説明

色特性変換係数の決定方法およびプリズムセット、ならびに撮像装置

【課題】色分解プリズムが組み込まれたカラー撮像系において、所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性を得ることができるようにする。
【解決手段】あらかじめ、色分解プリズムの分光特性を測定器71によって測定し、その測定された分光特性に基づいて、色分解プリズムをカラー撮像系に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性を求める。係数演算部72は、総合的な分光特性と所望とする再現系の理想特性との分光特性のずれを求め、その特性のずれに基づいて、総合的な分光特性が再現系の理想特性に近づくようなマトリクス係数を色特性変換係数として求める。この色特性変換係数を撮像装置の係数記憶部61に記憶する。信号処理部62では、撮像素子4R,4G,4Bから出力された各色信号に対して、係数記憶部61に記憶された色特性変換係数を乗ずる演算を行って、映像信号Voutとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望とする色再現系の分光特性が加味された再現系理想特性を、色分解プリズムが組み込まれたカラー撮像系において再現するための色特性変換係数の決定方法、およびプリズムセットならびに撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、テレビカメラやビデオカメラ等の撮像装置には、色分解光学系が備えられている。図15は、従来の色分解光学系の構成例を示している。この色分解光学系101は、撮影レンズ102を介して入射した入射光Lを青色光LB、赤色光LR、および緑色光LGの3つの色光成分に分解するものである。色分解光学系101によって分解された各色光に対応する位置には、CCD(Charge Coupled Device)等の各色光用の撮像素子4B,4R,4Gが配置される。この色分解光学系101は、フィリップス型色分解光学系と呼ばれるものであり、光軸Z1に沿って光の入射側から順に、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第3のプリズム130とからなる色分解プリズムを備え、第1のプリズム110で青色光LB、第2のプリズム120で赤色光LR、第3のプリズム130で緑色光LGを取り出す構成とされている。
【0003】
第1のプリズム110の反射・透過面111には、青色光反射ダイクロイック膜DB1が形成されている。第2のプリズム120の反射・透過面121には、赤色光反射ダイクロイック膜DR1が形成されている。第1のプリズム110と第2のプリズム120は、第1のプリズム110における青色光反射ダイクロイック膜DB1が形成された面111と第2のプリズム120における光の入射面とが空気間隔110AGを空けて互いに対向するようにして配置されている。また、第1のプリズム110の光射出面にはトリミングフィルタ151が設けられている。トリミングフィルタ151の光射出面にはダイクロイック膜151Aが形成されている。同様に、第2のプリズム120の光射出面にはダイクロイック膜152Aが形成されたトリミングフィルタ152が設けられ、第3のプリズム130の光射出面にはダイクロイック膜153Aが形成されたトリミングフィルタ153が設けられている。トリミングフィルタ151,152,153は、分光特性を理想とする特性に近づけるために設けられており、青色光反射ダイクロイック膜DB1と赤色光反射ダイクロイック膜DR1とでは十分に整形できなかった波長成分の分光特性を整える役割を持つ。
【0004】
図17は、一般にカラー撮像系で理想とされている分光特性を赤色(R)成分、青色(B)成分、および緑色(G)成分の3色について示している。なお、図17の理想特性は、各色光成分の最大値が1となるように規格化したものであり、縦軸は透過率強度を示す。この「理想特性」は、色再現系の分光特性が加味された特性である。ここで、「色再現系の分光特性」とは、所望の色再現媒体の分光特性が加味された特性である。例えば、色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系(国際照明委員会が1931年に導入したXYZ表色系)の等色関数x(λ),y(λ),z(λ)の一次変換により求めることができる。ここで、「色再現媒体」とは、撮像装置によって撮影された画像を再現(表示)するものであり、例えば液晶モニタやプロジェクタ等の表示装置である。図16は、理想特性を求めるための3原色R,G,Bの色度座標の一例を示している。3原色R,G,Bは、色再現媒体で再現可能な色範囲を決定する。
【0005】
図15に示した色分解光学系101を用いて図17に示したような理想特性と同じ特性が得られれば理想的な色再現を行うことができる。しかしながら実際には、完全に理想特性と同じ特性にすることは困難であり、理想特性に近似した特性となるような設計がなされている。従来の色分解光学系101では、各プリズムに形成されたダイクロイック膜DB1,DR1とトリミングフィルタ151,152,153に形成されたダイクロイック膜151A,152A,153Aとを適宜調整することで、理想特性に近似した特性となるような設計がなされていた。図18は、そのような設計を行うことにより得られる従来の一般的な色分解光学系の分光透過特性を示している。
【0006】
図19は、従来の色分解光学系101で用いられているダイクロイック膜DB1,DR1の設計例を示している。図19に示したように、従来では、ダイクロイック膜DB1,DR1として、その波長対透過率の特性曲線が、図17に示した理想特性の曲線に比べて急峻な立ち上がり、または立ち下がりを見せる特性を持つものが使用されていた。さらに,ダイクロイック膜151A,152A,153Aの施されたトリミングフィルタ151,152,153を用いて各プリズムの射出面から射出する光の不要な波長成分を遮断している。
【0007】
特許文献1には、等色関数に近似した分光応答度を持つ光電センサと、等色関数の透過限界波長付近で分光応答度が最大となるような補正センサとを備え、光電センサと補正センサとの出力値に適当な係数を乗じて加えることで、光電センサの分光応答度と等色関数との偏差による色度測定の精度低下を防ぐようにした色彩測定器の発明が開示されている。
【特許文献1】特開平9−49765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図17に示した理想特性では、負の分光感度となる領域があり、特に赤色の分光特性について負の感度となる領域(図17の領域100)が多い。この負の領域は、理論上得られるものであり、この負の部分を実際の光学系で直接的に再現することは不可能である。従来の色分解光学系では、図18に示したように、負の領域は再現できない。一方、この光学系で直接的に再現することができない負の特性を、撮像装置側の信号処理の演算により再現することが考えられる。例えば、図17に示した理想特性に対し、負の領域を無くすような、可逆な変換を施した特性を求め、その変換特性を色分解光学系で再現する理想特性とする。そして、その色分解光学系からの出力に対し、撮像装置側の信号処理で逆変換を施すことで、理論的には、負の領域を再現し、擬似的に本来の理想特性を再現することができる。
より具体的には、各色の撮像素子から出力された各色の信号値に対し、マトリクス係数と呼ばれる色特性の変換係数を乗ずることで逆変換を行い、擬似的に理想特性を再現することができる。
【0009】
色分解光学系を含むカラー撮像系全体が、理想的に設計・製造されていれば、上記した方法により、理論的には所望の理想特性を再現することができる。しかしながら、実際には製造誤差や設計誤差があるため、撮像系全体を理想的な特性で製造することは困難である。また、実際の撮影時の分光特性は、光源の分光特性も影響を与えるが、撮影現場では設計時に想定された光源とは異なる光源が用いられる場合もあり、撮影環境によっては理想特性を再現できない場合がある。そのため、実際に製造された撮像装置において、上記した方法で、各色の信号値に対して逆変換を行ったとしても、完全には理想特性を再現することは困難である。これは、撮像系が理想的に設計されていることを前提として、逆変換に用いる変換係数(マトリクス係数)が決定されているためである。実際に製造された撮像装置において、上記した方法で理想特性を再現するためには、逆変換に用いる変換係数を、製造誤差や設計誤差等を考慮したものにすることが必要である。この場合特に、カラー撮像系において、分光特性に大きな影響を与えるのは色分解プリズムの分光特性である。そのため、特に色分解プリズムの製造誤差や設計誤差等を考慮することが重要である。
【0010】
テレビカメラやビデオカメラ等の撮像装置では、上述したように再現系の特性を加味した、図17に示したような再現系理想特性を再現する必要がある。上記した方法でこの理想特性を再現する場合、所望とする再現系の特性に応じた変換係数を用いることが好ましい。一方、特許文献1に記載の色彩測定器では、補正センサを設け、光電センサと補正センサとの出力値に適当な係数を乗じて加えることで、光電センサの分光応答度と等色関数との偏差を最小とし、理想的な色度測定を行えるようにしている。すなわち、特許文献1に記載の技術は、等色関数そのものの特性を実現できるようにするための発明であり、再現系を考慮した特性を実現しようとするものではない。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、色分解プリズムが組み込まれたカラー撮像系において、所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性を得ることができるようにした色特性変換係数の決定方法およびプリズムセット、ならびに撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の色特性変換係数の決定方法は、所望とする色再現系の分光特性が加味された再現系理想特性を得るために、色分解プリズムを有する撮像装置における複数の撮像素子から出力された複数の色信号に対して乗算される色特性変換係数の決定方法であって、再現系理想特性に対して負の値の分光領域を減らすような可逆な変換を施した変換理想特性を光学的に再現するために用いられる色分解プリズムの分光特性を、測定器によって測定するステップと、色分解プリズムの測定された分光特性に基づいて、色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性を第1の演算手段によって求めるステップと、総合的な分光特性と再現系理想特性または変換理想特性との分光特性のずれを第2の演算手段によって求めるステップと、分光特性のずれを減らし、総合的な分光特性が再現系理想特性に近づくようなマトリクス係数を色特性変換係数として第3の演算手段によって求めるステップとを含むものである。
【0013】
ここで、本発明の色特性変換係数の決定方法において、「色再現系の分光特性」とは、所望の色再現媒体の分光特性が加味された特性である。「色再現媒体」とは、撮像装置によって撮影された画像を再現(表示)するものであり、例えば液晶モニタやプロジェクタ等の表示装置である。「再現系理想特性」とは、例えば、所望の色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系(国際照明委員会が1931年に導入したXYZ表色系)の等色関数の一次変換で示された、負の値となる分光領域を有する特性である。
【0014】
本発明の色特性変換係数の決定方法では、再現系理想特性に対して負の値の分光領域を減らすような可逆な変換を施した変換理想特性を再現することを目標として設計された色分解プリズムの分光特性が、測定器によって測定される。色分解プリズムの測定された分光特性に基づいて、色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性が求められ、その総合的な分光特性と再現系理想特性または変換理想特性との分光特性のずれが求められる。その分光特性のずれを減らし、総合的な分光特性が再現系理想特性に近づくようなマトリクス係数が、色特性変換係数として求められる。
このようにして決定された色特性変換係数を、測定対象とされた色分解プリズムを組み込む撮像装置側の信号処理部で使用することで、分光特性に大きな影響を与える色分解プリズムの設計誤差や製造誤差が補正され、映像信号として、所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性が得られる。
【0015】
本発明の色特性変換係数の決定方法では、総合的な分光特性を求めるステップにおいて、撮像装置における色分解プリズム以外の構成要素の分光特性については、あらかじめ決められた所定の代表値を用い、第1の演算手段によって、その所定の代表値と色分解プリズムの測定された分光特性とに基づいて、総合的な分光特性を求めるようにしても良い。
ここで、「撮像装置における色分解プリズム以外の構成要素」とは、例えば撮影レンズ、IR(赤外)カットフィルタ、および撮像素子などである。
【0016】
ここで、本発明の色特性変換係数の決定方法において、測定対象となる色分解プリズムは、例えば、入射光を青色光、赤色光、および緑色光の少なくとも3つの色光成分に分解するものであり、光の入射側から順に、第1のダイクロイック膜を有し、第1のダイクロイック膜によって反射された第1の色光成分を取り出す第1のプリズムと、第2のダイクロイック膜を有し、第1のダイクロイック膜を透過し第2のダイクロイック膜によって反射された第2の色光成分を取り出す第2のプリズムと、第1および第2のダイクロイック膜を透過した第3の色光成分を取り出す第3のプリズムとを少なくとも備えたものを使用することができる。この場合、第1および第2のダイクロイック膜は、その分光特性を示す特性曲線の傾きが、変換理想特性を示す特性曲線の傾きに応じた傾きとなるように設計されていることが好ましい。
【0017】
より具体的には例えば、色分解プリズムは、第1のダイクロイック膜が、第1の色光成分として青色光を反射する膜構成とされると共に、第2のダイクロイック膜が、第2の色光成分として赤色光を反射する膜構成とされ、かつ、第1のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線の傾きが、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最低透過率と最高透過率との間の範囲の20%から80%に変化する平均傾き値が0.2(%/nm)以上2.0(%/nm)以下となる形状を有するように設計されていることが好ましい。また、第2のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線の傾きが、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最高透過率と最低透過率との間の範囲の80%から20%に変化する平均傾き値が−2.0(%/nm)以上−0.2(%/nm)以下となる形状を有するように設計されていることが好ましい。
色分解プリズムとして、このような変換理想特性を示す特性曲線の傾きに応じた傾きとなるように設計されたものを用いることで、色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性を変換理想特性に近似させやすくなる。さらに、本発明の色特性変換係数の決定方法によって求められた色特性変換係数と組み合わせることで、所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性を得やすくなる。
【0018】
また、本発明の色特性変換係数の決定方法は、色特性変換係数と分光特性の測定対象にされた色分解プリズムとを対応付けた識別情報を記録媒体に記録するステップ、をさらに含んでいても良い。
この場合さらに、記録媒体に記録するステップにおいて、識別情報を、求められた色特性変換係数を示すデータと共に記録媒体に記録するようにしても良い。
【0019】
本発明のプリズムセットは、上記本発明の色特性変換係数の決定方法において分光特性の測定対象にされた色分解プリズムと、上記記録媒体とを備えたものである。
このようなプリズムセットを用いて撮像装置を構成することで、分光特性に大きな影響を与える色分解プリズムの設計誤差や製造誤差が補正され、映像信号として、所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性が得られる。
【0020】
本発明による撮像装置は、上記本発明の色特性変換係数の決定方法において分光特性の測定対象にされた色分解プリズムと、上記本発明の色特性変換係数の決定方法において求められた色特性変換係数を示すデータを記憶する係数記憶部と、色分解プリズムによって色分解された複数の色光に対応して設けられ、入射した各色光に応じた色信号を出力する複数の撮像素子と、複数の撮像素子から出力された複数の色信号に対して、係数記憶部に記憶された色特性変換係数を乗ずる演算を行う信号処理部とを備えたものである。
本発明による撮像装置では、係数記憶部に、上記本発明の色特性変換係数の決定方法において求められた色特性変換係数を示すデータが記憶される。信号処理部では、複数の撮像素子から出力された複数の色信号に対して、係数記憶部に記憶された色特性変換係数を乗ずる演算を行う。これにより、分光特性に大きな影響を与える色分解プリズムの設計誤差や製造誤差が補正され、映像信号として、所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の色特性変換係数の決定方法によれば、色分解プリズムの分光特性を測定し、その測定された分光特性に基づいて、色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性を求め、その総合的な分光特性と再現系理想特性または変換理想特性との分光特性のずれに基づいて、色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの総合的な分光特性が、所望の再現系理想特性に近づくようなマトリクス係数を、色特性変換係数として求めるようにしたので、その決定された色特性変換係数を、測定対象とされた色分解プリズムを組み込む撮像装置側の信号処理部で使用することで、分光特性に大きな影響を与える色分解プリズムの設計誤差や製造誤差を補正することができ、カラー撮像系において所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性を得ることができる。
【0022】
本発明のプリズムセットによれば、上記本発明の色特性変換係数の決定方法において分光特性の測定対象にされた色分解プリズムと、この色分解プリズムに対応付けられた色特性変換係数に関する情報を記録した記録媒体とを備えるようにしたので、撮像装置に組み込んで使用することで、分光特性に大きな影響を与える色分解プリズムの設計誤差や製造誤差を補正することができ、カラー撮像系において所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性を得ることができる。
【0023】
本発明の撮像装置によれば、係数記憶部に上記本発明の色特性変換係数の決定方法において求められた色特性変換係数を示すデータを記憶し、信号処理部で、複数の撮像素子から出力された複数の色信号に対して、その係数記憶部に記憶された色特性変換係数を乗ずる演算を行うようにしたので、分光特性に大きな影響を与える色分解プリズムの設計誤差や製造誤差を補正することができ、カラー撮像系において所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系1を備えた撮像装置の要部構成を示している。この撮像装置は例えばテレビカメラやビデオカメラ等に利用可能である。この撮像装置は、撮像光学系と、撮像光学系を介して入射した各色光に応じた色信号を出力する複数の撮像素子4B,4R,4Gと、撮像装置本体60内に設けられ、複数の撮像素子4B,4R,4Gからの色信号を処理して映像信号Voutとして出力する撮像系信号回路とを備えている。撮像光学系は、色分解光学系1と、撮影レンズ2とを有している。撮像系信号回路は、係数記憶部61と、信号処理部62とを有している。係数記憶部61は、不揮発性の半導体メモリ等で構成されている。信号処理部62は、例えば画像処理用のMPU(マイクロプロセッサユニット)を有した構成とされている。
【0026】
色分解光学系1は、撮影レンズ2を介して入射した入射光Lを青色光LB、赤色光LR、および緑色光LGの3つの色光成分に分解するものである。色分解光学系1によって分解された各色光に対応する位置には、CCD等の各色光用の撮像素子4B,4R,4Gが配置されている。
【0027】
色分解光学系1は、フィリップス型色分解光学系と呼ばれるものであり、光軸Z1に沿って光の入射側から順に、IR(赤外)カットフィルタ3と、第1のプリズム10、第2のプリズム20および第3のプリズム30からなる色分解プリズムとを備えている。本実施の形態における色分解光学系1は、第1のプリズム10で青色光LB、第2のプリズム20で赤色光LR、第3のプリズム30で緑色光LGを取り出す構成例である。
【0028】
第1のプリズム10は、第1の面11、第2の面12、および第3の面13を有している。第1のプリズム10の第3の面13は光射出面である。この射出面にはトリミングフィルタ51が設けられている。このトリミングフィルタ51には、従来用いられていたような特性調整用のダイクロイック膜は設けられておらず、その代わりに、トリミングフィルタ51の光射出面にゴースト・フレア防止用の反射防止膜51ARが形成されている。なお、トリミングフィルタ51を設けることなく、第1のプリズム10の第3の面13に直接、反射防止膜51ARを形成するようにしても良い。
【0029】
第1のプリズム10の第2の面12には、第1のダイクロイック膜としての青色光反射ダイクロイック膜DBが形成されている。青色光反射ダイクロイック膜DBは、第1の色光成分として青色光LBを反射し、赤色光LRおよび緑色光LGを透過する膜構成とされている。青色光反射ダイクロイック膜DBは、後述するように、目的とする所定の分光特性に応じた膜特性で設計されている。
【0030】
第2のプリズム20は、第1の面21、第2の面22、および第3の面23を有している。第2のプリズム20は、第1のプリズム10に対して所定の空気間隔10AGを空けて配置されている。より詳しくは、第2のプリズム20の第1の面21と、第1のプリズム10の第2の面12とが略平行となるように、空気間隔10AGを空けて対向配置されている。第2のプリズム20の第3の面23は光射出面である。この射出面にはトリミングフィルタ52が設けられている。このトリミングフィルタ52には、第1のプリズム10におけるトリミングフィルタ51と同様、特性調整用のダイクロイック膜は設けられておらず、その代わりに、トリミングフィルタ52の光射出面にゴースト・フレア防止用の反射防止膜52ARが形成されている。なお、トリミングフィルタ52を設けることなく、第2のプリズム20の第3の面23に直接、反射防止膜52ARを形成するようにしても良い。
【0031】
第2のプリズム20の第2の面22には、第2のダイクロイック膜としての赤色光反射ダイクロイック膜DRが形成されている。赤色光反射ダイクロイック膜DRは、第2の色光成分として赤色光LRを反射し、緑色光LGを透過する膜構成とされている。赤色光反射ダイクロイック膜DRは、後述するように、目的とする所定の分光特性に応じた膜特性で設計されている。
【0032】
第3のプリズム30は、第1の面31、および第2の面32を有している。第3のプリズム30は、赤色光反射ダイクロイック膜DRを介して第2のプリズム20に接合されている。より詳しくは、第2のプリズム20の第2の面22と、第3のプリズム30の第1の面31とが赤色光反射ダイクロイック膜DRを介して接合されている。第3のプリズム30の第2の面32は光射出面である。この射出面にはトリミングフィルタ53が設けられている。このトリミングフィルタ53には、第1のプリズム10におけるトリミングフィルタ51と同様、特性調整用のダイクロイック膜は設けられておらず、その代わりに、トリミングフィルタ53の光射出面にゴースト・フレア防止用の反射防止膜53ARが形成されている。なお、トリミングフィルタ53を設けることなく、第3のプリズム30の第2の面32に直接、反射防止膜53ARを形成するようにしても良い。
【0033】
IRカットフィルタ3は、第1のプリズム10の前側に配置されている。IRカットフィルタ3は、理想的な分光特性に近い特性をより得やすくするために、視感度に近似した特性を持つ吸収型フィルタで構成されていることが好ましい。ここでいう「視感度に近似した特性を持つ吸収型フィルタ」とは、「視感度補正フィルタ」と呼ばれ、人間の目の感度特性に近似し、緑から赤の波長に向かって減衰する透過率を持ち、赤外域でも透過率が低下しているような吸収型フィルタである。なお、IRカットフィルタ3を第1のプリズム10の前側ではなく、赤色光を取り出すプリズム(図1では第2のプリズム20)の光射出面側に配置しても良い。また、IRカットフィルタ3を、第1のプリズム10の前側と赤色光を取り出すプリズムの光射出面側の双方に配置しても良い。また、吸収型フィルタだけでは赤外光を十分に除去できない場合には、赤外光をカットするコートタイプの赤外カットフィルタをさらに備えていても良い。図1では、平板状の吸収型フィルタに赤外光をカットする膜3Rをコートした構成例を示している。ただし、赤色光を取り出すプリズムの光射出面側にIRカットフィルタ3を配置する場合は、赤外カット用のコートは施さず、吸収型フィルタのみで構成することが好ましい。その場合さらに、吸収型フィルタに反射防止膜を施した構成にすることがより好ましい。
【0034】
なお、図示しないが、この色分解光学系1において、第1のプリズム10よりも前側に配置され、紫外光をカットする吸収タイプもしくはコートタイプの紫外カットフィルタをさらに備えていても良い。
【0035】
ここで、本実施の形態における撮像光学系によって光学的に再現しようとしている再現系理想特性について説明する。
【0036】
本実施の形態において、撮像装置の出力として最終的に再現したい特性は、例えば図2(A)に示したような再現系理想特性である。これは、規格化されていないだけで、図17に示した特性と実質的に同じである。この再現系理想特性は、例えば、所望の色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系の等色関数x(λ),y(λ),z(λ)の一次変換された関数r(λ),g(λ),b(λ)で表されるものである。この再現系理想特性を表す関数r(λ),g(λ),b(λ)は、RGB表色系の等色関数そのものであっても良い。この再現系理想特性を表す関数r(λ),g(λ),b(λ)にはまた、人間の視覚特性が加味されていても良い。このような再現系理想特性には負の分光感度となる領域が存在するが、その負の分光感度となる領域は、撮像光学系で光学的に直接的に再現することはできない。そこで、本実施の形態では、図2(A)に示した再現系理想特性に対し、負の領域を無くすような、可逆な変換を施した特性をあらかじめ演算により求め、その変換特性を撮像光学系で光学的に再現する変換理想特性(目的とする所定の分光特性)としている。そして、その撮像光学系を介して撮像素子4B,4R,4Gから出力された各色の色信号(信号値Rs,Gs,Bs)に対し、信号処理部62で逆変換を施す演算を行うことで負の領域を再現し、擬似的に本来の理想特性(再現系理想特性)を再現するようにしている。
【0037】
図2(B)は、図2(A)に示した関数r(λ),g(λ),b(λ)で表される各色の再現系理想特性に対し、上記した負の領域を無くすような可逆な変換を施した変換理想特性の関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)の一例を示している。このような変換は、以下の[数1]の式(1)に示すような1次変換の演算により行うことができる。Mは、変換理想特性を表す関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)において、負の値ができるだけ少なくなるような行列とする。ここで、撮像光学系が理想的に設計・製造されていれば、以下の[数2]の式(2)に示すように、関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)に逆行列M-1を掛けて逆変換することで、理論的には、所望とする元の再現系理想特性の関数r(λ),g(λ),b(λ)を再現することができる。
【0038】
【数1】

【0039】
【数2】

【0040】
本実施の形態においては、特に、青色光反射ダイクロイック膜DBおよび赤色光反射ダイクロイック膜DRの膜特性を、上記関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)で表される変換理想特性を再現することを目標とした設計とし、撮像光学系において、できるだけ関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)で表される変換理想特性に近似した特性が得られるようにしている。ここで、関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)で表される変換理想特性は、負の値ができるだけ少なくなるような特性とされているので、理論的には、撮像光学系で光学的に直接的に再現することが可能である。
【0041】
図3(A)は、本実施の形態における青色光反射ダイクロイック膜DBの透過特性曲線の一例を示している。青色光反射ダイクロイック膜DBは、波長に対する透過率を示す透過特性曲線の傾きが、理想的な緑色の分光特性(上記した一次変換された関数g’(λ)で表される緑色の変換理想特性)の短波長側の特性曲線に沿う形状を有している。具体的には、青色光反射ダイクロイック膜DBは、その透過特性曲線の傾きが、理想的な緑色の分光特性の短波長側の特性曲線に沿う形で430nm以上670nm以下の波長範囲内で低透過率から高透過率に立ち上がる変化をする形状を有するように構成されている。より具体的には、その透過特性曲線が、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最低透過率と最高透過率との間の範囲の20%から80%に変化する平均傾き値が0.2(%/nm)以上2.0(%/nm)以下となる形状を有していることが好ましい。
【0042】
図3(B)は、本実施の形態における赤色光反射ダイクロイック膜DRの透過特性曲線の一例を示している。赤色光反射ダイクロイック膜DRは、波長に対する透過率を示す透過特性曲線の傾きが、理想的な緑色の分光特性(上記した一次変換された関数g’(λ)で表される緑色の変換理想特性)の長波長側の特性曲線に沿う形状を有している。具体的には、赤色光反射ダイクロイック膜DRは、その透過特性曲線の傾きが、理想的な緑色の分光特性の長波長側の特性曲線に沿う形で430nm以上670nm以下の波長範囲内で高透過率から低透過率に立ち下がる変化をする形状を有するように構成されている。より具体的には、その透過特性曲線が、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最高透過率と最低透過率との間の範囲の80%から20%に変化する平均傾き値が−2.0(%/nm)以上−0.2(%/nm)以下となる形状を有していることが好ましい。
【0043】
このように、本実施の形態における青色光反射ダイクロイック膜DBおよび赤色光反射ダイクロイック膜DRは、その特性曲線の傾きが、理想とする分光特性に応じた設計とされている。
【0044】
しかしながら、撮像光学系を、上記関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)で表される変換理想特性を再現することを目標とした設計にしたとしても、製造誤差や設計誤差等があるため、完全に理想的なものを製造することは困難である。そのため、実際に製造された撮像装置において、上記した方法で再現系理想特性を再現するためには、逆変換に用いる変換係数M-1を、製造誤差や設計誤差等を考慮したものにすることが必要である。この場合、特に、カラー撮像系において、分光特性に大きな影響を与えるのは色分解光学系1における色分解プリズムの分光特性である。
【0045】
そのため、本実施の形態においては、特に色分解プリズムの製造誤差や設計誤差等を考慮し、色分解光学系1を撮像装置に組み込む前の製造段階において、あらかじめ、色分解プリズムの分光特性を測定器71によって測定するようにしている。そして、その測定された分光特性に基づいて、色分解プリズムをカラー撮像系に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性を、係数演算部72において求めるようにしている。
【0046】
ここで、撮像系全体の総合的な分光特性を求めるためには、撮像装置における色分解プリズム以外の構成要素の分光特性が必要である。例えば、光源、撮影レンズ2、IRカットフィルタ3、撮像素子4B,4R,4Gの分光特性が必要である。本実施の形態では、そのような色分解プリズム以外の構成要素の分光特性については、あらかじめ決められた所定の代表値を用いるようにしている。係数演算部72は、その所定の代表値と色分解プリズムの測定された分光特性とに基づいて、総合的な分光特性を求めるようにしている。さらに、係数演算部72において、総合的な分光特性と所望とする再現系の理想特性との分光特性のずれを求め、その特性のずれに基づいて、総合的な分光特性が再現系の理想特性に近づくようなマトリクス係数を、色特性変換係数として求めるようにしている。この色特性変換係数を、上記した逆変換に用いる変換係数M-1に相当するものとして、撮像装置の係数記憶部61に記憶する。
以下、本実施の形態では、上記した理論的な変換係数M-1に代えて実際の逆変換の演算に用いる色特性変換係数を、
(M-1)’と表記する。
信号処理部62では、撮像素子4R,4G,4Bから出力された各色信号に対して、係数記憶部61に記憶された色特性変換係数(M-1)’を乗ずる演算を行って、映像信号Voutとして出力するようにしている。
【0047】
ここで、製造誤差や設計誤差等を考慮した撮像系全体の総合的な分光特性が、関数r0’(λ),g0’(λ),b0’(λ)で表されるものとすると、以下の[数3]の式(3)に示すように、関数r0’(λ),g0’(λ),b0’(λ)に色特性変換係数(M-1)’を乗ずる逆変換をすることで、関数r’’(λ),g’’(λ),b’’(λ)で表される特性が得られる。色特性変換係数(M-1)’として、再現系理想特性とのずれが最小となるような値を決めることで、関数r’’(λ),g’’(λ),b’’(λ)は、所望とする元の再現系理想特性の関数r(λ),g(λ),b(λ)に近似した特性とすることができる。すなわち、色特性変換係数(M-1)’としては、上記式(2)で表される理論式の関数r(λ),g(λ),b(λ)と、上記式(3)で表される製造誤差等を考慮した実測値ベースの関数r’’(λ),g’’(λ),b’’(λ)との差が最小となるような係数を求めれば良い。例えば最小2乗法により、その2乗差が最小となるような係数を求めれば良い。
【0048】
【数3】

【0049】
色分解プリズムの分光特性を測定する測定器71は、例えば、図10に示したように、分光器81と、フォトマル等の光センサ82R,82G,82Bとを有している。測定器71は、分光器81からの光を入射光Lとして色分解プリズムに入射すると共に、色分解プリズムからの出力光を、光センサ82R,82G,82Bで検出するものである。
【0050】
係数演算部72は、例えばMPU(マイクロプロセッサユニット)を有した構成とされている。係数演算部72は、測定器71で測定された色分解プリズムの分光特性に基づいて演算した撮像系全体の総合的な分光特性を求め、例えば上記した最小2乗法により、本実施の形態における色特性変換係数(M-1)’を演算するようになっている。係数演算部72で求められた色特性変換係数(M-1)’を示すデータは、例えば記録媒体73や通信手段74を介して係数記憶部61に記憶されるようになっている。通信手段74は、例えば撮像装置に備えられた図示しない外部インタフェース規格に適合する通信インタフェースである。記録媒体73としては、半導体メモリや各種光ディスク等を使用することができる。
本実施の形態において、係数演算部72は、本発明における「第1の演算手段」、「第2の演算手段」、および「第3の演算手段」の一具体例に対応する。
【0051】
記録媒体73には、係数演算部72で求められた色特性変換係数(M-1)’と分光特性の測定対象にされた色分解プリズムとを対応付けた識別情報(ID、シリアルナンバー等)が記録されていても良い。この識別情報を、求められた色特性変換係数(M-1)’を示すデータと共に記録媒体73に記録するようにしても良い。このような情報が記録された記録媒体73と、分光特性の測定対象にされた色分解プリズムとを「プリズムセット」として用意し、撮像装置全体を組み立てるときに、組み込まれた色分解プリズムに対応する色特性変換係数(M-1)’のデータを、記録媒体73から読み出し、係数記憶部61に記憶させるようにすれば良い。
【0052】
次に、本実施の形態における撮像装置の動作を説明する。
【0053】
図1に示した撮像装置において、図示しない光源によって照射された図示しない被写体からの被写体光は、撮影レンズ2を介して色分解光学系1に入射される。色分解光学系1では入射光Lを青色光LB、赤色光LR、および緑色光LGの3つの色光成分に分解する。より詳しくは、まず、入射光Lのうち青色光LBが、青色光反射ダイクロイック膜DBによって反射され、第1のプリズム10から第1の色光成分として取り出される。また、青色光反射ダイクロイック膜DBを透過した赤色光LRが、赤色光反射ダイクロイック膜DRによって反射され、第2のプリズム20から第2の色光成分として取り出される。さらに、青色光反射ダイクロイック膜DBおよび赤色光反射ダイクロイック膜DRを透過した緑色光LGが、第3の色光成分として第3のプリズム30から取り出される。色分解光学系1によって分解された各色光は、各色光に対応した設けられた撮像素子4B,4R,4Gに入射する。撮像素子4B,4R,4Gでは、入射した各色光に応じた電気信号を撮像信号として出力する。
【0054】
ここで、本実施の形態における撮像光学系により得られる分光特性を、実際の設計例により示す。図4は、この色分解光学系1で用いられている青色光反射ダイクロイック膜DBおよび赤色光反射ダイクロイック膜DRの具体的な設計例での特性を示している。図4に示した特性は、例えば図5および図6に具体的に数値データとして示した膜設計により得られる。ただし、膜物質、層数および各層の膜厚は図5および図6の例に限定されるものではない。図7は、図4に示した膜設計の施されたプリズム部分全体(第1、第2および第3のプリズム10,20,30全体)での分光透過特性を示している。
【0055】
図8は、撮像装置におけるプリズム部以外の光学要素の分光特性の一例を示している。図8では、プリズム部以外の光学要素の特性として、図示しない色温度3200Kの光源と、撮影レンズ2と、IRカットフィルタ3と、撮像素子4R,4G,4BとしてのCCDとを示している。図9は、図8に示したプリズム部以外の光学要素の特性と図7に示したプリズム部分全体での特性とを合わせた、撮像系全体での総合的な分光透過特性を示している。
【0056】
図9に示した撮像系全体での総合的な分光特性では、図2(A)に示した再現系理想特性に対して、負の分光領域を再現できていないが、本実施の形態では、撮像素子4R,4G,4Bから出力された各色信号に対して、信号処理部62において、係数記憶部61に記憶された色特性変換係数(M-1)’を乗ずる演算を行うことで、最終的には、図2(A)に示したような再現系理想特性に近似した特性を再現できる。
【0057】
次に、図11および図12を参照して、本実施の形態に係る撮像装置の分光特性を最終的な理想状態にまで導くためのプロセスを、本実施の形態における色特性変換係数(M-1)’の決定方法と共に説明する。
【0058】
まず、例えばXYZ表色系の等色関数x(λ),y(λ),z(λ)を関数変換し、所望とする色再現系の分光特性が加味された、関数r(λ),g(λ),b(λ)で表される再現系理想特性を求めておく(図11のステップS101,102、図12(A),(B))。次に、関数r(λ),g(λ),b(λ)で表される各色の再現系理想特性に対し、上述の[数1]の式(1)に示すような変換行列Mを用いた演算により、負の領域を無くすような可逆な変換を施した正の値の関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)で表される変換理想特性を求める(ステップS103,S104、図12(C))。ここまでのステップで求められる関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)は理論値である。この理論値に基づいて、色分解プリズムを始めとする撮像光学系を設計・製造していく。
【0059】
設計段階として、撮像系全体の設計値を決定する(ステップS105、図12(D))。これは正の値の関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)で表される変換理想特性に近似した正の値の総合設計値である。この変換理想特性に近似した総合設計値を再現することを目標として、色分解プリズムを設計、製造する(ステップS106,S107)。
【0060】
次に、この色分解プリズムの分光特性を、測定器10によって測定し、その特性の実測値を得る(ステップS108)。次に、色分解プリズムの測定された分光特性に基づいて、色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性を係数演算部72によって求める(ステップS109、図12(E))。この総合的な分光特性を求めるステップにおいて、係数演算部72は、撮像装置における色分解プリズム以外の構成要素(撮影レンズ2、IRカットフィルタ3等)の分光特性については、あらかじめ決められた「所定の代表値」を用い、その所定の代表値と色分解プリズムの測定された分光特性とに基づいて、総合的な分光特性を求める。ここで求められる総合的な分光特性は、色分解プリズムについての製造誤差や設計誤差等が考慮された、関数r0’(λ),g0’(λ),b0’(λ)で表される撮像系全体の総合実測値であり、正の値である。
なお、上記「所定の代表値」は、色分解プリズム以外の構成要素について、例えばあらかじめシミュレーションで求められた値であっても良いし、測定器によってあらかじめ測定して求められた実測値であっても良い。また、これらの値は、測定対象とされた色分解プリズムと共に実際に撮像装置に組み込まれる構成要素そのもののシミュレーション値または測定値であっても良いし、実際に組み込まれるものと同等の他の部品のシミュレーション値または測定値を用いても良い。
【0061】
次に、係数演算部72は、関数r0’(λ),g0’(λ),b0’(λ)で表される総合的な分光特性と関数r(λ),g(λ),b(λ)で表される再現系理想特性との分光特性のずれを求める。係数演算部72は、その分光特性のずれを減らし、総合的な分光特性が再現系理想特性に近づくようなマトリクス係数を色特性変換係数(M-1)’として求める(ステップS110)。具体的には、上述したように、上記式(2)で表される理論式の関数r(λ),g(λ),b(λ)と、上記式(3)で表される製造誤差等を考慮した実測値ベースの関数r’’(λ),g’’(λ),b’’(λ)との差が最小となるような係数を最小2乗法等の演算により求める。
【0062】
この係数演算部72で求められた色特性変換係数(M-1)’を示すデータを、撮像装置全体を組み立てるときに、例えば記録媒体73や通信手段74を介して、撮像装置における係数記憶部61に記憶させる。また、撮像装置全体を組み立てるときには、上記分光特性の測定対象とされた色分解プリズムを組み込む。その色分解プリズムが組み込まれた撮像装置において、信号処理部62では、複数の撮像素子4R,4G,4Bから出力された複数の色信号に対して、係数記憶部61に記憶された色特性変換係数(M-1)’を乗ずる演算(近似逆変換)を行う(ステップS111)。これにより、所望とする色再現系の分光特性が加味された再現系理想特性に近似した特性を得ることができる(ステップS112、図12(F))。
【0063】
以上のようなプロセスにより、本実施の形態に係る色特性変換係数の決定方法によれば、色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの総合的な分光特性が、所望の再現系理想特性に近づくようなマトリクス係数を、色特性変換係数(M-1)’として求めるようにしたので、その決定された色特性変換係数を、測定対象とされた色分解プリズムを組み込む撮像装置側の信号処理部62で使用することで、分光特性に大きな影響を与える色分解プリズムの設計誤差や製造誤差を補正することができ、カラー撮像系において所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性を得ることができる。
【0064】
また、本実施の形態に係る撮像装置によれば、係数記憶部61に上記色特性変換係数の決定方法において求められた色特性変換係数(M-1)’を示すデータを記憶し、信号処理部62で、複数の撮像素子4R,4G,4Bから出力された複数の色信号に対して、その係数記憶部61に記憶された色特性変換係数(M-1)’を乗ずる演算を行うようにしたので、分光特性に大きな影響を与える色分解プリズムの設計誤差や製造誤差を補正することができ、カラー撮像系において所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性に近い特性を得ることができる。
【0065】
さらに、本実施の形態に係る撮像装置によれば、色分解プリズムの分光特性(膜特性)を示す特性曲線の傾きが、図3(A),(B)に示したように、変換理想特性(図2(B)、図12(C)参照)を示す特性曲線の傾きに応じた傾きとなるように設計されているので、色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性を変換理想特性に近似させやすくなる。これにより、本実施の形態に係る色特性変換係数の決定方法によって求められた色特性変換係数(M-1)’と組み合わせることで、所望の色再現系の特性が加味された理想的な分光特性を得やすくなる。
【0066】
なお、例えば、色分解プリズムの膜特性の傾きが、図19に示したような急峻な立ち上がりを示すものとされ、撮像系全体の総合的な分光透過特性が図18に示したように、変換理想特性から大幅にずれている場合について考察する。この場合、総合的な分光透過特性の形状が、各色について矩形状のものとなっているので、本実施の形態に係る色特性変換係数の決定方法によって求められた色特性変換係数(M-1)’を用いた演算を行っても、理想的な分光特性が十分に得にくい。色特性変換係数(M-1)’は、上記した[数3]の式(3)に示すような1次変換による比較的単純な演算を行うものである。このような比較的単純な演算を行っただけでは、矩形状の特性を図17に示すようななだらかな曲線形状を有する理想特性に十分に近づけることはできない。
[第2の実施の形態]
【0067】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、上記第1の実施の形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0068】
図13および図14は、本実施の形態に係る撮像装置の分光特性を最終的な理想状態にまで導くためのプロセスを、本実施の形態における色特性変換係数(M-1)’の決定方法と共に示したものである。
【0069】
図13および図14に示したプロセスにおいて、図11および図12に示した上記第1の実施の形態におけるプロセスと異なる部分は、色特性変換係数(M-1)’を求めるステップS210,S211の部分(図14(E)→(F)の部分)である。上記第1の実施の形態では、係数演算部72において、色特性変換係数(M-1)’を、関数r0’(λ),g0’(λ),b0’(λ)で表される実測値ベースの総合的な分光特性と関数r(λ),g(λ),b(λ)で表される再現系理想特性との分光特性のずれを最小とするような演算により求めるようにした。
【0070】
一方、本実施の形態では、係数演算部72は、まず、再現系理想特性に対して変換行列Mによる可逆な変換を施した正の値の関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)で表される変換理想特性と関数r0’(λ),g0’(λ),b0’(λ)で表される実測値ベースの総合的な分光特性とを比較して、そのずれが最小となるような演算(最小2乗法等)により第1の色特性変換係数Nを求める(ステップS210)。そして、係数演算部72は、関数r0’(λ),g0’(λ),b0’(λ)で表される実測値ベースの総合的な分光特性(図14(E))に対して、第1の色特性変換係数Nを乗ずる演算を行うことで、正の変換理想特性(図14(C))に近似した、正の値の近似変換理想特性を得る(ステップS211、図14(F))。ここで、この正の値の近似変換理想特性は、正の値の関数r’(λ)+,g’(λ)+,b’(λ)+で表されるものとする。次に、この正の値の関数r’(λ)+,g’(λ)+,b’(λ)+で表される正の値の近似変換理想特性に対して、第2の色特性変換係数として変換行列M-1を乗ずる演算を行うことで、所望とする色再現系の分光特性が加味された再現系理想特性に近似した特性を得ることができる(ステップS111,S112)。
【0071】
なお、変換行列M-1は、図2(A),(B)を用いて上述したように理論的に一義的に決まる係数であり、正の値の関数r’(λ),g’(λ),b’(λ)で表される変換理想特性(図14(C))を求める際に用いた変換行列Mの逆行列である。また、本実施の形態では、上記第1の実施の形態における色特性変換係数(M-1)’が、
(M-1)’=N・M-1
として、第1の色特性変換係数Nと第2の色特性変換係数M-1との積で与えられることと等価である。このN・M-1で表される色特性変換係数(M-1)’を示すデータを、上記第1の実施の形態と同様にして、撮像装置における係数記憶部61に記憶させる。その他の部分については、基本的に上記第1の実施の形態と同様である。
[その他の実施の形態]
【0072】
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、その他の変形実施が可能である。
例えば、上記各実施の形態では、入射光Lを青色光LB、赤色光LR、および緑色光LGの順に分解する色分解光学系1を例に説明したが、色分解の順番はこれに限らず、他の順番で色分解するものであっても良い。また、上記各実施の形態では、色分解光学系として3つのプリズムを備え、3つの色光に分解する例を示したが、本発明は、4つ以上のプリズムを備え、4つ以上の色光に分解するような色分解光学系にも適用することが可能である。
【0073】
また、上記各実施の形態では、色分解プリズムを用いたカラー撮像系について説明したが、モザイクフィルタと呼ばれる撮像素子の各々のユニットセルに対応したカラーフィルタを装着した単板のカラーカメラや、面順次方式と呼ばれる回転式のカラーフィルタが装着されたカラーカメラなど、カラーフィルタを装着した全てのカラーカメラにも応用が可能である。この場合、色分解プリズムの分光特性を測定するのと同様にフィルタの分光特性を測定し、その測定結果に基づいて最適な色特性変換係数を求めるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の一構成例を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系で適用される理想特性についての説明図図であり、(A)は一次変換前の理想特性を示し、(B)は一次変換後の理想特性を示す。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系における青色光反射ダイクロイック膜DBの特性(A)、および赤色光反射ダイクロイック膜DRの特性(B)についての説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系における青色光反射ダイクロイック膜DBと赤色光反射ダイクロイック膜DRとの設計例を示す特性図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系における青色光反射ダイクロイック膜DBの膜設計の数値例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る色分解光学系における赤色光反射ダイクロイック膜DRの膜設計の数値例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置におけるプリズム部分の分光特性の一例を示す特性図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置におけるプリズム部以外の光学要素の分光特性の一例を示す特性図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置における撮像光学系(係数変換前)の総合的な分光特性の一例を示す特性図である。
【図10】色分解プリズムの分光特性の測定方法の一例を示す構成図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の分光特性を最終的な理想状態にまで導くためのプロセスを示す流れ図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の分光特性を最終的な理想状態にまで導くためのプロセスを示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の分光特性を最終的な理想状態にまで導くためのプロセスを示す流れ図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の分光特性を最終的な理想状態にまで導くためのプロセスを示す説明図である。
【図15】従来の色分解光学系の構成例を示す断面図である。
【図16】理想特性を求めるための3原色の色度座標を示すxy色度図である。
【図17】規格化された理想特性を示す特性図である。
【図18】従来の一般的な色分解光学系の分光特性を示す特性図である。
【図19】従来の色分解光学系で用いられているダイクロイック膜の特性の一例を示す特性図である。
【符号の説明】
【0075】
L…入射光、LB…青色光成分、LR…赤色光成分、LG…緑色光成分、DB…青色光反射ダイクロイック膜、DR…赤色光反射ダイクロイック膜、DG…緑色光反射ダイクロイック膜、1…色分解光学系、2…撮影レンズ、3…IRカットフィルタ、4R,4G,4B…撮像素子、10…第1のプリズム、20…第2のプリズム、30…第3のプリズム、51…第1のトリミングフィルタ、52…第2のトリミングフィルタ、53…第3のトリミングフィルタ、51AR…第1の反射防止膜、52AR…第2の反射防止膜、53AR…第3の反射防止膜、60…撮像装置本体、61…係数記憶部、62…信号処理部、71…測定器、72…係数演算部、73…記録媒体、74…通信手段、81…分光器、82R,82G,82B…光センサ、Vout…映像信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望とする色再現系の分光特性が加味された再現系理想特性を得るために、色分解プリズムを有する撮像装置における複数の撮像素子から出力された複数の色信号に対して乗算される色特性変換係数の決定方法であって、
前記再現系理想特性に対して負の値の分光領域を減らすような可逆な変換を施した変換理想特性を光学的に再現するために用いられる色分解プリズムの分光特性を、測定器によって測定するステップと、
前記色分解プリズムの前記測定された分光特性に基づいて、前記色分解プリズムを撮像装置に組み込んだときの撮像系全体の総合的な分光特性を第1の演算手段によって求めるステップと、
前記総合的な分光特性と前記再現系理想特性または前記変換理想特性との分光特性のずれを第2の演算手段によって求めるステップと、
前記分光特性のずれを減らし、前記総合的な分光特性が前記再現系理想特性に近づくようなマトリクス係数を前記色特性変換係数として第3の演算手段によって求めるステップと
を含むことを特徴とする色特性変換係数の決定方法。
【請求項2】
前記総合的な分光特性を求めるステップにおいて、前記撮像装置における前記色分解プリズム以外の構成要素の分光特性については、あらかじめ決められた所定の代表値を用い、前記第1の演算手段によって、その所定の代表値と前記色分解プリズムの前記測定された分光特性とに基づいて、前記総合的な分光特性を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の色特性変換係数の決定方法。
【請求項3】
前記再現系理想特性は、所望の色再現媒体の3原色の色度座標から換算され、XYZ表色系の等色関数の一次変換で示された、負の値となる分光領域を有する特性である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の色特性変換係数の決定方法。
【請求項4】
前記色分解プリズムは、入射光を青色光、赤色光、および緑色光の少なくとも3つの色光成分に分解するものであり、光の入射側から順に、
第1のダイクロイック膜を有し、前記第1のダイクロイック膜によって反射された第1の色光成分を取り出す第1のプリズムと、
第2のダイクロイック膜を有し、前記第1のダイクロイック膜を透過し前記第2のダイクロイック膜によって反射された第2の色光成分を取り出す第2のプリズムと、
前記第1および第2のダイクロイック膜を透過した第3の色光成分を取り出す第3のプリズムと
を少なくとも備え、
前記第1および第2のダイクロイック膜は、その分光特性を示す特性曲線の傾きが、前記変換理想特性を示す特性曲線の傾きに応じた傾きとなるように設計されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の色特性変換係数の決定方法。
【請求項5】
前記色分解プリズムは、前記第1のダイクロイック膜が、前記第1の色光成分として青色光を反射する膜構成とされると共に、前記第2のダイクロイック膜が、前記第2の色光成分として赤色光を反射する膜構成とされ、かつ、
前記第1のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線の傾きが、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最低透過率と最高透過率との間の範囲の20%から80%に変化する平均傾き値が0.2(%/nm)以上2.0(%/nm)以下となる形状を有し、
前記第2のダイクロイック膜の波長に対する透過率を示す透過特性曲線の傾きが、430nm以上670nm以下の波長範囲内において、最高透過率と最低透過率との間の範囲の80%から20%に変化する平均傾き値が−2.0(%/nm)以上−0.2(%/nm)以下となる形状を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の色特性変換係数の決定方法。
【請求項6】
前記色特性変換係数と前記分光特性の測定対象にされた色分解プリズムとを対応付けた識別情報を記録媒体に記録するステップ、をさらに含む
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の色特性変換係数の決定方法。
【請求項7】
前記記録媒体に記録するステップにおいて、前記識別情報を、前記求められた色特性変換係数を示すデータと共に前記記録媒体に記録する
ことを特徴とする請求項6に記載の色特性変換係数の決定方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の色特性変換係数の決定方法において前記分光特性の測定対象にされた色分解プリズムと、前記記録媒体と
を備えたことを特徴とするプリズムセット。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の色特性変換係数の決定方法において前記分光特性の測定対象にされた色分解プリズムと、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の色特性変換係数の決定方法において求められた色特性変換係数を示すデータを記憶する係数記憶部と、
前記色分解プリズムによって色分解された複数の色光に対応して設けられ、入射した各色光に応じた色信号を出力する複数の撮像素子と、
前記複数の撮像素子から出力された複数の色信号に対して、前記係数記憶部に記憶された色特性変換係数を乗ずる演算を行う信号処理部と
を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−74212(P2010−74212A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235966(P2008−235966)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】