説明

色移動を示す多層顔料

本発明は、
(A)屈折率nが≧2.0である金属酸化物被膜、
(B)屈折率nが≦1.8である無色の金属酸化物被膜またはフッ化物被膜、
(C)高屈折率の非吸収性金属酸化物被膜を含む層配列を少なくとも1つ含む多重被覆小板状基材を含む干渉顔料であって、
該顔料が、さらに(D)カルシウム、マグネシウムまたは亜鉛の酸化物を含むことを特徴とする干渉顔料に関する。本顔料は、塗料や印刷インクに使用可能で、また偽造防止が施される有価文書、例えば紙幣や小切手、小切手カード、クレジットカード、身分証明書等の製造に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は多層顔料改良品に関する。
【0002】
[参照出願]
本出願請求項は、米国仮出願特許60/829,891(2006年10月18日出願)の35U.S.C.119(e)に関わる権利を主張するものであり、その内容をすべて引用として本明細書に組み込むものとする。
【背景技術】
【0003】
雲母などの板状の基材を基本として金属酸化物層で覆われた真珠光沢性顔料または真珠顔料が数多くある。光の反射と屈折の結果、これらの顔料は真珠状の光沢を有する。この金属酸化物層は、厚みによっては干渉性の色効果を示すことがある。この種の顔料に関するすばらしい解説が、米国特許3,087,828と3,087,829や、L.M. Greenstein、「真珠(真珠光沢)顔料と干渉顔料」、Pigment Handbook, Volume 1, Properties and Economics, 2nd Edition, Edited by Peter J. Lewis (1988), John Wiley & Sons, Inc.に見受けられる。
【0004】
商業的に最もよく見られる真珠顔料は、二酸化チタン被覆雲母や酸化鉄被覆雲母の真珠顔料である。この金属酸化物層がさらに他の層で被覆されていてもよいことが広く知られている。例えば、米国特許3,087,828には、TiO2層上へのFe23の塗布が述べられているが、米国特許3,711,308には、二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウムで被覆されている雲母上にさらに酸化チタンと酸化鉄の混合層を有する顔料が示されている。
【0005】
この酸化物被膜は、雲母粒子の表面に形成された薄膜である。得られる顔料は、薄膜の光学特性を有し、このため顔料から反射される色は、被膜の厚みに依存する光干渉で引起される。酸化鉄は特徴的な赤色を示すため、この酸化物で被覆された雲母は、反射色と吸収色、前者は光干渉により後者は光吸収による、の両方を示す。反射色の範囲は黄色〜赤に達し、これらの顔料は、通常、「ブロンズ」、「銅」、「あずき」などと呼ばれる。これらの顔料は、広い用途、例えばプラスチックや化粧品の製造原料や、自動車塗料などの屋外用途に使用されている。
【0006】
フェライトを含む真珠顔料も知られている。例えば、米国特許5,344,488やDE4120747には、酸化鉄で被覆された雲母小板上に酸化亜鉛を堆積させることが記載されている。この米国特許は、従来の酸化亜鉛/雲母顔料の欠点である易凝集性を克服し、皮膚に穏やかで、抗菌性作用をもち、好ましい光学的吸収特性や表面色を有する顔料を得るために、前もって金属酸化物を被覆した板状基材に亜鉛酸化物層を被覆すると述べている。か焼すると、小さな針状微結晶が表面層上にランダムに形成され、得られる亜鉛フェライト層は完全に連続的ではなくなる。この特許は、連続層として酸化亜鉛で完全に覆われた基材とは異なり、微結晶を含む層で覆われた基材は凝集しにくいと述べている。
【0007】
光学的に活性な干渉顔料、すなわちいろいろな視角で色が変化する干渉顔料を開発する手段として、通常金属酸化物を含む、高/低/高の屈折率をもつ交互層からなる多層顔料がよく知られている。例えば緑色の干渉顔料が、視角によっては緑から青から赤に色が変化することがある。(A)屈折率nが≧2.0の被膜と(B)屈折率nが≦1.8の無色の被膜と(C)高屈折率の非吸収性被膜と、及び必要なら(D)他の保護層を含む典型的な多層構造を有するこのような顔料が、米国特許6,596,070に記載されている。
【0008】
このような多層顔料の特に有用な実施様態では、ある基材を、次の層構造:TiO2またはFe23/SiO2/TiO2で被覆する。TiO2層またはFe23層の基材との接着性を向上するために、基材上にまたは中間体のSiO2層の上にSnO2を形成してもよい。
【0009】
これらの製品は、上記の多層製品の新規性やユニーク性と同様に、多くの欠点を有している。通常、このような多層顔料は、多量の、具体的には最終製品の重量当たり40%以上の量のSiO2を含むため、これが被覆小板の凝集を招き、結果として色純度の低い、また全体として品質に劣る製品を与えることとなる。また、顔料を形成する多層被膜が、金属酸化物被覆の際に効率よく形成されない場合、隣接層間の接着不良を引起し、結果としてその層の剥離をもたらし、さらには製品を劣化させる。また、この多層被膜が、機械的または化学的に不安定であるため、用途によっては最後に保護層が必要となる。したがって、プロセスが一段から二段法となるため、顔料の製造プロセスが複雑となって効率や経済性が犠牲となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記欠点を克服することを目的として、干渉顔料全般に関して、特に光学的に変化可能な顔料に関して、高密度な金属酸化物多層被膜を形成するための新規な方法が開発された。顔料多層被膜に、特に高/低/高の屈折率の交互層をもつ多層被膜にアルカリ土類金属を添加することで、その表面積値(BET)を、1/2〜1/3に減少させることが可能となった。これは、高密度の金属酸化物被膜は機械的や化学安定性が増すため重要である。化学安定性の増加は機能の改善につながるため、最後の保護塗布層を形成することなく、特に屋外用途に安定性が改善された製品を提供することができるようになる。機械的安定性の改善により、か焼時の収縮による被膜の亀裂や剥離を防ぐことができる。また、アルカリ土類金属が含まれると、金属酸化物多層被膜のか焼が低温、350〜850℃で可能となり、これらの金属の非存在下で850〜900℃でか焼した場合の密度と同等の値を与える。最終製品の構造や性能を犠牲にすることなく低温でか焼可能であることには、大きな利点がある。
【0011】
もう一つの起こりうる現象については先に述べた。エックス線のデータによると、マグネシウム後処理しさらに850℃でか焼する場合の、マグネシウム存在下での雲母基材が変化すること示している。したがって、上記の利点に加えて、少なくともMgを含有させることで、基材の性質に変化が起こったようである。
【0012】
[図面の簡単な説明]
[図1]
図1Aと図1Bは、3種の干渉顔料(本発明の実施例5と6及び比較例2)のX線回折パターン図を示し、併せてアナターゼ(TiO2)とヘマタイト(Fe23)に対する粉末回折ファイル(PDF)の参考データを示す。マグネシウム含有試料中の新たなピークを、縦破線で示す。図1Aは、2θが約30°〜約47°の範囲の部分を示し、マグネシウム含有試料中には3本の非常に弱い新たなピークが観察される。より明確にするため、これらのパターンを縦方向にずらして示す。図1Bは、2θが約13°〜約32°の範囲の部分を示す。縦点線は、クリストバライトのピークを示す。
【0013】
[図2]
図2は、約4%のマグネシウムを含有する干渉顔料(本発明の実施例6)の2θが20°〜39°の範囲のX線回折パターン図である。併せて、結晶質シリカ(酸化ケイ素とクリストバライトとゼオライト)と3種のマグネシウム相(フォルステライトとマグネシウム鉄ケイ酸塩とアーマルコライト)の参照PDFデータを示す。マグネシウム含有試料中に現れる新たなピークを、縦破線で示す。
【0014】
[図3]
図3Aと図3Bは、3種の干渉顔料、本発明の実施例6と7及び比較例3のX線回折パターン図を示す。マグネシウム含有試料に現れる新たなピークを縦破線で示す。図3Aは、2θが約30°〜約64°の範囲の部分を示す。より明確にするため、これらのパターンを縦方向にずらして示す。図3Bは、2θが約13°〜約32°の範囲の部分を示す。図3Aと図3Bの両方において、縦実線は、右上隅に示すようにPDF参照値に相当する。
【0015】
[図4]
図4Aと図4Bは、3種のアナターゼ干渉顔料、本発明の実施例8と9及び比較例4のX線回折パターン図を示す。縦線は、アナターゼ(TiO2)および3種のマグネシウム相(ゲイキーライトと酸化マグネシウムチタンとペリクレース)のPDF参照値のピーク位置を示す。カウント率が2秒/ステップで得られた本発明の実施例8のデータは、カウント時間が10秒/ステップで測定した二つの試料(本発明の実施例9と比較例4)の強度レベルまでスケールを拡大した。図4Aは、2θが約28°〜約44°の範囲の部分を示す。図4Bは、2θが約44°〜約64°の範囲の部分を示す。符号のない矢印は、実施例に記載の興味あるピークを示す。
【0016】
[図5]
図5Aと図5Bは、3種のルチル干渉顔料、本発明の実施例10と11および比較例5のX線回折パターン図を示す。縦線は、アナターゼ(TiO2)とルチル(TiO2)と、3つのマグネシウム相(ゲイキーライトと酸化マグネシウムチタンとペリクレース)に対するPDF参照値のピーク位置を示す。カウント率が2秒/ステップ得られた本発明の実施例10のデータは、カウント時間が10秒/ステップで得られた二種の試料(本発明の実施例11と比較例5)の強度レベルに、スケールを拡張した。図5Aは、2θが約30°〜約44°の範囲の部分を示す。図5Bは、2θが約44°〜約64°の範囲の部分を示す。
【0017】
[図6]
図6A〜図6Cは、3種の干渉顔料と、本発明の実施例7と11及び比較例3、さらに雲母基材単独、比較例6のX線回折パターン図を示す。縦線は、アナターゼ(TiO2)とルチル(TiO2)とヘマタイト(Fe23)、及び3種のマグネシウム相(ゲイキーライト、酸化マグネシウムチタン、ペリクレース)のPDF参照値のピーク位置を示す。図6Aは、2θが約20°〜約35°の範囲の部分を示す。図6Bは、2θが約44°〜約64°の範囲の部分を示す。図6Aと図6Bでは、より明確にするためこれらのパターンを縦方向にずらして示している。図6Cは、比較例6のパターンを示す。符号のない矢印は、興味あるピークを示す。
【0018】
[詳細な説明]
本発明は、本発明の顔料の、塗料やラッカー、印刷インク、プラスチック、セラミック材料、ガラス、化粧用製剤中での利用を提供する。
【0019】
基材:本発明の多層顔料用に好適な基材は、第一には不透明板状物質であり、第二には透明な小板状物質である。好ましい基材は、層状ケイ酸塩および、金属酸化物で被覆された小板状材料である。特に好適なのは、天然および合成雲母、タルク、カオリン、小板状酸化鉄、オキシ塩化ビスマス、ガラスフレーク、SiO2、Al23、TiO2、合成のセラミックフレーク、無担体の合成小板物、LCP、または他の相当する材料である。好ましい透明基材は雲母である。
【0020】
基材自体の大きさは重要ではなく、特定の目的用途に合わせて選ぶことができる。一般に、この小板状基材の厚みは、約0.1〜約5μmの範囲であり、特に約0.2〜約4.5μmの範囲である。他の二つの寸法は、通常約1〜約250μmであり、好ましくは約2〜約200μm、特に約5〜約50μmである。
【0021】
基材上の高屈折率層と低屈折率層それぞれの厚みは、顔料の光学特性にとって極めて重要である。従来からよく知られているように、干渉色を得るには、個々の層の厚みを、相互に正確に調整する必要がある。
【0022】
金属酸化物:膜厚の増加による色の変動は、干渉による特定の光波長の増強または減衰の結果である。多層顔料中の二層以上が同一の光学的厚さを持つ場合、反射光の色は、層の数が増加するにつれてより大きくなる。これに加えて、層厚を適当に選択することで、視角の関数として特に強く色を変化させることができる。強い、いわゆるカラーフロップが生成する。個々の金属酸化物層厚みは、屈折率とは関係なく利用分野に依存し、一般的には約10〜1000nmであり、好ましくは約15〜800nm、特に約20〜600nmである。
【0023】
本発明の顔料は、高屈折率の被膜(A)と、無色で低屈折率の被膜(B)とその上に形成された非吸収性で高屈折率の被膜(C)を特徴とする。これらの顔料は、二種以上の同一または相互に異なる層集合体の組み合わせを含むが、層集合体(A)+(B)+(C)の基材の被膜が好ましい。カラーフロップを強化するために、本発明の顔料は最高4層の集合体を有してもよいが、基材上のすべての層の厚みが3μmを超えてはならない。
【0024】
高屈折率の層(A)の屈折率nは≧2.0であり、好ましくはn≧2.1である。層材料(A)として好適な材料は、高屈折率でフィルム状で永久的に基材粒子として利用可能な熟練者には公知のすべての材料である。特に好適な材料は、TiO2や、Fe23、ZrO2、ZnO、SnO2などの金属酸化物または金属酸化物混合物や、チタン酸鉄や、酸化鉄水和物、チタン亜酸化物、酸化クロム、バナジン酸ビスマス、アルミン酸コバルトなどの高屈折率化合物、これらの化合物と他の化合物または他の金属酸化物との混合物または混相があげられる。
【0025】
CRC Handbook of Chemistry and Physics、63版には、これらの高屈折率金属酸化物に対する屈折率として、次のものをあげている。
【0026】

【0027】
二酸化チタンを使用する場合、この基材と二酸化チタンとの間に、添加物または他の層が存在していてもよい。添加物としては、二酸化チタンをルチル状に変換する物質、例えばスズがあげられる。
【0028】
層(A)の厚みは、約10〜550nmであり、好ましくは約15〜400nm、特に約20〜350nmである。
【0029】
被膜(B)用に好適な低屈折率で無色の材料としては、好ましくは、金属酸化物またはそれらの酸化物水和物、たとえばSiO2、Al23、AlO(OH)、B23、またはこれらの金属酸化物の混合物があげられる。層(B)の厚みは、約10〜1000nmであり、好ましくは約20〜800nm、特に約30〜600nmである。
【0030】
CRC Handbook of Chemistry and Physics、63版は、低屈折率金属酸化物の屈折率として次のものをあげている。
【0031】

【0032】
非吸収性で高屈折率の被膜(C)に特に好適な材料としては、無色の金属酸化物、例えばTiO2、ZrO2、SnO2、ZnO、BiOCl、及びこれらの混合物があげられる。層(C)の厚みは、約10〜550nmであり、好ましくは約15〜400nm、特に約20〜350nmである。
【0033】
高屈折率の層(A)と層(C)、低屈折率の層(B)、また必要なら、他の着色被膜または無色被膜を基材上に形成することにより、色や、光沢、不透明性、検知される色の角度依存性が、大きな範囲で変化するいろいろな顔料を得ることができる。
【0034】
細かく区分された小板状の基材上に、厚みが正確に制御された平滑な、二種以上の高屈折率干渉層と低屈折率干渉層が形成されるため、本発明の顔料は製造が容易である。
【0035】
これらの金属酸化物層は、湿式化学的な手段で形成されることが好ましく、真珠顔料の製造用に開発された湿式化学的な塗布方法を用いることもできる。
【0036】
湿式塗装の場合、基材粒子を水中に懸濁させ、一種以上の加水分解性金属塩を、加水分解に好適なpHにおいて添加して、金属酸化物または金属酸化物水和物の二次沈殿を発生させることなく、小板状に直接沈殿させる。pHは、通常、同時に塩基及び/又は酸を計量して添加することにより一定に保たれる。次いで、これらの顔料を分離し、洗浄、乾燥し、必要ならか焼する。なお、存在する特定の被膜に応じてか焼温度を最適化することができる。一般に、このか焼温度は250〜1000℃であり、好ましくは350〜900℃である。必要なら、個々の被膜の塗布後に、顔料を分離、乾燥し、必要ならか焼した後に、沈殿により他の層を塗装するために再懸濁させてもよい。
【0037】
流動床反応器内で気相被覆により塗布を行ってもよい。その場合、EP0045851やEP0106235に提案されている真珠光沢顔料製造用の方法を適当に使用することができる。
【0038】
用いる高屈折率金属酸化物は、好ましくは二酸化チタン及び/又は酸化鉄であり、用いる低屈折率金属酸化物は、好ましくは二酸化ケイ素である。
二酸化チタン層を形成するには、米国特許No.3,553,001に記載の方法が好ましい。
【0039】
チタン塩の水溶液をゆっくりと懸濁液に添加し、塗布した材料の温度を約50〜100℃に加熱する。その際、同時に塩基を、例えばアンモニア水またはアルカリ金属水酸化物の水溶液を計量、添加して、pHを実質的に約0.5〜5に保つ。TiO2沈殿物の層厚が所望の値となると、チタン塩溶液と塩基両方の添加を中止する。
【0040】
この方法、すなわち滴定法により、チタン塩の過剰を避けることができることが知られている。水和したTiO2の均一塗布に必要な速度で、また塗布可能な表面領域が塗布粒子を受け取ることの可能な速度で加水分解を行うことにより、これを達成することができる。したがって、塗布表面上に沈殿しない水和二酸化チタン粒子は存在しない。
【0041】
二酸化ケイ素層の塗布は、例えば次のように行われる。ケイ酸カリウムまたはナトリウムの溶液を、計量して懸濁液に添加し、塗布する基材を約50〜100℃に加熱する。薄い鉱酸を、例えばHCl、HNO3またはH2SO4を同時に添加して、pHを約6〜9で一定に維持する。SiO2の層厚が目標値に達すると、直ちにケイ酸塩溶液の添加を中止する。次いでこの溶液を約0.5時間攪拌する。
【0042】
アルカリ土類金属類または亜鉛を添加することで、上述のような顔料を、特に高屈折率金属酸化物と低屈折率金属酸化物交互層からなる多層被膜を塗布して形成された顔料を改善できることがわかった。例えば、多層被膜(すなわち、塗布層(A)、(B)、(C))の形成後に、カルシウム、マグネシウムまたは亜鉛を顔料に添加することができる。ただし、いくつかのアルカリ土類金属類が、例えばBeやBa、Sr、Raが、化粧品用途には認可されていないことに注意が必要である。本発明のある実施様態においては、顔料中の高屈折率層が同じ金属添加物を含んでいない。上のようにして得た顔料の表面積(BET)がかなり小さく、その結果として多層被膜の密度が高くなり、機械的安定性や化学安定性が増加していることが明らかとなった。FeやCr、Mn、Co、Cuなどの遷移金属は、TiO2が被覆された顔料中の添加物として従来から使用されている。このような添加物が最終か焼後の層の緻密化に使用されていたとは考えられない。したがって、か焼後のTiO2層中には大きな表面積値の変化が起こっていないようである。
【0043】
また、顔料の多層被膜中に混在物が、例えばカルシウム、マグネシウムまたは亜鉛が含まれると、多層被膜をかなり低温でか焼して金属酸化物を形成しても、このような金属添加物の不存在下でより高温でか焼して得られる密度を得ることができることがわかった。低いか焼温度は、消費エネルギーの削減ばかりか顔料の構造と性能の維持の点で重要である。面白いことに本発明の方法において、例えばCa、Mg、またはZnを後処理で添加することで基材を変化させることができることが明らかとなった。より具体的には、多層被膜をマグネシウムで次のように後処理することで、雲母基材中にマグネシウムを存在させることができることがわかった。したがって、本発明の方法により、基材の特性を変化させ、基材に応じて特性を改善することが可能となる。
【0044】
本発明の方法によれば、高/低/高屈折率層の交互多層被膜を形成後に、例えばカルシウム、マグネシウムまたは亜鉛成分を塩類として顔料に添加することで、改善された顔料が得られる。通常、これらの金属は、スラリーとして湿式化学的な手段で、室温で、またpHが少なくとも9、好ましくはpHが約10〜約11で塗布される。これらの干渉顔料が確実に光学的に変化できるようにするため、交互層の多層被膜を形成後、このスラリーをろ過し、得られるプレスケーキを洗浄し、さらに、例えば適当なpHにあわせた新鮮な脱イオン水中に再懸濁化させた後、金属塩を添加する。スラリー温度のとしては、例えば最高約80°Cがあげられる。本発明では、特定の形の、例えばCaやMg、Znなどの金属塩が必須というわけでなく、このため、塩化物や硝酸塩等の水溶性塩を使用することができる。一般に、添加する塩の量は、顔料に対して最高約10重量%の金属負荷となるのに十分な量である。また、金属含量として最高5%、通常0.4〜2.5重量%があげられる。カルシウム、マグネシウムまたは亜鉛塩の添加後に、この多層被膜をか焼してすべての金属塩を金属酸化物としてもよい。約350〜850℃のか焼温度が有用である。
【0045】
用途:本発明の顔料は、多くの表色系に適合し、好ましくはラッカーや塗料、印刷インクの分野に、特に証券の印刷インクの分野に適合する。コピー不能な光学効果をもつため、本発明の顔料は、特に、小切手やチェックカード、クレジットカード、身分証明書等の偽造防止が必要な文書に使用できる。また、これらの顔料は、また紙やプラスチックのレーザーマーキングや、温室フィルムなどの農業分野での利用に適している。
【0046】
本発明は、したがって、これらの顔料の、塗料や印刷インク、ラッカー、プラスチック、セラミック材料、ガラスなどの製剤や、化粧品製剤中での利用を提供する。
【0047】
もちろん、いろいろな目的用途において、これらの多層顔料は他の顔料とブレンドして好ましく使用することができ、これらの他の含量例としては、小板状酸化鉄、有機顔料、ホログラフィー顔料、LCP(液晶ポリマー)などの透明または不透明の、白色、着色または黒色顔料や、金属酸化物で被覆された雲母やSiO2小板等から得られる既存の透明、着色または黒色の光沢顔料があげられる。これらの多層顔料は、従来の市販顔料や増量材と任意の比率で混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】図1Aは、3種の干渉顔料(本発明の実施例5と6及び比較例2)のX線回折パターン図を示す。
【図1B】図1Bは、3種の干渉顔料(本発明の実施例5と6及び比較例2)のX線回折パターン図を示す。
【図2】図2は、約4%のマグネシウムを含有する干渉顔料(本発明の実施例6)の2θが20°〜39°の範囲のX線回折パターン図である。
【図3A】図3Aは、3種の干渉顔料、本発明の実施例6と7及び比較例3のX線回折パターン図を示す。
【図3B】図3Bは、3種の干渉顔料、本発明の実施例6と7及び比較例3のX線回折パターン図を示す。
【図4A】図4Aは、3種のアナターゼ干渉顔料、本発明の実施例8と9及び比較例4のX線回折パターン図を示す。
【図4B】図4Bは、3種のアナターゼ干渉顔料、本発明の実施例8と9及び比較例4のX線回折パターン図を示す。
【図5A】図5Aは、3種のルチル干渉顔料、本発明の実施例10と11および比較例5のX線回折パターン図を示す。
【図5B】図5Bは、3種のルチル干渉顔料、本発明の実施例10と11および比較例5のX線回折パターン図を示す。
【図6A】図6Aは、3種の干渉顔料と、本発明の実施例7と11及び比較例3、さらに雲母基材単独、比較例6のX線回折パターン図を示す。
【図6B】図6Bは、3種の干渉顔料と、本発明の実施例7と11及び比較例3、さらに雲母基材単独、比較例6のX線回折パターン図を示す。
【図6C】図6Cは、3種の干渉顔料と、本発明の実施例7と11及び比較例3、さらに雲母基材単独、比較例6のX線回折パターン図を示す。
【実施例】
【0049】
本発明の実施例1と比較例1
200gの天然雲母(平均粒度:45〜50ミクロン)を、1.0リットルの脱イオン水に懸濁し、250〜300rpmで攪拌した。室温で、2.0〜4.0gの39%FeCl3を、pH3.2で添加した。このスラリーを75℃に加熱した(核形成工程)。この温度で、200.0gの39%FeCl3(38.0gのFe23)を、pH3.2で、1.0ml/分の速度で添加した。pHを、35%のNaOHで8.25に調整した。3000.0gのメタケイ酸ナトリウム・9H2O(176.0gのSiO2)を、pH8.25で5.0ml/分の速度で添加した。そのpHは、17%HClで維持した。pHを1.9に(35%NaOHを用いて)維持しながら、180.0gのTiCl4(30.0gのTiO2)を1.5ml/分の速度で添加した。このスラリーは、光学的に変化する性質(OVP)をもち、反応フラスコ中で、その色が赤から金へ、さらに緑色に変改した。このスラリーを、等体積に二分割した。第一のスラリー部分は、コントロール(比較例1)として、500、750、850℃でか焼し、第二のスラリー部分は、Mgで次のように後処理して本発明の実施例1とした。
【0050】
室温で、スラリーをpH11.0に調整した。pHを11.0に(10%NaOHで)維持しながら、20.0gのMgCl2・6H2O/100mlの脱イオン水の溶液を、2.0ml/分の速度で添加した。このスラリーを処理し、3個の試料をそれぞれ350、650、850℃でか焼した。回収か焼収率を基に、約1.0〜1.5%のMgを添加した。最終生成物は、天然雲母/Fe23/SiO2/TiO2、及びMgを含有していた。850℃でのBET値の結果より、Mgで処理した試料は、似た温度で処理した比較例と較べて3倍緻密な塗布面を与え、亀裂や剥離がないことがわかった。比較例では両方の点で不完全であった。Mgの存在下では、色変化性(OVP)が維持され、Mg添加とのか焼である程度、色純度が改善された。
【0051】
本発明の実施例2と比較例1a
本発明の実施例1を繰り返した。ただし、1.0〜1.5%のCaを添加した。似た結果が得られた。比較例1aを、比較例1に記載の方法により繰り返した。試料はいろいろな温度でか焼した(表1参照)。
【0052】
本発明の実施例3と比較例1b
本発明の実施例1を繰り返した。ただし、1.0〜2.0%のZnを添加した。似た結果が得られた。比較例1bを、比較例1に記載の方法で製造した。試料はいろいろな温度でか焼した(表1参照)。
【0053】
本発明の実施例4
さらに比較のために、Ca/Mg/Zn含量とか焼温度を関数とする、光学的多層被膜の表面領域緻密化(BET)に与えるCa、Mg、Znの影響を、比較試料と比較の上で、表1に示す。表1において、BET値の単位は、m2/gである。
【0054】
【表1】

【0055】
Ca、MgまたはZnを添加すると、850℃では緻密化が非常に大きくなるが、これらの添加物は、できる限り通常のか焼温度より低い温度で、金属酸化物表面を緻密化させる能力を与えることが好ましい。例えば、Caの比較試料は、650℃で、BET値が7.5m2/gを与えるが、そのCa処理物は、同温度で3.2m2/gのBET値を与える。350℃でも、Ca塗布製品は、その比較対象よりずっと緻密である。明らかに、MgやZnで処理された試料もよく似たように振舞う。したがって、この方法は、ユニークでまた経済的であり、製品のOVP性を低下させることがない。
【0056】
表2に、上記の試料のそれぞれの350℃と850℃でのOVP色変化を示す。
【0057】
【表2】

【0058】
Ca、MgまたはZnを含むと、試料のOVP性に影響を与えないが、表面緻密化の程度の差のためか、異なった色変化が認められる。いずれの場合も、品質は満足できるものである。
【0059】
本発明の実施例5と6、及び比較例2
結晶性材料は、通常、そのX線回折パターンを参照材料と比較することで同定される。したがって、アルカリ土類金属で後処理された干渉顔料の特性をさらに評価するために、X線回折データをとった。
【0060】
比較例2は、比較例1に記載の方法により調整された。本発明の実施例6は本発明の実施例1に記載の方法を用いて調整されたものであるが、Mg添加量は4%である。本発明の実施例5の製剤は、以下の点を除き、本発明の実施例1に記載の方法を用いて調整した。マグネシウム(1%)の添加の前に、交互層の多層被膜を含むスラリーをろ過し、得られたプレスケーキを洗浄した。洗浄後のプレスケーキを、新鮮な脱イオン水に再懸濁し、pHを11.0に調整した。次いで、本発明の実施例1に記載のようにマグネシウムを添加した。試料は850℃でか焼した。
【0061】
【表3】

【0062】
深い穴を有するガラス試験片ホルダーに試験片を載せ、すりガラスのスライドで押さえ、その後表面をスライドの縁でカットして、X線回折分析の試験片を得た。
【0063】
X線回折データを、銅K−α線(ダブレット、45kV/39mA)とグラファイトモノクレメーターとを用いる標準的な方法で、DSが0.5°、1°、2°、またRSが0.15mmで測定して得た。2θの範囲が7.0°〜70.0°で、カウント時間が10秒/ステップでデータを求めた。
【0064】
比較例2(マグネシウム非含有顔料)中に存在する非雲母相は、アナターゼ、ヘマタイトと、場合によっては非晶質シリカである。本発明の実施例5と6においては、すなわちマグネシウム含有の干渉顔料中においては、これらの三相が存在する。しかし、本発明の実施例には、さらに六個のピークが観測され、具体的には、図1Aに示す3つのピークと、2θが21.7、57.8、65.0°のピーク(図に示さず)が観測された。マグネシウム量の多い本発明の実施例6の解析図中のこれらの六個のピークは、本発明の実施例5に較べて大きい。また、本発明の実施例では、2θで10°〜32°で約22°を中心とする非晶質バンドの面積が、比較例2(図1B)を較べて小さい。これらのデータは、本発明の実施例では結晶質シリカが形成されていることを示唆する。
【0065】
図2に示すように、マグネシウム含有干渉顔料中の結晶質シリカ相は、クリストバライトに最も似ているが、明確に決定するには観測されるピーク数が少なすぎた。3つのマグネシウム相が存在する可能性があるが、これらの3種の非常に弱いピークそれぞれの観察の結果によれば、最も可能性が高い相は、ケイ酸マグネシウム(フォルステライト)である。
【0066】
まとめると、本発明の実施例5と6、すなわちマグネシウムで後処理した顔料は、双方の試料に共通で比較例2には認められない二種の新たな結晶相をもっている。これらの二相は、クリストバライト型の結晶質シリカ(SiO2)、およびケイ酸マグネシウム(フォルステライト、Mg2SiO4)、鉄・マグネシウム・チタン酸化物(アーマルコライト、Fe0.5Mg0.5Ti25)、マグネシウム・鉄ケイ酸塩(オリビン、Mg1.8Fe0.2SiO4)のマグネシウム含有相の少なくとも一つであるようである。少量のマグネシウム含有量の小さい本発明の実施例5では、これらの他のピークが小さい。この結果より、これらの相がマグネシウムにより生成していることがわかる。マグネシウム存在下での結晶質シリカの形成と、その結果としてのケイ酸マグネシウム形成が観察された。例えば、Takeuchi et al., 1996, 「シリカゲルと、シリカゲルといろいろな金属酸化物の混合物の石英への変換」、203: 369−374; and Zaplatyns, 1988, 「シリカの失透に対するAl23とCaOとCr23とMgOの影響」、 NASA Technical Memorandum issue NASA−TM−101335, E4350, NAS1.15:101335.を参照。
【0067】
表4に、これらの試料のBET表面積と色変化データをまとめる。
【0068】
【表4】

【0069】
a. pH1.9〜pH11に調整されたスラリーに、pH11のマグネシウムを添加すると、最終製品のOVP性が消失した。
【0070】
この試料を精密に調べると、pH調整工程中にTi層とSi層の一部が剥離しているようであった。この観察は、OVP性の消失がMgの増加によるものでないことを示唆する。これらのデータはまた、スラリーをろ過水洗してマグネシウムの添加前に再懸濁させるという好ましい二工程プロセスに利用を支持する。
【0071】
本発明の実施例1に観察されるように、Mgで処理した製品は、比較試料より緻密性が高い。
【0072】
本発明の実施例7と比較例3
マグネシウム含有干渉顔料に観測される他の結晶相をさらに調べるために、10%のマグネシウムを含む顔料を作り、X線回折データを得た。
【0073】
比較例1に記載の方法を用いて比較例3を調整した。本発明の実施例7もまた、以下の点を除いて本発明の実施例1に記載の方法により調整した。マグネシウム(10%)の添加に先立ち、交互層の多層被膜を含むスラリーをろ過し、得られたプレスケーキを洗浄した。洗浄後のプレスケーキを、新鮮な脱イオン水に再懸濁し、pHを11.0に調整した。次いで、本発明の実施例1に記載のようにマグネシウムを添加した。試料は850℃でか焼した。
【0074】
多層被膜とマグネシウム量を、表5にまとめて示す。色変化データは表6に示す。本発明の実施例7中のOVP性の存在から、本発明の実施例6の色変化の欠如がMg量によるものでないことがわかる。
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
X線回折分析用の試験片を調整し、本発明の実施例5と6及び比較例2に記載されているようしてX線回折データを得た。ただし、データは、2θが7.0°〜71.0°の範囲で求めた。
【0078】
本発明の実施例5と6のデータと同様に、本発明の実施例7では、すなわちマグネシウムの多い試料では、マグネシウムの相に関わる他のピークが大きい(図3A)。また、2θが25.3、37.8、48.0、53.9°のアナターゼピークの大きさの減少が顕著である。マグネシウムを含む試料では、マグネシウムを含まない試料より、2θで10〜32°の範囲で約22°を中心とする非晶質バンドの面積が小さい(図3B);しかしながら、このバンドは、マグネシウム含量の変動により大きく変化しない。この結果は、これらの試料中では結晶質シリカが形成されているという結論を支持し、またこの結晶化には限度があることを示唆している。
【0079】
したがって、マグネシウムの添加は干渉顔料中に形成される結晶相に大きな影響を与える。本発明の実施例7においては、さらにごく小量の非晶質シリカが、結晶化されてクリストバライト型結晶質シリカとなっているようである。ヘマタイト相は変化しなかったようである。また、アナターゼ相はマグネシウムと完全に反応し、酸化マグネシウムチタン(MgTi25)を与えた;酸化マグネシウム(MgO)も形成された。これらのデータも、酸化鉄マグネシウムチタン(アーマルコライト−Fe0.5Mg0.5Ti25)とケイ酸マグネシウム鉄(オリビン−Mg1.8Fe0.2SiO4)が存在しているとは考えられないことを示す。ケイ酸マグネシウム(フォルステライト−Mg2SiO4)相が存在するかもしれないが、はっきりとは確認できない。
【0080】
したがって、形式的にはマグネシウム量による相変化が干渉顔料中で増加する可能性があるが、本発明の実施例5と6(それぞれ、1%と4%のマグネシウム)で観測される上記の他相が、クリストバライトシリカと酸化マグネシウムチタン(MgTi25)ではなさそうである。
【0081】
本発明の実施例8、9、10、11と比較例4、5、6
鉄/ケイ素/チタン/雲母からなるOVP試料である本発明の実施例5〜7において、マグネシウムの添加により非晶質シリカ層の一部が結晶化して、クリストバライトに変化することが観察された。この結晶化に鉄が一定の役割を果たすかどうかを評価するため、Ti/Si/Ti/雲母からなるOVP試料も分析した。
【0082】
本発明の実施例8と9、および比較例4は、次のように調整した。5リットルのモートンフラスコ中で、230gの天然雲母(平均粒度:45〜50ミクロン)を2.0リットルの脱イオン水に懸濁させ、このスラリーを、A410インペラーを用いて300rpmで攪拌した。室温で、28%HClでpHを2.2にまで下げた。このスラリーを80℃に加熱した。その温度で、200.0gのTiCl4(33.3gのTiO2)を、pH2.2で3.0g/分の速度で添加した。このpHを35%NaOHで7.80に調整した。2250.0gのメタケイ酸ナトリウム・9H2O(131.0gのSiO2)を、pH7.80、350rpmで4.0ml/分の速度で添加した。このpHを、28%HClで維持した。このスラリーpHを、28%HClで2.2まで下げた。174.0gのTiCl4(28.9gのTiO2)を、3.0g/分の速度で、pH2.2(35%NaOHで維持)で添加した。比較用試料を保持した(比較例4)。
【0083】
残りの試料を、等体積の蒸留水で四回洗浄し、そのケーキを2.0Lの蒸留水に再懸濁した。次いで、得られた濾塊を2リットルの蒸留水に懸濁し、そのスラリーのpHを11.0とし、室温でMgCl2溶液の添加を終了させた。
【0084】
本発明の実施例10と11及び比較例5は、次のように合成した。5リットルのモートンフラスコ中で、230gの天然雲母(平均粒度:45〜50ミクロン)を2.0リットルの脱イオン水に懸濁させ、このスラリーを、A410インペラーを用いて300rpmで攪拌した。室温で、pH1.45で42gの20%SnCl4を1.0グラム/分の速度で添加し、pHを35%NaOHで維持した。このスラリーを80℃に加熱した。この温度で、pH1.45で、3.0g/分の速度で200.0gのTiCl4(33.3gのTiO2)を添加し、そのpHを35%NaOHで維持した。pHを、35%NaOHで7.80に調整した。4.0ml/分の速度で、pH7.80、350rpmで、2100.0gのメタケイ酸ナトリウム・9H2O(123.0gのSiO2)を添加した。このpHを、28%HClで維持した。このスラリーpHを、28%HClで1.7にまで下げ、8.0グラムの77%SnCl4を投入した。このスラリーを、pHコントロールせずに、80℃で20分間攪拌した。3.0g/分の速度で、pH1.45(35%NaOHで維持)で、173.0gのTiCl4(28.8gのTiO2)を添加した。比較用の試料を保持した(比較例5)。
【0085】
残る試料を等体積の蒸留水で四回洗浄し、この濾塊を2.0Lの蒸留水に再懸濁した。このスラリーを室温で、300rpmで混合した。このスラリーに、MgCl2−6H2Oの1M溶液を、2.0ml/分の速度で添加した。
【0086】
すべての試料は、洗浄、ろ過し、850℃で20分間か焼した。
【0087】
比較例6は、850℃でか焼した基材の雲母材料である。
【0088】
多層被膜の組成、酸化チタンの結晶形、マグネシウム量を、まとめて表7に示す。多層被膜成分の重量パーセントを、表8と9にまとめる。
【0089】
【表7】

【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
X線回折分析用の試験片を調整し、以下の点を除いて、本発明の実施例5〜7及び比較例2と3に記載されているようにしてX線回折データを得た。深い穴を持つアルミニウム試験片ホルダーを使用した。2%のマグネシウムを含有する試料(本発明の実施例8と10)のX線回折データは、カウント時間が2秒/ステップで得た。
【0093】
アナターゼ試料、すなわち本発明の実施例8と9及び比較例4については、本発明の実施例9(10%マグネシウム)の2θが25.3、37.8、48.0、53.9°でのアナターゼピークの大きさの減少は、本発明の実施例8(2%マグネシウム)と比較してほんの少し小さかったのみである。図4Aと4Bを参照。しかし、両方のチタニア層がアナターゼであるため、かなりのアナターゼがまだ観測された(2θが37.8°のピークを参照)。本発明の実施例8では、MgOが観測されなかった(42.9と62.4°にある3で示されるPDFマーカーを参照)。また、マグネシウム量の2から10%への増加により、複合酸化物相のピーク(MgTiO3、MgTi25)の大きさには、ほんの小さな増加が認められたのみである(本発明の実施例8と9の、2θが32.7と48.9°のピークを比較)。この結果から、本発明の実施例8と比較すると、本発明の実施例9中に存在する他のマグネシウムのほとんどがMgOを形成していることがわかる。
【0094】
図5Aと5Bに示されるルチル試料、すなわち本発明の実施例の10と11および比較例5では、マグネシウムの添加によりアナターゼピークがほぼ消失することが観察された(比較例5と本発明の実施例10とを比較)が、2〜10%のマグネシウムでは、これらは大きく減少しなかった(それぞれ本発明の実施例10と11)。この結果は、10%パターン中にMgOが観測される理由を示しているようである。理論に拘泥するわけではないが、外側のTiO2層中のアナターゼがマグネシウムと反応し、酸化マグネシウムチタンを形成しているようである。10%のマグネシウムでは、マグネシウムの全量と反応し混合酸化マグネシウムチタンを形成するには、アナターゼ量が不足しているようである。したがって、マグネシウムが過剰では、MgOが生成する。この結果は、したがって、干渉顔料の内側の層がルチルであり外側の層のチタニアがマグネシウムと反応する可能性が最も高いことを示すものと考えられる。2%Mgの試料でも、MgO相の消失が観察された。
【0095】
図4A、4B、5A、5B中の、2θが32.7と48.9°の二組の酸化マグネシウムチタンのピークを比較すると、これらの二相の含有比率が、ルチルOVP中とアナターゼOVP中とで異なることがわかる。この差の意味は不明である。
【0096】
図6Aと図6Bは、本発明の実施例7と比較例3(Fe−Si−Ti−雲母の試料)のX線回折パターンと、本発明の実施例11(マグネシウム含有ルチルOVPの試料)のX線回折パターンを示す。図6Cは、比較例6のX線回折パターン、すなわち850°か焼雲母の参照パターンを示す。このMgTiO3パターンは、ヘマタイト(Fe23)によく似ている。しかし、2θが24.0、32.8、40.7、49.2°の本発明の実施例7のピークと比較例3のピーク(図6Aと6Bの矢印を参照)を比較すると、変化が非常に小さい。マグネシウム含有試料と非含有試料のパターン間におけるこれらの小さなピーク形状の変化は、複合酸化物相MgTiO3が鉄系の試料中には存在していない可能性があることを示している。
【0097】
本発明の実施例11、すなわちルチルOVPのピークパターンは、MgTiO3のピークに対するヘマタイトの干渉の効果と、ルチルOVP中に21.6°のクリストバライトのピークの不在を示す。
【0098】
まとめると、アナターゼOVP試料とルチルOVP試料をX線回折で評価したが、
得られた相には大きな差が認められなかった。2%マグネシウムの本発明の試料中の他の相を明らかとするため、10%マグネシウム含量の試料を合成した。ルチルOVP試料(本発明の実施例10と11)は、アナターゼ二酸化チタンとルチル二酸化チタンを含んでいる。アナターゼ含量は減少し、ルチル含量は減少していない。このことは、外側のチタニア層がアナターゼであり、内側の層がルチルであるらしいことを示している。マグネシウム含有試料中に形成される他の相は、二つの酸化マグネシウムチタン相(MgTiO3とMgTi25)であり、10%マグネシウム試料では、酸化マグネシウム(MgO)である。つまり、2%のマグネシウムが添加された二つの試料において(本発明の実施例8と10)、MgOは生成されず、二種の酸化マグネシウムチタンが生成される。この酸化マグネシウム相は、4%マグネシウム試料(本発明の実施例6)にも観測されない。したがって、干渉顔料中にMgO結晶相を得るには、4%を超える量のマグネシウムが必要である。
【0099】
これらの相は、Fe/Si/Ti/Mg試料にも観測された。ただし、ヘマタイト酸化鉄パターンによる干渉のため、MgTiO3相は、当初認められなかった。Ti/Si/Ti/Mgの試料データを基にFe/Si/Ti/Mgパターンを再評価すると、MgTiO3相が、Fe/Si/Ti/Mg/J−雲母試料にも存在する可能性が高いことがわかる。
【0100】
このTi/Si/Ti/Mg試料には、結晶質シリカが全く観測されなかった。したがって、アルカリ金属の添加による、Fe/Si/Ti試料内での非晶質シリカ層の結晶化に、鉄が一定の役割を果たしているようである。
【0101】
表10に、いろいろな干渉顔料中に見出される結晶相をまとめる。
【0102】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)屈折率nが≧2.0である金属酸化物被膜、
(B)屈折率nが≦1.8である無色の金属酸化物被膜またはフッ化物被膜、
(C)高屈折率の非吸収性金属酸化物被膜
を含む層配列を少なくとも1つ含む多重被覆小板状基材を含む干渉顔料であって、
該顔料が、さらに
(D)アルカリ土類金属または亜鉛の酸化物、またはこれらの混合物を含み、
(D)は(A)〜(C)とは異なることを特徴とする干渉顔料。
【請求項2】
上記小板状基材が、天然または合成雲母、ガラス、Al23、SiO2またはTiO2、あるいは少なくとも一種の金属酸化物で被覆されたフレーク状または小板状材料である請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項3】
前記被膜(A)が、二酸化チタン、酸化鉄、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、亜酸化チタン、チタン酸鉄、酸化鉄水和物、酸化クロム、バナジウム酸ビスマス、アルミン酸コバルト、またはこれらの混合物を含む請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項4】
前記被膜(B)が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウムまたはこれらの混合物を含む請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項5】
前記被膜(C)が、二酸化チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含む請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項6】
(A)〜(C)の層配列を一つのみ含む請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項7】
上記(D)が、顔料の重量あたり金属として約10重量%の量で存在する請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項8】
上記(D)が、顔料の重量あたり金属として約5重量%の量で存在する請求項7に記載の干渉顔料。
【請求項9】
上記(D)が、顔料の重量あたり金属として約0.4〜2.5重量%の量で存在する請求項8に記載の干渉顔料。
【請求項10】
上記被膜(A)が二酸化チタンまたは酸化鉄であり、(B)が二酸化ケイ素で、(C)が二酸化チタンである請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項11】
上記被膜(A)が酸化鉄であり、上記顔料が結晶質シリカを含む請求項10に記載の干渉顔料。
【請求項12】
上記(D)が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または酸化亜鉛である請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項13】
上記(D)がさらに酸化マグネシウムチタンを含む請求項12に記載の干渉顔料。
【請求項14】
上記基材が雲母である請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項15】
上記の金属酸化物を、水性媒体中での金属塩の加水分解により湿式化学的に小板状基材上に塗布することを特徴とする請求項1の干渉顔料の製造方法。
【請求項16】
上記(D)が、(A)と(B)と(C)の形成後に、pHが少なくとも9で塗布される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記(D)が酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または酸化亜鉛である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記(A)が酸化鉄であり、上記干渉顔料が結晶質シリカを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記(D)が顔料の重量あたり金属として約10重量%以下の量で存在する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1の干渉顔料を含むことを特徴とする塗料、ラッカー、印刷インク、プラスチック、セラミック、ガラス、または化粧用製剤。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2010−507009(P2010−507009A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533460(P2009−533460)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/081372
【国際公開番号】WO2008/048922
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】