説明

荷役時間を短縮する港湾荷役機器の制御方法と港湾荷役機器

【課題】消費電力する電力量を変えずに、荷役時間を短縮する港湾荷役機器の制御方法と港湾荷役機器を提供する。
【解決手段】コンテナを、コンテナの巻上げ下げ開始から基準速度V0まで、コンテナの荷重に係わらず、定トルク領域A2の最大トルクである第1最大トルクTmによる一定の第1加速度で巻上げ下げし、基準速度V0から荷重から算出される最大速度Vmaxまで、定出力領域A2で定められる速度に反比例する最大トルクである第2最大トルクTvと保持用トルクTwとの差分である第2トルクを、予め定めた一定時間毎に算出し、算出した第2トルクにより一定時間毎に可変する第2加速度で巻上げ下げするようにクレーンのモータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊荷を巻上げ下げする港湾荷役機器において、荷役時間を短縮した港湾荷役機器の制御方法と港湾荷役機器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、国際航路におけるコンテナ輸送システムの急速な進展に伴い、コンテナ船は大型化しており、コンテナ船との荷の積み卸しを行う岸壁クレーン、門型クレーン、ストラドルキャリア、及びアンローダなどの港湾荷役機器の荷役効率を上げることが求められている。また、社会的に環境問題としてCO2を削減する省エネルギー化が求められている。それら港湾荷役機器の荷役効率を上げることは、荷役時間を短縮することであり、つまりは吊荷を巻上げ下げする時間を短縮することである。荷役時間が短縮すれば、その分だけ港湾荷役機器で消費される電力を低減することができ、省エネルギー化に繋がる。
【0003】
従来の電動機を用いて吊荷を巻上げ下げする港湾荷役機器は、巻上げ下げ運動において加速又は減速するときは、電動機を一定の加速度で加減速させている。しかしながらこの一定の加減速で吊荷を巻上げ下げする場合には、加減速中に出せるトルクに余裕がある。
【0004】
ここで、従来の港湾荷役機器である岸壁クレーンを説明する。図7に示すように、岸壁クレーン10Xは、桁部11、トロリ12、運転室13、スプレッダ(吊り具)14、ワイヤー15及び機械室16Xを備える。この岸壁クレーン10Xは、岸壁Gに接岸した船舶SからコンテナC(吊荷)をスプレッダ14で掴み、機械室16Xに設けたモータ(図示せず)を用いてワイヤー15を巻上げ下げ及びトロリ12を横行して、搬送台車17にコンテナCの受け渡しを行っている。
【0005】
このモータは、コンテナCの荷重によって巻上げ下げの最大速度が決まっており、その最大速度に達するまでは、一定の加速度又は減速度でコンテナCの巻上げ下げを行っている。しかしながら、モータの最大出力に対して、コンテナCの昇降に関わらず吊荷重を吊るためだけに必要な出力(以下、保持用トルクという)は低く設定されている。これは、定格荷重を定格速度で巻上げ下げするときにモータ出力100%となるモータを選定することが多いからである。
【0006】
定格荷重とは連続で荷役(巻上げ、巻下げ、横行)できる荷重のことでモータは定格荷重で巻上げ加速を行ったときに、定格出力の180%〜200%のトルクを出すことが可能である。このことは誘導電動機(モータ)における一般的な特性であり、誘導電動機は電源が入った直後に定格トルクの125%程度の始動トルクを出力し、定格トルクの180%〜200%の停動トルクを出力することができる。始動トルクとはモータが始動の瞬間に出すトルクでこのトルクよりも大きい負荷がかかっているとモータは起動しないため、定格トルクよりも大きいトルクとなる。一方、停動トルクとはモータが一定電圧、一定周波数で出し得る最大トルクで、このトルク以上の負荷がかかれば、モータは停止する。つまり、一般的に吊荷を巻上げ下げする港湾荷役機器に使用されるモータには出力できるトルクに余裕があることになる。
【0007】
そこで、吊荷を巻上げ下げするモータと、吊荷の荷重に基づいて吊荷保持に必要な吊荷保持用トルクを算出する吊荷保持用トルク算出部と、モータが出し得る最大トルクを算出する最大トルク算出部と、前記最大トルクから前記吊荷保持用トルクを引いて求められる吊荷の加速トルクに基づいて前記モータの加速制御を行う制御部とを備えて、吊荷の巻上げ、巻下げ時間を短縮したクレーン及びクレーンの制御方法がある(例えば特許文献1参
照)。
【0008】
特許文献1に記載のクレーンの電動機の制御について説明する。その電動機の出力特性を図8に示す。この電動機は、出力が速度に比例し、出力トルクが一定の定トルク領域A2と、出力トルクが速度に反比例し、出力が一定の定出力領域A3とを有している。吊荷を保持するために必要な保持用トルクTwの領域を保持用トルク領域31とし、吊荷を巻上げ下げするために実際に必要なトルクT1から保持用トルクTwを引いたトルク、つまり加速用に用いることができるトルクの領域を加速用トルク領域32とする。
【0009】
従来のクレーンにおいては、基準速度V0よりも速い速度である定出力領域A3をし移用する場合は定出力領域A3のトルクは速度に反比例するため吊荷の荷重に応じて巻上げ下げの最大速度Vmaxは決定される。そのときの加速度は最大速度Vmaxに達するまで一定としていた。
【0010】
一方特許文献1に記載のクレーンの電動機は、吊荷の巻上げ下げの開始から基準速度V0までは従来のクレーンと同様の加速度で吊荷を巻上げ下げ、定出力領域A3で示される最大トルクTvから、保持用トルクTwを引いたトルクで基準速度V0から最大速度Vmaxまでより速い加速度で吊荷を巻上げ下げている。このとき加速用に使用されるトルク領域を可変トルク領域32Xとする。この可変トルク領域32Xを利用することで、特許文献1に記載の電動機は基準速度V0から最大速度Vmaxまで、従来の電動機よりも速く到達することができ、その分荷役時間を短縮していた。
【0011】
しかしながら、図8に示すように、電動機の出力特性を考慮すると、定トルク領域A2に余裕があることが分かる。
【0012】
ここで定トルク領域A2について説明する。通常、電動機への電圧を変えることで制御する。起動時は電圧をごく低くしておき、速度が上がるとトルクは低下するため、これに合わせ徐々に電圧を上げていくと、トルクを一定に保つことができる。このとき電動機の電流は一定に制御され、出力は速度とともに増加する。この起動時からの領域を定トルク領域A2という。この定トルク領域A2は、速度に比例して電圧が増加することから、速度に比例して出力(消費電力)が増加する。
【0013】
つまり、定トルク領域A2内でより大きい加速度で動作させて、基準速度V0に早く到達しても、基準速度V0以上の最大速度Vmaxまで動作させる場合は、定トルク領域A2内で消費される電力は略変わらない。
【0014】
このことは下記の数式1からも分かる。数式1において、モータが消費する総電力量をTP、吊荷の荷重をWn、機械効率をη、巻上げ高さをhn、巻上げ速度をVmとする。
【数1】

【0015】
実際問題として考える場合、右の項は全体の1%未満であるため無視出来る。例えば、W=30ton、η=0.88、h=15m、V1=1m/sとすると、左項は5013、右項は4となる。従って総電力量は巻上げ速度に依存しないことがわかる。よって、吊荷の巻上げ下げ加速度を上げても消費される電力量はほとんど増加することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第4616447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで本発明の目的は、消費する電力量を変えずに、吊荷の巻上げ下げの開始から基準速度に達するまでの時間を短縮して、荷役時間を短縮することができ、その短縮した分の港湾荷役機器で消費されるエネルギーを削減する港湾荷役機器の制御方法と、港湾荷役機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の問題を解決するための本発明の港湾荷役機器の制御方法は、吊荷を巻上げ下げする電動機を備えた港湾荷役機器の制御方法において、前記電動機が、前記吊荷の荷重に係わらず、吊荷の巻上げ下げの開始から少なくとも予め定めた基準速度までは、前記電動機が出力できる最大のトルクを出力することを特徴とする方法である。
【0019】
上記の方法によれば、吊荷の荷重に係わらずに電動機の出力することができる最大トルクで、電動機の動作を制御することができる。これにより、従来よりも大きい加速度で吊荷を巻上げ下げすることができるので、荷役時間も短縮することができ、荷役時間が短縮した分で消費される電力を削減することができる。一方、前述した通り電動機の消費する電力は前述の通り、加速度を増加させても略影響を受けない。よって、短縮された荷役時間分で電力を削減するので、港湾荷役機器全体の消費電力を低減することができる。
【0020】
また、上記の港湾荷役機器の制御方法において、前記電動機が、前記吊荷の荷重に係わらず、前記吊荷の巻き上げ下げの開始から前記基準速度までは、出力トルクが一定で動作する定トルク領域の第1最大トルクを出力し、前記基準速度から前記吊荷の荷重から算出される最大速度までは、速度に反比例して出力トルクが低下する定出力領域の第2最大トルクを出力する。
【0021】
この方法によれば、基準速度までは定トルク領域を、また、基準速度からは定出力領域を有した出力特性を持つ電動機を、吊荷の荷重に係わらず、定トルク領域で示される第1最大トルクと、定出力領域で示される第2最大トルクを出力可能に制御することができる。特に、従来に比べて、巻上げ下げ速度が基準速度に到達する時間を早くすることと、その時間の間に吊荷を巻上げ下げする距離を伸すことができるため、荷役時間を短縮することができる。
【0022】
この電動機に、定格荷重を定格速度で巻上げ下げするときに出力100%となる電動機を選定する場合は、定格トルク領域の第1最大トルクを好ましくは定格トルク以上に、より好ましくは定格トルクの180%〜200%のトルクに設定する。また、基準速度は、任意に設定することができるが、好ましくは定格周波数の定格電圧を与えられた電動機が定格荷重を巻上げ下げする速度である定格速度に設定する。
【0023】
加えて、上記の港湾荷役機器の制御方法において、少なくとも前記電動機の始動トルクの発生が確立するまで、前記電動機によってワイヤーの巻取りと送出しで前記吊荷を巻上げ下げするドラムの回転を停止機構によって停止する。
【0024】
通常、電動機の回転数が定格回転数(定格速度)に達成するまでは、V/f制御(電圧÷周波数=一定の制御)であり、電動機の始動直後は電圧と周波数が小さく、よって始動トルクも小さい。そこで、周波数が低いときにトルクが小さくなりすぎるため電圧を上げ
てトルクブーストしている。よって、電動機の始動直後から保持用トルクよりも大きい始動トルクが発生するので、吊荷を保持することができる。
【0025】
この方法によれば、少なくとも電動機の始動トルクの発生が確立するまで、停止機構によって、ドラムの回転を止めることが可能となる。これにより、電動機が動作していないときに吊荷を保持して、吊荷の落下を防ぐことができる。この停止機構によって吊荷を保持するときは、吊荷を吊り具に吊るときや、巻上げ動作から巻下げ動作に移るときである。
【0026】
加えて、上記の港湾荷役機器の制御方法において、前記吊荷を、前記吊荷の巻上げ下げ開始から前記基準速度までは、前記第1最大トルクによる一定の第1加速度で巻上げ下げし、前記基準速度から前記最大速度までは、前記第2最大トルクと前記吊荷の荷重から算出される保持用トルクとの差分である第2トルクを、予め定めた一定時間毎に算出し、算出した前記第2トルクによる前記一定時間毎に可変する第2加速度で巻上げ下げする。
【0027】
上記の方法によれば、定トルク領域の最大トルクと、定出力領域の最大トルクから、吊荷を保持するために必要な保持用トルクの差分のトルクを、吊荷の巻上げ下げの加速度に利用することで、より速く吊荷を巻上げ下げすることができる。特に、定出力領域の最大トルクに合わせて、従来では使用していなかった定トルク領域の最大トルクを吊荷の巻上げ下げ加速度に利用することで、より速く基準速度に達することができる。そのため、港湾荷役機器を短縮することができ、港湾荷役機器が消費する電力量を低減することができる。
【0028】
さらに、上記の港湾荷役機器の制御方法において、前記基準速度に達するまでの間に、前記荷重の値を取得し、前記荷重から前記最大速度を算出する。
【0029】
この方法によれば、吊り具に吊荷を吊してから電動機が始動するまでの間、又は、電動機が始動して基準速度に達するまでの定トルク領域で動作する間に、吊荷の荷重を算出することができる。基準速度に到達するまでは、吊荷の荷重によらず、全トルクを利用している。つまり、吊荷を保持するトルク以外のトルクを全て吊荷の巻上げ下げする加速度に利用することになるため、吊荷の巻上げ下げを開始するときに荷重を算出して、保持に必要な保持用トルクを算出することは必要がない。そこで、定出力領域に入るまでの間に、加速度を算出する際に必要な吊荷の荷重と荷重別の最大速度を、定トルク領域で動作している間に算出することができる。
【0030】
上記の問題を解決するための本発明の港湾荷役機器は、吊荷を巻上げ下げする電動機を備えた港湾荷役機器において、前記電動機を、前記吊荷の荷重に係わらず、吊荷の巻上げ下げの開始から少なくとも予め定めた基準速度までは、前記電動機が出力できる最大のトルクを出力可能に制御する制御装置を備えて構成される。
【0031】
また、上記の港湾荷役機器において、前記制御装置が、前記電動機に、前記吊荷の荷重に係わらず、前記吊荷の巻き上げ下げの開始から前記基準速度までは、出力トルクが一定で動作する定トルク領域の第1最大トルクを出力させる手段と、前記基準速度から前記吊荷の荷重から算出される最大速度までは、速度に反比例して出力トルクが低下する定出力領域の第2最大トルクを出力させる手段とを備える。
【0032】
上記の構成によれば、特に、基準速度までに達するまでに電動機が定トルク領域の第1最大トルクを出力することにより、基準速度に達するまでの時間を早くすると共に、その時間の間に進む距離を伸ばすことができるため、荷役時間を短縮することができる。そのため、その短縮した分の消費電力を抑えることができる。
【0033】
また、上記の港湾荷役機器において、前記電動機によってワイヤーの巻取りと送出しで前記吊荷を巻上げ下げするドラムの回転を停止する停止機構を備え、前記制御装置に、少なくとも前記電動機の始動トルクの発生が確立するまで、前記ドラムの回転を停止するように前記停止機構を制御する手段を備える。
【0034】
この構成によれば、電動機の始動トルクの発生が確立するまで、停止機構によって、ドラムの回転を停止することができる。そのため、荷役を保持することができる。
【0035】
加えて、上記の港湾荷役機器において、前記制御装置が、前記第1最大トルクの値を算出する手段と、前記第2最大トルクの値を算出する手段と、前記第2最大トルクと前記吊荷の荷重から算出される保持用トルクとの差分の第2トルクの値を予め定めた一定時間毎に算出する手段とを備えると共に、前記吊荷の巻上げ下げの開始から前記基準速度までは、前記第1最大トルクによる第1加速度で前記吊荷を巻上げ下げする手段と、前記基準速度から前記最大速度までは、前記第2トルクによる前記一定時間毎に変化する第2加速度で前記吊荷を巻上げ下げする手段を備える。
【0036】
この構成によれば、基準速度までの第1加速度と、基準速度から最大速度までの第2加速度が、従来の加速度よりも大きくなる。これにより、吊荷の荷重から算出される最大速度にも速く達するので、荷役時間を短縮することができる。
【0037】
さらに、上記の港湾荷役機器において、前記基準速度に達するまでの間に、前記吊荷の荷重の値を取得する手段と、前記荷重から前記最大速度を算出する手段とを備える。
【0038】
この構成によれば、吊荷の荷重とその保持用トルクとその最大速度を必要な定出力領域になるまでに、荷重を取得し、最大速度を算出することができる。荷重を取得する手段は、一定加速運転中にモータ電流と速度を計測することで取得する手段や、クレーンに取り付けたロードセルによって吊荷の荷重を計測する手段を用いる。また、荷役前に予め吊荷の荷重を取得し、制御装置に入力しておく手段も用いることができる。取得された荷重と、電動機の出力特性の定出力領域との関係から電動機の最大巻上げ下げ回転数を決め、最大速度を算出することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、消費する電力量を変えずに、吊荷の巻上げ下げの開始から基準速度に達するまでの時間を短縮して、荷役時間を短縮することができ、その短縮した分の港湾荷役機器で消費されるエネルギーを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンを示した概略図である。
【図2】図1のモータのトルク特性を示した図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンの制御方法を示したフローチャートである。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態のクレーンを示した概略図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態のクレーンの制御方法を示したフローチャートである。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンの巻上げ速度と時間を示した図である。
【図7】従来のクレーンを示した側面図である。
【図8】従来のクレーンの電動機のトルク特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る実施の形態の港湾荷役機器の制御方法と港湾荷役機器について、図面を参照しながら説明する。なお、従来と同一の構成及び動作については同一の符号を用いて、その説明を省略する。また、本発明に係る実施の形態の港湾荷役機器として、コンテナ船との荷の積み卸しを行う岸壁クレーン(以下、クレーンという)を例として説明するが、本発明に係る実施の形態の港湾荷役機器はクレーンに限定しない。電動機を用いて吊荷を巻上げ下げする港湾荷役機器であればよく、例えば、岸壁クレーン、門型のヤードクレーン、ゴライアスクレーン、ジブクレーン、タワークレーン、アンローダークレーン、天井クレーン、及びストラドルキャリアなどの港湾荷役機器に適用することができる。
【0042】
本発明に係る第1の実施の形態のクレーン10は、図7に示した従来のクレーンの構成に加えて、図1の概略図に示すように、機械室16に、制御装置20、インバータ21、モータ(電動機)22、減速機23、ブレーキ(停止機構)24、ドラム25、及び速度センサ26を備える。また、運転室13に運転装置27を備える。
【0043】
コンテナなどの吊荷を荷役する際に、運転室13に搭乗した運転手が運転装置26を操作する。その操作信号を制御装置20が受け取り、インバータ21を介してモータ22が回転する。そのモータ22の回転によって、ドラム24がワイヤーを巻取り又は送り出してトロリの横行及び吊り具の巻上げ下げを行う。
【0044】
インバータ21は一般的なインバータを用いることができるが、好ましくはモータ22を基準速度に達成するまではV/f制御、基準速度からはベクトル制御することができるベクトル制御インバータがよい。V/f制御とは、電圧と周波数の比が一定の制御方法である。一方、ベクトル制御とはモータ22のトルクをモータ22に流れる電流を励磁電流と負荷電流に分解し、位相を考慮して、電圧及び周波数を制御する手法である。このベクトル制御インバータは、負荷や回転数の急変時にもトルクの乱れがなく、安定して動作するので、モータ22の出力トルクを制御して、巻上げ下げ速度を制御することができる。
【0045】
ブレーキ24はモータ22からの動力によって回転するドラム25の回転を停止することができる装置である。このブレーキ24には、ドラムブレーキ、バンドブレーキ、ディスクブレーキ、メカニカルブレーキ、又は過電流ブレーキなどを用いることができる。また、このブレーキ24を運転装置27の操作と連動させると共に、制御装置20によって制御する。
【0046】
速度センサ26は、MR素子(磁気抵抗素子)から形成され、ドラム25の回転角度を検出するセンサである。この速度センサ26の構成は上記に限らず、制御装置20がモータ22の回転数R1及び速度V1を算出することができるようなデータを取得できる構成であればよい。
【0047】
モータ22の出力特性について説明する。本発明において、特にモータの種類は限定しないが、好ましくは、インバータ専用定トルクモータで、センサレスベクトル制御によって制御されるモータがよい。
【0048】
このモータ22の使用できるトルクと回転数との関係を図2に示す。
【0049】
実際に使用する場合は、図2に示すように、このモータ22は、基準回転数R0(基準速度V0の回転数)を有し、その基準回転数R0を境界線にして、トルクが一定の定トルク領域A2と、トルクが回転数(速度)に反比例で、出力が一定の定出力領域A3とを備える。また、定トルク領域A2の最大値を第1最大トルクTmとし、定出力領域A3の最大値を、回転数に反比例する第2最大トルクTvとする。加えて、基準速度V0は、任意
に設定することができるが、モータ22を安全に動作せるために、定格速度に設定することが好ましい。
【0050】
このモータ22は、インバータ21から送られる電流の周波数と電圧が低いときに、始動トルクは小さい。モータ22の回転数が基準回転数R0(基準速度V0)になるまでは、前述したようにV/f制御され、周波数と電圧が一定で大きくなる。その始動トルクが小さくて、実際に利用できないため、電圧を一時的に大きくして、トルクをブーストする。これがトルクブーストである。これにより、モータ22が始動直後に、吊荷を保持する保持用トルク以上のトルクが発生することになる。
【0051】
ここで、巻上げ下げするコンテナを、荷重W1を有するコンテナC1とする。荷重W1は定格荷重よりも軽い荷重とする。このコンテナC1を保持するために必要なトルクを保持用トルクTwとし、コンテナC1を巻上げ下げする実際の速度を速度V1とし、巻上げ下げの最大速度を最大速度Vmaxとする。また、実際の速度V1のときの実際の回転数をR1とする。加えて、コンテナC1を巻上げ下げする実際のトルクをトルクT1とする。
【0052】
本発明の第1の実施の形態のクレーン10のモータ22は、定トルク領域A2内に、第1保持用トルク領域31aと第1トルク領域32aとを備え、定出力領域A3内に、第2保持用トルク領域31bと第2トルク領域32bとを備える。
【0053】
第1保持用トルク領域31aと第2保持用トルク領域31bは、各領域A2及びA3内の保持用トルクTwを示した領域である。第1トルク領域32aは、定トルク領域A2で示される最大トルクである第1最大トルクTmと、保持用トルクTwとの差分の第1トルクを示す領域である。第2トルク領域32bは、定出力領域A3で示される最大トルクである第2最大トルクTvと、保持用トルクTwとの差分の第2トルクを示す領域である。
【0054】
従って、モータ22がコンテナC1を巻上げ下げする際に使用されるトルク領域は、定トルク領域A2内では、第1保持用トルク領域31aと第1トルク領域32aであり、定出力領域A3内では、第2保持用トルク領域31bと第2トルク領域32bである。
【0055】
定トルク領域A2の最大のトルクである第1最大トルクTmを、好ましくは定格トルクT0以上、より好ましくは定格トルクT0の180%〜200%に設定する。
【0056】
上記のクレーン10の巻上げ下げ開始から基準速度V0に達するまでの動作を説明する。コンテナC1を巻上げ下げする場合、スプレッダ14を巻下げ、着床を確認する。この着床の確認はスプレッダ14がコンテナC1に置かれたことをリミットスイッチ(図示しない)で行う。次に、巻下げ動作を停止して、ブレーキ24を閉じる。ブレーキ24が閉じ、ドラム25の回転が停止されると、スプレッダ14がツイストロック(図示しない)によりコンテナC1を固定する。
【0057】
そしてインバータ21からモータ22へ電力を供給する。そして、モータ22の始動トルクの発生が確立できると、ブレーキ24を開き、ドラム25を回転させる。これにより、コンテナC1の巻上げ下げを開始する。
【0058】
巻上げ下げ開始から定格速度V0に到達するまでは、インバータ21がモータ22をV/f制御して、コンテナC1の荷重に係わらず(ここではコンテナC1の荷重W1)、第1最大トルクTmでコンテナC1を巻上げ下げする。つまり、コンテナC1を巻上げ下げする実際のトルクT1が第1最大トルクTmとなる。このときの加速度は、第1トルク領域32aで定められる第1トルクから求めることができる。コンテナC1を保持する保持
用トルクTwは第1保持用トルク領域31aで確保されるため、コンテナC1の巻上げ下げの途中で、コンテナC1が落下するなどの危険がない。
【0059】
上記の動作によれば、定トルク領域A2内では、第1最大トルクTmでコンテナC1を巻上げ下げすることができ、従来のクレーンに比べて基準速度V0に到達するまでの時間を短縮することができるため、荷役時間を短縮することができる。そのため、その短縮した分で消費される電力を削減することができるため、省エネルギー化することができる。
【0060】
また、吊荷の荷重に係わらずに第1最大トルクTmで巻上げ下げするため、複雑な計測や計算を必要とすることがない。
【0061】
次に図3に示すように、本発明の第1の実施の形態のクレーン10の制御方法S1を説明する。また、この制御方法は、吊荷を巻上げ下げ、加速運転及び減速運転共に共通した制御方法である。よって、ここではコンテナC1を巻上げる際の制御方法S1として説明する。
【0062】
荷役が開始されると、スプレッダ14を巻き下げるステップS2を行う。次にスプレッダ14がコンテナC1に着床したか否かを判断するステップS3を行う。ステップS3では、スプレッダ14に設けたリミットスイッチ(図示しない)で着床を確認している。ステップS3で着床が確認されると、次に、スプレッダ14の巻下げを停止するステップS4を行う。そして、ブレーキ24を閉じて、ドラム23の回転を停止するステップS5を行う。ドラムの回転が停止するとスプレッダ14にコンテナC1を吊すステップS6を行う。このときスプレッダ14のツイストロック(図示しない)でコンテナC1を固定する。
【0063】
次に、インバータ21からモータ22に電力の供給を開始するステップS7を行う。このときインバータ21は、電圧と周波数の比が一定のV/f制御を行うが、電圧と周波数が小さいと始動トルクが定格トルクT0よりも小さくなってしまうため、電圧のみを大きくするトルクブーストを行う。これにより、モータ22の始動からコンテナC1を保持するトルクを得ることができる。
【0064】
次に、モータ22の始動トルクの発生が確立したか否かを判断するステップS8行う。始動トルクが発生していない場合は、再度ステップS7へと戻る。始動トルクの発生が確立されると、ブレーキ24を開いて、ドラムの回転を開始するステップS9を行う。
【0065】
次に、モータ22は吊荷の荷重(ここではコンテナC1の荷重W1)に係わらず、定トルク領域A2で示される最大のトルクである第1最大トルクTmで巻上げするステップS10を行う。このステップS10ではコンテナC1の荷重W1などを計測する必要がなく、また、第1最大トルクTmが保持用トルクTwよりも大きいため、保持用トルクTwを算出する必要がない。荷役開始と同時に、モータ22のトルクを第1最大トルクTmに設定し、コンテナC1を巻上げていく。
【0066】
ここで、ステップS10でコンテナC1を巻上げ下げする第1加速度は、第1最大トルクTmと保持用トルクTwの差分の第1トルクにより求めることができる。この第1加速度は略一定の値となる。このステップS10でも、インバータ21はV/f制御を行い、モータ22を第1最大トルクTmで動作するように制御している。
【0067】
次に、コンテナC1の荷重W1を算出した否かを判断するステップS11を行う。これまでコンテナC1の荷重W1が算出されていないので、次のコンテナC1の荷重W1を取得するステップS12を行う。ステップS12はモータ22に流れる電流をインバータ2
1で計測し、ドラム23の回転を計測する速度センサ25で速度V1を計測し、それら電流と速度V1から荷重W1を算出するステップである。
【0068】
コンテナC1の荷重W1を取得すると、次は、コンテナC1の巻上げの最大速度Vmaxを算出するステップS13を行う。モータ22の出力特性は予め制御装置20に記憶されており、取得した荷重W1とその出力特性(図2参照)を用いて、最大速度Vmaxを算出する。このステップS12の荷重の取得方法は上記の方法に限定せず、例えば、クレーン1で荷役する前に取得したデータを用いる方法でもよい。また、ステップS13の最大速度を算出する方法も上記の方法に限定しない。
【0069】
次に、コンテナC1の巻上げ速度V1が基準速度V0に達したか否かを判断するステップS14を行う。基準速度V0に達していない場合は再度ステップS10へと戻る。速度V1が基準速度V0に達した場合は、定出力領域A3の速度V1に反比例する最大トルクである第2最大トルクTvを算出するステップS15を行う。このステップS15からは、インバータ21はベクトル制御を行う。ベクトル制御とは、モータ22に流れる電流と電圧の位相角から、トルクと回転数を推定し、それに基づいて電圧と周波数を変化させ、目的のトルクと回転数を得る制御方法である。これはモータ22などの電動機が回転数を上げるほど内部抵抗が増え、電流を励磁電流と負荷電流に分解して制御しなければならないからである。このベクトル制御は速度センサを用いる制御方法であるが、速度センサを用いずに制御するセンサレスベクトル制御でもよい。また、ベクトル制御に換えて、すべり周波数制御を用いることもできる。
【0070】
このステップS15の第2最大トルクTvを算出する方法は、その時点の速度V1から、モータ22の出力特性から算出する方法や、前述のインバータ21のベクトル制御から推定する方法などを用いることができる。第2最大トルクTvは、速度V1に反比例するため、ステップS15は速度V1が変化する度に算出される第2最大トルクTvの値が異なる。このステップS15から後述するステップS17までが一定単位時間毎に行われ、その都度、第2最大トルクTvを算出する。
【0071】
第2最大トルクTvが算出されると、次に第2最大トルクTvでコンテナC1を巻上げするステップS16を行う。ステップS15で算出した可変トルクTvと、ステップS12で取得した荷重W1から算出した保持用トルクTwの差分の第2トルクを算出する。その算出した第2トルクによりコンテナC1を可変の第2加速度で巻上げ下げする。
【0072】
ここで、定出力領域A2で加速する場合は保持用トルクTwと、加速する第2トルク(第2最大トルクTvと保持用トルクTwの差分トルク)の和がモータ22の最大出力(第2最大トルクTv)を超えなければよいため下記の数式2〜5で表すことができ、第2加速度をアクティブに制御することができる。現在の巻上げ速度をV1(m/s)、荷重をW1(ton)、慣性モーメントをΣGD2、定格速度をV0(m/s)、定格モータ回転数をN0(rpm)、機械効率をη、回転数と速度との比をαとする。また、定出力領域A2の一定の出力をPmaxとする。数式2を巻上げ加速度、数式3を巻上げ減速度、数式4を巻下げ加速度、数式5を巻下げ減速度とする。
【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【0073】
次に一定期間、例えば10ms〜100ms間後に、速度V1が最大速度Vmaxに到達しているか否かを判別するステップS17を行う。ステップS17で速度V1が最大速度Vmax未満であれば、ステップS15へ戻り、再度そのときの速度V1から第2最大トルクTvを算出し、ステップS16を行う。この繰返しは速度V1が最大速度Vmaxに到達するまで行う。
【0074】
速度V1が最大速度Vmaxに到達すると、次に最大速度Vmaxで巻上げるステップS18を行う。次に、コンテナC1を巻上げる目標の高さ(コンテナC1の実際の巻上げ高さから、巻上げ減速動作で巻上げる高さを差し引いた高さ)に達したか否かを判断するステップS19を行う。ステップS19で目標の高さに達したと判断されると、次に巻上げを停止するステップS20を行い。次にブレーキ24を閉じてドラム25の回転を停止するステップS21を行い制御は完了する。
【0075】
上記のクレーン10の制御方法S1によれば、コンテナC1を巻上げ下げするときに、
モータ22の定トルク領域A2で定められる最大トルクである第1最大トルクTmと保持用トルクTwの差分の第1トルクで基準速度V0まで一定の第1加速度で巻上げ下げし、定出力領域A3で定められる最大トルクである第2最大トルクTvと保持用トルクTwの差分の第2トルクで基準速度V0から最大速度Vmaxまで可変の第2加速度で巻上げ下げすることができるため、荷役時間を短縮することができる。よって、クレーン10が消費する電力を荷役時間が短縮した分だけ削減することができる。
【0076】
特に巻上げ下げの開始から基準速度V0までは、コンテナC1の荷重W1に係わらずに第1最大トルクTmで巻上げ下げを行うため、複雑な制御を行わずに、基準速度V0に達する時間を短縮すると共に、その時間の間に巻上げ下げする距離も長くすることができる。
【0077】
また、モータ22の始動トルクの発生が確立されるまで、つまり、モータ22が始動するまでや、モータ22の巻上げ下げ動作の切り替わるときには、ブレーキ24によって、ドラム25の回転を停止することにより、コンテナC1を保持することができる。モータ22が始動するとトルクブーストによりコンテナC1の保持に必要なトルクを発生させることができる。
【0078】
次に本発明の第2の実施の形態のクレーン20について図4を参照しながら説明する。クレーン20は、図1で示した本発明の第1の実施の形態のクレーン10のスプレッダ14に、ロードセル28を備える。その他の構成は同様である。このロードセル28は荷重や力を電気信号に変換するセンサであり、好ましくは、引張型のS字型ロードセルなどを用いる。ロードセル28は前述の制御方法S1において使用することもでき、制御方法S1のステップS12で、コンテナC1の荷重W1を取得することができる。
【0079】
上記の構成によれば、コンテナC1の荷重W1を取得するためにロードセル28を用いることで、より速く精密に測定することができる。また、ロードセル28は他のセンサに比べてコストが安く寿命が長いため、クレーン10の製造コストを下げることができる。
【0080】
次に、前述した図4の制御方法S1とは異なる、クレーン20の制御方法S30を、図5を参照しながら説明する。ステップS31からステップS35までは、前述した制御方法S1と同じ制御である。次に、コンテナC1の荷重W1を取得するステップS36を行う。ステップS36はロードセル28で荷重W1を算出するステップである。コンテナC1の荷重W1をロードセル28で取得すると、次は、コンテナC1の巻上げの最大速度Vmaxを算出するステップS37を行う。この最大速度Vmaxの算出方法は前述の制御方法S1と同様である。
【0081】
以降、ステップS38〜ステップS50までは前述した制御方法S1と同様である。
【0082】
上記のクレーン20の制御方法S30によれば、コンテナC1を巻上げる前にコンテナC1の荷重W1を計測することができる。そのため、モータ22が始動してからは、モータ22の制御のみを行えばよいため、制御を単純化することができる。
【0083】
図6は、本発明の実施の形態のクレーン10の制御方法S1で吊荷を巻上げたときの速度と時間を示した図である。この図6には従来のクレーン10Xで巻上げたときの速度と時間も比較対象として示してある。荷重W1、最大速度V1max、基準速度V0は各クレーンで共通である。実施の形態のクレーン10の基準速度V0に達する時間とt1とし、最大速度V1maxに達する時間をt3とし、巻上げ完了した時間をt5とする。従来のクレーン10Xの基準速度V0に達する時間をt2とし、最大速度V1maxに達する時間をt4とし、巻上げ完了した時間をt6とする。
【0084】
実施の形態のクレーン10と従来のクレーン10Xの最大速度V1maxは同一であるが、実施の形態のクレーン10の方が最大速度V1maxに達する時間t3が速いため、その分だけ完了する時間t5も早くなっていることがわかる。特にクレーン10は従来のクレーン10Xに比べて基準速度V0に到達する時間t1が早い。加えて、加速度も大きいため、基準速度V0に到達した時点での移動距離も長くなる。これは、巻上げ開始から直ぐに第1最大トルクTmでコンテナC1を巻上げることができるためである。よって従来のクレーン10Xに比べて、より実施の形態のクレーン10は荷役時間を短縮することができる。
【0085】
加えて、クレーン10の巻上げの加速度が巻上げ開始から基準速度V0まで(0〜t1の区間)は一定の第1加速度を使い、基準速度V0から最大速度V1maxまで(t1〜t3の区間)は可変の第2加速度を使う。この第2加速度の最大値は、第1加速度よりも必ず小さくなる。一方、従来のクレーン10Xの定格速度V0から最大速度V1maxまで(t2〜t4の区間)は、それまでの加速度よりも一時的に大きくなるため、吊荷に衝撃がかかり、安定した巻上げを実現することができない。
【0086】
吊荷を安全に巻上げ下げするためには、加速度の変化をできるだけ緩やかに制御することが好ましく、本発明のクレーン10及びクレーン20は巻上げ開始から一定に第1加速度で加速して、基準速度V0からは、第1加速度から徐々に小さくなる第2加速度で行うため、加速度の変化を緩やかにすることができる。そのため、吊荷の巻上げ下げを安全に行うことができる。
【0087】
上記の制御方法S1及びS2は、クレーン10及び20の巻上げ下げ動作に限らず、トロリ12の横行動作にも用いることができる。また、クレーン10及び20に限らず、動作させる対象物の荷重によって出力を変動する電動機であれば利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の港湾荷役機器は、消費電力する電力量を変えずに、荷役時間を短縮することができ、その短縮した分の荷役機器が消費するエネルギーを削減することができる。そのため、消費エネルギーの少ない港湾荷役機器として、岸壁クレーン、門型のヤードクレーン、ゴライアスクレーン、ジブクレーン、タワークレーン、アンローダークレーン、天井クレーン、及びストラドルキャリアなどの港湾荷役機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 クレーン
11 桁部
12 トロリ
13 運転室
14 吊り具
15 ワイヤー
16 機械室
17 搬送台車
20 制御装置
21 インバータ
22 モータ(電動機)
23 減速装置
24 ブレーキ(停止機構)
25 ドラム
26 速度センサ
27 運転装置
28 ロードセル
G 岸壁
S 船舶
C コンテナ(吊荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷を巻上げ下げする電動機を備えた港湾荷役機器の制御方法において、前記電動機が、前記吊荷の荷重に係わらず、吊荷の巻上げ下げの開始から少なくとも予め定めた基準速度までは、前記電動機が出力できる最大のトルクを出力することを特徴とする港湾荷役機器の制御方法。
【請求項2】
前記電動機が、前記吊荷の荷重に係わらず、前記吊荷の巻き上げ下げの開始から前記基準速度までは、出力トルクが一定で動作する定トルク領域の第1最大トルクを出力し、前記基準速度から前記吊荷の荷重から算出される最大速度までは、速度に反比例して出力トルクが低下する定出力領域の第2最大トルクを出力することを特徴とする請求項1に記載の港湾荷役機器の制御方法。
【請求項3】
少なくとも前記電動機の始動トルクの発生が確立するまで、前記電動機によってワイヤーの巻取りと送出しで前記吊荷を巻上げ下げするドラムの回転を停止機構によって停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の港湾荷役機器の制御方法。
【請求項4】
前記吊荷を、前記吊荷の巻上げ下げ開始から前記基準速度までは、前記第1最大トルクによる一定の第1加速度で巻上げ下げし、
前記基準速度から前記最大速度までは、前記第2最大トルクと前記吊荷の荷重から算出される保持用トルクとの差分である第2トルクを、予め定めた一定時間毎に算出し、算出した前記第2トルクによる前記一定時間毎に可変する第2加速度で巻上げ下げすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の港湾荷役機器の制御方法。
【請求項5】
前記基準速度に達するまでの間に、前記荷重の値を取得し、前記荷重から前記最大速度を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の港湾荷役機器の制御方法。
【請求項6】
吊荷を巻上げ下げする電動機を備えた港湾荷役機器において、前記電動機を、前記吊荷の荷重に係わらず、吊荷の巻上げ下げの開始から少なくとも予め定めた基準速度までは、前記電動機が出力できる最大のトルクを出力可能に制御する制御装置を備えることを特徴とする港湾荷役機器。
【請求項7】
前記制御装置が、前記電動機に、前記吊荷の荷重に係わらず、前記吊荷の巻き上げ下げの開始から前記基準速度までは、出力トルクが一定で動作する定トルク領域の第1最大トルクを出力させる手段と、前記基準速度から前記吊荷の荷重から算出される最大速度までは、速度に反比例して出力トルクが低下する定出力領域の第2最大トルクを出力させる手段とを備えることを特徴とする請求項6に記載の港湾荷役機器の制御方法。
【請求項8】
前記電動機によってワイヤーの巻取りと送出しで前記吊荷を巻上げ下げするドラムの回転を停止する停止機構を備え、前記制御装置が、少なくとも前記電動機の始動トルクの発生が確立するまで、前記ドラムの回転を停止するように前記停止機構を制御する手段を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の港湾荷役機器。
【請求項9】
前記制御装置が、前記第1最大トルクの値を算出する手段と、前記第2最大トルクの値を算出する手段と、前記第2最大トルクと前記吊荷の荷重から算出される保持用トルクとの差分の第2トルクの値を予め定めた一定時間毎に算出する手段とを備えると共に、
前記吊荷の巻上げ下げの開始から前記基準速度までは、前記第1最大トルクによる第1加速度で前記吊荷を巻上げ下げする手段と、前記基準速度から前記最大速度までは、前記第2トルクによる前記一定時間毎に変化する第2加速度で前記吊荷を巻上げ下げする手段
を備えることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の港湾荷役機器。
【請求項10】
前記基準速度に達するまでの間に、前記吊荷の荷重の値を取得する手段と、前記荷重から前記最大速度を算出する手段とを備えることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の港湾荷役機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18641(P2013−18641A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155617(P2011−155617)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】