説明

荷重検出装置

【課題】バネから直接に荷重や変位情報を簡単に取り出す検出方法とその装置を提供する。
【解決手段】バネ1が引張,圧縮の変形をする時にそれ自体の微小な抵抗変化を電圧変化,あるいは抵抗変化そのものを検出する。電圧変化として測定する場合,平衡回路として4個の抵抗を組んで成るホイートストンブリッジ回路のアクティブ抵抗3に並列,あるいは直列にバネに取り付けたリード線2を介してバネを抵抗体として導入して検出する。バネ以外の板や棒材の変形についても同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種部材の変形,稼動体の変位,外部負荷荷重をセンシングおよびモニタリングとして出力する検出方法に係わり,特にバネを用いた自動車,運搬車両,組み立て機械,ロボット,衝撃緩和装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,マイクロメータやロードセルなどの荷重検出は弾性体にひずみゲージを接着し,この弾性体の変形で生じたひずみを検出して変形,変位,荷重を検出していた。バネは自動車組み立て、ロボットの触手など種々な機材において、変位や衝撃の吸収,あるいは負荷部材として多用されているが,バネから直接に変位やバネに働く荷重を検出することはできなかった。バネからは直接に変位や荷重は検出できないので、電気容量が変化する部材をバネに付随させて、容量変化からバネの変位を計測していた。
【0003】
図8は従来のバネを設置した箇所において荷重を検出する場合の模式図である。この図8において,変動する負荷荷重はバネに接触する部材にひずみゲージを接着し,この荷重変動時にひずみゲージに生じる抵抗変化を電力変化として測定し,荷重に変換している。
ひずみゲージに代わる方法としては、バネに接触させて容量型センサを組み込み,バネの変位によって変わる容量から変位を検出している。このようにバネから直接に荷重や変位を取り出す方法はなく,他の検出手段を併用しているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように,バネから直接に荷重や変位を取り出す方法はなかった。この状況に鑑み、本発明はバネから直接に荷重や変位情報を簡単に取り出す検出方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために,バネにリード線を付け,バネが引張,圧縮の変形をする時にそれ自体の微小な抵抗変化を電圧変化,あるいは抵抗変化そのものを検出する。また電圧変化として測定する場合には,平衡回路として4個の抵抗を組んで成るホイートストンブリッジ回路のアクティブ抵抗に並列,あるいは直列にリード線を介してバネを抵抗体として導入して検出する。
上記の検出箇所を多数設ける場合には,バネを多数配列し,一方のリード線は共通電極(コモン電極)とする。
上記の検出方法において,小さなバネ定数のバネを多数配置して多点測定を同時に行えるようにして圧力分布,足圧分布,手圧を測定できるようにとしたことを特徴とする。
上記の検出方法において,バネを柔軟な弾性体に埋め込み,弾性体の動的変形挙動に対応してバネが変形し,バネの変形に応じて抵抗変化を検出できるようにしたことを特徴とする。中心に骨があり、周囲が肉で覆われた手のように中心に硬い剛性のある心材を設け、その周囲に取り付けた弾性体中にバネを埋め込んで掌握、開放時に変形を検出できるできるようにしたロボット触手であることを特徴とする。
上記の検出方法において,複数のバネを平行,直交,放射状に並べて結線して2軸,3軸の負荷荷重および変位の検出ができるようにしたことを特徴とする。
上記の検出方法において,凹凸面を接触しながら移動する機能で凹凸にしたがってバネを伸縮させて,抵抗変化が検出できるようにしたことを特徴とする。
また,リード線位置あるいは近傍に熱電対線を先端を所定の間隔をもって接合して,起電力も測定できるようにし,温度検出の同時測定を可能にしたことを特徴とする。
熱電対線の結線により,衝撃波によって発生する熱起電力を同時に検出できるようにしたことを特徴とする。
以上は,バネについて述べたが,板や棒材の変形についても同じである。
【発明の効果】
【0006】
以上,詳細に説明したように,本発明により以下の効果がある。
(1) 負荷荷重や衝撃の緩衝や吸収機構、負荷発生や加圧機構として使用されているバネや板材にかかる荷重や変位をバネや板材から直接に、且つ高精度に,しかも簡便に検出することができる。
また,この検出を長時間,長期間にわたって行い,記録,モニタリングすることができる
(2) 本発明の手法を複数配置することにより,圧力や荷重分布の計測ができる。
応用例として直立時,および歩行時(動的)の足圧力分布計測,自動車着席や荷重検出である。
(3) 本発明の手法を稼動ヘッドに組み込む構成により、物体表面の凹凸評価手法、道路面やトンネル内壁の凸凹評価手法として使用できる。
(4) 本発明の手法を柔軟体の中に組み込むことにより外部から柔軟体に加えられた荷重や,柔軟体が変形したときの変形量を捉えることができる。この応用例の一つは,握力検査器やロボット触手である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下,本発明の実施形態を図を参照しながら説明する。
【0007】
図1は本発明の第1実施例を示すバネ変位と負荷を検出する模式図である。
リング状のバネ1は軸に挿入されたスライダー9に押し付けられており,スライダー9は変動負荷によって上下動10する。この上下動10によってバネ1は伸縮し,負荷を受ける。バネの2ヶ所に接合した金属リード線2を抵抗3と直列につなぐ。抵抗3,4を含む4個の抵抗は同じ120Ωであり,互いに向かい合わせた配置としたホイーストンブリッジ回路を形成している。無負荷の時点の出力を零にするためにバネと抵抗3を合わせた抵抗値を他の抵抗値と一致させて,4つの抵抗値を同一にする。バネ4個でホイートストンブリッジ回路を形成し,その内のバネひとつを負荷検出用として使用する場合もある。ホイートストンブリッジ回路には直流電源6の印加箇所と対面する箇所から出力リード線7を引き出し,電圧計8につないでいる。
【0008】
図1おいて,バネは炭素,ニッケル,クロム成分を含む鉄材料で製作されたステンレス鋼からなるバネ材と抵抗3は並列にし,ホイートストンブリッジ回路を形成している。バネ以外の部材を捩じり,曲げ変形にして用いる場合にも同様に抵抗と組み合わせる。また,バネ4個を以って,ホイートストンブリッジを形成する4個の抵抗体とする回路にする場合もある。この構成において,長時間,長期間連続して記録してモニタリング手法として用いる。
【0009】
図2においてベース18の上に載せた部材20に複数孔を穿け,この孔にバネ14を挿入して,リード線15をバネ下部端からベース18を通過させて取り出している。バネ14の上端には柔軟な導体16接続させ,導体16に載せた柔軟体19に負荷されると負荷17の大小に対応して,バネはそれぞれに縮むという構成を成す。それぞれのバネに通ずるリード線15と電導体16とを図1に示すホイートストンブリッジ回路に接続して,それぞれのバネの縮む大きさに伴う抵抗変化から電圧変化を測定して,負荷17の大きさを知ることによって動的,静的な負荷分布を把握する。また,電導体16はバネに接続する電極を共通としたが,個々のバネからリード線を繋ぎ,ホイーストンブリッジ回路に繋ぐ場合もある。
【0010】
図2の構成を用いて足圧分布を測定する場合を図3に示した。バネ23を碁盤目状に配置しておき,その上に載せた柔軟体を足22で踏むと足22の凸凹、圧力に対応してバネが縮み、圧力分布が測定できる。
【0011】
図4は円形バネ27内に心棒31が設置されており,心棒31の先端にはヘッド25が取り付けられている状態を示す。円板部材30の孔内を心棒31はスライドする。ヘッド25を凸凹面26に接触させながら円板部材30を水平に移動32させると,凸凹面26に応じてヘッド25が上下してバネが伸縮する。このバネ27に間隔をもって接続されたリード線28およびリード線29はホイーストンブリッジ回路に繋がれている。
この構造を用いた実施例として、地面や道路など大きな凹凸の計測には,大型バネとヘッドを使用する。人の人間の皮膚や筋肉などのへこみ具合や軟らかさを測定する場合にはmmやcm寸法のヘッドとバネ定数の小さい小型バネを使用する。
また,上述の構造でボールペンやシャープペンシルペンなどの押し付け圧を測定する場合には1〜2mmほどの直径をもつ小型バネを組み込み用いる。
【0012】
図5はバネ35を柔軟体シリコン36,あるいはゴム等に埋め込んだもので柔軟体シリコン36を押圧37したとき,シリコンの縮みに付随してバネ35が縮むようにしたものである。バネ35の両端からリード線を介してホイートストンブリッジ回路に繋ぎ,バネ35伸縮時の抵抗変化を電圧変化として検出する。これをロボットの触手として用いる場合には掴む時の衝撃を和らげ,同時に掴む力を検出する。この掌握力情報をフィードバックして掌握力を制御することも可能である。バネ35を圧縮したときの,変位(変形量)と電圧変化を記録したデータを図6に示す。変位に比例して電圧出力が変化して計測される。
【0013】
複数のバネを組み合わせて柔軟体に埋め込み、その柔軟体に負荷を加えたり,変形させたときに,その変形量を計測するための構造は本特許の応用である。柔軟体の形状は立方体や球である。柔軟体が球の場合を図7に示す。バネ41と同じ寸法のバネを4個中央で結合し,放射状に柔軟体40の中に埋め込む。バネの端部からリード線44,45を取り出す。 中央からもリード線43を引き出す。バネ41とバネ42の端部を結んだ箇所からリード線46を取り出す場合もある。これらバネから引き出されたリード線を組み合わせホイートストンブリッジ回路に繋ぎ,バネ伸縮時の抵抗変化を電圧変化として検出する。なお,バネの球面近傍端部を全て接合して中央のリード線43とで抵抗部を成してホイートストンブリッジ回路に繋ぐ場合もある。この柔軟体は手のひらに入る大きさに形成すると共に,握力で変形し易い柔らかさをもつ柔軟体で構成して,握力検査あるいは手のリハビリ器具としても使用できる。
【0014】
図9はロボット触手にバネを組み込んだ実施例である。シリコンやゴムなどの柔軟体51で製作した模擬指の中に筒状で剛性のある骨体管50が設置されている.骨体管50にバネ52と53は直列に連結され、並べて取り付けられている。同様の連結バネ54も近接している。指先には、バネ55単体で取り付けられている。これらのバネ端部に接続されたリード線は骨体管50のなかを通して引き出されて、ホイートストンブリッジ回路に接続される。指を内側58に向けて動作させて物体57を掴むと、各々のバネが縮み、この縮みに応じて抵抗が変化し、電圧変化として計測される。計測された電圧変化から触圧が捉えられる。
【0015】
図10はバネ61の変形にともなう抵抗変化を高精度に電圧変化として取り出すホイートストンブリッジ回路を示す。同じバネ61,63,64,65の4個と電源66からなる回路にリード線67,電圧計68を接続している。図1に示す構成よりも、この構成では4個同じバネを用いるのでバネ抵抗値が等しくブリッジ平衡が精度良くとれる。そのため、このバネ変位、荷重検出方法ではより高精度の検出ができる。
【0016】
なお,本発明は上記実施例に限定されるものではなく,本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり,それらを本発明の範囲から除去するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は変位を電気信号として検出でき、これによって負荷も算定できることから変位、ひずみ、負荷(引張、圧縮、曲げ)、圧力(空気圧、風圧、水圧、土力)、振動、伸縮、等の検出ができる。また、これらに関係する各種生産機械、施工建設機械、自動車、飛行機、運搬機械、ロボット、バイオセンサ等への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施例を示すバネが変形したときの情報を取り出す構成の模式図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す配線リードを共通にした構造の図である。
【図3】本発明の第2実施例の応用として足圧測定を示す模式図である。
【図4】本発明の第3実施例を示す検出方法の図である。
【図5】本発明の第4実施例を示す模式図である。
【図6】本発明の出力特性を示す図である。
【図7】本発明の第5実施例を模式図である。
【図8】バネの変位を知る従来方法を示す図である。
【図9】本発明の第6実施例を模式図である。
【図10】本発明の第7実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 バネ
2 リード線
3,4 抵抗
5 配線
6 電源
7 電圧測定用配線
8 電圧計
9 スライダー
10 移動
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
15 リード線
16 電導体
17 負荷
18 ベース
19 柔軟体
20 部材
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
22 足
23 バネ
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
24 上下動
25 ヘッド
26 凹凸面
27 バネ
28,29 リード線
30 円板部材
31 心棒
32 移動
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
35 バネ
36 シリコン
37 押圧
40 柔軟体
41,42 バネ
43,44,45,46 リード線
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
50 骨体管
51 柔軟体
52、53、54、55 ばね
56 リード線
57 物体
58 掴み
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
61 バネ
62 リード線
63,64,65 バネ
66 電源
67 リード線
68 電圧計
69 スライダー
70 移動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本のバネ両端部、あるいは任意箇所に2本のリード線を付け,バネが変形するときの電気抵抗変化,あるいは抵抗変化を電圧として計測して,バネに負荷された荷重、あるいは変位を捉える検出方法とその方法を用いた検出装置
【請求項2】
稼動体,振動体に請求項1記載の検出装置を単数,あるいは複数取り付けて荷重、変位を検出し,その検出結果を表示させるモニタリング装置,あるいはパソコン画面上に表示,記録させる装置
【請求項3】
上記請求項(1),(2)の測定において,4個の抵抗を組んで成るホイートストンブリッジ回路のアクティブ抵抗に並列,あるいは直列にリード線を介してバネに繋いで成る回路とし、電圧測定をすることを特徴とした検出装置
【請求項4】
請求項3のホイートストンブリッジ回路において、個々の抵抗値が120Ω、350Ω、あるいは電気抵抗ひずみゲージと組み合わせたことを特徴とする検出装置
【請求項5】
上記請求項(3),(4)の検出部を平面的に多数分散設置して変位、荷重の分布を測定する検出装置,さらに,この装置において,片側のリード線端部を共通にしたことを特徴とする検出装置
【請求項6】
上記請求項(1)において,バネ材を1個、2個あるいは複数個を柔軟な樹脂、綿布、土壌などの弾性体内部組み込んだ検出装置,また,複数のバネを個々独立分離させた方式,1箇所から放射状に配列させた方式,格子状に配列させた方式,などからなる検出装置
【請求項7】
上記請求項(1)において,リード線の位置,あるいはその近傍に熱電対線を先端を所定の間隔をもって接合して,熱起電力も測定できるようにしたことを特徴とした検出装置
【請求項8】
上記請求項(1)、(7)において熱電対線をリード線として共有し、切り替えによって起電力と抵抗変化を検出できるようにしたことを特徴とした検出装置
【請求項9】
上記請求項(1),請求項(7)において,検出部を擬似触手や擬似足に付けて接触圧力検出するロボット
【請求項10】
上記請求項(3)の電圧測定において,4個のバネを抵抗体として組んで成るホイートストンブリッジ回路としたことを特徴とする検出装置

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−3070(P2008−3070A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198738(P2006−198738)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(306024148)公立大学法人秋田県立大学 (74)
【Fターム(参考)】