説明

荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビームのアライメント方法

【目的】荷電粒子ビームの光軸が偏向器内の中心付近をできるだけ垂直に進むように調整する装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様の描画装置100は、電子ビーム200を放出する電子銃201と、試料101を載置するXYステージ105と、電子ビームを偏向して、試料上の所望の位置へと荷電粒子ビームを照射する偏向器208と、偏向器208に流れる電流値を測定する電流測定部122と、電流値を用いて、偏向器208内を通過する電子ビームの光軸をアライメントする第1と第2のアライメントコイル212,214と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビームのアライメント方法に係り、例えば、電子ビームを用いて試料に所定のパターンを描画する描画装置における電子ビームのアライメントを行なう手法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
図6は、可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
可変成形型電子線(EB:Electron beam)描画装置は以下のように動作する。第1のアパーチャ410には、電子ビーム330を成形するための矩形例えば長方形の開口411が形成されている。また、第2のアパーチャ420には、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子ビーム330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子ビーム330は、偏向器により偏向され、第2のアパーチャ420の可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するステージ上に搭載された試料に照射される。すなわち、第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、X方向に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340の描画領域に描画される(例えば、特許文献1参照)。第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式(VSB方式)という。
【0004】
ここで、描画を行なうにあたっては、まず、ビームの光軸調整(アライメント)が必要となる。従来、試料上に電子ビームを照射するための対物偏向器の前後に制限アパーチャと検出器を配置して、前後の制限アパーチャの中心を電子ビームが通過するようにアライメントコイルで光軸を調整していた。
【0005】
図7は、電子ビームの光軸調整の一部分を示す概念図である。図7において、電子銃から放出された電子ビーム330は、アライメントコイル412でまず、対物偏向器408の前方であって、アライメントコイル412の後方に配置される制限アパーチャとなる第2のアパーチャ420の中心を光軸が通過するように調整される。調整は、制限アパーチャとなる第2のアパーチャ420で反射された2次電子等を第2のアパーチャ420上の検出器422で検出し、検出で得られた像を確認しながら第2のアパーチャ420の中心を通過するように行なっていた。
【0006】
図8は、電子ビームの光軸調整の他の一部分を示す概念図である。図8において、第2のアパーチャ420の中心を通過した電子ビーム330は、対物偏向器408内へと進む。しかし、そのままでは、光軸調整が完了していないので、対物偏向器408内を通過する電子ビーム330の光軸をアライメントコイル414で調整する。調整は、対物偏向器408の後方に配置された制限アパーチャ409を通過して、試料340面で反射された2次電子等を制限アパーチャ409下の検出器424で検出し、検出で得られた像を確認しながら制限アパーチャ409の中心を光軸が通過するように行なっていた。
【0007】
図9は、電子ビームの光軸調整が終了した状況を示す概念図である。図9に示すように、アライメント後のビームの光軸は、対物偏向器408の前後に配置される第2のアパーチャ420、制限アパーチャ409の中心を通過する。このような状態に調整された後に、試料に所望するパターンを描画することになる。
【0008】
ここで、昨今のパターンの微細化、高精度に伴って、偏向器による偏向精度がさらに高い精度を求められている。かかる問題に対応すべく、電子ビームが通過する偏向器の内径を狭くすることでアンプから出力される印加電圧を小さくし、出力される印加電圧の解像度を向上させることが試みられている。しかし、ビームは偏向器中である広がりを持っているため、描画の際に偏向器でビームを偏向した場合、偏向器の内径を狭くすると、電子ビームが偏向器内を通過する際に、偏向器に接触してしまう場合が生じる。これを回避するためには、できるだけ電子ビームの光軸が偏向器内の中心付近を垂直に進むことが望ましい。
【0009】
しかしながら、従来の電子ビームの光軸調整方法では、単に、対物偏向器408の前後に配置される検出器422,424で検出された像を用いて対物偏向器408の前後に配置される第2のアパーチャ420と制限アパーチャ409の中心を通過するようにアライメントされていただけであるので、対物偏向器408内を電子ビームがどのように進んでいるのか検出できない。また、寸法制約上、対物偏向器408内に検出器を設置することも困難である。そのため、電子ビームの光軸が偏向器内の中心付近をできるだけ垂直に進むように調整することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−019061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の電子ビームの光軸調整方法では、電子ビームの光軸が偏向器内の中心付近をできるだけ垂直に進むように調整することは困難であった。そのため、偏向位置の高精度化に対応すべく、電子ビームが通過する偏向器の内径を狭くすることが難しい。かかる問題は、電子ビームに限らず、イオンビーム等を含む荷電粒子ビームを使った装置全般に共通する問題である。
【0012】
そこで、本発明は、かかる問題点を克服し、荷電粒子ビームの光軸が偏向器内の中心付近をできるだけ垂直に進むように調整する装置および荷電粒子ビームのアライメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
試料を載置するステージと、
荷電粒子ビームを偏向して、試料上の所望の位置へと荷電粒子ビームを照射する偏向器と、
偏向器に流れる電流値を測定する電流測定部と、
電流値を用いて、偏向器内を通過する荷電粒子ビームの光軸をアライメントする第1と第2のアライメントコイルと、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
かかる構成により、測定される電流値がより小さくなる位置に、偏向器内を通過する荷電粒子ビームの光軸をアライメントできる。
【0015】
また、偏向器に偏向電圧を印加するアンプユニットと、
偏向器に対して、アンプユニットと電流測定部との一方が接続されるように接続を切り替える切り替え部と、
をさらに備えると好適である。
【0016】
また、偏向器は、複数の電極を有し、
電流測定部は、複数の電極のそれぞれ異なる1つに流れる電流値を測定する複数の電流測定器を有するように構成すると好適である。
【0017】
或いは、偏向器は、複数の電極を有する場合に、
電流測定部は、複数の電極を互いに電気的に接続して得られる電流を測定するようにしても好適である。
【0018】
また、本発明の一態様の荷電粒子ビームのアライメント方法は、
荷電粒子ビームを放出する工程と、
ステージ上に載置された試料上の所望の位置へと荷電粒子ビームを照射するために荷電粒子ビームを偏向する偏向器に流れる電流値を測定する工程と、
測定される電流値がより小さくなる位置に、偏向器内を通過する荷電粒子ビームの光軸をアライメントする工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、荷電粒子ビームの光軸が偏向器内の中心付近をできるだけ垂直に進むように調整できる。よって、偏向器の内径をより狭くでき、解像度を向上できる。よって、より高精度な位置にビームを照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【図2】図1における位置偏向用の偏向器と電流測定部の構成を示す概念図である。
【図3】実施の形態1における電子ビームのアライメント方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図4】実施の形態1における電子ビームの光軸調整後の電子ビームの軌道を示す概念図である。
【図5】実施の形態2における位置偏向用の偏向器と電流測定部の構成を示す概念図である。
【図6】従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【図7】電子ビームの光軸調整の一部分を示す概念図である。
【図8】電子ビームの光軸調整の他の一部分を示す概念図である。
【図9】電子ビームの光軸調整が終了した状況を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0022】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、偏向器208、制限アパーチャ209、アライメントコイル212,214、および検出器222,224が配置されている。アライメントコイル212の下側(ビームの進行上、後方(下流側))に検出器222が配置される。検出器222の下側(ビームの進行上、後方(下流側))に第2のアパーチャ206が配置される。第2のアパーチャ206は、光軸のアライメント時には制限アパーチャとしても機能する。そして、第2のアパーチャ206の下側(ビームの進行上、後方(下流側))に偏向器208が配置される。また、偏向器208と同位置にアライメントコイル214が配置される。図1では、アライメントコイル214は、偏向器208の長手方向の上部に配置されているが、これに限るものではなく、中央部に配置されていてもよい。偏向器208の下側(ビームの進行上、後方(下流側))に制限アパーチャ209が配置され、制限アパーチャ209の下側(ビームの進行上、後方(下流側))に検出器224が配置される。
【0023】
描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、例えば、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0024】
制御部160は、制御計算機110、メモリ或いは磁気ディスク装置等の記憶装置111、偏向制御回路120、電流測定部122、切り替え部124、アライメントコイル制御回路126、デジタル・アナログ変換器(DAC)アンプユニット130、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有する。制御計算機110、記憶装置111、偏向制御回路120、電流測定部122、切り替え部124、アライメントコイル制御回路126、及び記憶装置140,142は、図示しないバスを介して互いに接続されている。制御計算機110に入出力される情報および演算中の情報は記憶装置111にその都度格納される。また、偏向制御回路120には、DACアンプユニット130が接続される。
【0025】
切り替え部124は、一方の端子が偏向器208に接続され、他方の2つの端子の1つに電流測定部122が、残りの1つにDACアンプユニット130が接続される。そして、光軸アライメントを行なう際には、偏向器208と電流測定部122とを接続し、描画動作時には偏向器208とDACアンプユニット130とを接続するように配線の接続を切り替える。切り替え部124は、例えば、リレー回路が用いられる。ここで、切り替え部124を用いずに、偏向器208に電流測定部122とDACアンプユニット130が接続されると、光軸アライメントを行なう際に電流測定部122で測定できる電流値が小さくなってしまう。これに対し、光軸アライメントを行なう際には、切り替え部124により、偏向器208と電流測定部122とを接続し、DACアンプユニット130を切り離すことで微小な電流値も測定できる。また、偏向器208に電流測定部122とDACアンプユニット130が接続されると、描画動作時には電流測定部122が負荷になってしまう。これに対し、描画動作時に切り替え部124により、偏向器208とDACアンプユニット130とを接続し、電流測定部122を切り離すことで負荷を小さくして偏向器208に偏向電圧を印加できる。
【0026】
記憶装置140には、レイアウトデータとなる描画データが装置外部から入力され、格納される。
【0027】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、偏向器208を用いているが、主副2段の多段偏向器を用いても好適である。
【0028】
図2は、図1における位置偏向用の偏向器と電流測定部の構成を示す概念図である。偏向器208は、複数の静電電極で構成される。図2では、例えば、4極の静電電極10,12,14,16で構成される場合を示している。但し、これに限るものではなく、例えば、8極の静電電極で構成されてもよいし、それ以上、或いはそれ以下であっても構わない。複数の静電電極10,12,14,16は、対となる電極同士が対向して配置される。電子ビーム200は、4極の静電電極10,12,14,16で囲まれる偏向器208の内側(内径側)を通過することになる。そして、図2の例では、y方向(図1の上下方向)を静電電極10,14で偏向し、x方向(図1の左右方向)を静電電極12,16で偏向する。それぞれの静電電極には、対応する切り替えリレー回路と電流測定器が配置される。すなわち、切り替え部124は、静電電極の数に合わせた4つの切り替えリレー回路20,22,24,26を有している。また、電流測定部122は、静電電極の数に合わせた4つの電流測定器30,32,34,36を有している。静電電極の数が異なれば、対応する切り替えリレー回路と電流測定器の数もそれに対応した数になることは言うまでもない。また、DACアンプユニット130も、静電電極の数に合わせた4つのDACアンプユニット40,42,44,46で構成される。静電電極の数が異なれば、対応するDACアンプユニットの数もそれに対応した数になることは言うまでもない。
【0029】
図2の例では、静電電極10には、切り替えリレー回路20の一方の端子が電気的に動通するように接続され、他方の2つの端子の1つに電流測定器30が、残りの1つにDACアンプユニット40が接続される。光軸アライメントを行なう際には、静電電極10と電流測定器30とを接続し、描画動作時には静電電極10とDACアンプユニット40とを接続するように配線の接続を切り替える。静電電極12には、切り替えリレー回路22の一方の端子が電気的に動通するように接続され、他方の2つの端子の1つに電流測定器32が、残りの1つにDACアンプユニット42が接続される。光軸アライメントを行なう際には、静電電極12と電流測定器32とを接続し、描画動作時には静電電極12とDACアンプユニット42とを接続するように配線の接続を切り替える。静電電極14には、切り替えリレー回路24の一方の端子が電気的に動通するように接続され、他方の2つの端子の1つに電流測定器34が、残りの1つにDACアンプユニット44が接続される。光軸アライメントを行なう際には、静電電極14と電流測定器34とを接続し、描画動作時には静電電極14とDACアンプユニット44とを接続するように配線の接続を切り替える。静電電極16には、切り替えリレー回路26の一方の端子が電気的に動通するように接続され、他方の2つの端子の1つに電流測定器36が、残りの1つにDACアンプユニット46が接続される。光軸アライメントを行なう際には、静電電極16と電流測定器36とを接続し、描画動作時には静電電極16とDACアンプユニット46とを接続するように配線の接続を切り替える。そして、電流測定器30,32,34,36は、それぞれが制御計算機110に接続され、測定された電流値をそれぞれ制御計算機110に出力する。
【0030】
制御計算機110内では、加算部112、アライメントコイル値設定部114、及び判定部116が配置される。加算部112、アライメントコイル値設定部114、及び判定部116は、それぞれの機能の全部或いは一部がプログラム等のソフトウェアにより実行されるように構成されてもよいし、電気的回路等のハードウェアにより構成されてもよい。或いは、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより構成されてもよい。
【0031】
ここで、描画を行なう際には、制御計算機110が、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行なって、描画装置100用のフォーマットのショットデータを生成する。ショットデータは記憶装置142に格納される。そして、かかるショットデータを用いて描画が行なわれる。ショットデータは偏向制御回路120に出力され、各ショットに合わせた偏向量を示すデジタル信号がDACアンプユニット130に出力される。そして、DACアンプユニット130において、デジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅して、印加電圧として偏向器208に印加される。また、描画部150は、具体的には以下のように動作する。
【0032】
電子銃201から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向制御回路120により制御された偏向器208により偏向されて、移動可能に配置されたXYステージ105上の試料101の所望する位置に照射される。かかる動作をショット毎に繰り返し、複数のショットのビームを試料101上に照射することにより、試料101上に所望するパターンが描画される。
【0033】
かかる描画動作を行なうためには、上述したように、まず、電子ビーム200の光軸調整(アライメント)を行なう。実施の形態1では、特に、偏向器208内を通過する電子ビームのアライメントを行なう手法について重点をおいて説明する。
【0034】
図3は、実施の形態1における電子ビームのアライメント方法の要部工程を示すフローチャート図である。図3において、実施の形態1における電子ビームのアライメント方法は、ビーム放出工程(S102)、アライメントコイル#1設定工程(S104)、アライメントコイル#2設定工程(S106)、電流値測定工程(S108)、判定工程(S110)、及びコイル値設定工程(アライメント工程)(S112)という一連の工程を実施する。また、かかる電子ビームのアライメント方法が完了した後に、描画工程(S114)が実施される。
【0035】
ビーム放出工程(S102)として、電子銃201は、上述したように、電子ビーム200を放出する。電子ビーム200は、第1のアパーチャ203、第2のアパーチャ206を介して、偏向器208内に導かれる。
【0036】
アライメントコイル#1設定工程(S104)として、アライメントコイル値設定部114は、アライメントコイル212のコイル値を設定し、コイル値を示す制御信号をアライメントコイル制御回路126に出力する。アライメントコイル制御回路126は、入力した制御信号に従ってアライメントコイル212に電流を流す。これにより、設定されたコイル値に従って、アライメントコイル212内を通過する電子ビーム200がXY方向に走査される。
【0037】
アライメントコイル#2設定工程(S106)として、アライメントコイル値設定部114は、アライメントコイル214のコイル値を設定し、コイル値を示す制御信号をアライメントコイル制御回路126に出力する。アライメントコイル制御回路126は、入力した制御信号に従ってアライメントコイル214に電流を流す。これにより、設定されたコイル値に従って、アライメントコイル214内を通過する電子ビーム200がXY方向に走査される。
【0038】
電流値測定工程(S108)として、偏向器208に流れる電流値を電流測定部122で測定する。そして、記憶装置111にアライメントコイル212,214の各コイル値とかかるコイル値での電流値を相関させて格納する。偏向器208には、制限アパーチャ209や試料101面で反射した反射電子、2次電子、或いは散乱電子が衝突することで電流が流れる。電流値測定工程(S108)では、かかる電流値を測定する。
【0039】
そして、アライメントコイル212のコイル値をそのままの状態にして、アライメントコイル#2設定工程(S106)と電流値測定工程(S108)とを繰り返すことで、アライメントコイル214のコイル値を所定の範囲で可変にして、アライメントコイル212,214の各コイル値の組み合わせにおける電流値を測定する。そして、アライメントコイル214のコイル値を振り終わったら次にアライメントコイル212のコイル値を所定の範囲で可変にすべく、アライメントコイル#1設定工程(S104)から電流値測定工程(S108)までを繰り返す。以上の工程により、アライメントコイル212,214の各コイル値を所定の範囲でそれぞれ可変にした各組み合わせでの電流値が測定できる。
【0040】
判定工程(S110)として、まず、加算部112は、各電極で測定された電流値を加算して合計する。そして、判定部116は、加算値がより小さくなるアライメントコイル212,214の各コイル値の組み合わせを判定(選択)する。散乱電子が存在するため、完全に電流値が0にならない場合が多いため、加算された電流値がより小さくなる組み合わせを選択することが好適である。
【0041】
図4は、実施の形態1における電子ビームの光軸調整後の電子ビームの軌道を示す概念図である。図4に示すように、実施の形態1では、第2のアパーチャ206の開口中心に電子ビーム200の光軸を合わせるのではなく、電子ビーム200の光軸が偏向器208内をできるだけ垂直に進むようにアライメントコイル212,214で電子ビーム200の光軸を調整(アライメント)する。上述した加算された電流値がより小さくなるコイル値の組み合わせで電子ビーム200の光軸を調整することで、偏向器208への反射電子等の衝突がより少ない軌道に電子ビーム200の軌道を調整できる。偏向器208への反射電子等の衝突がより少ない軌道になるということは、電子ビーム200の光軸が偏向器208内のより中心付近で垂直方向(偏向器208の長手方向)になるということである。よって、加算された電流値がより小さくなるコイル値の組み合わせで電子ビーム200の光軸を調整することで、偏向器208内の中心付近で電子ビーム200の光軸方向をより垂直方向に近づけることができる。
【0042】
コイル値設定工程(アライメント工程)(S112)として、アライメントコイル値設定部114は、加算値がより小さくなる組み合わせとなる各コイル値をアライメントコイル212,214に設定する。これにより、電子ビームの光軸のアライメントを行なうことができる。ここで、アライメントコイル#1設定工程(S104)とアライメントコイル#2設定工程(S106)は順序が逆であっても構わない。
【0043】
そして、かかる電子ビームのアライメント方法が完了した後に、描画工程(S114)として、上述した動作で描画が行なわれる。
【0044】
以上のように、実施の形態1によれば、電子ビーム200の光軸が偏向器208内の中心付近をできるだけ垂直に進むように調整できる。よって、偏向器208の内径をより狭くでき、解像度を向上できる。よって、より高精度な位置にビームを照射できる。
【0045】
実施の形態2.
実施の形態1では、複数の静電電極のそれぞれに電流測定器を配置して、それぞれの電流値を個別に測定したがこれに限るものではない。実施の形態2では、複数の静電電極を互いに電気的に接続して得られる電流を測定する構成について説明する。描画装置100の構成は、図1と同様である。また、アライメント方法の各工程は図3と同様である。以下、特に説明した点以外は、実施の形態1と同様である。
【0046】
図5は、実施の形態2における位置偏向用の偏向器と電流測定部の構成を示す概念図である。実施の形態2では、図5に示すように、DACアンプユニットに接続されない側の切り替えリレー回路20,22,24,26の端子を電気的に接続した上で1つの電流測定部122に接続する。よって、いずれかの静電電極10,12,14,16で電流が流れれば、電流測定部122で測定されることになる。また、制御計算機110内では、図2の加算部112が削除されている。その他の点は図2と同様である。
【0047】
かかる構成で、図3に示したアライメントコイル#1設定工程(S104)から電流値測定工程(S108)までを繰り返す。電流測定部122は、各組み合わせで測定された電流値を制御計算機110に出力する。そして、記憶装置111にアライメントコイル212,214の各コイル値とかかるコイル値での電流値を相関させて格納する。
【0048】
そして、判定工程(S110)として、判定部116は、測定された電流値がより小さくなるアライメントコイル212,214の各コイル値の組み合わせを判定(選択)する。そして、実施の形態1と同様、コイル値設定工程(アライメント工程)(S112)を実施することで、電子ビームの光軸のアライメントを行なうことができる。
【0049】
以上のように複数の静電電極を互いに電気的に接続して得られる電流を測定しても、実施の形態1と同様に光軸のアライメントを行なうことができる。
【0050】
以上のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を発揮できる。さらに、実施の形態2では、電流測定器が1つで済むため、部品点数を減らすことができ、より好適である。
【0051】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した各実施の形態で説明したアライメントを行なう前に粗調整として、偏向器208の前後に配置された制限アパーチャとなる第2のアパーチャ206と制限アパーチャ209と検出器222,224を用いて、前後の制限アパーチャの中心を電子ビーム200が通過するようにアライメントコイル212,214でまず光軸を調整してもよい。具体的には、電子銃201から放出された電子ビーム200は、アライメントコイル212でまず、偏向器208の前方であって、アライメントコイル212の後方に配置される制限アパーチャとなる第2のアパーチャ206の中心を光軸が通過するように調整される。調整は、制限アパーチャ206で反射された2次電子等を第2のアパーチャ206上の検出器222で検出し、検出で得られた像を確認しながら第2のアパーチャ206の中心を通過するように行なう。第2のアパーチャ206の中心を通過した電子ビーム330は、偏向器208内へと進む。次に、偏向器208内を通過する電子ビーム200の光軸をアライメントコイル214で調整する。調整は、偏向器208の後方に配置された制限アパーチャ209を通過して、試料101面で反射された2次電子等を制限アパーチャ209下の検出器224で検出し、検出で得られた像を確認しながら制限アパーチャ209の中心を光軸が通過するように行なう。以上のような仮のアライメントを行なった後に、微調整として、各実施の形態で説明したアライメントを行なうことで、各実施の形態で説明したアライメントの際のコイル値の振り幅を少なくできる。その結果、より短時間にアライメントができる。
【0052】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0053】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置、描画方法、及び荷電粒子ビームのアライメント方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0054】
10,12,14,16 静電電極
20,22,24,26 切り替えリレー回路
30,32,34,36 電流測定器
40,42,44,46,130 DACアンプユニット
100 描画装置
101,340 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御計算機
111,140,142 記憶装置
112 加算部
114 アライメントコイル値設定部
116 判定部
120 偏向制御回路
122 電流測定部
124 切り替え部
126 アライメントコイル制御回路
130 DACアンプユニット
150 描画部
160 制御部
200,330 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203,410 第1のアパーチャ
204 投影レンズ
205,208 偏向器
206,420 第2のアパーチャ
207 対物レンズ
209,409 制限アパーチャ
212,214,412,414 アライメントコイル
222,224,422,424 検出器
408 対物偏向器
411 開口
421 可変成形開口
430 荷電粒子ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
試料を載置するステージと、
前記荷電粒子ビームを偏向して、前記試料上の所望の位置へと前記荷電粒子ビームを照射する偏向器と、
前記偏向器に流れる電流値を測定する電流測定部と、
前記電流値を用いて、前記偏向器内を通過する前記荷電粒子ビームの光軸をアライメントする第1と第2のアライメントコイルと、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記偏向器に偏向電圧を印加するアンプユニットと、
前記偏向器に対して、前記アンプユニットと前記電流測定部との一方が接続されるように接続を切り替える切り替え部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記偏向器は、複数の電極を有し、
前記電流測定部は、前記複数の電極のそれぞれ異なる1つに流れる電流値を測定する複数の電流測定器を有することを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記偏向器は、複数の電極を有し、
前記電流測定部は、前記複数の電極を互いに電気的に接続して得られる電流を測定することを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
荷電粒子ビームを放出する工程と、
ステージ上に載置された試料上の所望の位置へと前記荷電粒子ビームを照射するために前記荷電粒子ビームを偏向する偏向器に流れる電流値を測定する工程と、
測定される電流値がより小さくなる位置に、前記偏向器内を通過する前記荷電粒子ビームの光軸をアライメントする工程と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビームのアライメント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−77180(P2011−77180A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225235(P2009−225235)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】