説明

苗移植機

【課題】苗移植機の走行速度の変動があっても施肥装置から繰り出される肥料の繰出量が単位圃場面積当たりでほぼ一定になるようにした施肥装置を備えた苗移植機を提供すること。
【解決手段】車速センサ112により走行車体2の走行速度に基づき施肥装置5の繰出しロール73A,73Bの回転速度を肥料繰出電動モータ159により予め設定された変更量で変更することで、該回転体73A,73Bの回転速度が変わっても、回転体73A,73Bに供給される肥料の量を一定量に保つことができる。例えば車速が速くなると繰出しロール73A,73Bの回転が比例関係以上に遅くなり、該ロール73A,73Bが一度に排出する肥料の量が減少して肥料不足になることが防止され苗の生育が良好となり、車速が遅くなるとロール73A,73Bの回転が比例関係以上に速くなるように変更することで、ロール73A,73Bの回転速度を速くしてロール73A,73Bが一度に排出する肥料の量が増加して肥料が供給過剰になることが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体繰出し装置を有する施肥装置を備えた苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の施肥装置の粉粒体繰出し装置は粉粒体を貯めたホッパを備えている。粉粒体ホッパは、その上面を開閉する蓋を備え、該蓋を開けてホッパ内部に肥料や薬剤などの粉粒体を収納し、必要な時に外部に取り出して使用する。例えば、粉粒体ホッパ内の粉粒体をその下側に設けた繰出ロールによって繰り出し、繰り出された粉粒体をエアチャンバから供給される加圧エアによって圃場まで搬送するようにした粉粒体繰出し装置の一部として利用する。
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を向いて左右方向をそれぞれ左、右と言い、前進方向を前、後退方向を後と言うことにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−222504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された施肥装置を備えた苗移植機において、走行速度を速くするとエンジンの回転数に比例して施肥装置の繰出ロールの回転速度も速くなり、肥料を繰り出す繰出しロールの回転数が増加する。
しかし、繰出しロールの回転数はエンジンの回転数と一定の比例関係があるだけで、さらに肥料繰出量を増減するためには手動で調整するしか無かった。そこで、例えば車速が速くなると、繰出しロールの溝部に肥料が入る時間が短くなってしまい、一度に施肥される量が減少し、肥料不足が生じて苗が生育不良を起こしてしまう問題がある。
逆に、苗移植機の走行速度を遅くすると施肥装置の伝動速度も遅くなり、これに応じて繰出しロールの回転数が比例的に減少することにより、繰出しロールの溝部に肥料が入る時間が長くなり、肥料が所定量以上に溝部に投入されてしまい、肥料が過剰に供給されて、過剰施肥による苗の虚弱化や水質の汚染が発生する問題がある。
【0005】
そして、施肥装置に肥料を補充する際に施肥ブロアを停止させ忘れていると、施肥ブロアから吹き出る風が圃場面を叩いて泥土や水を肥料の供給経路に進入させてしまい、付着した泥土や水気が肥料を詰まらせてしまい、肥料が供給されなくなってしまうという問題がある。特に、苗の植付作業中など、植付部を下降させた状態では肥料の供給経路と圃場面の距離が近いため、植付作業の途中に機体を停止させて肥料の補給を行う際に、上記の問題が生じやすい。
そこで、本発明の課題は、苗移植機の走行速度の変動があっても施肥装置から繰り出される肥料の繰出量が単位圃場面積当たりでほぼ一定になるようにした施肥装置を備えた苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
すなわち、請求項1記載の発明は、前輪(10)と後輪(11)を備え、圃場を走行する走行車体(2)と、該走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を介して設ける苗植付部(4)と、走行車体(2)上に設けた肥料ホッパ(60)と該肥料ホッパ(60)から肥料を繰出し回転体(73A,73B)を回転させて繰り出す繰出部(61)と該繰出部(61)からの肥料を送風搬送するための施肥ブロア(67)を有する施肥装置(5)と、走行車体(2)の走行速度を検出する走行速度検出手段(112)と、該走行速度検出手段(112)で検出された前記走行速度に応じて繰出部(61)にある繰出し回転体(73A,73B)の回転速度を制御する制御装置(100)を設けたことを特徴とする苗移植機である。
【0007】
請求項2記載の発明は、制御装置(100)は、走行速度検出手段(112)が走行速度の検出を開始すると施肥ブロア(67)を「入」とし、走行速度検出手段(112)が走行速度を検出しない時は施肥ブロア(67)を「切」にする制御を行う構成を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0008】
請求項3記載の発明は、走行速度検出手段(112)を走行車体(2)の後輪(11)の駆動軸に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機である。
【0009】
請求項4記載の発明は、走行速度検出手段(112)を施肥装置(5)の繰出駆動軸(105)に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、走行車体2の走行速度に基づき施肥装置5の繰出し回転体73A,73Bの回転速度を肥料繰出電動モータ(159)により、予め設定された変更量で変更することにより、走行速度が変化して繰出し回転体73A,73Bの回転速度が変わっても、繰出し回転体73A,73Bに供給される肥料の量を一定量に保つことができるので、例えば、走行車体2の走行速度が速くなると、繰出し回転体73A,73Bの回転が比例関係以上に遅くなり、繰出し回転体73A,73Bが一度に排出する肥料の量が減少して肥料不足になることが防止され、苗の生育が良好となり、また、走行車体2の走行速度が遅くなると、繰出し回転体73A,73Bの回転が比例関係以上に速くなるように変更することにより、繰出し回転体73A,73Bの回転速度を速くして繰出し回転体73A,73Bが一度に排出する肥料の量が増加して肥料が供給過剰になることが防止できるので、肥料過多による苗の虚弱化や水質の汚染が防止される。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行速度検出手段112が走行速度を検出しない状態、すなわち走行停止状態になると施肥ブロア67を停止させる構成としたことにより、施肥ブロア67から排出される風が圃場の泥土や水をはね上げて肥料の供給経路62を詰まらせてしまうことを防止できるので、肥料が圃場に供給されなくなることが防止され、苗の生育が安定する。
また、肥料の供給経路62に入り込んだ泥土を取り除く作業が省略されるので、作業者の労力が軽減される。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行速度検出手段112を走行車体2の後輪11の駆動軸に設けたことにより、走行車体2の走行速度をダイレクトに検出して施肥量に反映することができるので、適切な量の肥料が圃場に施肥され、苗の生育が良好になると共に過剰施肥による生育障害が防止される。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行速度検出手段112を施肥装置5の伝動機構に設けたことにより、走行速度の変化による伝動機構の回転に対応する施肥量を判別することができるので、適切な量の肥料が圃場に施肥され、苗の生育が良好になると共に過剰施肥による生育障害が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例の施肥装置付き乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の施肥装置付き乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の施肥装置の背面図である。
【図4】図1の施肥装置の平面図である。
【図5】図1の施肥装置の側面図である。
【図6】図1の施肥装置の粉粒体繰出部の側面断面図である。
【図7】図1の施肥装置の粉粒体繰出部の変形例の側面断面図である。
【図8】図6のS−S断面図である。
【図9】図1の施肥装置の肥料回収レバー及びその関連部材の側面図である。
【図10】図1の施肥装置の施肥伝動機構を示す側面図である。
【図11】図1の施肥装置の施肥伝動機構を示す平面図である。
【図12】図1の施肥装置の逆転伝達機構及び繰出量調節機構の一部を示す展開図である。
【図13】図1の施肥装置の肥料繰出部への伝動機構を示す断面図である。
【図14】図1の苗移植機が走行停止中にのみ施肥装置または籾供給装置の駆動させる制御用のフローチャートである。
【図15】図1の苗移植機の制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置を有する施肥装置を装着した施肥装置付き乗用型田植機を表している。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0016】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0017】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構27によって施肥装置5へ伝動される。
【0018】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0019】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0020】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を苗植付具52aで圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ53,53等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植え付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0021】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63,…まで導き、施肥ガイド63,…の前側に設けた作溝体64,…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータ66で駆動のブロア67で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0022】
以下、図3〜図13に示す施肥装置5の各部の構成について説明する。
肥料ホッパ60は各条共用で、上部に開閉可能な蓋60aが取り付けられている。肥料ホッパ60の下部は施肥条数分に分岐して漏斗状になっており、その下部が繰出部61、…の上端に接続されている。肥料ホッパ60は、左右方向に長い施肥装置側フレーム49に支持された左右2箇所の回動アーム71に取り付けられていて、この回動アーム71の下端部を支点に後方に回動させて繰出部61,…から分離させられるようになっている。回動アーム71は外側から1条目の繰出部と2条目の繰出部との間に配置されている(左右対称位置に2つ設けられている)。肥料ホッパ60の下部を肥料繰出部61,…の上端に接続した通常位置では、係止具72により肥料ホッパ60を固定しておく。
【0023】
図6、図8に示すように繰出部61は、肥料ホッパ60内の肥料を下方に繰り出す2個の繰出ロール73A,73Bを内蔵している。これらの繰出ロール73A,73Bは、外周部に溝状の凹部74,…が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転するように嵌合している。繰出ロール73A,73Bが図6の矢印方向に回転することにより、肥料ホッパ60から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。両繰出ロール73A,73Bにより繰り出された肥料は、下端の吐出口61aから吐出される。
【0024】
図示例の繰出ロール73A,73Bの凹部の数は6個であり、両者の凹部の位相が異ならせてある。このため、両繰出ロール73A,73Bの凹部が交互に肥料を繰り出すこととなり、吐出口61aから吐出される肥料の量が時間的に均等化されている。いずれかの繰出ロール73A又は73Bを繰出軸75から外して位相を適当に変更して付け直すことにより、両繰出ロール73A,73Bの凹部の位相を等しくすることもできる。これで、圃場に点状に肥料を散布する場合に適用可能となる。
【0025】
また、繰出部61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の繰出ロール73の外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって繰出ロール73A,73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、繰出ロール73A,73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
また、肥料詰まり時の繰出ロール73とカプセル摩耗防止板82の下部接触部分(S)を図7(b)に示す現行の装置の繰出部61の構成と比較して図7(a)に示すように鈍角状に接触する構成すると、繰出駆動ギヤ108aと繰出従動ギヤ108b(図13)の破損が防止できる。
【0026】
さらに、ブラシ76の上側には、繰出ロール73A,73Bの上方に突出して肥料ホッパ60から繰出部61に肥料が落下供給されないようにする繰出停止シャッタ77A,77B(図8)が設けられている。繰出停止シャッタ77A,77Bは、繰出部ケース78のスライド支持部79(図6)にスライド自在に支持されていて、ケース外の前端部に形成された把手77aをつかんでスライドさせるようになっている。
【0027】
繰出部61の吐出口61aには、前後方向に連通する接続管80(図3)が接続されている。そして、この接続管80の後端部に施肥ホース62(図5)が接続されている。施肥ホース62の外周螺旋溝に施肥装置側フレーム49(図5)の下端部が係合しているので、施肥ホース62が接続管80から抜けにくい。一方、各条の接続管80の前端部はエアチャンバ68(図4、図5)の背面部に挿入連結されている。エアチャンバ68の左端部はエア切替管81を介してブロア67(図3、図4)に接続されており、該ブロア67からのエアがエアチャンバ68を経由し接続管80から施肥ホース62に吹き込まれるようになっている。なお、ブロア67は、そのエア吐出口をエア切替管81から外して機体内方に回動収納できる構成としている。
【0028】
エアチャンバ68は、接続管80が取り付けられたゴム管68aと、中間部分の樹脂管68bとを交互に繋ぎ合わせて構成されている。この構成とすると、エアチャンバ68を簡単に分解、組み立てできるので、繰出部61を一体的に取り外してのメンテナンスが容易である。ゴム管68aの長さを一対の繰出部の間隔よりも長くしておくと、樹脂管68bからゴム管68aを抜きやすい。
【0029】
また、図6に示すように、繰出部ケース78の背面部には、肥料ホッパ内の肥料を取り出すための肥料排出口83が形成されている。この肥料排出口83には、上端側を支点にして開閉自在な排出シャッタ84が取り付けられている。各繰出部の肥料排出口83は、繰出部61の後方に設けた左右方向に長い肥料回収管85に接続されている。肥料回収管85の左端部は、前記エア切替管81を介してブロア67に接続されている。エア切替管81は二股状の管であって、一方にエアチャンバ68が接続され、他方に肥料回収管85が接続されている。エア切替管81にはエア切替部としてのエア切替シャッタ86が設けられ、ブロア67から吹き出されるエアをエアチャンバ68側に供給する状態と肥料回収管85側に供給する状態とに切り替えられようになっている。エア切替シャッタ86はエアチャンバ68と肥料回収管85の間の前後中央部にあるので、両者へのエア供給が安定している。肥料回収管85の右端部は肥料回収口87になっている。
【0030】
図9は上記各シャッタ84,…、86の開閉機構を示す図である。肥料回収口87の近傍に肥料回収レバー90が回動自在に設けられている。この肥料回収レバー90の回動支点軸90aと同軸上に、繰出部61の前側に配置された左右方向に長いシャッタ開閉伝達軸91(図3,図4)が設けられている。シャッタ開閉伝達軸91には扇形プレート92が取り付けられており、この扇形プレート92に形成された円弧状の長穴92aに、肥料回収レバー90に固着されたピン90bが遊嵌している。シャッタ開閉伝達軸91には各繰出部ごとに開閉ギヤ93が取り付けられ、該ギヤ93が排出シャッタ84の回動軸84aに取り付けた半円形ギヤ94と噛み合っている。なお、半円形ギヤ94の端部には当該ギヤ94の歯よりも径の大きいストッパ部94aが形成されているので、両ギヤ93、94の噛み合いが外れることはない。また、肥料回収レバー90には、エア切替ワイヤ95の一端が繋がれている。エア切替ワイヤ95の他端は、エア切替シャッタ86の回動軸86aに取り付けたアーム96に付勢手段である引張りスプリング97を介して繋がれている。
【0031】
肥料回収レバー90を回動操作すると、エア切替ワイヤ95が引かれてエア切替シャッタ86を切り替え、ブロア67から引き出されるエアが肥料回収管85に供給されるようになる。肥料回収レバー90の回動操作量が少ないうちは、ピン90bが長穴92aの中を移動するだけにすぎないので、シャッタ開閉伝達軸91は回動しない。しかしながら、肥料回収レバー90を一定量以上回動操作すると、ピン90bが扇形プレート92に係合し、シャッタ開閉伝達軸91が回動する。これにより、排出シャッタ84,…が開き、肥料ホッパ60内の肥料が肥料回収管85に排出される。つまり、1本のレバー90の操作だけでエア切替シャッタ86及び排出シャッタ84,…を操作することができる。しかも、必然的に、始めにエアが肥料回収管85に供給され、その後で肥料が肥料回収管85に排出されるのである。このため、肥料回収管85での肥料の搬送が円滑に行われ、肥料回収管85での肥料詰まりが生じない。また、肥料回収レバー90が肥料回収口87の近傍に設けられているので、肥料回収容器等を肥料回収口87の下側に容易に確保でき、さらに肥料回収の状況を確認しながら作業を行え好都合である。
【0032】
肥料回収レバー90はレバーガイド98に沿って回動操作するようになっている。このレバーガイド98にはガイド穴98a,98bが形成されており、肥料回収レバー90の撓みを利用して肥料回収レバー90の係合部(図示せず)をガイド穴98a,98bに係合させることにより、肥料回収レバー90をエア切替シャッタ86だけが切り替えられる位置P1(図9)と、エア切替シャッタ86及び排出シャッタ84,…の両方が切り替えられる位置P2とに固定することができるようになっている。肥料回収レバー90を上記以外の位置にも停止させられるようにし、排出シャッタ84の開度を無段階または段階的に調節できるようにしてもよい。
従って、肥料回収時にはブロア67より気流搬送される肥料は肥料回収管85を流れ、回収口87からスムーズに肥料が排出される。
なお、エア切替シャッタ86は上下方向を向く回動軸86aを中心に回動するので、エア切替シャッタ86の開閉操作時の抵抗が変動しない。また、肥料回収時には引張りスプリング97の張力に抗して強制的にエア切替シャッタ86を切り替えるようにしているので、肥料回収時におけるエア切替シャッタ86の気密性が良好である。
【0033】
図4に示す開閉ギヤ93と半円形ギヤ94との噛み合いに予め融通性を持たせておくと、各条のギヤの組み付けに多少の誤差があっても、各条の排出シャッタ84の動作タイミングに狂いが出ず、確実に排出シャッタ84が閉じるようにすることができる。
【0034】
一方、肥料回収レバー90を図9に示す施肥作業位置にすると「ON」になるスイッチを設けると共に、各畦クラッチレバー110(1・2)、110(3・4)、110(5・6)(図4)をクラッチ入り位置にすると「ON」になるスイッチを各々設けて、これらスイッチの検出により、肥料回収レバー90が肥料排出位置(肥料回収レバー90が施肥作業位置でない時)で全ての畦クラッチレバー110(1・2)〜110(5・6)がクラッチ入りの時(施肥作業時)に、肥料回収レバー90が施肥作業位置でないことを警報するハンドル34下方のモニター部に設けた警報装置113に出力する(図示しないランプを点灯するか若しくはブザーを鳴らす)ように図15に示す制御装置100で制御している。これは、肥料回収レバー90を図9のP2位置にして肥料回収作業をした後、肥料回収レバー90をP2位置にしたまま、メインスイッチを切って作業を中断し、後に(後日)、施肥・植付け作業を行う時に肥料回収レバー90をP2位置にしたまま施肥・植付け作業をすると施肥作業が行えないまま植付け作業をしてしまう不具合を防止するためで、肥料回収レバー90をP2位置にしたままでメインスイッチを入れるとランプが点灯するか若しくはブザーが鳴って作業者に肥料回収レバー90が施肥作業位置になっていないことを知らせ、即座に作業者は肥料回収レバー90を施肥作業位置に操作して前記のような不具合を未然に防止でき作業性が良い。
【0035】
繰出部ケース78は、側面視で前下がりに傾斜した分割面F−F(図5)で、下側の固定部分78aと上側の離脱部分78bとに分割されている。繰出ロール73A、73B及び排出シャッタ84(肥料排出口83)は固定部分78aに設けられている。一方、ブラシ76及び繰出停止シャッタ77は離脱部分78bに設けられている。肥料ホッパ60が接続される上部開口部及び吐出口61aは分割されていないので、両者の気密性が良好に保たれる。
【0036】
肥料ホッパ60を最も後方に回動させると、側面視で前記離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外に肥料ホッパ60が位置するようになっている。このため、離脱部分78bを無理なく離脱させられる。また、分割面F−F(図5)の延長先はエアチャンバ68の上端よりも下側に位置するとともに、側面視で離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外にエアチャンバ68が位置している。このため、離脱部分78bを取り外した状態で、走行車体2上から繰出ロール73A,73Bのメンテナンスを行いやすい。
【0037】
図5(a)に示すように、繰出部61はエアチャンバ68と一体的にリンクベースフレーム42に回動軸82aを中心にして回動可能に取り付けられている。リンクベースフレーム42には固定プレート47が接続され、該固定プレート47に繰出量調節ロッド支持プレート58が接続されており、該該繰出量調節ロッド支持プレート58は機体側フレーム48に固着している。機体側フレーム48とエアチャンバ68を支持する施肥装置側フレーム49はパッチン錠49aで係脱自在に係止されている。繰出量調節ロッド支持プレート58は繰出部61の内部を通って繰出量調節ロッド157の先端部を支持する構成であり、該繰出量調節ロッド157の他方の先端部には電動モータ159が設けられ、後述するように、電動モータ159を回すことで粉粒体の繰出量を調整できる。
【0038】
また、機体側フレーム48と繰出部61の側面とは一体化したホッパ60と繰出部61を傾動位置ロック用プレート54で接続している。傾動位置ロック用プレート54の一端は機体側フレーム48に固定され、他端は繰出部61の側面に固定されている。また、図5(b)に示すように、傾動位置ロック用プレート54には縦長の長孔54aが設けられ、該長孔54aの上端側は水平方向に向きを変えた孔54bが接続している。前記長孔54aには機体側フレーム48に固定されたピン48aが挿入されているので、一体化した繰出部61とホッパ60を傾動させるとピン48aが長孔54a内を動き、その上端部で繰出部61とホッパ60の傾動が停止する。前記長孔54aに続く孔54bにピン48aが移動すると、繰出部61とホッパ60が回動支点54cを中心に機体に対して水平方向に揺動可能となる。
【0039】
上記構成によりホッパ60と繰出部61からなる施肥装置5のほぼ全体を傾斜することができるのでホッパ60と繰出部61に残っている粉粒体が施肥ホース62側に排出され、従来のように施肥装置5内に肥料などの粉粒体が残留することが無く、また粉粒体を速やかに施肥ホース62側に排出させることができる。また空になったホッパと繰出部の内部の点検が容易に行える。
【0040】
また、図示していないが、ホッパ60と繰出部61からなる施肥装置5を後方に傾斜させる傾動機構において、該傾動機構の後方右側部位に施肥装置5を右側に傾動可能な回転機構(図示せず)を設けると、施肥装置5を後ろ向きに回動させることで、ホッパ60と繰出部61に残留している肥料の排出時間を短くすることができる。また、ホッパ60の傾動角度を任意に変化できる。
【0041】
また、図5の施肥装置部分の側面図に示すように前記施肥装置5の傾動機構において、繰出部61を分割しておき、繰出量調節ロッド157と該繰出量調節ロッド157の先端部に設けた電動モータ159を傾動不能にしておき、主にホッパ60からなる施肥装置5だけを傾動可能にする構成を採用しても良い。傾動機構の回動軸は図5に示す回動軸82aでなく、図6に示す繰出駆動軸105を用いると、構成を比較的簡略にすることができ、また傾動機構を十分強度のある繰出駆動軸105と同軸構成とすることで強度も十分得られる。
上記繰出量調節ロッド157と該繰出量調節ロッド157の先端部に設けた電動モータ159を傾動不能にすることで、これらの粉粒体繰出装置を固定した部位に保持できるので、粉粒体の繰出量を安定させることができる。
【0042】
次に、施肥伝動機構27(図1)について主に図10〜図12により説明する。なお、施肥伝動機構27は、左から数えて第4条と第5条の肥料繰出部61の間に配置されている。
前記植付クラッチケース25(図1)の後面から突出するクランクアーム131(図10)が出力回転し、該クランクアーム131に連結した上下方向に延びる駆動側揺動ロッド132の上下方向の往復動作が上側のカウンタアーム133に伝動される。なお、カウンタアーム133は、側面視でくの字形状になっており、前記駆動側揺動ロッド132と後記する従動側揺動ロッド134とが連結されている。そして、カウンタアーム133の往復揺動による従動側揺動ロッド134の前後方向の往復動作がカウンタアーム133の後側の繰出入力アーム135ヘ伝動され、この繰出入力アーム135の前後方向の往復作動が左側の一方向クラッチ136Lへ伝動される。
【0043】
なお、一方向クラッチ136L,136Rは、左右に2個設けられており、左右方向の同一の一方向クラッチ軸137回りに回動する構成となっており、外環部138L,138Rと前記一方向クラッチ軸137との間に複数の伝動用ローラ139を備えたローラクラッチであり、外環部138L,138Rの回動を一方向クラッチ軸137に伝達するようになっている。従って、左側の一方向クラッチ136Lは、外環部138Lが繰出入力アーム135と一体に設けられ、繰出入力アーム135の前後方向の往復作動における一方向となる外環部138Lの回動を一方向クラッチ軸137に伝達するようになっている。なお、左右の一方向クラッチ136L,136Rは、それぞれの外環部138L,138Rの同じ方向の回動で一方向クラッチ軸137に伝達するようになっている。
【0044】
左側の一方向クラッチ136Lの外環部138Lの上側には該外環部138Lと一体の第一アーム140を設け、この第一アーム140と前側にある第二アーム141とを第一リンク142により連結している。第二アーム141は、左右方向の中継軸143と一体回転する構成となっており、該中継軸143の下側で前記第一リンク142を連結するべく中継軸143から下側に延びている。第二アーム141の右側には前記中継軸143と一体回転する第三アーム144を中継軸143から上側に延設しており、この第三アーム144は第二アーム141と一体回転する。第三アーム144の中継軸143より上側の位置には第二リンク145を連結しており、この第二リンク145の他端側には第四アーム146を連結している。この第四アーム146は、右側の一方向クラッチ136Rの外環部138Rの上側に該外環部138Rと一体に設けられている。 従って、左側の一方向クラッチ136Lの外環部138Lの往復回動により第一アーム140が前後方向に往復回動し、第一リンク142を介して第二アーム141へ伝達され、該第二アーム141が第一アーム140と同期して同じ側に前後方向に往復回動する。
【0045】
第三アーム144は、中継軸143に対して第二アーム141とは上下反対側(上側)に延びているので、その第二リンク145との連結位置では第二アーム141の往復回動と同期して第二アーム141の第一リンク142の連結位置における前後方向の往復動とは前後反対側に往復揺動することになる。そして、第三アーム144の往復動が第二リンク145を介して第四アーム146へ伝達され、第四アーム146が第三アーム144と同期して同じ側に前後方向に往復回動するので、右側の一方向クラッチ136Rの外環部138Rは、左側の一方向クラッチ136Lの外環部138Lの往復回動と同期して反対側に回動する。 従って、前記第一アーム140乃至第四アーム146、第一リンク142及び第二リンク145により、逆転伝達機構を構成している。
【0046】
従って、前記逆転伝達機構により左右の一方向クラッチ136L,136Rの外環部138L,138Rが互いに反対側に回動するため、繰出入力アーム135の往復作動において左右の一方向クラッチ136L,136Rのいずれか一方が一方向クラッチ軸137を同じ一方向(正転方向)に回転させることとなり、常時、連続的に一方向クラッチ軸137を駆動することができる。
【0047】
左右の一方向クラッチ136L,136Rの間には一方向クラッチ軸137とキー147aにより一体回転する駆動ギヤ147を設け、この駆動ギヤ147が後述する繰出駆動軸105と一体回転する従動ギヤ148に噛み合う。従って、一方向クラッチ軸137の連続回転が繰出駆動軸105へ伝動される。ここで、繰出駆動軸105と繰出軸75は図5や図13に描かれた通りの配置関係であり、繰出駆動軸105に繰出駆動ギヤ108aを軸着し、繰出軸75に繰出従動ギヤ108bを軸着して、この繰出駆動ギヤ108aと繰出従動ギヤ108bを噛み合わせている。なお、駆動ギヤ147の歯数は、従動ギヤ148の歯数より多く、従動ギヤ148の歯数の約2倍となっている。
【0048】
従って、駆動ギヤ147及び従動ギヤ148により、回転速度を増速して伝動する増速伝動部を構成している。なお、左右の一方向クラッチ136L,136Rのそれぞれの外環部138L,138Rの外周には、一方向クラッチ136L,136Rの伝動用ローラ139部分へ肥料や塵等の異物が混入しないように駆動ギヤ147の基部内径部との隙間を塞ぐシール材149を設けている。なお、左右の一方向クラッチ136L,136Rの伝動用ローラ139の駆動ギヤ147とは反対側にも、外環部138L,138Rの内面と一方向クラッチ軸137の外面とに接触するように外側シール材149aを設けている。
【0049】
以上のように、左右の一方向クラッチ136L,136Rの間に駆動ギヤ147を設けているので、左右いずれの一方向クラッチ136L,136Rが伝動状態であっても伝動する一方向クラッチ136L,136Rと駆動ギヤ147並びにキー147aとが近いため、左右一対の一方向クラッチ136L,136Rの左右一方側に駆動ギヤ147を配置した場合と比較して、一方向クラッチ136L,136Rにより伝動される動力を駆動ギヤ147へ適正な速度で精度良く伝動することができ、肥料繰出部61の肥料の繰出量を適正に安定させることができる。
【0050】
また、一方向クラッチ136L,136Rの外環部138L,138Rと駆動ギヤ147の基部内径部との隙間を塞ぐシール材149が一方向クラッチ軸137の方向において前記外環部138L,138Rと重複する構成となるので、一方向クラッチ136L,136Rの伝動用ローラ139と駆動ギヤ147との左右方向(一方向クラッチ軸137方向)の位置を近づけることができ、一方向クラッチ136L,136Rにより伝動される動力を駆動ギヤ147へ適正な速度でより精度良く伝動することができる。
【0051】
従来の一般的な一方向クラッチを使用すると、この一方向クラッチは、図12に示す外側シール材149aのように、伝動用ローラの外側(一方向クラッチ軸方向の外側)にシール材を設けているので、そのシール材の一方向クラッチ軸方向の厚み分駆動ギヤ並びにキーと伝動用ローラとの間隔を設けなければならず、駆動ギヤ147の回転作動速度が一方向クラッチ軸の支持部における緩みによるがたの影響を受けやすくなって不適正になったり不安定になったりすることが考えられる。
【0052】
逆転伝達機構の左右には、該逆転伝達機構を支持する逆転用支持部材150L,150Rをそれぞれ設けている。この逆転用支持部材150L,150Rは、鋳物により構成され、施肥装置5の基部フレーム151に締付ボルト152にて固定されており、一方向クラッチ軸137、繰出駆動軸105及び逆転伝達機構の中継軸143を軸受するボールベアリング153,154,155をそれぞれ備えている。
【0053】
なお、繰出駆動軸105は、逆転用支持部材150L,150Rを貫通して左右に長く設けられている。従って、前記一方向クラッチ軸137、繰出駆動軸105及び中継軸143は、左右の逆転用支持部材150L,150Rにより左右で軸受され、一方向クラッチ軸137、逆転伝達機構及び駆動ギヤ147並びに従動ギヤ148等の施肥伝動機構27の伝動部の左右で両持支持されているので、支持剛性が向上し、繰出伝動が適正に精度良く行われる。
【0054】
特に、図11及び図12に示すように、第二アーム141は左側の逆転用支持部材150Lに近づけて配置され、第三アーム144は右側の逆転用支持部材150Rに近づけて配置されているので、中継軸143におけるこれらのアーム141,144から受ける作動荷重を左右それぞれのボールベアリング155がしっかりと受け、前記アーム141,144の伝達精度の向上を図ることができる。
【0055】
左側の逆転用支持部材150Lの左側には、繰出量調節機構156を設けている。この繰出量調節機構156は、前部に繰出量調節ねじ部分157を備える繰出量調節軸158と該軸158の後部に取り付けた電動モータ159とを備えている。繰出量調節軸158の中途部には該軸158が回動できるように外嵌された軸支持部材160を設けており、この軸支持部材160に固着した左右方向の軸支持支点軸160aを左側の逆転用支持部材150Lに挿入した構成となっている。
【0056】
従って、繰出量調節機構156は、前記軸支持支点軸160a回りに回動可能に設けられている。なお、軸支持支点軸160aは、繰出量調節軸158の右側で左側の逆転用支持部材150Lに支持されると共に、左側で格別に設けた調節軸支持フレーム161に支持されている。従って、繰出量調節機構156は、軸支持支点軸160a部分において繰出量調節軸158の左右で両持支持された構成となっている。
【0057】
カウンタアーム133の回動軸162を支持するカウンタ支持部材163の上部には、雌ねじ部分を備える主要部が側面視六角形の位置調節体164を左右方向の軸回りに回動可能に設けている。なお、カウンタ支持部材163の後端部には左右方向の同一直線上に軸心が位置するカウンタ支点軸165を左右それぞれ設け、カウンタ支持部材163は、このカウンタ支点軸165回りに基部フレーム151に対して回動可能に設けられている。
【0058】
なお、基部フレーム151にはカウンタ支点軸165を装着する孔166を複数個(4個)前後に配列しており、型式、仕様等により施肥装置5のスペースが制限されるようなときにはカウンタ支点軸165の前後位置を変更して対応し、カウンタ支持部材163及び基部フレーム151等の部品の共用化を図っている。カウンタ支点軸165部分は基部フレーム151とは別の補強部材167により機体に支持されており、カウンタ支点軸165の位置が変わってもカウンタ支点軸165部分に補強部材167を取り付けて剛性を保ち、カウンタ支点軸165の位置が変化しにくいようにしている。前記位置調節体164の雌ねじ部分に繰出量調節軸158の前部の繰出量調節ねじ部分157が螺合しており、繰出量調節軸158の回動により位置調節体164が前後に移動してカウンタ支持部材163がカウンタ支点軸165回りに回動し、カウンタアーム133の回動軸162を前上方あるいは後下方に移動させる構成となっている。
【0059】
従って、カウンタアーム133の回動軸162を移動させることにより、カウンタアーム133の姿勢が変化し、例えば前記回動軸162を前上方へ移動させると、駆動側揺動ロッド132及び従動側揺動ロッド134が共にカウンタアーム133と直角に近い状態で交差するように姿勢が変更されるので、駆動側揺動ロッド132で作動するカウンタアーム133及び従動側揺動ロッド134で作動する繰出入力アーム135の揺動ストローク(揺動角)がそれぞれ大きくなり、一方向クラッチ軸137ひいては繰出駆動軸105の回転速度が大きくなって、繰出駆動ギヤ108aに噛合する繰出従動ギヤ108bの回転速度が大きくなり、肥料繰出部61による繰出量が多くなる。
【0060】
一方、前記回動軸162を後下方へ移動させると、駆動側揺動ロッド132及び従動側揺動ロッド134が共にカウンタアーム133と直角からかけ離れた状態で交差するように姿勢が変更されるので、駆動側揺動ロッド132で作動するカウンタアーム133及び従動側揺動ロッド134で作動する繰出入力アーム135の揺動ストローク(揺動角)がそれぞれ小さくなり、一方向クラッチ軸137ひいては繰出駆動軸105の回転速度が小さくなって、繰出駆動ギヤ108aに噛合する繰出従動ギヤ108bの回転速度が小さくなり、肥料繰出部61による繰出量が少なくなる。従って、電動モータ159を操作して繰出量調節軸158を回動させることにより、施肥装置5の肥料の繰出量を連続的に変更して調節できるようになっている。
【0061】
カウンタ支持部材163は、左右のプレート部163aと該左右のプレート部163aを繋ぐ前部プレート部163bとにより平面視コの字状に構成され、前記左右のプレート部163aに位置調節体164、カウンタアーム133の回動軸162及びカウンタ支点軸165を軸受するボールベアリング(図示せず)をそれぞれ設けている。従って、位置調節体164及びカウンタアーム133の回動軸162は左右のボールベアリングにより両持支持され、左右のカウンタ支点軸165は左右に配置したそれぞれのボールベアリングにより左右別個に支持されている。よって、繰出量調節軸158の繰出量調節ねじ部分157と位置調節体164の雌ねじ部分との螺合部は螺合しているためにがたが生じやすく、カウンタ支持部材163の回動位置が不安定になる要因となりやすいが、この螺合部の左右にボールベアリングを設けて位置調節体164を両持支持しているので、カウンタ支持部材163の回動位置の安定を図ることができ、繰出量調節の適正化及び施肥装置5の肥料の繰出量の安定化を図ることができる。
【0062】
図12に示すように、繰出量調節軸158の軸支持部材160より前側の部分には繰出量表示用ねじ部分173を設けると共に、該ねじ部分173に螺合する雌ねじ部分174aを備える繰出量表示具174を設けている。なお、繰出量表示具174は、繰出量表示用ねじ部分173を覆うカバー175の右側部に設けた長孔部176に係合し、この長孔部176から一部がカバー175の右側に突出するように設けられ、前記カバー175に対して回動しないように支持されると共に前記長孔部176に案内されて繰出量調節軸158方向に移動可能に支持され、繰出量調節軸158の回動に伴って該軸158方向に移動する構成となっている。前記カバー175の長孔部176の縁にはこの長孔方向に目盛177をつけていると共に、繰出量表示具174にはマーク178をつけており、該マーク178が指し示す目盛177を読みながら作業者が肥料の繰出量を認識したり調節したりするようになっている。
繰出量調節軸158は側面視で前上がり姿勢に傾斜して設けられ、繰出量調節軸158の前端部に設けた電動モータ159を肥料繰出部61より前側に配置している。
【0063】
また、図13に示すように、繰出駆動軸105に伝達された施肥動力は、2条ごとに1組設けられた施肥畦クラッチ106,…を介して、繰出駆動軸105に回転自在に外嵌する筒軸107,…に伝達される。そして、一対の繰出伝動ギヤ108a,108bを介して、各筒軸107から各条の繰出軸75へ伝動される。駆動側の繰出伝動ギヤ108aは筒軸107に摺動自在に嵌合しており、該ギヤ108aをずらして一対の繰出伝動ギヤ108a,108bの噛み合いを解除することができる。つまり、各条ごとに施肥作動を入り・切りする単条クラッチ108として構成されているのである。
【0064】
図4を参照すると、左から数えて第1条と第2条の施肥作動を入・切する施肥畦クラッチ106(1・2)及び第3条と第4条の施肥作動を入・切する施肥畦クラッチ106(3・4)は、第2条の肥料繰出部61と第3条の肥料繰出部61との間隔部にそれぞれ設けられている。第5条と第6条の施肥作動を入・切する施肥畦クラッチ106(5・6)は、第6条の肥料繰出部61の右側すなわち施肥装置5の右端に設けられている。これらの施肥畦クラッチ106を操作する畦クラッチレバー110(1・2),110(3・4),110(5・6)は、図4に示すように先端を前方に突出させて上下に回動操作するように設けられている。左右の後輪11,11は平面視で第1条の肥料繰出部61と第2条の肥料繰出部61との間隔部及び第5条の肥料繰出部61と第6条の肥料繰出部61との間隔部にそれぞれ位置しており、後輪11,11と畦クラッチレバー110,…とが同じ肥料繰出部間にないように配置されている。
【0065】
また、図4に示すように、左から1条目の施肥作動を入・切する単条クラッチ108(1)及び左から2条目の施肥作動を入・切する単条クラッチ108(2)は、1条目と2条目の間隔部にそれぞれ設けられている。同様に、単条クラッチ108(3)及び単条クラッチ108(4)は3条目と4条目の間隔部に設けられ、単条クラッチ108(5)及び単条クラッチ108(6)は5条目と6条目の間隔部に設けられている。これらの単条クラッチ108,…は切替つまみ111で操作する。
【0066】
施肥作業時には、繰出ロール73A,73Bを正転(図6の矢印方向)させ、肥料貯留タンク60の肥料を繰出口61aから下方に繰り出す。繰出口61aから繰り出された肥料は、管状部及び肥料移送ホース62内をブロア67から吹き出される圧力風によって運ばれ、肥料移送ホース62の先端吐出口から施肥ガイド63に吐出され圃場に供給される。なお、繰出量調節機構156により、繰出駆動軸105の回転速度を変更して肥料吐出量を無段階に調節できる。
【0067】
肥料回収時には、肥料貯留タンク60の肥料を肥料排出口83から排出する。排出された肥料は、肥料回収管85及び回収シュート87内をブロア67から吹き出される圧力風によって運ばれ、回収シュート先端の回収口から吐出されて回収容器等に回収される。
また、各畦クラッチレバー110,…には、施肥畦クラッチ106,…の入・切に連係して前記植付畦クラッチ,…を入・切するためのケーブル120,…が繋がれている。畦クラッチレバー110,…は後輪のない粉粒体繰出部間に設けられているので、ケーブル120,…を肥料移送ホース62,…及び後輪11,11と干渉することなく配索することが可能になっている。
【0068】
また、電動モータ159で繰出伝動軸105を駆動する場合には、繰出伝動軸105の回転センサー184(1)〜184(3)によりそれぞれ第1条と第2条の施肥作動を入・切する施肥畦クラッチ106(1・2)及び第3条と第4条の施肥作動を入・切する施肥畦クラッチ106(3・4)および第5条と第6条の施肥作動を入・切する施肥畦クラッチ106(5・6)の回転数を検出し、制御装置100(図15)で繰出伝動軸105の回転を制御する。その結果、各畦クラッチレバー110の操作によって各繰出ロール73の回転数に差が生じても繰出伝動軸105の回転数を検出する繰出伝動軸回転数検出センサ117により、精度の高い施肥量設定が可能となる。また、肥料の使用量をモニター表示できる構成としても良い。
【0069】
以上により、この乗用型の田植機1は、原動機となるエンジン20を備える走行車体2の後側に苗植付部4を設けると共に、走行車体2の後部上側で苗植付部4の前側に粉粒体貯留タンクとなる肥料貯留タンク60及び該タンク60内の粉粒体を繰り出す粉粒体繰出部となる肥料繰出部61を複数設け、エンジン20からの動力を走行車体2の後部で肥料繰出部61の下側に設けた伝動分岐部となる植付クラッチケース25内で苗植付部4と肥料繰出部61へ分岐して伝動すると共に、植付クラッチケース25から上下方向に延びる駆動側揺動ロッド132を上下方向に往復作動させて肥料繰出部61へ伝動し、前記駆動側揺動ロッド132から肥料繰出部61への伝動経路の間に設けた駆動ギヤ147及び従動ギヤ148で構成される増速伝動部で肥料繰出部61へ伝動速度が増速される。
【0070】
従って、この乗用型の田植機1は、走行車体2に設けたエンジン20からの動力により、機体を走行させながら苗植付部4を作動させて苗を植え付けると共に、肥料繰出部61を作動させて肥料貯留タンク60内の粒状肥料を繰り出し圃場の苗植付位置の側方に施肥していく。肥料繰出部61へは、該肥料繰出部61の下側に設けた植付クラッチケース25から上下方向に延びる駆動側揺動ロッド132の上下方向の往復作動により上側へ伝動される。また、駆動側揺動ロッド132から増速伝動部を介して肥料繰出部61へ伝動される。
【0071】
こうして、増速伝動部を介して肥料繰出部61へ伝動する分、駆動側揺動ロッド132の上下方向の往復作動の作動ストロークが比較的小さくても所望の伝動速度で肥料繰出部61へ伝動することができるので、駆動側揺動ロッド132の上下方向の往復作動による機体に上下方向の振動を抑えることができ、走行車体2に座席31に座るオペレータへの振動の伝播を抑えてオペレータの居住性を良好に維持すると共に、繰出駆動軸105を所望の回転速度にして肥料繰出部61による肥料の繰出量を所望に維持しつつ肥料の繰出量を安定させることができる。
【0072】
また、この乗用型の田植機1は、同じ回転方向で伝動する一対の一方向クラッチ136L,136Rのうち右側の一方向クラッチ136Rへ逆転伝達機構を介して伝動することにより、駆動側揺動ロッド132からの往復作動で前記一対の一方向クラッチ136L,136Rへ互いに逆方向の動力が伝達されて前記往復作動における往作動及び復作動を共にいずれかの一方向クラッチ136L,136Rで伝動する構成とし、前記一対の一方向クラッチ136L,136Rより伝動下手側で各肥料繰出部61への伝動分岐部となる繰出伝動ギヤ108aより伝動上手側に増速伝動部を設けている。
【0073】
従って、右側の一方向クラッチ136Rへ駆動側揺動ロッド132からの往復作動を逆転伝達機構を介して伝動することにより、前記往復作動における往作動及び復作動を共に一対の一方向クラッチ136L,136Rのいずれかで伝動し、駆動側揺動ロッド132からの往復作動を一対の一方向クラッチ136L,136Rにより一方向クラッチ軸137へ連続的に回転伝動する。そして、一対の一方向クラッチ136L,136Rによる一方向クラッチ軸137の連続的な回転伝動が増速伝動部へ伝動され、増速伝動部から繰出駆動軸105を介して該軸105と一体回転する複数の繰出伝動ギヤ108aにより伝動を分岐して複数の肥料繰出部61へ伝動される。
【0074】
よって、一対の一方向クラッチ136L,136Rにより駆動側揺動ロッド132からの往復作動を連続的に伝動して肥料繰出部61による肥料の繰出を連続的に行うことができると共に、一対の一方向クラッチ136L,136Rのうちのいずれによる伝動も増速伝動部へ伝動され、また複数の肥料繰出部61のいずれへの伝動も前記増速伝動部を介して伝動されるから、複数の肥料繰出部61の各々への伝動速度が均一化すると共に安定し、各肥料繰出部61の肥料の繰出量を均一に安定させることができる。
【0075】
また、この乗用型の田植機1は、走行車体2の座席31より後側に複数の肥料繰出部61を左右に並べて設けると共に、肥料繰出部61の上方に肥料貯留タンク60を設け、肥料繰出部61の後側に設けたカウンタアーム133から前側に延びる従動側揺動ロッド134を介して肥料繰出部61へ伝動し、カウンタアーム133の回動軸162を移動させて肥料繰出部61の肥料の繰出量を変更調節する繰出量調節機構156の繰出量調節軸158をカウンタアーム133から前上側に延設し、繰出量調節機構156の操作具となる電動モータ159及び繰出量表示具174を肥料繰出部61より前側に配置している。
【0076】
従って、カウンタアーム133の作動により従動側揺動ロッド134を介して複数の肥料繰出部61へ伝動し、該肥料繰出部61を作動させて肥料貯留タンク60内の肥料を繰り出し圃場に施肥する。そして、作業者が走行車体2の座席31側すなわち前側から繰出量表示具174により繰出量調節位置を確認しながら繰出量調節機構156の電動モータ159を操作することにより、カウンタアーム133の回動軸162を移動させて肥料繰出部61の肥料の繰出量を変更調節できる。なお、繰出量調節機構156を左右に配列される肥料繰出部61の間に設けた施肥伝動機構27の左右一方(左側)に配置し、繰出量調節機構156の施肥伝動機構27側となる側部(右側部)に繰出量表示具174を設けているので、作業者は隣接する近い側の(左側の)肥料繰出部61が邪魔にならずにその反対側(右側)から繰出量表示具174を視認することになるので、繰出量表示具174の視認を容易に行える。しかも、繰出量調節軸158をカウンタアーム133から前上側に延設し、電動モータ159及び繰出量表示具174を肥料繰出部61より前側に配置しているので、電動モータ159及び繰出量表示具174がカウンタアーム133ひいては肥料繰出部61に対して比較的高い位置に配置されるため、肥料繰出部61のメンテナンスを行うときに肥料繰出部61に残留する肥料が電動モータ159及び繰出量表示具174等にかかりにくくなる。
【0077】
前記繰出量表示具174により繰出量調節位置を確認しながら電動モータ159を操作することができるので、肥料繰出部61の肥料の繰出量を精度良く微調節できる。また、電動モータ159及び繰出量表示具174を肥料繰出部61より前側に配置しているので、走行車体2の座席31側すなわち前側から繰出量調節をするとき、肥料繰出部61が邪魔になりにくく、繰出量調節を容易に行える。しかも、電動モータ159及び繰出量表示具174は比較的高い位置に配置されて肥料がかかりにくくなるので、繰出量調節機構156の作動の適正化を図ることができる。なお、繰出量調節軸158において繰出量表示用ねじ部分173と繰出量調節ねじ部分157とを肥料繰出部61に対して前後に振り分けて設け、繰出量表示用ねじ部分173及び繰出量調節ねじ部分157が肥料繰出部61の側方近傍に配置されないようにしたので、繰出量表示用ねじ部分173及び繰出量調節ねじ部分157に肥料がかかりにくくなり、繰出量調節機構156の作動の適正化を図ることができる。
【0078】
また、繰出駆動軸105及び中継軸143より前側に一方向クラッチ軸137を配置しており、繰出駆動軸105ひいては逆転伝達機構の構成部材等が邪魔にならずに一方向クラッチ136L,136Rのメンテナンスを走行車体2の座席31側すなわち前側から容易に行える。
【0079】
後輪駆動軸(図示せず)の回転パルスを検出する車速センサ112(図15)を設け、該検出した車速に応じて施肥量の増減を行うことができるようにした。すなわち、予め設定された車速に対応した繰出駆動軸105の回転数に応じて施肥量の増減の調節は繰出ロール73A,73Bの回転速度を調整する。該繰出ロール73A,73Bの回転速度は予め設定された繰出駆動軸105の回転速度により調節を肥料繰出電動モータ159で行う。
【0080】
走行車体2の走行速度に基づき施肥装置5の繰出しロール73A,73Bの回転速度を肥料繰出電動モータ159により、予め設定された変更量で変更することにより、走行速度が変化して繰出し回転体73A,73Bの回転速度が変わっても、繰出し回転体73A,73Bに供給される肥料の量を一定量に保つことができるので、例えば、走行車体2の走行速度が速くなると、繰出しロール73A,73Bの回転が比例関係以上に遅くなり、繰出しロール73A,73Bが一度に排出する肥料の量が減少して肥料不足になることが防止され、苗の生育が良好となり、また、走行車体2の走行速度が遅くなると、繰出しロール73A,73Bの回転が比例関係以上に多くなるように変更することにより、繰出しロール73A,73Bの回転速度を速くして繰出しロール73A,73Bが一度に排出する肥料の量が増加して肥料が供給過剰になることが防止できる。
【0081】
こうして、例えば苗移植機の走行速度が速くなっても、繰出ロール73A,73Bの回転速度を速くすることで、圃場の単位長さに対する繰出しロール73A,73Bから圃場に供給される肥料の量を一定量に保つことができ、苗に対する肥料の量が減少して肥料不足になることが防止され、苗の生育が良好となる。
また、苗移植機の走行速度が遅い場合にも繰出しロール73A,73Bから繰出される肥料の量が増加して圃場に肥料が供給過剰になることが防止できるので、肥料過多による苗の虚弱化や水質の汚染が防止される。
【0082】
また、車速センサ112が苗移植機の走行速度の検出をしない場合(走行停止状態)には施肥ブロア67の作動を停止する。また、車速センサ112が苗移植機の走行速度の検出をしない場合(走行停止状態)でも、施肥伝動機構27の肥料回収レバー90(図9)の作動状態を検知する肥料排出レバーセンサ116(図15)により、肥料回収レバー90が肥料の「排出」側に操作されることを検知すると施肥ブロア67の作動を停止させないようにする。
【0083】
車速センサ112が苗移植機の走行速度を検出しない状態、すなわち走行停止状態になると、施肥ブロア67を停止させる構成としたことにより、施肥ブロア67から排出される風が圃場の泥土や水をはね上げて肥料の供給経路を詰まらせてしまうことを防止できるので、肥料が圃場に供給されなくなることが防止され、苗の生育が安定する。また、ブロア67が作動され続けることで肥料の供給経路が詰ることがなくなり、肥料の供給経路に入り込んだ泥土を取り除く作業が省略されるので、作業者の労力が軽減される。
【0084】
さらに、走行停止中でも施肥伝動機構27の肥料回収レバー90が肥料の「排出」側に操作されると施肥ブロア67が駆動するので、走行を再開したとき確実に肥料を圃場に供給できるので、肥料不足の領域が生じるおそれがなくなる。
なお、車速センサ112を後輪11の駆動軸に設けたので、苗移植機の走行速度をダイレクトに検出して施肥量に反映することができるので、適切な量の肥料が圃場に施肥され、苗の生育が良好になると共に過剰施肥による生育障害が防止される。
車速センサ112を施肥装置5の繰出駆動軸105に設けると車速の変化による施肥装置5の伝動機構の回転に対応する施肥量を判別することができるので、適切な量の肥料が圃場に施肥され、苗の生育が良好になると共に過剰施肥による生育障害が防止される。
【0085】
苗移植機の苗植付部4に据え付けられる籾供給装置(図示せず)に籾を補給するとき苗移植機の苗植付部4を下げないと籾供給装置の位置が高すぎて補給できないため、苗植付部4を下げて籾を籾供給装置に補給する。
そのことにより籾供給装置に籾を補給中に圃場面の水や泥がブロア67の風により、はねて籾供給装置、施肥装置5及びそれらの繰出部がつまるおそれがある。
【0086】
この問題を解決するために次のようなプログラムを組むことができる。
(1)苗移植機が走行していないときは籾供給装置の直播ブロア(図示せず)が止まるプログラム(図14(a))。
(2)苗移植機が走行していないときは施肥装置5の施肥ブロア67が止まるプログラム(図14(b))。
(3)(2)のときにおいて、苗移植機の肥料回収レバー90を「排出」にしたら施肥ブロア67のスイッチが「入」になるプログラムを設けても良い(図14(c))。
(4)(2)のときにおいて、PTOでも植付クラッチ106を「入」にしたら施肥ブロア67が「入」になるプログラムを組んでもよい。
【0087】
本実施例の苗移植機に備えられた施肥装置5は土壌分析型可変施肥装置とすることもできる。
すなわち、圃場の土壌のpH(酸・アルカリ度)とEC(電気抵抗値)を測定し、それらの測定値の組み合わせにより、表1に示すような内容で施肥量と施肥内容をコントロールする構成である。
【表1】

表1に示す各施肥量の多少・種類の選択は次のような理由による。
すなわちpHが高く(約7.5〜8.5)、EC値が高い場合は、圃場の窒素(N)成分が多く且つその他の肥料成分(P,K等)も多いと判断できるので、施肥量を少なくする。従って、養分過多となって苗が軟弱になることを防止するために、施肥量を少なくする。 また、pHが高く、EC値が低い場合は、圃場の窒素成分が不足していると判断できるので、窒素成分の比率の高い肥料を施す。
そして、pHが低く、EC値が高い場合は、圃場の窒素成分は多いもののその他の成分が不足していると判断できるので、窒素成分の比率の低い肥料を施す。
また、pHが低く、EC値も低い場合は、圃場の各種成分が不足しているので、施肥量を多くする。
こうして、土壌分析型の可変施肥装置を用いることで、一回の作業で適切な施肥が行える。
【0088】
pH計とEC計はセンターフロート55の伝動ケース50への取付部の近傍に基部側を取り付けた単一の測定装置に設置することでコンパクトな構成になるだけでなく、圃場の硬軟により、苗の植え付け深さを変化させても、常に土壌のpH値とEC値を測定できる。なお、EC値は温度依存性があるので、土壌の温度を測定できる温度計も併設してもよい。このように土壌分析をしながら、精度良く施肥を行うことができる。
【0089】
図3に示す苗植付条に対応した数の肥料繰出部61にはそれぞれ施肥畦クラッチ106が設けられており、該施肥畦クラッチ106が作動してる部分の肥料繰出部61から施肥ホース62内に落下する肥料がブロア67からエアチャンバ68を経由する送風により、それぞれの苗植付条に送られる。
このとき苗植付を行わない植付条の施肥畦クラッチ106を切ると、対応する肥料繰出部61への送風を遮断するシャッタ84(図6)を肥料繰出部61の送風入口毎に設けている。
【0090】
従来は前記シャッタが無かったので、苗植付を行わない植付条の施肥畦クラッチ106を切ると、肥料繰出部61から肥料が落下してこないので、その肥料繰出部61への風が抵抗無く流れる。その結果、施肥を行っている肥料繰出部61への送風量が低下するということがあった。
しかし、上記構成を採用することで、シャッタを閉じた肥料繰出部61に対応する施肥畦クラッチ106を切っても、他の施肥を行っている肥料繰出部61への送風量を低下させることなく送風を続けることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 20 エンジン
21 第一ベルト伝動装置 23 HST
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ(フェンダ)
38 予備苗載台 40 上リンク
41 下リンク 42 リンクベースフレーム
43 縦リンク 44 連結軸
45 スイングアーム 46 昇降油圧シリンダ
47 固定プレート 48 機体側フレーム
48a ピン 49 施肥装置側フレーム
49a パッチン錠 50 伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
52a 苗植付具 53 線引きマーカ
54 傾動位置ロック用プレート
54a 長孔 54b 孔
54c 回動支点 55 センターフロート
56 サイドフロート 57 上下動検出機構
58 繰出量調節ロッド支持プレート
60 肥料ホッパ 60a 蓋
61 繰出部 61a 吐出口
62 施肥ホース 63 施肥ガイド
64 作溝体 66 電動モータ
67 ブロア 68 エアチャンバ
68a ゴム管 68b 樹脂管
71 回動アーム 72 係止具
73A,73B 繰出ロール 74 凹部
75 繰出軸 75a 角軸部
76 ブラシ
77A,77B 繰出停止シャッタ
77a 把手 78 繰出部ケース
78a 固定部分 78b 離脱部分
79 スライド支持部 80 接続管
81 エア切替管 82 カプセル摩耗防止板
82a 回動軸 83 肥料排出口
84 排出シャッタ 84a 回動軸
85 肥料回収管 86 エア切替シャッタ
86a 回動軸 87 肥料回収口
90 肥料回収レバー 90a 回動支点軸
90b ピン 91 シャッタ開閉伝達軸
92 扇形プレート 92a 長穴
93 開閉ギヤ 94 半円形ギヤ
94a ストッパ部 95 エア切替ワイヤ
96 アーム 97 スプリング
98 レバーガイド 98a,98b ガイド穴
100 制御装置 105 繰出駆動軸
106 施肥畦クラッチ 107 筒軸
108 単条クラッチ
108a,108b 繰出伝動ギヤ
110 畦クラッチレバー 111 つまみ
112 車速センサ 113 警報装置
116 肥料排出レバーセンサ
117 繰出伝動軸回転数検出センサ
120 ケーブル 131 クランクアーム
132 駆動側揺動ロッド 133 カウンタアーム
134 従動側揺動ロッド 135 繰出入力アーム
136L,136R 一方向クラッチ
137 一方向クラッチ軸
138L,138R 外環部
139 伝動用ローラ 140 第一アーム
141 第二アーム 142 第一リンク
143 中継軸 144 第三アーム
145 第二リンク 146 第四アーム
147 駆動ギヤ 147a キー
148 従動ギヤ 149 シール材
149a 外側シール材
150L,150R 逆転用支持部材
151 基部フレーム 152 締付ボルト
153,154,155 ボールベアリング
156 繰出量調節機構 157 繰出量調節ロッド
158 繰出量調節軸 159 電動モータ
160 軸支持部材 160a 支持支点軸
161 調節軸支持フレーム 162 回動軸
163 カウンタ支持部材 163a プレート部
163b 前部プレート部 164 位置調節体
165 カウンタ支点軸 166 孔
167 補強部材
173 繰出量表示用ねじ部分 174 繰出量表示具
174a 雌ねじ部分 175 カバー
176 長孔部 177 目盛
178 マーク
184(1)〜184(3) 回転センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(10)と後輪(11)を備え、圃場を走行する走行車体(2)と、
該走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を介して設ける苗植付部(4)と、
走行車体(2)上に設けた肥料ホッパ(60)と該肥料ホッパ(60)から肥料を繰出し回転体(73A,73B)を回転させて繰り出す繰出部(61)と該繰出部(61)からの肥料を送風搬送するための施肥ブロア(67)を有する施肥装置(5)と、
走行車体(2)の走行速度を検出する走行速度検出手段(112)と、
該走行速度検出手段(112)で検出された前記走行速度に応じて繰出部(61)にある繰出し回転体(73A,73B)の回転速度を制御する制御装置(100)
を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
制御装置(100)は、走行速度検出手段(112)が走行速度の検出を開始すると施肥ブロア(67)を「入」とし、走行速度検出手段(112)が走行速度を検出しない時は施肥ブロア(67)を「切」にする制御を行う構成を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
走行速度検出手段(112)を走行車体(2)の後輪(11)の駆動軸に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
走行速度検出手段(112)を施肥装置(5)の繰出駆動軸(105)に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−55287(P2012−55287A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204478(P2010−204478)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】