説明

色素化合物

【課題】呈色性に優れ、かつ熱分解によって色相が変化する、色素として有用な化合物、並びにこれを含有した組成物の提供。
【解決手段】熱により色相が変化するフルオランテン色素化合物であって、例えば、下記フルオランテン化合物(1)から誘導される下記化合物(A)又は(B)で表される化合物。


該化合物とバインダーとを含有した組成物は、画像形成材料として有用であり、又、該化合物は、インクジェット記録用インク、カラートナー、カラーフィルター用途に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱により色相が変化する色素として有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境の保護およびCO2による温室効果を抑制するためには、森林の保護が重要である。新たな伐採を最低限に維持し、植林を含めた森林再生とのバランスを保つためには既に保有している紙資源を如何に効率よく利用していくかが大きな課題となる。
現在のところ、紙資源の再利用は、画像形成材料を剥離させる脱墨工程を経た紙繊維を質の悪い紙に漉き直して目的別に使い分ける、いわゆる「リサイクル」が主流であり、これは脱墨工程のコスト高の問題や廃液の処理による新たな環境汚染の可能性などが指摘されている。
【0003】
これに対し、古くは鉛筆に対してケシゴム、ボールペンに対して修正液というように、画像の修正によるハードコピーの再利用、即ち「リユース」という紙資源の再利用方法がある。紙質の劣化を極力防ぎ、同一目的に複数回使用する「リユース」は、紙質を落としながら他の目的に使用する「リサイクル」とは異なる概念である。紙資源の効率利用の観点から見れば、「リユース」は「リサイクル」よりも効率的かつ重要な再利用方法であるといえる。「リサイクル」を行う前段階として、適切な「リユース」が行われれば新たに必要な紙資源を最小限に抑えることができる。
【0004】
近年、ハードコピー用紙のリユースを目的とした特殊紙であるリライタブルペーパーなどが提案されている。リライタブルペーパーの技術を用いると、使用による皺や折れ曲がりなどの紙の痛みを気にしなければ100回以上の「リユース」が可能であり、紙資源の利用効率は飛躍的に向上することになる。
しかし、リライタブルペーパーは特殊紙を使うために「リユース」はできても「リサイクル」に適さない技術であり、また熱記録以外の記録技術に適用が困難であるという欠点を有していた。
【0005】
一方、ロイコ色素等の呈色性化合物を用い、該化合物が顕色剤と反応して相互作用が増大すると発色状態となり、相互作用が減少すると消色状態となる性質を利用した技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、呈色性化合物および顕色剤を含有する系に消色剤を加えることにより、室温付近の温度で呈色性化合物の消色状態を安定して維持できるようにしたもので、熱や溶媒による処理で長期に消色状態を固定する画像形成材料や、画像消色プロセス、紙のリユースに用いられている。
この技術で用いられている画像形成材料は、画像の発色・消色状態の安定性が高く、加えて材料的にも安全性が高い。また電子写真用トナー、液体インク、インクリボン、筆記用具全てに対応可能である。更に大規模消色処理が可能であるという従来の技術にないメリットを有している。しかし、顕色剤や消色剤を反応系に添加して平衡状態を変化させることで呈色化合物の呈色/消色という色相の変化を制御しているために、(1)充分な呈色濃度が得られないこと、(2)顕色剤や消色剤の添加量が多いこと、(3)消色剤として紙の構成要素であるセルロースを用いているために、画像形成が紙面上に限られること、といった問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−310299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、呈色性に優れた色素として有用な化合物及び色素、並びにそれらを用いた画像形成方法を提供することである。また、本発明の目的は、熱分解によって色相が変化する色素として有用であり、かつ顕色剤及び消色剤等の添加物量を減らすことが可能な熱分解化合物及び色素、並びにそれらを用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題点について詳細に検討した結果、熱によって分解され色相が変化する新規の化合物を見出した。さらにこの化合物を色素として用いることができることを発見し本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の課題は、以下の方法によって達成された。
<1>下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】

[式中、X1〜X4及びX21〜X24は、互いに独立して−CR=または−N=を表す。Rは水素原子または置換基を表す。
42は、置換もしくは無置換の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表す。
Ar11は、アリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar11は、置換基を有していても良い。Ar11が置換基を有する場合、該置換基はX2とともに環を形成しても良い。
31,R32は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。
41は、熱によりX42−R41間の結合が開裂可能な置換基を表す。
n-は、n価の対アニオンを表す。
nは1以上の整数を表す。]
<2>前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする、<1>項に記載の化合物。
【化2】

[式中、R101〜R104,R111〜R115及びR121〜R124は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。
131及びR132は、前記一般式(1)のR31及びR32と同義である。
141は、前記一般式(1)のR41と同義である。
1n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
<3>前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、<1>項に記載の化合物。
【化3】

[式中、R201〜R204、R212〜R215及びR221〜R224は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。
231及びR232は、前記一般式(1)のR31及びR32と同義である。
241は、前記一般式(1)のR41と同義である。
2n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
<4>前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする、<2>項に記載の化合物。
【化4】

[式中、R301〜R304、R311〜R315、R321〜R324、R331及びR332は、前記一般式(2)のR101〜R104、R111〜R115及びR121〜R124、R131及びR132とそれぞれ同義である。
341〜R343は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
3n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
<5>前記一般式(3)で表される化合物が下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする、<3>項に記載の化合物。
【化5】

[式中、R401〜R404、R412〜R415、R421〜R424、R431及びR432は、前記一般式(3)のR201〜R204、R212〜R215、R221〜R224、R231及びR232とそれぞれ同義である。
441〜R443は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
4n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
<6>前記一般式(5)で表される化合物が下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする、<5>項に記載の化合物。
【化6】

[式中、R501〜R504、R512、R515及びR521〜R524は、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアルキル基を表す。
513及びR514は、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基または置換もしくは無置換の窒素原子を表し、R513及びR514の少なくとも一方は置換の窒素原子である。また、窒素原子上の置換基はアリール基またはアルキル基である。
531及びR532は、互いに独立してアルキル基を表す。
541〜R543は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
5n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
<7><1>〜<6>項のいずれか1項に記載の化合物からなる色素。
<8><1>〜<6>項のいずれか1項に記載の化合物からなる色素とバインダーとを含有する組成物。
<9>塩基性物質を含有する<8>項に記載の組成物。
<10><8>又は<9>項に記載の組成物を含有する画像形成材料を加熱し、熱による結合解離反応とそれに続く環化反応とにより該画像形成材料の全部又は一部の色相を変化させる工程を含む画像形成方法。
<11><1>〜<6>項のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有するインク。
<12><1>〜<6>項のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有するインクジェット記録用インク。
<13><1>〜<6>項のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有する感熱転写記録用インクシート。
<14><1>〜<6>項のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有するカラートナー。
<15><1>〜<6>項のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有するカラーフィルター。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物は、呈色性に優れ、かつ熱により色相が変化する化合物である。本発明の化合物を色素として用いることで、外部環境に左右されず良好な呈色濃度が得られ、かつ色相を変化させるための顕色剤や消色剤等の添加を減らすことができる色素を提供することができる。また、本発明の化合物からなる色素及び該色素を含有する組成物を用いることで、熱により色相が変化する画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。本発明の化合物は、トリアリールメタン系色素化合物またはフルオラン系色素化合物に熱分解性の置換基を導入した新規化合物であり、色素として好適に用いることができる。
一般にトリアリールメタン系色素またはフルオラン系色素は、閉環型化合物と開環型化合物の2種の異性体が存在し、それぞれの化合物は異なる色相を呈する。閉環型化合物と開環型化合物とは平衡状態にあり、外部の環境等によってその平衡状態が変化し、それに伴い色相も変化する。そのため、下記の反応式(7)で表されるように、平衡を制御し一定の呈色状態を維持するためには、顕色剤・消色剤等の各種添加剤を加える必要がある。
【0012】
【化7】

【0013】
これに対して、本発明の化合物は、開環型構造の化合物のみからなる。また、本発明の化合物は熱分解性の置換基が導入されていることを特徴とし、所定の温度まで加熱すると、この置換基が分解し、開環型構造から閉環体構造に変化する。この構造変化に伴って、化合物の色相が変化する(下記反応式(8)参照)。したがって、本発明の化合物は、顕色剤等を用いることなく優れた呈色性を示すことができる。さらに、本発明の化合物は、熱を加えることで分解反応が進行し色相が変化するため、顕色剤や消色剤を使用することなく色相を変化させることができ、良好な色変化を実現できる。これらの性質を有することから、本発明の化合物は色素として好適に用いることができる。
【0014】
【化8】

【0015】
本発明の下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0016】
【化9】

【0017】
[式中、X1〜X4及びX21〜X24は、互いに独立して−CR=または−N=を表す。Rは水素原子または置換基を表す。
42は、置換もしくは無置換の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表す。
Ar11は、アリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar11は、置換基を有していても良い。Ar11が置換基を有する場合、該置換基はX2とともに環を形成しても良い。
31、R32は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。
41は、熱によりX42−R41間の結合が開裂可能な置換基を表す。
n-は、n価の対アニオンを表す。
nは1以上の整数を表す。]
【0018】
前記一般式(1)中、X1〜X4及びX21〜X24は、互いに独立して−CR=または−N=を表す。Rは水素原子または置換基を表す。置換基(以下、置換基群Aともいう)としては、例えば、直鎖、分枝もしくは環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、
【0019】
アミノ基(アルキルアミノ基及びアリールアミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、
【0020】
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、
【0021】
スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0022】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、
【0023】
ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、ヘテロ環としては、例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などを挙げることができる。また、これらの置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。その際、置換基の例としては、上述の置換基群Aを挙げることができる。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0024】
1、X3〜X4及びX21〜X24が−CR=の場合、Rとしては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基が好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
2が−CR=の場合、Rとしては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基が好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基がより好ましく、水素原子、アリールオキシ基、アルキルアミノ基が特に好ましい。X2は、後述するAr11の有する置換基とともに環を形成しても良い。この場合、炭素原子、酸素原子、窒素原子を介して環を構成することが好ましく、酸素原子、窒素原子を介して環を構成することがより好ましく、酸素原子を介することが特に好ましい。
【0025】
42は、置換もしくは無置換の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表す。窒素原子上の置換基としては上述の置換基群Aが挙げられ、中でも水素原子、アルキル基、アリール基であることが好ましく、アルキル基、アリール基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
【0026】
Ar11は、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニル基などが挙げられる。)もしくはヘテロアリール基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロアリール基であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、ヘテロアリール基としては、例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル基などが挙げられる。)を表す。
Ar11は、置換基を有していても良い。置換基としては、上述の置換基群Aが挙げられる。Ar11は、無置換のアリール基もしくはヘテロアリール基、またはアルキル基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基もしくはアリールアミノ基で置換されたアリール基もしくはヘテロアリール基が好ましく、アルキルアミノ基で置換されたアリール基、無置換のアリール基、無置換のヘテロアリール基(中でもインドリル基がさらに好ましい)がより好ましい。また、Ar11が置換基を有する場合、該置換基は上述のX2とともに環を形成しても良い。この場合、炭素原子、酸素原子、窒素原子を介して環を構成することが好ましく、酸素原子、窒素原子を介して環を構成することがより好ましく、酸素原子を介することが特に好ましい。
【0027】
31、R32は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述の置換基群Aが挙げられる。中でも、R31、R32は水素原子、アルキル基、アリール基であることが好ましく、アルキル基、アリール基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
【0028】
41は、熱によりX42−R41間の結合が開裂可能な置換基を表す。置換基R41としては、上述の置換基群Aが挙げられ、中でもアルキル基、アリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0029】
n-は、n価の対アニオンを表す。nは1以上の整数を表す。本発明の化合物はカチオン部分とアニオン部分をもつ中性化合物である。したがって、カチオン部分とアニオン部分とのモル比はn:1(1:1/n)となる。また、カチオン部分とアニオン部分とはたがいに結合してもよい。
【0030】
n-としては種々の無機アニオン、有機アニオンが挙げられる。無機アニオンとしては、例えば、ハロゲン化物アニオン、炭酸アニオン、炭酸水素アニオン、硫酸アニオン、亜硫酸アニオン、硝酸アニオン、亜硝酸アニオン、スルホン酸アニオン(パラトルエンスルホン酸等)、スルフィン酸アニオン、リン酸アニオン、パーフルオロアニオン(PF6-、BF4-、SbF6-)、過酸化物アニオン(塩素酸アニオン、亜塩素酸アニオン、次亜塩素酸アニオン、臭素酸アニオン、ヨウ素酸アニオン等)等が挙げられる。有機アニオンとしては、カルボン酸アニオン(例えば、アセテートアニオン)、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオン、アルキルスルホン酸アニオン(フッ素置換されていても良く、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸等のアニオン等が挙げられる)、アリールスルホン酸アニオン(アリール基上に置換基を有していても良く、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トリフルオロメチルスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のアニオン等が挙げられる)、アルキルスルホン酸もしくはアリールスルホン酸の置換したイミドアニオン(例えば、ビストリフルオロメチルスルホン酸イミドアニオン)、アセチルアセトンアニオン等が挙げられる。
n-としては、変色度合いの観点から、アニオン部分の共役酸のpHが1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることが特に好ましい。
nとしては、1もしくは2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0031】
前記一般式(1)で表される化合物は下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。以下、下記一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0032】
【化10】

【0033】
[式中、R101〜R104、R111〜R115、及びR121〜R124は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。
131及びR132は、前記一般式(1)のR31及びR32と同義である。
141は、前記一般式(1)のR41と同義である。
1n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【0034】
前記一般式(2)中、R101〜R104、R111〜R115、及びR121〜R124は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述の置換基群Aが挙げられる。
中でも、R101、R103〜R104、R112、R115、R121〜R124は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基が好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
102、R111は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基が好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基がより好ましく、水素原子、アリールオキシ基、アルキルアミノ基が特に好ましい。R102、R111は互いに結合し環を形成しても良い。この場合、炭素原子、酸素原子、窒素原子を介して環を構成することが好ましく、酸素原子、窒素原子を介して環を構成することがより好ましく、酸素原子を介することが特に好ましい。
113、R114は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基であることが好ましく、水素原子、アリールアミノ基、アルキルアミノ基であることがより好ましい。
131及びR132は、前記一般式(1)のR31及びR32と同義であり、好ましい範囲も同様である。
141は、前記一般式(1)のR41と同義であり、好ましい範囲も同様である。
1n-は、前記一般式(1)のYn-と同義であり、好ましい範囲も同様である。
nは、前記一般式(1)のnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0035】
さらに、前記一般式(1)で表される化合物は下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。以下、下記一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0036】
【化11】

【0037】
[式中、R201〜R204、R212〜R215及びR221〜R224は、水素原子または置換基を表す。
231及びR232は、前記一般式(1)のR31及びR32と同義である。
241は、前記一般式(1)のR41と同義である。
2n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【0038】
前記一般式(3)中、R201、R203〜R204、R212〜R215及びR221〜R224は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述の置換基群Aが挙げられる。
中でも、R201、R203〜R204、R212、R215、R221〜R224は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基が好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。R213、R214は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基であることが好ましく、水素原子、アリールアミノ基、アルキルアミノ基であることがより好ましい。
231及びR232は、前記一般式(1)のR31及びR32と同義であり、好ましい範囲も同様である。
241は、前記一般式(1)のR41と同義であり、好ましい範囲も同様である。
2n-は、前記一般式(1)のYn-と同義であり、好ましい範囲も同様である。
nは、前記一般式(1)のnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0039】
さらに、前記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。以下、下記一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0040】
【化12】

【0041】
[式中、R301〜R304、R311〜R315、R321〜R324、R331及びR332は、前記一般式(2)のR101〜R104、R111〜R115及びR121〜R124、R131及びR132とそれぞれ同義である。
341〜R343は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
3n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【0042】
前記一般式(4)中、R301、R303〜R304、R312、R315、R321〜R324は、前記一般式(2)のR101、R103〜R104、R112、R115、R121〜R124で定義したものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
302、R311は、前記一般式(2)のR102、R111で定義したものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
313、R314は、前記一般式(2)のR113、R114で定義したものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
331、R332は、前記一般式(2)のR131、R132で定義したものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
341〜R343は置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)または置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜8であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)を表す。置換基としては、上記置換基群Aが挙げられる。R341〜R343として好ましくは直鎖のアルキル基、フェニル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基である。また、R341〜R343のうち2つ以上がアルキル基であることが好ましく、全てがアルキル基であることが特に好ましい。
3n-は、前記一般式(1)のYn-と同義であり、好ましい範囲も同様である。
nは、前記一般式(1)のnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0043】
さらに、前記一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。以下、下記一般式(5)で表される化合物について説明する。
【0044】
【化13】

【0045】
[式中、R401〜R404、R412〜R415、R421〜R424、R431及びR432は、前記一般式(3)のR201〜R204、R212〜R215、R221〜R224、R231及びR232とそれぞれ同義である。
441〜R443は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
4n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【0046】
前記一般式(4)中、R401、R403〜R404、R412、R415、R421〜R424は、前記一般式(3)のR201、R203〜R204、R212、R215、R221〜R224で定義したものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
413、R414は、前記一般式(3)のR213、R214で定義したものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
431、R432は、前記一般式(3)のR431、R432で定義したものとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
441〜R443は置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)または置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜8であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)を表す。置換基としては、上記置換基群Aが挙げられる。R341〜R343として好ましくは直鎖のアルキル基、フェニル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基である。また、R441〜R443のうち2つ以上がアルキル基であることが好ましく、全てがアルキル基であることが特に好ましい。
4n-は、前記一般式(1)のYn-と同義であり、好ましい範囲も同様である。
nは、前記一般式(1)のnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
さらに、前記一般式(5)で表される化合物は、下記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。以下、下記一般式(6)で表される化合物について説明する。
【0048】
【化14】

【0049】
[式中、R501〜R504、R512、R515及びR521〜R524は、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアルキル基を表す。
513及びR514は、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基または置換もしくは無置換の窒素原子を表し、R513及びR514の少なくとも一方は置換の窒素原子である。また、窒素原子上の置換基はアリール基またはアルキル基である。
531及びR532は、互いに独立してアルキル基を表す。
541〜R543は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
5n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【0050】
前記一般式(6)中、R501〜R504、R512、R515、R521〜R524は水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子であり、より好ましくは塩素原子である。)、アルコキシ基(炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。)、アルキル基(炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。)を表す。中でも、R501〜R504、R512、R515、R521〜R524は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
513、R514は水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子であり、より好ましくは塩素原子である。)、アルコキシ基(炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。)、アルキル基(炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。)、置換もしくは無置換の窒素原子を表し、かつ、R513、R514の少なくとも一方(R513であることが好ましい。)は置換基を有する窒素原子である。この窒素原子上の置換基はアリール基(炭素数10以下であることが好ましく、より好ましくは炭素数が8以下、特に好ましくは炭素数が6である。)またはアルキル基(炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましく、エチル基であることが特に好ましい。)である。
531〜R532はアルキル基(炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜6であることがより好ましく、炭素数が2〜4であることが特に好ましい。)を表す。
541〜R543は、置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)を表す。置換基としては、上記置換基群Aが挙げられる。R541〜R543として好ましくは直鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基である。
5n-は、前記一般式(1)のYn-と同義であり、好ましい範囲も同様である。
nは、前記一般式(1)のnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0051】
前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、本明細書中、Phはフェニル基を、Acはアセチル基を、Tsはトシル基を、Etはエチル基を、acacはアセチルアセトナート基を、Buはブチル基をそれぞれ表す。
【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
【化17】

【0055】
本発明の前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物は、色素として好ましく用いることができる。
前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される本発明の化合物は、加熱により分解し、色相が変化する化合物である。
化合物の加熱温度としては、70℃以上250℃以下が好ましく、110℃以上230℃以下がより好ましく、130℃以上200℃以下が特に好ましい。加熱方法としては、高熱の媒体から熱を移して加熱する方法(ホットプレート、ヒートロール、サーマルヘッド等)や、光(フラッシュ光、太陽光、レーザー光)を照射して光熱変換により加熱する方法などを適宜用いることができる。
また、加熱時間は、特に制限されないが、好ましくは1ミリ秒〜10分、より好ましくは1ミリ秒〜1分である。
【0056】
前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物の色相は、該化合物の有する置換基の種類によって変わり、特に限定されない。また、加熱前後の色相の変化としては、特に限定されないが、加熱により無色の色相へと変化することが好ましい。
【0057】
次に、本発明の化合物の製造方法について説明する。
本発明の化合物は前駆体であるトリアリールメタン系色素をエステル化、アミド化することで得ることができる。前駆体であるトリアリールアミン色素は、種々購入可能であるが、文献(例えば「色素の化学と応用」、松岡賢、第日本図書、1994年、20ページ)に記載の方法を参照して合成することもできる。
【0058】
前駆体から本発明の化合物を合成する手法としては、任意の手法を用いることができる。例えば、酸条件下で、前駆体と対応するアルコールもしくはオレフィンとを反応させる手法や、文献(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,T.W.Greens,Wiley−Interscience,1999年,373ページ)記載の手法などを用いることが可能である。
【0059】
次に、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物を含むことを特徴とし、本発明の組成物の一態様として、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素とバインダーとを含有する組成物が挙げられる。また、本発明の組成物の別の態様として、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素と後述する塩基性化合物とを含有する組成物が挙げられる。本発明の組成物としては、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素、バインダー及び塩基性化合物を含有することが好ましい。
本発明の組成物中に、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物が含まれる割合としては、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜30質量%がより好ましく、0.1質量%〜20質量%が特に好ましい。
【0060】
本発明の組成物中に含まれるバインダーとしては、一般に使用される全てのバインダーが使用でき、例えば、カラートナー用バインダー樹脂等が挙げられる。具体的には、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂が特に好ましい。また、複数種の樹脂を混合して用いてもよい。
【0061】
本発明に用いることができるポリエステル系樹脂は、任意のアルコール成分と、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の任意のカルボン酸成分とを原料モノマーとして用い、これらを縮重合させて得られる。
【0062】
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられる。
カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。上記のような酸、並びにこれらの酸の無水物及びアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0063】
ポリエステル系樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒の存在下、180〜250℃の温度で縮重合させることにより得られる。
耐久性及び定着性の観点から、本発明に用いることができるポリエステル系樹脂の軟化点は80〜165℃が好ましく、ガラス転移点は50〜85℃が好ましく、酸価は0.5〜60mgKOH/gが好ましい。
【0064】
なお、本発明に用いることができるポリエステル系樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル系樹脂であってもよい。変性されたポリエステル系樹脂としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル系樹脂をいう。
【0065】
本発明の化合物ならびにその他の添加剤をバインダーに混合・分散する方法としては、高速ディゾルバ、ロールミル、ボールミル等の装置で、溶媒を用いた湿式分散法や、ロール、加圧ニーダー、インターナルミキサー、スクリュー型押し出し機等による溶融混練法などを用いることができる。また、混合手段としては、ボールミル、V型混合機、フォルバーグ、ヘンシェルミキサー等を用いることができる。
【0066】
本発明の前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物は、化合物の変色性の観点から、塩基性化合物を併せて用いることが好ましい。
本発明の化合物と併せて用いることのできる塩基性化合物としては、種々の有機塩基、無機塩基を用いることが可能である。無機塩基としては、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物塩、カルボン酸塩等が挙げられる。具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アルミニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸マグネシウム、ギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酪酸カリウム等が挙げられる。有機塩基としては、例えば、アミン化合物(例えば、アルキルアミン等、好ましくは、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、ピロリジン、ピペリジン等)、含窒素ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、ピロール等)、シッフ塩基(例えば、グアニジン)等が挙げられる。これらの有機塩基は、さらに種々の置換基で置換されていても良い。有機塩基の具体例としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジベンジルアミン、トリヘキシルアミン、ヒューニッヒ塩基、ジシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクテン、ピロリジン、ピペリジン、2,2,6,6−ヘキサメチルピペリジン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、プロトンスポンジ、3−メチルイミダゾール、トリフェニルグアニジン、メラミン、アミノ酸等が挙げられる。無機塩基と有機塩基とでは、バインダへの相溶性の観点から、有機塩基の方が好ましい。塩基性化合物としては、トリアルキルアミン、シッフ塩基、アミノ酸がより好ましく、トリエチルアミン、トリフェニルグアニジンがさらに好ましい。
【0067】
本発明の組成物は、さらにアルコール化合物を含有していても良い。アルコール化合物としては、直鎖・分岐鎖のアルコールであっても良く、置換基を有していても良い。これらのアルコール化合物は高分子であっても良い。高分子アルコールとしては、ポリビニルアルコール、ポリエポキシ、オリゴ糖、多糖、セルロース、デンプン、紙等が挙げられる。
【0068】
本発明の前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素およびそれを用いた組成物は、熱により色相の変化する画像形成材料として用いることができる。
本発明の前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素またはそれを用いた組成物を画像形成材料として用いる場合、該材料中における本発明の化合物の含有量は特に限定されないが、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0069】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法は、本発明の化合物からなる色素または本発明の組成物を含有する画像形成材料を用いて、該画像形成材料に熱を加え、熱による結合解離反応とそれに続く環化反応とが起こることで、その色相を変化させるものである。
【0070】
画像形成材料としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料等が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が挙げられる。中でも、本発明の化合物または本発明の組成物の用途として、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくは電子写真方式を用いる記録材料である。
また、本発明の化合物、本発明の色素または本発明の組成物は、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
本発明の化合物は、その用途に適した溶解性、分散性、熱移動性などの物性を、導入する置換基の種類により調整して使用する。また、本発明の化合物は、用いられる系に応じて溶解状態、乳化分散状態、さらには固体分散状態でも使用することができる。
【0071】
以下、本発明の化合物からなる色素及び本発明の組成物を用いた画像形成材料、及び該材料を用いた画像形成方法について詳細に説明する。
[インク]
本発明のインクは、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素を少なくとも一種含有する。
本発明のインクは、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明のインクは、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明の化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明のインクには、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。本発明のインクは、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0072】
本発明の化合物を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号、特開2001−240763号、特開2001−262039号、特開2001−247788号の各公報に記載の方法のように色素と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散したり、特開2001−262018号、特開2001−240763号、特開2001−335734号の各公報に記載の方法のように高沸点有機溶媒に溶解した本発明の化合物を水性媒体中に分散することが好ましい。本発明の化合物を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、前記アゾ色素を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0073】
分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000(商品名)等)を使用することができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、同11−286637号、特開2001−271003号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0074】
前記水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例は特開2003−306623号公報に記載のものが使用できる。尚、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0075】
本発明のインクまたは本発明のインクジェット記録用インク100質量部中に、本発明の化合物を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、0.5〜9質量部含有するのがさらに好ましい。また、本発明のインクまたはインクジェット用インクには、本発明の化合物とともに、他の色素化合物を併用してもよい。2種類以上の色素化合物を併用する場合は、色素化合物の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0076】
本発明のインクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0077】
さらに、本発明におけるインクジェット記録用インクは、上記本発明の化合物からなる色素の他に別のイエロー染料を同時に用いることができる。適用できるイエロー染料、適用できるマゼンタ染料、適用できるシアン染料としては、各々任意のものを使用する事ができるが、特開2003−306623号公報の段落番号0090〜0092に記載の各染料が利用できる。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0078】
本発明のインクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法としては、インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。なお、本発明のインクジェット記録方法として特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105の記載が適用できる。
【0079】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマーラテックス化合物を併用してもよい。ラテックス化合物を受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。具体的には、特開2002−166638号、特開2002−121440号、特開2002−154201号、特開2002−144696号、特開2002−080759号の各公報、特願2000−299465号明細書、特願2000−297365号明細書に記載された方法を好ましく用いることができる。
【0080】
[カラートナー]
本発明のカラートナーは、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素を少なくとも一種含有する。
本発明のカラートナー100質量部中における本発明の化合物の含有量は特に制限がないが、0.1質量部以上含有するのが好ましく、1〜20質量部がより好ましく、2〜10質量部含有するのが最も好ましい。
本発明の化合物を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては一般に使用される全てのバインダーが使用できる。例えば、スチレン系樹脂・アクリル系樹脂・スチレン/アクリル系樹脂・ポリエステル樹脂等が挙げられる。
トナーに対して流動性向上、帯電制御等を目的として無機微粉末、有機微粒子を外部添加しても良い。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子径が10〜500nmのものが好ましく、さらにはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
【0081】
離型剤としては、従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン・低分子量ポリエチレン・エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス・カルナウバワックス・サゾールワックス・パラフィンワックス等があげられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0082】
荷電制御剤としては、必要に応じて添加しても良いが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するものなどがあげられる。
【0083】
キャリアとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリア、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリアのいずれを使用してもよい。このキャリアの平均粒径は体積平均粒径で30〜150μmが好ましい。
【0084】
本発明のカラートナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行い画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等があげられる。
【0085】
[感熱記録(転写)材料]
本発明のインクシートは、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素を少なくとも一種含有する。
本発明のインクシート中における本発明の化合物の含有量は特に限定されないが、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%が特に好ましい。
本発明のインクシートが用いられる感熱記録材料は、支持体上に本発明の化合物をバインダーとともに塗設したインクシート、及び画像記録信号に従ってサーマルヘッドから加えられた熱エネルギーに対応して移行してきた色素を固定する受像シートから構成される。インクシートは、本発明の化合物をバインダーと共に溶剤中に溶解することによって、或いは溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インクを支持体上に塗布して適宜に乾燥することにより形成することができる。支持体上のインクの塗布量は特に制限するものではないが、好ましくは30〜1000mg/m2である。好ましいバインダー樹脂、インク溶媒、支持体、更には受像シートについては、特開平7−137466号公報に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0086】
該感熱記録材料をフルカラー画像記録が可能な感熱記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成する事が好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されていても良い。
【0087】
[カラーフィルター]
本発明のカラーフィルターは、前記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物からなる色素を少なくとも一種含有する。
本発明のカラーフィルターに用いられる本発明の化合物の量は特に限定されないが、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%が特に好ましい。
カラーフィルターの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号公報で開示されているように色素を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明の化合物をカラーフィルターに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いても良いが、好ましい方法としては、特開平4−175753号公報や特開平6−35182号公報に記載されたところの、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、色素及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物、並びに、それを基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルターの形成方法を挙げる事ができる。又、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY、M、C補色系カラーフィルターを得ることができる。カラーフィルターの場合も本発明の化合物の使用量に特に制限はないが、0.1〜50質量%が好ましい。
【0088】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、及び溶剤とそれらの使用量については、前記特許文献に記載されているものを好ましく使用することができる。
【0089】
画像形成材料を塗布/担持させる媒体としては、固体であっても液体であっても良いが、固体である方が好ましい。固体媒体としては、金属、高分子組成物、無機物、無機物、およびそれらの複合体が含まれる。中でも、高分子組成物含む媒体が好ましく、紙がより好ましい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0091】
実施例1
(化合物(A)の調製)
室温、大気雰囲気下でフルオラテン化合物(1)5.53g、無水硫酸マグネシウム4.81g、t−ブチルアルコール4.8mL、塩化メチレン40mLの混合物に濃硫酸(0.55mL)を滴下し、室温下で60時間攪拌した。得られた混合物に水10mLと炭酸カリウム10gを加え、10分間攪拌した。得られた混合物を濾過し、黒色の溶液を得た。この溶液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)により精製することで、黒色化合物として化合物(A)0.20gを得た。
1H NMR:0.80−1.90(m,23H),3.60−3.95(m,4H),6.80(d,1H),6.90(dd,1H),6.99(d,1H),7.06−7.50(m,6H),7.65−7.88(m,4H),8.20(d,1H) 300 MHz in CDCl3
MALDI−MS:nega 95.91(HSO4-
【0092】
【化18】

【0093】
実施例2
(化合物(B)の調製)
室温、大気雰囲気下でフルオラテン化合物(1)5.53g、無水硫酸マグネシウム4.81g、2−メチル−1−ペンテン6.2mL、塩化メチレン40mLの混合物に濃硫酸1.1mLを滴下し、室温下で12時間攪拌した。得られた混合物に酢酸ナトリウム5gを加え、3時間攪拌した。得られた混合物を濾過し、黒色の溶液を得た。この溶液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)により精製することで、黒色化合物として化合物(B)0.50gを得た。
1H NMR:0.72(t,3H),0.91−1.16(m,14H),1.33−1.58(m,6H),1.65−1.87(m,4H),3.60−3.95(m,4H),6.80(d,1H),6.88(ddd,1H),7.01(d,1H),7.10(ddd,1H),7.17(dd,1H),7.34(ddd,2H),7.40−7.45(m,2H),7.68(t,1H),7.74(dd,1H),7.80(dd,1H),7.85(d,1H),8.16(d,1H) 300 MHz in CDCl3
MALDI−MS:nega 95.91(HSO4-
【0094】
実施例3
(薄膜試料No.101の作製)
ポリエステル樹脂(ニチゴーポリエスターHP325(商品名)、日本合成化学製)に対し、フルオラテン化合物(1)1質量%と顕色剤1質量%とを130℃で3分間加熱しながら分散させ、冷却後に分散物を乳鉢で粉砕した。得られた粉末をギャップ64μmのガラスセルに130℃で溶融注入し、薄膜試料No.101を作製した。
(薄膜試料No.102〜104の作製)
顕色剤を添加しないこと以外は試料No.101と同様にして試料No.102を作製した。
また、フルオラテン化合物(1)を化合物(A)又は(B)に代えたこと以外は試料No.102と同様にして試料No.103及び104を作製した。
(呈色性評価)
得られた各サンプルを分光光度計(SHIMADZU製UV−3600、商品名)により可視域(350−800nm)における吸光度を測定した。結果を図1及び表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
図1及び表1の結果から明らかなように、フルオラテン化合物(1)は、顕色剤を添加することではじめて呈色する。これに対し、本発明の化合物は顕色剤の添加が不要であり、かつ優れた呈色性を示すことがわかった。
【0097】
実施例4
(薄膜試料No.201〜211の作製)
ポリエステル樹脂(ニチゴーポリエスターHP325(商品名)、日本合成化学製)に対し、下記表2に示す色素、顕色剤及び塩基性化合物をそれぞれ1質量%、1質量%、5質量%ずつ、130℃で3分間加熱しながら分散させ、冷却後に分散物を乳鉢で粉砕した。得られた粉末をギャップ64μmのガラスセルに130℃で溶融注入し、薄膜試料No.201〜211を作製した。
(変色性の評価)
得られた各サンプルを分光光度計(SHIMADZU製UV−3600、商品名)により可視域(350−800nm)における吸光度を測定した。次にこれらのサンプルを200℃で1分間加熱し、冷却後、再度吸光度を測定した。測定結果をもとに、加熱前後における色素の変色の度合いを示すコントラスト比を算出した。なお、コントラスト比は、(200℃で加熱前の最大吸光度)/(200℃で加熱前の最大吸光度を示した波長における200℃で加熱後の吸光度)で定義した。結果を表2に示す。また、試料No.203〜205の吸光度を図2〜4に示す。
【0098】
【化19】

【0099】
【表2】

【0100】
表2から明らかなように、フルオラテン化合物(1)は熱によっては色相が変化せず、塩基性化合物(消色剤)を添加することではじめて消色した。
これに対し、本発明の化合物はすべて熱により色相が変化し、顕色剤を添加することなく良好なコントラスト比が得られた。このことから、本発明の化合物を用いれば、顕色剤や消色剤等の添加剤の大幅な削減が可能となることがわかった。
また、本発明の化合物に塩基性化合物を加えることで、さらに高いコントラスト比を達成することができた。すなわち、本発明の化合物は良好な熱変色性を実現できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】試料No.101,103及び104の吸収スペクトルを表す。
【図2】試料No.203の吸収スペクトルを表す。
【図3】試料No.204の吸収スペクトルを表す。
【図4】試料No.205の吸収スペクトルを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】

[式中、X1〜X4及びX21〜X24は、互いに独立して−CR=または−N=を表す。Rは水素原子または置換基を表す。
42は、置換もしくは無置換の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表す。
Ar11は、アリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar11は、置換基を有していても良い。Ar11が置換基を有する場合、該置換基はX2とともに環を形成しても良い。
31,R32は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。
41は、熱によりX42−R41間の結合が開裂可能な置換基を表す。
n-は、n価の対アニオンを表す。
nは1以上の整数を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【化2】

[式中、R101〜R104,R111〜R115及びR121〜R124は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。
131及びR132は、前記一般式(1)のR31及びR32と同義である。
141は、前記一般式(1)のR41と同義である。
1n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【化3】

[式中、R201〜R204、R212〜R215及びR221〜R224は、互いに独立して水素原子または置換基を表す。
231及びR232は、前記一般式(1)のR31及びR32と同義である。
241は、前記一般式(1)のR41と同義である。
2n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする、請求項2記載の化合物。
【化4】

[式中、R301〜R304、R311〜R315、R321〜R324、R331及びR332は、前記一般式(2)のR101〜R104、R111〜R115及びR121〜R124、R131及びR132とそれぞれ同義である。
341〜R343は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
3n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【請求項5】
前記一般式(3)で表される化合物が下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする、請求項3記載の化合物。
【化5】

[式中、R401〜R404、R412〜R415、R421〜R424、R431及びR432は、前記一般式(3)のR201〜R204、R212〜R215、R221〜R224、R231及びR232とそれぞれ同義である。
441〜R443は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
4n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【請求項6】
前記一般式(5)で表される化合物が下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする、請求項5記載の化合物。
【化6】

[式中、R501〜R504、R512、R515及びR521〜R524は、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアルキル基を表す。
513及びR514は、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基または置換もしくは無置換の窒素原子を表し、R513及びR514の少なくとも一方は置換の窒素原子である。また、窒素原子上の置換基はアリール基またはアルキル基である。
531及びR532は、互いに独立してアルキル基を表す。
541〜R543は、互いに独立して置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
5n-は、前記一般式(1)のYn-と同義である。
nは、前記一般式(1)のnと同義である。]
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物からなる色素。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物からなる色素とバインダーとを含有する組成物。
【請求項9】
塩基性物質を含有する請求項8記載の組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の組成物を含有する画像形成材料を加熱し、熱による結合解離反応とそれに続く環化反応とにより該画像形成材料の全部又は一部の色相を変化させる工程を含む画像形成方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有するインク。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有するインクジェット記録用インク。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有する感熱転写記録用インクシート。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有するカラートナー。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物からなる色素を少なくとも一種含有するカラーフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−90341(P2010−90341A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264161(P2008−264161)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】