説明

荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法

【目的】レジストを残す部分をパターンとするパターン形成を行なう場合でも寸法誤差を低減させる描画装置を提供すると共に、その装置を用いた描画方法を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様の描画装置100は、電子ビーム200を照射する電子銃201と、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域を有する第1の成形アパーチャ部材203と、第1の成形アパーチャ部材203を透過した電子ビーム200を偏向する成形偏向部205と、偏向された電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域を有する第2の成形アパーチャ部材206と、第2の成形アパーチャ部材206を透過した電子ビーム200が照射される試料101を載置するXYステージ105と、を備えたことを特徴する。本発明によれば、レジストを残す部分をパターンとする場合でも寸法誤差を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に係り、特に、2つのアパーチャ形状に特徴を有する電子ビーム描画装置と、その装置を用いて描画する電子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
図12は、可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
可変成形型電子線(EB:Electron beam)描画装置は、以下のように動作する。まず、第1の成形アパーチャ部材410には、電子線330を成形するための矩形例えば長方形の開口411が形成されている。また、第2の成形アパーチャ部材420には、開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向される。そして、可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340に照射される。すなわち、開口411と可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、試料340の描画領域に描画される。開口411と可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式という。
【0004】
図13は、成形ビームの一例を示す図である。
第1のアパーチャ部材410の通過像331のうち、可変成形開口421を通過する像333が成形されたパターンとなる。
以上のように、可変成形型のビーム描画装置では、第1の成形アパーチャ部材410の通過像331を偏向器で偏向させて第2の成形アパーチャ部材420の可変成形開口421に投影する位置を制御することでビームサイズを調整している。
【0005】
図14は、1つのショットで成形されるパターンの一例を示している。
図15は、は、ポジ型レジストを用いてレジストを除去した部分をパターンとするパターン形成を行なう場合の工程断面図である。
図15(a)に示すように、マスクブランスク等の基板360上に形成されたポジ型レジスト361に、第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて成形された図14に示すような寸法Lのパターン334を電子ビーム350で描画(露光)する。そして、現像することで、露光された部分を除去する。そうすることで、図15(b)に示すようなパターン寸法Lのレジストパターンを形成することができる。このように、パターンが1つのショットで形成される場合には、成形偏向の誤差のみがパターンの寸法誤差に影響することになる。ここで、Lが平均値<L>からずれた値をδLとする場合、パターン寸法Lの成形誤差は、成形誤差=±δLで示すことができる。しかしながら、レジストを残すパターンを形成する場合には、左右のパターンを描画装置で描画することになるので両脇2つのショットの位置誤差が誤差要因としてさらに追加されることになる。
【0006】
図16は、2つのショットで成形されるパターンの一例を示している。
図17は、ポジ型レジストを用いてレジストを残す部分をパターンとするパターン形成を行なう場合の工程断面図である。
図17(a)に示すように、マスクブランスク等の基板360上に形成されたポジ型レジスト361に、第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて成形された図16に示すような寸法lの2つのパターン335,336を、間隔Lを空けて電子ビーム350で描画(露光)する。そして、現像することで、露光された部分を除去する。そうすることで、図17(b)に示すようなパターン寸法Lのレジストパターンを形成することができる。ここで、描画された各パターンの左下を座標位置と定義すると、パターン335の位置は、(x,y)、パターン336の位置は、(x,y)で示すことができる。ここで、レジストパターンの寸法Lは、L=x−x−lで示すことができる。また、xが平均値<x>からずれた値δxを確率的にとる場合、x=<x>+δxで示すことができる。ここ、および、以下で<Q>は、Qの平均値を示す。同様に、xが平均値<x>からずれた値δxを確率的にとる場合、x=<x>+δxで示すことができる。同様に、lが平均値<l>からずれた値δlを確率的にとる場合、l=<l>+δlで示すことができる。そして、Lが平均値<L>からずれた値をδLとする場合、<δL>=<L>−<L=δx+δx+δlで示すことができる。よって、パターン寸法Lの誤差は、誤差=√(<δx>+<δx>+<δl>)で示すことができる。このように、ポジ型レジスト361を用いて、レジストを残すパターンを形成する場合には、成形誤差成分√<δl>の他に、さらに、位置誤差成分√(<δx>+<δx>)を含んでしまい誤差が大きくなってしまうといった問題があった。このように、残しパターンの寸法Lの誤差は、上述した除去パターンの寸法Lの誤差よりも悪くなり、数倍の誤差となってしまう場合もあった。
【0007】
そのため、マスク製造工程やウェハへ直接直描する直描装置を利用するウェハプロセス工程では、レジストパターンの寸法精度が高精度に必要な場合、次のように対処していた。例えば、ホールパターンのように1つのパターンで寸法が決まる場合には、ポジ型レジストを用いて描画する。他方、素子分離やゲートパターンのように2つのパターンの間で寸法が決まる場合には、除去された部分をパターンにするためにネガ型レジストを用いて描画するといった具合である。
【0008】
図18は、ネガ型レジストを用いてレジストを除去した部分をパターンとするパターン形成を行なう場合の工程断面図である。
図18(a)に示すように、マスクブランスク等の基板360上に形成されたネガ型レジスト362に、第1と第2のアパーチャ部材を用いて成形された図14に示すような寸法Lの1つのパターン334を電子ビーム350で描画(露光)する。そして、現像することで、露光された部分を除去する。そうすることで、図18(b)に示すようなパターン寸法Lのレジストパターンを形成することができる。ネガ型レジストを用いることで、位置誤差要因を排除することができる。
【0009】
以上のように、2種類のレジストを使い分ける必要があった。しかしながら、2種類のレジストを用いる場合には以下のように多くの問題を引き起こしていた。
【0010】
第1に、1つのプロセスで2種類のレジストを利用することはプロセスの維持管理を煩雑にしてしまっていた。その結果、操作ミスを招きやすいといった問題を引き起こしていた。そして、そのラインの維持コストを増加させてしまっていた。その結果、半導体装置のコスト上昇の要因となるといった問題を引き起こしていた。
【0011】
第2に、ネガ型レジストを用いる場合、ボウジュンの問題があり、微細なパターンを形成することが困難であるといった問題がある。そのため、今後のパターンの微細化に伴って、パターン形成が困難になってしまうといった問題があった。また、ある種のネガ型の化学増幅型レジストでは、ゴミが発生しやすいといった問題があり、パターン形成時の歩留まり劣化を引き起こすといった問題があった。
【0012】
第3に、ウェハに直接描画する際にネガ型レジストを用いてゲートパターンを形成すると、トランジスタの活性部に電子を照射することになる。そのため、トランジスタへのダメージが発生するといった問題もある。
【0013】
ここで、電子ビーム描画とは直接関係ないが、液晶用基板に1回の光露光で同一ピッチの同じパターンを数多く形成するための装置が開示されている。この装置では、複数の開口部が形成された第1のマスクと複数の開口部が形成された第2のマスクとを備えていて、両マスクの開口部を通過した光で露光している。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−145746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、ポジ型レジストを用いてレジストを残す部分をパターンとするパターン形成を行なう場合の寸法誤差が大きいといった問題があった。他方、ネガ型レジストを用いると上述したような別の問題を引き起こすといった問題があった。
【0016】
そこで、本発明は、かかる問題点を克服し、レジストを残す部分をパターンとするパターン形成を行なう場合でも寸法誤差を低減させる描画装置を提供すると共に、その装置を用いた描画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
荷電粒子ビームを照射する照射部と、
荷電粒子ビームを遮断する領域の両側に透過する領域を有する第1の成形アパーチャ部材と、
第1の成形アパーチャ部材を透過した荷電粒子ビームを偏向する偏向部と、
偏向された荷電粒子ビームを遮断する領域の両側に透過する領域を有する第2の成形アパーチャ部材と、
第2の成形アパーチャ部材を透過した荷電粒子ビームが照射される試料を載置するステージと、
を備えたことを特徴する。
【0018】
また、第1の成形アパーチャ部材に、複数の開口部が形成されていると好適である。或いは、第2の成形アパーチャ部材に、複数の開口部が形成されていても好適である。或いは、第1と第2の成形アパーチャ部材共に、複数の開口部が形成されていても好適である。
【0019】
或いは、第1と第2の成形アパーチャ部材の少なくとも一方に、コの字形の開口部が形成されるようにしても好適である。また、第2の成形アパーチャ部材に、コの字形の開口部が形成される場合には、第1の成形アパーチャ部材に、複数の開口部が形成されていると好適である。また、第1の成形アパーチャ部材に、コの字形の開口部が形成される場合には、第2の成形アパーチャ部材に、複数の開口部が形成されていると好適である。
【0020】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
荷電粒子ビームを遮断する領域の両側に透過する開口部が形成された第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて、所定の間隔を空けて並ぶ第1と第2のパターンを描画し、
前記第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて、前記第2のパターンの両サイドのうち前記第1のパターンとは反対側のサイドで前記第2のパターンにつなぎ合わさる第3のパターンを描画することを特徴とする。
【0021】
かかる構成により第1と第2のパターンで寸法精度を確保する。そして、パターン形状として足りない部分は、第3のパターンで補うことができる。
【0022】
本発明の他の態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
荷電粒子ビームを遮断する領域の両側に透過する開口部が形成された第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて、第1の間隔を空けて並ぶ第1の対パターンを描画し、
前記第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて、前記第1の対パターンにつなぎ合わせた第2の間隔を空けて並ぶ第2の対パターンを描画することを特徴とする。
【0023】
かかる構成により、対パターンで寸法精度を確保する。そして、寸法精度が確保された間隔が異なるパターンを繋げたパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、2つのパターンを描画することによる位置誤差要因を排除することができる。その結果、レジストを残す部分をパターンとするパターン形成を行なう場合でも寸法誤差を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1における描画装置の要部構成の一例を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における成形アパーチャ部材に形成された開口部の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1における成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
【図4】実施の形態1における成形アパーチャ部材に形成された開口部の他の一例を示す図である。
【図5】図4の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
【図6】実施の形態1における成形アパーチャ部材に形成された開口部の他の一例を示す図である。
【図7】図6の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
【図8】実施の形態1における成形アパーチャ部材に形成された開口部の他の一例を示す図である。
【図9】図8の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
【図10】同じ間隔の連続するパターンを描画する際における従来の描画手法と実施の形態1での描画手法とを比較しながら説明するための図である。
【図11】間隔が異なる連続するパターンを描画する際における従来の描画手法と実施の形態1での描画手法とを比較しながら説明するための図である。
【図12】可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【図13】成形ビームの一例を示す図である。
【図14】1つのショットで成形されるパターンの一例を示している。
【図15】ポジ型レジストを用いてレジストを除去した部分をパターンとするパターン形成を行なう場合の工程断面図である。
【図16】2つのショットで成形されるパターンの一例を示している。
【図17】ポジ型レジストを用いてレジストを残す部分をパターンとするパターン形成を行なう場合の工程断面図である。
【図18】ネガ型レジストを用いてレジストを除去した部分をパターンとするパターン形成を行なう場合の工程断面図である。
【図19】実施の形態2における成形アパーチャ部材に形成された開口部の一例を示す図である。
【図20】図19の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
【図21】実施の形態2における他の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
【図22】実施の形態2における成形アパーチャ部材に形成された開口部の他の一例を示す図である。
【図23】図22の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態では、荷電粒子線(荷電粒子ビーム)の一例として、電子線(電子ビーム)を用いた構成について説明する。但し、荷電粒子線は、電子線に限るものではなく、イオン線等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0027】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の要部構成の一例を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例となる。描画装置100は、試料101に所定のパターンを描画する。描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画部150は、電子鏡筒102、描画室103を有している。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、投影レンズ222、第1の成形アパーチャ部材203、投影レンズ204、成形偏向器205、第2の成形アパーチャ部材206、対物レンズ207、及び位置偏向器208が配置されている。電子銃201は、照射部の一例となる。また、描画室103内には、移動可能に配置されたXYステージ105が配置されている。また、XYステージ105上には、試料101が配置されている。試料101として、例えば、ウェハにパターンを転写する露光用のマスクが含まれる。また、このマスクは、例えば、まだ何もパターンが形成されていないレジスト膜が塗布されたマスクブランクスが含まれる。また、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分については記載している。描画装置100にとって、その他の構成が含まれても構わない。
【0028】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャ部材に形成された開口部の一例を示す図である。
図2(a)では、第1の成形アパーチャ部材203に形成された開口部の一例を示している。図2(b)では、第2の成形アパーチャ部材206に形成された開口部の一例を示している。図2(a)に示すように、開口幅Mで形成された2つの長方形の開口部231,232が、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域として形成されている。開口部231,232は、開口部間に間隔Lの電子ビーム200を遮断する領域230を設けて平行に形成されている。特に、対抗する辺同士が平行に形成されている。同様に、図2(b)に示すように、開口幅Mで形成された2つの長方形の開口部261,262が、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域として形成されている。開口部261,262は、開口部間に間隔Lの電子ビーム200を遮断する領域260を設けて平行に形成されている。特に、対抗する辺同士が平行に形成されている。すなわち、両成形アパーチャ部材共に、両側を電子ビーム200が通過する部分で挟まれた非通過部分を設けている。
【0029】
電子銃201から照射された電子ビーム200は、照明レンズ202と投影レンズ222により上述した2つの長方形の開口部231,232(穴)を持つ第1のアパーチャ部材203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず2つの長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ部材203を通過した2つの第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ部材206上に投影される。かかる第2のアパーチャ部材206上での2つの第1のアパーチャ像の位置は、成形偏向器205によって同様に偏向されることで制御される。これにより、両像共にビーム形状と寸法を変化させることができる。そして、第2のアパーチャ部材206を通過した2つの第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせられる。そして、各像の電子ビーム200は、位置偏向器208により同様に偏向される。このようにして、XYステージ105上の試料101の所望する位置に対となるパターン像が照射される。
【0030】
図3は、実施の形態1における成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
図3(a)では、開口部231と開口部261との両方を電子ビーム200が通過した部分241を示している。同様に、開口部232と開口部262との両方を電子ビーム200が通過した部分242を示している。そして、図3(a)では、横方向(x方向)に寸法xだけ第1の成形アパーチャ部材203と第2の成形アパーチャ部材206を相対的にずらしてビーム形状とサイズを決めている。そして、図3(b)に示すように、部分241の形状にパターン281が成形される。同様に、部分242の形状にパターン282が成形される。ここで、2つのパターン281,282間の寸法をLとする。そして、2つのパターン281,282の寸法をaとする。そして、2つのパターン281,282の外側端間の寸法をbとする。この場合、L=L+x=L+M−(M−x)で示すことができる。また、a=M−xで示すことができる。また、b=L+2M−xで示すことができる。以上のように、寸法Lは、成形偏向器205の偏向量、言い換えれば、ずらし量xで決まることになる。そのため、位置偏向器208での偏向位置に左右されることがない。よって、寸法精度は、成形偏向誤差のみで決まり、位置誤差を排除することができる。すなわち、xが平均値<x>からずれた値δxを確率的にとるとして、x=<x>+δxとし、Lが平均値<L>からずれた値をδLとする場合、誤差の2乗の平均値<δL>=<δx>で示すことができる。よって、パターン寸法Lの誤差は、成形偏向誤差=√<δx>で示すことができる。よって、ポジ型レジストを用いて残しパターンを形成する場合でも、従来生じていた位置誤差を排除することができる。よって、ネガ型レジストを用いなくともポジ型レジストを用いてレジストが残る部分でパターンを形成する残しパターンを高精度な寸法で形成することができる。
【0031】
ここで、上述した例では、第1と第2の成形アパーチャ部材共に、複数の開口部が形成されている例について説明したが、これに限るものではない。例えば、以下のような開口部を形成しても好適である。
図4は、実施の形態1における成形アパーチャ部材に形成された開口部の他の一例を示す図である。
図4(a)では、第1の成形アパーチャ部材203に形成された開口部の他の一例を示している。図4(b)では、第2の成形アパーチャ部材206に形成された開口部の他の一例を示している。図4(a)に示すように、開口幅Mで形成された2つの長方形の開口部の端部を他の開口部でつなぐことによって、日本語の「コ」に似せた形状、所謂「コ」の字状の1つの開口部233を形成している。このように、電子ビームが透過する領域は、一部がつながっている。この開口部233の両足部分(開口幅Mで形成された2つの長方形部分)が、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域として形成されている。開口部233は、両足部分の間に間隔Lの電子ビーム200を遮断する領域230を設けて両足部分が平行になるように形成されている。同様に、図4(b)に示すように、開口幅Mで形成された2つの長方形の開口部の端部を他の開口部でつなぐことによって、所謂「コ」の字状の1つの開口部263を形成している。この開口部263の両足部分(開口幅Mで形成された2つの長方形部分)が、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域として形成されている。開口部263は、両足部分の間に間隔Lの電子ビーム200を遮断する領域260を設けて両足部分が平行になるように形成されている。すなわち、両成形アパーチャ部材共に、両側を電子ビーム200が通過する部分で挟まれた非通過部分を設けている。
【0032】
図5は、図4は、の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
図5では、開口部233と開口部263との両方を電子ビーム200が通過した部分241,242を示している。そして、図5でも、図3(a)と同様、横方向(x方向)に寸法xだけ第1の成形アパーチャ部材203と第2の成形アパーチャ部材206を相対的にずらしてビーム形状とサイズを決めている。このように1つの開口部であっても、図3(b)と同様、部分241の形状にパターン281が成形される。同様に、部分242の形状にパターン282が成形される。ここで、2つのパターン281,282間の寸法はLとなる。そして、このパターン寸法Lの誤差は、成形偏向誤差=√<δx>で示すことができる。
【0033】
ここで、上述した例では、第1と第2の成形アパーチャ部材共に、コの字形の開口部が形成された例を説明したが、これに限るものではない。例えば、第1と第2の成形アパーチャ部材の少なくとも一方に、コの字形の開口部が形成されるようにしても好適である。例えば、第2の成形アパーチャ部材206に、コの字形の開口部が形成される場合には、第1の成形アパーチャ部材203に、複数の開口部が形成されていると好適である。また、第1の成形アパーチャ部材203に、コの字形の開口部が形成される場合には、第2の成形アパーチャ部材206に、複数の開口部が形成されていると好適である。
【0034】
以上のように、第1の成形アパーチャ部材203に、複数の開口部が形成されていると好適である。或いは、第2の成形アパーチャ部材206に、複数の開口部が形成されていても好適である。或いは、第1と第2の成形アパーチャ部材共に、複数の開口部が形成されていても好適である。
【0035】
ここで、上述した例では、第1と第2の成形アパーチャ部材共に、形成される開口部が斜めに傾いていない例について説明したが、これに限るものではない。例えば、以下のような開口部を形成しても好適である。
図6は、実施の形態1における成形アパーチャ部材に形成された開口部の他の一例を示す図である。
図6(a)では、第1の成形アパーチャ部材203に形成された開口部の他の一例を示している。図6(b)では、第2の成形アパーチャ部材206に形成された開口部の他の一例を示している。図6(a)に示すように、開口幅Mで形成された斜めに所定の角度で傾いた2つの長方形の開口部236,237が、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域として形成されている。開口部236,237は、開口部間に間隔Lの電子ビーム200を遮断する領域239を設けて平行に形成されている。特に、対抗する辺同士が平行に形成されている。同様に、図6(b)に示すように、開口幅Mで形成された斜めに所定の角度で傾いた2つの長方形の開口部266,267が、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域として形成されている。開口部266,267は、開口部間に間隔Lの電子ビーム200を遮断する領域269を設けて平行に形成されている。特に、対抗する辺同士が平行に形成されている。すなわち、両成形アパーチャ部材共に、両側を電子ビーム200が通過する部分で挟まれた非通過部分を設けている。
【0036】
図7は、図6の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
図7(a)では、開口部236と開口部266との両方を電子ビーム200が通過した部分246を示している。同様に、開口部237と開口部267との両方を電子ビーム200が通過した部分247を示している。そして、図7(a)では、幅寸法Mと同方向に寸法xだけ第1の成形アパーチャ部材203と第2の成形アパーチャ部材206を相対的にずらしてビーム形状とサイズを決めている。そして、図7(b)に示すように、部分246の形状にパターン286が成形される。同様に、部分247の形状にパターン287が成形される。ここで、2つのパターン286,287間の寸法はLとなる。そして、このパターン寸法Lの誤差は、成形偏向誤差=√(δL+δx)で示すことができる。
【0037】
ここで、上述した例では、第1と第2の成形アパーチャ部材共に、形成される開口部の全角度が90度の直角に形成された例について説明したが、これに限るものではない。例えば、以下のような開口部を形成しても好適である。
図8は、実施の形態1における成形アパーチャ部材に形成された開口部の他の一例を示す図である。
図8(a)では、第1の成形アパーチャ部材203に形成された開口部の他の一例を示している。図8(b)では、第2の成形アパーチャ部材206に形成された開口部の他の一例を示している。図8(a)に示すように、90度以外の任意角をもつ2つの台形の開口部234,235が、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域として形成されている。開口部234,235は、開口部間に横方向(x方向)に間隔Lの電子ビーム200を遮断する領域238を設けて対向する斜め辺同士が平行に形成されている。同様に、図8(b)に示すように、90度以外の任意角をもつ2つの台形の開口部264,265が、電子ビーム200を遮断する領域の両側に透過する領域として形成されている。開口部264,265は、開口部間に横方向(x方向)に間隔Lの電子ビーム200を遮断する領域238を設けて対向する斜め辺同士が平行に形成されている。すなわち、両成形アパーチャ部材共に、両側を電子ビーム200が通過する部分で挟まれた非通過部分を設けている。
【0038】
図9は、図8の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
図9(a)では、開口部234と開口部264との両方を電子ビーム200が通過した部分244を示している。同様に、開口部235と開口部265との両方を電子ビーム200が通過した部分245を示している。そして、図9(a)では、横方向(x方向)に寸法xだけ第1の成形アパーチャ部材203と第2の成形アパーチャ部材206を相対的にずらしてビーム形状とサイズを決めている。そして、図9(b)に示すように、部分244の形状にパターン284が成形される。同様に、部分245の形状にパターン285が成形される。ここで、2つのパターン284,285間の寸法をLとした場合、このパターン寸法Lの誤差は、成形偏向誤差=√(δL+δx)で示すことができる。
【0039】
さらに、第1の成形アパーチャ部材203と第2の成形アパーチャ部材206の一方に、図2で示した複数の開口部が形成され、他方に図4で示した「コ」の字状の1つの開口部を設けても同様の効果を得ることができ、好適である。
【0040】
以上のように構成した描画装置100を用いて連続するパターンを描画する方法について以下に説明する。
図10は、同じ間隔の連続するパターンを描画する際における従来の描画手法と実施の形態1での描画手法とを比較しながら説明するための図である。
従来、所定の間隔Lを空けて両側にD,Dの幅のパターンを形成する場合、図10(a)に示すように、幅Dをいくつかの成形可能な幅のパターン335a,337aで描画し、それと独立して、幅Dをいくつかの成形可能な幅のパターン336a,338aで描画する。そして、それらの描画ステップを繰り返し、例えば、下方向(y方向)に同じパターン(335a〜335c、336a〜336c、337a〜337c、338a〜338c)をつなぎ合わせていくことで、連続するパターンを描画することになる。これでは、パターン335,336間の間隔Lは、上述したようにいつも成形誤差の他に位置誤差をも含んでしまうことになる。これに対し、実施の形態1の構成で所定の間隔Lを空けて両側にD,Dの幅のパターンを形成する場合、図10(b)に示すように、まず、第1と第2の成形アパーチャ部材203,206を用いて、間隔Lを空けて並ぶ対パターンとなるパターン281a,282aを描画する。そして、第1と第2の成形アパーチャ部材203,206を用いて、パターン281aの両サイドのうち、パターン282aとは反対側(外側)のサイドでパターン281aにつなぎ合わさる補助パターン291aを描画する。すなわち、パターン281aと補助パターン291aとで幅Dのパターンを構成する。同様に、パターン282aの両サイドのうち、パターン281aとは反対側(外側)のサイドでパターン282aにつなぎ合わさる補助パターン292aを描画する。すなわち、パターン282aと補助パターン292aとで幅Dのパターンを構成する。そして、それらの描画ステップを繰り返し、例えば、下方向(y方向)に同じパターン(281a〜281c、282a〜282c、291a〜291c、292a〜292c)をつなぎ合わせていくことで、同じ間隔で連続するパターンを描画することができる。実施の形態1では、対パターン間の寸法誤差からは位置誤差要因を排除できるので、従来よりも高精度な寸法でパターンを形成することができる。言い換えれば、レジストを残す部分をパターンとするパターン形成を行なう場合でも寸法誤差を低減させることができる。
【0041】
以上のように、まず、対パターンで寸法精度を確保することができる。そして、パターン形状として足りない部分は、補助パターンで補うことができる。
【0042】
ここで、連続するパターンは、常に同じ間隔を空けて形成されるものばかりとは限らない。以下、並ぶパターンの間隔が異なるパターンで連続するパターンを描画する方法について以下に説明する。
図11は、間隔が異なる連続するパターンを描画する際における従来の描画手法と実施の形態1での描画手法とを比較しながら説明するための図である。
従来、所定の間隔L21を空けて両側にD11,D21の幅のパターンを形成する場合、図11(a)に示すように、成形可能幅であれば幅D11のパターン341で描画し、それと独立して、成形可能幅であれば幅D21のパターン342で描画する。そして、今度は、所定の間隔L22を空けて両側にD12,D22の幅のパターンを形成する。形成方法は、同様に、成形可能幅であれば幅D12のパターン343で描画し、それと独立して、成形可能幅であれば幅D22のパターン344で描画する。そして、今度は、所定の間隔L23を空けて両側にD13,D23の幅のパターンを形成する。形成方法は、同様に、成形可能幅であれば幅D13のパターン345で描画し、それと独立して、成形可能幅であれば幅D23のパターン346で描画する。パターン341,343,345は、例えば、下方向(y方向)に連続するようにつなぎ合わせて形成する。同様に、パターン342,344,346は、例えば、下方向(y方向)に連続するようにつなぎ合わせて形成する。これでは、パターン341,342間の間隔L21は、上述したようにいつも成形誤差の他に位置誤差をも含んでしまうことになる。同様に、パターン343,345間の間隔L22は、上述したようにいつも成形誤差の他に位置誤差をも含んでしまうことになる。同様に、パターン345,346間の間隔L23は、上述したようにいつも成形誤差の他に位置誤差をも含んでしまうことになる。これに対し、実施の形態1の構成で所定の間隔L01を空けて両側にD11,D21の幅のパターンを形成する場合、図11(b)に示すように、まず、第1と第2の成形アパーチャ部材203,206を用いて、間隔L01を空けて並ぶ対パターンとなるパターン251,252を描画する。そして、第1と第2の成形アパーチャ部材203,206を用いて、パターン251の両サイドのうち、パターン252とは反対側(外側)のサイドでパターン251につなぎ合わさる補助パターン293を描画する。すなわち、パターン251と補助パターン293とで幅D11のパターンを構成する。同様に、パターン252の両サイドのうち、パターン251とは反対側(外側)のサイドでパターン252につなぎ合わさる補助パターン294を描画する。すなわち、パターン252と補助パターン294とで幅D21のパターンを構成する。そして、今度は、対となるパターン251,251の下側に、所定の間隔L02を空けて両側にD12,D22の幅のパターンを形成する。形成方法は、同様に、第1と第2の成形アパーチャ部材203,206を用いて、間隔L02を空けて並ぶ対パターンとなるパターン253,254を描画する。そして、第1と第2の成形アパーチャ部材203,206を用いて、パターン253の両サイドのうち、パターン254とは反対側(外側)のサイドでパターン253につなぎ合わさる補助パターン295を描画する。すなわち、パターン253と補助パターン295とで幅D12のパターンを構成する。同様に、パターン254の両サイドのうち、パターン253とは反対側(外側)のサイドでパターン254につなぎ合わさる補助パターン296を描画する。すなわち、パターン254と補助パターン296とで幅D22のパターンを構成する。そして、今度は、対パターン253,254の下側に、所定の間隔L03を空けて両側にD13,D23の幅のパターンを形成する。形成方法は、同様に、第1と第2の成形アパーチャ部材203,206を用いて、間隔L03を空けて並ぶ対パターンとなるパターン255,256を描画する。そして、第1と第2の成形アパーチャ部材203,206を用いて、パターン255の両サイドのうち、パターン256とは反対側(外側)のサイドでパターン255につなぎ合わさる補助パターン297を描画する。すなわち、パターン255と補助パターン297とで幅D13のパターンを構成する。同様に、パターン256の両サイドのうち、パターン255とは反対側(外側)のサイドでパターン256につなぎ合わさる補助パターン298を描画する。すなわち、パターン256と補助パターン298とで幅D23パターンを構成する。対パターン251,252の幅aは、上述したように、a=M−xで決まってしまう。そのため、補助パターンで寸法精度に関わってこない外側の足りない部分を補ってやればよい。同様に、対パターン253,254の幅も決まってしまう。そのため、補助パターンで寸法精度に関わってこない外側の足りない部分を補ってやればよい。同様に、対パターン255,256の幅も決まってしまう。そのため、補助パターンで寸法精度に関わってこない外側の足りない部分を補ってやればよい。パターン251,293のセットとパターン253,295のセットとパターン255,297のセットは、例えば、下方向(y方向)に連続するようにつなぎ合わせて形成する。同様に、パターン252,294のセットとパターン254,296のセットとパターン256,298のセットは、例えば、下方向(y方向)に連続するようにつなぎ合わせて形成する。つまり、対パターン253,254は、対パターン251,252の端部のうち、対パターン251,252の並ぶ方向と直交する方向の端部につなぎ合わせて形成する。同様に、対パターン255,256は、対パターン253,254の端部のうち、対パターン251,252の並ぶ方向と直交する方向の端部につなぎ合わせて形成する。以上のように、描画ステップを進めてパターンをつなぎ合わせていくことで、異なる間隔で連続するパターンを描画することができる。実施の形態1では、対パターン間の寸法誤差からは位置誤差要因を排除できるので、従来よりも高精度な寸法でパターンを形成することができる。
【0043】
実施の形態2.
実施の形態1では、第1と第2の成形アパーチャ部材の開口部を通過して試料101上に形成された2つのパターンによって挟まれる荷電粒子ビームが遮断された領域の形状が、途中で方向を変えない直線形状になる場合について説明した。しかし、これに限るものではない。実施の形態2では、第1と第2の成形アパーチャ部材の両方の開口部を通過して試料101上に形成された2つのパターンによって挟まれる荷電粒子ビームが遮断された領域の形状が、途中で方向を変える形状になる場合について説明する。第1の成形アパーチャ部材203に形成された開口部と第2の成形アパーチャ部材206に形成された開口部の形状以外は、実施の形態1と同様である。
【0044】
図19は、実施の形態2における成形アパーチャ部材に形成された開口部の一例を示す図である。
図19(a)では、第1の成形アパーチャ部材203に形成された開口部の一例を示している。図19(b)では、第2の成形アパーチャ部材206に形成された開口部の一例を示している。図19(a)に示すように、第1の成形アパーチャ部材203には、複数の開口部502,504,512,514,522,524,532,534が形成されている。ここでは、開口部502,504が1つの組、開口部512,514が1つの組、開口部522,524が1つの組、そして、開口部532,534が1つの組を構成する。そして、開口部502,504のうち、一方の開口部504は正方形或いは長方形に形成されている。他方の開口部502は、途中で向きを変えて延びる形状に形成されている。ここでは、開口部502が、途中で直角に向きを変えて延びる形状、所謂、L字形状に形成されている。そして、開口部502は、開口部504の1辺とLだけ離れて対向する位置に平行する第1の辺をもち、開口部504の他の1辺とL’だけ離れて対向する位置に平行する第2の辺をもつように形成される。そして、第1と第2の辺は、直角につながるように形成されている。すなわち、開口部間に向きが異なる間隔Lと間隔L’の電子ビーム200を遮断する領域を設けて形成されている。そして、開口部512,514の組は、開口部502,504の組と上下に対称に形成されている。開口部522,524の組は、開口部502,504の組と左右に対称に形成されている。開口部532,534の組は、開口部502,504の組と上下と左右の両方に対称に形成されている。また、図19(b)に示すように、第2の成形アパーチャ部材206には、複数の開口部506,516,526,536,508が形成されている。中央の開口部508は正方形或いは長方形に形成されている。その他の複数の開口部506,516,526,536は、中央の開口部508を取り囲むように配置されている。開口部506,516,526,536は、途中で直角に向きを変えて延びる形状、所謂、L字形状に形成されている。そして、開口部506は、開口部508の1辺とL”だけ離れて対向する位置に平行する第1の辺をもち、開口部508の他の1辺とL’’’だけ離れて対向する位置に平行する第2の辺をもつように形成される。すなわち、開口部間に向きが異なる間隔Lと間隔L’の電子ビーム200を遮断する領域を設けて形成されている。そして、第1と第2の辺は、直角につながるように形成されている。開口部516は、開口部506と上下に対称に形成されている。開口部526は、開口部506と左右に対称に形成されている。開口部536は、開口部506と上下と左右に対称に形成されている。
【0045】
図20は、図19の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
図20では、開口部502と開口部516との両方を電子ビーム200が通過した部分540を示している。同様に、開口部504と開口部508との両方を電子ビーム200が通過した部分542を示している。そして、図20では、間隔Lと同方向に寸法xだけ、間隔L’と同方向に寸法x’だけ第1の成形アパーチャ部材203と第2の成形アパーチャ部材206を相対的にずらしてビーム形状とサイズを決めている。そして、図20に示すように、部分540の形状にパターンが成形される。同様に、部分542の形状にパターンが成形される。ここで、2つのパターン間の寸法は、間隔Lと同方向にL01となり、間隔L’と同方向にL02となる。そして、このパターン寸法L01の誤差は、成形偏向誤差=√(<δx>)で示すことができる。同様に、このパターン寸法L02の誤差は、成形偏向誤差=√(<δx’>)で示すことができる。このように、寸法精度は、成形偏向誤差のみで決まり、従来の可変成形ビームで生じる位置誤差の寸法誤差への影響を排除することができる。すなわち、3つの誤差要因を1つに減らすことができる。そのため、例えばすべての誤差要因が同じ程度なら1/(√3)に低減することができる。このように、2つのパターンによって形成される直線で直交するコーナ部を持つ非照射部(2つのパターン間部分)の寸法精度を向上することができる。さらに、2回に分けてコーナ部を持つ非照射部を形成しなくても高精度なコーナ部を持つ非照射部を形成することができるため、この非照射部でのショット数を低減させることができ、その結果、スループットの向上につながる。
【0046】
以上のように、電子ビーム200が遮断された部分に形成される寸法L01と寸法L02の途中で直角に方向を変えるL字状のパターンを形成する場合にも高精度な寸法に描画することができる。
【0047】
図21は、実施の形態2における他の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
図21では、図19(b)の開口部506,516,526,536の開口サイズを外側に大きくした開口部を配置した場合を示している。ここでは、図19(b)の開口部516の代わりとなる開口部517を示している。開口サイズを大きくしているため、第1の成形アパーチャ部材203と第2の成形アパーチャ部材206との相対位置関係によっては、図21に示すように、開口部502が開口部517の中に含まれてしまう場合も存在し得る。かかる場合、開口部502と開口部517との両方を電子ビーム200が通過した部分541は、開口部502と同様の形状となる。また、図21では、開口部504と開口部508との両方を電子ビーム200が通過した部分543を示している。このような場合でも部分541の形状のパターンと部分543の形状のパターンによる2つのパターン間の寸法は、間隔Lと同方向にL01となり、間隔L’と同方向にL02となる。そして、このパターン寸法L01の誤差は、成形偏向誤差=√(<δx>)で示すことができる。同様に、このパターン寸法L02の誤差は、成形偏向誤差=√(<δx’>)で示すことができる。このように、一方の成形アパーチャ部材の開口部が他方の成形アパーチャ部材の開口部の中に含まれてしまう場合でも同様に高精度な寸法を達成することができる。
【0048】
ここで、上述した例では、角部が直線と直線で交わる、すなわち、点を交わるように途中で向きを変えて延びる形状に形成された開口部について説明したが、これに限るものではない。なめらかな曲線で向きを変えて延びる形状に形成されても構わない。同様に、組となる正方形或いは長方形であった開口部についても角部がなめらかな曲線に形成されていても構わない。
【0049】
図22は、実施の形態2における成形アパーチャ部材に形成された開口部の他の一例を示す図である。
図22(a)では、第1の成形アパーチャ部材203に形成された開口部の一例を示している。図22(b)では、第2の成形アパーチャ部材206に形成された開口部の一例を示している。図22(a)に示すように、第1の成形アパーチャ部材203には、複数の開口部602,604,612,614,622,624,632,634が形成されている。ここでは、開口部602,604が1つの組、開口部612,614が1つの組、開口部622,624が1つの組、そして、開口部632,634が1つの組を構成する。そして、開口部602,604のうち、一方の開口部604は少なくとも1つの角部がなめらかな曲線に形成された正方形或いは長方形に形成されている。他方の開口部602は、途中でなめらかな曲線で向きを変えて延びる形状に形成されている。ここでは、開口部602が、途中でなめらかな曲線で直角に向きを変えて延びる形状、所謂、曲がり部分が曲線のL字形状に形成されている。そして、開口部602は、開口部604の1辺とLだけ離れて対向する位置に平行する第1の辺をもち、開口部604の他の1辺とL’だけ離れて対向する位置に平行する第2の辺をもつように形成される。そして、第1と第2の辺は、なめらかな曲線でつながるように形成されている。すなわち、開口部間になめらかな曲線でつながる向きが異なる間隔Lと間隔L’の電子ビーム200を遮断する領域を設けて形成されている。そして、開口部612,614の組は、開口部602,604の組と上下に対称に形成されている。開口部622,624の組は、開口部602,604の組と左右に対称に形成されている。開口部632,634の組は、開口部602,604の組と上下と左右の両方に対称に形成されている。また、図22(b)に示すように、第2の成形アパーチャ部材206には、複数の開口部606,616,626,636,608が形成されている。中央の開口部608は角部がなめらかな曲線に形成された正方形或いは長方形に形成されている。その他の複数の開口部606,616,626,636は、中央の開口部608を取り囲むように配置されている。開口部606,616,626,636は、途中でなめらかな曲線により直角に向きを変えて延びる形状、所謂、曲がり部分が曲線のL字形状に形成されている。そして、開口部606は、開口部608の1辺とL”だけ離れて対向する位置に平行する第1の辺をもち、開口部608の他の1辺とL’だけ離れて対向する位置に平行する第2の辺をもつように形成される。すなわち、開口部間に曲がり部分が曲線の向きが異なる間隔Lと間隔L’’’の電子ビーム200を遮断する領域を設けて形成されている。そして、第1と第2の辺は、なめらかな曲線により直角につながるように形成されている。開口部616は、開口部606と上下に対称に形成されている。開口部626は、開口部606と左右に対称に形成されている。開口部636は、開口部606と上下と左右に対称に形成されている。
【0050】
図23は、図22の成形アパーチャ部材で成形されるパターンの一例を示す図である。
図23では、開口部602と開口部616との両方を電子ビーム200が通過した部分640を示している。同様に、開口部604と開口部608との両方を電子ビーム200が通過した部分642を示している。そして、図23では、間隔Lと同方向に寸法xだけ、間隔L’と同方向に寸法x’だけ第1の成形アパーチャ部材203と第2の成形アパーチャ部材206を相対的にずらしてビーム形状とサイズを決めている。そして、図23に示すように、部分640の形状にパターンが成形される。同様に、部分642の形状にパターンが成形される。ここで、2つのパターン間の寸法は、間隔Lと同方向にL01となり、間隔L’と同方向にL02となる。そして、このパターン寸法L01の誤差は、成形偏向誤差=√(<δx>)で示すことができる。同様に、このパターン寸法L02の誤差は、成形偏向誤差=√(<δx’>)で示すことができる。このように、寸法精度は、成形偏向誤差のみで決まり、従来の可変成形ビームで生じる位置誤差の寸法誤差への影響を排除することができる。すなわち、3つの誤差要因を1つに減らすことができる。そのため、例えばすべての誤差要因が同じ程度なら1/(√3)に低減することができる。このように、2つのパターンによって形成されるなめらかな曲線によるコーナ部を持つ非照射部(2つのパターン間部分)の寸法精度を向上することができる。さらに、2回に分けてコーナ部を持つ非照射部を形成しなくても高精度なコーナ部を持つ非照射部を形成することができるため、この非照射部でのショット数を低減させることができ、その結果、スループットの向上につながる。
【0051】
以上のように、電子ビーム200が遮断された部分に形成される寸法L01と寸法L02の途中でなめらかな曲線により直角に方向を変えるL字状のパターンを形成する場合にも高精度な寸法に描画することができる。
【0052】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0053】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0054】
さらに、上記では、ポジレジストがネガレジストよりも性能が良いとの現状を基本として、ポジレジストの使用を前提に本方法を説明したが、逆に、将来、ポジレジストよりも性能の良いネガレジストが開発された場合にも、本方法を利用することが可能である。上記では、ポジレジスト使用を前提に、現像後に残るレジストの寸法精度を向上させる例について説明したが、ネガレジストを利用する場合には、“現像後にレジストが除去される部分”の寸法精度を向上させることに利用できる。この理由を以下、簡単に説明する。上述のポジレジストの例では、例えば、図10(b)、11(b)でハッチした部分に電子線が照射されて、現像時には、レジストが除去されるとしたが、ネガレジストではこのハッチした部分に電子線が照射されて、現像後にレジストが残り、照射されない部分が現像後除去されると読み替えれば良いだけだからである。図10(a)、図11(a)が従来例に相当しており、レジスト除去部の両端にそれぞれ従来の可変成形ビームをあてるため、ビームの位置誤差が、レジスト除去部の寸法精度劣化要因として加わるが、本発明方式を適用して、図10(b)、図11(b)のようにレジスト除去部の両側を1セットのビームで形成すれば、ビームの位置誤差がその寸法の精度劣化要因として加わることがない。このため、ネガレジスト使用時に、レジスト除去部の寸法精度を従来方法にくらべて向上することが可能となる。
【0055】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての第1と第2の成形アパーチャの形状、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
100 描画装置
101,340 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
150 描画部
160 制御部
200,350 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203,410 第1の成形アパーチャ部材
206,420 第2の成形アパーチャ部材
204 投影レンズ
205 成形偏向器
207 対物レンズ
208 位置偏向器
222 投影レンズ
230,260,238,239,269 領域
231,232,233,234,235,236,237 開口部
261,262,263,264,265,266,267 開口部
502,504,512,514,522,524,532,534 開口部
506,516,526,536,508 開口部
602,604,612,614,622,624,632,634 開口部
606,616,626,636,608 開口部
241,242,243,244,245,246,247 部分
540,541,542,543,640,642 部分
251,252,253,254,255,256 パターン
281,282,284,285,286,287,337,338 パターン
334,335,336,341,342,343,344,345,346 パターン
351,352,354,355,393,394 パターン
395,396,397,398 パターン
291,292,293,294,295,296,297,298 補助パターン
330 電子線
331 通過像
333 像
360 基板
361 ポジ型レジスト
362 ネガ型レジスト
411 開口
421 可変成形開口
430 荷電粒子ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを照射する照射部と、
前記荷電粒子ビームを遮断する領域の両側に透過する領域を有する第1の成形アパーチャ部材と、
前記第1の成形アパーチャ部材を透過した前記荷電粒子ビームを偏向する偏向部と、
偏向された前記荷電粒子ビームを遮断する領域の両側に透過する領域を有する第2の成形アパーチャ部材と、
前記第2の成形アパーチャ部材を透過した前記荷電粒子ビームが照射される試料を載置するステージと、
を備え
前記第2の成形アパーチャ部材を透過した前記荷電粒子ビームが照射されることによって試料上に所定の間隔を空けて並ぶ第1と第2のパターンが同時に描画され、
第1の成形アパーチャ部材と第2の成形アパーチャ部材とを相対的にずらす前記荷電粒子ビームを偏向する際の偏向量によって、前記第1と第2のパターン間の距離が可変に決定されることを特徴する荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記透過する領域は、一部がつながっていることを特徴する請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記第1と第2の成形アパーチャ部材のうち少なくとも1つに、曲線を用いた開口部が形成されていることを特徴する請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
荷電粒子ビームを遮断する領域の両側に透過する開口部が形成された第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて、所定の間隔を空けて並ぶ第1と第2のパターンを同時に描画し、
前記第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて、前記第2のパターンの両サイドのうち前記第1のパターンとは反対側のサイドで前記第2のパターンにつなぎ合わさる第3のパターンを描画し、
第1の成形アパーチャ部材と第2の成形アパーチャ部材とを相対的にずらす前記荷電粒子ビームを偏向する際の偏向量によって、前記第1と第2のパターン間の距離が可変に決定されることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームを遮断する領域の両側に透過する開口部が形成された第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて、第1の間隔を空けて並ぶ第1の対パターンを同時に描画し、
前記第1と第2の成形アパーチャ部材を用いて、前記第1の対パターンにつなぎ合わせた第2の間隔を空けて並ぶ第2の対パターンを描画し、
第1の成形アパーチャ部材と第2の成形アパーチャ部材とを相対的にずらす前記荷電粒子ビームを偏向する際の偏向量によって、前記第1の対パターン間の第1の間隔が可変に決定されることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−212950(P2012−212950A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178867(P2012−178867)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2008−35473(P2008−35473)の分割
【原出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】