の予備的な着色剤の組合せを選択する工程と;
(iv)色合わせ基準に従ってそれぞれの該予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの該既知の着色剤の濃度を決定する工程であって、それぞれの該既知の着色剤の該濃度は、それぞれの該予備的な着色剤の組合せの色値を該対象色値に最適に色合わせさせるように最適化される工程と;
(v)該色合わせされた塗料中の非着色剤成分の存在を考慮して該予備的な着色剤の組合せの量を決定(balancing)して該特定最終用途向けに開発された混合上および制御上の基準に従って最適化された1つ以上の実用可能な組合せを生じさせる工程と;
(vi)該特定最終用途向けの受容可能性式に従って該実用可能な組合せから最適の実用可能な組合せを選択する工程であって、該最適の実用可能な組合せは、該特定最終用途向けの最適の受容可能性値を有し、該最適の実用可能な組合せに従って混合したときの該既知の着色剤成分および非着色剤成分は、色合わせされた塗装に適用したときに該対象塗装の外観に視覚的に合致する該色合わせされた塗料を製造する工程と
を含む。
【0007】
本発明はさらに、特定最終用途向けの色合わせされた塗料を製造するための色特性分析装置(color characterizing device)に関する。該装置は、
(i)該装置の分光光度計であって、対象塗装の対象部分上に該分光光度計を配置するための底部を有する分光光度計と;
(ii)該対象部分の対象色(L,a,bまたはL,C,h)値を計算するための手段と;
(iii)該装置のコンピューター中に位置するコンピューター使用可能記憶媒体であって、その中に存在するコンピューター可読プログラムコード手段を有し、該コンピューター可読プログラムコード手段は、
(a)該対象色空間値に合致するように組合せ選択基準に従って既知の着色剤の記憶リストから1つ以上の予備的な着色剤の組合せを該コンピューターにより選択させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(b)色合わせ基準に従ってそれぞれの該予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの該既知の着色剤の濃度を該コンピューターにより決定させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段であって、それぞれの該既知の着色剤の該濃度は、それぞれの該予備的な着色剤の組合せの色値を該対象色値に最適に色合わせさせるように最適化される手段と;
(d)該特定最終用途向けに開発された混合上および制御上の基準に従って最適化された1つ以上の実用可能な組合せを生じさせるように該色合わせされた塗料中の非着色剤成分の存在を考慮して該コンピューターにより該予備的な着色剤の組合せの量を決定(balancing)させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(e)該特定最終用途向けの受容可能性式に従って該実用可能な組合せから最適の実用可能な組合せを該コンピューターにより選択させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段であって、該最適の実用可能な組合せは、該特定最終用途向けの最適の受容可能性値を有し、該最適の実用可能な組合せに従って混合したときの該既知の着色剤成分および非着色剤成分は、色合わせされた塗装に適用したときに該対象塗装の外観に視覚的に合致する該色合わせされた塗料を製造する手段と
を含むコンピューター使用可能記憶媒体
を備える。
【0008】
本発明はさらにまた、特定最終用途向けの色合わせされた樹脂の製造方法に関する。該方法は、
(i)塗装特性分析装置の分光光度計を用いて一組の事前設定波長で対象基材の対象部分の反射率を測定して該対象部分の対象スペクトル曲線をプロットする工程と;(ユーザーによる工程)
(ii)該対象部分の該対象スペクトル曲線から該対象部分の対象色(L,a,bまたはL,C,h)値を計算する工程と;(工程の一部分はユーザーにより行われる)
(iii)該対象色値に合致するように組合せ選択基準に従って既知の着色剤の記憶リストから1つ以上の予備的な着色剤の組合せを選択する工程と;(装置/コンピューター中で)
(iv)色合わせ基準に従ってそれぞれの該予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの該既知の着色剤の濃度を決定して該既知の着色剤の1つ以上の中間の着色剤の組合せを生じさせる工程であって、それぞれの該中間の着色剤の組合せは、該対象色値に最適に色合わせさせるように最適化される工程と;
(v)該色合わせされた塗料中の非着色剤成分の存在を考慮して該中間の着色剤の組合せの量を決定(balancing)して該既知の着色剤の1つ以上の実用可能な組合せを生じさせる工程であって、それぞれの該実用可能な組合せは、該特定最終用途向けに開発された混合上および制御上の実施基準に従って最適化される工程と;
(vi)該特定最終用途向けの受容可能性式に従って該実用可能な組合せから最適の実用可能な組合せを選択する工程であって、該最適の実用可能な組合せは、該特定最終用途向けの最適の受容可能性値を有し、混合したときの該最適の実用可能な組合せ中の成分は、色合わせされた基材として形成されたときに該対象基材の外観に視覚的に合致する該色合わせされた樹脂を製造する工程と
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書に記載の用語は、E284−03aとして指定されたASTM刊行物中に定義されているとおりであり、この刊行物は、ペンシルバニア州ウェストコンショホッケンのASTMインターナショナル(ASTM International,West Conshohocken,Pennsylvania)から出版されている。
【0010】
照明角:試料法線と照明器軸とのなす角度(1991)。
【0011】
入射角:表面の1点に当たる光線とその点における表面への垂線とのなす角度。ビームを記述する場合、ビームの中心における光線の入射角。
【0012】
吸収係数α:ブーゲの法則P=P−αb(式中、bはサンプルの光路長である)に従って吸収媒体を通過するときの入射ビーム(P)からの放射エネルギーの吸収の尺度(1988)。
【0013】
反射角:表面の1点から反射される光線とその点における表面への垂線とのなす角度。
【0014】
目視角:試料の表面への法線と受光器の軸とのなす角度(1988)。
【0015】
外観:(1)物を認識する視覚経験の側面(1990)。(2)精神物理学的研究では、視覚刺激の分光的側面および幾何学的側面が照明・目視環境と統合されたときの知覚(1993)。
【0016】
人工昼光:自然昼光のスペクトルパワー分布に近いスペクトルパワー分布を有する人工光(1995)。
【0017】
非鏡面反射:鏡面反射方向から外れること(1995)。
【0018】
非鏡面反射角(aspecular angle):とくに指定されていないかぎり照明器平面内で、鏡面反射方向から測定される目視角(1995)。注:非鏡面反射角の正値は、照明器軸に向かう方向である。
【0019】
色の属性:(1)物体に対する外観モードである色相、明度、および飽和度。マンセル表色系では、マンセルヒュー、マンセルバリュー、およびマンセルクロマ。(2)イルミナントモードまたはアパーチャーモードでは、色相、輝度、および飽和度。
【0020】
基本色用語:完全に定着した言語で広く使用されている人類学的調査で見いだされた一群の11色の名称:白色、黒色、赤色、緑色、黄色、青色、褐色、灰色、橙色、紫色、桃色(1990)。
【0021】
特性分析:計測器のパラメーターもしくは性能または測定の方法を特定することを意味する。たとえば、外観測定では、パラメーターには、照明器および受光器の幾何学的および分光的性質が包含されうる。そして性能は、信頼性、精度、および偏りの尺度により特定されうる(1994)。
【0022】
彩度:(1)同一の明度の灰色からの色の偏位度を示すために使用される色の属性。
このほかに、マンセルクロマ(1989)を参照されたい。(2)次の量を表すC(CIE1976のL,a,b表色系またはL,u,v表色系)Cab=(a*2+b*21/2またはCuv=(u*2+v*21/2(1989)。
【0023】
(3)無彩色の量にかかわらず存在する純粋な有彩色の量を判定しうる視知覚の属性(1995)。
【0024】
CIE:国際照明委員会のフランス語の名称(Commission Internationale de l”Eclairage)に対する略号。
【0025】
CIEスペクトル三刺激値:n三刺激値またはCIE(XYZ)表色系における等エネルギースペクトルのスペクトル成分の等色関数。等色関数は、CIE1931表色系では、
【0026】
【数1】

【0027】
CIE1964補助表色系(1990)では、
【0028】
【数2】

【0029】
の記号が割当てられている。
【0030】
CIE1964(x10,y10)色度図:CIE1964補助標準観測者に対するn−色度図であり、横座標としてx10および縦座標としてy10を用いるCIE1964色度座標がプロットされる(1993)。
【0031】
色:物体色(1):形態、形、サイズ、位置、または光沢とは異なる物体外観の側面であり、入射光の分光組成、物体の分光反射率または分光透過率、ならびに観測者の分光応答、さらには照明および目視のジオメトリーに依存する(1987)。知覚色(2):白色、灰色、黒色、黄色、褐色、鮮赤色、帯赤深紫色のような色の名称によりまたはそのような名称の組合せにより記述することのできる視知覚の属性。知覚色は、色刺激のスペクトルパワー分布に大きく依存するが、刺激領域のサイズ、形、構造、ならびに観測者の視覚系の順応状態および観測者の類似観測経験にも依存する。
【0032】
(3)測色:三刺激値のような3つの値を用いる測色法により表される色刺激の特性。三刺激値は、絶対基準ではなく相対基準で導出されることもある。この場合、それらは、好適な絶対測光量の値で補完する必要があろう。色の外観は、それらの絶対三刺激値だけでなく、周囲の性質を含めてそれらが目視される条件にも依存するが;同一の絶対三刺激値を有する色は、同等な目視条件では同一に見える。スペクトルの異なる色刺激が同一の絶対三刺激値を有することもある。
【0033】
色差:知覚色差(1):より赤色、より青色、より明色、より暗色、より灰色、またはより透明のような用語で記述される二色間の差の大きさおよび特徴。計算色差(2):2つの精神物理学的色刺激間および三刺激値から計算されるそれらの成分間、または色度座標間および輝度率間の差の大きさおよび方向。特定の一組の色差式を利用する。
【0034】
色合わせ:(1)指定許容差内または合意許容差内で色がマッチしたときに存在する状態。コマーシャル色合わせと呼ばれることもある。許容差の準拠性は、機器によりまたは視覚的に決定しうる。準拠性試験が視覚的である場合、物理的色許容差標準を参照用に使用してもよい。(2)色が区別できないときに存在する状態;通常、法線方向の観測者であるとされる。厳密色合わせと呼ばれることもある(1988)。
【0035】
色合わせ:指定条件下で指定標準色と区別できないかまたはその指定許容差内にあるトライアル色を、選択、配合、調整、または他の手段で提供するための手順(1988)。
【0036】
補色:加法により好適には混合したときに特定の無彩色刺激を生じる色刺激。
【0037】
光沢:表面反射光が関与する反射率の角度選択性であり、反射されるハイライトまたは物体の画像がどの程度まで表面上に重なったように見えるかに関係する。(同様に、画像鮮明度光沢、ヘイズ(反射で)、艶、輝き、鏡面光沢を参照されたい。)
【0038】
方位外観変化:照明角または目視角の変化に伴う外観変化に関係する。
【0039】
隠蔽力:(1)特定の不透明性を生じることによりコーティング材料が被覆表面を隠蔽する能力。(2)基材が黒色である領域と白色である領域との間で特定のコントラストCを生じるように特定量の塗料が拡がりうる面積。
【0040】
イルミナント:そのスペクトルパワー分布により特定可能でありかつ物体を照明したときに物体の知覚色を変化させることのできる放射束。
【0041】
マッチ:指定条件下で指定標準色と区別できないかまたはその指定許容差内にあるトライアル色を、選択、配合、調整、または他の手段で提供することを意味する(1991)。
【0042】
メタリック:メタルフレークを含有する方位外観変化材料の外観に関係する。
【0043】
メタメリック:(1)同一の三刺激値を有するスペクトルの異なる物体または色刺激に関係する(1988)。(2)少なくとも1つの特定の分光組成で照明して特定の観測者が観測したときにマッチする異なる分光光度曲線を有する物体に関係する。(同様に、パラメリックを参照されたい)(1988)。
【0044】
メタメリズム:特定の照明器下で特定の観測者が見てマッチしかつ分光反射率または分光透過率が可視波長で異なる2つの試料の特性。同様に、イルミナントのメタメリズム、観測者のメタメリズム、パラメリズムを参照されたい。所要の差が存在すると、2つの試料は、異なる照明器下で見ても異なる観測者が見てもマッチしないであろう。類似の考察は、別の観測者ではなく特定の観測者が見てマッチする2つの光にもあてはまる。メタメリズム指数(1991)。
【0045】
メタマー:(1)同一の刺激値を有するスペクトルの異なる物体または色刺激(1988)。
【0046】
反射率ρ:所与の条件における反射された放射束または光束と入射束との比。反射率という用語は、多くの場合、一般的な意味でまたは反射率係数の略語として使用される。文脈から上記の定義がとくに必要とされないかぎり、そのように使用されるものとみなしうる(1989)。
【0047】
色調:(1)黒色の染料または顔料を含めて染料または顔料の混合物により生成される色。同様に、色調v;色味n;色味vを参照されたい。(2)マッチさせるために他の染料を添加しなければならないなどのような参照染色物との色差の表現。(3)参照色とわずかに異なる色。「色調」は、着色剤技術の面からみて色および色差を記述するために用いられる用語の中で最も使われ過ぎているものであり、「色」に対する一般的な同義語として使用される場合さえある。
【0048】
色調:標準に対してよりよく色合わせするように試験試料の色を調整することを意味する。色味も同様に(1990)。
【0049】
分光:量の変化を伴う場合(1):量が波長の関数である記述子;放射量に関する場合(2):指定波長における単色放射エネルギーまたは拡大解釈されて指定波長の周りの狭い波長帯域内の放射エネルギーに関係する。
【0050】
分光光度法:波長の関数としての反射または透過の定量的測定。
【0051】
鏡面反射:拡散を伴わずに鏡面反射角で物体の表面から反射される流束に関係する(1988)。
【0052】
鏡面反射角:n反射角が入射角に等しくかつその反対側にある。方位外観変化の現象の場合、この定義では、照明器は小さい角度範囲を照明するものとみなされる(1995)。
【0053】
色味:白色の顔料または塗料を有彩色の顔料または塗料と混合することにより生成される色。したがって、有彩色の色味は、有彩色よりも明色でありかつ飽和度が低い。(色調を参照されたい)
【0054】
三刺激値色:色にマッチさせるのに必要な3つの特定の刺激の量。CIE表色系では、それらに、記号X、Y、およびZが割り当てられる。(同様に、CIEスペクトル三刺激値を参照されたい。)
【0055】
目視条件:眼位置における試料の限界視角、光源と試料と眼の幾何学的関係、光源の測光的および分光的特性、試料を取り囲む視野の測光的および分光的特性、ならびに眼の順応状態をはじめとする目視観測を行う条件。
【0056】
電磁波の波長X:電気ベクトルが同一位相を有する最近接点間の伝播方向の距離(同様に、補色主波長、主波長を参照されたい)(1990)。
【0057】
本発明は、典型的な自動車衝突修理工場環境において自動車車体の非損傷部分のような対象塗装に迅速に色合わせさせるのに適している。本発明の方法を用いれば、衝突修理工場で典型的に遭遇するさまざまな条件下でさえも色合わせプロセスが実質的に自動化される。典型的な衝突修理工場では、自動車車体の損傷部分は、修理され、サンダー仕上げされ、下地処理され、その後、吹付け、浸漬塗装、ローラー塗装、または刷毛塗りにより、コーティング組成物が適用される。コーティング組成物の色を自動車車体の非損傷部分にマッチさせることにより、ごく少量の色合わせされた塗料を使用して自動車車体の修理部分を塗装することができる。その結果、自動車の修理コストを最小限に抑えて、しかも自動車車体の修理部分を自動車車体の非損傷部分に視覚的に合致させることができる。
【0058】
大まかに言えば、本発明の方法では、対象塗装の色を分光光度計(好ましくは携帯型)により読み取り、スペクトル測定結果をコンピューターに転送し、顔料混合物モデルを用いて最適塗料処方を決定し、そして工場で秤量および吹付けが行えるようにプリントアウトするかまたはコンピュータースクリーン上に表示する。測定と処方の受取りとの間の工程はすべて、ユーザーには見えない。
【0059】
本発明は好ましくは再仕上げ自動車車体工場で使用されるが、同様に、プラスチック基材または着色プラスチック基材;船舶用基材(たとえば船殻);アルミニウム基材(たとえば航空機の機体)の色合わせコーティング;建築用色合わせコーティング;紡績繊維、布、および不織布;ならびに用紙の色合わせコーティングのように他の好適な分野で色合わせに使用することもできる。同様に、実験室環境でそれほど熟練していない労働力で使用することも可能である。本発明に係る装置は携帯性があるため、本発明は現場で使用するのに理想的である。
【0060】
本発明に係る方法は、対象塗装の対象部分に外観が視覚的に合致する特定最終用途向けの色合わせされた塗料を製造することに関する。いくつかの特定用途としては、自動車車体上に適用される自動車再仕上げコーティング、自動車OEM仕上げ材、建築用コーティング、工業用コーティング、粉末コーティング、航空機用コーティング、船舶用コーティング、商用装具用および住宅装具用コーティングなどが挙げられよう。以上のものには、スチール、アルミニウム、木材、プラスチック樹脂、ガラス、紙、紡績繊維、布、不織布、およびセメントのようなさまざまな基材上に適用されるコーティングが包含される。
【0061】
本発明に係る方法の工程(i)には、適用される対象塗装の対象部分の反射率を本発明に係る塗装特性分析装置の分光光度計により測定することが含まれる。ミシガン州グランドヴィルのX−ライト社(X−Rite,Grandville,Michigan)製のモデルMA68IIまたはモデルSP64のような任意の好適な分光光度計を使用することができる。種々の形状およびサイズのコーティングされる基材表面上に容易に配置することができるという理由で、携帯型分光光度計が好ましい。所望により、対象塗装のいくつかの部分で反射率を測定して対象塗装の反射率を平均することができる。典型的な分光光度計では、既知強度の光ビームを対象部分に向けて方向付けることが可能であり、そして対象部分からの反射を事前設定波長において少なくとも1つ、好ましくは3つの非鏡面反射角で連続的に測定する。他の選択肢として、既知強度の光ビームを対象部分に向けて少なくとも1つ、好ましくは3つの入射角で連続的に方向付けること可能であり、次に、照明角に依存して異なる非鏡面反射角で測定値を提供するように対象部分からの反射を事前設定波長において単一検出デバイスにより測定する。方位外観変化色は、複数の角度で、好ましくは3つ〜5つの角度で測定しなければならない。ベタ色の場合、単一の非鏡面反射角で十分であり、典型的には45度である。ベタ色に対して慣用される方法では、単一角度で照明し、そして積分球を用いて対象部分から全角度で反射された光を捕獲し、拡散反射率を測定する。拡散照明を行って単一角度で測定する逆の方法は、等価な結果を生じる。対象部分がテクスチャー加工された表面を有する場合、拡散反射率が好ましい。
【0062】
色は、長い間、分光光度計を用いることにより測定されてきた。分光光度計により、電磁スペクトルの可視領域にわたり各波長で反射された光のパーセントが測定される。典型的には、これらの読取りは、400nm〜700nmにわたって10nmの間隔で行われる。波長の関数としてパーセント反射率をプロットしたものは、「スペクトル曲線」と呼ばれる。たとえば、表1は、X−ライトMA68II(X−Rite MA68II)分光光度計を用いて400ナノメートル〜700ナノメートルの範囲にわたり10ナノメートルの間隔で可視スペクトル内の波長で測定された対象部分の反射率を示している。ここでは、法線に対して45°で対象部分を照明し、法線角で反射率を測定した。ベタ色(非フレーク色または非方位外観変化色、たとえば、メタリックフレークのない色)の場合、ベタ色特性を測定するには、典型的には1つのスペクトル曲線だけで十分である。他の一般的な測定ジオメトリーは、拡散照明と0°または8°目視との組合せ、またはその逆である。メタリック色(すなわち方位外観変化色)を有する対象部分をマッチさせる場合、追加角度で反射率測定を行う必要があろう。ASTM E−2194には、鏡面反射から外れて測定する場合、15°、45°、および110°の3つの角度が推奨されている。DIN6175−2には、すべてこれと同じ角度範囲内で5つまでの角度が推奨されている。X−ライトMA68II(X−Rite MA68II)により、15°、25°、45°、75°、および110°における測定値を提供することができる。
【0063】
本発明に係る方法の工程(ii)には、対象部分の対象スペクトル曲線から対象部分の対象色値を計算することが含まれる。人間の観測者が所与の照明条件下で色を見る方法の指標となる数までスペクトル値を減少されるべく、いくつかの代替式が作成されてきた。これらは、一般に、L,a,b値またはL,C,h値として表される。
【0064】
スペクトル曲線から、曲線のピークにより表される色の色相を決定することができる。たとえば、青色のスペクトル曲線は、青色波長にピークを有するであろう。明色は、スペクトルの全域でより多くの光を反射するであろう。そしてより暗色の色は、より少ない光を反射するであろう。高彩度の色は、適度にシャープなピークを有し、他の波長でかなり少ない光を反射するであろう。低彩度の色は、ピークとトラフとの差がほとんどない曲線を有するであろう。灰色は、非常にフラットである傾向を有するであろう。したがって、色の定性的評価は、スペクトル曲線から行いうる。しかしながら、人間の観測者が見る色は、色のスペクトル曲線に依存するだけでなく、目視される光源の分光特性および観測者の分光感度にも依存する。人間の眼は、色覚に関して、赤色センサー(X)、緑色センサー(Y)、および青色センサー(Z)の3つのセンサーを有する。1931年、国際照明委員会(CIE)は、色、光源、および観測者の分光特性を考慮して、三次元X,Y,Z空間内への色のマッピングを標準化した。しかしながら、その三刺激値X,Y,Zから色を視覚化するのは依然として困難である。また、これらの値からは、色について視覚的に均一な三次元のマッピングは得られない。三刺激値X,Y,Zは、以下の行列方程式から計算することができる。
【0065】
【数3】

【0066】
以上のX、Y、およびZ三刺激値は、L,a,b値として知られる「均等色空間」に数学的変換を行ってより便利に表現することができる。これについては、(非特許文献1)に記載されている。前述の参考文献は、参照により結果として本明細書に援用されるものとする。色のL,a,b値は、色の位置を記載する。各色のL,a,b値は、デカルト座標の色空間の三次元レンダリングであり、明度軸(L)、赤色−緑色軸(a)、および黄色−青色軸(b)は、次式により表される。
=116(Y/Y1/3−16.....(1)
=500−[(X/X1/3−(Y/Y1/3].....(2)
=200−[(Y/Y1/3−(Z/Z1/3].....(3)
【0067】
X/X、Y/Y、およびZ/Z>.008856の場合(10°のD65の場合、X=94.825、Y=100.000、およびZ=107.381)。
【0068】
X/X、Y/Y、Z/Z<0.008856の場合、L=903.3(Y/Y)。
【0069】
およびbの式中の立方根関数は、以下の対応する関数で置き換えられる。
f(X/X)=7.787(X/X)+0.1379
f(Y/Y)=7.787(Y/Y)+0.1379
f(Z/Z)=7.787(Z/Z)+0.1379
【0070】
以上の式中、X、Y、およびZは、所与のイルミナントの完全白色の三刺激値であり、X、Y、およびZは、評価される色の三刺激値である。したがって、L,a,b値は、色の分光反射率曲線を光源(典型的にはイルミナントD65)の分光分布および人間の眼の受容器の分光感度(いずれもASTM規格E−308に列挙された表に発表されている)で数学的に積分することにより得られる。以上の積分工程を経て、3つのパラメーター(一般的にはX、Y、およびZで参照される)を介して色の特性分析が可能になる。以上の数学的変換を用いれば、X,Y,Zをより理解し易いL,a,b値に容易に変換することできる。
【0071】
以下の表1は、対象部分の分光反射率および色のL,a,b値を示している。L=30.62は、中間色〜暗色であったことを示している。1つの、49.87は、それが公正に飽和赤色およびb=28.57だったと必要とすることを示唆する、それが黄色色調を有したと必要とすることを示唆する、赤色。
【0072】
【表1】

【0073】
L,a,b値に対する許容しうる代替値は、L,C,h値である。この値は、デカルト座標で表された色値を円柱座標に変換して、対象色と、CIE94式またはCMC式を用いて対象カラーにマッチさせた色と、の色差(ΔE)のより正確かつ均一な表現を提供することにより得られる。これらの式は公知であり、(非特許文献2)(参照により本明細書に援用されるものとする)に開示されている。CIE94式では、L,a,b値が利用され、それらは、下記の式を用いてL,C,h値に変換される。
【0074】
対象塗装および色合わせされた組成物のL,a,bは、式1、2、および3を用いて計算することが可能であり、色差ΔL、Δa、Δbは、対象塗装と色合わせされた塗装との差を考慮に入れて決定される。これらの差は、異なる光源に対して決定可能である。L,C,h値では、「C」は、以下の式:
【0075】
【数4】

【0076】
により決定され、「h」値は、以下の式:
色相=h=tan−1(b/a) (5)
により決定され、hはまた、色相角としても知られる。
【0077】
対象と色合わせされた塗装との色差は、次のように表される。
ΔL=L−L
Δa=a−a
Δb=b−b
ΔC=C−C
(以上の式中の下付き添字sおよびbは、対象および色合わせされた塗装を意味する)。
【0078】
対象と色合わせされた塗装との全色差ΔEは、下の式により与えられる。
【0079】
【数5】

【0080】
(メトリック色相差とも呼ばれる)。
【0081】
対象と色合わせされた塗装との色差を表す一般式は、下の式により与えられる。
【0082】
【数6】

【0083】
L,C,h値を得るために式7を解くいくつかの代替式が作成されている。たとえば、以下に記載されている周知のCIE94式およびCMC式が挙げられる:
【0084】
【表2】

【0085】
対象部分の反射率の測定値から色のL,a,b値またはL,C,h値およびΔE値を得るために、また色差に対するΔEを得るために、さらに他の式が作成済および作成中であることに留意すべきである。本発明に係る方法は、なんら特定の式に拘束されるものではない。
【0086】
対象部分の色の対象値が決定された後、本発明に係る方法の工程(iii)には、該対象カラー値にマッチするように組合せ選択基準に従って既知の着色剤の記憶リストから1つ以上の予備的な着色剤の組合せを選択することが含まれる。
【0087】
着色剤の前述の記憶リストを作成する方法は、多数存在する。記憶リストには、好ましくは、色合わせされた組成物を製造するのに必要となりうる顔料、分散体、色味材、染料、メタリックフレーク(着色アルミニウムフレーク)、またはそれらの組合せのような着色剤がすべて含まれる。各着色剤は、光学係数のデータベースに関連付けられる。一般的には、対象部分のスペクトル曲線にマッチするスペクトル曲線を生成する既知の光学係数のいくつかの着色剤の混合物中の濃度を調整することにより色合わせされた塗料を製造することができる。光学係数には、典型的には、顔料混合物濃度をその混合物のスペクトル曲線に関連付ける顔料混合物モデル(たとえば、クベルカ・ムンクモデルおよび放射伝達理論に基づく他のモデル)で使用しうる吸収係数(K)および散乱係数(S)が含まれる。
【0088】
周知のクベルカ・ムンクモデルでは、完全隠蔽時の反射率が着色剤の吸収係数および散乱係数に関連付けられ、典型的には可視スペクトルにわたり事前設定波長間隔で、典型的には10nmの間隔で適用される。
K/S=(1−R)/2R (8)
【0089】
式中、K=吸収係数(コーティング材料の内部吸収率の指標である)。
【0090】
S=散乱係数(コーティング材料の単位厚さを通過するときに散乱される光の部分である);および
R=コーティング材料の完全隠蔽時の反射率。対象部分上のコーティングの10ナノメートル間隔の各波長で決定された反射率値を表1に示す。着色剤の混合物のK/S値は、次式により表すことができる。
(K/S)mix=(c+c+.....)/(c+c+.....) (9)
【0091】
式中、c=濃度であり、そして1,2は、着色剤混合物中に存在する着色剤1,2などを意味する。
【0092】
典型的には、白色着色剤(二酸化チタン顔料)のような明色着色剤を含有する試験コーティング組成物をデータベースの作成に使用することができる。パネル自体の色(典型的には灰色着色)を完全に隠蔽するのに十分な乾燥コーティング厚さになるように、白色着色剤から調製された試験コーティング組成物を試験パネル上に吹き付けた。次に、可視スペクトル内において事前設定波長間隔で、典型的には、400nmから出発して700nmまで10ナノメートル(nm)間隔で、白色コーティングの反射率を測定した。ミシガン州グランドヴィルのX−ライト社(X−Rite,Grandville,Michigan)により供給されるモデルMA100B、MA68II、またはSP64のような任意の従来の分光光度計を用いて、反射率を測定することができる。そのような反射率(波長の関数として)は、その白色コーティングの分光反射率またはスペクトル曲線と呼ばれる。測定反射率(R)を式8に代入して各波長におけるK/Sを計算した。1.0の値を各波長における白色着色剤の散乱係数(S)に割り当てることが便利である。したがって、S=1.0を代入すると、Kの値が得られる。
【0093】
たとえば、以下の表2には、10nm間隔で400nm〜700nmの範囲内の波長で測定された白色試験コーティング組成物の反射率が報告されている。白色コーティング組成物で使用された着色剤は、二酸化チタンであった。表2において、白色コーティングの測定反射率は、420nmにおいて77.28%である。R=0.7728を式8に代入して、K/S=0.0334を得た。S=1.0であるので、Kは0.0334になるであろう。同様に、各波長でKを計算することができる。K/Sに対する結果を表2の「100%白色剤、K/S」欄に報告する。白色剤に対する個々のK値およびS値を後記の表3に示す。
【0094】
50%黒色剤と50%白色剤との混合物を含有するコーティング組成物を塗料の状態に調製し、吹き付け、そして各波長でその反射率を測定した。100%黒色剤の他の塗料も同様に吹き付けて測定した。黒色コーティング組成物は、カーボンブラックで顔料着色したものであった。これらの測定値を、式8により計算された対応するK/S値と共に、表2に報告する。
【0095】
【表3】

【0096】
着色剤+白色剤の二元混合物の場合、式9は、次のように書くことができる:
(K/S)mix=(c+c)/(c+c) (10)
【0097】
420nmにおいてKおよびSの値を式(10)に代入すると、次のようになる。
(K/S)mix=(0.0334c+c)/(c+c
【0098】
420nmにおいて、50/50混合物(c=c=0.5)は、R=0.4248(上記の表2に示されるとおり)を有し、100%黒色剤は、R=0.0031を有する。これらを式8に代入すると、それぞれの濃度(50/50混合物および100%黒色剤)の(K/S)mixが得られる。次に、これらの(K/S)mix値を式8に代入すると2つの式を得ることができ、これらを2つの未知数KおよびSについて同時に解くとK=0.3568およびS=0.0022を得ることができる。同様に、黒色剤のKおよびSを各波長で決定することができる。
【0099】
同一の方法により、使用される各着色剤のKおよびSを決定することができる。これらを、いくつかの他の着色剤のK値およびS値と共に、以下の表3および4に示す。実際には、各着色剤と白色剤とのいくつかのブレンドを周知の統計学的手法と併用してKおよびSの値を決定しうることに留意されたい。
【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
対象色値に合致する1つ以上の予備的な着色剤の組合せを既知の着色剤の記憶リストから選択する組合せ選択基準は、それらの実用性(すなわち、そのような予備的な組合せを調製することが実用的であるか?)に関する基準である。たとえば、使用される着色剤が白色剤(W)、黒色剤(B)、ベンガラ(RO)、黄色剤(Y)、赤色剤1(R1)、赤色剤2(R2)、赤色剤3(R3)であると仮定すると、5種顔料マッチを有することが望ましい。本質的なことではないが、試みられる各着色剤の組合せには、WおよびBを含めるようにするのが慣例である。WおよびBと共に一度に3種ずつ残りの5種の着色剤のすべての組合せを取り出してマッチを試みる。そのような方法では、以下のような10通りの実現可能な5種顔料組合せ選択基準が得られる:
W、B、RO、Y、R1
W、B、RO、Y、R2
W、B、RO、Y、R3
W、B、RO、R1、R2
W、B、RO、R1、R3
W、B、RO、R2、R3
W、B、Y、R1、R2
W、B、Y、R1、R3
W、B、Y、R2、R3
W、B、R1、R2、R3
【0103】
たとえば、対象部分が赤色である場合、予備的な組合せに緑色を含めてはならない。なぜなら、その組合せでは、2種の補色着色剤によるシェーディング(調整)を伴うからである。しかしながら、赤色および緑色を一緒に使用して色を非飽和にしたり暗色化したりすることができる。同一の結果は、黒色剤(一般的にはそれほど費用のかからない着色剤である)を用いて得ることができる。したがって、通常の方法では、補色着色剤を用いるシェーディングは回避される。
【0104】
ベタ色(非フレーク)の場合、4種着色剤組合せ選択基準から開始して、得られる色合わせが5種または6種の着色剤を用いて改善されるかを確認することが好ましい。好ましくは、顔料の数が少ないほど、得られる予備的な組合せは、より実用的なものになる。なぜなら、典型的な再仕上げ車体工場では、5種もしくは6種着色剤自動車塗料を秤量するよりも4種着色剤自動車塗料を秤量するほうが、時間がかからないからである。
【0105】
したがって、たとえば、表2、3、および4に示される記憶リストから以下のように選択された以下の表5に示される処方は、前述の組合せ選択基準を満足し、しかも対象の色値および反射率によくマッチするようになるであろう。対象の色値および反射率にマッチするように記憶リストから組合せ選択基準に基づいて選択された3つの予備的な着色剤の組合せ(処方1、2、および3)を表5に報告する。
【0106】
【表6】

【0107】
以下のグラフは、処方1、2、および3の予備的な着色剤の組合せを含有する色合わせされた塗料を用いて得られた理論スペクトル曲線(データ点を有する線)を、対象塗装の対象部分から得られた測定スペクトル曲線(実線の滑らかな線)と比較したものである。
【0108】
【表7】

【0109】
【表8】

【0110】
【表9】

【0111】
既知の着色剤の記憶リストから予備的な着色剤の組合せを選択した後、本発明に係る方法の工程(iv)では、それぞれの予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの既知の着色剤の濃度を色合わせ基準に従って決定する。この際、それぞれの既知の着色剤の濃度は、それぞれの予備的な着色剤の組合せの色値を対象色値に最適に色合わせさせるように最適化される。
【0112】
予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの既知の着色剤の濃度を得るべく使用しうる色合わせ基準は、(非特許文献3)(参照により本明細書に援用されるものとする)(これ以降ではアレン(Allen)文献Iと記す)に記載されている。負の濃度を用いる処方を削除するように色合わせ基準を構成しうることに留意されたい。対象塗装と、色合わせされた塗料から得られる色合わせされた塗装と、を正確に色合わせさせるために、予備的な着色剤の組合せ中の着色剤の濃度により、対象塗装のスペクトル曲線によくマッチするスペクトル曲線が生成されなければならない。以上の内容は、好適な顔料の組合せおよび濃度を推測して式9を用いて各波長で混合物のK/Sを計算する単純な試行錯誤法により達成することができる。その際、式8を用いて混合物のK/Sをその反射率(R)に変換することができる。マッチ度を調べるために、得られたスペクトル曲線を対象スペクトル曲線と比較することができる。曲線の一般的形状が類似しているのであれば、適正な着色剤が選択されたことになる。その際、互いに曲線をさらに近づけるように濃度を調整しなければならない。マッチのL,a,b値を計算することにより、スペクトル曲線マッチの良さを判断することも可能である。既知の着色剤混合物と対象塗装とのL,a,b値の差が小さくなるまで、そのような反復プロセスを繰り返すことができる。しかしながら、そのような方法は、手間や時間がかかるであろう。さらに、それはオートメーションには適する。色合わせ式を変換した上述のAllen文献I中の以下の色合わせ式を用いれば、KとSを分離せずに組み合わされたK/S比を用いて計算することにより、それぞれの予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの既知の着色剤の濃度を直接求めることができる。
【0113】
【数7】

【0114】
式11は、テキスタイルのような基材上の染料混合物に対して良好に機能する。なぜなら、染料は、典型的には、高吸収係数(K)かつ低散乱係数(S)を有し、一方、染料が適用される基材は、典型的には、高散乱係数(S)かつ低吸収係数(K)を有するからである。すなわち、式11は、多量の高散乱性二酸化チタン顔料とはるかに少量の強吸収性顔料とを含むパステル調塗料に有効であろう。
【0115】
式11により提供される濃度は、選択される着色剤の組合せがノンメタメリックマッチを考慮したものである場合に有用である。選択される着色剤の組合せがメタメリックマッチだけを許容するものである場合、式11により提供される濃度は、対象色との色差が許容しうる程度に低いメタメリックマッチになるように逐次調整可能である。しかしながら、(非特許文献4)(これ以降ではアレン(Allen)文献IIと記す)に報告されているさらに他の方法を非パステル色に使用することができる。
【0116】
さらに他の方法は、(非特許文献5)(これ以降ではロドリゲス(Rodrigues)文献と記す)により以下の行列方程式で提供された。
【0117】
【数8】

【0118】
式中、
ψj=Kj−K1−θs(Sj−S1) 各波長ごと、
θt=(K/S)t, および
θ1=ψj ただし Kj=Sj=0。
【0119】
下付き添字jは、予備的な着色剤の組合せ中の一群の着色剤中の着色剤jを意味し、1は、予備的な着色剤の組合せ中の着色剤1を意味し、そして下付き添字のtは、対象塗装を意味する。
【0120】
選択される着色剤がノンメタメリックマッチを考慮したものである場合、式12は、よく色合わせした濃度を提供する。しかしながら、式11と同様に、選択される着色剤がメタメリックマッチだけを考慮したものである場合、式12は、近似マッチだけを提供する。式12のマッチを改善するために、以下の行列方程式を用いて許容しうるマッチを提供するように、色合わせされた組成物中の着色剤の濃度を逐次調整可能である。
【0121】
【数9】

【0122】
式13から得られる濃度調整は、式12から得られる濃度に適用される。その際、これらの新しい濃度を式9に代入して各波長で新しい(K/S)mixを計算し、それをさらに式8で使用して新しいスペクトル曲線を生成する。新しいスペクトル曲線と対象のスペクトル曲線との色差は、前述の式Aを用いて計算される。色差が特定最終用途で許容しうる程度に小さくなるまで、この方法を逐次反復する。
【0123】
先に記載した色合わせ基準を用いて、コンピュータープログラムにより、種々の予備的な着色剤の組合せを選択し、それぞれのそれらの予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの着色剤の理論濃度を得ることが可能である。式12および13の解は負の濃度を提供する可能性がある。たとえば、先に示した黄色色調赤色の例にマッチさせるように試みて青色顔料を含めた場合、それをマッチさせうる唯一の方法は、負の量の青色(黄色の補色)を使用することであろうが、それは物理的に不可能であるので、そのような組合せを自動的に削除するように色合わせ基準を構成することができる。式12および13で表される色合わせ基準により決定される処方1、2、および3の予備的な着色剤の組合せ中の着色剤の理論濃度を以下の表6に示す。
【0124】
【表10】

【0125】
類似の方法によりメタリック色をマッチさせることもできる。その際、一般的には、白色剤の代わりにアルミニウムフレーク分散体を基準にして着色剤の吸収係数および散乱係数を決定する。それぞれの測定角においてそれぞれの顔料のK値およびS値を独立して決定しなければならない。非常に明るい色のときに反射率(R)が1.0を超えて、二乗項が原因で式8が不明確になるおそれのある低い非鏡面反射角(たとえば、15または25度)では、問題を生じる可能性がある。すなわち、2つの異なるR値で同一のK/S値が得られる可能性がある。反射率(ASTM E−284では反射率係数と呼ばれる)は、特定の測定角における色サンプルの反射率をそれと同一の測定条件における完全拡散体の反射率と比較して決定されるので、Rの値は、1.0よりも大きくなる可能性がある。プレスされた硫酸バリウムは、完全拡散体の良好な近似物である。これらの鏡面反射角近傍では、光輝アルミニウムフレークは、それと同一の角度で測定された完全拡散体の明度を超える可能性がある。メタリックフレークを含む予備的な着色剤の組合せ中の濃度を決定する方法の1つは、米国特許公報(特許文献1)の請求項8、さらには第9欄,第55行〜第10欄,第61行および第18欄,第9行〜第28欄,第5行に提供されている。方位外観変化色に対するさらに他のモデルについては、(非特許文献6)および(非特許文献7)に論じられている。以上の参考文献はすべて、参照により本明細書に援用されるものとする。
【0126】
所望のフィルム特性を達成するように色合わせされた組成物の量を決定する必要があるので、本発明に係る方法の工程(v)には、色合わせされた塗料中の非着色剤成分の存在(たとえば、バインダーポリマーまたは溶媒)を考慮して予備的な着色剤の組合せの量を決定して特定最終用途向けに開発された混合上および制御上の基準に従って最適化された1つ以上の実用可能な組合せを生じさせることが含まれる。
【0127】
望まれる特定の最終用途に基づいてコーティング組成物中の種々の成分のバランスをとることについては、コーティング技術分野で十分に理解されている。たとえば、家屋の内装壁上に適用される壁コーティングのような内装用途のコーティングの耐久性要件は、太陽光のUV線に暴露される家屋の外装壁に適合される屋外コーティングの耐久性要件ほど重要ではない。同様に、本質的に異なる地理的位置で使用されるコーティング組成物(たとえば、カナダのような低温湿潤気候で使用されるもの)のコーティング特性要件は、高温乾燥気候(たとえば、サハラ砂漠)で使用されるものとはかなり異なるであろう。他の例としては、自動車用途で使用されるコーティングの接着特性は、家電製品をコーティングするのに使用されるコーティングの場合とは異なるであろう。コーティング技術分野の当業者は、特定最終用途に適合する業者自体の混合上および制御上の基準を経験的に開発している。
【0128】
したがって、得られるコーティング組成物に適用特性および良好なコーティング特性(たとえば、基板表面上に適用されたコーティング組成物の層をコーティングの状態に硬化させるときの接着性、光沢、および耐久性)をもたせるように、他の非着色剤成分を存在させることが必要である。「橙皮」表面を生じたり垂直表面上の垂下を生じたりすることなく吹付け後にさらに流展を起こすようにコーティングの適用特性を改善すべく、典型的には、コーティング組成物中に溶媒のような非着色剤成分が含まれる。
【0129】
たとえば、あまりにも少量のフィルムでは、コーティングにより得られる隠蔽に悪影響を及ぼす可能性があり、あまりにも多量のフィルムでは、コーティングの状態に乾燥させるときに塗料層の垂下を生じる可能性がある。また、単一被覆隠蔽では斑点外観を生じるおそれがあるので、自動車再仕上げ工は、二重被覆で基材を覆う自動車塗料のほうを好む。しかしながら、三重被覆以上で適用すると、自動車の修理に必要とされる労務費および塗料費が増大するので、望ましくない。
【0130】
下側基材に対する得られたコーティングの接着性などを改善するために、バインダーポリマーのような他の非着色剤成分もまた、コーティング組成物に組み込まれる。また、コーティング組成物の揮発性有機物含有率(VOC)を低下させるなどのような制御要件を満足するために、コーティング組成物中の溶媒のような非着色剤成分のバランスをとることが望ましい。使用される他の非着色剤成分としては、UV遮蔽剤、耐久性を改善するためのヒンダードアミン光安定化剤、レオロジー調整剤、流動剤、接着促進剤、触媒、およびクレーター防止剤のような添加剤が可能である。一般的な要件のさらに他の例は、コーティング組成物中の固形分を制御することであろう。コーティング固形分レベルは、フィルム作製速度、レオロジー、VOC、およびコーティング組成物のコストような特性を変化させる。典型的には、固形分は、より狭い範囲に制限され、たとえば、高固形分再仕上げコーティング組成物のコーティング固形分は、約60%±1%である。
【0131】
コーティングの固形分パーセントは、次式により表すことができる。
100(ΣSW/ΣTW) (14)
式中、コーティング組成物中の各成分SW〜SWの固形分重量を合計し、次に、個々の成分TW〜TWの全重量すなわち(個々の成分の固体部分および液体部分(使用する場合)を含む)の合計で割る。
【0132】
現内容で使用される場合、たとえコーティング組成物中で液体形態にあったとしても、得られるコーティングの一部を形成する成分であればすべて、固形分重量(SW)に含まれることは、当業者であればわかるであろう。たとえば、低い分子量であることが多くかつコーティング組成物中で液体として存在しうる架橋剤は、コーティング組成物中の架橋剤が適用後に架橋したときにコーティング構造の一部になる。したがって、所望の固形分要件(使用される溶媒の量ならびに/または使用されるバインダーポリマーの量およびタイプ)、たとえば、低固形分または高固形分の色合わせされた塗料に対する固形分要件は、前述の式14を用いて取得しうる。
【0133】
色合わせされた塗料は、米国の環境保護局のような種々の政府機関により折に触れて公布されるマッチコーティング組成物のVOC制限のような環境上の制御要件を満足することが必要であろう。種々の法令および規制により典型的に指定される制限の1つは、特定量のコーティング組成物中に含まれる溶媒の重量を制限することである。VOCは、通常、コーティング組成物1リットルあたりの溶媒のキログラム数として表されるか、または、米国では、コーティング組成物1ガロンあたりの溶媒のポンド数として表現することができる。そのような制約は、使用目的に応じて異なりうる。前述のVOC制約は、次式により表すことができる。
ΣS/V (15)
式中、各成分1キログラム中の溶媒の重量S〜Sを合計し、リットル単位で表される最終コーティング組成物の体積で割る。したがって、特定最終用途向けの要件を満足するのに必要とされる非着色剤成分のタイプおよび量に基づいて色処方物の量を決定するように適切に作成された式を用いることにより、色合わせされた塗料に対するさらに他の要件をプログラムしうることは自明である。
【0134】
以下の表7は、特定最終用途向けの混合上および制御上の基準を満足するのに必要とされる量のバランス成分を組み込むことにより実用可能な着色剤の組合せ(処方1、2、および3)中の予備的な着色剤の組合せを最適化すべく用いられた以上の量決定工程の結果を示している。
【0135】
【表11】

【0136】
本発明の方法の工程(vi)には、特定最終用途向けの受容可能性式に従って実用可能な組合せ(上記の表7の処方1、2、および3)から最適の実用可能な組合せを選択することが含まれる。ここで、最適の実用可能な組合せは、特定最終用途向けの最適の受容可能性値を有し、最適の実用可能な組合せに従って混合したときの既知の着色剤成分および非着色剤成分は、色合わせされた塗装に適用したときに対象塗装の外観に視覚的に合致する色合わせされた塗料を製造する。
【0137】
特定最終用途向けの前述の受容可能性式は、次のように表される。
受容可能性値=Σ受容可能性係数重み (16)
【0138】
特定最終用途に応じて、受容可能性値の計算で使用される以下の受容可能性係数のそれぞれに対して、重みを経験的に求めることができる。それぞれのそのような因子に割り当てられた重みを掛けた受容可能性係数の総和をとることにより、前述の式16に従って色合わせされた組成物の受容可能性値が得られる。特定最終用途に対する受容可能性値が小さいほど、実用可能な組合せは、より最適なものであろう。
【0139】
それぞれの実用可能な着色剤の組合せに対して、以下の受容可能性係数のいくつかを計算することができる:
1.色差:この因子は、対象塗装と、それぞれの実用可能な着色剤の組合せ(処方1、2、および3)に従って配合されたコーティング組成物から得られる色合わせされた塗装と、の色差の度合に関する。文献に発表されたいくつかの色差式を使用することができる。1994年、国際照明委員会(CIE)は、前述の「CIE94式」または「CMC式」と現在呼ばれるメトリック色差を推奨した。これらの式は、平均昼光を示す所与の照明条件下で、典型的にはイルミナントD65を用いて、法線方向の観測者により観測される色合わせの確度の数学的推定値を提供する。
【0140】
2.メタメリズム:1つのイルミナント下では、マッチは許容しうるものになるが、別のイルミナント下では、または異なる観測者が目視した時には、許容しえないものとなりうる。メタメリズム指数は、2つの異なるイルミナント下における色差を算出したものである(通常、一般的な白熱灯または蛍光灯でありうるD65とA)。これらの二色差のベクトル差は、メタメリズムの指標として計算される。次式を用いてメタメリズムを決定することができる。
【0141】
タンネンバウム(Tannenbaum)メタメリズム指数は、次式により決定することができる。
【0142】
【数10】

【0143】
メタメリズム(MI)が小さいほど、種々の照明条件下における色合わせは、より良好になるであろう。
【0144】
3.スペクトル曲線のマッチの良さ:対象および色合わせされた塗装で同一の顔料着色および濃度を使用した場合、それらのスペクトル曲線は同等であろう。これは、色確度の面からみて理想的なマッチになるであろう。したがって、スペクトル曲線のマッチの良さの指標もまた、有用な指標である。レイリー(Reilly)メタメリズムポテンシャルと呼ばれることもあるこの受容可能性係数の一例を以下に示す。同様に好適なスペクトル曲線のマッチの良さの他の尺度は、(非特許文献8)(参照により本明細書に援用されるものとする)により提供される。
【0145】
レイリー(Reilly)メタメリズムポテンシャルは、次式により得られる。
【0146】
【数11】

【0147】
は、三刺激観測者重み関数であり;そしてX、Y、およびZは、対象または色合わせされた塗装の三刺激値である。
【0148】
以上において、下付き添字「0」は、イルミナントの対応するX、Y、およびZを意味する。
【0149】
は25.00、Kは107.72、そしてKは43.09であり、これらは、CIELAB座標スケーリング係数である。
【0150】
ρλ=波長λにおける分光反射率、
下付き添字sは、対象塗装を意味し、bは、色合わせされた塗装を意味し、そして
R(X/X)、G(Y/Y)、B(Z/Z)は、好ましくは、標準観測者および等エネルギースペクトルで計算される。
【0151】
4.耐久性:その最終用途にもよるが、コーティング組成物のこの受容可能性係数は、重要な因子になりうる。いくつかの着色剤は、他の着色剤よりも耐久性がある。フロリダ暴露研究のような経験的な耐久性試験に基づいて、各着色剤に「耐久性指標」を割り当てることができる。実用可能な着色剤の組合せ中の各着色剤の濃度重み付け指標の合計を、その処方の耐久性指標として使用することができる。
【0152】
5.コスト:その最終用途に依存して、この受容可能性係数は、重要な因子になることもあればならないこともある。たとえば、自動車再仕上げ用途では、耐久性および色合わせの確度のほうが、コーティング組成物のコストよりもはるかに重要である。さらに、コーティング組成物のコストは、自動車車体の修理にかかる労務費と比較してそれほど顕著ではない。色合わせが不正確であると、自動車車体修理を完了するまでの労務費が増大し、自動車塗料の耐久性が劣ると、被保証人からの苦情がくる可能性があるので、これらの因子は、塗料コストよりもはるかに重要である。以上の状況にかんがみて、自動車再仕上げ用途において得られるコーティング組成物のコストには、耐久性および色合わせの確度のような他の因子と比較して、実質的により少ない重みが割り当てられるであろう。しかしながら、これとは対照的に、内装壁塗料では、塗料は、一般的には、高強度の太陽光に暴露されることもなければ腐蝕性雰囲気に暴露されることもないので、耐久性係数はそれほど重要ではない。同様に、色の一致性がバッチ間で保持されるかぎり、色合わせの確度は、大きな関心事にはならない。しかしながら、コストは、壁塗料では重要な因子である。塗料の単位体積あたりのコストを処方から計算するために、本発明に係る特性分析装置により使用されるコンピューターのデータベースに、成分のコストおよび成分の密度を記憶することができる。
【0153】
たとえば、自動車の顧客にとっては、通常、コストにかかわらず良好なマッチが必要であり、同時に耐久性も重要である。したがって、色差に30の重みを、曲線のマッチの良さに30の重みを、メタメリズムに25の重みを、耐久性に15の重みを、そしてコストにゼロに等しい重みを割り当てることが可能である。
【0154】
以上の内容に従えば、処方1では46.5、処方2では193.6、処方3では257.5の受容可能性値が得られるので、処方1は自動車再仕上げ用途の場合に使用すべきものであるが明確に示される。
【0155】
表8は、低コストが重要である場合(処方3が選択されることになる)および高耐久性が最も重要である場合(処方2が選択されることになる)について実現可能な重み係数を示している。これらの重みは、特定の顧客またはコーティング組成物の特定の最終用途に合うように調整可能である。
【0156】
方位外観変化色に関しては、色差、メタメリズム、およびスペクトルマッチの良さを複数の角度(好ましくは3つ〜5つの角度)で計算してから、それらを組み合わせるべきであることに留意されたい。角度は、既知であれば、ユーザーまたは顧客の好みに従って重み付けしうる。
【0157】
【表12】

【0158】
【表13】

【0159】
【表14】

【0160】
受容可能性値の計算例:
表9に報告されるように、処方1はCIE94ΔE=0.08を有することが判明した。「ベストマッチ」処方に割り当てられた重みは、30であった。したがって、CIE94ΔE受容可能性は、0.08×30=2.4であった(表10に報告されている)。同様に、レイリー(Reilly)ポテンシャル受容可能性は、0.67×30=20.1であった。PMT指標受容可能性は、0.26×25=6.5であった。耐久性受容可能性は、1.17×15=17.5であった(表10に報告されている)。コスト/.02リットル受容可能性は、3.61×0=0であった(表10に報告されている)。重み×受容可能性係数の総和をとると、処方1の受容可能性値は合計46.5になる。
【0161】
表10に報告されるように、処方2および3は、同様に報告することができる。式1の色合わせの受容可能性値が最低であるので、受容可能性の判定基準がコストや耐久性ではなく色合わせである場合、それが最良処方として選択されるであろう。
【0162】
類似の計算から、コストがより重要である場合、処方3が最良であり、耐久性がより重要である場合、処方2が最良であることがわかる。
【0163】
本発明に係る方法は、最良受容可能性値(すなわち、特定最終用途に対して最低の受容可能性値)を有する最適の実用可能な組合せを装置のモニターのスクリーン上の表示することをさらに含む。
【0164】
本発明に係る方法は、最適の実用可能な組合せに列挙された着色剤、溶媒、バインダーポリマー、および添加剤のような成分を従来のミキサーで混合して、色合わせされた塗料を製造することをも含む。
【0165】
本発明に係る方法は、吹き付け、ローラー塗装、または浸漬塗装のような従来の適用方法により、自動車車体のような基材上に色合わせされた塗料を適用して、対象塗装の外観に視覚的に合致する色合わせされた塗装を製造することをも含む。
【0166】
本発明に係る方法に従って製造または取得される色合わせされた塗料は、OEM自動車塗料、再仕上げ自動車塗料、建築用塗料、工業用コーティング組成物、粉末コーティング組成物、印刷インク、インクジェットインク、マニキュア液、食品着色材、アイシャドー、またはヘアダイでありうる。
【0167】
本発明に係る方法の他の実施形態は、自動車のダッシュボード、内装ドアパネル、もしくはバンパー・ガード;または消費財のような特定最終用途の状態に射出成形、吹込成形、回転成形、熱成形、または押出により処理される樹脂のような色合わせされた樹脂を製造することを含む。本方法は、該特定最終用途向けの最適の実用可能な組合せを配合者に提供することができる。たとえば、混合したときの最適の実用可能な組合せ中の成分は、色合わせされた基材として形成されたときに、自動車内装品または自動車車体のような対象基材の外観に視覚的に合致する色合わせされた樹脂を製造する。
【0168】
以上の方法はさらに、
(a)最適の実用可能な組合せ中の成分を樹脂と混合して色合わせされた樹脂を製造する工程と;
(b)色合わせされた樹脂を色合わせされた基材の形態に加工する工程と
を含みうる。
【0169】
以上の混合工程は、成分を溶融し従来の押出機に通して色合わせされた樹脂の状態に押し出してから粉末またはペレットの形態にそれを変換することにより、慣例に従って達成することができる。
【0170】
本発明はまた、特定最終用途向けの色合わせされた塗料を製造するための色特性分析装置に関する。装置は、
(i)装置の分光光度計(たとえば、従来の多角度分光光度計またはスフィア・ジオメトリー(sphere geometry)分光光度計)であって、対象塗装の対象部分上に分光光度計を配置するための底部を有する分光光度計と;
(ii)対象部分の対象色(L,a,bまたはL,C,h)値を計算するための手段と;
(iii)装置のコンピューター中に位置するコンピューター使用可能記憶媒体であって、その中に存在するコンピューター可読プログラムコード手段を有し、該コンピューター可読プログラムコード手段は、
(a)対象色空間値に合致するように組合せ選択基準に従って既知の着色剤の記憶リストから1つ以上の予備的な着色剤の組合せをコンピューターにより選択させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(b)色合わせ基準に従ってそれぞれの予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの既知の着色剤の濃度をコンピューターにより決定させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段であって、それぞれの既知の着色剤の濃度は、それぞれの予備的な着色剤の組合せの色値を対象色値に最適に色合わせさせるように最適化される手段と;
(d)特定最終用途向けに開発された混合上および制御上の基準に従って最適化された1つ以上の実用可能な組合せを生じさせるように色合わせされた塗料中の非着色剤成分の存在を考慮してコンピューターにより予備的な着色剤の組合せの量を決定させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(e)特定最終用途向けの受容可能性式に従って実用可能な組合せから最適の実用可能な組合せをコンピューターにより選択させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段であって、最適の実用可能な組合せは、特定最終用途向けの最適の受容可能性値を有し、最適の実用可能な組合せに従って混合したときの既知の着色剤成分および非着色剤成分は、色合わせされた塗装に適用したときに対象塗装の外観に視覚的に合致する色合わせされた塗料を製造する手段と
を含むコンピューター使用可能記憶媒体と
を備える。
【0171】
装置は、装置のモニターのスクリーン上に、最適の実用可能な組合せをコンピューターにより表示させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段をさらに含む。
【0172】
装置はさらに、
(a)所望の量の色合わせされた塗料を調製するための成分を分配するように最適の実用可能な組合せに従ってコンピューターにより信号を発生させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(b)容器中に成分を分配するためのディスペンサーであって、コンピューターと通信状態にあるディスペンサーと;
(c)所望の量の色合わせされた塗料の調製が終了したときにコンピューターにより信号を発生させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(d)成分の分配を停止するようにディスペンサーに向けてコンピューターにより信号を発生させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と
を含みうる。
【0173】
装置は、容器中に分配された成分を混合するためのミキサーをさらに含みうる。
【0174】
本発明に係る装置は、好ましくは、自動車車体のような種々の形状の基材上に装置の分光光度計を容易に配置できるように可搬型装置である。
【0175】
一般的には、本発明に係るコンピューター可読プログラムコード手段は、CD−Romのように従来型ポータブルコンピューターで使用可能な記憶媒体に記憶可能であり、コンピューター可読プログラムコードは、C++ビルダー,バージョン5(C++ Builder,Version 5)またはデルファイ,バージョン6(Delphi,Version 6)(いずれも、カリフォルニア州スコッツバレー(Scotts Valley,California)に位置するボーランド・コーポレーション社(Borland Corporation)により供給されている)のような伝統的プログラミングソフトウェアを用いてプログラム可能である。
【0176】
本発明に使用するのに好適なコンピューターは、従来のコンピュータープログラムコードを実行するように構成することのできる任意の従来のコンピューター/プロセッサー、たとえば、テキサス州ラウンドロックのデル・コンピューター・コーポレーション(Dell Computer Corporation,Round Rock,Texas)またはニューヨーク州アーモンクのIBMコーポレーション(IBM Corporation,Armonk,New York)により供給されるようなものでありうる。たとえば、ワシントン州レッドモンド(Redmond,Washington)に位置するマイクロソフト・コーポレーション(Microsoft Corporation)により供給されるウィンドウズ(登録商標)XP(Windows(登録商標)XP)オペレーティングシステムを利用するデル・コンピューター・コーポレーション(Dell Computer Corporation)により供給されるモデル・ディメンジョンTM4100(Model No.DimensionTM 4100)を利用することができる。
【0177】
本発明に係る方法は、装置のコンピューターがホストコンピューターと通信状態にあるコンピューター構成を使用する場合にも同じように好適である。ホストコンピューターと装置のコンピューターとの通信は、モデムを介してまたはウェブサイトを経由して行いうることは理解されよう。さらに、既知の着色剤の記憶リストのデータベースは、装置のコンピューターの記憶デバイスまたはホストコンピューターの記憶デバイスのいずれかに存在しうる。当然のことながら、装置のコンピューターおよびホストコンピューターは、任意の場所に配置しうる。たとえば、装置のコンピューターを米国のような一方の国または他の州に配置することが可能であり、そしてホストコンピューターをカナダのような他方の国または他の州に位置することが可能である。他の選択肢として、ホストコンピューターを米国のような一方の国または他の州に位置することが可能であり、そして装置のコンピューターをカナダのような他方の国または他の州に位置することが可能である。さらに当然のことながら、ホストコンピューターを使用される装置の複数のコンピューターと通信状態にしうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定最終用途向けの色合わせされた塗料を製造するための方法であって、
(i)塗装特性分析装置(coating characterizing device)の分光光度計を用いて一組の事前設定波長で対象塗装の対象部分の反射率を測定して前記対象部分の対象スペクトル曲線をプロットする工程と;
(ii)前記対象部分の前記対象スペクトル曲線から前記対象部分の対象色(L,a,bまたはL,C,h)値を計算する工程と;
(iii)前記対象色値に色合わせするように組合せ選択基準に従って既知の着色剤の記憶リストから1つ以上の予備的な着色剤の組合せを選択する工程と;
(iv)色合わせ基準に従ってそれぞれの前記予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの前記既知の着色剤の濃度を決定する工程であって、それぞれの前記既知の着色剤の前記濃度は、それぞれの前記予備的な着色剤の組合せの色値を前記対象色値に最適に色合わせさせるように最適化される工程と;
(v)前記色合わせされた塗料中の非着色剤成分の存在を考慮して前記予備的な着色剤の組合せの量を決定(balancing)して前記特定最終用途向けに開発された混合上および制御上の基準に従って最適化された1つ以上の実用可能な組合せを生じさせる工程と;
(vi)前記特定最終用途向けの受容可能性式に従って前記実用可能な組合せから最適の実用可能な組合せを選択する工程であって、前記最適の実用可能な組合せは、前記特定最終用途向けの最適の受容可能性値を有し、前記最適の実用可能な組合せに従って混合したときの前記既知の着色剤成分および非着色剤成分は、色合わせされた塗装に適用したときに前記対象塗装の外観に視覚的に合致する前記色合わせされた塗料を製造する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記装置のモニターのスクリーン上に、前記最適の実用可能な組合せを表示する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最適の実用可能な組合せの前記成分を混合して、前記色合わせされた塗料を製造する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記色合わせされた塗料を基材上に適用して、前記対象塗装の外観に視覚的に合致する前記塗装を製造する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が自動車車体であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記色合わせされた塗料が、OEM自動車塗料、再仕上げ自動車塗料、建築用塗料、工業用コーティング組成物、粉末コーティング組成物、印刷インク、インクジェットインク、マニキュア液、食品着色材、アイシャドー、またはヘアダイであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
それぞれの前記予備的な着色剤の組合せが1〜7種の前記既知の着色剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(ii)が、
(a)前記対象部分に向けて既知強度の光ビームを方向付ける工程と;
(b)前記一組の事前設定波長における前記対象部分の前記反射率を、少なくとも1つの非鏡面反射角(aspecular angle)で連続的に測定する工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(ii)が、
(a)前記対象部分に向けて少なくとも1つの入射角で既知強度の1つ以上の光ビームを連続的に方向付ける工程と;
(b)前記一組の事前設定波長における前記対象部分の前記反射率を非鏡面反射角で連続的に測定する工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により製造されたことを特徴とする色合わせされた塗料。
【請求項11】
特定最終用途向けの色合わせされた塗料を製造するための色特性分析装置(color characterizing device)であって、
(i)前記装置の分光光度計であって、対象塗装の対象部分上に前記分光光度計を配置するための底部を有する分光光度計と;
(ii)前記対象部分の対象色(L,a,bまたはL,C,h)値を計算するための手段と;
(iii)前記装置のコンピューター中に位置するコンピューター使用可能記憶媒体であって、その中に存在するコンピューター可読プログラムコード手段を有し、前記コンピューター可読プログラムコード手段は、
(a)前記対象色空間値に合致するように組合せ選択基準に従って既知の着色剤の記憶リストから1つ以上の予備的な着色剤の組合せを前記コンピューターにより選択させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(b)色合わせ基準に従ってそれぞれの前記予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの前記既知の着色剤の濃度を前記コンピューターにより決定させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段であって、それぞれの前記既知の着色剤の前記濃度は、それぞれの前記予備的な着色剤の組合せの色値を前記対象色値に最適に色合わせさせるように最適化される手段と;
(d)前記特定最終用途向けに開発された混合上および制御上の基準に従って最適化された1つ以上の実用可能な組合せを生じさせるように前記色合わせされた塗料中の非着色剤成分の存在を考慮して前記コンピューターにより前記予備的な着色剤の組合せの量を決定(balancing)させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(e)前記特定最終用途向けの受容可能性式に従って前記実用可能な組合せから最適の実用可能な組合せを前記コンピューターにより選択させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段であって、前記最適の実用可能な組合せは、前記特定最終用途向けの最適の受容可能性値を有し、前記最適の実用可能な組合せに従って混合したときの前記既知の着色剤成分および非着色剤成分は、色合わせされた塗装に適用したときに前記対象塗装の外観に視覚的に合致する前記色合わせされた塗料を製造する手段と
を含むコンピューター使用可能記憶媒体と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記装置のモニターのスクリーン上に、前記最適の実用可能な組合せを前記コンピューターにより表示させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
(a)所望の量の前記色合わせされた塗料を調製するための前記成分を分配すべく前記最適の実用可能な組合せに従って前記コンピューターにより信号を発生させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(b)容器中に前記成分を分配するためのディスペンサーであって、前記コンピューターと通信状態にあるディスペンサーと;
(c)前記所望の量の前記色合わせされた塗料の調製が終了したときに前記コンピューターにより信号を発生させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と;
(d)前記成分の分配を停止するように前記ディスペンサーに向けて前記コンピューターにより信号を発生させるようにするコンピューター可読プログラムコードデバイスを構成するための手段と
をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記容器中に分配された前記成分を混合するためのミキサーをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記装置が可搬型装置であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項16】
請求項1に記載の前記コンピューター可読プログラムコード手段を内部に記憶して有することを特徴とするポータブルコンピューターで使用可能な記憶媒体。
【請求項17】
前記媒体がCD−Romであることを特徴とする請求項8に記載のポータブルコンピューターで使用可能な記憶媒体。
【請求項18】
前記分光光度計が多角度分光光度計であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記分光光度計がスフィア・ジオメトリー(sphere geometry)分光光度計であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項20】
特定最終用途向けの色合わせされた樹脂を製造するための方法であって、
(i)塗装特性分析装置の分光光度計を用いて一組の事前設定波長で対象基材の対象部分の反射率を測定して前記対象部分の対象スペクトル曲線をプロットする工程と;(ユーザーによる工程)
(ii)前記対象部分の前記対象スペクトル曲線から前記対象部分の対象色(L,a,bまたはL,C,h)値を計算する工程と;(工程の一部分はユーザーにより行われる)
(iii)前記対象色値に合致するように組合せ選択基準に従って既知の着色剤の記憶リストから1つ以上の予備的な着色剤の組合せを選択する工程と;(装置/コンピューター中で)
(iv)色合わせ基準に従ってそれぞれの前記予備的な着色剤の組合せ中のそれぞれの前記既知の着色剤の濃度を決定して前記既知の着色剤の1つ以上の中間の着色剤の組合せを生じさせる工程であって、それぞれの前記中間の着色剤の組合せは、前記対象色値に最適に色合わせさせるように最適化される工程と;
(v)前記色合わせされた塗料中の非着色剤成分の存在を考慮して前記中間の着色剤の組合せの量を決定(balancing)して前記既知の着色剤の1つ以上の実用可能な組合せを生じさせる工程であって、それぞれの前記実用可能な組合せは、前記特定最終用途向けに開発された混合上および制御上の実施基準に従って最適化される工程と;
(vi)前記特定最終用途向けの受容可能性式に従って前記実用可能な組合せから最適の実用可能な組合せを選択する工程であって、前記最適の実用可能な組合せは、前記特定最終用途向けの最適の受容可能性値を有し、混合したときの前記最適の実用可能な組合せ中の成分は、色合わせされた基材として形成されたときに前記対象基材の外観に視覚的に合致する前記色合わせされた樹脂を製造する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
(a)前記最適の実用可能な組合せ中の前記成分を樹脂と混合して前記色合わせされた樹脂を製造する工程と;
(b)前記色合わせされた樹脂を前記色合わせされた基材の形態に加工する工程と
をさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記加工工程が、前記色合わせされた樹脂の射出成形、吹込成形、回転成形、熱成形、または押出を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法により製造されたことを特徴とする色合わせされた樹脂。
【請求項24】
前記色合わせされた基材が自動車のダッシュボードまたは内装ドアパネルであり、かつ前記対象基材が自動車内装品であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記色合わせされた基材が自動車バンパー・ガードであり、かつ前記対象基材が自動車車体であることを特徴とする請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2007−505202(P2007−505202A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532870(P2006−532870)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014371
【国際公開番号】WO2004/101689
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】