色素上皮誘導因子:PEDF遺伝子の特性評価、ゲノム構成および配列
【課題】PEDFおよびその機能的断片をコードしている核酸、そのような核酸を含むベクター、そのようなベクターが導入されている宿主細胞、およびPEDFおよび等価なタンパク質を産生する組換え法を提供すること。
【解決手段】ニューロンを含む細胞集団を有効量の色素上皮誘導因子で処理し;および、該集団のニューロン細胞生存を促進することからなるニューロン細胞生存の促進法。グリア細胞を含む細胞集団を有効量の色素上皮誘導因子で処理し;および、該集団のグリア細胞増殖を阻害することからなるグリア細胞増殖阻害法。
【解決手段】ニューロンを含む細胞集団を有効量の色素上皮誘導因子で処理し;および、該集団のニューロン細胞生存を促進することからなるニューロン細胞生存の促進法。グリア細胞を含む細胞集団を有効量の色素上皮誘導因子で処理し;および、該集団のグリア細胞増殖を阻害することからなるグリア細胞増殖阻害法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は1992年9月24日に出願された特許出願第07/952,796号の一部継続出願である1994年6月7日に出願された特許出願第08/258,963号の一部継続出願である。
【0002】
(技術分野)
本発明は神経栄養性、神経細胞栄養性およびグリア細胞静止性タンパク質に関する。特に、本発明は色素上皮誘導因子(PEDF)として知られているタンパク質の生物学的特性およびそのタンパク質の組換え形に関している。本発明はまたrPEDFと称されるPEDFの端を切り取ったものにも関している。PEDFおよびrPEDFおよび機能的に等価なタンパク質に加え、本発明はrPEDFおよびその断片をコードしている核酸、そのような核酸を含むベクター、そのようなベクターが導入されている宿主細胞およびそのようなタンパク質を産生するためのこれらの宿主細胞の使用にも関している。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
色素上皮誘導因子(または色素上皮分化因子として知られている)は、培養ヒト網膜芽腫細胞の神経突起成長を誘導できる細胞外神経栄養性作因として培養ヒト胎児網膜色素上皮細胞の馴化培地で同定された(Tombran−Tink et al.(1989)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,30(8),1700−1707)。PEDF源、即ち網膜色素上皮(RPE)は網膜神経の正常な分化および機能に決定的なものであろう。増殖因子を含む種々の分子がRPE細胞により合成および分泌される。RPEは網膜神経に先だって分化して隣接して存在し、およびそれが血液−網膜障壁の一部として機能しているため(Fine et al.(1979)The Retina.Ocular Histology:A Text and Atlas,New York,Harper & Row,61−70)、RPEは目の血管性、炎症性、消耗性(degenerative)および異栄養性(dystrophic)疾患に関係していると考えられる(Elner et al.(1990)Am.J.Pathol.,136,745−750)。増殖因子に加え、栄養および代謝物もまたRPEおよび網膜間で交換されている。例えば、RPEはよく知られた増殖因子PDGF、FGF、TGF−α、およびTGF−βを網膜に供給している(Campochiaro et al.(1988)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,305−311;Plouet(1988)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,106−114;Fassio et al.(1988)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,242−250;Connor et al.(1988)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,307−313)。RPEにより供給されたこれらおよび他の未知の因子が網膜の構成、分化および正常な機能発揮に影響していることは非常にありそうなことである。
【0004】
RPEにより分泌される推定の分化因子の効果を研究および決定するため、培養細胞に網膜抽出物およびヒト胎児RPE細胞の培養で得られた馴化培地が加えられた。例えば、米国特許第4,996,159(Glaser)は約57,000+/−3,000の分子量のRPEから回収された血管新生阻害剤が開示されている。同様に、米国特許第1,700,691(Stuart)、4,477,435(Courtoisら)および4,670,257(Guedon born Saglierら)は網膜抽出物および細胞再生および眼疾患処置におけるこれらの抽出物の使用が開示されている。さらに、米国特許第4,770,877(Jacobson)および4,534,967(Jacobson)は、ウシ硝子体液の後方部から精製された細胞増殖阻害剤が開示されている。
【0005】
PEDFは最近ヒトRPEから50−kDaタンパク質として単離された(Tombran−Tink et al.(1989)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,414;Tombran−Tink et al.(1989)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,30,1700−1707;Tombran−Tink et al.(1991)Exp.Eye Res.,53,411−414)。特に、PEDFは正常網膜芽細胞に対応する新生物性体であるヒトY79網膜芽腫細胞の分化を誘導することが示されている(Chader(1987)Cell Different.,20,209−216)。PEDFにより誘導された分化的変化には神経突起の複雑な網目の拡張、およびニューロン特異的エノラーゼおよび神経フィラメントタンパク質のような神経性マーカーの発現が含まれる。このこと故にRPEによるPEDFタンパク質の合成および分泌が網膜神経の発達および分化に影響していると信じられている。さらに、PEDFは未分化のヒト網膜細胞(Y79網膜芽腫細胞のような)でのみ多く発現されており、それらが分化するとなくなるかまたはダウンレギュレーションされている。最近、PEDF mRNAが静止状態の胎児ヒトW1線維芽細胞で多量に発現され、およびそれらが老化すると発現されないことが報告された(Pignoloら、(1993))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PEDFのさらなる研究および網膜および中枢神経系(CNS)の炎症性、血管性、消耗性および異栄養性疾患の処置におけるその治療的使用の可能性の試験にはPEDFを多量に入手する必要がある。不幸にして、ヒト胎児の目においてPEDFは豊富には存在せず、さらにその源となる組織はほとんど入手できないことが(特に、研究および治療応用における胎児組織の使用制限をかんがみると)さらなるPEDFの研究を最も困難なものにしている。それ故PEDFおよび等価なタンパク質が多量に必要とされている。従って、PEDFおよび等価なタンパク質をコードしている核酸の多量の入手、およびPEDFおよび等価なタンパク質を産生する能力はPEDF、その構造、生化学的活性および細胞機能の研究ならびにPEDFの治療的使用の発見および設計に著しく強い影響を与えるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明によって、以下が提供される。
(項目1) ニューロンを含む細胞集団を有効量の色素上皮誘導因子で処理し;および
該集団のニューロン細胞生存を促進することからなるニューロン細胞生存の促進法。
(項目2) グリア細胞を含む細胞集団を有効量の色素上皮誘導因子で処理し;および
該集団のグリア細胞増殖を阻害することからなるグリア細胞増殖阻害法。
(項目3) ニューロン細胞が組織細胞培養にある項目第1項に記載の方法。
(項目4) 以下の工程をさらに含む項目第1項に記載の方法:
細胞培養を設定し;および
該細胞培養を有効量のPEDFで処理する。
(項目5) 処理される細胞が患者内へ移植される組織の構成要素を含む項目第1項に記載の方法。
(項目6) 細胞が胎児脳細胞である項目第6項に記載の方法。
(項目7) グリア細胞が腫瘍増殖の一部である項目第2項に記載の方法。
(項目8) 阻害されるグリア細胞増殖がグリオシスである項目第2項に記載の方法。
(項目9) 精製された色素上皮誘導因子またはその抗原性断片に対して作製された精製抗体または該抗体の抗原−結合断片。
(項目10) 前記抗体がポリクローナルである項目第9項に記載の単離抗体または抗体断片。
(項目11) 前記抗体がモノクローナルである項目第9項に記載の抗体または抗体断片。
(項目12) 前記抗体が検出可能な標識で標識されている項目第9項に記載の抗体または抗体断片。
(項目13) 細胞または細胞集団を有効量の項目第9項に記載の抗体または該抗体の抗原結合断片で処理し;および
色素上皮誘導因子生物学的活性を阻害することからなる色素上皮誘導因子の阻害法。
(項目14) 以下の工程を含んでなる、体液、細胞または組織試料中の色素上皮誘導因子レベルの決定法:
A.該試料と項目第9項に記載の精製抗体または抗原結合断片を該抗体または抗原結合断片と該試料中に存在する色素上皮誘導因子間で免疫複合体が形成される条件下で接触させ;
B.免疫複合体から過剰の抗体または抗原結合断片を分離し;および
C.免疫複合体のレベルを決定して色素上皮誘導因子レベルを決定する。
【0008】
PEDFおよびその機能的断片をコードしている核酸、そのような核酸を含むベクター、そのようなベクターが導入されている宿主細胞、およびPEDFおよび等価なタンパク質を産生する組換え法を提供することが本発明の目的である。本発明の別の目的はPEDFをコードしているゲノムDNA配列を得、ヒトゲノム中のイントロンーエクソン連接(ジャンクション)、染色体位置を同定し、ゲノム配列に隣接する該遺伝子の制御領域を提供することである。本発明はそのようなゲノムPEDF DNAに関している。
【0009】
本発明のさらなる目的は、PEDFの構造的特性を提供し、セリンプロテアーゼ阻害剤のセルピンファミリーへの構造的および機能的類似性を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、そのような組換え法に従って産生されたPEDFおよび等価なタンパク質を提供することであり、ここでそのように産生されたPEDFおよび等価なタンパク質は天然に存在する源となる生物体からのPEDFの単離に付随する危険性を伴っていない。
【0011】
本発明の別の目的は、rPEDFと称されるPEDFの端が切断されたものに対する核酸、そのような核酸を含むベクター、そのようなベクターが導入されている宿主細胞、およびrPEDFおよび等価なタンパク質を産生する組換え法を提供することである。そのような組換え法に従って産生されるrPEDFおよび等価なタンパク質を提供するのも本発明の目的である。
【0012】
神経細胞栄養性およびグリア細胞静止活性を持つPEDFタンパク質を提供するのが本発明のさらなる目的である。神経細胞栄養性活性は神経細胞の生存を長くすることで見ることができる。グリア細胞静止活性はPEDFまたはその活性断片存在下でのグリア細胞の増殖阻害で観察できる。本発明の別の目的はニューロン生存を助長/促進するように、およびグリア細胞の増殖を防止するように神経細胞を処理するための方法を提供することであり、それはそのような細胞集団を有効量のPEDFまたはその活性断片で処理することを特徴としている。
【0013】
本発明のさらに別の目的はPEDFを特異的に認識する抗体を提供することである(モノクローナルまたはポリクローナル、天然のタンパク質、組換え体タンパク質またはその免疫活性断片に対して)。本発明の目的は老化および/または他の消耗性疾患の決定においてそのような抗体調製物を使用するイムノアッセイによりPEDFを検出する方法を提供することである。本発明の別の目的は特異的にPEDF活性を阻害するためにPEDF抗体を使用する方法に関している。
【0014】
本発明のこれらのまたは他の目的および利点、ならびに追加の発明の特色はここに提供された発明の説明から明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は新規で、重要でありようやく解明された特性を持つタンパク質に関する。色素上皮誘導因子(PEDF)は神経栄養性、神経細胞栄養性およびグリア細胞静止特性を持つタンパク質である。本発明はさらに、PEDF遺伝子をコードしているDNA配列、PEDF遺伝子および生物学的活性を持つPEDFのタンパク質断片をコードしているPEDF遺伝子の断片を含むゲノムDNAに関する。
【0016】
”神経栄養性”活性とはここでは神経細胞集団の分化を誘導する能力として定義される。例えば、培養網膜芽細胞で分化を誘導できるPEDFの能力は神経栄養性活性と考えられる。
【0017】
”神経細胞栄養性”活性とはここでは神経細胞集団の生存を促進する能力として定義される。例えば、神経細胞のニューロン生存因子として働くPEDFの能力は神経細胞栄養性活性である。
【0018】
”グリア細胞静止”活性とはここではグリア細胞の成長および増殖を阻害する能力として定義される。例えば、グリア細胞の成長および/または増殖を防止するPEDFの能力はグリア細胞静止活性である。本発明で評価されたタンパク質アミノ酸配列に基づくと、PEDFはセリンプロテアーゼ阻害剤であるセルピン遺伝子ファミリーと高い配列相同性を持っていることが観察された。このファミリーの多くのメンバーは、タンパク質の反応性部位として働くカルボキシル末端の厳密に保存されたドメインを持っている。これらのタンパク質は従って共通の祖先から誘導されていると考えられる。しかしながら、セルピン遺伝子ファミリーのメンバー間で発育制御は異なっており、多くは古典的プロテアーゼ阻害活性から逸脱している(Bock(1990)Plenum Press,New York Bock,S.C.Protein Eng.4,107−108;Stein et al.(1989)Biochem.J.262,103−107)。PEDFはセルピンと配列相同性を共有しているが、cDNA配列の分析から保存的ドメインを欠いており、従って古典的プロテアーゼ阻害剤としては機能しないであろう。
【0019】
PEDFのゲノム配列決定および分析はイントロンおよびエクソンならびに5’−上流配列の約4kbの配列を提供した。本発明はインサイチュハイブリダイゼーションおよび体性細胞ハイブリッドパネルの分析を用いて、17p13.1に対するPEDFの遺伝子の局在化を示している(Tombran−Tink、et al.,(1994)Genomics,19:266−272)。これはp53腫瘍抑制遺伝子ならびにp53遺伝子生成物中の突然変異に相関しない多くの遺伝性癌の染色体局在化に非常に近い。PEDFは従ってこれらの癌の第一の候補遺伝子になった。
【0020】
完全長ゲノムPEDF配列は配列ID番号:43に示されている。PEDF遺伝子は約16kbであり、8つのエクソン(そのすべては保存的共通スプライス部位を持っている)を含んでいる。PEDF遺伝子の5’−隣接部位は2つのAlu反復要素を含んでおり、それは推定プロモーター配列の最初の1050bpの約3分の2を占めている。転写因子のいくつかのファミリーのメンバーで認識されるであろういくつかの配列モチーフも存在する。偏在する転写因子のオクタマーファミリーの2つの可能な結合部位の存在は、試験されたほとんどの組織にPEDFが存在することを説明しているであろう。しかしながら、他のより特異的な要素の存在はPEDFが厳密な制御下にあることを示唆し、神経分化および線維芽細胞老化のような多様な過程に対する効果が含まれる従来の研究を支持している。
【0021】
ゲノムPEDF配列またはその断片は細胞における遺伝子検出のためのプローブとして有用である。加えて、そのようなプローブはその遺伝子を運んでいる細胞型の同定のためのキットに有用である。遺伝子構成の中の突然変異、欠損または他の変化はPEDFゲノム配列から誘導されるDNAプローブを使用することにより検出できる。
【0022】
(組織分布)
PEDFはRPE細胞によって特に高く発現されるが、ほとんどの組織、細胞型、腫瘍などでノーザンおよびウェスタンブロット分析により検出可能である。例えば、硝子体液および眼房液に容易に検出される。PEDFの細胞内局在化という重要な問題も追求されている。PEDFの大部分は分泌されるようであるが、培養サルRPE細胞の探査にPEDF抗体を用いたところ、核ならびに細胞質の非常に特異的な細胞骨格構造にPEDFが付随することが観察された。重要なことは、このことが試験された細胞の年齢および特定の細胞周期状態で変化することである。例えば、付着の最初の段階で基層と相互作用する霊長類RPE細胞の偽足の先端に本タンパク質は濃縮されるようである。その後、この染色は消失し、特異的細胞骨格構造および核に付随して本タンパク質が出現する。従って、PEDFは核および細胞質の両方で重要な細胞内の役割を果たしているようである。
【0023】
(細胞周期の関与)
本発明は分裂中の未分化Y−79細胞では発現し、および対応する静止状態の分化細胞ではわずかな発現または無発現であることを示している(Tombran−Tink、et al.,(1994)Genomics,19:266−272)。Pignolo et al.(1993)J.Biol.Chem.,268:2949−295、はWI−38線維芽細胞中のPEDFの合成は若い細胞の細胞周期のG0段階に限定されることを示している。さらに、年をとった老化細胞においては、PEDF メッセンジャーRNAは存在しない。
【0024】
(組換え体PEDFの産生)
PEDFポリペプチドを分節に区切って研究することは構造−機能の研究では基本的なことである。この目的ために、PEDFコード配列の断片を含む発現ベクターがPEDFポリペプチドの異なった領域の合成および単離のために優れた断片源を提供する。ヒト胎児PEDF配列の発現は大腸菌発現ベクターおよびヒト胎児PEDF cDNAにより達成された。組換え体PEDF生成物(rPEDF)は生物学的に活性な神経栄養性因子であり、湿潤大腸菌グラム当たり1.3mgのオーダーの収量で得られることが示された。端が切断されたペプチドはまた適当な分子生物学的構築物を大腸菌で発現させても作製できる。これらの生成物を用い、PEDF一次構造上の2つの独特な領域が1)タンパク質のN−末端近くのアミノ酸残基44−121内に位置し、分子に神経栄養性活性を与える”活性部位”、および2)セルピンの露出ループと相同的であるC−末端近くの領域(即ち、”古典的”セルピン活性部位)が区別できた。これらの結果は、1)神経突起成長にはPEDFの全部の天然コンホメーションは必要とされない、および2)セリンプロテアーゼの阻害ではPEDFの生物学的活性は説明できないことが示唆される。タンパク質配列を覆う一連の端が切断されたrPEDF構築物が得られ、N−末端近くの特異的神経栄養性”活性部位”の正確な位置を決めることができた。
【0025】
(高度に特異的なポリクローナル抗体での特性付け)
精製された組換え体ヒトPEDFは、PEDF媒介神経栄養性活性を特異的に阻害するポリクローナル抗体(”抗−rPEDF”)の開発に使用された。さらに、抗−rPEDFは完全にIPM誘導神経栄養性活性を阻害した。
【0026】
(PEDFの神経栄養性特性)
Y−79およびWeri腫瘍細胞系において天然PEDFおよびrPEDFが神経栄養性であることを示すことに加え、本発明はPEDFが初代培養の正常ニューロンに効果を示すかどうかを決定した。この目的のため、生後8日のラットから調製された正常小脳顆粒細胞(CGC)の培養物を用いて研究が実施された。rPEDFで処理された細胞はより神経的形態的外観を示すことにより処置には応答しなかった。しかしながら、PEDFは顆粒細胞生存に大きな効果を示した。これらの細胞は腫瘍性または形質転換細胞ではないので、これらは培養で限られた寿命しかなく、培養培地に依存して約21日で死んでゆく。しかしながら、PEDF処理培養物は非処理培養物と比較して無血清培地中、培養10日後に10倍の細胞を含んでいた(図4)。これらの結果は;1)直接的顕微鏡観察および細胞計数、および2)生きている細胞数を決定するMTS(テトラゾリウム/ホルマザン)アッセイにより決定された(実施例11参照)。従って、PEDFはCNSニューロン生存に劇的な効果を示し、近年明らかにされつつある”神経細胞栄養性”タンパク質の数少ないリストに加えられるべきである。
【0027】
一般的な組織培養研究:
ニューロンおよびグリアを用いる組織培養実験で一般的に悩まされる2つの問題は、ニューロンは急速に死にがちであり、グリアは培養皿を乗り越えがちであることである。PEDFまたはそのペプチドは両方の点を助けることができる。従って、PEDFの商業的使用の一つは、CNS細胞が培養される場合の一般的な培養培地添加物としてであろう。
【0028】
CNS移植研究:
ニューロンの移植はある種の病理を治療すると考えられている。例えば、パーキンソン疾患において、特定の胎児脳細胞の患者への移植は疾患に付随する問題を軽減または治療できるであろう。しかしながら、一つの大きな問題は移植された細胞の生存を延ばすこと、およびそれらを分化したまま維持すること(例えば、適当な物質を分泌するように)であろう。細胞をPEDFで前処理すると、これらの両方の面での助けになる。同様に、移植前にニューロンまたは大グリア細胞をPEDFでトランスフェクトすると、移植部位で長期間のPEDF源であることができる。
【0029】
盲目治療を助けるため、神経網膜および光受容体細胞の移植の試みが盛んである。現在まで、これらの試みは移植片の非分化および死滅の両方のため実を結んでいない。このような場合にも、PEDFは両方の点で助けになるであろう。特に、手術前に移植される光受容体ニューロンはPEDFまたは細胞内へトランスフェクトされた遺伝子で前処理できる。もしくは、PEDFは高レベルで隣接する網膜色素上皮(RPE)細胞内へトランスフェクトでき、そこでタンパク質の過剰な供給源として働くことができる。幾人かの研究者は、培養RPE細胞が試験動物の光受容体空間内への移植後に非常によく生存していることを示している。インビトロでのヒトRPE細胞のPEDF遺伝子によるトランスフェクション、続いてのそれらの網膜移植での使用が容易である。
【0030】
神経消耗性疾患:
CNS(脳および網膜)に対する多くの神経消耗性疾患およびその他の障害はニューロンの死亡およびグリアの過密(グリオシス)により代表される。PEDFはこれらの状態において、一次ニューロンの寿命および機能発揮を延長するため、およびグリアの進出をくい止めるために有効に使用できる。例えば、PEDFはCNS障害に応答した小グリア活性化を阻害し、ならびにニューロンの命を延長/助命するのに有効で有り得る。
【0031】
網膜において、PEDFがミュラーグリア細胞を阻害することが予測できる。
【0032】
ミュラー細胞は大グリア細胞と類似しているので、PEDFは同様に網膜剥離、糖尿病、色素性網膜炎などのような病態でのグリオシスの防止ならびに網膜ニューロンの助命に有効であろう。
【0033】
グリア癌:
CNSを攻撃する癌の主要な型のほとんどにグリア要素が含まれており、PEDFは他の形の療法と組み合わせて使用できるグリア静止因子である。例えば、手術に加えて、PEDFは疾患の拡散または再発を有効に阻害できる。
【0034】
(遺伝的分析)
本発明はヒトPEDF遺伝子およびそのプロモーターの構成の決定およびその進化的相関および種々のヒト胎児および成人組織での発現に関している。
【0035】
本発明は、なかでもPEDFをコードしている核酸を提供する。特に、cDNA配列が配列ID番号:1に示したように提供される。このcDNAは配列ID番号:2に示したアミノ酸配列を持つPEDFをコードしている。さらなるゲノム配列は図1のように地図作製がされ、配列ID番号:43が提供される。ゲノムPEDF配列の追加の断片は配列ID番号:9から配列ID番号:12に提供されている。イントロンーエクソン連結の位置は表1および配列ID番号:25から配列ID番号:40および配列ID番号:43に同定されている。
【0036】
術語”核酸”とはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)のポリマーを称し、それらは任意の源から誘導でき、一本鎖でも二本鎖でもよく、DNAまたはRNAポリマー内へ取り込むことができる合成、非天然または改変ヌクレオチドを場合により含むことができる。本発明の核酸は好適にはDNAのセグメントである。
【0037】
本発明ではさらに、PEDFの端が切断されたものが提供される。これらの内最も大きいものはrPEDFと称され、PEDFのAsp44...Pro418に融合したアミノ酸配列Met−Asn−Arg−Ileを含んでいる(アミノ末端が欠失している)。rPEDFタンパク質は配列ID番号:3のアミノ酸配列を含んでいる。本発明はまたrPEDFのアミノ酸配列を含むタンパク質(即ち、配列ID番号:3のアミノ酸配列)をコードしている核酸も提供する。
【0038】
遺伝子コードの縮重およびいわゆる”Wobbleルール”と呼ばれている古典的塩基対生成のコドンの第三位に例外が許されるという観点から、与えられた任意のタンパク質は一つ以上の核酸によりコードされうることを当業者は理解するであろう。従って、本発明は配列ID番号:2および配列ID番号:3ならびに等価なタンパク質のアミノ酸配列をコードするすべての核酸を包含している。句”等価な核酸”とはすべてのこれらの核酸を包含することを意図している。
【0039】
特定のタンパク質の機能に不利に影響することなくアミノ酸配列を変更できることも当業者は理解するであろう。実際、アミノ酸配列のいくつかの変更はタンパク質に改良された特性を与える。どのアミノ酸をタンパク質の機能に不利に影響することなく変更してもよいかの決定は当業者にはよく知られている。さらに、より多くのまたはより少ないアミノ酸を含むタンパク質でも機能的に等価なタンパク質を生じることができる。従って、本発明はPEDFタンパク質またはその機能的タンパク質断片を生じるすべてのアミノ酸配列を包含することが意図されている。
【0040】
可能な等価な核酸および等価なタンパク質のいくつかの例には、rPEDFタンパク質およびその等価なタンパク質断片の合成に関する置換、付加または欠失を持つ核酸;rPEDFタンパク質の産生に関する異なった制御配列を持つ核酸;タンパク質のアミノ末端に合同した4つ以外の異なったアミノ酸および/またはアミノ酸の数を持つrPEDFの変異体;および活性に不利に影響しないアミノ酸置換、付加、欠失、修飾および/またはグリコシル化のような翻訳後修飾を持つPEDFおよびrPEDFおよびその機能的タンパク質断片が含まれる。神経栄養性活性はPEDFの特定の部分に関連しているので、これらの残基を含むタンパク質断片は明らかに本発明の範囲内である。
【0041】
本発明はまた、配列ID番号:1の核酸、配列ID番号:2または等価なタンパク質のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしている核酸、配列ID番号:3または保存的に修飾された変異体タンパク質のアミノ酸配列をコードしている核酸、および保存的に修飾されたそれらの核酸の変異体を含むベクターも提供する。
【0042】
特に、本発明は配列ID番号:1の核酸を含むベクターπFS17、および配列ID番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている核酸を含むベクターpEV−BHを提供する。記載されたcDNA挿入物は別のベクターにも存在できることを当業者は理解するであろう。例えば、挿入物はファージ、ウイルス、カプシド、プラスミド、コスミド、ファージミド、YACまたはファージまたはウイルスカプシドの外側に結合されたような異なった性質を持つベクターに存在できる。ベクターは宿主域、安定性、複製および維持を異にすることができる。さらに、ベクターはクローン化挿入物に及ぼす制御の型を異にすることができる。例えば、ベクターはクローン化挿入物を異なったプロモーター、エンハンサーまたはリボソーム結合部位の制御下に置くことができ、またはそれをトランスポゾンまたは移動性遺伝要素の一部として構成することさえ行う。
【0043】
本発明は、配列ID番号:1の核酸、配列ID番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質または等価なタンパク質をコードしている核酸、配列ID番号:3のアミノ酸からなるタンパク質または等価なタンパク質をコードしている核酸を含むベクターが導入されている宿主細胞も提供する。特に宿主細胞は配列ID番号:1の核酸を含むベクターπFS17、または配列ID番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている核酸を含むベクターpEV−BHを持っている。
【0044】
本発明のベクターは真核生物または原核生物を問わず任意の適した宿主細胞内に導入できる。これらの宿主細胞は増殖のための好適な条件、栄養要求および環境の試薬への感受性が異なっているであろう。宿主細胞内へベクターを導入する任意の適した手段が用いられる。原核生物細胞の場合、ベクター導入は例えばエレクトロポレーション、形質転換、トランスダクション、コンジュゲーションまたはモビリゼーションにより達成される。真核生物細胞の場合、ベクター導入は例えばエレクトロポレーション、トランスフェクション、感染、DNA被覆マイクロプロジェクタイルまたは原形質体融合を使用することにより導入されるであろう。
【0045】
導入された核酸の形は宿主細胞内へのベクターを導入するために使用された方法により変化するであろう。例えば、ベクターが自己複製要素として維持されているか、プロウイルスまたはプロファージとして組み込まれているか、過渡的にトランスフェクトされているか、過渡的に複製不能ウイルスまたはファージと感染されているか、または一重または二重交差組換えにより安定に導入されているかに依存して核酸は閉環状か、ニックされているかまたは直線状であろう。
【0046】
本発明はまた、PEDF、rPEDFおよび等価なタンパク質を産生する方法を提供し、その方法はタンパク質を宿主細胞で発現することを特徴としている。例えば、配列ID番号:1の核酸、配列ID番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質または等価なタンパク質をコードしている核酸、配列ID番号:3のアミノ酸からなるタンパク質または等価なタンパク質をコードしている核酸またはそれらと等価な核酸を含むベクターが導入されている宿主細胞が所望のタンパク質を産生するのに適した条件下で培養されるであろう。特に、配列ID番号:1の核酸を含むベクターπFS17、または配列ID番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている核酸を含むベクターpEV−BHは各々配列ID番号:2および配列ID番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質を産生するのに適した条件下で培養されるであろう。
【0047】
本発明はまた、所望のタンパク質を産生するために適当な宿主細胞を培養する前記の本発明に従ってされる組換え的に産生されたPEDFおよびその機能的タンパク質断片も提供する。組換え的手段によるPEDFのようなタンパク質の産生は、高度に生成された状態で、天然に存在する供給器官から単離および生成されたタンパク質に付随するであろう疾病原因物質を含まずに多量のタンパク質の入手が可能であり、例えば、そのようなタンパク質源として胎児組織を使用する必要性をなくする。
【0048】
組換え体PEDFおよびその機能的タンパク質断片は、例えば、そのタンパク質をコードしているDNAまたはRNAの様な核酸の導入を含む種々の手段により細胞に対し活性な試薬として供給され、従って、宿主細胞内で転写および/または翻訳されるであろうし、外因性タンパク質の添加および他の適した投与手段は当業者には既知であろう。供給されるのがどのような形であれ、活性試薬は単独で、または投与法に適した活性試薬の医薬組成物および処方を用いて他の活性試薬と組み合わせて使用される。医薬として適した賦形剤(即ち、賦形薬、補助剤、担体または希釈剤)は当業者にはよく知られており、容易に入手可能である。賦形剤の選択は特定の化合物ならびに化合物を投与するのに使用される特定の方法により部分的に決定されるであろう。従って、本発明の範囲内で調製できる多くの種類の適した処方が存在する。しかしながら、組換え体タンパク質の神経栄養性、神経細胞栄養性およびグリア細胞静止活性を変化させない医薬として受容可能な賦形剤が好適である。
【0049】
以下の実施例は本発明をさらに例示するためのものであり、どうあろうとその範囲を制限していると解釈するべきではない。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
この実施例は、PEDFのトリプシン加水分解と生じる断片のアミノ酸配列決定について記載している。
【0051】
PEDFはヒト胎児RPE細胞の初代培養培地の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製された。HPLC精製されたPEDFは還元されアルキル化された。その後、それを乾燥し50μlのCRA緩衝液(8M尿素、0.4M炭酸アンモニウム、pH8.0)に溶解し、5μlの45mMジチオスレイトール(DTT)(Calbiochem、San Diego、CA)を加えた。15分、50℃で加熱後、溶液を冷却し、5μlの100mMヨード酢酸(Sigma Chem.Co.、St.Louis、MO)を加えた。15分後、溶液は2M尿素の濃度になるように希釈し、1:25(wt/wt)の酵素:基質比を用いて22時間、37℃でトリプシン加水分解(Boehringer−Mannheim、Indiaanapolis、IN)させた。トリプシン分解ペプチドはVydac2.1mmx150mmC18カラムを用い、1040ダイオードアレイ検出器を備えたHewlett−Packard1090HPLCによるナロウボア逆相HPLCにより分離した。流速は150μl/分であり、0分に5%B、63分に33%B、95分に60%B、105分に80%Bのグラディエントを用いた。このグラディエントでは、緩衝液Aは0.06%トリフルオロ酢酸水溶液、緩衝液Bは0.055%トリフルオロ酢酸/アセトニトリルであった。クロマトグラフィーのデータは210nmと277nm(および209nmから321nmのUVスペクトル)でそれぞれのピークを得た。N末端配列分析のための試料はポリブレン前処理したグラスファイバーフィルターを通し、自動エドマン分解(Harvard Micrsochemical Facility、Boston、MA)ABI型477A気相タンパク質シークエンサー(プログラムNORMAL1)にかけた。生じるフェニルヒダントイン化アミノ酸分画はオンラインABIモデル120A HPLCとShimazu CR4A インテグレーターを用いて手動で同定した。
【0052】
精製PEDFのトリプシン加水分解と得られた断片のアミノ酸分析により
【0053】
【数1】
【0054】
を含む非重複ペプチド配列が得られた。
【0055】
(実施例2)
この実施例は実施例1のペプチド配列に基づいたオリゴヌクレオチドの構築、PEDF cDNAの単離におけるオリゴヌクレオチドの使用、およびPEDFcDNAの配列決定について記載している。
【0056】
実施例1のJT−3とJT−8ペプチド配列およびコドン利用データに基づき、オリゴヌクレオチド、oFS5665(配列ID番号:4):5’−AGYAAYTTYTAYGAYCTSTA−3’およびoFS5667(配列ID番号:5):5’−CTYTCYTCRTCSAGRTARAA−3’はABI 392 DNA/RNA合成機により構築し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマーとして用いた。
【0057】
ヒト胎児目Charon BS cDNAライブラリー(Kellog Eye Institute の Dr.A.Swaroop から提供された)は一度増幅(Sambrook et al.、Molecular Clonig:A Laboratory Manual、2nd ed.、Cold Spring Harbor、NY(1989))し、Techne熱サイクラーおよび標準試薬(GeneAMP、Perkin−Elmer Cetus)を用いた(ただし、3mMでMgSO4を使用した)PCR(Friedman et al.、Screeing of λgtll Libraries、In:PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications.Innis et al.、eds.、Academic Press、NY(1990)、pp.253−260)でスクリーニングした。約350bpのPCR増幅断片はNA−45 DEAE−セルロース紙(Schleicher and Scheull)を用いて3%NuSieve3:1ゲル(FMC Biochemicals)Rockland、ME)上に分離した(Sambrook et al.、上記文献)。断片はランダムプライミング(ランダムプライミングキット、Boehringer−Mannheim、Indianapolis、IN)によりα32P−dCTP(Amersham Corp.、Arlington Heights、IL)で標識し、ヒト胎児目ライブラリーの200、000プラーク形成単位(PFU)をスクリーンするのに用いた。
【0058】
8つの陽性なクローンが単離され(Sambrook et al.、上記文献)、陽性クローンのDNAはQiagen Maxi 製造プロトコール(Qiagen,Inc.、Chatsworth、CA)に従って精製された。この陽性クローンの挿入物はNotI(BRL、Gaithersburg、MD)で切り出し、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)で環化し、大腸菌Epicurian Sureコンピーテント細胞(Startagene、Inc.、La Jolla、CA)に形質転換させ、アンピシリンおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクドシド(X−gal)を含んだルリアブロス(LB)プレートに蒔いた。
【0059】
白いコロニーが選択され(そのようなコロニーは挿入物を持っていなければならないことに基づいて)、単一コロニー培養からのプラスミドDNAをQiagen プラスミド ミニプレップ プロトコールに従って分離した。精製プラスミドは EcoRI と HindIII(BRL)で消化した。これらの制限部位は挿入物の5’と3’末端にリンカーを連結反応させてライブラリー構築している間に加えられたもので、従ってEcoRI−HindIII消化により単離されたプラスミドに存在する挿入物が切り出される。これらのフラグメントは挿入物の大きさを決定するため0.7%アガロースゲルで電気泳動した。最大の挿入物を持つプラスミド(即ち、πFS17)が地図作製のため、およびクローンの同一性を確認するため、続いてSequenase 2.0 シークエンシング キット(United States Biochemical Corp.、Cleveland、OH)を用いての配列決定のために選択された。配列分析はMacVectorソフトウェアーパッケージ(International Biotecnologies、Inc.)およびGenBank Sequence Data Bank(Intellingenetics、Montain View、CA)を利用して行った。
【0060】
πFS17の配列分析は、配列ID番号:2の418個のアミノ酸をコードする長い読み枠(ORF)を持つ配列ID番号:1、典型的なATG開始コドンおよびポリアデニル化信号(配列ID番号:1には示されていない)からなる塩基配列を明らかにした。クローンのコード配列は前にPEDFペプチドとして決定された配列と全て正確に同一であった。演繹されるアミノ酸配列はシグナルペプチドとして働く事のできる親水性アミノ酸の広がりを含んでいる。コード配列とペプチド配列をGenBank Data Bankで比較するとPEDFはセルピン(セリンプロテアーゼ阻害剤)遺伝子ファミリー(ヒト[α]−1−アンチトリプシンを含んでいる)と有意な相同性を持つ独特のタンパク質である。この遺伝子ファミリーのある群は神経栄養性活性を示すけれど(Monard et al.(1983)Prog.Brain Res.、58、359−364;Monard(1988)TINS、11、541−544)、PEDFはセルピンの反応性ドメインの共通配列として提案されている配列を欠いている。
【0061】
(実施例3)
この実施例は組換え体PEDF生産のための発現ベクターの構築について記載している。
【0062】
発現ベクターは実施例2で述べたようにヒトPEDFの完全長cDNAを含むプラスミドπFS17を用いて構築した。PEDFをコードしている配列はベクターpEVBHを得るためにプラスミドpEV−vrf2(Crowl et al.、Gene、38、31−38(1985))中に存在するバクテリオファージ ラムダ PLプロモーターの制御下におかれた。このことはPEDFコード領域(即ち、配列ID番号:1のヌクレオチド245番から1490番)の部分を含むπFS17のBamHI−HindIII断片を得、EcoRI−HindIIIでプラスミドpEV−vrf2を消化し、BamHIとEcoRI末端をDNAポリメラーゼI(Klenow断片)で充填反応して両方の断片を平滑にし、生じた平滑端/適合終結断片を互いに結合させることにより達成された。得られたベクターpEV−BHはシャインーダルガノ(SD)配列とPEDFコード領域との間に8つのヌクレオチドの距離を有した。構築物は配列ID番号:3に示されているような379個のアミノ酸のタンパク質(rPEDFとして知られている)がコードされるようにMet−Asn−Arg−Lle−Asp44−−−−Pro418を特定している。rPEDFタンパク質のアミノ末端のアミノ酸は天然のPEDFには無く、pEV−BHの構築中に核酸が融合することで生ずるものである。
【0063】
pEV−BHによる組換えPEDFタンパク質の生産を立証するため、このプラスミドを、熱感受性λcIAt2リプレッサー(Bernard et al.(1979)Methods in Enzymology、68、482−492)の遺伝子を含む低コピー数適合プラスミドpRK248cItsを有する大腸菌RRI株(Maniatis et al.(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)で繁殖させた。タンパク質誘導はBecerra et al.(1991)Biochem.、30、11707−11719、に記載されているように実施されたが、以下のような変更を行った。pEV−BHを含んでいる細菌細胞は32℃、50μg/mlアンピシリンを含んだLB培地で早期対数増殖期(OD600nm=0.2)まで増殖させた。培養の温度は65℃の温浴中でフラスコをインキュベートさせる事で急激に42℃に上げ、細菌は続いて340rpmエアーフローインキュベーター中で2−3時間、42℃で増殖させた。一部を取り600nmで吸収度を読みとった。
【0064】
タンパク質誘導に続いて合成された初期タンパク質は放射性標識された。培養液が42℃に達したら、150μCiのL−[35S]メチオニン(1040Ci/mmol、Amersham Corp.、Arlington Heights、IL)を培養液ml当たりに加え、インキュベートを42℃で10分間および30分間続けた。細胞は遠心分離により回収し、TEN緩衝液(10mMトリス−HCl、pH 7.5、1mM EDTA、100mM NaCl)で洗浄した。総細菌抽出物からの35S−標識されたペプチドを再溶解し、SDS−12% PAGE続いてフルオログラフィーにより分析した。42,820Mrポリペプチドに対応するバンドが10分および30分の後誘導で検出された。pEV−BHによって発現した組換え体タンパク質の大きさはpEV−BHにサブクローンされたコード配列に期待される大きさと一致していた。同様の方法でより小さい断片(BP=28,000Mr;BX=24,000Mr;BA=9,000Mr)が合成でき、精製できる。BPペプチドはPEDFアミノ酸の44番目から269番目を含み、BXペプチドはPEFアミノ酸の44番目から227番目を含み、BAペプチドはPEDFアミノ酸の44番目から121番目を含んでいる。
【0065】
(実施例4)
この実施例は完全長PEDF cDNAを含んだ発現ベクターの構築について記載している。
【0066】
pEV−BVの構築について実施例3に記載された方法と類似の方法で、プラスミドπFS17のPEDF ORFがプラスミドpRC23とpEV−vrf1(Crowl et al.Gene、38、31−38(1985))中に存在するバクテリオファージラムダPLプロモーターの制御下におかれた。このことはPEDF cDNA(即ち、配列ID番号:1のヌクレオチド107から1490)の部分を含むπFS17のSfaNI−HindIII断片を得、EcoRI−HindIIIでプラスミドを消化し、DNAポリメラーゼI(クレノー断片)によるSfaNIとEcoRI末端の充填反応で平滑端化し、生じた平滑末端化/適合末端化断片をお互いに結合させることにより行った。得られたベクターpRC−SHおよびpEV−SHは、SD配列およびPEDFコード領域の間に各々14と8個のヌクレオチドの距離を置いていた。構築物pRC−SHは完全長PEDF ORF、配列ID番号:2に示したように天然に存在するアミノ末端を持つ418のアミノ酸のPEDFタンパク質を特定している。構築物pEV−SHは、完全長のPEDFORFを含み、配列ID番号:2のPEDF配列の前にMet−Asn−Glu−Leu−Gly−Pro−Arg(配列ID番号:8)を持つ425個のアミノ酸のPEDFアミノ末端融合タンパク質を特定する。これらのつけ加えたアミノ末端のアミノ酸は天然のPEDFでは生ぜず、これらの付加アミノ酸を特定するpEV−SHのコドンはpEV−SHの構築中に核酸の融合によって生じる。
【0067】
2つのベクターによって特定される組換え体タンパク質の生産を確認するため、ベクターを大腸菌株RRI(pRK248cIts)に導入し、例3に示した方法と類似の方法で誘導し、その間の35S−メチオニンによる代謝標識により、タンパク質誘導が実施され、モニターされた。誘導されたpRC−SHおよびpEV−SHによって特定されたタンパク質の発現は、細菌細胞の増殖に負の効果を持っていた。親のプラスミドを含んだ細菌培養と比較すると、pRC−SHおよびpEV−SHを含んだ細菌培養はより遅く増殖し、分割した。この細菌の増殖に対する負の効果は、開始コドンとSDの間の距離に関連があり、そのことはそのような距離を短くする事でより効率の良い組換え体タンパク質の翻訳につながることを示唆する。PEDFの46,000Mrの候補ポリペプチドは、pRC−SHとpEV−SHを含む細菌培養中の培養液や細胞溶解物には検出されなかった。しかしながら、35,000Mrタンパク質はpRC−SHとpEV−SHを含む培養物の抽出物に見られたが、親プラスミドを含んだ培養物の抽出物には見られなかった。この事はPEDFのアミノ終末末端はプロテアーゼ感受性であり、組換え体完全長PEDFはこの特定の宿主中で代謝されるという事を示唆している。もしくは、期待された大きさの組換え体PEDFタンパク質が観察されなかった事は実験上の人為的結果によるものを反映していると思われ、代わりの発現ベクター、宿主、誘導可能プロモーター、サブクローニング部位、組換え体タンパク質の単離または検出の方法あるいはタンパク質誘導の手段を用いることで克服できるであろう。
【0068】
(実施例5)
この実施例は組換えにより生成されるPEDFを大量に生成する方法について記載している。
【0069】
rPEDFを含んでいる総重量が1gの大腸菌を50mlの20mMトリス−HCl、pH7.5、20% シュークロース、1mM EDTAに懸濁した。細菌は氷の上に10分間放置し、4000xgで遠心分離して沈降させ、50mlの氷冷した水に10分間懸濁させた。溶解した外側の細胞壁は8000xgで遠心分離してスフェロプラストから分離した。
【0070】
ペレット状のスフェロプラストは5mM EDTA、1μg/mlペプスタチンおよび20μg/mlのアプロチニンを含む10mlのリン酸緩衝液(PBS)に再懸濁させた。懸濁液は細胞膜を破壊するためソニケーター(Ultrasoics、Inc.、モデルW−225)でプローブ音波処理を行った。30秒の間を置きながら30秒パルスで三回破壊し、この処理中、試料は氷水中に浸して行った。RNase TI(1300ユニット、BRL)およびDNase I(500μg,BRL)を音波処理された細胞懸濁液に加え、懸濁液は10分間室温でインキュベートした。この懸濁液は5mM EDTA、1μg/mlペプスタチン、20μg/mlアプロチニンを含むリン酸緩衝液(PBS)40mlを加えて希釈し、粗封入体は13,000g、30分間遠心分離で沈降させた。封入体を構成している粒子性物質は25%シュークロース、5mM EDTAおよび1% トリトンX−100を含んでいる40mlのPBSに再懸濁し、氷上で10分間インキュベートし、24,000xgで10分間遠心分離した。洗浄工程は3回繰り返した。最終的に、封入体は50mMトリス−Cl、pH8.0、5Mグアニジン−Clおよび5mM EDTAを含んでいる変性緩衝液10mlに再懸濁させた。懸濁液は氷水中で5秒間、手短にプローブ音波処理した。得られた懸濁液は氷上でさらに1時間インキュベートした。12,000xg、30分間遠心分離後、上清を50mMトリス−Cl、pH 8.0、20% グリセロール、1mM DDT、1μg/mlのペプスタチンおよび20μg/mlのアプロチニンを含む復元緩衝液100mlに加え、タンパク質を復元するため4℃で一晩中静かにかき混ぜた。可溶および不溶分画は13,500xgで30分間の遠心分離により分離された。
【0071】
可溶性分画はそれらをCentricon 30微量濃縮機(Amicon Div.、W.R.Grace & Co.、Berverly、MA)を用いて1mlに濃縮する事でさらに精製し、それは緩衝液A(50mM リン酸ナトリウム、1mM DTT、20% グリセロール、1mM EDTA、1μg/mlペプスタチン、1mMベンズアミジン)に対して4℃で3時間透析をした。透析抽出物はEppendorf Centrifuge(モデル5415C)で14,000rpmで10分間、遠心分離した。上清分画は緩衝液Aで予め平衡化したS−Sepharose fast−flow(Pharmacia、New Market、NJ)カラム(1mlベッド容量)に層積した。カラムは2倍のカラム容量の緩衝液Aで洗浄した。最終的に、組換え体rPEDFは緩衝液Aに50、100、150、200、300、400、500、1000mMのNaClを加えて段階的濃度勾配で溶出させた。1mlの分画を重力流出によって回収され、緩衝液Aに対して透析した。組換え体rPEDFを含む分画300は−20℃で保存した。分画300の回収率は細胞パック1g当たり50μgで、それは総タンパク質の25%に値する。
【0072】
rPEDFの殆どは6Mグアニジウム−Clを含む10mlの緩衝液B(50mMトリス−Cl、pH8.0、1mM DTT、2mM EDTA)に分画を溶解することにより不溶性分画から回収された。溶液は10,000xgで5分間、遠心分離した。その上清は4M グアニジウム−Clを含む緩衝液Bで予め平衡化した2つのSuperose−12(Pharmacia、New Market、NJ)カラム(各々2.6cmx95cm)を縦列につないだ物の上に層積した。流速は3ml/分であった。Superose−12カラムから得られた組換え体rPEDFを含んでいる分画はプールし、緩衝液C(4M尿素、50mMリン酸ナトリウム、pH6.5、1mMベンズアミジン、1μg/mlペプスタチン、4mM EDTA)に対して透析した。透析分画は0.22μmフィルター(Miller−GV、Millpore Corp.、Bedford、MA)を通過させた。濾液は緩衝液Cで予め平衡化したmono−S(Pharmacia、New Market、NJ)カラム(1cmx10cm、dxh)に層積した。カラムは緩衝液Cで洗浄し、組換え体rPEDFは0.5ml/分で緩衝液C中の0mM−500mM NaCl濃度勾配で溶出させた。2mlずつの分画を回収し、組換え体rPEDFのピーク分画をプールした。プールした分画中の回収率は細胞パック1g当たり0.5mgの組換え体rPEDFであった。
【0073】
(実施例6)
この実施例は精製組換え体PEDFの分化因子としての使用について記載している。
【0074】
Y79細胞(ATCC、HTB18)は15%ウシ胎児血清と抗生物質(10000u/mlペニシリンおよび10mg/mlストレプトマイシン)を補給したアール塩を含むイーグル最少必須培地(MEM)中、37℃、5%CO2の加湿されたインキュベーターで増殖させた。細胞はATCCから受容後、2回継代して繁殖させ、10%DMSOを含む同じ培養液で凍結させた。凍結物の一部を各々の分化の実験に用いた。全ての実験は二回反復で行った。
【0075】
融解後、細胞は継代することなく適当な細胞数になるまで血清含有培地に維持された。細胞は遠心分離で回収し2倍量のPBSで洗浄し、PBSに再懸濁して、計数した。その時点で、2.5x105の細胞を2mlの無血清培地(MEM、1mM ピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES、1X非必須アミノ酸、1mM L−グルタミン、0.1% ITS混合物(5μg/mlインシュリン、5μg/mlトランスフェリン、5ng/mlセレン、Coliabrative Research、Bedford、MA)および上記の抗生物質が補給されている)を含む6ウェルプレート(Nanc、Inc.、Roskilde、Denmark)の各々のウェルに播種した。
【0076】
分化エフェクターと対照緩衝液は播種後12−16時間後に加え、培養液はインキュベートし7日間静置した。8日目に、細胞はポリD−リシン被覆6ウェルプレート(Collaborative Research、Bedford、MA)に移し、細胞が基質に付着したころ古い培養液を2mlの新鮮な無血清培地と入れ替えた。培養液はこの状態に11日間保った。付着後、培養物は毎日Olympus CK2位相差顕微鏡を用いて分化の形態学的証拠を調べ、ならびに神経芽成長を定量した。
【0077】
非処理の細胞と比較すると、組換え体rPEDFに暴露されたY79培養細胞のみが神経的分化の有意な証拠を示した。いくらかの神経芽成長(5%以下)はrPEDFの溶解に用いたものと同一の緩衝液で処理した対照培養で検出されたが、rPEDFまたは緩衝液を加えずに同じ方法で処理した培養では分化の証拠は観察されなかった(図22A、”対照”)。rPEDF処理培養細胞の位相差顕微鏡は、細胞凝集体の50−65%はポリ−D−リシンへの付着3日目後に神経芽伸長が観察されたことを示した(図22B、”PEDF”)。これらの3日目の神経芽伸長は、細胞凝集端で西洋なし型の細胞からの短い突起として現れた。分化している凝集体の数、凝集体あたりの分化している細胞の数、および神経芽様過程は付着時間とともに増加した。付着5日後、凝集体の約75−85%が分化の徴候を示し、それらの周辺細胞のほとんどから神経芽が伸長していた。rPEDF処理培養物は付着7日後に分化の最大に達し、85−90%の細胞が凝集していた。その時点で、2通りの神経性過程が観察された、即ち、3日目に観察された神経芽より2−3倍長い単一の神経芽が互いに離れた凝集体の周辺細胞から伸長しており、より長く且つより薄い突起が隣り合う細胞凝集体間で枝状のネットワークを形成していた。インキュベーションを長くすると、即ち、付着して10日を超えると、ネットワーク連結の割合に著しい減少があり、単一の神経芽のさらなる成長は無いが、細胞凝集体の生存率には著しい影響はなく、約75−80%が別々の実験で残存していた。図23で見られるように精製天然PEDFおよび組換え体PEDF(rPEDF)との間に違いは観察されなかった。
【0078】
PEDFおよびrPEDF cDNAクローンは大量のPEDFとrPEDFタンパク質生産の手段を供給するだけでなくPEDF遺伝子の発現や制御を研究ために使用できる材料としても利用できる。更に、これらの配列は内因性PEDFの翻訳を阻害するための翻訳停止のアンチセンス技術に用いる事が出来る。
【0079】
組換えにより生産されたPEDFおよびrPEDFタンパク質および等価なタンパク質はインビトロおよびインビボにおいて強力な神経栄養性作用物として利用できる。神経栄養性作用物としてのこれらのタンパク質のさらなる生化学的活性は標準インビトロ試験で決定でき、網膜の炎症性、血管性、消耗性、異栄養性疾病の処置におけるこれらのタンパク質の別の治療的使用の開発を可能にする。これらのタンパク質が強力な神経栄養性作用物と仮定すると、これらのタンパク質を、神経栄養性因子に応答する網膜以外の他の組織の処置に治療的有用性がでるように改良できるであろう。これらのタンパク質は非神経性組織およびある種のがんの”分化”因子としてより一般的な有用性を見つける事も出来るであろう。
【0080】
(実施例7)
分子量3000の組換え体PEDFと共に、より小さな組換え体が合成され、神経栄養性活性を持つかどうか決定された。より小さなペプチドは完全長構築物よりも、高い溶解性、よりよい膜透過性、より低い抗原性、製造の容易さなど様々な利点を与える。
【0081】
図23には試験されたうち3つの組換え体のみが示されている。BP、BXおよびBAはそれぞれ28,000、24,000、9000の分子量であり、C末端欠失変異体を表わしている。これら全部が図21および22に描かれているものと同様な神経栄養性活性を示す。ここにおける新規の発見は、9000の分子量のペプチド(天然のタンパク質の全分子量のたったの約20%)が驚くべき神経栄養性活性を示した事であった。その上、活性な神経栄養性ペプチドはセルピン活性部位を含むことが知られているC末端側でなくN末端側に配列を示した。従って、活性部位はN末端であり、そのような小さな分子で活性が現れる事は驚くべき発見であり、このような事は従来の発見からは予期できない事である。
【0082】
【表1】
【0083】
表1:エクソンは大文字およびイントロン配列は小文字である。5’ドナーGTおよび3’アクセプターAGは下線が施してある。エクソンおよびイントロンサイズは各々bpおよびkbで与えられている。
【0084】
(実施例8)
(ヒトPEDF遺伝子のコローニングおよび配列決定)
材料−制限酵素、SuperScriptTM RTおよびカナマイシンはGIBCO−BRL(Gaithersburg,MD)から購入された。DynabeadsTMオリゴ dT(25)はDynal Inc.(Lake Success,NY)から購入された。RetrothermTM RTはEpicentre Technologies(Madison,WI)から得られた。RNAsinTMはPromega(Madison,WI)から購入された。TaqポリメラーゼはPerkin−Elmer(Norwalk,CT)またはStratagene(La Jolla,CA)から購入された。サブクローニングに使用するプラスミドベクターpBlueScriptはStratagene(La Jolla,CA)から購入された。神経網膜および網膜色素上皮からの全RNAは文献に記載されているように(Chomczynki and Sacchi,1987)、National Disease Research Interchange(NDRI,Philadelphia,PA)から得られたヒト組織から精製された。標識および配列決定に使用された[32P]α−dATPおよび[32P]γ−ATP(3000 Ci/mmol)はAmersham(Arlington Hts,IL)から購入された。Superbroth(バクトートリプトン 12g/L、酵母抽出物 24g/L、K2HPO412.5g/L、HK2PO43.8g/Lおよびグリセロール5mL/L)、変性溶液(0.2N NaOH、1.5M NaCl)、中和溶液(1Mトリス−Cl pH7.0、1.5M NaCl)、20X SSC(3.0M NaCl、0.3mMクエン酸ナトリウム)、10X TBE(1Mトリス−ホウ酸、2mM EDTA、pH8.3)および50X TAE(2Mトリス−酢酸、50mM EDTA、pH 8.0)はQuality Biologicals(Gaithersburg,MD)から購入された。20X SSPE(3M NaCl、0.2M NaH2PO、20mM EDTA pH7.4)はDigene Diagnostics,Inc.(Silver Spring,MD)から購入された。アンピシリンはSigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から購入され、水に溶解し、フィルター滅菌された。
【0085】
(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))
2X PCR混合物は1.6μモル/mLのGeneAmpTM dNTPs(各々400M)、2X GeneAmpTM PCR緩衝液および50U/mLのTaqポリメラーゼを含むように調製された。これらの試薬はPerkin−Elmer(Norwalk,CT)から購入された。一般に、鋳型およびオリゴヌクレオチド(各々のオリゴの100ng)は25μLの容量で混合され、25μLの2X混合物、続いて50μLの鉱油が加えられた。鋳型は、最初の変性が95℃で2分間、30秒のアニーリング(プライマーに依存して55から65℃の間)、および伸長が72℃にて増幅された生成物に依存して1−5分であった。
【0086】
(DynabeadsTM オリゴ dT(25)上でのcDNA合成)
以前に記載されているように(Rodrigues and Chader 1992)cDNAがDynabeads上で合成された。Dynabeads(0.5mg)を100μLの10mMトリス−Cl pH7.0、1mM EDTA、1M KClで洗浄した。全RNA水溶液30μL(30μg、約1μL)を30μLの上記緩衝液および平衡化Dynabeads(0.5mg)と混合し、55℃で2分間加熱した。ポリ+A RNAを室温で15分間ビーズにアニール化し、ビーズをMPC−E磁気セパレーター(Dynal Inc.)へ結合させることにより過剰のRNAを除去した。アニール化されたポリ+A mRNAを持つビーズは次に2.5μLの緩衝液A(200mMトリス−Cl pH8.3、1.0M KCl)、2.5μLの緩衝液B(30mM MgCl2、15mM MnCl)、20μLの10mMdNTP(各々2.5mM)1μLのRNAsin、2μLのSuperScript RT、5μLのRetrotherm RT(1単位/μL)および16μLのH2Oに懸濁し、最終容量を50μLとする。反応混合物は40℃で10分、続いて65℃で1時間インキュベートした。ビーズを再びMPC−E磁気セパレーターへ結合させ、過剰のRT反応混合物を除去した。ビーズは次に100μLの0.2N NaOHで1回、10X SSPEで1回および1X TEで2回洗浄した。cDNA含有ビーズは最終容量で100μLの1X TEに懸濁した。
【0087】
(cDNA末端の5’急速増幅(RACE))
Clontechから購入された5’−AmpliFINDER RACEキットに基づく改良法を用いて5’−RACEが実施された(Rodriguesら、1994)。最初に、cDNAが上記のように(Rodrigues and Chader 1992)DynabeadsTM オリゴ dT(25)上で合成された。AmpliFINDERアンカープライマーが5’プライム末端のPCR増幅のためPEDF特異的プライマー#2744と組み合わせて使用された。増幅は上記のように行われ、2μLのアンカー結合ヒト網膜色素上皮−Dynabeads cDNAが鋳型として使用された。増幅は30サイクル行われた。
【0088】
(オリゴヌクレオチドの配列)
オリゴヌクレオチドプライマーはAplied Biosystems Inc.(Foster City,CA)DNA合成機モデル392により合成された。オリゴヌクレオチドは脱保護され、さらに精製することなく使用された。
【0089】
(ゲノムライブラリーのスクリーニング)
ヒトゲノムコスミドライブラリー(Clontech)を150mg/mLアンピシリン、20mg/mMカナマイシンを含むLBプレートにプレート当たり10,000コロニーの密度で播種された。コロニーを拾い上げるのにニトロセルロースフィルターが使用され、フィルターはSambrookら(1989)に記載されているように処理されハイブリダイズされた。ライブラリーはT7/T3プライマーを用いてPEDF cDNAクローンから得られた[32P]標識PCR生成物(Steeleら、1993)で探査した。この結果、p10Aコスミドが単離された。λDASHTMIIライブラリー(Stratagene)が上記のPEDF cDNAクローンのインサートを用いてLark Sequencing Technologies Inc.(Houston,TX)によりスクリーンされた。この結果、7kb NotI−Not断片(JT6A)が単離された。全PEDF遺伝子および隣接する領域を含むP−1クローン(p147)は、オリゴ1590/1591を用いてGenome Systems(St.Louis,MO)により単離された。
【0090】
(PCR生成物のクローニング)
PEDF cDNAの内部コード領域から設計された4組のプライマー、603:604;605:606;2238:354および2213:2744が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)実験のプライマーとして使用するために上記のように合成された。プライマー配列は以下の様である:603:5’−ACA AGC TGG CAG CGG CTG TC−3’(配列ID番号:13)、604:5’−CAG AGG TGC CAC AAA GCT GG−3’(配列ID番号:14);605:5’−CCA GCT TTG TGG CAC CTC TG−3’(配列ID番号:15)、606:5’−CAT CAT GGG GAC CCT CAC GG−3’(配列ID番号:16),2213:5’−AGG ATG CAG GCC CTG GTG CT−3’(配列ID番号:17)、2744:5’−CCT CCT CCA CCA GCG CCC CT−3’(配列ID番号:18);2238:5’−ATG ATG TCG GAC CCT AAG GCT GTT−3’(配列ID番号:19),354:5’−TGG GGA CAG TGA GGA CCG CC−3’(配列ID番号:20)。プライマー603:604および605:606で生じたPCR生成物の増幅、サブクローニングおよび配列決定はヒトゲノムDNAを鋳型として用いてLark Sequencing Technologies Inc.により実施された。603:604からの生成物は約2kb(jt8A)であり、エクソン3からエクソン5へ伸びている。605:606からの生成物は約3.3kb(jt 9)であり、エクソン5からエクソン6へ伸びている。プライマーの組2213−2744はP1クローンp147からの約2.5Kb生成物(jtl5;JT115とも称される)の増幅に用いられた。この生成物はサブクローニングおよび配列決定のためLark Sequencing Technologies Inc.に送られた。2238:354プライマーはイントロンEをまたぐエクソン6からエクソン7の増幅に使用された。この生成物はサブクローン化されなかったが、我々により直接および完全に配列決定された。
【0091】
(DNA配列決定)
P−1クローン(pl47)、このクローンのサブクローンおよびこのクローンのPCR生成物が配列決定された。ほとんどの配列決定は標準配列決定技術を用いてLark Sequencing Technologies Inc.により実施された。すべての重要な領域(例えば、イントロン−エクソン境界)およびクローン間の連結は我々の実験室で配列決定された。PCR生成物からのDNAはPromega Corp.(Madison,WI)から購入されたWizardTM PCR Preps DNA精製キットを使用して配列決定のために精製された。P−1クローンおよびプラスミドサブクローンはQiagen Inc.(Chatsworth,CA)Midiプラスミド精製キットを使用して精製された。精製PCR生成物およびプラスミドはPRISMTM DyeDeoxy Terminator Cycleシークエンシングキット(Applied Biosystems a Division of Perkin−Elmer Corp.,Foster City,CA)を用い、使用説明書に従って配列決定された。典型的には、配列決定反応当たり0.5ピコモルの鋳型および3ピコモルのプライマーが使用された。配列決定反応生成物はSelect−D G−50カラム(5プライム−3プライム;Boulder,CO)を用いて精製され、乾燥された。次に各々の試料を5μLのホルムアミド、1μLの50mM EDTAに溶解し、モデル370A Automated Fluorescent Sequencer(ABI,Foster City,CA)中で加熱し、分析した。すべてのスプライス−部位連接(ジャンクション)、イントロンFおよびクローンを横切った連接が配列決定された。
【0092】
(サザンブロット)
種々の種からのDNAのEcoRI消化ゲノム(8μg)ブロットはBIOS Laboratories,New Haven,CTから購入された。ブロットは標準技術(Sambrook et al.,1989)を使用し、PEDF cDNAで探査された。
【0093】
(PEDFの5’RACE)
5’RACEは上記のようにアンカーオリゴをDynabeads上で前もって合成されたヒト網膜色素上皮cDNAへ結合させることにより実施された。5’末端はアンカープライマー(AmpliFinderのキット)およびPEDF−特異的プライマー2744を用いて増幅された。増幅は30サイクル行われた。一つの主要なバンドが約230bpに観察された。PCR生成物はpGEM−T(Promega Corp.,Madison,WI)にクローン化され、配列決定された。これらのクローンの内最も長いものはPEDFの5’末端から20bp伸びていることが観察された。
【0094】
(PEDF遺伝子の単離)
PEDF遺伝子はプライマー1590および1591(1590:5’−GGA CGC TGG ATT AGA AGG CAG CAA A−3’(配列ID番号:23);および1591:5’−CCA CAC CCA GCC TAG TCC C−3’(配列ID番号:24))を用い、Genome Systems(St.Louis,MO)によりP−1クローン(pl47)に単離された。このクローンが全PEDFを含んでいるかどうかを決定するため、pl47およびヒトゲノムDNAの両方がBamHI、EcoHI、HindIIIおよびPstIで消化され、続いてパルスフィールド装置中、アガロースゲル電気泳動により分離された。アガロースゲルはブロットされ、PEDF cDNAクローン(Steeleら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1526−1530)で探査した。P−1クローンとゲノムDNA間のバンドパターンの比較は全PEDF遺伝子がこのクローンに含まれていることを示している。さらに、この結果はPEDFには一つの遺伝子のみが存在することも示している。
【0095】
(PEDF遺伝子の配列)
遺伝子のスケール地図が図1に示されている。PEDF遺伝子はその全部が配列決定された(配列ID番号:43)。クローンjt1、jt14、jt6Aおよび関連するPCR生成物(jt15、jt8Aおよびjt9)(図1)はLark Sequencing Technologies Inc.により配列決定された。遺伝子の残りの部分はp147クローンを鋳型として用いて遺伝子の異なった部分を増幅することにより配列決定された。すべてのエクソン、イントロン−エクソン連接(ジャンクション)および全イントロンFはP−1クローンp147より発生するPCR生成物から上記のように我々の実験室で両方の方向で配列決定された。エクソン1から下流のNotI部位はそれをまたいで増幅し、生成物を配列決定することにより確認された。遺伝子は約16Kbにわたり、8つのエクソンを持っている。すべてのイントロン−エクソン連接はAG/GT規則に従っている。イントロン−エクソン連接および隣接する配列は表1に示されている。
【0096】
jt1:ヒトゲノムコスミドライブラリー(Clontech)から単離された7.1kbコスミドクローンで、PEDF遺伝子のエクソン7、エクソン8および3’隣接領域を含んでいる。このクローンの5’末端は(約2.1kbの領域)PEDFの部分ではない。これは明らかにコスミドの転位(リアレンジメント)により起きたものである。このクローンは全部Lark Sequencing Technologies Inc.により配列決定された。
【0097】
jt6A:λDASHIIヒトゲノムライブラリー(Stratagene)からLark Sequencing Technologies Inc.により単離された7.2kbNotI断片である。このクローンはPEDF遺伝子の>6kbの5’隣接領域、エクソン1およびイントロンAの424bpを含んでいる。このクローンは全部Lark Sequencing Technologies Inc.により配列決定された。
【0098】
jt8A:このクローン化PCR生成物JT8Aはプライマー603:604を用いてゲノムDNAから発生させた。このクローンはエクソン4およびイントロンCおよびDを含みエクソン3からエクソン5まで伸びている。全部Lark Sequencing Technologies Inc.により増幅、クローン化および配列決定された。
【0099】
jt9:このクローン化PCR生成物JT8Aはプライマー605:606を用いてゲノムDNAから得られた。このクローンは全イントロンEおよびエクソン5およびエクソン6の一部を含んでいる。全部Lark Sequencing Technologies Inc.により増幅、クローン化および配列決定された。
【0100】
jt15:このクローンはp147からのプライマー対2213:2744を用いて増幅されたPCR生成物から得られた。このクローンはイントロンBをまたいでエクソン2からエクソン3まで伸びている。PCR生成物はサブクローニングおよび配列決定のためにLark Sequencing Technologies Inc.に送られた。
【0101】
P1クローンp147:このクローンはオリゴヌクレオチド1590:1591を用いてGenome Systems Inc.により単離された。このクローンはイントロンFの配列(2238:354)およびサブクローンjt14を得るために使用された。また、上記のクローンから最初に得られたイントロンーエクソン境界を確認するためにも使用された。イントロン特異的オリゴを用いてすべてのエクソンおよびイントロン境界が増幅され(鋳型としてp147を用いて)、生成物が配列決定された。すべてのスプライス連接配列ならびにイントロンおよびエクソンの大きさが確認された。
【0102】
jt14:これはイントロンAのほとんど、エクソン2およびイントロンBの一部を含むp147のサブクローンである。このクローンは我々によって単離され配列決定のためにLark Sequencing Technologies Inc.に送られた。
【0103】
従って、上記のクローンおよびPCR生成物のすべての配列分析によりヒトPEDF遺伝子の構造およびエクソンおよびイントロンの大きさが決定された。すべての連接の5’スプライスドナーおよび3’スプライスアクセプター部位はGT/AGコンセンサスに従っている。
【0104】
(実施例9)
(PEDFプロモーターの分析)
PEDFを制御しているであろう可能な転写要素についてのいくらかの理解、PEDF発現についてのさらなる実験のための手引きを得るためにPEDF5’隣接領域(図3)の理論的分析を実施した。PEDF遺伝子の5’隣接領域には古典的TATAAA信号またはTATA−ボックスが欠けている。しかしながら、重要な転写因子により認識されるいくつかの興味ある特色および要素が含まれている。−164から−591および−822から−1050に2つのAlu反復要素が存在する。Alu領域の外側に、共通のATGCAAAT(Parslow et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:2650−2654;Falkner et al.(1984)Nature 310:71−74;Sturm et al.(1988)Genes & Devel.2:1582−1599;Faisst and Meyer(1992)Nuc.Acids Res.20:3−26)から1塩基異なった転写因子の偏在するオクタマーファミリー(Oct)のための2つの可能な部位が−29(ATCCAAAT)および−113(GTGCAAAT)に存在する。興味を引くもう一つの要素が−62に位置している。この要素、GTAAAGTTAACはHNF−1(肝細胞核因子)に結合している共通GTAATNATTAACに似ている(Frain,M.,et al.(1989)Cell 59:145−147)。これは多くの有力な肝臓遺伝子をトランス活性化するホームドメイン含有転写因子であるが(Kuo et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9838−9842)、内胚葉性分化への関連が示唆されている(Baumhueter et al.(1990)Genes Dev.4:371−379)。−202の配列TCAGGTGATGCACCTGCはAP−1により認識されレチノイン酸によりトランス活性化されるであろう人工的パリンドローム配列(TREp)TCAGGTCATGACCTGA(Umescono et al.(1988)Nature 336:262−265;Linney(1992)Curr.Topics in Dev.Biol.27:309−350)に非常に類似している。−22の配列TGAGTGCAおよび−207のTGATGCA(TREp内)はAP−1共通配列TGACTCA(Schule,et al.(1990)Cell 61:497−504)に類似している。TREp内に含まれる−204の配列AGGTGATGCACCTもまたその共通配列がAGGTCATGACCTである発生的に制御されたRAP(レチノイン酸受容体)モチーフ(Faisst and Meyer(1992)Nuc.Acids Res.20:3−26)に類似している。PEA3要素(ポリオーマウイルスエンハンサー活性化因子3)AGGAAG/A(Martin et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5839−5843;Faisst and Meyer(1992)Nuc.Acids Res.20:3−26)が縦列に−122および−129続いて再び−141に存在している。PEA3は転写因子ETSファミリーのメンバーであり(Macleod et al.(1992)TIBS 17:251−256)、その活性は非核癌遺伝子により制御されているようである(Wasylyk et al.(1989)EMBO J.8:3371−3378)。最も興味深い要素の1つは−654に配列GTGGTTATGと共に位置する。この要素は転写因子のC/EBP(CAATエンハンサー結合タンパク質)ファミリーにより認識される共通配列GTGGT/AT/AT/AG内にある(Faisst and Meyer(1992)Nuc.Acids Res.20:3−26)。この因子は成人表現型へ導く最終分化に関与するようである(Vellanoweth et al.(1994)Laboratory Investigation 70:784−799)。3つの可能なCACCCボックスが存在し、1つは−845に、および2つは逆の配向で−826および−905に存在する。これらはすべてAlu反復内にある。可能なSpl部位(CCCGGC)がAlu反復前の−153にあり、共通Spl部位GGCGGGがAlu反復の内側−1030に存在する。
【0105】
(実施例10)
(培養細胞におけるPEDF mRNAの発現)
(遺伝子発現分析)
レーン当たり2μgのポリ−(A)RNAを用い多ヒト組織mRNAノーザンブロット(Clonetech)が放射活性化標識667bpPCR増幅生成物(Tombran−Tink et al.,1994 Genomics,19:266−272)でハイブリダイズされた。ブロットはQuickHyb急速ハイブリダイゼーション溶液(Stratagene,La Jolla,CA)中、68℃で15分前もってハイブリダイズし、5x106cpm DNA/mlを含む同一の溶液中、68℃で1時間ハイブリダイズした。ハイブリダイズされたブロットは2回100mlの2XSSC、0.1%SDSにて室温で15分間、さらに1回200mlの0.1XSSC、0.1%SDSにて68℃で30分間洗浄した。ブロットはKodax XAR−5フィルムおよびDupont補力スクリーンを用いて、−70℃で2時間オートラジオグラフィーを行った。
【0106】
(遺伝子発現)
PEDFメッセンジャーRNAの発現が培養ヒト胎児RPE細胞以外のヒト組織で起こっているかどうかを決定するために、試験された各々の組織に対し等量のポリ−(A)RNA含んでいる多組織ヒト成人および胎児RNAブロットを分析した。結果は表4に示されている。PEDFプローブは分析された16の成人組織の14で種々の強度のハイブリダイゼーションの単一の1.5kb転写体を同定した。成人腎臓または末梢血白血球では信号が検出されなかった。成人脳、膵臓、脾臓および胸腺で弱い信号が観察できた。PEDFメッセンジャーRNAに対する多量のハイブリダイゼーションがヒト成人肝臓、骨格筋、精巣および卵巣で観察された。驚くべきことに、全脳RNAでは非常に弱い信号しか観察されなかった。試験された胎児組織では、非常に強いPEDF信号が肝臓組織で観察され、興味深いことには成人腎臓試料ではPEDFハイブリダイゼーションがなかったのに比較して胎児腎臓では有意に強度で信号が観察された。
【0107】
成人組織で単一の1.5kb転写体が観察されたのと対照的に、胎児心臓、肺および腎臓で500bp未満の追加の副転写体が低強度で種々に標識された。これは、mRNAの部分的分解、または選択的スプライスのためと思われる。PEDFはまた早期継代のサルRPE細胞でのみ発現され(1−5の継代数)、後期継代細胞(10継代)では発現されなかった。これらの結果は老化へのPEDFの関連を示している。
【0108】
(実施例11)
(種々の系統発生的関連種におけるPEDFの比較分析)
(進化的保存分析)
多数の哺乳類および霊長類種を含む種々の種のリンパ球からのゲノムDNA(BIOS laboratories,New Haven CT)の8μgをEcoRIで消化し、1%アガロースゲルで分離した。ゲルはトランスブロットされ、消化されたDNAを含む膜はノーザン分析と同一の方法および条件を用いてハイブリダイズした。
【0109】
進化的保存:
若干の系統発生的に関連する種間のPEDFの進化的保存が試験された。結果は図5に示されている。これらの高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件を用いると、鳥類、哺乳類および霊長類で約23kbの大きなEcoRI制限断片が観察された。おそらく使用されたヒトPEDFプローブとの低い相同性のためであろうが、より下等な種ではハイブリダイゼーションは観察されなかった(図5A)。ニワトリおよびマウスのEcoRI断片はヒトのものより幾分小さい。試験されたいくつかの哺乳類種において興味ある制限パターンが現れた(図5B)。6kbから2kbの間の大きさの範囲にいくつかのより小さな制限断片が観察された。試験されたすべての霊長類種で9kbから23kbの間の大きさの範囲により大きな断片が観察され、それは約9kbに追加の強くハイブリダイズする多形断片を持っている。
【0110】
(実施例12)
(培養における小脳顆粒細胞に対する色素上皮誘導因子の神経細胞栄養性効果細胞培養)
小脳顆粒細胞(CGC)はNovelliら(1988,Brain Res.,451:205−212)により記載されているように生後5または8日のSprague−Dawleyラット子供から調製された。簡単に記すと、髄膜を含まない組織を124mM NaCl、1mM NaH2PO4、1.2mM MgSO4、3mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)、27μMフェノールレッドおよび25mM HEPES(pH7.4)を含む緩衝液中で切り刻み、550xgで3分遠心分離した。10−20匹の動物からの組織ペレットを再懸濁し、250μg/mlトリプシンを含む同一の緩衝液30ml中でトリプシン分解し(15分、37℃);26μg/mlのDNaseI、166μg/mlの大豆トリプシン阻害剤および0.5mMの追加のMgSO4を含む緩衝液をさらに15ml加えて上記のように組織を再び遠心分離した。ペレットを80μg/mlのDNase、0.52mg/mlのトリプシン阻害剤および1.6mMの追加のMgSO4を補給した1mlの緩衝液に再懸濁し、パスツールピペットで60回砕いた。0.1mMのCaCl2および1.3mMの追加のMgSO4を含む緩衝液2mlで懸濁液を希釈し、非分散物は5分間放置して沈澱させた。上清を別のチューブに移し、細胞は軽く遠心分離し、血清含有培地(25mM KCl、2mMグルタミン、100μg/mlゲンタマイシン、および10%熱不活性化ウシ胎児血清を含むイーグル基本培地)または化学的に決められた培地(5μg/mlインシュリン、30nMセレン、100μg/mlトランスフェリン、1000nMプトレシン、20nMプロジェステロン、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、および2mMグルタミンを含むDMEM:F12(1:1))(Bottenstein,1985 CellCulture in the Neuroscience,J.E.Bottenstein and G.Sato,eds.New York Plenum Publishing Corp.p.3−43)に再懸濁して回収した。細胞をポリ−L−リシン被覆96ウェルプレート(MTSアッセイおよび神経フィラメントELISAアッセイのため)または8ウェルチャンバースライド(免疫細胞化学およびBrdU標識のため)に2.5x105細胞/mlで加え、5%CO2を含む空気からなる雰囲気下、37℃で増殖させた。培養1日後、血清補給培地中の細胞にのみシトシンアラビノシド(Ara−C)を加えた(最終濃度50μM)。
【0111】
(MTSアッセイ)
96ウェルプレート中の小脳顆粒細胞をMTS(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩)およびPMS(フェナジンメトスルフェート)(最終濃度;333μg/ml MTSおよび25μM PMS)(Promega Corp.)と4時間CO2インキュベーター内でインキュベートした。PMS存在下、MTSは代謝的に活性な細胞に観察されるデヒドロゲナーゼ酵素により水可溶性ホルマザンに変換される(Coryet al.(1991)Cancer Comm,3:207−212)。ホルマザン生成物の量は分光学的に490nmで決定した。
【0112】
(免疫細胞化学)
インビトロでの日数(DIV)で7日後、細胞をカルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで10分間、続いて−20℃にて95%エタノール/5%酢酸で10分間固定した。NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)に対する一次抗体、GABA、カルビンジン、またはグリア原線維性酸性タンパク質(GFAP)とのインキュベーションを室温で60分実施した。2%正常ヤギ血清および0.2%BSA存在下、抗体を1:1000−1:5000で加えた。抗体はABCシステム(Vector Laboratories)およびジアミノベンジジンを用いて可視化した。各々の実験で2−3のウェルから少なくとも20視野を計数した。対照培養中のNSE陽性細胞と比較した他の抗体により染色された細胞の数の比を決定するために視野当たりの細胞の平均数を計算した。
【0113】
(ブロモデオキシウリジン(BrdU)標識)
BrdU標識は以下の変更を行ったGaoら(1991 Neuron,6:705−715)の方法により実施された。細胞は8ウェルチャンバースライドに入れ直ちにrPEDFを加えた。24時間後、BrdU(1:100;Amersham細胞増殖キット)を培養培地に24時間加え、その後細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し(10分)、95%エタノール/5%酢酸で処理し(10分)、抗BrdUモノクローナル抗体とインキュベートした(1:20、2時間)。培養物は次に西洋ワサビペルオキシダーゼ−結合ヤギ抗マウス第二抗体と60分インキュベートした。ジアミノベンジジンーペルオキシダーゼ後、細胞はGel Mountにマウントされた。顕微鏡で標識された細胞のパーセント数を計数することにより、分裂指数が決定された。各々の値に対し、3000細胞の無作為試料が計数された。
【0114】
(神経フィラメントELISAアッセイ)
わずかな変更を加えたDohertyら(1984 J.Neurochem.,42:1116−1122)の方法に従って神経フィラメントELISAが実施された。96ウェルマイクロタイタープレートで増殖させた培養物は4%パラホルムアルデヒドを含むPBSにより、4℃で2時間固定した。固定された細胞は15分0.1%トリトンX−100を含むPBSで処理して透過性を上げ、続いて非特異的結合を防ぐために60分10%ヤギ血清を含むPBSとインキュベーションを行った。培養物は次にモノクローナル抗−神経フィラメント抗体と4℃にて一夜インキュベートした(RMO 1:100で;小脳顆粒細胞の培養において神経芽のみを染色する)。10%ヤギ血清を含むPBSで2回洗浄後、細胞を第二抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼ−結合ヤギ抗マウス 1:1000で)と1時間インキュベートした。PBSおよび水で連続的に洗浄した後、培養物は0.2%O−フェニレンジアミンおよび0.02%H2O2を含む50mMクエン酸緩衝液(pH5.0)と30分インキュベートした。等量の4.5M H2SO4を添加することにより反応を停止させた。マイクロタイターリーダーを用い、490nmで反応生成物の一部の光学密度(O.D.)を読みとることにより生成物形成を定量した。
【0115】
MTSアッセイが生きている細胞数の指標になることを確認するため、およびアッセイの結果が直線性を与える細胞数の範囲を決定するために、図6に示した実験を実施した。血清含有培地(SCM)においては(図6A)、1−9x105細胞/cm2の範囲に渡って光学密度(O.D.)と加えた細胞数が比例した。対照的に、化学的に決められた培地(CDM)(図6B)では、直線範囲は1−5x105細胞/cm2の範囲をカバーするにとどまった。引き続く全ての実験は、どちらの型の培養培地においても直線範囲の中間である2.5x105細胞/cm2で細胞を加えて行った。
【0116】
図7は、PEDFはDIV4で細胞数の有意な増加を起こし、DIV7および10では大きな相違を与えることを示す。しかしながら、この2−3倍の増加は対照培養における細胞数の顕著な減少の結果である。化学的に決められた培地における用量応答曲線は(図8)、20ng/mlで統計的に有意な効果があることを示している。50ng/ml以上にPEDF濃度を増加させてもCDM中でのさらなる増加を生み出さなかった。
【0117】
PEDFに応答したO.D.の増加(MTSアッセイ)が生き残っている細胞の増加を反映しているのか、または増殖の増加を反映しているのかを決定するため、生後5日(P5)の動物(この時小脳顆粒細胞は動物でまだ分裂している)からの培養物を用いて、BrdU標識研究が実施された。図9はDIV1および2におけるP5 CGC培養に対するPEDFの効果を示している。MTSアッセイを用いると、PEDFはDIV1では効果がなかったが、血清含有培地または化学的に決められた培地ともDIV2にO.D.の小さな増加を起こした。従って、BrdUを日−1に添加し、日−2に固定した。対照条件下のBrdU標識指数はSCMで5%およびCDMで3%であり、PEDFはどちらの培養培地でもBrdU標識指数を増加させなかった(図10)。PEDFによりBrdU標識指数が刺激されないことは、PEDF暴露後のMTSアッセイにより測定されたO.D.の増加は細胞分裂の増加のためではなく、むしろ生き残りの助長に応答していることを示唆している。
【0118】
免疫細胞化学を用いてPEDF処理前および後の培養液に存在する細胞の同定を行った。PEDFと(500ng/ml)またはPEDFなしで7日間増殖させたP8培養細胞を4つの異なった抗体で染色した:すべての小脳ニューロンを認識するニューロン−特異的エノラーゼ(NSE)に対するポリクローナルウサギ抗体(Schmechel et al.(1978)Science,199:313−315);小脳顆粒細胞を除いたすべての小脳ニューロンで合成されるGABAに対するポリクローナル抗体(Gruol and Crimi(1988)Dev.Brain Res.,41:135−146);ニューロン−特異性タンパク質であるカルビンジンおよびGFAP(アストログリアにのみ存在する中間フィラメントタンパク質)に対する抗体。結果は表2に要約されている。PEDFはSCM(30%増加)およびCDM(60%増加)の両方でNSE陽性細胞の数を有意に増加させた。GABA陽性ニューロンおよびPurkinje細胞(カルビンジン陽性)の数のわずかな(統計的には有意ではない)増加があった。従って、PEDFは顆粒ニューロンに対してのみ神経栄養性である。さらに、PEDFは培養液中に存在するGFAP陽性アストログリア(astrocytes)の数を有意に減少させた(SCMで30%の減少およびCDMで40%の減少)。このPEDFの”グリア静止性”は実施例14でさらに論議される。
【0119】
【表2】
【0120】
神経芽成長に対するPEDFの効果を調べるため、神経フィラメントELISA試験が用いられた。免疫細胞化学は、モノクローナル抗体、RMO−42は培養液中の小脳顆粒細胞の神経芽のみ染色することを示したので、この抗体を細胞本体ではなく突起のみに存在する神経フィラメントの直接的測定に使用した(図11)。PEDFはSCMおよびCDMの両方で神経フィラメント含量をわずかに増加させたのみであったが、その増加量は細胞数の増加に直接的に比例していた(図12)。
【0121】
図13はこの実施例のデータを総括している。培養10日までに、ほとんどの非処理CGC(対照)は死滅したが、PEDF処理細胞は60%またはそれ以上生き残った。PEDFは従って脳ニューロンに対する強力な生存因子である。
【0122】
(実施例13)
(rPEDFペプチド、BPおよびBXの神経細胞栄養性特性)
PEDFの”神経細胞栄養性”活性について前の節で記載されたことは真実であり、強力な神経栄養性活性を示す組換え体PEDF(rPEDF)を比較的多量に製造することが可能である。適当な組換え体分子生物学的技術を用いて、より小さなPEDF分子の断片もまた製造でき、それらは神経栄養性かまたは神経細胞栄養性活性が試験される。図14はCGC生存率に対するPEDFのこれらの端が切断された形のうちの2つの効果を示している。BXおよびBPは各々PEDF分子のアミノ末端部分からの24および28kDa断片である。両断片は1xまたは10x濃度でニューロン生存因子として作用し、有意にCGCの寿命を延長させる。この実験において、ペプチドは実験の初めに一度に与えられ、細胞数は7日後に決定された。完全PEDF分子とともに、分子のN−末端に近いより小さな組換え体ペプチドも”神経細胞栄養性”であると結論付けられる。
【0123】
(実施例14)
(PEDFのグリア細胞静止特性)
ラット小脳顆粒細胞の初代培養中にニューロンとともに少数のグリアの異なった型が存在する。グリアはCNS中におけるニューロンのための”支持”要素であり、建築的骨格、およびニューロンが依存する代謝的支持系を形成する。グリアはまた、脳の腫瘍はほとんどグリアにより形成されおよびグリオシスがいくつかの神経消耗性疾患で問題であるので、臨床的にも重要である。我々の系において、細胞の培養混合集団をニューロンに特異的な抗体およびグリアの異なった型に特異的な他の抗体で免疫細胞化学的に染色した時に、グリアに対するPEDFの効果について気がついた。この目的のため、ニューロンの存在を示すために標準マーカーニューロン特異性エノラーゼ(NSE)およびその他、大グリア(astroglia)の存在を示すためにグリア原線維性酸性タンパク質(GFAP)および小グリア(microglia)染色のためにOX−42を使用した。この実験において(表2)、我々はニューロンがPEDF処理によりより長く生きることを知っていたのでNSE染色で予期される増加を観察したが、GFAP染色での予期されない減少を観察した。このことはPEDF処理培養物において大グリア細胞をより少なくする可能性を示している。
【0124】
培養皿における大グリア細胞および小グリア細胞の特有の形態およびGFAPまたはOX−42に対するそれらの選択的染色のため、異なった実験条件下、顕微鏡下でそれらを個々に計数することが可能である。これは図15および16に概説するように行われた。図15はラット脳から得られた培養液中の大グリア細胞の数に対するPEDFの効果を培養2週(2w)または12週(12w)に示したものである。与えられている時間は、PEDF処理後、48時間、96時間または7日である。明らかに、試験されたすべての条件でPEDF処理は大グリア細胞の劇的な減少が生じている。図16は同一の培養での小グリア細胞の平行分析を示している。48時間または7日間のPEDF投与により、2週間(2w)または12週間(12w)培養しても細胞の数を減少させていた。従って、PEDFは非常に長い期間に渡ってグリア要素を実質的に減少させ、一方、ニューロンには生存因子として働いている。
【0125】
(実施例15)
(天然ウシPEDFの特性付け)
特異的抗体によって成人IPMにPEDFの存在が示されたので、天然PEDFの精製源としてウシIPM洗液を使用した。RPEおよび網膜細胞はPEDF mRNAを発現するが、これらの細胞抽出液では抗−BHはウェスタン移行物上のPEDFバンドを検出できず、このことはPEDFがIPM内に迅速に放出されることを示唆している。ウシIPMに存在するPEDFは全可溶性タンパク質の1%未満であると現在見積もられている(即ち、約2−5ng/ウシの眼)。生理学的温度では、IPM中のPEDFタンパク質は長い期間安定に残っており、SDSに抵抗する非還元複合体は形成しない。従って、その安定な性質のため、培養実験およびインビボでの移植におけるその潜在的有効性は非常に高い。
【0126】
ほぼ均質なまでの精製は単純な2工程法により達成される(図17)。IPMの成分はサイズ排除カラムクロマトグラフィー(TSK−3000)により分画された。PEDF−免疫反応性分画をプールし、陽イオン交換カラム(Mono−S)に加え、NaCl直線濃度勾配により免疫反応性成分を溶出させる。精製プロトコールは材料および方法に詳述されている。各々の溶出プロフィールがパネルA(TSK−3000サイズ排除カラムクロマトグラフィー)およびパネルB(mono−Sカラムクロマトグラフィー)に示されている。280nmでの吸光度は実線で、およびNaCl濃度が点線で示されており、PEDF免疫反応性は抗血清Ab−rPEDFで追跡された。挿入図は示された分画のウェスタンブロット分析である。免疫反応はAb−rPEDFの1:10,000希釈で実施され、4−クロロ−1−ナフトールで染色された。TSK−3000クロマトグラフィーのための分子サイズ標品はBSA(ウシ血清アルブミン、66,000)およびCA(ウシカルボニックアンヒドラーゼ、29,000)であった。
【0127】
可溶性IPM成分の洗液で出発し、最初の工程はサイズ排除カラムクロマトグラフィーによるほとんどの豊富にあるタンパク質(IRBP)の除去を含んでいる。PEDFは約50kDaの大きさの単量体ポリペプチドとして溶出する。我々は、PEDFの等電点を7.2−7.8であると決定したので、タンパク質を同時に精製および濃縮するための方法の第二の工程にpH6.0でS−セファロースカラムクロマトグラフィーを使用した。精製されたタンパク質はおとなのウシの眼当たり約2μgで回収され、回収率は約40%であった。天然のPEDFはSDS−PAGE上、49,500±1,000のみかけの分子量を持つ単量体糖タンパク質のように振る舞う。
【0128】
精製タンパク質はグリコシダーゼFに感受性があり、N−結合オリゴサッカライドを示しており、それは天然のタンパク質中の3,000−Mrまでを占めている(図18)。アスパラギン−結合オリゴサッカライドを除去するため、精製PEDFタンパク質がエンドグリコシダーゼHおよびN−グリコシダーゼFで処理された。酵素反応は材料と方法に記載されているように実施され、β−メルカプトエタノール存在下または非存在下で全量で200ngのPEDFタンパク質が用いられた。反応混合物はSDS−12.5%ポリアクリルアミドゲルに適用した。エンドグリコシダーゼH(左パネル)およびN−グリコシダーゼF(右パネル)反応物のウェスタン移行物の写真が示されている。イムノブロットは1:10,000希釈抗血清 Ab−rPEDFで処理された。各々の反応の添加成分は上に示されている。各々の写真の右側面の数字はビオチン化SDS−PAGE標品の移動を示している:ウシ血清アルブミン(66,200)、オバアルブミン(45,000)およびウシカルボニックアンヒドラーゼ(31,000)。精製ウシPEDFはY−79およびWeri網膜芽腫細胞の神経芽成長を促進し、この活性は抗−rPEDFにより遮断されること示した(下記参照)。
【0129】
本発明は、NSE、GFAP、神経フィラメント(NF−200)タンパク質を含むCGC培養物およびY−79腫瘍細胞でのニューロンおよびグリアマーカーの発現に対する標準PEDFの効果を測定するための道具を提供している。
【0130】
(実施例16)
(色素上皮誘導因子:高度に特異的なポリクローナル抗体による特性決定)
PEDFに対するポリクローナル抗体を開発するために、大腸菌で産生された精製組換え体ヒトPEDFを使用した。抗−rPEDFはおとなのウシの眼からのIPM洗液のウェスタン移行物上の一つのポリペプチドを特異的に認識した(図19)。ヒト組換え体PEDFに対するポリクローナル抗血清は特異的にrPEDFを認識する。ヒトrPEDFのウェスタン移行物およびスロットブロットはrPEDFに対するウサギポリクローナル抗血清、Ab−rPEDFで処理された。4−クロロ−1−ナフトールでの免疫染色の写真が示されている。パネルA、rPEDFの0.5μgのウェスタン移行物が抗血清の希釈の増加をアッセイするために使用された。rPEDFタンパク質は移行前にSDS−12.5%PAGEで分離された。希釈率は各々のレーンの上に示されている。希釈抗血清は免疫検出に使用する前に5μg/mlでrPEDFと前もってインキュベートされ、1:10,000+rPEDFと示されている。左の数字はビオチニル化SDS−PAGE標品の分子量を示している。パネルB、1%BSA/PBS中rPEDFの量を増量し、マニホールドでニトロセルロース膜へ供給した。膜は抗血清抗−rPEDFおよび1:10,000希釈されたウサギ前免疫血清で処理された。右に示されている数字は膜へブロットされたrPEDFの量を表している。各々のペーパーに使用された血清は図の上に示されている。
【0131】
抗−BHはウェスタン移行物上、1:50,000のような高い希釈度でヒトPEDFを特異的に認識した;重要なことは、それが血清α1−抗トリプシンを認識しなかったことである。本抗体は若年サルRPE培養細胞の馴化培地の、ならびにおとなのウシの眼からのIPMの、ウェスタン移行物上に一つの主要なバンドを認識した。抗−rPEDFはIPM促進神経栄養性活性を遮断した(図20)。血清含有培地中、対数増殖期のヒト網膜芽腫細胞Y−79をPBSで2回洗浄し、インシュリン、トランスフェリンおよびセレンを補給した無血清MEM(ITS混合物、Collaborative Research Products)中に播種した(ml当たり2.5x105細胞)。次にエフェクターが培養液に添加された。5%CO2、37℃で7日後、細胞を新鮮な無血清培地を含むポリ−D−リシン被覆プレートに付着させた。培養物の分化状態を付着後種々の間隔でモニターした。付着9日後の形態的特徴が示されている。エフェクターの添加は各々のパネルに示されており以下の最終濃度であった:125μg/ml BSA、1% IPMおよび100ng/ml 精製ウシPEDF。神経芽の成長誘導活性を阻止するため、各々のエフェクターは1%BSA/PBS中、過剰の抗血清抗−rPEDF(1μl)と少なくとも6時間4℃で前もってインキュベートした。すべての写真は50倍で示されている。
【0132】
抗−rPEDFはまた精製PEDFにより促進される神経芽成長活性も阻止した。我々のデータはIPMではPEDFが唯一の神経栄養性因子であることを示している。これらのデータはまた抗−rPEDFはPEDF神経栄養性活性部位ならびにIPMおよび他の組織(例えば、脳)におけるPEDFの生理学的役割の探査に有用であろうことも示唆している。さらに、これらの結果はPEDFはIPMを益する成分であり、細胞外マトリックスにおける唯一の神経栄養性成分であることを示している。さらに、本タンパク質は広範囲の組織および細胞外空間に存在している。阻止抗体はPEDFの生理学的機能を探査する研究に有用である。
【0133】
(実施例17)
(色素上皮誘導因子:神経栄養性活性を持つセルピン)
ヒト胎児PEDF cDNAから誘導されるアミノ酸配列は、セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)ファミリーとその一次構造の同一性を共有し(約30%)、セルピンの構造的完全さに必須な残基の90%を保存している。しかしながら、組換え体PEDFはセリンプロテアーゼであるトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼまたはカテプシンGを阻害しない。PEDFの天然の標的はまだ解明されていない。PEDFに対して作製した抗体によるウェスタンブロットの免疫検出および蛋白分解性基質としてカゼインを含むゲルのザイモグラフィーにより、網膜色素上皮および網膜間の空間である、光受容体間マトリックス(IPM)からのタンパク質を分析した。結果は、ウシIPMは安定でグリコシル化されたPEDFポリペプチド(50,000Mr)を目当たり2−5μg含んでいることを示している。トリプシン、サブチリシン、キモトリプシンおよびエラスターゼによるウシPEDFの制限蛋白分解は46,000Mrのポリペプチドを産生し、蛋白分解性切断に感受性を持つヒンジ領域を持つ球状構造が示唆される。一方、カゼインSDS−PAGEザイモグラフィーはIPM中のプロテアーゼ活性が低いことを明らかにし、それは約80,000±5,000の2倍移動した。カゼイン分解性活性は1μg/mlのアプロチニンおよび10mM PMSFをゲル混合物に加えると100%阻害されたが、E64またはEDTAには影響を受けなかった。重要なことは、IPMタンパク質は、約80,000Mrのセリンプロテアーゼであるプラスミノーゲンに対する抗体と反応しなかったことである。rPEDFタンパク質が1μg/mlで加えられた場合、これらのカゼイン分解性活性ならびに未知の起源のその他のセリンプロテアーゼ活性の信号は約50%弱められた。これらの結果は新規セリンプロテアーゼおよびセルピンPEDFのための天然の細胞外部位としてのIPMを示唆しており、両方とも全タンパク質の≦1%で存在している。
【0134】
ここに引用したすべての文献は、援用により本明細書に全文包含される。
【0135】
本発明はPEDFの一般的構造特性およびこれらがタンパク質の機能とどのように関係するかについての理解の発端を開示している。PEDFはセルピンについて知られている構造特性および一般的三次特性を持っているが、セルピンの抗−プロテアーゼ活性は持っていない。PEDFは神経栄養性タンパク質であり、網膜芽腫細胞上の神経芽成長を促進するIPMの唯一の成分であるようである。しかしながら、古典的セルピンのカルボキシ末端近くに観察されるセリンプロテアーゼ阻害剤のための反応中心は、PEDFの神経栄養性生物学的活性には必要とされない。特に、分子のアミノ末端部分からのドメインを含むポリペプチド鎖(BA)は、神経栄養性およびニューロン生存活性にとって十分である。本発明はさらにCGCニューロンがアポトーシスで死ぬかどうかおよびPEDFはアポトーシスの阻害剤であるかどうかの決定を可能にする。言葉を換えれば、本発明はどのような機構でPEDFがニューロンを”救い”およびグリアの成長または増殖を”阻害する”かを決定することを可能にする。
【0136】
本発明は特異的神経栄養性”活性部位”の決定に有用である。さらに、端が切断されたrPEDFペプチドの使用はPEDFの神経細胞栄養性およびおそらく、グリア細胞静止性に必要な要素決定を可能にする。本発明はさらに、網膜芽腫細胞の分化のための信号の引き金を引くPEDFの相互作用を研究するために必要な道具を提供する。最近の実験は網膜芽腫細胞により前もって”馴化され”ている培地に加えたときのみ125I−BHは網膜芽腫細胞と競合的様式で結合することが示されている。このことは細胞により産生される一つまたはそれ以上の補因子が結合に必要であろうことを示唆している。本発明はさらにCGC試験系および網膜芽腫細胞試験系からのPEDFまたはPEDF複合体に対する細胞表面受容体を同定および特性決定するために必要な道具を提供する。
【0137】
タンパク質の機能部位のドメインマッピングのための道具として、組換え体変異タンパク質、タンパク質分解生成物および合成ペプチドが使用できる。さらに、本発明の組換え体タンパク質はPEDF上の神経栄養性および神経細胞栄養性”活性部位”のマッピング、およびこの興味深いタンパク質が発揮するその劇的な生物学的効果による細胞トランスダクション機構の決定を可能にする。
【0138】
本発明は好適な態様を強調して説明したが、PEDF、rPEDFおよび等価なタンパク質、(BP、BX、BA)をコードしている好適な核酸、およびそれらのアミノ酸配列、そのような核酸を利用するベクター、そのようなタンパク質を産生する組換え法、およびそのようなタンパク質の使用法の変形態様が存在し、本発明がここに特別に記載したものと別な方法で実施できるであろうことは当業者には明かであろう。従って、本発明は以下の請求の範囲に定義されるように、本発明の精神および範囲内のすべての改変を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】ヒトPEDF遺伝子構造:ヒトPEDF遺伝子の制限地図および構成。エクソン1−8は黒の四角で示されており、1−8の番号が付けてある。イントロンおよび隣接するDNAは水平な線で表されておりA−Gのラベルが付けられている。いくつかのゲノムクローンは図解した遺伝子の上および下に示されている。制限酵素NotI(”N”)、BamHI(”B”)およびEcoRI(”E”)の制限部位は垂直の矢印で示されている。
【図2】BamHI、EcoRI、HindIIIおよびPstIエンドヌクレアーゼで制限分解されたヒトゲノムDNA(A)およびP147(B)のサザン分析。パルスフィールド電気泳動を行ったゲルのプロフィールからのサザン分析物は放射性標識PEDF cDNAで探査された。P147DNAのハイブリダイゼーションパターンは全ヒトゲノムDNAと一致した。サイズマーカーが示されている。
【図3】PEDF遺伝子の5’隣接領域。最初のエクソン(大文字)および5プライム隣接領域の最初の1050bpが示されている。二つのAlu反復配列は下線が施されている。HNF−1、PEA3、オクトマー(Oct)、c/EBPの可能な結合部位は下線が施されており、ラベルされている。推定AP−1部位はボールド体で示されており、TREp/RARは二重の下線が付けられている。エクソン1中の下線を付けた配列は5’RACEにより決定された。
【図4】PEDF mRNAのノーザンブロット分析:ヒト成人および胎児組織中のヒトPEDF転写体の遺伝子発現分析。RNAが得られた組織はレーンに対応して上に示されている。膜は各々の試料に対し2μgのポリ(A)RNAを含んでおり、ヒトPEDFのための放射性標識cDNAで探査された。成人および胎児組織の両方で単一の1.5kb転写体が観察され、肝臓、精巣、骨格筋および卵巣で最も大きなハイブリダイゼーションがあり、一方、脳、膵臓および胸腺の信号は他の組織のものより著しく弱かった。成人腎臓および脾臓では有意な信号は観察されなかった。PEDF mRNAレベルの有意な相違が成人および胎児腎臓で観察された。
【図5】ヒトPEDF遺伝子の進化的関連付け:各々のレーンは各々の種をEcoRIで消化した総量で8μgのゲノムDNAを表している。PEDFプローブでのサザンブロット分析が示されている。ニワトリ(A)、哺乳類(B)および霊長類(C)のハイブリダイゼーション信号が示されている。約23kbの大きな断片がすべての霊長類および多くの哺乳類で観察される。加えて、試験された異なった哺乳類でいくつかの多形が観察される。
【図6】播種した細胞密度とMTSアッセイにより測定された光学密度の関係。異なった濃度の生後8日の小脳顆粒細胞を96ウェルプレートに加え、血清含有培地(6A)または化学的に特定される培地(6B)で培養した。光学密度はインビトロでの日数(DIV)1、4または7で測定された。四角、DIV1;黒丸、DIV4;白丸、DIV7。データは細胞密度の関数としてプロットされている(n=6)。
【図7】化学的に特定される培地におけるPEDF刺激細胞生存の時間変化。生後8日の小脳顆粒細胞を96ウェルプレートで培養した。DIV0にPEDFを加え、DIV1、4、7または10に光学密度を測定した。黒棒、対照;左斜線の棒、PEDF処理(50ng/ml);右斜線PEDF処理(500ng/ml)。データは光学密度/ウェルで表わされている(平均±SEM、n=6)。統計計算はツーウェイANOVA ポスト−hoc Scheffeテストにより行われた。★★対照に対してP<0.0001。
【図8】化学的に特定される培地におけるPEDFの用量応答曲線。異なった濃度のPEDFがDIV0に加えられ、MTSアッセイがDIV7に実施された。データは対照に対する比で表わされている(平均±SEM、n=6)。統計計算はワンウェイANOVA ポスト−hoc ScheffeFテストにより統計計算が行われた。★★対照に対してP<0.0001。
【図9】DIV1およびDIV2での生後5日の小脳顆粒細胞のMTSアッセイ。生後5日の小脳顆粒細胞をAra−Cを含まない血清含有培地(A)またはF12を含まない化学的に特定される培地(B)を用い、96ウェルプレートで培養した。MTSアッセイはDIV1およびDIV2に実施された。黒棒、対照;しまを付けた棒、PEDF処理(500ng/ml)。データは光学密度/ウェルで表わされている(平均±SEM、n=6)。統計計算はツーウェイANOVA ポスト−hoc Scheffe Fテストにより行われた。★★対照に対してP<0.0005。
【図10】生後5日の小脳顆粒細胞内へのBrdU取り込み。生後5日の小脳顆粒細胞をAra−Cを含まない血清含有培地(SCM)またはF12を含まない化学的に特定される培地(CDM)を用い、96ウェルプレートで培養した。PEDFはDIV0に加えた。BrdUはDIV1に加え、DIV2に細胞を固定した。黒棒、対照;しまを付けた棒、PEDF処理(500ng/ml)。標識された核酸の数は全細胞集団のパーセントとして表現されている(平均±SED)。各々の値について少なくとも3000の細胞が計数された。
【図11】ELISAにより測定された細胞密度と神経フィラメントの間の関係。異なった濃度の生後8日の小脳顆粒細胞を96ウェルプレートに加え、培養した。光学密度はDIV7に測定された。データは細胞密度の関数としてプロットされている。
【図12】生後8日の小脳顆粒細胞における神経フィラメントELISAアッセイ。細胞を血清含有培地(SCM)または化学的に特定される培地(CDM)を用い、PEDFとまたはPEDFなしで96ウェルプレートで培養した。DIV7に細胞を固定した後、神経フィラメントELISAが実施され、データは対照に対する比として表現されている(平均±SEM、n=6から10)。黒棒、対照;しまを付けた棒、PEDF処理(500ng/ml)。統計計算はツーウェイANOVA ポスト−hoc Scheffe Fテストにより行われた。★★対照に対してP<0.05。
【図13】培養10日間のPEDF神経細胞栄養性効果の要約。
【図14】端が切り取られたペプチドBPおよびBXのCGC生存率に対する効果。
【図15】小脳からの大グリア細胞に対するPEDFの効果。
【図16】小脳小グリア細胞に対するPEDFの効果。
【図17−1】ウシIPMからのPEDF−免疫反応性タンパク質の精製。ウシIPM洗液をA)TSK−3000サイズ排除クロマトグラフィー続いてB)Mono−Sクロマトグラフィーにかけた。ウェスタンブロットでPEDF含有分画が示される。
【図17−2】ウシIPMからのPEDF−免疫反応性タンパク質の精製。ウシIPM洗液をA)TSK−3000サイズ排除クロマトグラフィー続いてB)Mono−Sクロマトグラフィーにかけた。ウェスタンブロットでPEDF含有分画が示される。
【図18】ウェスタンブロッティングにより示されたPEDFの酵素的脱グリコシル化。PEDF処理は各々のレーンの上に与えられている。数字は分子量標準の位置を示している。
【図19】PEDFに対する抗体は特異的に天然PEDFを高力価で認識する。A)少なくとも1:50,000希釈までの抗体の有効性、および過剰のrPEDFの添加がバンド可視化を完全に阻止することを示しているウェスタンブロット。B)スロットブロット分析は天然ウシPEDFタンパク質の≦1ngを検出する能力を示している。
【図20】Y−79細胞における神経突起拡張に対するPEDF抗体の逆の効果。上列:ウシ血清アルブミン(BSA)対照培養。中列:天然ウシPEDFタンパク質による神経突起誘導に対する抗体効果。下列:光受容体間マトリックス(interphotoreceptor matrix:IPM)による神経突起誘導に対する抗体効果。
【図21】PEDF存在または不在下での神経突起成長の位相差顕微鏡分析。
【図22】組換え体PEDFおよび天然の単離PEDFの存在下での神経突起成長の位相差顕微鏡分析。
【図23】rPEDFのC−末端欠失の模式図。
【0140】
(配列表)
【数2】
【0141】
【数3】
【0142】
【数4】
【0143】
【数5】
【0144】
【数6】
【0145】
【数7】
【0146】
【数8】
【0147】
【数9】
【0148】
【数10】
【0149】
【数11】
【0150】
【数12】
【0151】
【数13】
【0152】
【数14】
【0153】
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【0194】
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【0195】
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【数59】
【0198】
【数60】
【0199】
【数61】
【0200】
【数62】
【0201】
【数63】
【0202】
【数64】
【0203】
【数65】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は1992年9月24日に出願された特許出願第07/952,796号の一部継続出願である1994年6月7日に出願された特許出願第08/258,963号の一部継続出願である。
【0002】
(技術分野)
本発明は神経栄養性、神経細胞栄養性およびグリア細胞静止性タンパク質に関する。特に、本発明は色素上皮誘導因子(PEDF)として知られているタンパク質の生物学的特性およびそのタンパク質の組換え形に関している。本発明はまたrPEDFと称されるPEDFの端を切り取ったものにも関している。PEDFおよびrPEDFおよび機能的に等価なタンパク質に加え、本発明はrPEDFおよびその断片をコードしている核酸、そのような核酸を含むベクター、そのようなベクターが導入されている宿主細胞およびそのようなタンパク質を産生するためのこれらの宿主細胞の使用にも関している。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
色素上皮誘導因子(または色素上皮分化因子として知られている)は、培養ヒト網膜芽腫細胞の神経突起成長を誘導できる細胞外神経栄養性作因として培養ヒト胎児網膜色素上皮細胞の馴化培地で同定された(Tombran−Tink et al.(1989)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,30(8),1700−1707)。PEDF源、即ち網膜色素上皮(RPE)は網膜神経の正常な分化および機能に決定的なものであろう。増殖因子を含む種々の分子がRPE細胞により合成および分泌される。RPEは網膜神経に先だって分化して隣接して存在し、およびそれが血液−網膜障壁の一部として機能しているため(Fine et al.(1979)The Retina.Ocular Histology:A Text and Atlas,New York,Harper & Row,61−70)、RPEは目の血管性、炎症性、消耗性(degenerative)および異栄養性(dystrophic)疾患に関係していると考えられる(Elner et al.(1990)Am.J.Pathol.,136,745−750)。増殖因子に加え、栄養および代謝物もまたRPEおよび網膜間で交換されている。例えば、RPEはよく知られた増殖因子PDGF、FGF、TGF−α、およびTGF−βを網膜に供給している(Campochiaro et al.(1988)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,305−311;Plouet(1988)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,106−114;Fassio et al.(1988)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,242−250;Connor et al.(1988)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,307−313)。RPEにより供給されたこれらおよび他の未知の因子が網膜の構成、分化および正常な機能発揮に影響していることは非常にありそうなことである。
【0004】
RPEにより分泌される推定の分化因子の効果を研究および決定するため、培養細胞に網膜抽出物およびヒト胎児RPE細胞の培養で得られた馴化培地が加えられた。例えば、米国特許第4,996,159(Glaser)は約57,000+/−3,000の分子量のRPEから回収された血管新生阻害剤が開示されている。同様に、米国特許第1,700,691(Stuart)、4,477,435(Courtoisら)および4,670,257(Guedon born Saglierら)は網膜抽出物および細胞再生および眼疾患処置におけるこれらの抽出物の使用が開示されている。さらに、米国特許第4,770,877(Jacobson)および4,534,967(Jacobson)は、ウシ硝子体液の後方部から精製された細胞増殖阻害剤が開示されている。
【0005】
PEDFは最近ヒトRPEから50−kDaタンパク質として単離された(Tombran−Tink et al.(1989)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,29,414;Tombran−Tink et al.(1989)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,30,1700−1707;Tombran−Tink et al.(1991)Exp.Eye Res.,53,411−414)。特に、PEDFは正常網膜芽細胞に対応する新生物性体であるヒトY79網膜芽腫細胞の分化を誘導することが示されている(Chader(1987)Cell Different.,20,209−216)。PEDFにより誘導された分化的変化には神経突起の複雑な網目の拡張、およびニューロン特異的エノラーゼおよび神経フィラメントタンパク質のような神経性マーカーの発現が含まれる。このこと故にRPEによるPEDFタンパク質の合成および分泌が網膜神経の発達および分化に影響していると信じられている。さらに、PEDFは未分化のヒト網膜細胞(Y79網膜芽腫細胞のような)でのみ多く発現されており、それらが分化するとなくなるかまたはダウンレギュレーションされている。最近、PEDF mRNAが静止状態の胎児ヒトW1線維芽細胞で多量に発現され、およびそれらが老化すると発現されないことが報告された(Pignoloら、(1993))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PEDFのさらなる研究および網膜および中枢神経系(CNS)の炎症性、血管性、消耗性および異栄養性疾患の処置におけるその治療的使用の可能性の試験にはPEDFを多量に入手する必要がある。不幸にして、ヒト胎児の目においてPEDFは豊富には存在せず、さらにその源となる組織はほとんど入手できないことが(特に、研究および治療応用における胎児組織の使用制限をかんがみると)さらなるPEDFの研究を最も困難なものにしている。それ故PEDFおよび等価なタンパク質が多量に必要とされている。従って、PEDFおよび等価なタンパク質をコードしている核酸の多量の入手、およびPEDFおよび等価なタンパク質を産生する能力はPEDF、その構造、生化学的活性および細胞機能の研究ならびにPEDFの治療的使用の発見および設計に著しく強い影響を与えるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明によって、以下が提供される。
(項目1) ニューロンを含む細胞集団を有効量の色素上皮誘導因子で処理し;および
該集団のニューロン細胞生存を促進することからなるニューロン細胞生存の促進法。
(項目2) グリア細胞を含む細胞集団を有効量の色素上皮誘導因子で処理し;および
該集団のグリア細胞増殖を阻害することからなるグリア細胞増殖阻害法。
(項目3) ニューロン細胞が組織細胞培養にある項目第1項に記載の方法。
(項目4) 以下の工程をさらに含む項目第1項に記載の方法:
細胞培養を設定し;および
該細胞培養を有効量のPEDFで処理する。
(項目5) 処理される細胞が患者内へ移植される組織の構成要素を含む項目第1項に記載の方法。
(項目6) 細胞が胎児脳細胞である項目第6項に記載の方法。
(項目7) グリア細胞が腫瘍増殖の一部である項目第2項に記載の方法。
(項目8) 阻害されるグリア細胞増殖がグリオシスである項目第2項に記載の方法。
(項目9) 精製された色素上皮誘導因子またはその抗原性断片に対して作製された精製抗体または該抗体の抗原−結合断片。
(項目10) 前記抗体がポリクローナルである項目第9項に記載の単離抗体または抗体断片。
(項目11) 前記抗体がモノクローナルである項目第9項に記載の抗体または抗体断片。
(項目12) 前記抗体が検出可能な標識で標識されている項目第9項に記載の抗体または抗体断片。
(項目13) 細胞または細胞集団を有効量の項目第9項に記載の抗体または該抗体の抗原結合断片で処理し;および
色素上皮誘導因子生物学的活性を阻害することからなる色素上皮誘導因子の阻害法。
(項目14) 以下の工程を含んでなる、体液、細胞または組織試料中の色素上皮誘導因子レベルの決定法:
A.該試料と項目第9項に記載の精製抗体または抗原結合断片を該抗体または抗原結合断片と該試料中に存在する色素上皮誘導因子間で免疫複合体が形成される条件下で接触させ;
B.免疫複合体から過剰の抗体または抗原結合断片を分離し;および
C.免疫複合体のレベルを決定して色素上皮誘導因子レベルを決定する。
【0008】
PEDFおよびその機能的断片をコードしている核酸、そのような核酸を含むベクター、そのようなベクターが導入されている宿主細胞、およびPEDFおよび等価なタンパク質を産生する組換え法を提供することが本発明の目的である。本発明の別の目的はPEDFをコードしているゲノムDNA配列を得、ヒトゲノム中のイントロンーエクソン連接(ジャンクション)、染色体位置を同定し、ゲノム配列に隣接する該遺伝子の制御領域を提供することである。本発明はそのようなゲノムPEDF DNAに関している。
【0009】
本発明のさらなる目的は、PEDFの構造的特性を提供し、セリンプロテアーゼ阻害剤のセルピンファミリーへの構造的および機能的類似性を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、そのような組換え法に従って産生されたPEDFおよび等価なタンパク質を提供することであり、ここでそのように産生されたPEDFおよび等価なタンパク質は天然に存在する源となる生物体からのPEDFの単離に付随する危険性を伴っていない。
【0011】
本発明の別の目的は、rPEDFと称されるPEDFの端が切断されたものに対する核酸、そのような核酸を含むベクター、そのようなベクターが導入されている宿主細胞、およびrPEDFおよび等価なタンパク質を産生する組換え法を提供することである。そのような組換え法に従って産生されるrPEDFおよび等価なタンパク質を提供するのも本発明の目的である。
【0012】
神経細胞栄養性およびグリア細胞静止活性を持つPEDFタンパク質を提供するのが本発明のさらなる目的である。神経細胞栄養性活性は神経細胞の生存を長くすることで見ることができる。グリア細胞静止活性はPEDFまたはその活性断片存在下でのグリア細胞の増殖阻害で観察できる。本発明の別の目的はニューロン生存を助長/促進するように、およびグリア細胞の増殖を防止するように神経細胞を処理するための方法を提供することであり、それはそのような細胞集団を有効量のPEDFまたはその活性断片で処理することを特徴としている。
【0013】
本発明のさらに別の目的はPEDFを特異的に認識する抗体を提供することである(モノクローナルまたはポリクローナル、天然のタンパク質、組換え体タンパク質またはその免疫活性断片に対して)。本発明の目的は老化および/または他の消耗性疾患の決定においてそのような抗体調製物を使用するイムノアッセイによりPEDFを検出する方法を提供することである。本発明の別の目的は特異的にPEDF活性を阻害するためにPEDF抗体を使用する方法に関している。
【0014】
本発明のこれらのまたは他の目的および利点、ならびに追加の発明の特色はここに提供された発明の説明から明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は新規で、重要でありようやく解明された特性を持つタンパク質に関する。色素上皮誘導因子(PEDF)は神経栄養性、神経細胞栄養性およびグリア細胞静止特性を持つタンパク質である。本発明はさらに、PEDF遺伝子をコードしているDNA配列、PEDF遺伝子および生物学的活性を持つPEDFのタンパク質断片をコードしているPEDF遺伝子の断片を含むゲノムDNAに関する。
【0016】
”神経栄養性”活性とはここでは神経細胞集団の分化を誘導する能力として定義される。例えば、培養網膜芽細胞で分化を誘導できるPEDFの能力は神経栄養性活性と考えられる。
【0017】
”神経細胞栄養性”活性とはここでは神経細胞集団の生存を促進する能力として定義される。例えば、神経細胞のニューロン生存因子として働くPEDFの能力は神経細胞栄養性活性である。
【0018】
”グリア細胞静止”活性とはここではグリア細胞の成長および増殖を阻害する能力として定義される。例えば、グリア細胞の成長および/または増殖を防止するPEDFの能力はグリア細胞静止活性である。本発明で評価されたタンパク質アミノ酸配列に基づくと、PEDFはセリンプロテアーゼ阻害剤であるセルピン遺伝子ファミリーと高い配列相同性を持っていることが観察された。このファミリーの多くのメンバーは、タンパク質の反応性部位として働くカルボキシル末端の厳密に保存されたドメインを持っている。これらのタンパク質は従って共通の祖先から誘導されていると考えられる。しかしながら、セルピン遺伝子ファミリーのメンバー間で発育制御は異なっており、多くは古典的プロテアーゼ阻害活性から逸脱している(Bock(1990)Plenum Press,New York Bock,S.C.Protein Eng.4,107−108;Stein et al.(1989)Biochem.J.262,103−107)。PEDFはセルピンと配列相同性を共有しているが、cDNA配列の分析から保存的ドメインを欠いており、従って古典的プロテアーゼ阻害剤としては機能しないであろう。
【0019】
PEDFのゲノム配列決定および分析はイントロンおよびエクソンならびに5’−上流配列の約4kbの配列を提供した。本発明はインサイチュハイブリダイゼーションおよび体性細胞ハイブリッドパネルの分析を用いて、17p13.1に対するPEDFの遺伝子の局在化を示している(Tombran−Tink、et al.,(1994)Genomics,19:266−272)。これはp53腫瘍抑制遺伝子ならびにp53遺伝子生成物中の突然変異に相関しない多くの遺伝性癌の染色体局在化に非常に近い。PEDFは従ってこれらの癌の第一の候補遺伝子になった。
【0020】
完全長ゲノムPEDF配列は配列ID番号:43に示されている。PEDF遺伝子は約16kbであり、8つのエクソン(そのすべては保存的共通スプライス部位を持っている)を含んでいる。PEDF遺伝子の5’−隣接部位は2つのAlu反復要素を含んでおり、それは推定プロモーター配列の最初の1050bpの約3分の2を占めている。転写因子のいくつかのファミリーのメンバーで認識されるであろういくつかの配列モチーフも存在する。偏在する転写因子のオクタマーファミリーの2つの可能な結合部位の存在は、試験されたほとんどの組織にPEDFが存在することを説明しているであろう。しかしながら、他のより特異的な要素の存在はPEDFが厳密な制御下にあることを示唆し、神経分化および線維芽細胞老化のような多様な過程に対する効果が含まれる従来の研究を支持している。
【0021】
ゲノムPEDF配列またはその断片は細胞における遺伝子検出のためのプローブとして有用である。加えて、そのようなプローブはその遺伝子を運んでいる細胞型の同定のためのキットに有用である。遺伝子構成の中の突然変異、欠損または他の変化はPEDFゲノム配列から誘導されるDNAプローブを使用することにより検出できる。
【0022】
(組織分布)
PEDFはRPE細胞によって特に高く発現されるが、ほとんどの組織、細胞型、腫瘍などでノーザンおよびウェスタンブロット分析により検出可能である。例えば、硝子体液および眼房液に容易に検出される。PEDFの細胞内局在化という重要な問題も追求されている。PEDFの大部分は分泌されるようであるが、培養サルRPE細胞の探査にPEDF抗体を用いたところ、核ならびに細胞質の非常に特異的な細胞骨格構造にPEDFが付随することが観察された。重要なことは、このことが試験された細胞の年齢および特定の細胞周期状態で変化することである。例えば、付着の最初の段階で基層と相互作用する霊長類RPE細胞の偽足の先端に本タンパク質は濃縮されるようである。その後、この染色は消失し、特異的細胞骨格構造および核に付随して本タンパク質が出現する。従って、PEDFは核および細胞質の両方で重要な細胞内の役割を果たしているようである。
【0023】
(細胞周期の関与)
本発明は分裂中の未分化Y−79細胞では発現し、および対応する静止状態の分化細胞ではわずかな発現または無発現であることを示している(Tombran−Tink、et al.,(1994)Genomics,19:266−272)。Pignolo et al.(1993)J.Biol.Chem.,268:2949−295、はWI−38線維芽細胞中のPEDFの合成は若い細胞の細胞周期のG0段階に限定されることを示している。さらに、年をとった老化細胞においては、PEDF メッセンジャーRNAは存在しない。
【0024】
(組換え体PEDFの産生)
PEDFポリペプチドを分節に区切って研究することは構造−機能の研究では基本的なことである。この目的ために、PEDFコード配列の断片を含む発現ベクターがPEDFポリペプチドの異なった領域の合成および単離のために優れた断片源を提供する。ヒト胎児PEDF配列の発現は大腸菌発現ベクターおよびヒト胎児PEDF cDNAにより達成された。組換え体PEDF生成物(rPEDF)は生物学的に活性な神経栄養性因子であり、湿潤大腸菌グラム当たり1.3mgのオーダーの収量で得られることが示された。端が切断されたペプチドはまた適当な分子生物学的構築物を大腸菌で発現させても作製できる。これらの生成物を用い、PEDF一次構造上の2つの独特な領域が1)タンパク質のN−末端近くのアミノ酸残基44−121内に位置し、分子に神経栄養性活性を与える”活性部位”、および2)セルピンの露出ループと相同的であるC−末端近くの領域(即ち、”古典的”セルピン活性部位)が区別できた。これらの結果は、1)神経突起成長にはPEDFの全部の天然コンホメーションは必要とされない、および2)セリンプロテアーゼの阻害ではPEDFの生物学的活性は説明できないことが示唆される。タンパク質配列を覆う一連の端が切断されたrPEDF構築物が得られ、N−末端近くの特異的神経栄養性”活性部位”の正確な位置を決めることができた。
【0025】
(高度に特異的なポリクローナル抗体での特性付け)
精製された組換え体ヒトPEDFは、PEDF媒介神経栄養性活性を特異的に阻害するポリクローナル抗体(”抗−rPEDF”)の開発に使用された。さらに、抗−rPEDFは完全にIPM誘導神経栄養性活性を阻害した。
【0026】
(PEDFの神経栄養性特性)
Y−79およびWeri腫瘍細胞系において天然PEDFおよびrPEDFが神経栄養性であることを示すことに加え、本発明はPEDFが初代培養の正常ニューロンに効果を示すかどうかを決定した。この目的のため、生後8日のラットから調製された正常小脳顆粒細胞(CGC)の培養物を用いて研究が実施された。rPEDFで処理された細胞はより神経的形態的外観を示すことにより処置には応答しなかった。しかしながら、PEDFは顆粒細胞生存に大きな効果を示した。これらの細胞は腫瘍性または形質転換細胞ではないので、これらは培養で限られた寿命しかなく、培養培地に依存して約21日で死んでゆく。しかしながら、PEDF処理培養物は非処理培養物と比較して無血清培地中、培養10日後に10倍の細胞を含んでいた(図4)。これらの結果は;1)直接的顕微鏡観察および細胞計数、および2)生きている細胞数を決定するMTS(テトラゾリウム/ホルマザン)アッセイにより決定された(実施例11参照)。従って、PEDFはCNSニューロン生存に劇的な効果を示し、近年明らかにされつつある”神経細胞栄養性”タンパク質の数少ないリストに加えられるべきである。
【0027】
一般的な組織培養研究:
ニューロンおよびグリアを用いる組織培養実験で一般的に悩まされる2つの問題は、ニューロンは急速に死にがちであり、グリアは培養皿を乗り越えがちであることである。PEDFまたはそのペプチドは両方の点を助けることができる。従って、PEDFの商業的使用の一つは、CNS細胞が培養される場合の一般的な培養培地添加物としてであろう。
【0028】
CNS移植研究:
ニューロンの移植はある種の病理を治療すると考えられている。例えば、パーキンソン疾患において、特定の胎児脳細胞の患者への移植は疾患に付随する問題を軽減または治療できるであろう。しかしながら、一つの大きな問題は移植された細胞の生存を延ばすこと、およびそれらを分化したまま維持すること(例えば、適当な物質を分泌するように)であろう。細胞をPEDFで前処理すると、これらの両方の面での助けになる。同様に、移植前にニューロンまたは大グリア細胞をPEDFでトランスフェクトすると、移植部位で長期間のPEDF源であることができる。
【0029】
盲目治療を助けるため、神経網膜および光受容体細胞の移植の試みが盛んである。現在まで、これらの試みは移植片の非分化および死滅の両方のため実を結んでいない。このような場合にも、PEDFは両方の点で助けになるであろう。特に、手術前に移植される光受容体ニューロンはPEDFまたは細胞内へトランスフェクトされた遺伝子で前処理できる。もしくは、PEDFは高レベルで隣接する網膜色素上皮(RPE)細胞内へトランスフェクトでき、そこでタンパク質の過剰な供給源として働くことができる。幾人かの研究者は、培養RPE細胞が試験動物の光受容体空間内への移植後に非常によく生存していることを示している。インビトロでのヒトRPE細胞のPEDF遺伝子によるトランスフェクション、続いてのそれらの網膜移植での使用が容易である。
【0030】
神経消耗性疾患:
CNS(脳および網膜)に対する多くの神経消耗性疾患およびその他の障害はニューロンの死亡およびグリアの過密(グリオシス)により代表される。PEDFはこれらの状態において、一次ニューロンの寿命および機能発揮を延長するため、およびグリアの進出をくい止めるために有効に使用できる。例えば、PEDFはCNS障害に応答した小グリア活性化を阻害し、ならびにニューロンの命を延長/助命するのに有効で有り得る。
【0031】
網膜において、PEDFがミュラーグリア細胞を阻害することが予測できる。
【0032】
ミュラー細胞は大グリア細胞と類似しているので、PEDFは同様に網膜剥離、糖尿病、色素性網膜炎などのような病態でのグリオシスの防止ならびに網膜ニューロンの助命に有効であろう。
【0033】
グリア癌:
CNSを攻撃する癌の主要な型のほとんどにグリア要素が含まれており、PEDFは他の形の療法と組み合わせて使用できるグリア静止因子である。例えば、手術に加えて、PEDFは疾患の拡散または再発を有効に阻害できる。
【0034】
(遺伝的分析)
本発明はヒトPEDF遺伝子およびそのプロモーターの構成の決定およびその進化的相関および種々のヒト胎児および成人組織での発現に関している。
【0035】
本発明は、なかでもPEDFをコードしている核酸を提供する。特に、cDNA配列が配列ID番号:1に示したように提供される。このcDNAは配列ID番号:2に示したアミノ酸配列を持つPEDFをコードしている。さらなるゲノム配列は図1のように地図作製がされ、配列ID番号:43が提供される。ゲノムPEDF配列の追加の断片は配列ID番号:9から配列ID番号:12に提供されている。イントロンーエクソン連結の位置は表1および配列ID番号:25から配列ID番号:40および配列ID番号:43に同定されている。
【0036】
術語”核酸”とはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)のポリマーを称し、それらは任意の源から誘導でき、一本鎖でも二本鎖でもよく、DNAまたはRNAポリマー内へ取り込むことができる合成、非天然または改変ヌクレオチドを場合により含むことができる。本発明の核酸は好適にはDNAのセグメントである。
【0037】
本発明ではさらに、PEDFの端が切断されたものが提供される。これらの内最も大きいものはrPEDFと称され、PEDFのAsp44...Pro418に融合したアミノ酸配列Met−Asn−Arg−Ileを含んでいる(アミノ末端が欠失している)。rPEDFタンパク質は配列ID番号:3のアミノ酸配列を含んでいる。本発明はまたrPEDFのアミノ酸配列を含むタンパク質(即ち、配列ID番号:3のアミノ酸配列)をコードしている核酸も提供する。
【0038】
遺伝子コードの縮重およびいわゆる”Wobbleルール”と呼ばれている古典的塩基対生成のコドンの第三位に例外が許されるという観点から、与えられた任意のタンパク質は一つ以上の核酸によりコードされうることを当業者は理解するであろう。従って、本発明は配列ID番号:2および配列ID番号:3ならびに等価なタンパク質のアミノ酸配列をコードするすべての核酸を包含している。句”等価な核酸”とはすべてのこれらの核酸を包含することを意図している。
【0039】
特定のタンパク質の機能に不利に影響することなくアミノ酸配列を変更できることも当業者は理解するであろう。実際、アミノ酸配列のいくつかの変更はタンパク質に改良された特性を与える。どのアミノ酸をタンパク質の機能に不利に影響することなく変更してもよいかの決定は当業者にはよく知られている。さらに、より多くのまたはより少ないアミノ酸を含むタンパク質でも機能的に等価なタンパク質を生じることができる。従って、本発明はPEDFタンパク質またはその機能的タンパク質断片を生じるすべてのアミノ酸配列を包含することが意図されている。
【0040】
可能な等価な核酸および等価なタンパク質のいくつかの例には、rPEDFタンパク質およびその等価なタンパク質断片の合成に関する置換、付加または欠失を持つ核酸;rPEDFタンパク質の産生に関する異なった制御配列を持つ核酸;タンパク質のアミノ末端に合同した4つ以外の異なったアミノ酸および/またはアミノ酸の数を持つrPEDFの変異体;および活性に不利に影響しないアミノ酸置換、付加、欠失、修飾および/またはグリコシル化のような翻訳後修飾を持つPEDFおよびrPEDFおよびその機能的タンパク質断片が含まれる。神経栄養性活性はPEDFの特定の部分に関連しているので、これらの残基を含むタンパク質断片は明らかに本発明の範囲内である。
【0041】
本発明はまた、配列ID番号:1の核酸、配列ID番号:2または等価なタンパク質のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしている核酸、配列ID番号:3または保存的に修飾された変異体タンパク質のアミノ酸配列をコードしている核酸、および保存的に修飾されたそれらの核酸の変異体を含むベクターも提供する。
【0042】
特に、本発明は配列ID番号:1の核酸を含むベクターπFS17、および配列ID番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている核酸を含むベクターpEV−BHを提供する。記載されたcDNA挿入物は別のベクターにも存在できることを当業者は理解するであろう。例えば、挿入物はファージ、ウイルス、カプシド、プラスミド、コスミド、ファージミド、YACまたはファージまたはウイルスカプシドの外側に結合されたような異なった性質を持つベクターに存在できる。ベクターは宿主域、安定性、複製および維持を異にすることができる。さらに、ベクターはクローン化挿入物に及ぼす制御の型を異にすることができる。例えば、ベクターはクローン化挿入物を異なったプロモーター、エンハンサーまたはリボソーム結合部位の制御下に置くことができ、またはそれをトランスポゾンまたは移動性遺伝要素の一部として構成することさえ行う。
【0043】
本発明は、配列ID番号:1の核酸、配列ID番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質または等価なタンパク質をコードしている核酸、配列ID番号:3のアミノ酸からなるタンパク質または等価なタンパク質をコードしている核酸を含むベクターが導入されている宿主細胞も提供する。特に宿主細胞は配列ID番号:1の核酸を含むベクターπFS17、または配列ID番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている核酸を含むベクターpEV−BHを持っている。
【0044】
本発明のベクターは真核生物または原核生物を問わず任意の適した宿主細胞内に導入できる。これらの宿主細胞は増殖のための好適な条件、栄養要求および環境の試薬への感受性が異なっているであろう。宿主細胞内へベクターを導入する任意の適した手段が用いられる。原核生物細胞の場合、ベクター導入は例えばエレクトロポレーション、形質転換、トランスダクション、コンジュゲーションまたはモビリゼーションにより達成される。真核生物細胞の場合、ベクター導入は例えばエレクトロポレーション、トランスフェクション、感染、DNA被覆マイクロプロジェクタイルまたは原形質体融合を使用することにより導入されるであろう。
【0045】
導入された核酸の形は宿主細胞内へのベクターを導入するために使用された方法により変化するであろう。例えば、ベクターが自己複製要素として維持されているか、プロウイルスまたはプロファージとして組み込まれているか、過渡的にトランスフェクトされているか、過渡的に複製不能ウイルスまたはファージと感染されているか、または一重または二重交差組換えにより安定に導入されているかに依存して核酸は閉環状か、ニックされているかまたは直線状であろう。
【0046】
本発明はまた、PEDF、rPEDFおよび等価なタンパク質を産生する方法を提供し、その方法はタンパク質を宿主細胞で発現することを特徴としている。例えば、配列ID番号:1の核酸、配列ID番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質または等価なタンパク質をコードしている核酸、配列ID番号:3のアミノ酸からなるタンパク質または等価なタンパク質をコードしている核酸またはそれらと等価な核酸を含むベクターが導入されている宿主細胞が所望のタンパク質を産生するのに適した条件下で培養されるであろう。特に、配列ID番号:1の核酸を含むベクターπFS17、または配列ID番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている核酸を含むベクターpEV−BHは各々配列ID番号:2および配列ID番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質を産生するのに適した条件下で培養されるであろう。
【0047】
本発明はまた、所望のタンパク質を産生するために適当な宿主細胞を培養する前記の本発明に従ってされる組換え的に産生されたPEDFおよびその機能的タンパク質断片も提供する。組換え的手段によるPEDFのようなタンパク質の産生は、高度に生成された状態で、天然に存在する供給器官から単離および生成されたタンパク質に付随するであろう疾病原因物質を含まずに多量のタンパク質の入手が可能であり、例えば、そのようなタンパク質源として胎児組織を使用する必要性をなくする。
【0048】
組換え体PEDFおよびその機能的タンパク質断片は、例えば、そのタンパク質をコードしているDNAまたはRNAの様な核酸の導入を含む種々の手段により細胞に対し活性な試薬として供給され、従って、宿主細胞内で転写および/または翻訳されるであろうし、外因性タンパク質の添加および他の適した投与手段は当業者には既知であろう。供給されるのがどのような形であれ、活性試薬は単独で、または投与法に適した活性試薬の医薬組成物および処方を用いて他の活性試薬と組み合わせて使用される。医薬として適した賦形剤(即ち、賦形薬、補助剤、担体または希釈剤)は当業者にはよく知られており、容易に入手可能である。賦形剤の選択は特定の化合物ならびに化合物を投与するのに使用される特定の方法により部分的に決定されるであろう。従って、本発明の範囲内で調製できる多くの種類の適した処方が存在する。しかしながら、組換え体タンパク質の神経栄養性、神経細胞栄養性およびグリア細胞静止活性を変化させない医薬として受容可能な賦形剤が好適である。
【0049】
以下の実施例は本発明をさらに例示するためのものであり、どうあろうとその範囲を制限していると解釈するべきではない。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
この実施例は、PEDFのトリプシン加水分解と生じる断片のアミノ酸配列決定について記載している。
【0051】
PEDFはヒト胎児RPE細胞の初代培養培地の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製された。HPLC精製されたPEDFは還元されアルキル化された。その後、それを乾燥し50μlのCRA緩衝液(8M尿素、0.4M炭酸アンモニウム、pH8.0)に溶解し、5μlの45mMジチオスレイトール(DTT)(Calbiochem、San Diego、CA)を加えた。15分、50℃で加熱後、溶液を冷却し、5μlの100mMヨード酢酸(Sigma Chem.Co.、St.Louis、MO)を加えた。15分後、溶液は2M尿素の濃度になるように希釈し、1:25(wt/wt)の酵素:基質比を用いて22時間、37℃でトリプシン加水分解(Boehringer−Mannheim、Indiaanapolis、IN)させた。トリプシン分解ペプチドはVydac2.1mmx150mmC18カラムを用い、1040ダイオードアレイ検出器を備えたHewlett−Packard1090HPLCによるナロウボア逆相HPLCにより分離した。流速は150μl/分であり、0分に5%B、63分に33%B、95分に60%B、105分に80%Bのグラディエントを用いた。このグラディエントでは、緩衝液Aは0.06%トリフルオロ酢酸水溶液、緩衝液Bは0.055%トリフルオロ酢酸/アセトニトリルであった。クロマトグラフィーのデータは210nmと277nm(および209nmから321nmのUVスペクトル)でそれぞれのピークを得た。N末端配列分析のための試料はポリブレン前処理したグラスファイバーフィルターを通し、自動エドマン分解(Harvard Micrsochemical Facility、Boston、MA)ABI型477A気相タンパク質シークエンサー(プログラムNORMAL1)にかけた。生じるフェニルヒダントイン化アミノ酸分画はオンラインABIモデル120A HPLCとShimazu CR4A インテグレーターを用いて手動で同定した。
【0052】
精製PEDFのトリプシン加水分解と得られた断片のアミノ酸分析により
【0053】
【数1】
【0054】
を含む非重複ペプチド配列が得られた。
【0055】
(実施例2)
この実施例は実施例1のペプチド配列に基づいたオリゴヌクレオチドの構築、PEDF cDNAの単離におけるオリゴヌクレオチドの使用、およびPEDFcDNAの配列決定について記載している。
【0056】
実施例1のJT−3とJT−8ペプチド配列およびコドン利用データに基づき、オリゴヌクレオチド、oFS5665(配列ID番号:4):5’−AGYAAYTTYTAYGAYCTSTA−3’およびoFS5667(配列ID番号:5):5’−CTYTCYTCRTCSAGRTARAA−3’はABI 392 DNA/RNA合成機により構築し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマーとして用いた。
【0057】
ヒト胎児目Charon BS cDNAライブラリー(Kellog Eye Institute の Dr.A.Swaroop から提供された)は一度増幅(Sambrook et al.、Molecular Clonig:A Laboratory Manual、2nd ed.、Cold Spring Harbor、NY(1989))し、Techne熱サイクラーおよび標準試薬(GeneAMP、Perkin−Elmer Cetus)を用いた(ただし、3mMでMgSO4を使用した)PCR(Friedman et al.、Screeing of λgtll Libraries、In:PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications.Innis et al.、eds.、Academic Press、NY(1990)、pp.253−260)でスクリーニングした。約350bpのPCR増幅断片はNA−45 DEAE−セルロース紙(Schleicher and Scheull)を用いて3%NuSieve3:1ゲル(FMC Biochemicals)Rockland、ME)上に分離した(Sambrook et al.、上記文献)。断片はランダムプライミング(ランダムプライミングキット、Boehringer−Mannheim、Indianapolis、IN)によりα32P−dCTP(Amersham Corp.、Arlington Heights、IL)で標識し、ヒト胎児目ライブラリーの200、000プラーク形成単位(PFU)をスクリーンするのに用いた。
【0058】
8つの陽性なクローンが単離され(Sambrook et al.、上記文献)、陽性クローンのDNAはQiagen Maxi 製造プロトコール(Qiagen,Inc.、Chatsworth、CA)に従って精製された。この陽性クローンの挿入物はNotI(BRL、Gaithersburg、MD)で切り出し、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)で環化し、大腸菌Epicurian Sureコンピーテント細胞(Startagene、Inc.、La Jolla、CA)に形質転換させ、アンピシリンおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクドシド(X−gal)を含んだルリアブロス(LB)プレートに蒔いた。
【0059】
白いコロニーが選択され(そのようなコロニーは挿入物を持っていなければならないことに基づいて)、単一コロニー培養からのプラスミドDNAをQiagen プラスミド ミニプレップ プロトコールに従って分離した。精製プラスミドは EcoRI と HindIII(BRL)で消化した。これらの制限部位は挿入物の5’と3’末端にリンカーを連結反応させてライブラリー構築している間に加えられたもので、従ってEcoRI−HindIII消化により単離されたプラスミドに存在する挿入物が切り出される。これらのフラグメントは挿入物の大きさを決定するため0.7%アガロースゲルで電気泳動した。最大の挿入物を持つプラスミド(即ち、πFS17)が地図作製のため、およびクローンの同一性を確認するため、続いてSequenase 2.0 シークエンシング キット(United States Biochemical Corp.、Cleveland、OH)を用いての配列決定のために選択された。配列分析はMacVectorソフトウェアーパッケージ(International Biotecnologies、Inc.)およびGenBank Sequence Data Bank(Intellingenetics、Montain View、CA)を利用して行った。
【0060】
πFS17の配列分析は、配列ID番号:2の418個のアミノ酸をコードする長い読み枠(ORF)を持つ配列ID番号:1、典型的なATG開始コドンおよびポリアデニル化信号(配列ID番号:1には示されていない)からなる塩基配列を明らかにした。クローンのコード配列は前にPEDFペプチドとして決定された配列と全て正確に同一であった。演繹されるアミノ酸配列はシグナルペプチドとして働く事のできる親水性アミノ酸の広がりを含んでいる。コード配列とペプチド配列をGenBank Data Bankで比較するとPEDFはセルピン(セリンプロテアーゼ阻害剤)遺伝子ファミリー(ヒト[α]−1−アンチトリプシンを含んでいる)と有意な相同性を持つ独特のタンパク質である。この遺伝子ファミリーのある群は神経栄養性活性を示すけれど(Monard et al.(1983)Prog.Brain Res.、58、359−364;Monard(1988)TINS、11、541−544)、PEDFはセルピンの反応性ドメインの共通配列として提案されている配列を欠いている。
【0061】
(実施例3)
この実施例は組換え体PEDF生産のための発現ベクターの構築について記載している。
【0062】
発現ベクターは実施例2で述べたようにヒトPEDFの完全長cDNAを含むプラスミドπFS17を用いて構築した。PEDFをコードしている配列はベクターpEVBHを得るためにプラスミドpEV−vrf2(Crowl et al.、Gene、38、31−38(1985))中に存在するバクテリオファージ ラムダ PLプロモーターの制御下におかれた。このことはPEDFコード領域(即ち、配列ID番号:1のヌクレオチド245番から1490番)の部分を含むπFS17のBamHI−HindIII断片を得、EcoRI−HindIIIでプラスミドpEV−vrf2を消化し、BamHIとEcoRI末端をDNAポリメラーゼI(Klenow断片)で充填反応して両方の断片を平滑にし、生じた平滑端/適合終結断片を互いに結合させることにより達成された。得られたベクターpEV−BHはシャインーダルガノ(SD)配列とPEDFコード領域との間に8つのヌクレオチドの距離を有した。構築物は配列ID番号:3に示されているような379個のアミノ酸のタンパク質(rPEDFとして知られている)がコードされるようにMet−Asn−Arg−Lle−Asp44−−−−Pro418を特定している。rPEDFタンパク質のアミノ末端のアミノ酸は天然のPEDFには無く、pEV−BHの構築中に核酸が融合することで生ずるものである。
【0063】
pEV−BHによる組換えPEDFタンパク質の生産を立証するため、このプラスミドを、熱感受性λcIAt2リプレッサー(Bernard et al.(1979)Methods in Enzymology、68、482−492)の遺伝子を含む低コピー数適合プラスミドpRK248cItsを有する大腸菌RRI株(Maniatis et al.(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)で繁殖させた。タンパク質誘導はBecerra et al.(1991)Biochem.、30、11707−11719、に記載されているように実施されたが、以下のような変更を行った。pEV−BHを含んでいる細菌細胞は32℃、50μg/mlアンピシリンを含んだLB培地で早期対数増殖期(OD600nm=0.2)まで増殖させた。培養の温度は65℃の温浴中でフラスコをインキュベートさせる事で急激に42℃に上げ、細菌は続いて340rpmエアーフローインキュベーター中で2−3時間、42℃で増殖させた。一部を取り600nmで吸収度を読みとった。
【0064】
タンパク質誘導に続いて合成された初期タンパク質は放射性標識された。培養液が42℃に達したら、150μCiのL−[35S]メチオニン(1040Ci/mmol、Amersham Corp.、Arlington Heights、IL)を培養液ml当たりに加え、インキュベートを42℃で10分間および30分間続けた。細胞は遠心分離により回収し、TEN緩衝液(10mMトリス−HCl、pH 7.5、1mM EDTA、100mM NaCl)で洗浄した。総細菌抽出物からの35S−標識されたペプチドを再溶解し、SDS−12% PAGE続いてフルオログラフィーにより分析した。42,820Mrポリペプチドに対応するバンドが10分および30分の後誘導で検出された。pEV−BHによって発現した組換え体タンパク質の大きさはpEV−BHにサブクローンされたコード配列に期待される大きさと一致していた。同様の方法でより小さい断片(BP=28,000Mr;BX=24,000Mr;BA=9,000Mr)が合成でき、精製できる。BPペプチドはPEDFアミノ酸の44番目から269番目を含み、BXペプチドはPEFアミノ酸の44番目から227番目を含み、BAペプチドはPEDFアミノ酸の44番目から121番目を含んでいる。
【0065】
(実施例4)
この実施例は完全長PEDF cDNAを含んだ発現ベクターの構築について記載している。
【0066】
pEV−BVの構築について実施例3に記載された方法と類似の方法で、プラスミドπFS17のPEDF ORFがプラスミドpRC23とpEV−vrf1(Crowl et al.Gene、38、31−38(1985))中に存在するバクテリオファージラムダPLプロモーターの制御下におかれた。このことはPEDF cDNA(即ち、配列ID番号:1のヌクレオチド107から1490)の部分を含むπFS17のSfaNI−HindIII断片を得、EcoRI−HindIIIでプラスミドを消化し、DNAポリメラーゼI(クレノー断片)によるSfaNIとEcoRI末端の充填反応で平滑端化し、生じた平滑末端化/適合末端化断片をお互いに結合させることにより行った。得られたベクターpRC−SHおよびpEV−SHは、SD配列およびPEDFコード領域の間に各々14と8個のヌクレオチドの距離を置いていた。構築物pRC−SHは完全長PEDF ORF、配列ID番号:2に示したように天然に存在するアミノ末端を持つ418のアミノ酸のPEDFタンパク質を特定している。構築物pEV−SHは、完全長のPEDFORFを含み、配列ID番号:2のPEDF配列の前にMet−Asn−Glu−Leu−Gly−Pro−Arg(配列ID番号:8)を持つ425個のアミノ酸のPEDFアミノ末端融合タンパク質を特定する。これらのつけ加えたアミノ末端のアミノ酸は天然のPEDFでは生ぜず、これらの付加アミノ酸を特定するpEV−SHのコドンはpEV−SHの構築中に核酸の融合によって生じる。
【0067】
2つのベクターによって特定される組換え体タンパク質の生産を確認するため、ベクターを大腸菌株RRI(pRK248cIts)に導入し、例3に示した方法と類似の方法で誘導し、その間の35S−メチオニンによる代謝標識により、タンパク質誘導が実施され、モニターされた。誘導されたpRC−SHおよびpEV−SHによって特定されたタンパク質の発現は、細菌細胞の増殖に負の効果を持っていた。親のプラスミドを含んだ細菌培養と比較すると、pRC−SHおよびpEV−SHを含んだ細菌培養はより遅く増殖し、分割した。この細菌の増殖に対する負の効果は、開始コドンとSDの間の距離に関連があり、そのことはそのような距離を短くする事でより効率の良い組換え体タンパク質の翻訳につながることを示唆する。PEDFの46,000Mrの候補ポリペプチドは、pRC−SHとpEV−SHを含む細菌培養中の培養液や細胞溶解物には検出されなかった。しかしながら、35,000Mrタンパク質はpRC−SHとpEV−SHを含む培養物の抽出物に見られたが、親プラスミドを含んだ培養物の抽出物には見られなかった。この事はPEDFのアミノ終末末端はプロテアーゼ感受性であり、組換え体完全長PEDFはこの特定の宿主中で代謝されるという事を示唆している。もしくは、期待された大きさの組換え体PEDFタンパク質が観察されなかった事は実験上の人為的結果によるものを反映していると思われ、代わりの発現ベクター、宿主、誘導可能プロモーター、サブクローニング部位、組換え体タンパク質の単離または検出の方法あるいはタンパク質誘導の手段を用いることで克服できるであろう。
【0068】
(実施例5)
この実施例は組換えにより生成されるPEDFを大量に生成する方法について記載している。
【0069】
rPEDFを含んでいる総重量が1gの大腸菌を50mlの20mMトリス−HCl、pH7.5、20% シュークロース、1mM EDTAに懸濁した。細菌は氷の上に10分間放置し、4000xgで遠心分離して沈降させ、50mlの氷冷した水に10分間懸濁させた。溶解した外側の細胞壁は8000xgで遠心分離してスフェロプラストから分離した。
【0070】
ペレット状のスフェロプラストは5mM EDTA、1μg/mlペプスタチンおよび20μg/mlのアプロチニンを含む10mlのリン酸緩衝液(PBS)に再懸濁させた。懸濁液は細胞膜を破壊するためソニケーター(Ultrasoics、Inc.、モデルW−225)でプローブ音波処理を行った。30秒の間を置きながら30秒パルスで三回破壊し、この処理中、試料は氷水中に浸して行った。RNase TI(1300ユニット、BRL)およびDNase I(500μg,BRL)を音波処理された細胞懸濁液に加え、懸濁液は10分間室温でインキュベートした。この懸濁液は5mM EDTA、1μg/mlペプスタチン、20μg/mlアプロチニンを含むリン酸緩衝液(PBS)40mlを加えて希釈し、粗封入体は13,000g、30分間遠心分離で沈降させた。封入体を構成している粒子性物質は25%シュークロース、5mM EDTAおよび1% トリトンX−100を含んでいる40mlのPBSに再懸濁し、氷上で10分間インキュベートし、24,000xgで10分間遠心分離した。洗浄工程は3回繰り返した。最終的に、封入体は50mMトリス−Cl、pH8.0、5Mグアニジン−Clおよび5mM EDTAを含んでいる変性緩衝液10mlに再懸濁させた。懸濁液は氷水中で5秒間、手短にプローブ音波処理した。得られた懸濁液は氷上でさらに1時間インキュベートした。12,000xg、30分間遠心分離後、上清を50mMトリス−Cl、pH 8.0、20% グリセロール、1mM DDT、1μg/mlのペプスタチンおよび20μg/mlのアプロチニンを含む復元緩衝液100mlに加え、タンパク質を復元するため4℃で一晩中静かにかき混ぜた。可溶および不溶分画は13,500xgで30分間の遠心分離により分離された。
【0071】
可溶性分画はそれらをCentricon 30微量濃縮機(Amicon Div.、W.R.Grace & Co.、Berverly、MA)を用いて1mlに濃縮する事でさらに精製し、それは緩衝液A(50mM リン酸ナトリウム、1mM DTT、20% グリセロール、1mM EDTA、1μg/mlペプスタチン、1mMベンズアミジン)に対して4℃で3時間透析をした。透析抽出物はEppendorf Centrifuge(モデル5415C)で14,000rpmで10分間、遠心分離した。上清分画は緩衝液Aで予め平衡化したS−Sepharose fast−flow(Pharmacia、New Market、NJ)カラム(1mlベッド容量)に層積した。カラムは2倍のカラム容量の緩衝液Aで洗浄した。最終的に、組換え体rPEDFは緩衝液Aに50、100、150、200、300、400、500、1000mMのNaClを加えて段階的濃度勾配で溶出させた。1mlの分画を重力流出によって回収され、緩衝液Aに対して透析した。組換え体rPEDFを含む分画300は−20℃で保存した。分画300の回収率は細胞パック1g当たり50μgで、それは総タンパク質の25%に値する。
【0072】
rPEDFの殆どは6Mグアニジウム−Clを含む10mlの緩衝液B(50mMトリス−Cl、pH8.0、1mM DTT、2mM EDTA)に分画を溶解することにより不溶性分画から回収された。溶液は10,000xgで5分間、遠心分離した。その上清は4M グアニジウム−Clを含む緩衝液Bで予め平衡化した2つのSuperose−12(Pharmacia、New Market、NJ)カラム(各々2.6cmx95cm)を縦列につないだ物の上に層積した。流速は3ml/分であった。Superose−12カラムから得られた組換え体rPEDFを含んでいる分画はプールし、緩衝液C(4M尿素、50mMリン酸ナトリウム、pH6.5、1mMベンズアミジン、1μg/mlペプスタチン、4mM EDTA)に対して透析した。透析分画は0.22μmフィルター(Miller−GV、Millpore Corp.、Bedford、MA)を通過させた。濾液は緩衝液Cで予め平衡化したmono−S(Pharmacia、New Market、NJ)カラム(1cmx10cm、dxh)に層積した。カラムは緩衝液Cで洗浄し、組換え体rPEDFは0.5ml/分で緩衝液C中の0mM−500mM NaCl濃度勾配で溶出させた。2mlずつの分画を回収し、組換え体rPEDFのピーク分画をプールした。プールした分画中の回収率は細胞パック1g当たり0.5mgの組換え体rPEDFであった。
【0073】
(実施例6)
この実施例は精製組換え体PEDFの分化因子としての使用について記載している。
【0074】
Y79細胞(ATCC、HTB18)は15%ウシ胎児血清と抗生物質(10000u/mlペニシリンおよび10mg/mlストレプトマイシン)を補給したアール塩を含むイーグル最少必須培地(MEM)中、37℃、5%CO2の加湿されたインキュベーターで増殖させた。細胞はATCCから受容後、2回継代して繁殖させ、10%DMSOを含む同じ培養液で凍結させた。凍結物の一部を各々の分化の実験に用いた。全ての実験は二回反復で行った。
【0075】
融解後、細胞は継代することなく適当な細胞数になるまで血清含有培地に維持された。細胞は遠心分離で回収し2倍量のPBSで洗浄し、PBSに再懸濁して、計数した。その時点で、2.5x105の細胞を2mlの無血清培地(MEM、1mM ピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES、1X非必須アミノ酸、1mM L−グルタミン、0.1% ITS混合物(5μg/mlインシュリン、5μg/mlトランスフェリン、5ng/mlセレン、Coliabrative Research、Bedford、MA)および上記の抗生物質が補給されている)を含む6ウェルプレート(Nanc、Inc.、Roskilde、Denmark)の各々のウェルに播種した。
【0076】
分化エフェクターと対照緩衝液は播種後12−16時間後に加え、培養液はインキュベートし7日間静置した。8日目に、細胞はポリD−リシン被覆6ウェルプレート(Collaborative Research、Bedford、MA)に移し、細胞が基質に付着したころ古い培養液を2mlの新鮮な無血清培地と入れ替えた。培養液はこの状態に11日間保った。付着後、培養物は毎日Olympus CK2位相差顕微鏡を用いて分化の形態学的証拠を調べ、ならびに神経芽成長を定量した。
【0077】
非処理の細胞と比較すると、組換え体rPEDFに暴露されたY79培養細胞のみが神経的分化の有意な証拠を示した。いくらかの神経芽成長(5%以下)はrPEDFの溶解に用いたものと同一の緩衝液で処理した対照培養で検出されたが、rPEDFまたは緩衝液を加えずに同じ方法で処理した培養では分化の証拠は観察されなかった(図22A、”対照”)。rPEDF処理培養細胞の位相差顕微鏡は、細胞凝集体の50−65%はポリ−D−リシンへの付着3日目後に神経芽伸長が観察されたことを示した(図22B、”PEDF”)。これらの3日目の神経芽伸長は、細胞凝集端で西洋なし型の細胞からの短い突起として現れた。分化している凝集体の数、凝集体あたりの分化している細胞の数、および神経芽様過程は付着時間とともに増加した。付着5日後、凝集体の約75−85%が分化の徴候を示し、それらの周辺細胞のほとんどから神経芽が伸長していた。rPEDF処理培養物は付着7日後に分化の最大に達し、85−90%の細胞が凝集していた。その時点で、2通りの神経性過程が観察された、即ち、3日目に観察された神経芽より2−3倍長い単一の神経芽が互いに離れた凝集体の周辺細胞から伸長しており、より長く且つより薄い突起が隣り合う細胞凝集体間で枝状のネットワークを形成していた。インキュベーションを長くすると、即ち、付着して10日を超えると、ネットワーク連結の割合に著しい減少があり、単一の神経芽のさらなる成長は無いが、細胞凝集体の生存率には著しい影響はなく、約75−80%が別々の実験で残存していた。図23で見られるように精製天然PEDFおよび組換え体PEDF(rPEDF)との間に違いは観察されなかった。
【0078】
PEDFおよびrPEDF cDNAクローンは大量のPEDFとrPEDFタンパク質生産の手段を供給するだけでなくPEDF遺伝子の発現や制御を研究ために使用できる材料としても利用できる。更に、これらの配列は内因性PEDFの翻訳を阻害するための翻訳停止のアンチセンス技術に用いる事が出来る。
【0079】
組換えにより生産されたPEDFおよびrPEDFタンパク質および等価なタンパク質はインビトロおよびインビボにおいて強力な神経栄養性作用物として利用できる。神経栄養性作用物としてのこれらのタンパク質のさらなる生化学的活性は標準インビトロ試験で決定でき、網膜の炎症性、血管性、消耗性、異栄養性疾病の処置におけるこれらのタンパク質の別の治療的使用の開発を可能にする。これらのタンパク質が強力な神経栄養性作用物と仮定すると、これらのタンパク質を、神経栄養性因子に応答する網膜以外の他の組織の処置に治療的有用性がでるように改良できるであろう。これらのタンパク質は非神経性組織およびある種のがんの”分化”因子としてより一般的な有用性を見つける事も出来るであろう。
【0080】
(実施例7)
分子量3000の組換え体PEDFと共に、より小さな組換え体が合成され、神経栄養性活性を持つかどうか決定された。より小さなペプチドは完全長構築物よりも、高い溶解性、よりよい膜透過性、より低い抗原性、製造の容易さなど様々な利点を与える。
【0081】
図23には試験されたうち3つの組換え体のみが示されている。BP、BXおよびBAはそれぞれ28,000、24,000、9000の分子量であり、C末端欠失変異体を表わしている。これら全部が図21および22に描かれているものと同様な神経栄養性活性を示す。ここにおける新規の発見は、9000の分子量のペプチド(天然のタンパク質の全分子量のたったの約20%)が驚くべき神経栄養性活性を示した事であった。その上、活性な神経栄養性ペプチドはセルピン活性部位を含むことが知られているC末端側でなくN末端側に配列を示した。従って、活性部位はN末端であり、そのような小さな分子で活性が現れる事は驚くべき発見であり、このような事は従来の発見からは予期できない事である。
【0082】
【表1】
【0083】
表1:エクソンは大文字およびイントロン配列は小文字である。5’ドナーGTおよび3’アクセプターAGは下線が施してある。エクソンおよびイントロンサイズは各々bpおよびkbで与えられている。
【0084】
(実施例8)
(ヒトPEDF遺伝子のコローニングおよび配列決定)
材料−制限酵素、SuperScriptTM RTおよびカナマイシンはGIBCO−BRL(Gaithersburg,MD)から購入された。DynabeadsTMオリゴ dT(25)はDynal Inc.(Lake Success,NY)から購入された。RetrothermTM RTはEpicentre Technologies(Madison,WI)から得られた。RNAsinTMはPromega(Madison,WI)から購入された。TaqポリメラーゼはPerkin−Elmer(Norwalk,CT)またはStratagene(La Jolla,CA)から購入された。サブクローニングに使用するプラスミドベクターpBlueScriptはStratagene(La Jolla,CA)から購入された。神経網膜および網膜色素上皮からの全RNAは文献に記載されているように(Chomczynki and Sacchi,1987)、National Disease Research Interchange(NDRI,Philadelphia,PA)から得られたヒト組織から精製された。標識および配列決定に使用された[32P]α−dATPおよび[32P]γ−ATP(3000 Ci/mmol)はAmersham(Arlington Hts,IL)から購入された。Superbroth(バクトートリプトン 12g/L、酵母抽出物 24g/L、K2HPO412.5g/L、HK2PO43.8g/Lおよびグリセロール5mL/L)、変性溶液(0.2N NaOH、1.5M NaCl)、中和溶液(1Mトリス−Cl pH7.0、1.5M NaCl)、20X SSC(3.0M NaCl、0.3mMクエン酸ナトリウム)、10X TBE(1Mトリス−ホウ酸、2mM EDTA、pH8.3)および50X TAE(2Mトリス−酢酸、50mM EDTA、pH 8.0)はQuality Biologicals(Gaithersburg,MD)から購入された。20X SSPE(3M NaCl、0.2M NaH2PO、20mM EDTA pH7.4)はDigene Diagnostics,Inc.(Silver Spring,MD)から購入された。アンピシリンはSigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から購入され、水に溶解し、フィルター滅菌された。
【0085】
(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))
2X PCR混合物は1.6μモル/mLのGeneAmpTM dNTPs(各々400M)、2X GeneAmpTM PCR緩衝液および50U/mLのTaqポリメラーゼを含むように調製された。これらの試薬はPerkin−Elmer(Norwalk,CT)から購入された。一般に、鋳型およびオリゴヌクレオチド(各々のオリゴの100ng)は25μLの容量で混合され、25μLの2X混合物、続いて50μLの鉱油が加えられた。鋳型は、最初の変性が95℃で2分間、30秒のアニーリング(プライマーに依存して55から65℃の間)、および伸長が72℃にて増幅された生成物に依存して1−5分であった。
【0086】
(DynabeadsTM オリゴ dT(25)上でのcDNA合成)
以前に記載されているように(Rodrigues and Chader 1992)cDNAがDynabeads上で合成された。Dynabeads(0.5mg)を100μLの10mMトリス−Cl pH7.0、1mM EDTA、1M KClで洗浄した。全RNA水溶液30μL(30μg、約1μL)を30μLの上記緩衝液および平衡化Dynabeads(0.5mg)と混合し、55℃で2分間加熱した。ポリ+A RNAを室温で15分間ビーズにアニール化し、ビーズをMPC−E磁気セパレーター(Dynal Inc.)へ結合させることにより過剰のRNAを除去した。アニール化されたポリ+A mRNAを持つビーズは次に2.5μLの緩衝液A(200mMトリス−Cl pH8.3、1.0M KCl)、2.5μLの緩衝液B(30mM MgCl2、15mM MnCl)、20μLの10mMdNTP(各々2.5mM)1μLのRNAsin、2μLのSuperScript RT、5μLのRetrotherm RT(1単位/μL)および16μLのH2Oに懸濁し、最終容量を50μLとする。反応混合物は40℃で10分、続いて65℃で1時間インキュベートした。ビーズを再びMPC−E磁気セパレーターへ結合させ、過剰のRT反応混合物を除去した。ビーズは次に100μLの0.2N NaOHで1回、10X SSPEで1回および1X TEで2回洗浄した。cDNA含有ビーズは最終容量で100μLの1X TEに懸濁した。
【0087】
(cDNA末端の5’急速増幅(RACE))
Clontechから購入された5’−AmpliFINDER RACEキットに基づく改良法を用いて5’−RACEが実施された(Rodriguesら、1994)。最初に、cDNAが上記のように(Rodrigues and Chader 1992)DynabeadsTM オリゴ dT(25)上で合成された。AmpliFINDERアンカープライマーが5’プライム末端のPCR増幅のためPEDF特異的プライマー#2744と組み合わせて使用された。増幅は上記のように行われ、2μLのアンカー結合ヒト網膜色素上皮−Dynabeads cDNAが鋳型として使用された。増幅は30サイクル行われた。
【0088】
(オリゴヌクレオチドの配列)
オリゴヌクレオチドプライマーはAplied Biosystems Inc.(Foster City,CA)DNA合成機モデル392により合成された。オリゴヌクレオチドは脱保護され、さらに精製することなく使用された。
【0089】
(ゲノムライブラリーのスクリーニング)
ヒトゲノムコスミドライブラリー(Clontech)を150mg/mLアンピシリン、20mg/mMカナマイシンを含むLBプレートにプレート当たり10,000コロニーの密度で播種された。コロニーを拾い上げるのにニトロセルロースフィルターが使用され、フィルターはSambrookら(1989)に記載されているように処理されハイブリダイズされた。ライブラリーはT7/T3プライマーを用いてPEDF cDNAクローンから得られた[32P]標識PCR生成物(Steeleら、1993)で探査した。この結果、p10Aコスミドが単離された。λDASHTMIIライブラリー(Stratagene)が上記のPEDF cDNAクローンのインサートを用いてLark Sequencing Technologies Inc.(Houston,TX)によりスクリーンされた。この結果、7kb NotI−Not断片(JT6A)が単離された。全PEDF遺伝子および隣接する領域を含むP−1クローン(p147)は、オリゴ1590/1591を用いてGenome Systems(St.Louis,MO)により単離された。
【0090】
(PCR生成物のクローニング)
PEDF cDNAの内部コード領域から設計された4組のプライマー、603:604;605:606;2238:354および2213:2744が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)実験のプライマーとして使用するために上記のように合成された。プライマー配列は以下の様である:603:5’−ACA AGC TGG CAG CGG CTG TC−3’(配列ID番号:13)、604:5’−CAG AGG TGC CAC AAA GCT GG−3’(配列ID番号:14);605:5’−CCA GCT TTG TGG CAC CTC TG−3’(配列ID番号:15)、606:5’−CAT CAT GGG GAC CCT CAC GG−3’(配列ID番号:16),2213:5’−AGG ATG CAG GCC CTG GTG CT−3’(配列ID番号:17)、2744:5’−CCT CCT CCA CCA GCG CCC CT−3’(配列ID番号:18);2238:5’−ATG ATG TCG GAC CCT AAG GCT GTT−3’(配列ID番号:19),354:5’−TGG GGA CAG TGA GGA CCG CC−3’(配列ID番号:20)。プライマー603:604および605:606で生じたPCR生成物の増幅、サブクローニングおよび配列決定はヒトゲノムDNAを鋳型として用いてLark Sequencing Technologies Inc.により実施された。603:604からの生成物は約2kb(jt8A)であり、エクソン3からエクソン5へ伸びている。605:606からの生成物は約3.3kb(jt 9)であり、エクソン5からエクソン6へ伸びている。プライマーの組2213−2744はP1クローンp147からの約2.5Kb生成物(jtl5;JT115とも称される)の増幅に用いられた。この生成物はサブクローニングおよび配列決定のためLark Sequencing Technologies Inc.に送られた。2238:354プライマーはイントロンEをまたぐエクソン6からエクソン7の増幅に使用された。この生成物はサブクローン化されなかったが、我々により直接および完全に配列決定された。
【0091】
(DNA配列決定)
P−1クローン(pl47)、このクローンのサブクローンおよびこのクローンのPCR生成物が配列決定された。ほとんどの配列決定は標準配列決定技術を用いてLark Sequencing Technologies Inc.により実施された。すべての重要な領域(例えば、イントロン−エクソン境界)およびクローン間の連結は我々の実験室で配列決定された。PCR生成物からのDNAはPromega Corp.(Madison,WI)から購入されたWizardTM PCR Preps DNA精製キットを使用して配列決定のために精製された。P−1クローンおよびプラスミドサブクローンはQiagen Inc.(Chatsworth,CA)Midiプラスミド精製キットを使用して精製された。精製PCR生成物およびプラスミドはPRISMTM DyeDeoxy Terminator Cycleシークエンシングキット(Applied Biosystems a Division of Perkin−Elmer Corp.,Foster City,CA)を用い、使用説明書に従って配列決定された。典型的には、配列決定反応当たり0.5ピコモルの鋳型および3ピコモルのプライマーが使用された。配列決定反応生成物はSelect−D G−50カラム(5プライム−3プライム;Boulder,CO)を用いて精製され、乾燥された。次に各々の試料を5μLのホルムアミド、1μLの50mM EDTAに溶解し、モデル370A Automated Fluorescent Sequencer(ABI,Foster City,CA)中で加熱し、分析した。すべてのスプライス−部位連接(ジャンクション)、イントロンFおよびクローンを横切った連接が配列決定された。
【0092】
(サザンブロット)
種々の種からのDNAのEcoRI消化ゲノム(8μg)ブロットはBIOS Laboratories,New Haven,CTから購入された。ブロットは標準技術(Sambrook et al.,1989)を使用し、PEDF cDNAで探査された。
【0093】
(PEDFの5’RACE)
5’RACEは上記のようにアンカーオリゴをDynabeads上で前もって合成されたヒト網膜色素上皮cDNAへ結合させることにより実施された。5’末端はアンカープライマー(AmpliFinderのキット)およびPEDF−特異的プライマー2744を用いて増幅された。増幅は30サイクル行われた。一つの主要なバンドが約230bpに観察された。PCR生成物はpGEM−T(Promega Corp.,Madison,WI)にクローン化され、配列決定された。これらのクローンの内最も長いものはPEDFの5’末端から20bp伸びていることが観察された。
【0094】
(PEDF遺伝子の単離)
PEDF遺伝子はプライマー1590および1591(1590:5’−GGA CGC TGG ATT AGA AGG CAG CAA A−3’(配列ID番号:23);および1591:5’−CCA CAC CCA GCC TAG TCC C−3’(配列ID番号:24))を用い、Genome Systems(St.Louis,MO)によりP−1クローン(pl47)に単離された。このクローンが全PEDFを含んでいるかどうかを決定するため、pl47およびヒトゲノムDNAの両方がBamHI、EcoHI、HindIIIおよびPstIで消化され、続いてパルスフィールド装置中、アガロースゲル電気泳動により分離された。アガロースゲルはブロットされ、PEDF cDNAクローン(Steeleら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1526−1530)で探査した。P−1クローンとゲノムDNA間のバンドパターンの比較は全PEDF遺伝子がこのクローンに含まれていることを示している。さらに、この結果はPEDFには一つの遺伝子のみが存在することも示している。
【0095】
(PEDF遺伝子の配列)
遺伝子のスケール地図が図1に示されている。PEDF遺伝子はその全部が配列決定された(配列ID番号:43)。クローンjt1、jt14、jt6Aおよび関連するPCR生成物(jt15、jt8Aおよびjt9)(図1)はLark Sequencing Technologies Inc.により配列決定された。遺伝子の残りの部分はp147クローンを鋳型として用いて遺伝子の異なった部分を増幅することにより配列決定された。すべてのエクソン、イントロン−エクソン連接(ジャンクション)および全イントロンFはP−1クローンp147より発生するPCR生成物から上記のように我々の実験室で両方の方向で配列決定された。エクソン1から下流のNotI部位はそれをまたいで増幅し、生成物を配列決定することにより確認された。遺伝子は約16Kbにわたり、8つのエクソンを持っている。すべてのイントロン−エクソン連接はAG/GT規則に従っている。イントロン−エクソン連接および隣接する配列は表1に示されている。
【0096】
jt1:ヒトゲノムコスミドライブラリー(Clontech)から単離された7.1kbコスミドクローンで、PEDF遺伝子のエクソン7、エクソン8および3’隣接領域を含んでいる。このクローンの5’末端は(約2.1kbの領域)PEDFの部分ではない。これは明らかにコスミドの転位(リアレンジメント)により起きたものである。このクローンは全部Lark Sequencing Technologies Inc.により配列決定された。
【0097】
jt6A:λDASHIIヒトゲノムライブラリー(Stratagene)からLark Sequencing Technologies Inc.により単離された7.2kbNotI断片である。このクローンはPEDF遺伝子の>6kbの5’隣接領域、エクソン1およびイントロンAの424bpを含んでいる。このクローンは全部Lark Sequencing Technologies Inc.により配列決定された。
【0098】
jt8A:このクローン化PCR生成物JT8Aはプライマー603:604を用いてゲノムDNAから発生させた。このクローンはエクソン4およびイントロンCおよびDを含みエクソン3からエクソン5まで伸びている。全部Lark Sequencing Technologies Inc.により増幅、クローン化および配列決定された。
【0099】
jt9:このクローン化PCR生成物JT8Aはプライマー605:606を用いてゲノムDNAから得られた。このクローンは全イントロンEおよびエクソン5およびエクソン6の一部を含んでいる。全部Lark Sequencing Technologies Inc.により増幅、クローン化および配列決定された。
【0100】
jt15:このクローンはp147からのプライマー対2213:2744を用いて増幅されたPCR生成物から得られた。このクローンはイントロンBをまたいでエクソン2からエクソン3まで伸びている。PCR生成物はサブクローニングおよび配列決定のためにLark Sequencing Technologies Inc.に送られた。
【0101】
P1クローンp147:このクローンはオリゴヌクレオチド1590:1591を用いてGenome Systems Inc.により単離された。このクローンはイントロンFの配列(2238:354)およびサブクローンjt14を得るために使用された。また、上記のクローンから最初に得られたイントロンーエクソン境界を確認するためにも使用された。イントロン特異的オリゴを用いてすべてのエクソンおよびイントロン境界が増幅され(鋳型としてp147を用いて)、生成物が配列決定された。すべてのスプライス連接配列ならびにイントロンおよびエクソンの大きさが確認された。
【0102】
jt14:これはイントロンAのほとんど、エクソン2およびイントロンBの一部を含むp147のサブクローンである。このクローンは我々によって単離され配列決定のためにLark Sequencing Technologies Inc.に送られた。
【0103】
従って、上記のクローンおよびPCR生成物のすべての配列分析によりヒトPEDF遺伝子の構造およびエクソンおよびイントロンの大きさが決定された。すべての連接の5’スプライスドナーおよび3’スプライスアクセプター部位はGT/AGコンセンサスに従っている。
【0104】
(実施例9)
(PEDFプロモーターの分析)
PEDFを制御しているであろう可能な転写要素についてのいくらかの理解、PEDF発現についてのさらなる実験のための手引きを得るためにPEDF5’隣接領域(図3)の理論的分析を実施した。PEDF遺伝子の5’隣接領域には古典的TATAAA信号またはTATA−ボックスが欠けている。しかしながら、重要な転写因子により認識されるいくつかの興味ある特色および要素が含まれている。−164から−591および−822から−1050に2つのAlu反復要素が存在する。Alu領域の外側に、共通のATGCAAAT(Parslow et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:2650−2654;Falkner et al.(1984)Nature 310:71−74;Sturm et al.(1988)Genes & Devel.2:1582−1599;Faisst and Meyer(1992)Nuc.Acids Res.20:3−26)から1塩基異なった転写因子の偏在するオクタマーファミリー(Oct)のための2つの可能な部位が−29(ATCCAAAT)および−113(GTGCAAAT)に存在する。興味を引くもう一つの要素が−62に位置している。この要素、GTAAAGTTAACはHNF−1(肝細胞核因子)に結合している共通GTAATNATTAACに似ている(Frain,M.,et al.(1989)Cell 59:145−147)。これは多くの有力な肝臓遺伝子をトランス活性化するホームドメイン含有転写因子であるが(Kuo et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9838−9842)、内胚葉性分化への関連が示唆されている(Baumhueter et al.(1990)Genes Dev.4:371−379)。−202の配列TCAGGTGATGCACCTGCはAP−1により認識されレチノイン酸によりトランス活性化されるであろう人工的パリンドローム配列(TREp)TCAGGTCATGACCTGA(Umescono et al.(1988)Nature 336:262−265;Linney(1992)Curr.Topics in Dev.Biol.27:309−350)に非常に類似している。−22の配列TGAGTGCAおよび−207のTGATGCA(TREp内)はAP−1共通配列TGACTCA(Schule,et al.(1990)Cell 61:497−504)に類似している。TREp内に含まれる−204の配列AGGTGATGCACCTもまたその共通配列がAGGTCATGACCTである発生的に制御されたRAP(レチノイン酸受容体)モチーフ(Faisst and Meyer(1992)Nuc.Acids Res.20:3−26)に類似している。PEA3要素(ポリオーマウイルスエンハンサー活性化因子3)AGGAAG/A(Martin et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5839−5843;Faisst and Meyer(1992)Nuc.Acids Res.20:3−26)が縦列に−122および−129続いて再び−141に存在している。PEA3は転写因子ETSファミリーのメンバーであり(Macleod et al.(1992)TIBS 17:251−256)、その活性は非核癌遺伝子により制御されているようである(Wasylyk et al.(1989)EMBO J.8:3371−3378)。最も興味深い要素の1つは−654に配列GTGGTTATGと共に位置する。この要素は転写因子のC/EBP(CAATエンハンサー結合タンパク質)ファミリーにより認識される共通配列GTGGT/AT/AT/AG内にある(Faisst and Meyer(1992)Nuc.Acids Res.20:3−26)。この因子は成人表現型へ導く最終分化に関与するようである(Vellanoweth et al.(1994)Laboratory Investigation 70:784−799)。3つの可能なCACCCボックスが存在し、1つは−845に、および2つは逆の配向で−826および−905に存在する。これらはすべてAlu反復内にある。可能なSpl部位(CCCGGC)がAlu反復前の−153にあり、共通Spl部位GGCGGGがAlu反復の内側−1030に存在する。
【0105】
(実施例10)
(培養細胞におけるPEDF mRNAの発現)
(遺伝子発現分析)
レーン当たり2μgのポリ−(A)RNAを用い多ヒト組織mRNAノーザンブロット(Clonetech)が放射活性化標識667bpPCR増幅生成物(Tombran−Tink et al.,1994 Genomics,19:266−272)でハイブリダイズされた。ブロットはQuickHyb急速ハイブリダイゼーション溶液(Stratagene,La Jolla,CA)中、68℃で15分前もってハイブリダイズし、5x106cpm DNA/mlを含む同一の溶液中、68℃で1時間ハイブリダイズした。ハイブリダイズされたブロットは2回100mlの2XSSC、0.1%SDSにて室温で15分間、さらに1回200mlの0.1XSSC、0.1%SDSにて68℃で30分間洗浄した。ブロットはKodax XAR−5フィルムおよびDupont補力スクリーンを用いて、−70℃で2時間オートラジオグラフィーを行った。
【0106】
(遺伝子発現)
PEDFメッセンジャーRNAの発現が培養ヒト胎児RPE細胞以外のヒト組織で起こっているかどうかを決定するために、試験された各々の組織に対し等量のポリ−(A)RNA含んでいる多組織ヒト成人および胎児RNAブロットを分析した。結果は表4に示されている。PEDFプローブは分析された16の成人組織の14で種々の強度のハイブリダイゼーションの単一の1.5kb転写体を同定した。成人腎臓または末梢血白血球では信号が検出されなかった。成人脳、膵臓、脾臓および胸腺で弱い信号が観察できた。PEDFメッセンジャーRNAに対する多量のハイブリダイゼーションがヒト成人肝臓、骨格筋、精巣および卵巣で観察された。驚くべきことに、全脳RNAでは非常に弱い信号しか観察されなかった。試験された胎児組織では、非常に強いPEDF信号が肝臓組織で観察され、興味深いことには成人腎臓試料ではPEDFハイブリダイゼーションがなかったのに比較して胎児腎臓では有意に強度で信号が観察された。
【0107】
成人組織で単一の1.5kb転写体が観察されたのと対照的に、胎児心臓、肺および腎臓で500bp未満の追加の副転写体が低強度で種々に標識された。これは、mRNAの部分的分解、または選択的スプライスのためと思われる。PEDFはまた早期継代のサルRPE細胞でのみ発現され(1−5の継代数)、後期継代細胞(10継代)では発現されなかった。これらの結果は老化へのPEDFの関連を示している。
【0108】
(実施例11)
(種々の系統発生的関連種におけるPEDFの比較分析)
(進化的保存分析)
多数の哺乳類および霊長類種を含む種々の種のリンパ球からのゲノムDNA(BIOS laboratories,New Haven CT)の8μgをEcoRIで消化し、1%アガロースゲルで分離した。ゲルはトランスブロットされ、消化されたDNAを含む膜はノーザン分析と同一の方法および条件を用いてハイブリダイズした。
【0109】
進化的保存:
若干の系統発生的に関連する種間のPEDFの進化的保存が試験された。結果は図5に示されている。これらの高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件を用いると、鳥類、哺乳類および霊長類で約23kbの大きなEcoRI制限断片が観察された。おそらく使用されたヒトPEDFプローブとの低い相同性のためであろうが、より下等な種ではハイブリダイゼーションは観察されなかった(図5A)。ニワトリおよびマウスのEcoRI断片はヒトのものより幾分小さい。試験されたいくつかの哺乳類種において興味ある制限パターンが現れた(図5B)。6kbから2kbの間の大きさの範囲にいくつかのより小さな制限断片が観察された。試験されたすべての霊長類種で9kbから23kbの間の大きさの範囲により大きな断片が観察され、それは約9kbに追加の強くハイブリダイズする多形断片を持っている。
【0110】
(実施例12)
(培養における小脳顆粒細胞に対する色素上皮誘導因子の神経細胞栄養性効果細胞培養)
小脳顆粒細胞(CGC)はNovelliら(1988,Brain Res.,451:205−212)により記載されているように生後5または8日のSprague−Dawleyラット子供から調製された。簡単に記すと、髄膜を含まない組織を124mM NaCl、1mM NaH2PO4、1.2mM MgSO4、3mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)、27μMフェノールレッドおよび25mM HEPES(pH7.4)を含む緩衝液中で切り刻み、550xgで3分遠心分離した。10−20匹の動物からの組織ペレットを再懸濁し、250μg/mlトリプシンを含む同一の緩衝液30ml中でトリプシン分解し(15分、37℃);26μg/mlのDNaseI、166μg/mlの大豆トリプシン阻害剤および0.5mMの追加のMgSO4を含む緩衝液をさらに15ml加えて上記のように組織を再び遠心分離した。ペレットを80μg/mlのDNase、0.52mg/mlのトリプシン阻害剤および1.6mMの追加のMgSO4を補給した1mlの緩衝液に再懸濁し、パスツールピペットで60回砕いた。0.1mMのCaCl2および1.3mMの追加のMgSO4を含む緩衝液2mlで懸濁液を希釈し、非分散物は5分間放置して沈澱させた。上清を別のチューブに移し、細胞は軽く遠心分離し、血清含有培地(25mM KCl、2mMグルタミン、100μg/mlゲンタマイシン、および10%熱不活性化ウシ胎児血清を含むイーグル基本培地)または化学的に決められた培地(5μg/mlインシュリン、30nMセレン、100μg/mlトランスフェリン、1000nMプトレシン、20nMプロジェステロン、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、および2mMグルタミンを含むDMEM:F12(1:1))(Bottenstein,1985 CellCulture in the Neuroscience,J.E.Bottenstein and G.Sato,eds.New York Plenum Publishing Corp.p.3−43)に再懸濁して回収した。細胞をポリ−L−リシン被覆96ウェルプレート(MTSアッセイおよび神経フィラメントELISAアッセイのため)または8ウェルチャンバースライド(免疫細胞化学およびBrdU標識のため)に2.5x105細胞/mlで加え、5%CO2を含む空気からなる雰囲気下、37℃で増殖させた。培養1日後、血清補給培地中の細胞にのみシトシンアラビノシド(Ara−C)を加えた(最終濃度50μM)。
【0111】
(MTSアッセイ)
96ウェルプレート中の小脳顆粒細胞をMTS(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩)およびPMS(フェナジンメトスルフェート)(最終濃度;333μg/ml MTSおよび25μM PMS)(Promega Corp.)と4時間CO2インキュベーター内でインキュベートした。PMS存在下、MTSは代謝的に活性な細胞に観察されるデヒドロゲナーゼ酵素により水可溶性ホルマザンに変換される(Coryet al.(1991)Cancer Comm,3:207−212)。ホルマザン生成物の量は分光学的に490nmで決定した。
【0112】
(免疫細胞化学)
インビトロでの日数(DIV)で7日後、細胞をカルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで10分間、続いて−20℃にて95%エタノール/5%酢酸で10分間固定した。NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)に対する一次抗体、GABA、カルビンジン、またはグリア原線維性酸性タンパク質(GFAP)とのインキュベーションを室温で60分実施した。2%正常ヤギ血清および0.2%BSA存在下、抗体を1:1000−1:5000で加えた。抗体はABCシステム(Vector Laboratories)およびジアミノベンジジンを用いて可視化した。各々の実験で2−3のウェルから少なくとも20視野を計数した。対照培養中のNSE陽性細胞と比較した他の抗体により染色された細胞の数の比を決定するために視野当たりの細胞の平均数を計算した。
【0113】
(ブロモデオキシウリジン(BrdU)標識)
BrdU標識は以下の変更を行ったGaoら(1991 Neuron,6:705−715)の方法により実施された。細胞は8ウェルチャンバースライドに入れ直ちにrPEDFを加えた。24時間後、BrdU(1:100;Amersham細胞増殖キット)を培養培地に24時間加え、その後細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し(10分)、95%エタノール/5%酢酸で処理し(10分)、抗BrdUモノクローナル抗体とインキュベートした(1:20、2時間)。培養物は次に西洋ワサビペルオキシダーゼ−結合ヤギ抗マウス第二抗体と60分インキュベートした。ジアミノベンジジンーペルオキシダーゼ後、細胞はGel Mountにマウントされた。顕微鏡で標識された細胞のパーセント数を計数することにより、分裂指数が決定された。各々の値に対し、3000細胞の無作為試料が計数された。
【0114】
(神経フィラメントELISAアッセイ)
わずかな変更を加えたDohertyら(1984 J.Neurochem.,42:1116−1122)の方法に従って神経フィラメントELISAが実施された。96ウェルマイクロタイタープレートで増殖させた培養物は4%パラホルムアルデヒドを含むPBSにより、4℃で2時間固定した。固定された細胞は15分0.1%トリトンX−100を含むPBSで処理して透過性を上げ、続いて非特異的結合を防ぐために60分10%ヤギ血清を含むPBSとインキュベーションを行った。培養物は次にモノクローナル抗−神経フィラメント抗体と4℃にて一夜インキュベートした(RMO 1:100で;小脳顆粒細胞の培養において神経芽のみを染色する)。10%ヤギ血清を含むPBSで2回洗浄後、細胞を第二抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼ−結合ヤギ抗マウス 1:1000で)と1時間インキュベートした。PBSおよび水で連続的に洗浄した後、培養物は0.2%O−フェニレンジアミンおよび0.02%H2O2を含む50mMクエン酸緩衝液(pH5.0)と30分インキュベートした。等量の4.5M H2SO4を添加することにより反応を停止させた。マイクロタイターリーダーを用い、490nmで反応生成物の一部の光学密度(O.D.)を読みとることにより生成物形成を定量した。
【0115】
MTSアッセイが生きている細胞数の指標になることを確認するため、およびアッセイの結果が直線性を与える細胞数の範囲を決定するために、図6に示した実験を実施した。血清含有培地(SCM)においては(図6A)、1−9x105細胞/cm2の範囲に渡って光学密度(O.D.)と加えた細胞数が比例した。対照的に、化学的に決められた培地(CDM)(図6B)では、直線範囲は1−5x105細胞/cm2の範囲をカバーするにとどまった。引き続く全ての実験は、どちらの型の培養培地においても直線範囲の中間である2.5x105細胞/cm2で細胞を加えて行った。
【0116】
図7は、PEDFはDIV4で細胞数の有意な増加を起こし、DIV7および10では大きな相違を与えることを示す。しかしながら、この2−3倍の増加は対照培養における細胞数の顕著な減少の結果である。化学的に決められた培地における用量応答曲線は(図8)、20ng/mlで統計的に有意な効果があることを示している。50ng/ml以上にPEDF濃度を増加させてもCDM中でのさらなる増加を生み出さなかった。
【0117】
PEDFに応答したO.D.の増加(MTSアッセイ)が生き残っている細胞の増加を反映しているのか、または増殖の増加を反映しているのかを決定するため、生後5日(P5)の動物(この時小脳顆粒細胞は動物でまだ分裂している)からの培養物を用いて、BrdU標識研究が実施された。図9はDIV1および2におけるP5 CGC培養に対するPEDFの効果を示している。MTSアッセイを用いると、PEDFはDIV1では効果がなかったが、血清含有培地または化学的に決められた培地ともDIV2にO.D.の小さな増加を起こした。従って、BrdUを日−1に添加し、日−2に固定した。対照条件下のBrdU標識指数はSCMで5%およびCDMで3%であり、PEDFはどちらの培養培地でもBrdU標識指数を増加させなかった(図10)。PEDFによりBrdU標識指数が刺激されないことは、PEDF暴露後のMTSアッセイにより測定されたO.D.の増加は細胞分裂の増加のためではなく、むしろ生き残りの助長に応答していることを示唆している。
【0118】
免疫細胞化学を用いてPEDF処理前および後の培養液に存在する細胞の同定を行った。PEDFと(500ng/ml)またはPEDFなしで7日間増殖させたP8培養細胞を4つの異なった抗体で染色した:すべての小脳ニューロンを認識するニューロン−特異的エノラーゼ(NSE)に対するポリクローナルウサギ抗体(Schmechel et al.(1978)Science,199:313−315);小脳顆粒細胞を除いたすべての小脳ニューロンで合成されるGABAに対するポリクローナル抗体(Gruol and Crimi(1988)Dev.Brain Res.,41:135−146);ニューロン−特異性タンパク質であるカルビンジンおよびGFAP(アストログリアにのみ存在する中間フィラメントタンパク質)に対する抗体。結果は表2に要約されている。PEDFはSCM(30%増加)およびCDM(60%増加)の両方でNSE陽性細胞の数を有意に増加させた。GABA陽性ニューロンおよびPurkinje細胞(カルビンジン陽性)の数のわずかな(統計的には有意ではない)増加があった。従って、PEDFは顆粒ニューロンに対してのみ神経栄養性である。さらに、PEDFは培養液中に存在するGFAP陽性アストログリア(astrocytes)の数を有意に減少させた(SCMで30%の減少およびCDMで40%の減少)。このPEDFの”グリア静止性”は実施例14でさらに論議される。
【0119】
【表2】
【0120】
神経芽成長に対するPEDFの効果を調べるため、神経フィラメントELISA試験が用いられた。免疫細胞化学は、モノクローナル抗体、RMO−42は培養液中の小脳顆粒細胞の神経芽のみ染色することを示したので、この抗体を細胞本体ではなく突起のみに存在する神経フィラメントの直接的測定に使用した(図11)。PEDFはSCMおよびCDMの両方で神経フィラメント含量をわずかに増加させたのみであったが、その増加量は細胞数の増加に直接的に比例していた(図12)。
【0121】
図13はこの実施例のデータを総括している。培養10日までに、ほとんどの非処理CGC(対照)は死滅したが、PEDF処理細胞は60%またはそれ以上生き残った。PEDFは従って脳ニューロンに対する強力な生存因子である。
【0122】
(実施例13)
(rPEDFペプチド、BPおよびBXの神経細胞栄養性特性)
PEDFの”神経細胞栄養性”活性について前の節で記載されたことは真実であり、強力な神経栄養性活性を示す組換え体PEDF(rPEDF)を比較的多量に製造することが可能である。適当な組換え体分子生物学的技術を用いて、より小さなPEDF分子の断片もまた製造でき、それらは神経栄養性かまたは神経細胞栄養性活性が試験される。図14はCGC生存率に対するPEDFのこれらの端が切断された形のうちの2つの効果を示している。BXおよびBPは各々PEDF分子のアミノ末端部分からの24および28kDa断片である。両断片は1xまたは10x濃度でニューロン生存因子として作用し、有意にCGCの寿命を延長させる。この実験において、ペプチドは実験の初めに一度に与えられ、細胞数は7日後に決定された。完全PEDF分子とともに、分子のN−末端に近いより小さな組換え体ペプチドも”神経細胞栄養性”であると結論付けられる。
【0123】
(実施例14)
(PEDFのグリア細胞静止特性)
ラット小脳顆粒細胞の初代培養中にニューロンとともに少数のグリアの異なった型が存在する。グリアはCNS中におけるニューロンのための”支持”要素であり、建築的骨格、およびニューロンが依存する代謝的支持系を形成する。グリアはまた、脳の腫瘍はほとんどグリアにより形成されおよびグリオシスがいくつかの神経消耗性疾患で問題であるので、臨床的にも重要である。我々の系において、細胞の培養混合集団をニューロンに特異的な抗体およびグリアの異なった型に特異的な他の抗体で免疫細胞化学的に染色した時に、グリアに対するPEDFの効果について気がついた。この目的のため、ニューロンの存在を示すために標準マーカーニューロン特異性エノラーゼ(NSE)およびその他、大グリア(astroglia)の存在を示すためにグリア原線維性酸性タンパク質(GFAP)および小グリア(microglia)染色のためにOX−42を使用した。この実験において(表2)、我々はニューロンがPEDF処理によりより長く生きることを知っていたのでNSE染色で予期される増加を観察したが、GFAP染色での予期されない減少を観察した。このことはPEDF処理培養物において大グリア細胞をより少なくする可能性を示している。
【0124】
培養皿における大グリア細胞および小グリア細胞の特有の形態およびGFAPまたはOX−42に対するそれらの選択的染色のため、異なった実験条件下、顕微鏡下でそれらを個々に計数することが可能である。これは図15および16に概説するように行われた。図15はラット脳から得られた培養液中の大グリア細胞の数に対するPEDFの効果を培養2週(2w)または12週(12w)に示したものである。与えられている時間は、PEDF処理後、48時間、96時間または7日である。明らかに、試験されたすべての条件でPEDF処理は大グリア細胞の劇的な減少が生じている。図16は同一の培養での小グリア細胞の平行分析を示している。48時間または7日間のPEDF投与により、2週間(2w)または12週間(12w)培養しても細胞の数を減少させていた。従って、PEDFは非常に長い期間に渡ってグリア要素を実質的に減少させ、一方、ニューロンには生存因子として働いている。
【0125】
(実施例15)
(天然ウシPEDFの特性付け)
特異的抗体によって成人IPMにPEDFの存在が示されたので、天然PEDFの精製源としてウシIPM洗液を使用した。RPEおよび網膜細胞はPEDF mRNAを発現するが、これらの細胞抽出液では抗−BHはウェスタン移行物上のPEDFバンドを検出できず、このことはPEDFがIPM内に迅速に放出されることを示唆している。ウシIPMに存在するPEDFは全可溶性タンパク質の1%未満であると現在見積もられている(即ち、約2−5ng/ウシの眼)。生理学的温度では、IPM中のPEDFタンパク質は長い期間安定に残っており、SDSに抵抗する非還元複合体は形成しない。従って、その安定な性質のため、培養実験およびインビボでの移植におけるその潜在的有効性は非常に高い。
【0126】
ほぼ均質なまでの精製は単純な2工程法により達成される(図17)。IPMの成分はサイズ排除カラムクロマトグラフィー(TSK−3000)により分画された。PEDF−免疫反応性分画をプールし、陽イオン交換カラム(Mono−S)に加え、NaCl直線濃度勾配により免疫反応性成分を溶出させる。精製プロトコールは材料および方法に詳述されている。各々の溶出プロフィールがパネルA(TSK−3000サイズ排除カラムクロマトグラフィー)およびパネルB(mono−Sカラムクロマトグラフィー)に示されている。280nmでの吸光度は実線で、およびNaCl濃度が点線で示されており、PEDF免疫反応性は抗血清Ab−rPEDFで追跡された。挿入図は示された分画のウェスタンブロット分析である。免疫反応はAb−rPEDFの1:10,000希釈で実施され、4−クロロ−1−ナフトールで染色された。TSK−3000クロマトグラフィーのための分子サイズ標品はBSA(ウシ血清アルブミン、66,000)およびCA(ウシカルボニックアンヒドラーゼ、29,000)であった。
【0127】
可溶性IPM成分の洗液で出発し、最初の工程はサイズ排除カラムクロマトグラフィーによるほとんどの豊富にあるタンパク質(IRBP)の除去を含んでいる。PEDFは約50kDaの大きさの単量体ポリペプチドとして溶出する。我々は、PEDFの等電点を7.2−7.8であると決定したので、タンパク質を同時に精製および濃縮するための方法の第二の工程にpH6.0でS−セファロースカラムクロマトグラフィーを使用した。精製されたタンパク質はおとなのウシの眼当たり約2μgで回収され、回収率は約40%であった。天然のPEDFはSDS−PAGE上、49,500±1,000のみかけの分子量を持つ単量体糖タンパク質のように振る舞う。
【0128】
精製タンパク質はグリコシダーゼFに感受性があり、N−結合オリゴサッカライドを示しており、それは天然のタンパク質中の3,000−Mrまでを占めている(図18)。アスパラギン−結合オリゴサッカライドを除去するため、精製PEDFタンパク質がエンドグリコシダーゼHおよびN−グリコシダーゼFで処理された。酵素反応は材料と方法に記載されているように実施され、β−メルカプトエタノール存在下または非存在下で全量で200ngのPEDFタンパク質が用いられた。反応混合物はSDS−12.5%ポリアクリルアミドゲルに適用した。エンドグリコシダーゼH(左パネル)およびN−グリコシダーゼF(右パネル)反応物のウェスタン移行物の写真が示されている。イムノブロットは1:10,000希釈抗血清 Ab−rPEDFで処理された。各々の反応の添加成分は上に示されている。各々の写真の右側面の数字はビオチン化SDS−PAGE標品の移動を示している:ウシ血清アルブミン(66,200)、オバアルブミン(45,000)およびウシカルボニックアンヒドラーゼ(31,000)。精製ウシPEDFはY−79およびWeri網膜芽腫細胞の神経芽成長を促進し、この活性は抗−rPEDFにより遮断されること示した(下記参照)。
【0129】
本発明は、NSE、GFAP、神経フィラメント(NF−200)タンパク質を含むCGC培養物およびY−79腫瘍細胞でのニューロンおよびグリアマーカーの発現に対する標準PEDFの効果を測定するための道具を提供している。
【0130】
(実施例16)
(色素上皮誘導因子:高度に特異的なポリクローナル抗体による特性決定)
PEDFに対するポリクローナル抗体を開発するために、大腸菌で産生された精製組換え体ヒトPEDFを使用した。抗−rPEDFはおとなのウシの眼からのIPM洗液のウェスタン移行物上の一つのポリペプチドを特異的に認識した(図19)。ヒト組換え体PEDFに対するポリクローナル抗血清は特異的にrPEDFを認識する。ヒトrPEDFのウェスタン移行物およびスロットブロットはrPEDFに対するウサギポリクローナル抗血清、Ab−rPEDFで処理された。4−クロロ−1−ナフトールでの免疫染色の写真が示されている。パネルA、rPEDFの0.5μgのウェスタン移行物が抗血清の希釈の増加をアッセイするために使用された。rPEDFタンパク質は移行前にSDS−12.5%PAGEで分離された。希釈率は各々のレーンの上に示されている。希釈抗血清は免疫検出に使用する前に5μg/mlでrPEDFと前もってインキュベートされ、1:10,000+rPEDFと示されている。左の数字はビオチニル化SDS−PAGE標品の分子量を示している。パネルB、1%BSA/PBS中rPEDFの量を増量し、マニホールドでニトロセルロース膜へ供給した。膜は抗血清抗−rPEDFおよび1:10,000希釈されたウサギ前免疫血清で処理された。右に示されている数字は膜へブロットされたrPEDFの量を表している。各々のペーパーに使用された血清は図の上に示されている。
【0131】
抗−BHはウェスタン移行物上、1:50,000のような高い希釈度でヒトPEDFを特異的に認識した;重要なことは、それが血清α1−抗トリプシンを認識しなかったことである。本抗体は若年サルRPE培養細胞の馴化培地の、ならびにおとなのウシの眼からのIPMの、ウェスタン移行物上に一つの主要なバンドを認識した。抗−rPEDFはIPM促進神経栄養性活性を遮断した(図20)。血清含有培地中、対数増殖期のヒト網膜芽腫細胞Y−79をPBSで2回洗浄し、インシュリン、トランスフェリンおよびセレンを補給した無血清MEM(ITS混合物、Collaborative Research Products)中に播種した(ml当たり2.5x105細胞)。次にエフェクターが培養液に添加された。5%CO2、37℃で7日後、細胞を新鮮な無血清培地を含むポリ−D−リシン被覆プレートに付着させた。培養物の分化状態を付着後種々の間隔でモニターした。付着9日後の形態的特徴が示されている。エフェクターの添加は各々のパネルに示されており以下の最終濃度であった:125μg/ml BSA、1% IPMおよび100ng/ml 精製ウシPEDF。神経芽の成長誘導活性を阻止するため、各々のエフェクターは1%BSA/PBS中、過剰の抗血清抗−rPEDF(1μl)と少なくとも6時間4℃で前もってインキュベートした。すべての写真は50倍で示されている。
【0132】
抗−rPEDFはまた精製PEDFにより促進される神経芽成長活性も阻止した。我々のデータはIPMではPEDFが唯一の神経栄養性因子であることを示している。これらのデータはまた抗−rPEDFはPEDF神経栄養性活性部位ならびにIPMおよび他の組織(例えば、脳)におけるPEDFの生理学的役割の探査に有用であろうことも示唆している。さらに、これらの結果はPEDFはIPMを益する成分であり、細胞外マトリックスにおける唯一の神経栄養性成分であることを示している。さらに、本タンパク質は広範囲の組織および細胞外空間に存在している。阻止抗体はPEDFの生理学的機能を探査する研究に有用である。
【0133】
(実施例17)
(色素上皮誘導因子:神経栄養性活性を持つセルピン)
ヒト胎児PEDF cDNAから誘導されるアミノ酸配列は、セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)ファミリーとその一次構造の同一性を共有し(約30%)、セルピンの構造的完全さに必須な残基の90%を保存している。しかしながら、組換え体PEDFはセリンプロテアーゼであるトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼまたはカテプシンGを阻害しない。PEDFの天然の標的はまだ解明されていない。PEDFに対して作製した抗体によるウェスタンブロットの免疫検出および蛋白分解性基質としてカゼインを含むゲルのザイモグラフィーにより、網膜色素上皮および網膜間の空間である、光受容体間マトリックス(IPM)からのタンパク質を分析した。結果は、ウシIPMは安定でグリコシル化されたPEDFポリペプチド(50,000Mr)を目当たり2−5μg含んでいることを示している。トリプシン、サブチリシン、キモトリプシンおよびエラスターゼによるウシPEDFの制限蛋白分解は46,000Mrのポリペプチドを産生し、蛋白分解性切断に感受性を持つヒンジ領域を持つ球状構造が示唆される。一方、カゼインSDS−PAGEザイモグラフィーはIPM中のプロテアーゼ活性が低いことを明らかにし、それは約80,000±5,000の2倍移動した。カゼイン分解性活性は1μg/mlのアプロチニンおよび10mM PMSFをゲル混合物に加えると100%阻害されたが、E64またはEDTAには影響を受けなかった。重要なことは、IPMタンパク質は、約80,000Mrのセリンプロテアーゼであるプラスミノーゲンに対する抗体と反応しなかったことである。rPEDFタンパク質が1μg/mlで加えられた場合、これらのカゼイン分解性活性ならびに未知の起源のその他のセリンプロテアーゼ活性の信号は約50%弱められた。これらの結果は新規セリンプロテアーゼおよびセルピンPEDFのための天然の細胞外部位としてのIPMを示唆しており、両方とも全タンパク質の≦1%で存在している。
【0134】
ここに引用したすべての文献は、援用により本明細書に全文包含される。
【0135】
本発明はPEDFの一般的構造特性およびこれらがタンパク質の機能とどのように関係するかについての理解の発端を開示している。PEDFはセルピンについて知られている構造特性および一般的三次特性を持っているが、セルピンの抗−プロテアーゼ活性は持っていない。PEDFは神経栄養性タンパク質であり、網膜芽腫細胞上の神経芽成長を促進するIPMの唯一の成分であるようである。しかしながら、古典的セルピンのカルボキシ末端近くに観察されるセリンプロテアーゼ阻害剤のための反応中心は、PEDFの神経栄養性生物学的活性には必要とされない。特に、分子のアミノ末端部分からのドメインを含むポリペプチド鎖(BA)は、神経栄養性およびニューロン生存活性にとって十分である。本発明はさらにCGCニューロンがアポトーシスで死ぬかどうかおよびPEDFはアポトーシスの阻害剤であるかどうかの決定を可能にする。言葉を換えれば、本発明はどのような機構でPEDFがニューロンを”救い”およびグリアの成長または増殖を”阻害する”かを決定することを可能にする。
【0136】
本発明は特異的神経栄養性”活性部位”の決定に有用である。さらに、端が切断されたrPEDFペプチドの使用はPEDFの神経細胞栄養性およびおそらく、グリア細胞静止性に必要な要素決定を可能にする。本発明はさらに、網膜芽腫細胞の分化のための信号の引き金を引くPEDFの相互作用を研究するために必要な道具を提供する。最近の実験は網膜芽腫細胞により前もって”馴化され”ている培地に加えたときのみ125I−BHは網膜芽腫細胞と競合的様式で結合することが示されている。このことは細胞により産生される一つまたはそれ以上の補因子が結合に必要であろうことを示唆している。本発明はさらにCGC試験系および網膜芽腫細胞試験系からのPEDFまたはPEDF複合体に対する細胞表面受容体を同定および特性決定するために必要な道具を提供する。
【0137】
タンパク質の機能部位のドメインマッピングのための道具として、組換え体変異タンパク質、タンパク質分解生成物および合成ペプチドが使用できる。さらに、本発明の組換え体タンパク質はPEDF上の神経栄養性および神経細胞栄養性”活性部位”のマッピング、およびこの興味深いタンパク質が発揮するその劇的な生物学的効果による細胞トランスダクション機構の決定を可能にする。
【0138】
本発明は好適な態様を強調して説明したが、PEDF、rPEDFおよび等価なタンパク質、(BP、BX、BA)をコードしている好適な核酸、およびそれらのアミノ酸配列、そのような核酸を利用するベクター、そのようなタンパク質を産生する組換え法、およびそのようなタンパク質の使用法の変形態様が存在し、本発明がここに特別に記載したものと別な方法で実施できるであろうことは当業者には明かであろう。従って、本発明は以下の請求の範囲に定義されるように、本発明の精神および範囲内のすべての改変を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】ヒトPEDF遺伝子構造:ヒトPEDF遺伝子の制限地図および構成。エクソン1−8は黒の四角で示されており、1−8の番号が付けてある。イントロンおよび隣接するDNAは水平な線で表されておりA−Gのラベルが付けられている。いくつかのゲノムクローンは図解した遺伝子の上および下に示されている。制限酵素NotI(”N”)、BamHI(”B”)およびEcoRI(”E”)の制限部位は垂直の矢印で示されている。
【図2】BamHI、EcoRI、HindIIIおよびPstIエンドヌクレアーゼで制限分解されたヒトゲノムDNA(A)およびP147(B)のサザン分析。パルスフィールド電気泳動を行ったゲルのプロフィールからのサザン分析物は放射性標識PEDF cDNAで探査された。P147DNAのハイブリダイゼーションパターンは全ヒトゲノムDNAと一致した。サイズマーカーが示されている。
【図3】PEDF遺伝子の5’隣接領域。最初のエクソン(大文字)および5プライム隣接領域の最初の1050bpが示されている。二つのAlu反復配列は下線が施されている。HNF−1、PEA3、オクトマー(Oct)、c/EBPの可能な結合部位は下線が施されており、ラベルされている。推定AP−1部位はボールド体で示されており、TREp/RARは二重の下線が付けられている。エクソン1中の下線を付けた配列は5’RACEにより決定された。
【図4】PEDF mRNAのノーザンブロット分析:ヒト成人および胎児組織中のヒトPEDF転写体の遺伝子発現分析。RNAが得られた組織はレーンに対応して上に示されている。膜は各々の試料に対し2μgのポリ(A)RNAを含んでおり、ヒトPEDFのための放射性標識cDNAで探査された。成人および胎児組織の両方で単一の1.5kb転写体が観察され、肝臓、精巣、骨格筋および卵巣で最も大きなハイブリダイゼーションがあり、一方、脳、膵臓および胸腺の信号は他の組織のものより著しく弱かった。成人腎臓および脾臓では有意な信号は観察されなかった。PEDF mRNAレベルの有意な相違が成人および胎児腎臓で観察された。
【図5】ヒトPEDF遺伝子の進化的関連付け:各々のレーンは各々の種をEcoRIで消化した総量で8μgのゲノムDNAを表している。PEDFプローブでのサザンブロット分析が示されている。ニワトリ(A)、哺乳類(B)および霊長類(C)のハイブリダイゼーション信号が示されている。約23kbの大きな断片がすべての霊長類および多くの哺乳類で観察される。加えて、試験された異なった哺乳類でいくつかの多形が観察される。
【図6】播種した細胞密度とMTSアッセイにより測定された光学密度の関係。異なった濃度の生後8日の小脳顆粒細胞を96ウェルプレートに加え、血清含有培地(6A)または化学的に特定される培地(6B)で培養した。光学密度はインビトロでの日数(DIV)1、4または7で測定された。四角、DIV1;黒丸、DIV4;白丸、DIV7。データは細胞密度の関数としてプロットされている(n=6)。
【図7】化学的に特定される培地におけるPEDF刺激細胞生存の時間変化。生後8日の小脳顆粒細胞を96ウェルプレートで培養した。DIV0にPEDFを加え、DIV1、4、7または10に光学密度を測定した。黒棒、対照;左斜線の棒、PEDF処理(50ng/ml);右斜線PEDF処理(500ng/ml)。データは光学密度/ウェルで表わされている(平均±SEM、n=6)。統計計算はツーウェイANOVA ポスト−hoc Scheffeテストにより行われた。★★対照に対してP<0.0001。
【図8】化学的に特定される培地におけるPEDFの用量応答曲線。異なった濃度のPEDFがDIV0に加えられ、MTSアッセイがDIV7に実施された。データは対照に対する比で表わされている(平均±SEM、n=6)。統計計算はワンウェイANOVA ポスト−hoc ScheffeFテストにより統計計算が行われた。★★対照に対してP<0.0001。
【図9】DIV1およびDIV2での生後5日の小脳顆粒細胞のMTSアッセイ。生後5日の小脳顆粒細胞をAra−Cを含まない血清含有培地(A)またはF12を含まない化学的に特定される培地(B)を用い、96ウェルプレートで培養した。MTSアッセイはDIV1およびDIV2に実施された。黒棒、対照;しまを付けた棒、PEDF処理(500ng/ml)。データは光学密度/ウェルで表わされている(平均±SEM、n=6)。統計計算はツーウェイANOVA ポスト−hoc Scheffe Fテストにより行われた。★★対照に対してP<0.0005。
【図10】生後5日の小脳顆粒細胞内へのBrdU取り込み。生後5日の小脳顆粒細胞をAra−Cを含まない血清含有培地(SCM)またはF12を含まない化学的に特定される培地(CDM)を用い、96ウェルプレートで培養した。PEDFはDIV0に加えた。BrdUはDIV1に加え、DIV2に細胞を固定した。黒棒、対照;しまを付けた棒、PEDF処理(500ng/ml)。標識された核酸の数は全細胞集団のパーセントとして表現されている(平均±SED)。各々の値について少なくとも3000の細胞が計数された。
【図11】ELISAにより測定された細胞密度と神経フィラメントの間の関係。異なった濃度の生後8日の小脳顆粒細胞を96ウェルプレートに加え、培養した。光学密度はDIV7に測定された。データは細胞密度の関数としてプロットされている。
【図12】生後8日の小脳顆粒細胞における神経フィラメントELISAアッセイ。細胞を血清含有培地(SCM)または化学的に特定される培地(CDM)を用い、PEDFとまたはPEDFなしで96ウェルプレートで培養した。DIV7に細胞を固定した後、神経フィラメントELISAが実施され、データは対照に対する比として表現されている(平均±SEM、n=6から10)。黒棒、対照;しまを付けた棒、PEDF処理(500ng/ml)。統計計算はツーウェイANOVA ポスト−hoc Scheffe Fテストにより行われた。★★対照に対してP<0.05。
【図13】培養10日間のPEDF神経細胞栄養性効果の要約。
【図14】端が切り取られたペプチドBPおよびBXのCGC生存率に対する効果。
【図15】小脳からの大グリア細胞に対するPEDFの効果。
【図16】小脳小グリア細胞に対するPEDFの効果。
【図17−1】ウシIPMからのPEDF−免疫反応性タンパク質の精製。ウシIPM洗液をA)TSK−3000サイズ排除クロマトグラフィー続いてB)Mono−Sクロマトグラフィーにかけた。ウェスタンブロットでPEDF含有分画が示される。
【図17−2】ウシIPMからのPEDF−免疫反応性タンパク質の精製。ウシIPM洗液をA)TSK−3000サイズ排除クロマトグラフィー続いてB)Mono−Sクロマトグラフィーにかけた。ウェスタンブロットでPEDF含有分画が示される。
【図18】ウェスタンブロッティングにより示されたPEDFの酵素的脱グリコシル化。PEDF処理は各々のレーンの上に与えられている。数字は分子量標準の位置を示している。
【図19】PEDFに対する抗体は特異的に天然PEDFを高力価で認識する。A)少なくとも1:50,000希釈までの抗体の有効性、および過剰のrPEDFの添加がバンド可視化を完全に阻止することを示しているウェスタンブロット。B)スロットブロット分析は天然ウシPEDFタンパク質の≦1ngを検出する能力を示している。
【図20】Y−79細胞における神経突起拡張に対するPEDF抗体の逆の効果。上列:ウシ血清アルブミン(BSA)対照培養。中列:天然ウシPEDFタンパク質による神経突起誘導に対する抗体効果。下列:光受容体間マトリックス(interphotoreceptor matrix:IPM)による神経突起誘導に対する抗体効果。
【図21】PEDF存在または不在下での神経突起成長の位相差顕微鏡分析。
【図22】組換え体PEDFおよび天然の単離PEDFの存在下での神経突起成長の位相差顕微鏡分析。
【図23】rPEDFのC−末端欠失の模式図。
【0140】
(配列表)
【数2】
【0141】
【数3】
【0142】
【数4】
【0143】
【数5】
【0144】
【数6】
【0145】
【数7】
【0146】
【数8】
【0147】
【数9】
【0148】
【数10】
【0149】
【数11】
【0150】
【数12】
【0151】
【数13】
【0152】
【数14】
【0153】
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【0200】
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【数63】
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【数64】
【0203】
【数65】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例に記載の方法。
【請求項1】
実施例に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−149405(P2006−149405A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33129(P2006−33129)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【分割の表示】特願平8−501287の分割
【原出願日】平成7年6月6日(1995.6.6)
【出願人】(504369823)アメリカ合衆国 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【分割の表示】特願平8−501287の分割
【原出願日】平成7年6月6日(1995.6.6)
【出願人】(504369823)アメリカ合衆国 (2)
【Fターム(参考)】
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