説明

芳香性シート

【課題】本発明は、製造工程が簡単で、リワーク性があり、被着面への糊残りがなく、且つ芳香剤添加による接着力不良が無く、適度の芳香が長期間放散され、好ましくはさらに透視性が優れた、表面保護用に適した芳香性シートを提供する。
【解決手段】粘着剤層として、主成分として熱可塑性エラストマーで例示される材料及びナフテンオイル及び/又は流動パラフィンで例示される可塑剤から成る粘着剤成分と、これと相溶性がある芳香成分とを主成分とする粘着剤を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香性シートに関し、さらに詳しくは構成が簡単で、且つ適度の芳香が長期間放散され、リワーク性を有する芳香性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工時や搬送時の傷付きや汚れから保護するために、合成樹脂板、化粧合板、金属板、塗装鋼板等の表面に、基材フイルムの片面に粘着層が積層された表面保護用粘着フイルムを被覆して使用されている。また、テレビやパソコン、携帯電話などのフラットパネルディスプレイのディスプレイ画面は、使用中でもディスプレイ画面の表面の傷付きや汚れから保護するため、表面保護用粘着フイルムを貼り付けた状態で使用されることが多い。そして、近年、使用時の快適性の改善のため、表面保護用粘着フイルムに芳香性を付与することが試みられている。
【0003】
上記のような粘着フイルムに芳香性を付与する方法として、(1)基材フイルムの原料であるポリオレフィン樹脂に、極性基を有するモノマーを構成単位として含む樹脂および香料を添加して芳香性を付与する方法(特許文献1)が提案されている。また、粘着剤層に芳香性を付与するために、接着剤組成物中に芳香剤を直接添加しようとすると、接着剤の主剤と相溶性が低く、芳香剤が接着剤層表面にブリードして表面の接着性を損なうという問題があるため、(2)無数の微小なシリカやセピオライト等の多孔質セラミックスから成る保持基体に芳香剤を含浸或いは吸着等させたもの、或いは粉末体や小粒体に芳香剤を担持させたものを接着剤に添加して芳香性を与える方法(特許文献2)や、(3)香料入りマイクロカプセルを支持体および/または熱接着層中に含有させて芳香性を付与する方法(特許文献3)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−201374号公報
【特許文献2】特開平11 −089922号公報
【特許文献3】特開平11 −149172号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の基材フイルムは、その表面全体が大気に露出しているために、添加された香料が基材フイルムの全表面から放散されるため芳香の強さが強すぎて悪臭になったり、適度の放散速度に調節するために添加量を減少すると放散する寿命が短期間となるという欠点がある。また、上記の特許文献2および特許文献3に記載の接着剤層は、接着剤成分中に粉体またはカプセルが添加されることになるため、粉体やカプセルの準備が必要となり、製造工程が複雑であると共に、通常、接着剤層の透明性が損なわれる。従って、前記のディスプレイ表面に保護フイルムとして貼り付ける用途においては、透視性を損なうという欠点がある。また、通常の粘着剤は、一旦貼付した後剥離すると、剥離面に糊残りが生じたり、再び貼付しようとしてもきれいに貼付できないといったリワーク性に乏しいという欠点もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の欠点を改良し、製造工程が簡単で、リワーク性があり、被着面への糊残りがなく、且つ芳香剤添加による接着力不良が無く、適度の芳香が長期間放散され、好ましくはさらに透視性が優れた、表面保護用に適した芳香性シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、基材シートの片面または両面に粘着剤層を設けた芳香性シートであって、粘着剤として、粘着剤成分と相互に相溶性がある芳香成分とを主成分とする粘着剤を使用することを特徴とする芳香性シートにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の芳香性シートは、粘着剤層が相互に相溶性がある粘着剤成分と芳香成分とを主成分としているため芳香成分を二次加工することなくそのまま配合できて工程が簡単であり、芳香成分を粘着層に添加しているにも拘わらず粘着層の透明性がよく、そして、接着性に関しては、接着面に気泡を巻き込まずに容易に貼付することができ、リワーク性があり、被着面への糊残りが無く、且つ芳香成分のブリードが無いため粘着力不良がない。且つ、薄い接着層端面から適度の芳香を長期間に亘って放散できる。
なお、上記のリワーク性とは、粘着剤層表面を被着体に一度粘着した後に剥離し、その粘着面を、同じ被着体に再度粘着させたとき、最初の粘着したときと同程度の粘着性を呈し且つ粘着界面の肌荒れが無い性質をいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の芳香性シートは、基材シートの片面または両面に芳香成分を含む粘着剤層を設けて成る。
【0010】
上記の基材シートは、粘着層を支持する要素であり、かかる基材シートとしては、その目的に応じて適宜選択されるが、例えば、従来知られている種々の粘着シートの基材シートとして使用されているシート類を採用することができ、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂類の他、ポリオレフィン樹脂類、ポリアミド樹脂類、ポリカーボネート樹脂類、ポリイミド樹脂類、アクリル系樹脂類、ポリ塩化ビニル系樹脂類などのプラスチック類、およびそれらの2種以上の混合樹脂から成るシート、セロハン類、紙類、木質シート、金属シート及び陶器板を挙げることができる。なお、上記の紙類、木質シートなどの芳香成分の透過性が大きすぎる場合は、芳香成分の透過性を抑制して実質的に不透過性にするため、他の不透過性フイルム等と積層するか不透過性樹脂を含浸または塗布して使用する。
【0011】
上記の基材シートには、所望により、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内において他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、老化防止剤、充填材、紫外線吸収剤、帯電防止剤および/または電磁波防止剤を含有させることができる。また、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内において2種類以上のシート類を積層したものであってもよい。
【0012】
なお、本発明の芳香性シートの用途が、ディスプレイ表面など透視性が重要な用途に使用する場合は、基材シートとして透明性のものが好適に使用される。かかる用途には、特に自己粘着性が好まれ、また、貼付の容易さの観点から、特にPETフイルムが好ましい。かかるPETフイルムの市販品としては、例えば、ルミラー50T60(商品名、東レ株式会社製)やエンブレット38SC(商品名、ユニチカ株式会社製)を挙げることができる。なお、上記の自己粘着性とは、実質的にこの粘着剤層を積層した粘着フイルムが自重による圧力により被着面に対して粘着性を示す特性をいう。
【0013】
上記の基材シートの厚さは、用途により適宜選択されるが、表面の保護性、可撓性、芳香剤の透過抑制性あるいはその使用目的の観点から、通常10μm〜10mm程度であり、シート状または板状のものでも適用できるが、単に表面保護の場合は25〜350μm、ディスプレイ表面などの保護の場合など、より実用的には、25〜70μmである。これらの基材シート表面の接着性が低い場合は、その粘着剤層を形成する表面には、必要により易接着化処理、例えばコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理などの表面処理を行うことができるが、通常はコロナ処理が実用的に採用される。
【0014】
上記の表面処理の代わりに又は表面処理に加えて、基材シートと当該粘着剤層との接着性を向上させるため、必要により、基材シート表面に予めアンカー用接着剤層を設けることもできる。上記のアンカー用接着剤層としては特に限定するものではないが、後述の粘着剤層成分に鑑みて、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分として含む接着剤成分が好適に挙げられる。
【0015】
上記のアンカー用接着剤層を構成するカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、種々のカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを使用することができる。上記のカルボン酸変性は、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヒメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸;並びに、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸によるものであってもよい。これらの中で、脂肪族不飽和ジカルボン酸による変性であるものが好ましく、さらに好ましくは、マレイン酸による変性であるものが好ましい。
【0016】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーは、例えば水添されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーであってもよく、例えば、水添されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマー、具体的にはマレイン酸変性SEBSエラストマーが挙げられる。また、上記の水添された熱可塑性エラストマーとして水添されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを用いる場合、そのメルトインデックスが、例えば、200℃、5kgの条件下で、2.5〜25g/10分であるものが好ましく、3〜7g/10分であるものがより好ましい。
【0017】
また、本発明において、水添されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを用いる場合、水素添加率が実質的に100%であるものが好ましいが、本発明の効果が得られる限りそれ未満であってもよい。また、カルボン酸変性SEBSエラストマーを用いる場合、そのスチレン:エチレン+ブチレンの質量比は、例えば10:90〜40:60であるのが好ましく、20:80〜30:70であるのがより好ましい。さらに、水添されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーの酸価は、好ましくは2〜10である。その範囲の中で、酸価が3未満のものは無色透明とすることができ、一方、酸価が3〜10のものは黄色がかったものとすることができる。上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーまたはその水素添加物として市場で入手されるものとして例えば、タフテックM1911、M1913、M1943(以上、商標、旭化成工業株式会社製)、およびFG−1901X(商標、クレイトンポリマー社製品)などを挙げることができる。
【0018】
上記のアンカー用接着剤層に配合する架橋剤は、その種類は特に制限されず、使用するカルボン酸変性熱可塑性エラストマーの種類などを考慮して適宜決定することができるが、例えば、コロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート−ビュレット型)(商標、日本ポリウレタン工業株式会社製品)を用いることができる。
【0019】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤との配合比は、特に制限されないが、基材シートとの接着性および上記の粘着層との接着性の、双方の接着性のバランスとの観点から、例えば、100:1〜2:1とするのが好ましく、100:1〜4:1とするのがより好ましく、50:1〜12:1とするのがさらに好ましい。
【0020】
上記の接着剤成分には、上記の主成分の他に、耐電防止剤などの添加剤を添加することができる。上記の帯電防止剤としては、例えば、カチオン性帯電防止剤であるエレガン264wax(商標、日本油脂株式会社製)を挙げることができ、その添加量は、上記の接着剤の質量に対して、通常0.1〜3.6質量%好ましく、0.6〜1.8質量%とされる。このような添加量範囲にすることにより、いわゆる「ゆずはだ」の発生を良好に防止することができる。
【0021】
前記のアンカー用接着剤層は、上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマー、架橋剤およびその他の添加剤の配合品を適当な有機溶剤に溶解して接着剤液とし、前記の基材シート表面に塗布し、乾燥して形成される。上記の有機溶剤としては、上記のエラストマーに対する溶解性があるものであれば特に制限されないが、例えば、トルエンを好適に挙げる事ができる。また、その使用量は溶液を接着剤液として使用できればよく、通常、上記の主要成分であるエラストマーおよび可塑剤の合計100質量部に対して200〜500質量部、好ましくは250〜350質量部とされる。
【0022】
上記の接着剤液の塗布方法は、公知の方法でよいが、具体例としては、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーターなどを用いた方法が挙げられる。そしてその塗布量は、特に制限されないが、通常、乾燥後の厚さが1〜50μm、好ましくは1〜15μm、さらに好ましくは2〜5μmとされる。上記の接着剤液塗布層は、通常80〜150℃の温風中で20〜60秒間、好ましくは100〜130℃の温風中で30〜50秒間乾燥することによりアンカー用接着剤層を形成し、後述の粘着剤層のアンカー層として適用することができる。
【0023】
前記の粘着剤層は、通常、基材シートの表面上に、または製品の用途または必要特性により上記のようにして形成されたアンカー用接着剤層の表面上に、形成される。
【0024】
上記の粘着剤層は、熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分する粘着剤成分と、さらに、当該粘着剤成分と実質的に相溶性がある芳香成分を含む。上記の粘着剤成分組成は、熱可塑性エラストマーが可塑剤により可塑化され、凝集力が低下して自己粘着性が向上するように組み合わせて選択される。
【0025】
上記の性質を有する熱可塑性エラストマーとして、特に制限されないが、例えば、スチレンモノマーのブロックとゴムモノマーのブロックから成るブロックセグメントで構成されているものを挙げることができる。かかる熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン−ポリブチレン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリイソプレン(SI)、ポリスチレン−ポリブチレン(SB)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)などを挙げることができる。
【0026】
上記のエラストマーの重合度は、添加する可塑剤の種類、添加量、粘着剤として期待する特性により適宜選択することができるが、例えば、SEBSの場合、その質量平均分子量として、通常15,000〜500,000のものが好適に使用され、100,000〜500,000のものがより好適に使用される。
【0027】
また、上記の可塑剤は、上記のエラストマーに添加して自己粘着性を付与するのに効果的であるが、かかる可塑剤としては、使用する熱可塑性エラストマー成分がポリスチレン相とゴム相とを有する場合は、ゴム相に対する親和性が高くポリスチレン相に対する親和性が低い高分子量の化合物が好ましく、かかる可塑剤としてはナフテンオイル及び/又は流動パラフィンが好ましい。
【0028】
上記のナフテンオイルとして、その引火点が、100〜300℃のものが好ましく、150〜280℃のものがより好ましい。また、その流動点が、−30〜−5℃のものが好ましく、−25〜−10℃のものがより好ましい。また、その比重が、0.83〜0.87であるものが好ましく、0.837〜0.868であるものがより好ましい。さらに、その炭素数が3〜8であるものが好ましく、5〜6のものがより好ましい。
【0029】
一方、流動パラフィンの場合は、その引火点が、100〜300℃のものが好ましく、150〜280℃のものがより好ましい。また、その流動点が、−30〜−5℃のものが好ましく、−25〜−10℃のものがより好ましい。また、その比重が、0.89〜0.91であるものが好ましく、0.8917〜0.9065であるものがより好ましい。さらに、その炭素数が20〜35であるものが好ましく、21〜33のものがより好ましい。上記の粘着剤成分を構成する主要成分である熱可塑性エラストマーと可塑剤との混合比は、質量比として、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の範囲とされる。
【0030】
前記の芳香成分は、上記の粘着剤成分と実質的に相溶性があるものの中から、製品の芳香性シートの使用環境、使用者の嗜好などを勘案して適宜選択して使用され、その際、希望により2種または3種以上を組み合わせて配合することができる。
【0031】
上記の芳香成分の内、液体状成分としては、例えば酢酸リナリル(ペルガモットに似た香り)、サリチル酸イソアミル(蘭のような香気)、サリチル酸ベンジル(ごくわずかな甘い香り)、酢酸テルピニル(ラベンダーに似た香り)、酢酸トリシクロデセニル、酢酸ブチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル(ジャスミンの香気)、酢酸オイゲノール(丁香のような香気)、酢酸ゲラニル(バラの花の香り)酢酸シトロネリル(ローズ調の果実のような香り)酢酸シンナミル(おだやかな甘い花香)、酢酸ジヒドロテルピニル(フレッシュなパインシトラスのような香気)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(ライラック)、ゲラニオール(バラに似た弱い花香)、酢酸イソアミル(洋梨に似た芳香)、酢酸イソオイゲノール、酢酸イソブチル(甘い果実のようなフレーバ)、ケイ皮酸エチル、クミンアルデヒド(カレーの香気)、ケイ皮アルデヒド、l−カルボン(スペアミント油のような匂い)、ギ酸エチル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、カプリル酸エチル(パイナップルに似た香気)、カプロン酸アリル(パイナップルに似た香気)、カプロン酸エチル(リンゴ、梨に似た香気)、ガラクソリド、エチル−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(甘いグリーンノート)、エチレンドデカンジオエート(ムスク香)、エチレンブラシレート(ジャ香)、オイゲノール(丁子に似た香気)、10−オキサヘキサデカノリド(ジャ香)、イソ吉草酸エチル、イソチオシアン酸アリル(特異な強い刺激臭)、イロン(バイオレット香)、γ−ウンデカラクトン(油気くさい香気)、ウンデシレンアルデヒド(ローズシトラスのような香気)、安息香酸メチル、イソオイゲノール(カーネーションに似た香気)、イソカンフィルシクロヘキサノール(ムスクのようなサンダルウッド香)、イソ吉草酸イソアミル(リンゴ、バナナに似た香気)、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド(さんざしのような匂い)、リモネン及びペンテン、ロジノール(ローズ、ゼラニウムのような香気)、酪酸イソプロピル(強い果実のような香気)、酪酸エチル(果実のような香気)、酪酸ブチル(果実のような香気)、リナロール(スズランの香気)、α−ヨノン、酪酸イソアミル(西洋ナシ、バナナの芳香)、エチルフェニルグリシッド酸エチル(イチゴの芳香)、p−メチルアセトフェノン(さんざしの花に似た芳香)、プロピオン酸ベンジル(バナナ、ストロベリーの果実香)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(甘い香気)、ベンジルアルコール(クリーム香料)、フェニル酢酸エチル(蜂蜜のような香気)、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(ユリの香気)、プロピオン酸イソアミル(パイナップル、梨に似た香気)、プロピオン酸エチル(パイナップルの芳香)、ヒドロキシトロネテール(ユリの花)、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(スズランのような香気)、フェニルアルデヒド(ヒヤシンスの優れた花香)、β−フェニルエチルアルコール、β−ナフチルメチルアルコール(ココナットの香気)、ジメチルベンジルカルビノール(ライラック、ナルシス)、ジャスミンラクトン、デシルアルデヒド(花のような芳香)、テトラヒドロリナロール(ローズ、リリーのような芳香)、テルピネオール(ライラックの香気)、1,8−シネオール(ショウノウのような香気)、ジヒドロジャスミン酸メチル(ジャスミンのような香気)、ジヒドロジャスミン(強い花香)、シトラール(レモンの強い香気)、シトロネラール(サンショウの香り)、シトロネロール(バラのような香り)、シクロヘキシルプロピオン酸アリル(パイナップルの香気)、酢酸リナリル(ベルガモットに似た香り)、サリチル酸イソアミル(蘭のような香気)、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル(ウインターグリーンに似た強い香り)及びこれらの変性物を挙げることができる。
【0032】
上記の芳香成分の内、固体成分としては、例えば、酢酸イソオイゲノール、テトラヒドロナフタレン、エチルバンリン、ケイ皮酸、酢酸セドリル、β−ナフチルメチルエーテル、バニリン、ローズフェノン等およびこれらの変性物が挙げられる。
【0033】
粘着剤成分への上記の芳香成分の添加量は、とくに限定されるものではないが、芳香成分が増加するにつれて粘着性が低下するため、通常、熱可塑性エラストマーおよび可塑剤を主成分とする粘着剤成分の固形分に対して20質量%以下、実用的には1〜15質量%とされる。
【0034】
上記の粘着剤成分および芳香成分は、通常これらの成分を共通して溶解できる溶剤、例えば、トルエンに溶解して、粘着剤液とし、前記の基材シートまたはアンカー用接着剤層が表面に形成された基材シートの片面または両面に塗布し、乾燥して、粘着剤層が形成される。上記の溶解に使用する有機溶剤の使用量は、特に限定するものではないが、通常、上記の主要成分であるエラストマーおよび可塑剤の合計100質量部に対して、通常200〜400質量部、好ましくは250〜350質量部とされる。
【0035】
前記の粘着剤層の塗布量は、通常、乾燥後の厚さが10〜100μm、実用的には25〜50μmとされる。上記の塗布方法は、公知の方法でよいが、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーターなどを用いた方法が挙げられる。そして、上記の塗布層は、通常、80〜150℃の温風中で30〜120秒間、好ましくは100〜130℃の温風の中で40〜90秒間乾燥することにより粘着剤層を形成し、本発明の芳香性シートを得る事ができる。
【0036】
上記のようにして粘着層が形成された芳香性シートの粘着剤層の表面には、製造工程中の必要性、実用前の段階での芳香成分の放散の防止、および表面の粘着性の保護などのために、離型層を設けることができる。かかる離型層は、上記のように実用前の段階での芳香成分の放散を防止する作用に鑑み、芳香成分の透過を抑制しうる素材のものが好ましく、かかる離型層としては、例えば、表面にシリコーン処理したPETフイルム、シリコーン処理したポリオレフィンフイルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、上記の製造工程において、アンカー層用接着剤層を設けた場合は、得られた芳香性シートの品質の安定のため、使用または出荷の前に、40〜80℃の環境下で2〜60日間エージングが行うのが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に本発明を、実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
基材シートとして、厚さ75μmのPETフイルム(ルミラー75T60、東レ株式会社製:以下基材PETフィルムという)を使用した。次に、粘着剤塗布液として、SEBSエラストマー(質量平均分子量250,000)17質量部と可塑剤としてのナフテンオイル(引火点220℃、流動点−25℃、比重0.8387、炭素数5〜6)83質量部とをトルエン270質量部を用いて溶解した後、芳香成分としてグレープフルーツの香りを呈するAR25204(商品名、小川香料株式会社製)10質量部を添加し、よく攪拌・溶解して粘着剤塗布液を得た。この塗布液をメイヤーバーを使用して上記基材シートの片面に塗布し、100℃の熱風中で1分間加熱乾燥して厚さ45μmの粘着剤層を有する芳香性シートを得た。この芳香性シートの粘着剤層の表面に離型層として表面をシリコーン処理した厚さ75μmのPETフイルム(以下、離型フィルムという)を積層した。
【0039】
上記の芳香性シートから3試験片を採り、離型フィルムを剥離した後、C光源用ヘーズメーターHGM−2(スガ試験機株式会社製)を使用して、各シートの、全光透過率を測定したところ、すべて90%以上であった。
【0040】
(1)上記の芳香性シートから幅25mm、長さ250mmの短冊形試験片を裁断し、島津製作所性AUTOGRAPH AGS−50Dを用い、JIS Z 0237号の粘着力試験方法に準じて粘着剤層表面の離型フイルムを剥離した後、その粘着剤層表面を、被着体としてのガラス面に圧着し、粘着面の巻き込み気泡の有無を評価した後、30℃で30分後放置したものと80℃オーブン内に30分間放置したものについて、剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で芳香性シートを剥離して、粘着面と被着体としてのガラス面との間の粘着力(粘着面粘着強度)を測定し、各3試験片の測定値の平均値を粘着力とした。さらに上記のガラス板側の剥離面の糊残り状態を100倍の顕微鏡で観察した。次いで、リワーク性評価のため、30℃でエージングした試験片について、その粘着面をガラス面に再度圧着し、粘着界面の肌荒れを観察した後、引き続いて上記の要領で再度、剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で剥離して、粘着面とガラス面との間の粘着力(粘着面粘着強度)を測定し、各3試験片の測定値の平均値を再粘着時の粘着力とした。
【0041】
(2)また、別に、上記(1)の場合と同様にして作製した試験片の基材PETフィルム面を、厚さ5mmのポリプロピレン板から成る試験板表面に両面粘着テープを介して固定し、粘着剤層表面に、被着体としてのPETフイルム(厚さ25μm、幅25mm)を圧着し、粘着面の巻き込み気泡の有無を評価した後、上記の(1)の場合と同様にして30℃と80℃による30分間のエージング処理をした後、剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で芳香性シートを剥離して、粘着面と被着体としてのPETフイルム面との間の粘着力(粘着面粘着強度)を測定し、各3試験片の測定値の平均値を粘着力とした。さらに上記の被着体としてのPETフイルム側の剥離面の糊残り状態を100倍の顕微鏡で観察した。次いで、リワーク性を評価のため、30℃でエージングした試験片についてその粘着面に被着体としてのPETフイルムを再度圧着し、粘着界面の肌荒れを観察した後、引き続いて上記の要領で剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で芳香シートを剥離して粘着面と被着体としてのPETフイルム面との間の粘着力(粘着面粘着強度)を測定し、各3試験片の測定値の平均値を再粘着時の粘着力とした。
【0042】
(3) また、別に、上記(1)の場合と同様にして作製した試験片について、基材PETフイルム面を厚さ5mmのポリプロピレン板から成る試験板表面に両面粘着テープを介して固定し、粘着剤層表面に離型フイルムを積層した状態で30℃による30分間のエージング処理をした後、離型フイルムを取り除き、基材PETフイルムと粘着剤層との界面に剥離口を設けた後、粘着剤層を掴んで、剥離角度90度法により、剥離速度毎分300mm条件で粘着剤層の剥離を続けて、基材PETフイルム面と粘着面との間の粘着力を測定し、各3試験片の測定値の平均値を粘着力とした。
なお、80℃による30分間のエージング処理をしたものは、基材PETフイルム面と粘着面との間の粘着力が強く、粘着剤層との界面に剥離口を設ける段階で粘着剤層が切断したため、測定を中止した。
【0043】
(4)また別に、得られた本発明の芳香性シートから、縦10cm、幅6cmの試験片を裁断し、表面の離型フイルムを剥離し、露出した粘着剤面を、被着体としての縦29cm、幅21cmのソーダガラス板の表面に貼付して芳香耐久性評価用試験体とした。この貼付の時、粘着剤面は気泡を巻き込まずに滑らかにガラス面に吸い付けられるように貼付することができた。この試験体を通風がよく室温が10〜30℃の範囲内で変動した静かな室内のテーブル上に載置し、毎週1回、上記の試験体の上方約30cmの位置に顔を近づけて、試験体に含まれる芳香成分に由来する芳香を嗅ぎ取り、芳香を感じることができなくなるまでの期間、すなわち芳香耐久性の評価を続けた。その結果、6ヶ月経過した後もなお芳香を感知することが出来た。以上の各結果を表1に示した。
【0044】
[実施例2]
アンカー層用接着剤液として、マレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業株式会社製)13質量部を、トルエン87質量部中に投入し、プロペラ攪拌機を用いて溶解した。この溶液100質量部に対してコロネートHLの1.04質量部と、帯電防止剤としてエレガン264waxの0.13質量部とを常温において添加して、接着剤液を得た。この接着剤液を、メイヤーバーを使用して実施例1において使用したものと同じ基材シートに塗布し、120℃の熱風中で40秒間乾燥して、厚さ2μmのアンカー用接着剤層を形成した。上記のアンカー用接着剤層の上に、実施例1の場合と同様にして粘着剤層を乾燥後の厚さが45μmとなるように塗布し、乾燥して芳香性シートを得た。
【0045】
上記の芳香性シートの粘着剤層の表面に離型層として表面をシリコーン処理した厚さ75μmのPETフイルムを積層し、次いで45℃の室内において4日間エージングを行った後、実施例1の場合と同様に、粘着面の巻き込み気泡の有無、透明性、芳香耐久性、粘着力(粘着面−被着体としてのガラス面間、粘着面−被着体としてのPETフイルム面間、基材PETフイルム面−粘着剤層間)、各剥離面の糊残りを評価した。さらに、リワーク性の評価のため、30℃でエージングした試験片の剥離面について、それぞれの被着体と再粘着し、その時の粘着界面の肌荒れ及び粘着力を評価し、それらの結果を実施例1の場合と同様に表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
上記の実施例の結果(表1)から明らかな様に、何れの試験片においても、最初の粘着界面には気泡は巻き込まれておらず、剥離面において再粘着した界面にも気泡は巻き込まれておらず、且つ肌荒れも無かった。また、透明性、芳香の耐久時間も十分満足できるレベルにあり、更に、粘着力については、80℃の高温エージングを行わなかったものは、一旦剥離した後再度粘着しても、粘着力の低下は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の芳香性シートは、粘着剤層が相互に実質的に相溶性がある粘着剤成分と芳香成分とを主成分としているため芳香成分を二次加工することなくそのまま直接配合できて工程が簡単であり、芳香成分を粘着層に添加しているにも拘わらず粘着層の透明性がよく、そして、接着性に関しては、接着面に気泡を巻き込まずに容易に貼付することができ、リワーク性があり、被着面への糊残りが無く、且つ芳香成分のブリードが無いため粘着力不良がない。且つ、薄い接着層端面から適度の芳香を長期間に亘って放散できる。
従って、実質的に透明性を有する基材シートを使用して、例えば、各種フラットパネルディスプレイのディスプレイ画面の保護シートとして使用した場合には、画面の透視性を損なうことがないため、特に、その産業的効果は大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に芳香を通過させない基材シートの片面または両面に粘着剤層を設けたシートであって、粘着剤層が、粘着剤成分とこれと実質的に相溶性がある芳香成分とを主成分とする粘着剤から成ることを特徴とする芳香性シート。

【請求項2】
粘着剤成分が主成分として熱可塑性エラストマー及び可塑剤から成ることを特徴とする請求項1に記載の芳香性シート。

【請求項3】
熱可塑性エラストマーがスチレンモノマーのブロックとゴムモノマーのブロックから成るブロックセグメントで構成されているポリマーであることを特徴とする請求項2に記載の芳香性シート。

【請求項4】
可塑剤がナフテンオイル及び/又は流動パラフィンであることを特徴とする請求項2または3に記載の芳香性シート。

【請求項5】
粘着剤層がリワーク性を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の芳香性シート。

【請求項6】
基材シートがプラスチックフイルムであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の芳香性シート。

【請求項7】
基材シートが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルムであることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の芳香性シート。


【請求項8】
粘着剤層上に離型層が設けられていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の芳香性シート。

【請求項9】
粘着剤層と基材シート層との間に、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とするアンカー用接着剤層を介在させて成ることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の芳香性シート。

【請求項10】
全体として実質的に透明であることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の芳香性シート。

【請求項11】
フラットパネルディスプレイのディスプレイ画面の保護フイルムとして使用することを特徴とする請求項10に記載の芳香性シート。

【公開番号】特開2006−2064(P2006−2064A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180802(P2004−180802)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】