説明

色変換部材およびそれを用いた発光装置

【課題】ある一種の蛍光体の発する蛍光が、他種の蛍光体により再度吸収されることを抑制することで得られる、高効率な色変換部材およびこれを備える発光装置を提供する。
【解決手段】励起光を照射することで可視光波長領域の蛍光を発するN種類の蛍光体をそれぞれ1種類ずつ含有する光透過性部材をN個順に積層してなる色変換部材であって、Nは2以上の自然数であり、厚み方向に順に、蛍光波長がλ1である第1蛍光体を含有する、屈折率がn1である第1光透過性部材から蛍光波長がλNである第N蛍光体を含有する、屈折率がnNである第N光透過性部材までの、N個の光透過性部材を積層してなり、一般式(1)および(2)を同時に満たす関係を有する色変換部材に関する。
λ(M−1)≧λM(Mは任意の自然数で、M≦N) (1)
n(M−1)<nM(Mは任意の自然数で、M≦N) (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を含有した色変換部材およびそれを用いた発光装置に関する。さらに詳しくは、短波長の励起光を吸収し、吸収した波長より長波長の光を発する色変換部材、および当該色変換部材と励起光源を組み合わせた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子から発せられる光と、この光の一部を蛍光体に吸収させることで発する別の波長の蛍光とを混合することにより、白色光を得ることができる発光装置が提案されている。
【0003】
このような発光素子と蛍光体とを組み合わせて白色光を得る方法を利用した発光装置の例として、2つ挙げることができる。まず、第1に、発光素子である青色発光ダイオード素子の発光の一部を蛍光体に吸収させて、発光素子の透過光と蛍光体からの蛍光とを混色させて白色光を得る方法を利用した発光装置が挙げられる。そして第2に、発光素子として紫外〜青紫光発光ダイオード素子を用い、赤・緑・青色の蛍光を発する蛍光体を組み合わせて白色光を得る方法を利用した発光装置が挙げられる。
【0004】
前者の例としては、青色発光ダイオード素子とセリウム賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体を組み合わせた発光装置がすでに実用化されている(特開平10−242513号公報(特許文献1)参照)。しかし、該発光装置では、混色で得られる白色光のスペクトルは、赤色成分が少なく演色性が十分でないという問題点がある。
【0005】
そのため後者の例のような、赤・緑・青色の蛍光体をそれぞれ使用することにより、演色性の向上が図った発光装置が提案されている(特表2000−509912号公報(特許文献2)参照)。しかし、該発光装置においては、青色蛍光体の発する蛍光を赤色蛍光体が吸収してしまうという問題が生じる。これは、ある一種の蛍光体の発光スペクトルと他種の蛍光体の吸収スペクトルが重なっている場合に生じ、複数種の蛍光体が混合されている場合に生じやすい現象である。したがって、得られた発光装置からの発光は、色むらが発生しやすく、発光効率が低いという問題点がある。
【0006】
そこで、たとえば特開2007−134656号公報(特許文献3)には、長波長の蛍光を発する赤色発光蛍光体を、短波長の蛍光を発する緑・青色発光蛍光体よりも発光素子の近くに配置することにより、赤色発光蛍光体による、緑・青色発光蛍光体の発する蛍光の再吸収を抑制し、色むらの抑制・発光効率の向上を図る技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−242513号公報
【特許文献2】特表2000−509912号公報
【特許文献3】特開2007−134656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来取られてきた上記の方法では、ある一種の蛍光体が発する蛍光を他種の蛍光体が吸収することによる、発光装置の発光輝度が低下するのを十分に抑制することができない。蛍光体は等方的に蛍光を発するため、上記構造では緑・青色発光蛍光体が発光素子側に発する蛍光が赤色発光蛍光体に吸収される問題が解決できない。そのため、得られる発光装置は発光効率が非常に低く、実用的な用途を持ち得ない。
【0008】
したがって本発明は、以上のような事情を鑑み、ある一種の蛍光体の発する蛍光が、他種の蛍光体により再度吸収されることを抑制することで得られる、高効率な色変換部材および該色変換部材を備える発光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、異なる蛍光波長を発する蛍光体を異なる屈折率を有する光透過性部材に分散させた場合に、外部量子効率の高い色変換部材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、励起光を照射することで可視光波長領域の蛍光を発するN種類の蛍光体をそれぞれ1種類ずつ含有する光透過性部材をN個順に積層してなる色変換部材であって、Nは2以上の自然数であり、厚み方向に順に、蛍光波長がλ1である第1蛍光体を含有する、屈折率がn1である第1光透過性部材から蛍光波長がλNである第N蛍光体を含有する、屈折率がnNである第N光透過性部材までの、N個の光透過性部材を積層してなり、下記一般式(1)および(2)を同時に満たす関係を有する色変換部材に関する。
【0011】
λ(M−1)≧λM(Mは任意の自然数で、M≦N) (1)
n(M−1)<nM(Mは任意の自然数で、M≦N) (2)
また、本発明の色変換部材において、第N光透過性部材をさらに、屈折率がnNよりも小さい光透過性部材で被覆してなることが好ましい。
【0012】
また、本発明の色変換部材において、蛍光体の粒子径が、励起光の波長以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の色変換部材において、蛍光体が、半導体微粒子であることが好ましい。
また、本発明の色変換部材において、色変換部材が含有する蛍光体が、励起光の光路長に応じて面内で濃度の分布を持つ、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、励起光を発する発光素子と、可視光波長領域の蛍光を発するN種類の蛍光体をそれぞれ1種類ずつ含有する光透過性部材をN個順に積層してなる色変換部材と、を有する発光装置であって、色変換部材は、Nが2以上の自然数であり、厚み方向に順に、蛍光波長がλ1である第1蛍光体を含有する、屈折率がn1である第1光透過性部材から蛍光波長がλNである第N蛍光体を含有する、屈折率がnNである第N光透過性部材までの、N個の光透過性部材を積層してなり、下記一般式(3)および(4)を同時に満たす関係を有する、発光装置に関する。
【0015】
λ(M−1)≧λM(Mは任意の自然数で、M≦N) (3)
n(M−1)<nM(Mは任意の自然数で、M≦N) (4)
また、本発明の発光装置において、発光素子が、半導体発光ダイオード素子または半導体レーザダイオード素子であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の発光装置において、発光素子が、半導体レーザダイオード素子であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の発光装置において、発光素子に光透過性部材を挟んで色変換部材が配置された構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
ある一種の蛍光体の発する蛍光が、他種の蛍光体により再度吸収されることを抑制することで得られる、高効率な色変換部材および該色変換部材を備える発光装置の提供できる。これは、本発明の色変換部材によると、各光透過性部材の界面での全反射を利用することで、第N蛍光体の発する蛍光が、第N−1蛍光体により再度吸収されることを抑制できるため、外部量子効率が向上することによる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。また、図面における長さ、大きさ、幅などの寸法関係は、図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法を表してはいない。
【0020】
<色変換部材>
図1は、本発明における色変換部材の一実施形態を模式的に示す図である。図2は、本発明における色変換部材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【0021】
以下、図1および図2に基づいて、本発明に係る色変換部材について説明する。図1に示すように、本発明の色変換部材101は、励起光を照射することで可視光波長領域の蛍光を発するN種類の蛍光体をそれぞれ1種類ずつ含有する光透過性部材をN個順に積層してなる。そして、該色変換部材101において、Nは2以上の自然数であり、励起光の照射側から厚み方向に順に、蛍光波長がλ1である第1蛍光体103aを含有する、屈折率がn1である第1光透過性部材104から、蛍光波長がλNである第N蛍光体103cを含有する、屈折率がnNである第N光透過性部材106までの、N個の光透過性部材を積層してなる。そして、本発明において色変換部材101は、以下の一般式(1)および(2)を同時に満たすものである。
【0022】
λ(M−1)≧λM(Mは任意の自然数で、M≦N) (1)
n(M−1)<nM(Mは任意の自然数で、M≦N) (2)
なお、n1は1.3以上であることが好ましく、nNは2.4以下であることが好ましい。光透過性部材の屈折率を測定する方法としては、JIS K 7142(1996年版)等が挙げられる。また、本発明における蛍光波長は、蛍光分光光度計で測定することができる。
【0023】
また、本発明の色変換部材101においては、第1光透過性部材側から励起光が照射されることが好ましいが、第N光透過性部材側から励起光が照射されても問題はない。
【0024】
ここで、図1においては、厚み方向に順に、第1蛍光体103aを含有する光透過性部材104、第2蛍光体103bを含有する光透過性部材105が積層されている。また、上述の通り、本発明の色変換部材101は、少なくとも2種類の蛍光体をそれぞれ1種類ずつ含有する光透過性部材を少なくとも2個積層したものである。つまり、本発明における色変換部材は、図2に示すように、第1蛍光体204を含有する光透過性部材201、第2蛍光体205を含有する光透過性部材202が順に積層されてなるものを最低の単位とし、第2光透過性部材202は、蛍光体を含有しない光透過性部材203でさらに被覆されていることが好ましい。
【0025】
ここで、図1に示す色変換部材101において励起光を照射して第1蛍光体103aおよび第2蛍光体103bの発する蛍光波長をそれぞれλ1およびλ2とすると、λ1≧λ2であり、第1光透過性部材104および第2光透過性部材105の屈折率をそれぞれn1およびn2とすると、n1<n2である。このとき、第2蛍光体103bから第1光透過性部材104方向へ発する蛍光のうち、界面の臨界角θc以上で入射される蛍光は、全反射により第2光透過性部材105方向へ反射される。但し、n1およびn2における臨界角θcは、数式(1)で表される。
【0026】
θc=sin-1(n2/n1) 数式(1)
したがって、第2蛍光体103bの蛍光が、第1蛍光体103aにより再吸収されるのを抑制できるため、かかる構造を有する色変換部材101の外部量子効率は高い。ここで外部量子効率とは、当該色変換部材に励起フォトン1個を入射したときに、蛍光フォトンを発する確率を表す。かかる外部量子効率は、蛍光分光光度計や積分球により測定される。このように、本実施形態にかかる色変換部材101は、各光透過性部材の界面での全反射を利用することで、第nの蛍光体の発する蛍光が、第(n−1)の蛍光体により再度吸収されることを抑制できる。
【0027】
そして、上述の色変換部材を構成する光透過性部材の数「N」は、大きいほうがより好ましい。これは、該蛍光体を含有する光透過性部材の数が多くなるほど、結果として色変換部材101が含有する蛍光体の種類を増やすことができるためである。色変換部材101が含有する蛍光体の種類が増えることによって、色変換部材101の発する発光の演色性を向上させることができる。ただし、製造コストの観点からは、光透過性部材の数「N」は小さいほうがより好ましい。これらの事由を勘案すると、色変換部材101を構成する光透過性部材の数「N」は、2以上5以下の値をとることが最も好ましい。
【0028】
また、第N光透過性部材106は、屈折率がnNよりも小さい光透過性部材102で被覆されていることが好ましい。たとえば、図1においては、第N光透過性部材106の屈折率をnN、光透過性部材102の屈折率をn(N+1)とすると、各光透過性部材の屈折率は、nN>n(N+1)の関係を満たす。
【0029】
屈折率の大きい第N光透過性部材106から、たとえば空気のような屈折率の小さい外界へ光が放射される場合、上述の数式(1)に示される臨界角θc以上の角度で放射される発光は、全反射により第N光透過性部材106に閉じ込められるため、色変換部材の発光には寄与せず損失となる。しかし、光透過性部材102のような、屈折率の小さくかつ空気より屈折率が大きな材料で被膜することにより、第N光透過性部材106から光が放出されやすくなる効果が得られる。つまり、色変換部材101と空気との界面での全反射を抑制することで、色変換部材における光透過性部材102と逆方向へ進む光を減らすことにより、色変換部材101から効率的に光を取り出すことができる。
【0030】
また、光透過性部材の含有する蛍光体の粒子径を励起光の波長以下にすることにより、さらなる外部量子効率の向上効果が得られる。これは励起光の波長以下では、蛍光体粒子による励起光の回折散乱が生じなくなるため、励起光の散乱損失を低減できるためである。
【0031】
また、かかる色変換部材101に含有される蛍光体は、励起光の光路長に応じて面内(図1における厚み方向と垂直の面内)で濃度の分布を持たせても良い。励起光が色変換部材101にある角度で入射する場合、励起光が色変換部材101中を通る光路長は、入射角度によって変化する。したがって、蛍光体による励起光の吸収率も入射角度により変化する。ここで、面内での蛍光体濃度分布を変化させることにより、光路長によって生じる蛍光体の吸収率の違いを補正した結果、色むらを改善することができる。
【0032】
また、かかる色変換部材101は、自立部材として使用できる。また、支持基体に積層しても良い。たとえば、ガラス・紙などの支持基体表面に積層させて、支持基体に任意の光学機能を付加させたり、導光板表面に積層させて面発光部材として利用する、などが例示される。
【0033】
当該色変換部材101に励起光を入射した場合、色変換部材101に含有されるN種類の蛍光体が励起光を吸収し、各蛍光を発するため、色変換部材101から出射される光は、励起光と各蛍光の混色光となる。したがって、青色励起光と緑・赤色蛍光や、紫外〜青紫色励起光と青・緑・赤色蛍光を組み合わせることにより得られる、白色光を利用する等の利用例がある。
【0034】
≪光透過性部材の材料≫
本発明における光透過性部材の材料は、蛍光体を分散させた状態で保持できる機能を有し、かつ励起光波長、蛍光体の発する蛍光波長に対し透明であるという特性が望まれる。また、該光透過性部材は、蛍光体の保護部材としての役割も求められることから、酸素・水分を通さない特性を有する材料であることが、特に好ましい。また、該光透過性部材が発光素子に近接して配置される場合には、耐熱性が要求される。上記の条件を満たす光透過性部材材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂等に代表される樹脂や、ガラス、アルミナ、イットリア等に代表される透光性無機材料が挙げられる。
【0035】
≪蛍光体≫
本発明における蛍光体としては、励起光の少なくとも一部を照射することで該励起光を吸収して、励起光とは波長の異なる蛍光を発する特性が望まれる。また、強い励起光を受けることから耐光性が、使用環境により水分・酸素に対する耐久性が求められる。発光素子近傍に配置された場合は、良好な温度特性を有することが好ましい。上記の条件を満たす蛍光体材料としては、後述する希土類賦活蛍光体と半導体微粒子が例示される。
【0036】
青色発光を示す希土類賦活蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO43Cl:Eu、(Ca,Sr,Ba)259Cl:Eu、(Sr,Ca,Ba)Al24:Euまたは(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Eu等が挙げられる。
【0037】
緑色発光を示す希土類賦活蛍光体としては、SrAl24:Eu、Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ce、BaMgAl1017:Eu,Mn、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si222:Eu、(Ba,Ca,Sr)2SiO4:Eu等が挙げられる。
【0038】
黄色発光を示す希土類賦活蛍光体としては、((Y,Gd)1-xSmx3(AlyGa1-y512:Ce(ただしxおよびyは1以下の数)、(Ca,Mg,Y)xSi12-(m+n)Al(m+n)n16-n:Eu等が挙げられる。
【0039】
赤色発光を示す希土類賦活蛍光体としては、CaAlSiN3:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu、(Y,La,Gd,Lu)22S:Eu等が挙げられる。
【0040】
半導体微粒子とは、粒子径が数nm程度の半導体微結晶のことを示す。半導体結晶を数nm程度まで小さくすると、量子閉じ込め効果により、バンドギャップが変化する。したがって、粒子径を制御することにより、発光波長を制御することが可能となる。また、材料が半導体のため、電子準位がバンド状に広がっていることより、広い波長範囲で光吸収が生じる。したがって半導体微粒子は、蛍光波長の選択性や、励起波長を選ばない点で、蛍光体として非常に優れた特性を示す。また、半導体微粒子による光散乱はほとんどないことから、励起光の散乱損失を大きく低減できるためさらなる外部量子効率の向上効果が得られる。なお、このような半導体微粒子は、コロイド粒子、ナノ粒子、あるいは量子ドット等とも呼称される場合がある。
【0041】
半導体微粒子の材料としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等のI族元素と、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、よう素(I)等のVII族元素からなるI−VII族化合物半導体、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)等のII族元素と、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)等のVI族元素からなるII−VI族化合物半導体、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等のIII族元素と、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)等のV族元素からなるIII−V族化合物半導体、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等のIV族元素半導体、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等のIV族元素と、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)等のVI族元素からなるIV−VI族化合物半導体、およびこれらの混晶が挙げられる。
【0042】
この中でも、量子閉じ込め効果によりバンドギャップが増大した状態の半導体微粒子が可視光発光を示すことから、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、塩化銅(CuCl)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、およびこれらの混晶が、蛍光体として特に優れた特性を示す。
【0043】
しかし、本発明における蛍光体は、上記物質に限定されるわけではなく、たとえば、ローダミンB等に代表される有機色素や有機蛍光顔料等を使用しても良い。
【0044】
≪色変換部材の用途≫
本発明の色変換部材は、透明性・機械的強度に優れ、しかも優れた光吸収特性・発光特性・外部量子効率を有する。当該色変換部材は、たとえば、窓ガラス等の表面に設けられる紫外線吸収膜、ディスプレイ等に用いられる波長変換のための光学カラーフィルター、あるいは白熱電球・蛍光灯・冷陰極管・半導体発光素子と組み合わせた発光波長選択可能な発光装置等、様々な光学用途に使用することができる。
【0045】
<発光装置>
図3は、本発明における発光装置の一実施形態を模式的に示す図である。
【0046】
以下、図3に基づいて説明する。
本実施形態の発光装置は、励起光を発する発光素子312と、可視光波長領域の蛍光を発するN種類の蛍光体をそれぞれ1種類ずつ含有する光透過性部材をN個、励起光の照射側から順に積層してなる色変換部材301とを有する(Nは2以上の自然数)。そして、色変換部材301は、厚み方向に蛍光波長がλ1である第1蛍光体307を含有する、屈折率がn1である第1光透過性部材303、蛍光波長がλ2である第2蛍光体308を含有する、屈折率がn2である第2光透過性部材304、蛍光波長がλ3である第3蛍光体309を含有する、屈折率がn3である第3光透過性部材305の順に積層されている構造を含む。本発明の発光装置においては、第3蛍光体309を含有する第3光透過性部材305にさらに厚み方向に蛍光波長がλNである第N蛍光体を含有する、屈折率がnNである第N光透過性部材までの、N個の光透過性部材を積層してもよい。
【0047】
そして、蛍光体を含有する該色変換部材は、下記一般式(3)および(4)を同時に満たす関係を有する。
【0048】
λ(M−1)≧λM(Mは任意の自然数で、M≦N) (3)
n(M−1)<nM(Mは任意の自然数で、M≦N) (4)
そして、図3に示す発光装置は、基体310上に発光素子312が取り付けられた構造を有する。基体310上には、発光素子312を取り囲むように、反射部材311が取り付けられている。発光素子312から発光された励起光のうち横方向へ進む光は、反射部材311により上方へ反射され、光透過性部材303に入射されるため、発光素子312から発せられる励起光を、効率よく色変換部材301に入射させることができる。図3においては発光素子312を覆うように蛍光体を含まない光透過性部材302が配置され、該光透過性部材を被覆するように色変換部材301が配置される。このように発光素子312と色変換部材301の間に、光透過性部材302を挿入することにより、長寿命な発光装置を提供することができる。これは、各蛍光体に与える発光素子312の発熱の影響が、光透過性部材312により緩和されるためである。ただし、該色変換部材301で直接、発光素子312を覆っても良い。
【0049】
発光素子312から発光される励起光は、直接あるいは反射部材311に反射されて色変換部材301に入射する。色変換部材301に含有された第1蛍光体307、第2蛍光体308、第3蛍光体309は、励起光を吸収してそれぞれ蛍光を発する。したがって、当該発光装置から発せられる光は、発光素子312の発光と、各蛍光体からの蛍光の混色光となる。
【0050】
基体310の表面は、鏡面状にして反射機能を持たせるとより好ましい。各蛍光体が基体310方向へ発する蛍光や、各蛍光体により散乱された励起光は、基体310の表面で反射されるため、発光装置から取り出される発光の強度を増大させることができる。
【0051】
当該発光装置の発光色が、色変換部材301における蛍光体の量で調整できるため、各発光波長の発光素子を組み合わせた発光装置と比較した場合優位となる。
【0052】
≪発光素子≫
本発明における発光素子312は、色変換部材に含まれる第1蛍光体307、第2の蛍光体308および第3の蛍光体309が吸収する波長域の光を発する必要がある。上記の条件を満たす発光素子であれば何でもよく、たとえば紫外線ランプや冷陰極管、半導体発光素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子などが例示される。特に半導体発光素子は、優れた単色性発光ピーク波長を有することから、効率的に蛍光体を励起できる点で好ましい。
【0053】
また、蛍光体の励起光を発する発光素子312に加えて、蛍光体を励起しない長波長領域の光を発する発光素子を一緒に用いても良い。具体的には、紫外〜青色発光の発光素子に加えて、蛍光体の吸収のない赤色発光の発光素子を一緒に配置する場合などが例示される。該発光素子からの赤色発光は、各蛍光体に吸収されることなく外部に放出される。そのため、発光素子を追加することによって、発光装置が発する発光の演色性向上を図ることができる。
【0054】
そして、発光素子312として、半導体発光ダイオード素子か半導体レーザダイオード素子を用いることにより、高発光効率の発光装置を提供することができる。これは、半導体発光素子の発光波長を活性層の半導体材料で制御できるため、蛍光体の吸収特性に一致した励起光源を提供できるためである。また、低電圧駆動、小型軽量、高耐久性、長寿命の発光装置を提供することができる。
【0055】
また、発光素子312として、半導体レーザダイオード素子を用いることにより、発光効率の高い発光装置を提供することができる。これは、半導体レーザダイオード素子の指向性の高い光を励起光として用いることで、全反射を利用した励起光の色変換部材内部の閉じ込めが可能となり、励起光の損失を抑制できるためである。
【0056】
≪発光装置の用途≫
本発明における発光装置は、低電圧駆動、小型軽量、高耐久性、長寿命等優れた特性を示すことから、液晶用のバックライト・表示装置や照明装置等など、光学装置に広く利用することができる。また、当該発光装置を複数組み合わせ、駆動回路と接続することで、ディスプレイ等の表示装置に用いられる。
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
以下実施例および比較例で用いた光透過性部材の材料である、シリコーン樹脂・アクリル樹脂・エポキシ樹脂の屈折率はそれぞれ、1.45、1.49、1.59であった。当該光透過性部材材料の各屈折率は、JIS K 7142(1996年版)に準拠して測定を行なった。
【0059】
また特に断りのない限り、以下実施例で使用した希土類賦活蛍光体CaAlSiN3:Eu、Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ce、SrAl24:Eu、BaMgAl1017:Euの平均粒子径はそれぞれ、30、17、21、20μmのものを使用した。
【0060】
(実施例1)
図4は、実施例1にかかる色変換部材の断面模式図を示す。以下、図4に基づいて説明する。
【0061】
本実施例の色変換部材は、励起光を照射することで赤色蛍光を発する第1蛍光体403を含有する第1光透過性部材401と、緑色蛍光を発する第2蛍光体404を含有する第2光透過性部材402が積層されてなる。本色変換部材の製造方法について説明する。
【0062】
まず、シリコーン樹脂に対して1.4質量%の赤色蛍光を発する第1蛍光体403であるCaAlSiN3:Euをよく混合して得られたスラリーを、板状金型に注入させた。注入後、150℃で3時間加熱してシリコーン樹脂を硬化させることで、第1蛍光体403を含有した第1光透過性部材401を形成した。
【0063】
同様にして、エポキシ樹脂に対して6.9質量%の緑色蛍光を発する第2蛍光体404であるCa3(Sc,Mg)2Si312:Ceよく混合して得られたスラリーを、第1光透過性部材401上に注入し、120℃で1時間加熱し硬化させることで、第2蛍光体404を含有した第2光透過性部材402を形成した。
【0064】
このようにして得られた色変換部材を第1光透過性部材401の方向から波長450nmの光で励起したところ、JIS Z 8701に準拠した色度座標の測定で、x=0.30、y=0.30の白色光を発光することを確認した。また、積分球を用いて測定を行なったところ、外部量子効率が14.56%であることを確認した。これは、後述の比較例1に示す色変換部材より、外部量子効率が高いことが分かった。
【0065】
(比較例1)
図5に、比較例1にかかる色変換部材の断面模式図を示す。以下、図5に基づいて説明する。
【0066】
本比較例においては、実施例1に対する従来例として、赤色・緑色蛍光を発する2種類の蛍光体が同一の光透過性部材に含有されてなる、色変換部材について検討した。
【0067】
蛍光体502・503にはそれぞれ、赤色発光蛍光体CaAlSiN3:Euと緑色発光蛍光体Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ceを用い、光透過性部材501には、エポキシ樹脂を用いた。また、該エポキシ樹脂に対して赤色発光蛍光体を1.4質量%、緑色発光蛍光体を6.9質量%含有させた。実施例1と同様の方法を用いて、色変換部材の作製を行なった。
【0068】
このようにして得られた色変換部材を第1光透過性部材401の方向から波長450nmの光で励起したところ、色度座標で、x=0.33、y=0.24と白色光からのずれを観察した。これは、緑色発光蛍光体Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ceの発光の一部が、赤色発光蛍光体CaAlSiN3:Euに再吸収されたことに起因する。また、積分球を用いて測定を行なったところ、外部量子効率が13.07%であることを確認した。
【0069】
(実施例2)
以下、上述した図2を参照して説明する。本実施例においては、屈折率の異なる2種類の光透過性部材の積層構造体において、屈折率のより大きい光透過性部材の表面に、当該光透過性部材の屈折率より小さい屈折率を有する光透過性部材を被膜してなる、色変換部材について説明する。
【0070】
第1蛍光体204としては、赤色発光蛍光体CaAlSiN3:Euを、第2蛍光体205としては、緑色発光蛍光体Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ceを用いた。また、第1光透過性部材201にはシリコーン樹脂を、第2光透過性部材202にはエポキシ樹脂を用いた。実施例1と同様の方法を用いて、光透過性部材の積層構造体の作製を行なった。そして、光透過性部材202上に、シリコーン樹脂を注入し、150℃で3時間加熱し硬化させることで、光透過性部材203を形成した。
【0071】
このようにして得られた色変換部材を波長450nmの光で励起したところ、色度座標で、x=0.30、y=0.30の白色光を発光することを確認した。また、積分球を用いて測定を行なったところ、外部量子効率が14.91%であることを確認した。これは、実施例1に示す色変換部材より、外部量子効率が高い。これは、光透過性部材203を被覆したことにより、色変換部材からの光取り出し効率が向上したためである。
【0072】
(実施例3)
図6は、実施例3にかかる色変換部材の断面模式図を示す。以下、図6に基づいて説明する。
【0073】
第1蛍光体605には赤色発光蛍光体CaAlSiN3:Euを、第2蛍光体606には緑色発光蛍光体SrAl24:Euを、第3蛍光体607には青色発光蛍光体BaMgAl1017:Euを用いた。
【0074】
また、第1光透過性部材601、第2光透過性部材602、第3光透過性部材603および光透過性部材604にはそれぞれ、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂を用いた。実施例1と同様の方法を用いて、色変換部材の作製を行なった。
【0075】
このようにして得られた色変換部材を、第1光透過性部材601の方向から波長405nmの光で励起したところ、色度座標で、x=0.30、y=0.30の白色光を発光することを確認した。また、積分球を用いて測定を行なったところ、外部量子効率が13.61%であることを確認した。
【0076】
(実施例4)
以下実施例4〜9の発光装置は全て、発光色の色度座標が、0.28<x<0.32、0.28<y<0.32の範囲に入るよう、各種蛍光体の量を調整して作製した。
【0077】
以下、上述した図3を参照して説明する。本実施例においては、青紫色の発光ダイオード素子と、青色蛍光を発する第3蛍光体を含有する第3光透過性部材と、緑色蛍光を発する第2蛍光体を有する第2光透過性部材と、赤色蛍光を発する第1蛍光体を含有する第1光透過性部材が積層されてなる色変換部材とを備える発光装置について説明する。
【0078】
発光素子312には、発光ピークが405nmであるInGaN化合物半導体を活性層に持つ青紫色発光ダイオード素子を用い、基材310上に固定した。
【0079】
最初に、シリコーン樹脂を、発光素子312の取り付けられた基体310上に注入させた。注入後、150℃で3時間加熱してシリコーン樹脂を硬化させることで、光透過性部材302を形成した。
【0080】
また、シリコーン樹脂にCaAlSiN3:Euをよく混合して得られたスラリーを、光透過性部材302上に注入させ、150℃で3時間加熱し硬化させることで、第1蛍光体307を含有した第1光透過性部材303を形成した。
【0081】
同様にして、アクリル樹脂に緑色発光蛍光体SrAl24:Euをよく混合して得られたスラリーを、第1光透過性部材303上に注入させ、加熱し硬化させることで、第2蛍光体308を含有した第2光透過性部材304を形成した。
【0082】
同様にして、エポキシ樹脂に青色発光蛍光体BaMgAl1017:Euをよく混合して得られたスラリーを、第2光透過性部材304上に注入させ、120℃で1時間加熱し硬化させることで、第3蛍光体309を含有した第3光透過性部材305を形成した。
【0083】
また、第3光透過性部材305上に、シリコーン樹脂を注入させ、150℃で3時間加熱し硬化させることで、光透過性部材306を形成した。
【0084】
このようにして得られた発光装置の発光効率は、2種類の蛍光体を同一の光透過性部材に含有させた後述の比較例2の発光装置より、発光効率が1.12倍に向上することを確認した。これは、蛍光波長の異なる蛍光体を分散させた屈折率の異なる光透過性部材を積層させることで、ある一種の蛍光体の発する蛍光を他種蛍光体が再吸収してしまうのを、全反射により抑制したためである。また、光透過性部材306が存在しない後述の実施例4の発光装置と比較すると、発光効率が1.02倍に向上することを確認した。これは、第3光透過性部材305外側を低屈折率を有する光透過性部材306で覆うことで、色変換部材301と空気界面の全反射を抑制し、色変換部材301からの光の取り出し効率が向上したためである。
【0085】
また、寿命試験として、温度25℃100mA、温度25℃50mA通電の各試験において、蛍光体に起因する変化は観測されず、発光素子312単体の寿命特性と差がないことを確認した。
【0086】
(比較例2)
図7に、比較例2にかかる色変換部材の断面模式図を示す。以下、図7に基づいて説明する。
【0087】
本比較例においては、実施例4に対する従来例として、青紫色の発光ダイオード素子と、赤色・緑色・青色蛍光を発する3種類の蛍光体が同一の光透過性部材に含有されてなる色変換部材から構成される、発光装置について検討した。
【0088】
発光素子710には、発光ピークが405nmであるInGaN化合物半導体を活性層に持つ青色の発光ダイオード素子を用いた。蛍光体705・706・707にはそれぞれ、赤色発光蛍光体CaAlSiN3:Eu、緑色発光蛍光体SrAl24:Eu、青色発光蛍光体BaMgAl1017:Euを用い、光透過性部材702、703および704にはそれぞれ、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂を用いた。そして、実施例4と同様の方法を用いて、発光装置の作製を行なった。なお、光透過性部材703を構成するシリコーン樹脂に対して赤色発光蛍光体を0.8質量%、緑色発光蛍光体を3.3質量%、青色発光蛍光体を5.9質量%含有させた。
【0089】
(実施例5)
図8に、実施例5にかかる発光装置の断面模式図を示す。以下、図8に基づいて説明する。本実施例においては、青色の発光ダイオード素子と、赤色・緑色・青色蛍光を発する3種類の蛍光体がそれぞれ、3種類の光透過性部材に含有されてなる色変換部材801から構成される、発光装置について、以下に説明する。
【0090】
発光素子811には、発光ピークが405nmであるInGaN化合物半導体を活性層に持つ青色の発光ダイオード素子を用いた。第1蛍光体806、第2蛍光体807および第3蛍光体808にはそれぞれ、赤色発光蛍光体CaAlSiN3:Eu、緑色発光蛍光体SrAl24:Eu、青色発光蛍光体BaMgAl1017:Euを用い、第1光透過性部材802、第2光透過性部材803、第3光透過性部材804および光透過性部材805にはそれぞれ、シリコーン樹脂・アクリル樹脂・エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂を用いた。実施例4と同様の方法を用いて、発光装置の作製を行なった。
【0091】
なお、第1光透過性部材802に対して0.8質量%の第1蛍光体806を含有し、第2光透過性部材803に対して3.0質量%の第2蛍光体807を含有し、第3光透過性部材804に対して4.5質量%の第3蛍光体808を含有するよう適宜調整した。
【0092】
このようにして得られた発光装置の発光効率は、実施例4の発光装置とほぼ同じ値が得られた。また、寿命試験を行なったところ、実施例4と比較して出力の低下が見られた。解析の結果、蛍光体の変色が見られた。これは、発光素子の発熱による、蛍光体の劣化が生じたためであると考えられた。
【0093】
(実施例6)
図9に、本発明にかかる一実施例を示す発光装置の断面模式図を示す。以下、図9に基づいて説明する。本実施例においては、青色の発光ダイオード素子と、赤色・緑色蛍光を発する2種類の蛍光体がそれぞれ、2種類の光透過性部材に含有されてなる色変換部材901から構成される、発光装置について、以下に説明する。
【0094】
発光素子910には、発光ピークが450nmであるInGaN化合物半導体を活性層に持つ青色発光ダイオード素子を用いた。第1蛍光体906および第2蛍光体907にはそれぞれ、赤色発光蛍光体CaAlSiN3:Euおよび緑色発光蛍光体Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ceを用い、光透過性部材902、第1光透過性部材903、第2光透過性部材904および光透過性部材905にはそれぞれ、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂を用いた。実施例4と同様の方法を用いて、発光装置の作製を行なった。なお、第1光透過性部材903に対して1.4質量%の第1蛍光体906を含有し、第2光透過性部材904に対して6.9質量%の第2蛍光体907を含有するよう適宜調整した。
【0095】
(実施例7)
以下、上述した図3を参照して説明する。本実施例においては、青紫色の発光ダイオード素子と、分散した蛍光体の濃度分布を有する光透過性部材からなる色変換部材とを備えた発光装置について説明する。
【0096】
発光素子312には、発光ピークが405nmであるInGaN化合物半導体を活性層に持つ青色発光ダイオード素子を用いた。第1蛍光体307、第2蛍光体308および第3蛍光体309にはそれぞれ、赤色発光蛍光体CaAlSiN3:Eu、緑色発光蛍光体SrAl24:Eu、青色発光蛍光体BaMgAl1017:Euを用い、光透過性部材302、第1光透過性部材303、第2光透過性部材304、第3光透過性部材305および光透過性部材306にはそれぞれ、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂を用いた。光透過性部材の面内方向に、発光素子312からの距離が離れるにつれて、蛍光体の濃度が薄くなるように、第1蛍光体307、第2蛍光体308および第3蛍光体309をそれぞれ、各光透過性部材に分散させた。
【0097】
このようにして得られた発光装置は、実施例4の発光装置と比較して、光出射角度による色むらが少なく、発光色が均一であることを確認した。
【0098】
なお、第1光透過性部材303に対して0.8質量%の第1蛍光体307を含有し、第2光透過性部材304に対して3.0質量%の第2蛍光体308を含有し、第3光透過性部材305に対して4.5質量%の第3蛍光体309を含有するよう適宜調整した。
【0099】
(実施例8)
図9に、本発明にかかる一実施例を示す発光装置の断面模式図を示す。以下、図9に基づいて説明する。
【0100】
発光素子910には、発光ピークが450nmであるInGaN化合物半導体を活性層に持つ青色発光ダイオード素子を用いた。第1蛍光体906および第2蛍光体907にはそれぞれ、粒子径が2.0nm、3.0nmのInP半導体材料からなる半導体微粒子を用い、光透過性部材902、第1光透過性部材903、第2光透過性部材904および光透過性部材905にはそれぞれ、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂を用いた。実施例4と同様の方法を用いて、発光装置の作製を行なった。なお、第1光透過性部材903に対して1.4質量%の第1蛍光体906を含有し、第2光透過性部材904に対して6.9質量%の第2蛍光体907を含有するよう適宜調整した。
【0101】
このようにして得られた発光装置は、実施例6の発光装置を比較して、発光効率が1.03倍に向上することを確認した。これは、蛍光体の粒子径が小さくなったことで、発光素子910が発する励起光の散乱損失が減少し、発光素子の発光が効率よく外部に取り出されたためであると考えられた。
【0102】
(実施例9)
図10は、実施例9にかかる色変換部材の断面模式図を示す。以下、図10に基づいて説明する。
【0103】
シリコーン樹脂に粒子径が2.0nmのInP半導体材料からなる半導体微粒子を入れて、よく混合して得られたスラリーを円柱上の金型に注入して、加熱し硬化させて、第1蛍光体1004が分散した第1光透過性部材1001とした。第1光透過性部材1001の表面にアクリル樹脂に分散させた粒子径が3.0nmのInP半導体材料からなる半導体微粒子を塗布し、第2蛍光体1005が分散した第2光透過性部材1002とした。同様にして、第2光透過性部材1002の上に、粒子径が1.9nmのCdSe半導体微粒子とエポキシ樹脂からなる、第3蛍光体1006が分散した第3光透過性部材1003を備えた。上記の方法で、図10に示す同心円状に蛍光体が分散されてなる、円柱状の色変換部材を作製した。円柱状の当該色変換部材の底面側から、半導体レーザダイオードの発光を励起光として入射することで、発光装置とすることができた。
【0104】
このようにして得られた発光装置は、発光効率が78lm/Wであった。半導体レーザダイオードの発光は指向性が高いため、光透過性部材1003と大気との界面で全反射するため、励起光の外界への出光がないため、実施例4の発光装置と比較して、高い発光効率を示すことを確認した。
【0105】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明における発光装置は、低電圧駆動、小型軽量、高耐久性、長寿命等優れた特性を示すことから、液晶用のバックライトや照明装置などに広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明における色変換部材の一実施形態を模式的に示す図である。
【図2】本発明における色変換部材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明における発光装置の一実施形態を模式的に示す図である。
【図4】実施例1にかかる色変換部材の断面模式図を示す。
【図5】比較例1にかかる色変換部材の断面模式図を示す。
【図6】実施例3にかかる色変換部材の断面模式図を示す。
【図7】比較例2にかかる色変換部材の断面模式図を示す。
【図8】実施例5にかかる発光装置の断面模式図を示す。
【図9】本発明にかかる一実施例を示す発光装置の断面模式図を示す。
【図10】実施例9にかかる色変換部材の断面模式図を示す。
【符号の説明】
【0108】
101,301,801,901 色変換部材、102,203,302,306,501,604,702,703,704,805,902,905 光透過性部材、103a,204,307,403,605,806,906,1004 第1蛍光体、103b,205,308,404,606,807,907,1005 第2蛍光体、103c 第N蛍光体、104 第1光透過性部材、105 第2光透過性部材、106 第N光透過性部材、201,303,401,601,802,903,1001 第1光透過性部材、202,304,402,602,803,904,1002 第2光透過性部材、305,603,607,804,1003 第3光透過性部材、309,808,1006 第3蛍光体、310,708,809,908 基体、311,709,810,909 反射部材、312,710,811,910 発光素子、502,503,705,706,707 蛍光体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を照射することで可視光波長領域の蛍光を発するN種類の蛍光体をそれぞれ1種類ずつ含有する光透過性部材をN個順に積層してなる色変換部材であって、
Nは2以上の自然数であり、
厚み方向に順に、
蛍光波長がλ1である第1蛍光体を含有する、屈折率がn1である第1光透過性部材から
蛍光波長がλNである第N蛍光体を含有する、屈折率がnNである第N光透過性部材までの、N個の光透過性部材を積層してなり、
下記一般式(1)および(2)を同時に満たす関係を有する色変換部材。
λ(M−1)≧λM(Mは任意の自然数で、M≦N) (1)
n(M−1)<nM(Mは任意の自然数で、M≦N) (2)
【請求項2】
前記第N光透過性部材をさらに、屈折率がnNよりも小さい光透過性部材で被覆してなる請求項1に記載の色変換部材。
【請求項3】
前記蛍光体の粒子径が、前記励起光の波長以下である、請求項1または2に記載の色変換部材。
【請求項4】
前記蛍光体が、半導体微粒子である、請求項3に記載の色変換部材。
【請求項5】
前記色変換部材が含有する蛍光体が、励起光の光路長に応じて面内で濃度の分布を持つ、請求項1〜4のいずれかに記載の色変換部材。
【請求項6】
励起光を発する発光素子と、可視光波長領域の蛍光を発するN種類の蛍光体をそれぞれ1種類ずつ含有する光透過性部材をN個順に積層してなる色変換部材と、を有する発光装置であって、
前記色変換部材は、Nが2以上の自然数であり、厚み方向に順に、
蛍光波長がλ1である第1蛍光体を含有する、屈折率がn1である第1光透過性部材から
蛍光波長がλNである第N蛍光体を含有する、屈折率がnNである第N光透過性部材までの、N個の光透過性部材を積層してなり、
下記一般式(3)および(4)を同時に満たす関係を有する、発光装置。
λ(M−1)≧λM(Mは任意の自然数で、M≦N) (3)
n(M−1)<nM(Mは任意の自然数で、M≦N) (4)
【請求項7】
前記発光素子が、半導体発光ダイオード素子または半導体レーザダイオード素子である、請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光素子が、半導体レーザダイオード素子である、請求項6に記載の発光装置。
【請求項9】
前記発光素子に光透過性部材を挟んで前記色変換部材が配置された構造を有する、請求項6〜8のいずれかに記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−206459(P2009−206459A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50180(P2008−50180)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】