説明

芳香族シリコン含有化合物、及び該化合物を含む光受容体の架橋シロキサン最外層

【課題】電子写真用光受容体の最外保護層において使用可能な化合物を提供する。
【解決手段】 以下の式を有する芳香族シリコン含有化合物。
Ar−[X−L−SiRn(OR’)3-nm
ここで、Arは芳香族を表し、Xは二価基または三価基を表し、Lは二価連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R’はアルキル基を表し、nは0〜2の整数であり、そしてmは1〜5の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族シリコン含有化合物、電子写真用光受容体等に用いられるシリコン含有最外保護層における該芳香族シリコン含有化合物の使用、及び、該保護層を有する光受容体を含むプロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。本発明は、該芳香族シリコン含有化合物、架橋シロキサン最外保護層、電子写真用光受容体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼログラフィーまたは電子写真印刷/コピーにおいては、光受容体と呼ばれる帯電保持デバイスが、静電気的に帯電する。最適な画像作成のために、光受容体は、その表面全体にわたって均一に帯電しなければならない。次いで、光受容体は、入力画像の光パターンに露光され、その画像に従って光受容体の表面を選択的に放電させる。こうして得られた光受容体上の帯電領域及び放電領域のパターンは、入力画像と一致する静電気帯電パターン(すなわち、潜像)を形成する。潜像は、トナーと呼ばれる微細に粉砕された静電気に引き寄せられる粉末に潜像を接触させることで現像される。トナーは、静電気力により画像領域上に保持される。続いてトナー画像は、基材または支持部材に転写され、それからその画像は、溶融プロセスにより基材または支持部材に定着し、それらの上に永続的な画像を形成する。転写後、光受容体上に残った過剰のトナーはその表面から除去され、残存する帯電は光受容体から消去される。
【0003】
電子写真用光受容体は、多様な形状で提供することができる。例えば、光受容体は、ガラス状セレンのような単体の物質の単層であっても、光伝導層および他の物質を含む複合層であってもよい。さらに、光受容体は層状であり得る。現在の層状光受容体は、一般に少なくとも柔軟性基材支持層および2つの活性層を有している。これらの活性層としては、光吸収物質を含む電荷発生層、および電子供与分子を含む電荷移動層が一般に挙げられる。これらの層は、任意の順序でよく、時には単一層または混合層で一体化することができる。柔軟性基材支持層は、導電性物質で形成することができる。あるいは、導電層を非導電性の柔軟性基板支持層の上面に形成することができる。
【0004】
エレクトロスタトグラフィー用(electrostatographic)光受容体は、固いドラム構造または継ぎ目のないもしくは継ぎ目のあるベルトのいずれかであり得る柔軟性ベルト構造であり得る。一般的な電子写真用光受容体ドラムは、固い導電性の基材支持ドラムの上にコートされた電荷移動層および電荷発生層を含む。しかしながら、柔軟性電子写真用光受容体ベルトについては、電荷移動層および電荷発生層は、柔軟性基材支持層の上面にコートされる。光受容体ベルトが十分な平坦性を示すことを確実にするために、対カーリング裏張層を柔軟性基材支持層の裏面にコートし、上方へのカーリングを防止し、光受容体の平坦性を確実にすることができる。
【0005】
多くの最近の電子写真画像ングシステムにおいては、柔軟性光受容体ベルトを繰り返し循環させ、高速画像ングを得る。この反復循環の結果として、光受容体の最外層は、各循環の間に画像形成のための光受容体をクリーニングまたは準備するのに使われる他の機械サブシステム要素と接触して高度の摩擦を受ける。機械サブシステム要素に対する循環機構相互作用に繰り返して晒された場合、光受容体ベルトは、最外の有機光受容層の表面において、光受容体の有効寿命を大いに減らす重大な磨耗を受ける。最終的に、生じた磨耗は、光受容体性能を損ない、そのため画像品質を損なう。
【0006】
これらのプロセスの間での最外層の侵食を軽減するために、米国特許出願公開2004/0086794(その全体において、本明細書で参照として援用される。)に開示されているように、最外層をシロキサン含有オーバーコートまたはシリコンハードオーバーコートのような薄い保護層でコートすることができる。
【特許文献1】米国特許出願公開2004/0086794号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
出願人は、架橋シロキサン含有オーバーコート層に関連した重大な欠点を発見した。特に、出願人は、電荷が光受容体表面から多孔性架橋シロキサン含有オーバーコートに移動し、画像についての問題を起こすことを発見した。さらに、別のシロキサン含有オーバーコート層に関連した欠点は、クリーニングブレードに対するコートされた光受容体を回転させるのに必要とされる高いトルクである。加えて、シリコンハードオーバーコートは、一般的にゾルゲルプロセスによって調製されるので、得られた材料に緊張を与える塗布層の収縮が生じる。これらの問題を解決するための試みが、種々の構成材料を改変することにより行われてきたが、そのような改変は、一般的に、1つの特性を改良すると、一方、別の特性を低下させるという矛盾を呈した。
【0008】
従って、電子写真性能を犠牲にすることなく、光受容体の磨耗速度を改善する改良架橋シロキサン含有オーバーコートを提供することが、目的となる。
【0009】
これらの問題および他の問題は、電子写真用光受容体での使用のためのような新規の架橋シロキサン含有最外保護層に取り込むことができる芳香族シリコン含有化合物を供給することで克服できる。このような新規の芳香族シリコン含有化合物は、高い剛性、および架橋シロキサン含有オーバーコート層で一般的に使用される正孔輸送分子との良好な相溶性のような利点を備えている。芳香族シリコン含有化合物を使って形成された架橋シロキサン含有保護層および電子写真用光受容体は、低いトルク、より高い耐磨耗性などのような改良された機械特性および画像欠損耐性(deletion resistance)における改良された持続する性能を次々に示す。
【0010】
実施形態において、固い芳香族マトリックス物質は、シラン化合物である。シラン化合物は、電子写真用光受容体での使用のためのようなシリコンハードオーバーコート層を形成する際のマトリックス物質として使われる。実施形態において、架橋シロキサン含有最外層は、正孔輸送物質、およびマトリックス物質としての芳香族シリコン含有化合物の加水分解および縮合の生成物を含む。
種々の実施例において、架橋シロキサン含有最外層は、オーバーコートに添加された芳香族シリコン含有化合物の加水分解および縮合の生成物を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、新規の芳香族シリコン含有化合物を提供する。芳香族シリコン含有化合物は、芳香族シラン化合物(1つ以上の芳香族基であるまたは1つ以上の芳香族基を含む結合基によって分離される1つ以上のシラン基を有する化合物)であってもよい。例えば、芳香族シリコン含有化合物は、式(I)で表すことができる:
Ar−[X−L−SiRn(OR’)3-nm (I)
【0012】
式(I)において、Arは、1つ以上のフェニル基を有することができる芳香族基を表す。Arの適切な例としては、以下の構造(II−1)〜(II―44)が挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
式(I)において、Xは、二価/三価基を表す。Xの適切な例としては、以下に限定されないが、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、オキシカルボルニル基(−COO−)、チオカルボニル基(−COS−)、カルバメート基(−OCO−NH−)、イミド基(−CO−N−OC−)、アミド基(−CO−NH−)、カルボネート基(−OCOO−)など、またはこれらの内の2つ以上が組み合わされた二価基が挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い剛性、及び架橋シロキサン含有オーバーコート層で一般的に使用される正孔輸送分子との良好な相溶性を備えた芳香族シリコン含有化合物を提供する。該芳香族シリコン含有化合物を使って形成された架橋シロキサン含有保護層および電子写真用光受容体は、低いトルク、より高い耐磨耗性などのような改良された機械特性および画像欠損耐性における持続的性能の向上を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明は、前記式(I)で表される新規の芳香族シリコン含有化合物を提供する。該芳香族シリコン含有化合物の一般的な例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0020】
【化4】

【0021】
式(I)において、Lは二価連結基を表す。Lの適切な例としては、以下に限定されないが、−Cm2m−、−Cm2m-2−、−Cm2m-4−(mは、2から約10を例とする1から約15の整数である)、−CH2−C64−もしくは−C64−C64−で表される二価炭化水素基、またはこれらの内の2つ以上が組み合わされた二価基が挙げられる。二価基はまた、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アミノ基のような置換基をその側鎖上に必要に応じて有することができる。
【0022】
式(I)において、Rは、水素原子、アルキル基(例えば1〜10個の炭素原子を有するもの)またはアリール基(例えば6から15個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアリール基)を表す。R’は、アルキル基(例えば1〜5個の炭素原子を有するもの)を表す。
【0023】
式(I)において、nは0、1または2であり得る整数であり、そしてmは1〜10もしくは1〜5であり得る整数である。
【0024】
芳香族シリコン含有化合物は、任意の適切な方法により調製することができる。例えば、例示的なプロセスは、1ポット2ステップ反応、つまり出発物質と塩基との反応を開始して出発物質の塩を形成させ、続いてその塩をハロアルキレンシラン化合物と反応させ、最終生成物を得るものである。例えば、Xが−O−の場合の式(I)の芳香族シリコン含有化合物は、次の反応により調製することができる。
【0025】
【化5】

ここで、Yは、I、Br、ClおよびFからなる群から選択されるハロゲン基を表す。この反応プロセスは、容易に改変でき、他の所望の式(I)の芳香族シリコン含有化合物を得ることができる。
【0026】
より具体的には、フェノール出発物質をアルコール溶媒に溶解させる。得られた溶液をアルカリ性水酸化物およびアルカリ性アルコキシドのような塩基と混ぜ、フェノキシド塩を形成させる。次いで、その塩を、ジメチルホルムアミド(DMF)のような非プロトン性溶媒中で、ヨードアルキルジイソプロポキシメチルシラン、ブロモアルキルジイソプロポキシメチルシランおよびクロロアルキルジイソプロポキシメチルシランのようなハロアルキレンシランと混合する。反応温度を約25℃〜約100℃、例えば約50℃〜約90℃で維持する。反応を約1分から約5時間、例えば約30分から約2時間の間で行う。反応後、生成物を、溶媒抽出などの任意の適切な方法で単離し得る。最終生成物を、蒸留、再結晶およびフラッシュカラムクロマトグラフィーのような当該技術分野で公知の任意のプロセスにより精製し得る。
【0027】
実施形態においては、式(I)の芳香族シリコン含有化合物のような芳香族シリコン含有化合物は加水分解および縮合されて、保護層に取り込まれる架橋シロキサン含有成分を形成する。芳香族シリコン含有化合物の加水分解および縮合による生成物は、架橋シロキサン含有最外保護層の全重量の約5%〜80%、例えば約20%〜約60%の量で存在し得る。
【0028】
式(I)の芳香族シリコン含有化合物のような芳香族シリコン含有化合物を有利に使って、電子写真用光受容体における使用のためのような架橋シロキサン含有最外保護層を形成することができる。このような架橋シロキサン含有最外保護層は、当該技術分野で公知であり、そして正孔輸送物質、結合樹脂、および式(I)の芳香族シリコン含有化合物を含むことができる。さらに、架橋シロキサン含有最外保護層は、追加のポリマー結合樹脂、酸化防止剤、触媒、溶媒などをその公知の目的のために公知の量で含むことができる。
【0029】
芳香族シリコン含有化合物の利点は、それらが架橋シロキサン含有最外保護層の特性の改良をもたらすということである。例えば、従来のオーバーコート層における画像損失問題の根本的原因は、従来の脂肪族シリコン結合剤と正孔輸送物質とが非相溶性であるために、正孔輸送物質が保護層中で凝集する傾向にあるという現象であると考えられている。この凝集が起こった場合、正孔輸送物質は酸化され、画像損失問題を引き起こす。そのため、実施形態においては、芳香族シリコン含有化合物を従来の脂肪族シリコン含有化合物に代えて使うことが好ましい。芳香族シリコン含有化合物を使用することで、架橋シロキサン含有最外保護層中での正孔輸送物質のより均一もしくは均質な分布もまた得られる。
【0030】
さらに、従来の架橋シロキサン含有最外保護層は、クリーニングブレードにより光受容体の高いトルクが生じる柔軟でゴム状の物質であることが公知である。しかしながら、芳香族シリコン含有化合物を使用することで、クリーニングブレードによる光受容体のトルクを減らす、より堅固なオーバーコート層を与える固い芳香族マトリックス物質が形成され、それにより画像品質の改良が得られる。
【0031】
架橋シロキサン含有最外保護層の微小機械特性は、ナノインデンテーション測定により評価することができる。式(I)の芳香族シリコン含有化合物の加水分解および縮合による生成物を含む保護層が、脂肪族シリコン含有化合物を含む従来の架橋シロキサン含有オーバーコートと比較して改善された減少した弾性率および硬度を示すことをその測定は指示している。これらの特性は、下記の表1に示される。
【0032】
【表1】

【0033】
実施形態においては、正孔輸送物質はトリアリールアミンである。より具体的には、正孔輸送物質は、式(III)で表されるシリコン含有正孔輸送物質、ならびにその加水分解物または加水分解縮合物から選択することができる。
2(−D−SiR3-aab (III)
ここで、W2は正孔輸送能力を有する化合物に由来する有機基を表す。Qは加水分解基を表す。Dは二価基を表す。aは1〜3の整数、bは2〜4の整数、そしてcは1〜4の整数を表す。
【0034】
Rは、水素原子、1〜10個もしくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基のようなアルキル基、または6〜15個の炭素原子を有する置換アリール基もしくは非置換アリール基のような置換アリール基もしくは非置換アリール基を表す。
【0035】
さらに、Qで表される加水分解基は、式(III)の化合物の硬化反応での加水分解により、シロキサン結合(O−Si−O)を形成することができる官能基を意味する。実施形態で使うことのできる加水分解基の限定されない例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メチルエチルケトキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、およびクロロ基が挙げられる。特定の実施形態においては、−OR”(R”は1から15個の炭素原子を有するアルキル基またはトリメチルシリル基を表す)で表される基を使うことができる。
【0036】
実施形態において、式(III)でのDによって表される二価基は、−Cn2n−、−Cn2n-2−、−Cn2n-4−、(nは、2から約10を例とする1から約15の整数)、−CH2−C64−もしくは−C64−C64−、オキシカルボルニル基(−COO−)、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−)で表される二価炭化水素基、またはこれらの基の2つ以上が組み合わされた二価基であり得る。二価基Dは、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アミノ基のような置換基をその側鎖上に有することができる。Dが上記の二価基の内の1つである場合、適正な柔軟性が有機シリケート骨格に与えられ、それにより層の強度が改善される。
【0037】
さらに、上記の式(III)において、W2で表される有機基に関しては、それが正孔輸送能力を有する基であるかぎり、特に制限はない。しかし、特定の実施形態においては、W2は式(IV)で表される有機基であり得る。
【0038】
【化6】

ここで、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、同一でも異なってもいてもよく、置換アリール基または非置換アリール基をそれぞれ表している。Ar5は、置換もしくは非置換アリール基、またはアリーレン基を表している。kは0または1を表している。そしてAr1からAr5の少なくとも1つが式(III)の−D−SiR3-aaとつながっている。
【0039】
式(IV)のAr1からAr4は、好ましくは、それぞれ式(V)および式(VI)のいずれか1つである。
【0040】
【化7】

【0041】
式(V)および式(VI)において、R6は、水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、非置換フェニル基または1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基によって置換されたフェニル基、7〜10個の炭素原子を有するアラルキル基、およびハロゲン原子からなる群から選択されるメンバーである。Arは、置換アリーレン基または非置換アリーレン基を表す。Xは、式(III)の−D−SiR3-aaを表す。mは0または1を表す。そして、tは1〜3の整数を表す。
【0042】
ここで、式(VI)のArは、式(VII)または式(VIII)で表されるものであり得る。
【0043】
【化8】

ここで、R10およびR11は、水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、非置換フェニル基または1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基によって置換されたフェニル基、7〜10個の炭素原子を有するアラルキル基、およびハロゲン原子からなる群から選択されるメンバーをそれぞれ表す。そして、tは1〜3の整数を表す。
【0044】
さらに、式(VI)のZ’は、式(IX)から式(XVI)のいずれか1つで表される。
【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
式(XV)から式(XVI)において、R12およびR13は、水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、非置換フェニル基または1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基によって置換されたフェニル基、7〜10個の炭素原子を有するアラルキル基、およびハロゲン原子からなる群から選択されるメンバーをそれぞれ表す。Wは二価基を表す。qおよびrは、1〜10の整数をそれぞれ表す。そして、tは1〜3の整数を表す。
【0048】
式(XV)および式(XVI)におけるWは、式(XVII)から(XXVI)で表される二価基の内のいずれか1つであり得る。
【0049】
【化11】

【0050】
式(XXIV)において、uは0〜3の整数を表す。
【0051】
さらに、式(IV)において、Ar5は、kが0の場合がAr1からAr4の記述で例示されたアリール基であり、そしてkが1の場合がそのようなアリール基から特定の水素を除くことで得られるアリーレン基である。
【0052】
特定の例示の実施形態において、式(IV)のAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5および整数kならびに式(III)の−D−SiR3-aaで表される基の組み合わせは、下記の表2〜4に示される。表2〜4において、Sは、Ar1からAr5に結合する−D−SiR3-aaを表す。Meはメチル基、Etはエチル基、そしてPrはプロピル基を表す。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
さらに、実施形態において、シリコンオーバーコートとしては、テトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランのような四官能アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β―(アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシランまたは1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシランのような三官能アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランまたはメチルフェニルジメトキシシランのような二官能アルコキシシラン(c=2);ならびにトリメチルメトキシシランのような一官能アルコキシシラン(c=1)などのシランカップリング剤もまた挙げることができる。
【0057】
感光層の強度を向上させるために、三官能アルコキシシランおよび四官能アルコキシシランを実施形態において使うことができる。そして柔軟性およびフィルム成形特性を向上させるためには、一官能アルコキシシランおよび二官能アルコキシシランを実施形態において使うことができる。
【0058】
このようなカップリング剤を含むシリコンハードコーティング剤もまた、実施形態において使うことができる。市販されているハードコーティング剤としては、KP−85、X−40−9740およびX−40−2239(信越シリコーン社)、ならびにAY42−440、AY42−441およびAY49−208(東レダウコーニング社)が挙げられる。
【0059】
実施形態において、式(III)のシリコン非含有正孔輸送分子もまた使うことができる。
【0060】
実施形態において、架橋シロキサン含有最外保護層において使われるポリマー結合樹脂は、液体成分に溶け、そしてその液体成分の種類に依存して選択される。例えば、コーティング溶液がアルコール溶媒を含む場合、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂またはブチラールがホルマールまたはアセトアセタールで部分的に修飾された部分的アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、エチルセルロースメラミンホルムアルデヒド樹脂のようなセルロース樹脂、およびフェノール樹脂が、アルコール可溶樹脂として使用できる。これらの樹脂は、単独で、またはそれらの内の2つ以上の組み合わせとして使うことができる。
【0061】
樹脂の重量平均分子量は、約2000〜約1000000、例えば約5000〜50000であり得る。
【0062】
さらに、液体成分に溶ける樹脂の量は、コーティング溶液の全量に対して、約0.1〜約20重量%、例えば約2〜15重量%であり得る。
【0063】
本発明で使われるシリコン含有樹脂については、それが少なくとも1つのシリコン原子を有する限り、特に限定されない。しかしながら、その分子内に2個以上のシリコン原子を有する化合物を使うのが好ましい。2個以上のシリコン原子を有する化合物を使うことで、電子写真用光受容体の強度および画像品質の両方をより高いレベルに到達させることができる。
【0064】
さらに、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)およびオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)のような環状シロキサン化合物を架橋シロキサン含有最外保護層に添加して、光受容体表面に潤滑性を与えることができる。
【0065】
上記の成分に加えて、種々の微粒子もまた、を架橋シロキサン含有最外保護層に添加することができる。微粒子は、単独で、またはそれらの内の2つ以上の組み合わせとして使うことができる。
【0066】
実施形態において、可塑剤、表面修飾剤、酸化防止剤または光劣化防止剤のような1つ以上の添加剤もまた、架橋シロキサン含有最外保護層において使うことができる。
【0067】
第一の実施形態において、架橋シロキサン含有最外保護層は、まず式(I)の芳香族シリコン含有化合物を正孔輸送分子と混合して反応させ、重合してオリゴマーシロキサンを形成させ、次いで形成したオリゴマーシロキサンを安定化させることより調製することができる。得られた物質を他の成分と混合し、最外保護層に形成させることができる。実施形態において、光受容体をゾルゲルコーティング法を使ってコートし、架橋シロキサン含有最上保護層を形成させる。
【0068】
本発明の電子写真用光受容体は、帯電発生物質を含む層(電荷発生層)および電荷移動物質を含む層(電荷移動層)を分離して備えている機能分離型光受容体、または電荷発生層および電荷移動層の両方が同じ層に含まれる単層型光受容体のいずれかであり得る。
【0069】
図1は、電荷発生層13および電荷移動層14を分離して備えている機能分離型光受容体の実施形態を図式的に示す断面図である。すなわち、基層12、電荷発生層13、電荷移動層14および保護層15が、導電性支持体11の上にラミネートされ、感光層16を形成している。保護層15は、シリコンハードオーバーコートを含んでいる。
【0070】
導電性支持体11としては、例えば、金属プレート、金属ドラムまたは金属ベルト;および導電性ポリマー、導電性化合物、金属またはその合金をコート、蒸着またはラミネートした紙もしくはプラスチックフィルムもしくはプラスチックベルトが挙げられる。さらに、陽極酸化コーティング、熱湯酸化、化学処理、染色および木目のような乱反射処理などの表面処理を、支持体11の表面に施すことができる。
【0071】
基層12で使われる結合樹脂としては、任意の従来の結合樹脂を挙げることができる。さらに、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、シリコーン樹脂などを上記の結合樹脂に添加することができる。
【0072】
基層を形成するコーティング法としては、通常の方法が使われる。実施形態においては、基層の厚さは0.01〜40μmである。
【0073】
電荷発生層13に含まれる帯電発生物質としては、例えば、種々の顔料および有機染料が挙げられる。
【0074】
電荷発生層13は、帯電発生物質の真空蒸着、および結合樹脂を含む有機溶媒中で帯電発生物質が分散しているコーティング溶液の塗布により形成することができる。
【0075】
さらに、コーティング溶液の調製で使われる溶媒としては、有機溶媒が挙げられる。
【0076】
コーティング溶液を塗布する方法としては、上記の基層についての記述で例示されたコーティング法が挙げられる。
【0077】
さらに、酸化防止剤または不活性剤のような安定剤もまた、電荷発生層13に加えることができる。
【0078】
電荷移動層14は、電荷移動物質および結合樹脂、さらに上記の微粒子、添加剤などを含むコーティング溶液の塗布により形成することができる。
【0079】
電荷移動層14は、さらに、可塑剤、表面修飾剤、酸化防止剤または光劣化防止剤のような添加剤を含むことができる。
【0080】
保護層15は、保護層の形成に使われるコーティング溶液中の液体成分に可溶な樹脂、少なくとも1つのシリコン含有正孔輸送化合物の混合物の加水分解および縮合による生成物、および少なくとも1つの芳香族シリコン含有化合物を含む。さらに、保護層15は、潤滑性および強度を向上させることができるシリコーンオイルもしくはフッ素物質の潤滑剤または微粒子を含むことができる。実施形態において、保護層の厚さは、0.1〜10μm、0.5〜7μm、または1.5〜3.5μmである。
【0081】
図2は、画像形成装置の実施形態を示した概略図である。図2で示される装置において、図1で示されるように構築される電子写真用光受容体1は、支持体9により支えられて、支持体9を中心として矢印方向に特定の回転速度で回転可能である。接触帯電デバイス2、露光デバイス3、現像デバイス4、転写デバイス5およびクリーニングユニット7が、この順番で電子写真用光受容体1の回転方向に沿って配置されている。さらに、この例示的な装置は、画像定着デバイス6を備えており、そしてトナー画像が転写される媒体Pが、転写デバイス5を通って画像定着デバイス6に移送されている。
【0082】
接触帯電デバイス2は、ローラー形状の接触帯電部材を有する。そのローラー形状の接触帯電部材は、光受容体1の表面と接触するように配置され、そして電圧をかけることにより、光受容体1の表面に特定の電位を与えることができる。
【0083】
さらに、実施形態において、クリーニングデバイス7は、転写工程の後に電子写真用光受容体1の表面に付着している残存トナーを除去するためのデバイスであってもよい。それにより、上記画像形成プロセスに繰り返し供される電子写真用光受容体1をクリーニングすることができる。
【0084】
図2で示される例示の画像形成デバイスにおいて、帯電、露光、現像、転写及びクリーニングの各工程は、電子写真用光受容体1の回転工程の中で順番に行われ、それにより画像形成が繰り返し実行される。電子写真用光受容体1は、特定のシリコン化合物含有層および上記の数式(1)を満たす感光層を備えている。そのため、優れた耐排出ガス性、機械強度、耐傷性、粒子分散性などを有する光受容体が得られる。
【0085】
図3は、画像形成装置の別の例示的な実施形態を示す断面図を表す。図3に示す画像形成装置220は、中間転写システムの画像形成装置である。そして、4つの電子写真用光受容体401a〜401dが、ハウジング400内で中間転写ベルト409に沿って互いに平行に配置される。
【0086】
ここで、画像形成装置220により移送される電子写真用光受容体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真用光受容体である。電子写真用光受容体401a〜401dの各々は、所定の方向に回転することができる。そして、帯電ロール402a〜402d、現像デバイス404a〜404d、第一転写ロール410a〜410dおよびクリーニングブレード415a〜415dは、その電子写真用光受容体の回転方向に沿ってそれぞれ配置される。現像デバイス404a〜404dの各々において、トナーカートリッジ405a〜405dに含まれるイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナーを供給することができる。そして、第一転写ロール410a〜410dは、中間転写ベルト409を介して電子写真用光受容体401a〜401dとそれぞれ接触するようになっている。
【0087】
さらに、レーザー光源(露光ユニット)403は、ハウジング400の中で特定の位置に配置され、帯電後の電子写真用光受容体401a〜401dの表面にレーザー光源403から発射されるレーザー光を照射することが可能である。これにより、帯電、露光、現像、第一転写およびクリーニングの各工程が、電子写真用光受容体401a〜401dの回転工程において順番に実行される。そして、各色のトナー画像は、中間転写ベルト409の上に次々と転写される。
【0088】
中間転写ベルト409は、推進ロール406、バックアップロール408およびテンションロール407で特定のテンションにおいて支えられ、これらのロールの回転により、たわみの発生なしに回転可能となっている。さらに、第二転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と接触するようになっている。バックアップロール408と第二転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、クリーニングブレード416でクリーニングされ、次いで、後に続く画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0089】
さらに、トレー(トナー画像が転写されるための媒体用のトレー)411が、ハウジング400の特定の位置に備えられる。トレー411の中のトナー画像が転写される媒体(例えば、紙)は、順番に、中間転写ベルト409と第二転写ロール413との間に、さらに互いが接触するようになっている2つの定着ロール414の間に移送ロール412により移送され、ハウジング400の外へ配送される。
【0090】
図3に示される例示の画像形成装置220に従って、電子写真用光受容体401a〜401dのような本発明の実施形態の電子写真用光受容体を使用することで、各電子写真用光受容体401a〜401dの画像形成プロセスにおいて、十分に高いレベルの耐排出ガス性、機械特性、耐傷性などを達成することができる。
【0091】
さらに、実施形態において、コロトロン帯電器のような非接触帯電システムが接触帯電デバイス2(または接触帯電デバイス402a〜402d)の代わりに使われる場合、十分に良好な画像品質を得ることができる。
【0092】
さらに、図2に示される装置の実施形態において、電子写真用光受容体1の表面上に形成されたトナー画像は、トナー画像が転写されるための媒体Pに直接転写される。ただし、本発明の画像形成装置は、さらに中間転写体を備えていてもよい。これにより、電子写真用光受容体1の表面上のトナー画像が中間転写体に転写された後に、トナー画像を中間転写体からトナー画像が転写される媒体Pに転写することが可能となる。
【0093】
(実施例1〜9)
式(I)において、Xが−O−、Lが−C36−、(RO)3-nnSi−基が(PrO)2MeSi−であり、Arが式(II−1)〜式(II−44)の内の1つである場合の構造を有する芳香族シリコン含有化合物を調製する。化合物(I−#)として示される本明細書で定義される構造式を有する芳香族シリコン含有化合物を調製する。ここで、#は、化合物IIの各々を意味する。従って、化合物(I−1)は、Arが式(II−1)である場合の本明細書で定義される式Iの化合物である。
【実施例1】
【0094】
化合物(I−1)の合成
500mLの丸底フラスコ中で、ビスフェノールA(BPA)(22.83g)をイソプロパノール(130mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(98.19g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(360mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(72.66g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(60g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(300mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物を減圧下の220℃における蒸留により精製した。化合物(I−1)の収量は、48g(75.8%)であった。
【実施例2】
【0095】
化合物(I−2)の合成
500mLの丸底フラスコ中で、4,4−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(25g)をイソプロパノール(100mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(73g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(250mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(54g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(40g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(200mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物を減圧下の220℃における蒸留により精製した。化合物(I−2)の収量は、40g(72.6%)であった。
【実施例3】
【0096】
化合物(I−4)の合成
500mLの丸底フラスコ中で、4,4−ジフェノール(9.3g)をイソプロパノール(50mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(49g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(100mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(36.3g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(20g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(200mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物をイソプロパノール中の再結晶により精製した。化合物(I−4)の収量は、17g(57.5%)であった。
【実施例4】
【0097】
化合物(I−5)の合成
500mLの丸底フラスコ中で、ビスフェノールZ(26.84g)をイソプロパノール(100mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(98.2g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(250mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(72.7g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(40g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(300mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物を減圧下の蒸留により精製した。化合物(I−5)の収量は、49.5g(73.5%)であった。
【実施例5】
【0098】
化合物(I−6)の合成
250mLの丸底フラスコ中で、4,4−(9−フルオレニリデン)ジフェノール(17.5g、モル)をイソプロパノール(70mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(49g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(36g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(30g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(200mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物を減圧下の蒸留により精製した。化合物(I−6)の収量は、28.2g(75%)であった。
【実施例6】
【0099】
化合物(I−7)の合成
250mLの丸底フラスコ中で、ヒドロキノン(5.5g、モル)をイソプロパノール(50mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(49g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(100mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(36.3g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(20g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物を減圧下の蒸留により精製した。化合物(I−7)の収量は、15.5g(60%)であった。
【実施例7】
【0100】
化合物(I−13)の合成
500mLの丸底フラスコ中で、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(30.6g)をイソプロパノール(100mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(147g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(200mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(109g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(50g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(300mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物をショートフラッシュカラムにより精製した。化合物(I−13)の収量は、65g(71%)であった。
【実施例8】
【0101】
化合物(I−33)の合成
500mLの丸底フラスコ中で、ビスフェノールP(34.6g、モル)をイソプロパノール(100mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(98g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(150mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(72.7g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(25g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(250mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物をフラッシュカラムにより精製した。化合物(I−33)の収量は、48.2g(70%)であった。
【実施例9】
【0102】
化合物(I−34)の合成
500mLの丸底フラスコ中で、ビスフェノールM(34.6g、モル)をイソプロパノール(100mL)に溶解した。該溶液に、20重量%のカリウムイソプロポキシドのイソプロパノール(98g)溶液を滴下漏斗で添加した。添加後、溶液を室温で3時間攪拌し、そして過剰のイソプロパノールを回転エバポレーションで除去した。残った固体をジメチルホルムアミド(DMF)(150mL)に溶解した。該溶液にヨードプロピルジイソプロキシメチルシラン(72.7g)を加え、温度を約70℃において1時間維持し、次いで25℃まで冷却した。ヨウ化カリウム(25g)を該溶液に加え、そして約1時間攪拌した。シクロヘキサン(250mL)を加えて、生成物を抽出した。シクロヘキサン層を回収し、脱イオン水および食塩水で洗滌し、硫酸ナトリウムで乾燥した。過剰のシクロヘキサンを回転エバポレーションで除去し、そして最終生成物をフラッシュカラムにより精製した。化合物(I−34)の収量は、50g(72%)であった。
(比較例1)
【0103】
従来の架橋シロキサン含有オーバーコートを調製した。すなわち、芳香族シリコン含有化合物なしで調製した。
【0104】
具体的には、11部の正孔輸送分子(III−1)、5.8部の結合物質1,6−ビス(ジメトキシメチルシリル)−ヘキサン、1部のヘキサメチルシクロトリシランおよび11部のメタノールを混合し、そして2部のイオン交換樹脂(AMBERLST H15)をそれらに添加し、続いて2時間攪拌した。さらに、32部のブタノールおよび4.92部の蒸留水をこの混合物に加え、続いて室温で30分攪拌した。次いで、得られた混合物を濾過してイオン交換樹脂を除去した。得られた濾液に0.180部のアルミニウムトリアセチルアセトネート(Al(AcAc)3)、0.180部のアセチルアセトン(AcAc)、2部のポリビニルブチラール樹脂(商品名S−LEC KW−1、積水化学製)、0.0180部のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)および0.261部のヒンダードフェノール系酸化防止剤(IRGANOX1010)を加え、2時間その中で十分に溶解させ、保護層のためのコーティング溶液を得た。
【0105】
このコーティング溶液をディップコーティング(コーティング速度:約170mm/分)により電荷移動層の上に塗布し、130℃において1時間加熱することで乾燥し、膜厚3μmを有する保護層を形成させる。これにより、所望の電子写真用光受容体が得られる。
(実施例10〜14)
【0106】
式(I)の芳香族シリコン含有化合物を含む架橋シロキサン含有最外保護層を調製する。具体的には、実施例1、2、5、6および7の芳香族シリコン含有化合物を含む以外は、比較例1の手順を繰り返した。具体的には、結合物質1,6−ビス(ジメトキシメチルシリル)−ヘキサンを芳香族シリコン含有化合物(I−1)、(I−2)、(I−5)、(I−6)および(I−13)に代えた以外は、処方および手順は比較例1と同様である。
【0107】
比較例1および実施例10〜14で調製した光受容体を光受容体デバイス評価に供した。具体的には、光受容体をその電気特性(VhighおよびVlow)、磨耗速度および画像欠損耐性についてテストした。
【0108】
デバイスを磨耗試験固定具の上に取り付け、各デバイスの機械磨耗特性を決定した。光受容体の磨耗を磨耗テストの前後での光受容体の厚さの変化で決定した。その長さに沿ってコーティングの上端から1インチの間隔において、パーマスコープ(permascope)ECT−100を用いて、厚みを測定した。記録された厚さの値の全てを平均し、光受容体デバイス全体の平均厚さを得た。磨耗テストのために、光受容体をドラムの周りに巻きつけて、140rpmの速度で回転させた。ポリマー製クリーニングブレードを20°の角度および約60〜80g/cmの力で光受容体と接触させた。単一成分のトナーを光受容体上に200mg/分の割合で滴下した。ドラムを1回のテストの間に150kcycleで回転させた。磨耗速度は、キロサイクル(kcycle)の数によって割られた磨耗テストの前後での光受容体の厚さの変化に等しい。
【0109】
電気的循環の直後に、実施例10〜14および比較例1の電子写真用光受容体を、DOCUCOLOR1632(ゼロックス社製)で使われるゼログラフィー顧客交換可能ユニットに設置し、そして印刷テスト用の機械に設置した。
【0110】
それから、印刷テストを各光受容体について行った。そのテストを、高温高湿(28℃および相対湿度85%)の同じ条件下で行い、電子写真用光受容体の最初の画像品質及び表面状態、ならびに5000回の印刷をした後の電子写真用光受容体の画像品質及び表面状態を決定した。
【0111】
その結果から、全ての光受容体が、同程度の電気特性および磨耗速度を示すが、実施例10〜14の光受容体は、比較例1に比べて弾性率の減少およびクリーニング性が向上しているために、画像欠損耐性において顕著な改善を示すことが示された。
【0112】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】電子写真用光受容体の構成要素を概説するブロック図である。
【図2】画像形成装置の実施形態を示す略図である。
【図3】画像形成装置の他の実施形態を示す略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)を有する芳香族シリコン含有化合物:
Ar−[X−L−SiRn(OR’)3-nm (I)
式中、Arは芳香族基を表し、Xは二価または三価の基を表し、Lは二価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R’は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を表し、nは0〜2の整数であり、かつmは1〜5の整数である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−193525(P2006−193525A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6312(P2006−6312)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】