荷電粒子ビーム用軌道補正器、及び荷電粒子ビーム装置
【課題】低コストで高精度かつ高分解能の荷電粒子ビーム用収束光学系を提供する。
【解決手段】ビーム軌道を輪帯状に制限し、電磁界をそのビーム軌道軸の中心方向に集中させる分布を作る。その結果、電子レンズの球面収差に代表される外側で大きな非線形の作用を打ち消す。具体的には、軸上に電極を置き電圧を印加すれば、容易に電界集中が発生する。また、磁界の場合は、回転方向に角度等分割した面に径方向に分布巻きしたコイルを形成すれば、磁束密度の集中を制御することができる。
【解決手段】ビーム軌道を輪帯状に制限し、電磁界をそのビーム軌道軸の中心方向に集中させる分布を作る。その結果、電子レンズの球面収差に代表される外側で大きな非線形の作用を打ち消す。具体的には、軸上に電極を置き電圧を印加すれば、容易に電界集中が発生する。また、磁界の場合は、回転方向に角度等分割した面に径方向に分布巻きしたコイルを形成すれば、磁束密度の集中を制御することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム光学系における軌道補正装置、及びそれを備えた電子顕微鏡等の荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子を収束させて走査し、試料面からの信号電子を検出して画像表示装置に可視化する走査型電子顕微鏡(SEMと略記)、試料を透過した発散電子を電子レンズで結像する透過型電子顕微鏡、電子ビームを試料面上に成形照射してパターン形成する電子ビーム露光機、集束イオンビームを照射して試料を加工する集束イオンビーム装置などの荷電粒子ビーム装置は、広範なナノテクノロジー分野で重要な役割を果たしている。これらの荷電粒子ビームの収束には、制御性や加工性の良さから、回転対称な電極又は磁極で構成された電子レンズが用いられる。
【0003】
このような電子レンズ系で問題となるのが、電子光学的な収差である。例えば回転対称な磁界型レンズは、磁極に近い軸外側で磁場強度を増して収束作用が大きくなり、凸レンズとして機能する。更にその高次の摂動成分である収差により、ある点から発した荷電粒子ビームがレンズへの入射条件に依存して分散し、一点に収束しない現象が発生する。そのため、理想的な点光源であっても、その放射角分布や中心軌道軸に依存して、結像点に有限の広がり、いわゆるビームぼけを発生してしまう。このように収差は、収束荷電粒子ビームによる試料観察での分解能劣化や、微細加工での重大な精度劣化要因となる。
【0004】
摂動収差論によれば、軸上におけるビーム軌道ずれ量δは、その入射角αの3乗に比例する球面収差と加速エネルギーVに対する偏差dVに比例する色収差が発生し、
δ=Csα3+CcdV/V+・・・ (1)
と表せることが知られている。ここでCsは球面収差係数、Ccは色収差係数と呼ばれる。その他の寄与は軸外で発生する。ここでαに依存したビーム電流分布やエネルギー分散が発生すると、上式に従いビームぼけが発生する。一般に荷電粒子ビーム装置では、その信号量や加工速度を上げるためには大電流が必要であり、光源より発した荷電粒子ビームを広く取り込む必要がある。その結果、収束レンズ内の軌道分布が広がり、収差量の増加とトレードオフの条件となり、原理的な性能を規定する。
【0005】
この収差を補正する方法として、規則的に分割された多極子を多数段配置して、その発散と収束を制御する収差補正方法(例えば、非特許文献1参照)、微小なレンズアレイを配列して荷電粒子ビームを分離して軌道補正するマルチビーム方式(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。また、大電流でのある程度の収差の抑止と、特にビーム内のクーロン斥力や散乱による空間電荷効果の低減を目的に、輪帯状の制限絞りを軸上に置く方法がある(例えば、特許文献2参照)。荷電粒子ビームの輝度を上げると、軸上すなわち電流密度の高い最大輝度軸の電子は空間電荷への寄与も大きくなる。そのため軸上を中心に円形に荷電粒子ビームを取り込むのではなく、軸対称なドーナッツ状の絞りで電子源の輝度を上げ、実効的にビーム取り込み面積を増大させる考え方である。また軸上に電極を置いたアニュラーレンズによる方法(例えば、特許文献3参照)も特殊な電子光学系で検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−80155号公報
【特許文献2】特開2000−12454号公報
【特許文献3】米国特許第3,100,260号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Rose Nucl. Instrum. Meth. A 519,12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多極子補正系やレンズアレイ系は極めて高精度の機械加工、配置、電源、調整法が必要となり、技術的な困難さやコスト的な課題が大きく、まだ一部の電子顕微鏡や試作段階での電子ビーム露光機に適用されているのみである。また、輪帯照明方法でも一定量の収差を軽減し、電流増加も期待できるが、収差によって制限された軸外軌道を取り込むため、特に空間電荷効果の支配的でない領域ではあまり取得電流量を増加できない課題があった。更にアニュラーレンズ方式は、単純である程度の軌道補正は可能であるが、軸上で非常に電界が強くなる。そのため高次の収差影響が大きくなる欠点があった。このように荷電粒子ビームの収束には、収差量の低減が重要であり、古くからの課題であった。
【0009】
本発明は、回転対称系における従来の収差補正システムの問題を解決し、低コストで高精度かつ高分解能の荷電粒子ビーム用収束光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来のアニュラーレンズの問題を解決するものである。光学の分野では収差補正を行うために、正と負(凸と凹)のレンズを組み合わせて色収差や球面収差の補正を行う。すなわち正負レンズにより、その総合の収差係数を打ち消す考え方である。一方、荷電粒子ビーム光学系では前述の通り、通常の回転対称系では凸レンズしか出来ず、収差係数も有限量となるとされている。
【0011】
これらの帰結に対して、軸上に荷電粒子ビームと同符号の電位の電極を配置した場合には、発散作用となり負レンズ作用を形成することができることがわかる。すなわち、ビーム軌道軸の中心方向に集中させる電磁界分布を作り、更にビームを有限の断面形状に成形して適切な軌道をとれば、電子レンズの球面収差に代表される外側で大きな非線形の収束作用を、打ち消すことができる可能性がある。
【0012】
具体的に電界の場合には、軸上に微小な針状あるいは点状の電極を置いて電圧を印加すれば、電界集中が可能である。また磁界の場合には、中心軸に近接して径方向に分布巻きしたトロイダル状コイルを形成すれば、コイル間の角度の開きとコイル巻線分布で中心軸側に磁束密度を集中させることができる。これらの作用を利用して収差を打ち消し、透過し得るビームの放射角範囲を実質的に増加させて、所望の大電流を得ることができる。
【0013】
これらの補正概念を図1、図2に示す。図1(a)は従来型の荷電粒子ビーム用レンズの概念図であり、図1(b)、(c)はそれぞれ軸上に電極を配置し、荷電粒子ビームと同符号及び異符号の電圧を印加した場合の基本軌道を示す概念図である。図1(b)、(c)から、荷電粒子ビームに対して、電極電位の符号やコイルの極性で正負のレンズとして作用することが分かる。図1の基本軌道を組み合わせて、軸上から発した荷電粒子ビームが、再度軸上に収束する補正軌道を図2に示す。ここで、図2(a)は従来型レンズと負の軸上型レンズ、図2(b)は正負軸上型レンズの組み合わせ例である。どちらも軸上の1点に軌道収束が可能であることが分かる。また各レンズの並びは任意であり、反転させる場合は軌道も反転させればよい。
【0014】
図1に示した従来型(図1(a))の基本軌道は軸外、軸上型レンズ(図1(b)、(c))の基本軌道は近軸側ほど電気力線が集中しビーム偏向角が大きくなることが期待される。これらの基本軌道の検証のため、図3及び図4に、電界型の補正器で電子ビーム軌道を計算した結果を示す。この電界型補正器は、図3に示すように、電界集中のための軸上電極2と、電場を成形するための軸外電極3からなる。軸上電極2は直径0.1mm、長さ2mmの円柱形である。軸外電極3は、中心に直径1.0mmの円形開口を有する厚さ1.5mmの環状電極である。軸上電極2は、軸外電極3の中心軸上(回転対称軸4上)に配置されている。図3中に、軸外電極3に電圧Vout=10Vを印加し、電子を回転対称軸4に平行に加速電圧Vo=5000Vで入射させた場合の複数の電子軌道を示す。予想通り、近軸側ほど屈曲率(偏向感度)が大きいことが分かる。
【0015】
図4は、図3の配置で中心軸からの距離rをパラメータに、回転対称軸4に垂直な試料面5における電子ビーム1の変位量Δrを計算した結果を示す図である。ここで、図4(a)は比較のための従来型の中心の軸上電極2がない条件、図4(b)は軸上電極2を設けて負の電圧を印加した条件、更に図4(c)は軸上電極2に正の電圧を印加した条件で計算した結果を示している。図4(a)から、従来型レンズは、中心軸から離れるほど電子ビームが強く偏向されている。一方、図4(b)、(c)から、軸上電極2を設けた場合には、中心軸に近いほど、電界集中により電子ビーム1が強く偏向されていることがわかる。また各軌道を比較すると、従来型に比べて軸上レンズ型は桁違いに高感度に、印加電圧の極性により発散、あるいは収束形軌道(凹レンズまたは凸レンズ)を形成できることが分かる。すなわち、図3に示す電界型補正器は、図1で予測した通り、発散条件や収束条件でも近軸側の偏向作用が大きい傾向があることが分かる。
【0016】
図5は、更に電極の形状を調整して、やはり平行入射ビームの軌道を比較した例を示している。すなわち、図5(a)は軸外電極が円筒形の例であり、図5(b)は円筒形軸外電極の下端を開いて円錐形とした例である。いずれの場合も、軸上電極は長さが60mmで接地電位、軸外電極は長さが40mmでVb=500Vを印加し、入射電子を回転対称軸4に平行に加速電圧Vo=10kVで入射させた場合の計算例である。結果的には、軸外電極を円錐形にすると収束点が円筒形の場合より下がるが、試料面での偏向位置には大きな変化が無いことがわかる。この結果から、レンズ作用は電界集中の起こる軸上電極の形状と、ビーム軌道間の距離に敏感であるといえる。したがって高感度レンズ作用を期待する場合は針状電極を、不要な感度を押さえたい場合は電極径を太くした円柱状電極を、あるいは点状電極を軸上に置けばよいことがわかる。
【0017】
しかしながら、針状電極あるいは棒状電極では、図4に示すとおり、軸上近傍から非常に強い電界が発生し、ビーム入射開き角に依存して高次の収差が発生する可能性が高くなる。一方、点状電極は電界集中も増加するが、入射可能なビーム軌道の限定や支持体を接地してシールドしたり、複数の点状電極を導入することで緩和が可能である。更に、具体的な補正器の構成では、輪帯状に開口を設けて、図4に示された偏向作用分布の適正な範囲にビームを入射させ制御するのがよい。
【0018】
このような本発明による補正器を単体又は組合わせることで、電子光学収差の打ち消しや、更に試料面から引き出される電子の収束や発散を助長して検出器への入射条件の調整や信号分離に応用することが可能となる。
【0019】
近年はMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)のように加工技術が進歩し、微細な電子源や電子レンズの加工が可能となっている。電子光学的な相似則によれば、電界型は、電圧及び電極を同一スケールで縮小すれば同じビーム軌道が得られることが知られている。従ってこれらの微細加工技術を使って数10μm程度の電極を作製できれば、従来の制限絞りを本発明の補正器で置き換えるだけで、低い電圧電源でビーム軌道の制御が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上の結果、本発明によれば、電源を含め極めてコンパクトかつ低コストに、汎用性が高い収差補正法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電極配置とレンズ作用の関係を示す概念図。
【図2】組合わせ電極による軌道補正の概念図。
【図3】原理検証計算の電極配置図。
【図4】軌道ずれの計算結果を示す図。
【図5】軸外電極形状と軌道変化の関係を示す図。
【図6】針状の軸上電極を有する電界型補正器の例を示す図。
【図7】点状の軸上電極を有する電界型補正器の例を示す図。
【図8】磁界型補正器の例を示す模式図。
【図9】収束条件による球面収差補正例を示す図。
【図10】発散条件による色及び球面収差補正例を示す図。
【図11】軸外補正系への適用例を示す図。
【図12】走査型電子顕微鏡への適用例を示す図。
【図13】透過型電子顕微鏡への適用例を示す図。
【図14】マルチビーム光学系への適用例を示す図。
【図15】軸ずれ補正法の説明図。
【図16】8極子による補正例を示す図。
【図17】分布型コイルによる軌道補正法の説明図。
【図18】変形端面を有する超伝導コイルの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。以下では荷電粒子が電子の場合について説明するが、本発明の補正器は荷電粒子がイオンの場合にも適用できる。
【0023】
図6及び図7に、針状及び点状電極タイプで軸上電極を構成した電界型補正器の例を示す。
【0024】
図6は針状の軸上電極を有する電界型補正器の従来例を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)はそのBB断面図である。この例の電界型補正器では、軸上電極2は、支持体7により軸外電極3の軸中心に沿って吊られて設置されている。また、軸外電極3は支持体7によって外側から固定され、電圧Voutが印加可能となっている。荷電粒子ビームへの作用は軸上電極2と軸外電極3間の電気力線によるため、軸上電極2は接地電位として、軸外電極3に電圧Voutを印加すればよい。軸上電極2と軸外電極3を固定する支持体7は、帯電を防止するため電気的導体となっている。支持体7は、中央に軸上電極2の一端を固定する軸上電極固定部51を有する上部部分52と、上部部分52の外縁部から軸上電極2を包囲するように延びる側方の円筒部分53から構成されている。上部部分52の軸上電極固定部51の周囲には輪帯開口6が形成され、軸上電極固定部51は輪帯開口6を横切る細い梁54によって支持体7本体に固定されている。軸外電極3は、絶縁部8を介して支持体7の円筒部分53に固定されている。
【0025】
図7は点状の軸上電極を有する電界型補正器の本発明実施例を示す。図7(a)は平面図、図7(b)はそのBB断面図である。この例の電界型補正器は、点状の軸上電極2とその周囲を包囲する円筒状の軸外電極3を有する。軸外電極3の内面は、荷電粒子ビームの上流側から下流側に向かって径が大きくなる円錐面の一部をなしている。この円錐面の角度を変化させても図5に示した通り、収束作用を変化させることができる。軸上電極2と軸外電極3を固定する支持体7は、先端に軸上電極2を保持している支柱55と、支柱55の後端を軸外電極3の上流側の端部に固定する複数の細い梁56とから構成されている。その結果、軸上電極2が保持されている支柱55の周囲には輪帯開口6が形成される。軸上電極2に給電する給電線57は、支持体7の梁56及び支柱55内を通して軸上電極2に接続されている。軸上電極2と支持体7及び軸外電極3とは絶縁部8によって電気的に絶縁されている。支持体7は、帯電を防止するため電気的導体となっている。支柱55の先端にある点状の軸上電極2に電界を集中させるため、支持体7及び軸外電極3を接地電位として、軸上電極2に電圧Vinを印加する。
【0026】
実際に針状か点状軸上電極を使い分けたい場合は、図6の軸外電極と図7の軸上電極を組み合わせてVinを接地電位とし、Voutを作用させることでどちらかの選択が可能である。ここで輪帯状開口6は電界型補正器に入射するビームを、所望の補正範囲に制限する。また図6、図7の構成は配線部の多層化等で各電極の多段化も可能である。
【0027】
図8は、磁界型補正器の例を示す模式図である。図示した磁界型補正器は、回転対称軸4に対して径方向に、コイル9をトロイダル状に巻線して構成し、電流Iで回転磁場Bを発生した例である。上部より入射した荷電粒子ビーム1に対して磁場Bは径方向にローレンツ力Fを作用し、その向きにより収束・発散作用を呈する。また内筒10及び外筒11は内部の可視化のため簡略化されて図示されているが、コイル9の支持及び図6、7と同じくビームの遮蔽のために配置される。荷電粒子ビーム1は、内筒10と外筒11の間のドーナツ状領域に入射される。コイル9は分離して表記されているが、連続巻きにすると電源の数を低減することが可能である。帯電することによって荷電粒子ビームに影響を及ぼす絶縁部やコイル配線の絶縁層表面には、必要に応じて導電膜が形成される。
【0028】
以上の構成において、電極配線や分布巻きコイルは、磁気ヘッドデバイスや半導体デバイスの配線技術を用いて、微細化が可能である。後者の場合は、微細加工技術を用いて、補正器に近接して電源回路を形成することも可能である。以下に、本発明による具体的な軌道補正例を示す。
【0029】
図9は、磁界型電子レンズに本発明の電界型補正器を適用した実施例である。電界型補正器は、軸上電極2と軸外電極3を備える図6に示した構造のものである。物点Aから発したビームは対物レンズ14により試料面5上の像点Bに収束する。ここで便宜的に軸上に近接した近軸軌道12と、遠い軸外軌道13に分別して考える。対物レンズ14だけであると、球面収差により近軸軌道12に比べ軸外軌道13は強い収束作用を受け、それぞれ破線で示す通り軸上のBiとBoと交差する。そのため、試料面5では有限のビーム径となってしまう。
【0030】
図9に示す通り、対物レンズ14内を含む軌道上に電界型補正器を設置し、軸上電極2を軸外電極3に対して正電位に設定し、電界型補正器を収束条件で補助的に使うことで、各ビーム経路の収束作用を重畳してBiとBoを所望のB点に移動することが可能である。ここで、厳密には磁界レンズ作用と電界型補正器の収束作用量は、収束角αの異なる連続関数である。電界型補正器の電圧や電極形状を調整して、輪帯開口6で制限した範囲の最内外点を一致させれば、その連続関数としての特性から大幅な収差低減を期待できる。
【0031】
微細加工により補正器を微小にできれば、制限絞りを補正器で置き換えることも可能である。一般に、磁界型レンズ内に電極を配置すると、加減速により磁場作用を変調させてしまうが、小型化すれば、その影響も無視できるほどに弱めることができる。これらの条件下では、軌道の振る舞いはそれぞれの影響度を加算的に見積もることができる。
【0032】
通常の電子レンズ系では、入射する電子のエネルギー分散が色収差、すなわち収束感度の差となりビームぼけを増大する。例えば一般の電子レンズは、高エネルギーで収束角が小さく、その感度に相当する色収差係数が負値となる。一方、電界型補正器は発散・収束条件に応じて偏向方向が変化し、電界型補正器を含む系は原理的に色収差係数も正負の値をとりうる。図9の実施例でも、電界型補正器を発散レンズとして対物レンズ14の磁場に重畳して、そのエネルギー差による軌道変化を修正することができる。しかしながら、図9の例では、電界型補正器を発散条件とすると、近軸軌道12がより下側で結像し、球面収差が増加することは明らかである。一般に光学の分野では、色収差を含む収差補正では、凹凸レンズの組み合わせが必要となる。
【0033】
図10は、以上の議論から、球面収差及び色収差を同時に低減させるために、3段の組み合わせレンズ系に電界型補正器を発散条件で使用した例である。入射レンズ15は物点Aから発した電子ビームを、軸上電極2と軸外電極3を備える電界型補正器の輪帯開口6への入射角を調整する。ここでは見やすくするため、輪帯開口6にほぼ平行に入射させた場合を示す。近軸軌道12と軸外軌道13は、軸上電極2及び軸外電極3で発散方向に設定し、対物レンズ14から見ると、それぞれAiとAoから発したような軌道となる。従って、レンズ公式から対物レンズの結像側で近軸軌道12はレンズ側に、軸外軌道13はレンズから遠方に移動し、球面収差と逆傾向となり、B点に収束させることが可能である。また色収差については補正器の発散作用と、対物レンズ14の収束作用を利用して打ち消すことができる。ここで図2に示した通り、入射レンズ15や対物レンズ14含めて複数段の補正器で置き換えて並べ、軌道補正することも可能である。
【0034】
図11は、本発明の電界型補正器を偏向収差補正系と組み合わせた電子顕微鏡の例を示す概略図である。偏向収差を補正する方法として、レンズ磁界に横磁場を重畳して見かけ上、レンズ軸を偏向位置に合わせるMOL(Moving Objective Lens)方式が知られている(J. Vac. Sci. Technol. B20(6) Nov./Dec. 2002)。図11では、物点A点から発したビーム1を輪帯状に制限して、入射レンズ15に入射させる。入射ビーム1は軸上電極2と軸外電極3の電場によってそのエネルギーに応じて、高エネルギー近軸軌道19と低エネルギー近軸軌道20に分離する。
【0035】
図11の例では図10と異なり、軌道は投射レンズ16の前段で交差させている。この状態で、投射レンズ16で、高エネルギー近軸軌道19を低エネルギー近軸軌道20に対して内側にして回転対称軸4にほぼ平行とすれば、対物レンズ14の物点もほぼ無限遠となり、試料面5で一点に収束して色収差が補正される。ここで対物レンズ14により、近軸軌道は試料面5に傾斜角θを持って入射する。傾斜角θを軸上電極2又は軸外電極3で制御して、対物レンズ14の球面収差が打ち消されB点に収束するように調整して、総合の軸上収差を最小にする。
【0036】
図11において、2段の偏向器17で偏向されたビームは、対物レンズ14に垂直入射させ、更に横磁場補正器18で対物レンズ14の軸外の横磁場成分を打ち消して軸外収差、すなわち偏向収差を補正する。この場合に、偏向色収差は投射レンズ16で平行ビームとすることで、高エネルギー偏向軌道21と低エネルギー偏向軌道22は、試料面5のB’点に収束させることができる。
【0037】
本発明の補正器は、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡における従来の収差補正器や制限絞りとの置き換えが、そのままの考え方で可能であり、汎用性は極めて高い。また構造が単純で微細化しやすい特徴から、近年注目されているマルチビームシステム等への搭載も容易である。
【0038】
図12は、本発明の補正器を組み込んだ走査型電子顕微鏡(SEM)の例を示す概略図である。電子源23から発した電子ビーム1は、入射レンズ15により軌道が形成されて、軸上電極2と軸外電極3を備える電界型補正器に入射し、投射レンズ16で対物レンズ物点に結像する。更に対物レンズ14は電子ビーム1を試料面5に結像し、走査偏向器17で試料面5上を2次元に走査する。試料から放出された二次電子等の信号電子31を検出器32で捕獲して、走査像情報を得る。
【0039】
ここで、電界型補正器の軸上電極2や軸外電極3は図4に示したとおり、偏向感度も高く、ビーム1に近いためコンタミネーション等の帯電影響を受けやすい。図12に示した電界型補正器の構成は図10と同じであるが、安定化のためコンタミネーションや外乱影響への対策法が示されている。すなわち、補正器あるいはその周辺にシールド体25を置く。シールド体25を磁性体で構成すれば外部電磁場の影響を阻止することができ、冷却装置26によって冷却してコールドトラップとして作用させればコンタミネーションの低減に有効である。電子ビーム装置で発生するコンタミネーションは、真空度に加えて補正電極部への散乱電子を含む入射電子数にも比例する。そのため図12の例では、補正器の上部に更に輪帯開口6を設け、散乱する電子をシールド体25あるいは支持体で阻止する制限絞り24により輪帯開口6と2重絞り構造を有している。また、駆動回路27により補正器又はシールド体25に負のオフセット電圧を印加することで、電子の流入を抑えることもできる。更に、電界型補正器が発生する外部への漏れ電界を導電性のシールド体25で低減し、不要な非点等の発生を抑えることができる。
【0040】
高速に撮像が必要なSEM式半導体ウエハ検査装置では、ウエハ表面の高さや帯電情報を高さセンサー29や表面電位計30で計測し、自動で対物レンズ14の励磁電流を補正している。図12に示したSEMでは、得られたこれらの各ウエハ情報から、補正演算回路28で適正な補正値を駆動回路27の出力に加算している。すなわち高感度で高速動作が可能な軸上電極2あるいは軸外電極3に補正電圧を加えて、より高速化を可能としている。例えば、ウエハの表面高さが高い場合には軸外電極3の印加電圧を負側に補正して焦点位置を上げ、ウエハが正に帯電し発散作用がある場合は、軸外電極3の印加電圧を負側に補正してやはり焦点位置を上げる。
【0041】
図13は、本発明の補正器を組み込んだ透過型電子顕微鏡の例を示す模式図である。電子源23から放射され、入射レンズ15により試料5に照射された電子は、試料内物質との相互作用により軌道やエネルギーロスを受け、対物レンズ14により収束され、軸上電極2と軸外電極3を備える電界型補正器に入射する。ここで所望の散乱情報を有する電子は、輪帯開口6又は別途に挿入された制限絞りで選別され、拡大レンズ35で投影面36に結像される。通常の使用法では、試料5を物点とし、投影面36で鮮明な像となる必要があり、球面収差補正が重要である。従って図13に示す透過型電子顕微鏡の場合には、輪帯開口6の内側に、負電位を持たせればよく、図9の補正形態を適用できる。制限絞りと置き換えて補正器を配置する場合は、補正器を、ビーム軌道が広がり制御性のよいレンズ主面か、軸ずれによる収差が極小となるコマ無し面に置く方法が考えられる。また従来の制限絞り微動機構等もそのまま使用できる。更に色収差まで補正したい場合は、図10の例に示す通りに、補正器を一つ以上含む3段のレンズ系を配置し、対物レンズ14と中間レンズ34で軌道を調整する。
【0042】
安定化の手法として、図13に示す例では、適度な加熱によりコンタミネーションの生成を低減するためのヒータ33からなる輪帯開口6部支持体や軸上電極2あるいは軸外電極3の加熱機構を設けた。図13に示した通りのコンパクトな補正形態により加熱が容易であり、従来の多段型多極子補正系に比べて光学系全長が短縮でき、外乱の影響を受けにくい。更には周囲に磁場シールド等を設置するのも容易であり、対振動・ノイズ性も優れている。走査型透過電子顕微鏡(STEM)に対しても、図12の走査光学系をそのまま照射系として搭載すればよい。
【0043】
図14は、本発明の補正器を組み込んだマルチビーム光学系の例を示す概略図である。電子源23から発した荷電粒子ビーム1は、入射レンズ15により、多数の開口を有する制限絞り24への入射ビームが、通常は平行軌道となるように制御される。制限絞り24下のレンズアレイは、微細な軸上電極2と軸外電極3の集合体であり、ビームを収束しブランキング絞り37を透過させる。すなわち、ここで軸上電極2又は外部電極3の設定電圧を個別に変えると、レンズアレイ中の個々のレンズの収束条件が変化してブランキング絞り37の透過電流を変化させることができる。ブランキング絞り37を透過した電子のみが投射レンズ16で収束され、対物レンズ14で試料面5に結像される。ここでビーム偏向器17は、各マルチビームの配列ピッチBB′分を2次元走査しつつ、ブランキング動作を繰り返すことで、試料面5上に任意パターンで電子ビーム露光あるいは照射ができる。ここで軸上電極2又は軸外電極3の電圧は、レンズの配列位置や偏向器17の出力に応じて制御する。その結果、対物レンズ14の偏向収差補正に加えて、図10に示した通り、個別のマルチビームにおいても色収差及び球面収差補正が可能となる。
【0044】
これらの実際の応用において、軸上電極の設置誤差やビームの入射方向の補正が重要である。図15に示すとおり、電気的なアライナーコイル38や微動機構でビームの入射条件は調整が可能であるが、軸上電極2の軸外電極3に対する軸ずれは外部からの修正が困難である。そのため補正器自身に補正機能があることが望ましい。図15に示す電界型補正器は、そのために軸外電極として8極子39を用いた例である。本来の設定すべき電圧に8極子偏向電圧を加えることで、軸外電極39の対称軸を移動し、軸上電極2に一致させることができる。
【0045】
図16は、軸外電極として多極子電極39を用いた電界型補正器の上面図である。図16により、軸ずれ補正のための電圧印加法を説明する。8極子39に等方的に印加する電圧Vn(n=1,2,3,‥‥8)=Voutにより発生する円形の等電位面を破線で示す。ここでVnを調整して破線の等電位面を、X軸方向に軸ずれした軸上電極2と軸が一致する実線の円形等電位面に移動できればよい。図16の対称性から明らかなように
V1=V8=Vx,V2=V7=aVx,V3=V6=−aVx,V4=V5=−Vx (2)
となる補正電圧Vxを電圧加算すればよい。但し補正係数aは電極形状にも依存する。図16はX軸方向の軸ずれを補正する場合であるが、Y軸方向にも軸ずれがある一般の場合には、VxをVyに置き換えた(2)式の関係を90度回転して加算すればよい。また何らかの影響により発生する非点も
V1=V5=Vs,V3=V7=−Vs,V2=V6=Vt,V4=V8=−Vt (3)
と交互に反転した電圧Vs,Vtを加算すれば、補正可能である。磁場型コイルを8極子で配列して補正も可能である。その他、高次の非点も更なる多極子化で補正が可能である。
【0046】
本発明による磁界型補正器の第一の利点は、コイル巻き数やその分布によりその軸中心へ集中する磁力線分布が調整できる点である。例えば図17に示す分布巻きや、図18に示すフリンジ形状によりビーム収束方向を制御できる。図8に示したコイルの配置では、光軸から離れた外側ほど、その分割数できまる開き角により磁場が弱まるが、図17に示す分布巻きは、回転対称軸4に対して外側ほどコイル9の巻線を増して収束作用を増加させた例である。また図18は、同様に端面フリンジ形状をビーム軌道の外側ほど延長して、収束作用を増加させた例である。このように端面コイル形状、分布巻きにより高度の修正が可能である。
【0047】
図8に示したコイル9の場合には、コイルの巻き数Nが増加すると、磁場は強くなるがコイルによってビームが遮断されるためビームの透過率が低下する。そのため図18に示した例では、超伝導コイル40で電流を増加して強磁場を発生する方法を示している。超伝導コイル40は、冷却導入部41で熱交換器43によって冷却された液化ヘリウムタンク42に接続され、極低温への冷却とコイル電流励起が行われる。
【0048】
本発明による磁界型補正器の第2の特徴は、ビームの透過方向とコイル内外によりレンズ作用が収束と発散に変化することである。図18は、磁界型補正器を入射ビーム1及び試料面5からの信号電子23の収束に用いた例を示している。すなわち入射ビーム1は、トロイダル状コイル40のドーナツ中心領域を通して収束し、試料面5から種々角度で放出された信号荷電粒子31は、コイル40内を透過し、やはりその上方に収束する。その結果、より高い信号密度が得られ、上方に配置する検出器をコンパクトな検出器としても大きな信号強度を得ることができる。また信号荷電粒子をコイル40の内側を通せば、発散させることも可能で、中心に入射ビーム透過開口を設けたアニュラー型検出器の適用も可能となる。ここでトロイダル状コイル40の回転対称軸の近傍の磁場は、コイル巻き数が多い場合は中心に向かって急速に減衰し、軸近傍でのビームの収束作用も小さくなることが期待できる。
【0049】
更に本発明では磁界型補正器の第3の利点として、通常の磁界レンズでは問題となる特に低エネルギー電子での回転作用がなく、偏向器や検出器の配置等取扱いが容易となる利点がある。
【0050】
これらの実施例から、本発明により電源を含め極めてコンパクトかつ低コストに、収差補正等の汎用性が高い荷電粒子ビームの軌道補正が実現できることがわかる。
【符号の説明】
【0051】
1…ビーム、2…軸上電極、3…軸外電極、4…回転対称軸、5…試料面、6…輪帯開口、7…支持体、8…絶縁部、9…コイル、10…内筒部、11…外筒部、12…近軸軌道、13…軸外軌道、14…対物レンズ、15…入射レンズ、16…投射レンズ、17…偏向器、18…横磁場補正器、19…高エネルギー近軸軌道、20…低エネルギー近軸軌道、21…高エネルギー偏向軌道、22…低エネルギー偏向軌道、23…電子源、24…制限絞り、25…シールド体、26…冷却装置、27…駆動回路、28…補正演算回路、29…高さセンサー、30…表面電位計、31…信号電子、32…検出器、33…ヒータ、34…中間レンズ、35…拡大レンズ、36…投影面、37…ブランキング絞り、38…アライナー、39…多極子、40…超伝導コイル、41…冷却導入部、42…液化ヘリウム容器、43…熱交換器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム光学系における軌道補正装置、及びそれを備えた電子顕微鏡等の荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子を収束させて走査し、試料面からの信号電子を検出して画像表示装置に可視化する走査型電子顕微鏡(SEMと略記)、試料を透過した発散電子を電子レンズで結像する透過型電子顕微鏡、電子ビームを試料面上に成形照射してパターン形成する電子ビーム露光機、集束イオンビームを照射して試料を加工する集束イオンビーム装置などの荷電粒子ビーム装置は、広範なナノテクノロジー分野で重要な役割を果たしている。これらの荷電粒子ビームの収束には、制御性や加工性の良さから、回転対称な電極又は磁極で構成された電子レンズが用いられる。
【0003】
このような電子レンズ系で問題となるのが、電子光学的な収差である。例えば回転対称な磁界型レンズは、磁極に近い軸外側で磁場強度を増して収束作用が大きくなり、凸レンズとして機能する。更にその高次の摂動成分である収差により、ある点から発した荷電粒子ビームがレンズへの入射条件に依存して分散し、一点に収束しない現象が発生する。そのため、理想的な点光源であっても、その放射角分布や中心軌道軸に依存して、結像点に有限の広がり、いわゆるビームぼけを発生してしまう。このように収差は、収束荷電粒子ビームによる試料観察での分解能劣化や、微細加工での重大な精度劣化要因となる。
【0004】
摂動収差論によれば、軸上におけるビーム軌道ずれ量δは、その入射角αの3乗に比例する球面収差と加速エネルギーVに対する偏差dVに比例する色収差が発生し、
δ=Csα3+CcdV/V+・・・ (1)
と表せることが知られている。ここでCsは球面収差係数、Ccは色収差係数と呼ばれる。その他の寄与は軸外で発生する。ここでαに依存したビーム電流分布やエネルギー分散が発生すると、上式に従いビームぼけが発生する。一般に荷電粒子ビーム装置では、その信号量や加工速度を上げるためには大電流が必要であり、光源より発した荷電粒子ビームを広く取り込む必要がある。その結果、収束レンズ内の軌道分布が広がり、収差量の増加とトレードオフの条件となり、原理的な性能を規定する。
【0005】
この収差を補正する方法として、規則的に分割された多極子を多数段配置して、その発散と収束を制御する収差補正方法(例えば、非特許文献1参照)、微小なレンズアレイを配列して荷電粒子ビームを分離して軌道補正するマルチビーム方式(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。また、大電流でのある程度の収差の抑止と、特にビーム内のクーロン斥力や散乱による空間電荷効果の低減を目的に、輪帯状の制限絞りを軸上に置く方法がある(例えば、特許文献2参照)。荷電粒子ビームの輝度を上げると、軸上すなわち電流密度の高い最大輝度軸の電子は空間電荷への寄与も大きくなる。そのため軸上を中心に円形に荷電粒子ビームを取り込むのではなく、軸対称なドーナッツ状の絞りで電子源の輝度を上げ、実効的にビーム取り込み面積を増大させる考え方である。また軸上に電極を置いたアニュラーレンズによる方法(例えば、特許文献3参照)も特殊な電子光学系で検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−80155号公報
【特許文献2】特開2000−12454号公報
【特許文献3】米国特許第3,100,260号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Rose Nucl. Instrum. Meth. A 519,12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多極子補正系やレンズアレイ系は極めて高精度の機械加工、配置、電源、調整法が必要となり、技術的な困難さやコスト的な課題が大きく、まだ一部の電子顕微鏡や試作段階での電子ビーム露光機に適用されているのみである。また、輪帯照明方法でも一定量の収差を軽減し、電流増加も期待できるが、収差によって制限された軸外軌道を取り込むため、特に空間電荷効果の支配的でない領域ではあまり取得電流量を増加できない課題があった。更にアニュラーレンズ方式は、単純である程度の軌道補正は可能であるが、軸上で非常に電界が強くなる。そのため高次の収差影響が大きくなる欠点があった。このように荷電粒子ビームの収束には、収差量の低減が重要であり、古くからの課題であった。
【0009】
本発明は、回転対称系における従来の収差補正システムの問題を解決し、低コストで高精度かつ高分解能の荷電粒子ビーム用収束光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来のアニュラーレンズの問題を解決するものである。光学の分野では収差補正を行うために、正と負(凸と凹)のレンズを組み合わせて色収差や球面収差の補正を行う。すなわち正負レンズにより、その総合の収差係数を打ち消す考え方である。一方、荷電粒子ビーム光学系では前述の通り、通常の回転対称系では凸レンズしか出来ず、収差係数も有限量となるとされている。
【0011】
これらの帰結に対して、軸上に荷電粒子ビームと同符号の電位の電極を配置した場合には、発散作用となり負レンズ作用を形成することができることがわかる。すなわち、ビーム軌道軸の中心方向に集中させる電磁界分布を作り、更にビームを有限の断面形状に成形して適切な軌道をとれば、電子レンズの球面収差に代表される外側で大きな非線形の収束作用を、打ち消すことができる可能性がある。
【0012】
具体的に電界の場合には、軸上に微小な針状あるいは点状の電極を置いて電圧を印加すれば、電界集中が可能である。また磁界の場合には、中心軸に近接して径方向に分布巻きしたトロイダル状コイルを形成すれば、コイル間の角度の開きとコイル巻線分布で中心軸側に磁束密度を集中させることができる。これらの作用を利用して収差を打ち消し、透過し得るビームの放射角範囲を実質的に増加させて、所望の大電流を得ることができる。
【0013】
これらの補正概念を図1、図2に示す。図1(a)は従来型の荷電粒子ビーム用レンズの概念図であり、図1(b)、(c)はそれぞれ軸上に電極を配置し、荷電粒子ビームと同符号及び異符号の電圧を印加した場合の基本軌道を示す概念図である。図1(b)、(c)から、荷電粒子ビームに対して、電極電位の符号やコイルの極性で正負のレンズとして作用することが分かる。図1の基本軌道を組み合わせて、軸上から発した荷電粒子ビームが、再度軸上に収束する補正軌道を図2に示す。ここで、図2(a)は従来型レンズと負の軸上型レンズ、図2(b)は正負軸上型レンズの組み合わせ例である。どちらも軸上の1点に軌道収束が可能であることが分かる。また各レンズの並びは任意であり、反転させる場合は軌道も反転させればよい。
【0014】
図1に示した従来型(図1(a))の基本軌道は軸外、軸上型レンズ(図1(b)、(c))の基本軌道は近軸側ほど電気力線が集中しビーム偏向角が大きくなることが期待される。これらの基本軌道の検証のため、図3及び図4に、電界型の補正器で電子ビーム軌道を計算した結果を示す。この電界型補正器は、図3に示すように、電界集中のための軸上電極2と、電場を成形するための軸外電極3からなる。軸上電極2は直径0.1mm、長さ2mmの円柱形である。軸外電極3は、中心に直径1.0mmの円形開口を有する厚さ1.5mmの環状電極である。軸上電極2は、軸外電極3の中心軸上(回転対称軸4上)に配置されている。図3中に、軸外電極3に電圧Vout=10Vを印加し、電子を回転対称軸4に平行に加速電圧Vo=5000Vで入射させた場合の複数の電子軌道を示す。予想通り、近軸側ほど屈曲率(偏向感度)が大きいことが分かる。
【0015】
図4は、図3の配置で中心軸からの距離rをパラメータに、回転対称軸4に垂直な試料面5における電子ビーム1の変位量Δrを計算した結果を示す図である。ここで、図4(a)は比較のための従来型の中心の軸上電極2がない条件、図4(b)は軸上電極2を設けて負の電圧を印加した条件、更に図4(c)は軸上電極2に正の電圧を印加した条件で計算した結果を示している。図4(a)から、従来型レンズは、中心軸から離れるほど電子ビームが強く偏向されている。一方、図4(b)、(c)から、軸上電極2を設けた場合には、中心軸に近いほど、電界集中により電子ビーム1が強く偏向されていることがわかる。また各軌道を比較すると、従来型に比べて軸上レンズ型は桁違いに高感度に、印加電圧の極性により発散、あるいは収束形軌道(凹レンズまたは凸レンズ)を形成できることが分かる。すなわち、図3に示す電界型補正器は、図1で予測した通り、発散条件や収束条件でも近軸側の偏向作用が大きい傾向があることが分かる。
【0016】
図5は、更に電極の形状を調整して、やはり平行入射ビームの軌道を比較した例を示している。すなわち、図5(a)は軸外電極が円筒形の例であり、図5(b)は円筒形軸外電極の下端を開いて円錐形とした例である。いずれの場合も、軸上電極は長さが60mmで接地電位、軸外電極は長さが40mmでVb=500Vを印加し、入射電子を回転対称軸4に平行に加速電圧Vo=10kVで入射させた場合の計算例である。結果的には、軸外電極を円錐形にすると収束点が円筒形の場合より下がるが、試料面での偏向位置には大きな変化が無いことがわかる。この結果から、レンズ作用は電界集中の起こる軸上電極の形状と、ビーム軌道間の距離に敏感であるといえる。したがって高感度レンズ作用を期待する場合は針状電極を、不要な感度を押さえたい場合は電極径を太くした円柱状電極を、あるいは点状電極を軸上に置けばよいことがわかる。
【0017】
しかしながら、針状電極あるいは棒状電極では、図4に示すとおり、軸上近傍から非常に強い電界が発生し、ビーム入射開き角に依存して高次の収差が発生する可能性が高くなる。一方、点状電極は電界集中も増加するが、入射可能なビーム軌道の限定や支持体を接地してシールドしたり、複数の点状電極を導入することで緩和が可能である。更に、具体的な補正器の構成では、輪帯状に開口を設けて、図4に示された偏向作用分布の適正な範囲にビームを入射させ制御するのがよい。
【0018】
このような本発明による補正器を単体又は組合わせることで、電子光学収差の打ち消しや、更に試料面から引き出される電子の収束や発散を助長して検出器への入射条件の調整や信号分離に応用することが可能となる。
【0019】
近年はMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)のように加工技術が進歩し、微細な電子源や電子レンズの加工が可能となっている。電子光学的な相似則によれば、電界型は、電圧及び電極を同一スケールで縮小すれば同じビーム軌道が得られることが知られている。従ってこれらの微細加工技術を使って数10μm程度の電極を作製できれば、従来の制限絞りを本発明の補正器で置き換えるだけで、低い電圧電源でビーム軌道の制御が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上の結果、本発明によれば、電源を含め極めてコンパクトかつ低コストに、汎用性が高い収差補正法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電極配置とレンズ作用の関係を示す概念図。
【図2】組合わせ電極による軌道補正の概念図。
【図3】原理検証計算の電極配置図。
【図4】軌道ずれの計算結果を示す図。
【図5】軸外電極形状と軌道変化の関係を示す図。
【図6】針状の軸上電極を有する電界型補正器の例を示す図。
【図7】点状の軸上電極を有する電界型補正器の例を示す図。
【図8】磁界型補正器の例を示す模式図。
【図9】収束条件による球面収差補正例を示す図。
【図10】発散条件による色及び球面収差補正例を示す図。
【図11】軸外補正系への適用例を示す図。
【図12】走査型電子顕微鏡への適用例を示す図。
【図13】透過型電子顕微鏡への適用例を示す図。
【図14】マルチビーム光学系への適用例を示す図。
【図15】軸ずれ補正法の説明図。
【図16】8極子による補正例を示す図。
【図17】分布型コイルによる軌道補正法の説明図。
【図18】変形端面を有する超伝導コイルの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。以下では荷電粒子が電子の場合について説明するが、本発明の補正器は荷電粒子がイオンの場合にも適用できる。
【0023】
図6及び図7に、針状及び点状電極タイプで軸上電極を構成した電界型補正器の例を示す。
【0024】
図6は針状の軸上電極を有する電界型補正器の従来例を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)はそのBB断面図である。この例の電界型補正器では、軸上電極2は、支持体7により軸外電極3の軸中心に沿って吊られて設置されている。また、軸外電極3は支持体7によって外側から固定され、電圧Voutが印加可能となっている。荷電粒子ビームへの作用は軸上電極2と軸外電極3間の電気力線によるため、軸上電極2は接地電位として、軸外電極3に電圧Voutを印加すればよい。軸上電極2と軸外電極3を固定する支持体7は、帯電を防止するため電気的導体となっている。支持体7は、中央に軸上電極2の一端を固定する軸上電極固定部51を有する上部部分52と、上部部分52の外縁部から軸上電極2を包囲するように延びる側方の円筒部分53から構成されている。上部部分52の軸上電極固定部51の周囲には輪帯開口6が形成され、軸上電極固定部51は輪帯開口6を横切る細い梁54によって支持体7本体に固定されている。軸外電極3は、絶縁部8を介して支持体7の円筒部分53に固定されている。
【0025】
図7は点状の軸上電極を有する電界型補正器の本発明実施例を示す。図7(a)は平面図、図7(b)はそのBB断面図である。この例の電界型補正器は、点状の軸上電極2とその周囲を包囲する円筒状の軸外電極3を有する。軸外電極3の内面は、荷電粒子ビームの上流側から下流側に向かって径が大きくなる円錐面の一部をなしている。この円錐面の角度を変化させても図5に示した通り、収束作用を変化させることができる。軸上電極2と軸外電極3を固定する支持体7は、先端に軸上電極2を保持している支柱55と、支柱55の後端を軸外電極3の上流側の端部に固定する複数の細い梁56とから構成されている。その結果、軸上電極2が保持されている支柱55の周囲には輪帯開口6が形成される。軸上電極2に給電する給電線57は、支持体7の梁56及び支柱55内を通して軸上電極2に接続されている。軸上電極2と支持体7及び軸外電極3とは絶縁部8によって電気的に絶縁されている。支持体7は、帯電を防止するため電気的導体となっている。支柱55の先端にある点状の軸上電極2に電界を集中させるため、支持体7及び軸外電極3を接地電位として、軸上電極2に電圧Vinを印加する。
【0026】
実際に針状か点状軸上電極を使い分けたい場合は、図6の軸外電極と図7の軸上電極を組み合わせてVinを接地電位とし、Voutを作用させることでどちらかの選択が可能である。ここで輪帯状開口6は電界型補正器に入射するビームを、所望の補正範囲に制限する。また図6、図7の構成は配線部の多層化等で各電極の多段化も可能である。
【0027】
図8は、磁界型補正器の例を示す模式図である。図示した磁界型補正器は、回転対称軸4に対して径方向に、コイル9をトロイダル状に巻線して構成し、電流Iで回転磁場Bを発生した例である。上部より入射した荷電粒子ビーム1に対して磁場Bは径方向にローレンツ力Fを作用し、その向きにより収束・発散作用を呈する。また内筒10及び外筒11は内部の可視化のため簡略化されて図示されているが、コイル9の支持及び図6、7と同じくビームの遮蔽のために配置される。荷電粒子ビーム1は、内筒10と外筒11の間のドーナツ状領域に入射される。コイル9は分離して表記されているが、連続巻きにすると電源の数を低減することが可能である。帯電することによって荷電粒子ビームに影響を及ぼす絶縁部やコイル配線の絶縁層表面には、必要に応じて導電膜が形成される。
【0028】
以上の構成において、電極配線や分布巻きコイルは、磁気ヘッドデバイスや半導体デバイスの配線技術を用いて、微細化が可能である。後者の場合は、微細加工技術を用いて、補正器に近接して電源回路を形成することも可能である。以下に、本発明による具体的な軌道補正例を示す。
【0029】
図9は、磁界型電子レンズに本発明の電界型補正器を適用した実施例である。電界型補正器は、軸上電極2と軸外電極3を備える図6に示した構造のものである。物点Aから発したビームは対物レンズ14により試料面5上の像点Bに収束する。ここで便宜的に軸上に近接した近軸軌道12と、遠い軸外軌道13に分別して考える。対物レンズ14だけであると、球面収差により近軸軌道12に比べ軸外軌道13は強い収束作用を受け、それぞれ破線で示す通り軸上のBiとBoと交差する。そのため、試料面5では有限のビーム径となってしまう。
【0030】
図9に示す通り、対物レンズ14内を含む軌道上に電界型補正器を設置し、軸上電極2を軸外電極3に対して正電位に設定し、電界型補正器を収束条件で補助的に使うことで、各ビーム経路の収束作用を重畳してBiとBoを所望のB点に移動することが可能である。ここで、厳密には磁界レンズ作用と電界型補正器の収束作用量は、収束角αの異なる連続関数である。電界型補正器の電圧や電極形状を調整して、輪帯開口6で制限した範囲の最内外点を一致させれば、その連続関数としての特性から大幅な収差低減を期待できる。
【0031】
微細加工により補正器を微小にできれば、制限絞りを補正器で置き換えることも可能である。一般に、磁界型レンズ内に電極を配置すると、加減速により磁場作用を変調させてしまうが、小型化すれば、その影響も無視できるほどに弱めることができる。これらの条件下では、軌道の振る舞いはそれぞれの影響度を加算的に見積もることができる。
【0032】
通常の電子レンズ系では、入射する電子のエネルギー分散が色収差、すなわち収束感度の差となりビームぼけを増大する。例えば一般の電子レンズは、高エネルギーで収束角が小さく、その感度に相当する色収差係数が負値となる。一方、電界型補正器は発散・収束条件に応じて偏向方向が変化し、電界型補正器を含む系は原理的に色収差係数も正負の値をとりうる。図9の実施例でも、電界型補正器を発散レンズとして対物レンズ14の磁場に重畳して、そのエネルギー差による軌道変化を修正することができる。しかしながら、図9の例では、電界型補正器を発散条件とすると、近軸軌道12がより下側で結像し、球面収差が増加することは明らかである。一般に光学の分野では、色収差を含む収差補正では、凹凸レンズの組み合わせが必要となる。
【0033】
図10は、以上の議論から、球面収差及び色収差を同時に低減させるために、3段の組み合わせレンズ系に電界型補正器を発散条件で使用した例である。入射レンズ15は物点Aから発した電子ビームを、軸上電極2と軸外電極3を備える電界型補正器の輪帯開口6への入射角を調整する。ここでは見やすくするため、輪帯開口6にほぼ平行に入射させた場合を示す。近軸軌道12と軸外軌道13は、軸上電極2及び軸外電極3で発散方向に設定し、対物レンズ14から見ると、それぞれAiとAoから発したような軌道となる。従って、レンズ公式から対物レンズの結像側で近軸軌道12はレンズ側に、軸外軌道13はレンズから遠方に移動し、球面収差と逆傾向となり、B点に収束させることが可能である。また色収差については補正器の発散作用と、対物レンズ14の収束作用を利用して打ち消すことができる。ここで図2に示した通り、入射レンズ15や対物レンズ14含めて複数段の補正器で置き換えて並べ、軌道補正することも可能である。
【0034】
図11は、本発明の電界型補正器を偏向収差補正系と組み合わせた電子顕微鏡の例を示す概略図である。偏向収差を補正する方法として、レンズ磁界に横磁場を重畳して見かけ上、レンズ軸を偏向位置に合わせるMOL(Moving Objective Lens)方式が知られている(J. Vac. Sci. Technol. B20(6) Nov./Dec. 2002)。図11では、物点A点から発したビーム1を輪帯状に制限して、入射レンズ15に入射させる。入射ビーム1は軸上電極2と軸外電極3の電場によってそのエネルギーに応じて、高エネルギー近軸軌道19と低エネルギー近軸軌道20に分離する。
【0035】
図11の例では図10と異なり、軌道は投射レンズ16の前段で交差させている。この状態で、投射レンズ16で、高エネルギー近軸軌道19を低エネルギー近軸軌道20に対して内側にして回転対称軸4にほぼ平行とすれば、対物レンズ14の物点もほぼ無限遠となり、試料面5で一点に収束して色収差が補正される。ここで対物レンズ14により、近軸軌道は試料面5に傾斜角θを持って入射する。傾斜角θを軸上電極2又は軸外電極3で制御して、対物レンズ14の球面収差が打ち消されB点に収束するように調整して、総合の軸上収差を最小にする。
【0036】
図11において、2段の偏向器17で偏向されたビームは、対物レンズ14に垂直入射させ、更に横磁場補正器18で対物レンズ14の軸外の横磁場成分を打ち消して軸外収差、すなわち偏向収差を補正する。この場合に、偏向色収差は投射レンズ16で平行ビームとすることで、高エネルギー偏向軌道21と低エネルギー偏向軌道22は、試料面5のB’点に収束させることができる。
【0037】
本発明の補正器は、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡における従来の収差補正器や制限絞りとの置き換えが、そのままの考え方で可能であり、汎用性は極めて高い。また構造が単純で微細化しやすい特徴から、近年注目されているマルチビームシステム等への搭載も容易である。
【0038】
図12は、本発明の補正器を組み込んだ走査型電子顕微鏡(SEM)の例を示す概略図である。電子源23から発した電子ビーム1は、入射レンズ15により軌道が形成されて、軸上電極2と軸外電極3を備える電界型補正器に入射し、投射レンズ16で対物レンズ物点に結像する。更に対物レンズ14は電子ビーム1を試料面5に結像し、走査偏向器17で試料面5上を2次元に走査する。試料から放出された二次電子等の信号電子31を検出器32で捕獲して、走査像情報を得る。
【0039】
ここで、電界型補正器の軸上電極2や軸外電極3は図4に示したとおり、偏向感度も高く、ビーム1に近いためコンタミネーション等の帯電影響を受けやすい。図12に示した電界型補正器の構成は図10と同じであるが、安定化のためコンタミネーションや外乱影響への対策法が示されている。すなわち、補正器あるいはその周辺にシールド体25を置く。シールド体25を磁性体で構成すれば外部電磁場の影響を阻止することができ、冷却装置26によって冷却してコールドトラップとして作用させればコンタミネーションの低減に有効である。電子ビーム装置で発生するコンタミネーションは、真空度に加えて補正電極部への散乱電子を含む入射電子数にも比例する。そのため図12の例では、補正器の上部に更に輪帯開口6を設け、散乱する電子をシールド体25あるいは支持体で阻止する制限絞り24により輪帯開口6と2重絞り構造を有している。また、駆動回路27により補正器又はシールド体25に負のオフセット電圧を印加することで、電子の流入を抑えることもできる。更に、電界型補正器が発生する外部への漏れ電界を導電性のシールド体25で低減し、不要な非点等の発生を抑えることができる。
【0040】
高速に撮像が必要なSEM式半導体ウエハ検査装置では、ウエハ表面の高さや帯電情報を高さセンサー29や表面電位計30で計測し、自動で対物レンズ14の励磁電流を補正している。図12に示したSEMでは、得られたこれらの各ウエハ情報から、補正演算回路28で適正な補正値を駆動回路27の出力に加算している。すなわち高感度で高速動作が可能な軸上電極2あるいは軸外電極3に補正電圧を加えて、より高速化を可能としている。例えば、ウエハの表面高さが高い場合には軸外電極3の印加電圧を負側に補正して焦点位置を上げ、ウエハが正に帯電し発散作用がある場合は、軸外電極3の印加電圧を負側に補正してやはり焦点位置を上げる。
【0041】
図13は、本発明の補正器を組み込んだ透過型電子顕微鏡の例を示す模式図である。電子源23から放射され、入射レンズ15により試料5に照射された電子は、試料内物質との相互作用により軌道やエネルギーロスを受け、対物レンズ14により収束され、軸上電極2と軸外電極3を備える電界型補正器に入射する。ここで所望の散乱情報を有する電子は、輪帯開口6又は別途に挿入された制限絞りで選別され、拡大レンズ35で投影面36に結像される。通常の使用法では、試料5を物点とし、投影面36で鮮明な像となる必要があり、球面収差補正が重要である。従って図13に示す透過型電子顕微鏡の場合には、輪帯開口6の内側に、負電位を持たせればよく、図9の補正形態を適用できる。制限絞りと置き換えて補正器を配置する場合は、補正器を、ビーム軌道が広がり制御性のよいレンズ主面か、軸ずれによる収差が極小となるコマ無し面に置く方法が考えられる。また従来の制限絞り微動機構等もそのまま使用できる。更に色収差まで補正したい場合は、図10の例に示す通りに、補正器を一つ以上含む3段のレンズ系を配置し、対物レンズ14と中間レンズ34で軌道を調整する。
【0042】
安定化の手法として、図13に示す例では、適度な加熱によりコンタミネーションの生成を低減するためのヒータ33からなる輪帯開口6部支持体や軸上電極2あるいは軸外電極3の加熱機構を設けた。図13に示した通りのコンパクトな補正形態により加熱が容易であり、従来の多段型多極子補正系に比べて光学系全長が短縮でき、外乱の影響を受けにくい。更には周囲に磁場シールド等を設置するのも容易であり、対振動・ノイズ性も優れている。走査型透過電子顕微鏡(STEM)に対しても、図12の走査光学系をそのまま照射系として搭載すればよい。
【0043】
図14は、本発明の補正器を組み込んだマルチビーム光学系の例を示す概略図である。電子源23から発した荷電粒子ビーム1は、入射レンズ15により、多数の開口を有する制限絞り24への入射ビームが、通常は平行軌道となるように制御される。制限絞り24下のレンズアレイは、微細な軸上電極2と軸外電極3の集合体であり、ビームを収束しブランキング絞り37を透過させる。すなわち、ここで軸上電極2又は外部電極3の設定電圧を個別に変えると、レンズアレイ中の個々のレンズの収束条件が変化してブランキング絞り37の透過電流を変化させることができる。ブランキング絞り37を透過した電子のみが投射レンズ16で収束され、対物レンズ14で試料面5に結像される。ここでビーム偏向器17は、各マルチビームの配列ピッチBB′分を2次元走査しつつ、ブランキング動作を繰り返すことで、試料面5上に任意パターンで電子ビーム露光あるいは照射ができる。ここで軸上電極2又は軸外電極3の電圧は、レンズの配列位置や偏向器17の出力に応じて制御する。その結果、対物レンズ14の偏向収差補正に加えて、図10に示した通り、個別のマルチビームにおいても色収差及び球面収差補正が可能となる。
【0044】
これらの実際の応用において、軸上電極の設置誤差やビームの入射方向の補正が重要である。図15に示すとおり、電気的なアライナーコイル38や微動機構でビームの入射条件は調整が可能であるが、軸上電極2の軸外電極3に対する軸ずれは外部からの修正が困難である。そのため補正器自身に補正機能があることが望ましい。図15に示す電界型補正器は、そのために軸外電極として8極子39を用いた例である。本来の設定すべき電圧に8極子偏向電圧を加えることで、軸外電極39の対称軸を移動し、軸上電極2に一致させることができる。
【0045】
図16は、軸外電極として多極子電極39を用いた電界型補正器の上面図である。図16により、軸ずれ補正のための電圧印加法を説明する。8極子39に等方的に印加する電圧Vn(n=1,2,3,‥‥8)=Voutにより発生する円形の等電位面を破線で示す。ここでVnを調整して破線の等電位面を、X軸方向に軸ずれした軸上電極2と軸が一致する実線の円形等電位面に移動できればよい。図16の対称性から明らかなように
V1=V8=Vx,V2=V7=aVx,V3=V6=−aVx,V4=V5=−Vx (2)
となる補正電圧Vxを電圧加算すればよい。但し補正係数aは電極形状にも依存する。図16はX軸方向の軸ずれを補正する場合であるが、Y軸方向にも軸ずれがある一般の場合には、VxをVyに置き換えた(2)式の関係を90度回転して加算すればよい。また何らかの影響により発生する非点も
V1=V5=Vs,V3=V7=−Vs,V2=V6=Vt,V4=V8=−Vt (3)
と交互に反転した電圧Vs,Vtを加算すれば、補正可能である。磁場型コイルを8極子で配列して補正も可能である。その他、高次の非点も更なる多極子化で補正が可能である。
【0046】
本発明による磁界型補正器の第一の利点は、コイル巻き数やその分布によりその軸中心へ集中する磁力線分布が調整できる点である。例えば図17に示す分布巻きや、図18に示すフリンジ形状によりビーム収束方向を制御できる。図8に示したコイルの配置では、光軸から離れた外側ほど、その分割数できまる開き角により磁場が弱まるが、図17に示す分布巻きは、回転対称軸4に対して外側ほどコイル9の巻線を増して収束作用を増加させた例である。また図18は、同様に端面フリンジ形状をビーム軌道の外側ほど延長して、収束作用を増加させた例である。このように端面コイル形状、分布巻きにより高度の修正が可能である。
【0047】
図8に示したコイル9の場合には、コイルの巻き数Nが増加すると、磁場は強くなるがコイルによってビームが遮断されるためビームの透過率が低下する。そのため図18に示した例では、超伝導コイル40で電流を増加して強磁場を発生する方法を示している。超伝導コイル40は、冷却導入部41で熱交換器43によって冷却された液化ヘリウムタンク42に接続され、極低温への冷却とコイル電流励起が行われる。
【0048】
本発明による磁界型補正器の第2の特徴は、ビームの透過方向とコイル内外によりレンズ作用が収束と発散に変化することである。図18は、磁界型補正器を入射ビーム1及び試料面5からの信号電子23の収束に用いた例を示している。すなわち入射ビーム1は、トロイダル状コイル40のドーナツ中心領域を通して収束し、試料面5から種々角度で放出された信号荷電粒子31は、コイル40内を透過し、やはりその上方に収束する。その結果、より高い信号密度が得られ、上方に配置する検出器をコンパクトな検出器としても大きな信号強度を得ることができる。また信号荷電粒子をコイル40の内側を通せば、発散させることも可能で、中心に入射ビーム透過開口を設けたアニュラー型検出器の適用も可能となる。ここでトロイダル状コイル40の回転対称軸の近傍の磁場は、コイル巻き数が多い場合は中心に向かって急速に減衰し、軸近傍でのビームの収束作用も小さくなることが期待できる。
【0049】
更に本発明では磁界型補正器の第3の利点として、通常の磁界レンズでは問題となる特に低エネルギー電子での回転作用がなく、偏向器や検出器の配置等取扱いが容易となる利点がある。
【0050】
これらの実施例から、本発明により電源を含め極めてコンパクトかつ低コストに、収差補正等の汎用性が高い荷電粒子ビームの軌道補正が実現できることがわかる。
【符号の説明】
【0051】
1…ビーム、2…軸上電極、3…軸外電極、4…回転対称軸、5…試料面、6…輪帯開口、7…支持体、8…絶縁部、9…コイル、10…内筒部、11…外筒部、12…近軸軌道、13…軸外軌道、14…対物レンズ、15…入射レンズ、16…投射レンズ、17…偏向器、18…横磁場補正器、19…高エネルギー近軸軌道、20…低エネルギー近軸軌道、21…高エネルギー偏向軌道、22…低エネルギー偏向軌道、23…電子源、24…制限絞り、25…シールド体、26…冷却装置、27…駆動回路、28…補正演算回路、29…高さセンサー、30…表面電位計、31…信号電子、32…検出器、33…ヒータ、34…中間レンズ、35…拡大レンズ、36…投影面、37…ブランキング絞り、38…アライナー、39…多極子、40…超伝導コイル、41…冷却導入部、42…液化ヘリウム容器、43…熱交換器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームの入射軸上に配置された軸上電極と、
前記軸上電極を取り囲むように配置された軸外電極と、
前記軸上電極と前記軸外電極とが固定された支持体と、
前記軸上電極に電圧を印加する給電線とを有し、
前記支持体は、前記軸上電極を絶縁して保持し前記給電線を覆うように設置された電気的導体からなる支柱と、前記支柱の周囲に前記荷電粒子ビームの入射範囲を制限する輪帯状の開口とを有し、
前記軸外電極と前記支持体は接地され、前記軸上電極に電圧が印加されることで前記軸上電極と前記軸外電極との間に発生される電界により、前記軸上電極と前記軸外電極との間を通る前記荷電粒子ビームの軌道を制御することを特徴とする荷電粒子ビーム用軌道補正器。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子ビーム用軌道補正器において、前記軸外電極は周方向に複数の部分電極に分割され、各部分電極に対して互いに独立に電圧が印加されることを特徴とする荷電粒子ビーム用軌道補正器。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電粒子ビーム用軌道補正器において、周囲に導電性のシールドが配置されていることを特徴とする荷電粒子ビーム用軌道補正器。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子ビーム用軌道補正器において、周囲に磁場シールドが配置されていることを特徴とする荷電粒子ビーム用軌道補正器。
【請求項5】
荷電粒子ビーム源と、
前記荷電粒子ビーム源から放出された荷電粒子ビームを収束させるための収束光学系とを有する荷電粒子ビーム装置において、
前記収束光学系は磁界レンズと荷電粒子ビーム用軌道補正器とを含み、
前記荷電粒子ビーム用軌道補正器は、前記収束光学系の光軸上に配置された軸上電極と、前記軸上電極を取り囲むように配置され前記軸上電極との間に前記荷電粒子ビームの通過経路を有する軸外電極と、前記軸上電極と同電位部分の一部領域を覆うように設置され、かつ前記軸上電極とは絶縁された電気的導体からなる部材とを有し、前記軸上電極と前記軸外電極の一方は接地されもう一方は電圧印加され、接地された電極と電圧印加された電極の間に電界を発生することで、前記軸上電極と前記軸外電極との間を通る荷電粒子ビームの軌道を制御することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記軸上電極は前記収束光学系の光軸上に配置された棒状電極または点状電極であることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記軸上電極と前記軸外電極とが固定される支持体を有し、前記支持体は前記電気的導体からなる部材と、前記支柱の周囲に前記荷電粒子ビームの入射範囲を制限する輪帯状の開口とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記軸外電極は周方向に複数の部分電極に分割され、各部分電極に独立に電圧が印加されることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器の周囲に導電性のシールドを配置したことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器の周囲に磁場シールドを配置したことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビームのビーム入射角分布を補正する入射レンズと、ビーム入射方向を補正するアライナーとを有することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器を、前記磁界レンズの主面あるいはコマ無し面に配置したことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、試料面の高さあるいは表面電位を測定する測定手段を有し、前記測定手段による測定値の関数として前記荷電粒子ビーム用軌道補正器の前記軸上電極あるいは軸外電極に印加する電圧を制御することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項14】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器を加熱するヒータを有することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項15】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器の近傍にコールドトラップ機構を具備したことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項1】
荷電粒子ビームの入射軸上に配置された軸上電極と、
前記軸上電極を取り囲むように配置された軸外電極と、
前記軸上電極と前記軸外電極とが固定された支持体と、
前記軸上電極に電圧を印加する給電線とを有し、
前記支持体は、前記軸上電極を絶縁して保持し前記給電線を覆うように設置された電気的導体からなる支柱と、前記支柱の周囲に前記荷電粒子ビームの入射範囲を制限する輪帯状の開口とを有し、
前記軸外電極と前記支持体は接地され、前記軸上電極に電圧が印加されることで前記軸上電極と前記軸外電極との間に発生される電界により、前記軸上電極と前記軸外電極との間を通る前記荷電粒子ビームの軌道を制御することを特徴とする荷電粒子ビーム用軌道補正器。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子ビーム用軌道補正器において、前記軸外電極は周方向に複数の部分電極に分割され、各部分電極に対して互いに独立に電圧が印加されることを特徴とする荷電粒子ビーム用軌道補正器。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電粒子ビーム用軌道補正器において、周囲に導電性のシールドが配置されていることを特徴とする荷電粒子ビーム用軌道補正器。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子ビーム用軌道補正器において、周囲に磁場シールドが配置されていることを特徴とする荷電粒子ビーム用軌道補正器。
【請求項5】
荷電粒子ビーム源と、
前記荷電粒子ビーム源から放出された荷電粒子ビームを収束させるための収束光学系とを有する荷電粒子ビーム装置において、
前記収束光学系は磁界レンズと荷電粒子ビーム用軌道補正器とを含み、
前記荷電粒子ビーム用軌道補正器は、前記収束光学系の光軸上に配置された軸上電極と、前記軸上電極を取り囲むように配置され前記軸上電極との間に前記荷電粒子ビームの通過経路を有する軸外電極と、前記軸上電極と同電位部分の一部領域を覆うように設置され、かつ前記軸上電極とは絶縁された電気的導体からなる部材とを有し、前記軸上電極と前記軸外電極の一方は接地されもう一方は電圧印加され、接地された電極と電圧印加された電極の間に電界を発生することで、前記軸上電極と前記軸外電極との間を通る荷電粒子ビームの軌道を制御することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記軸上電極は前記収束光学系の光軸上に配置された棒状電極または点状電極であることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記軸上電極と前記軸外電極とが固定される支持体を有し、前記支持体は前記電気的導体からなる部材と、前記支柱の周囲に前記荷電粒子ビームの入射範囲を制限する輪帯状の開口とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記軸外電極は周方向に複数の部分電極に分割され、各部分電極に独立に電圧が印加されることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器の周囲に導電性のシールドを配置したことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器の周囲に磁場シールドを配置したことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビームのビーム入射角分布を補正する入射レンズと、ビーム入射方向を補正するアライナーとを有することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器を、前記磁界レンズの主面あるいはコマ無し面に配置したことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、試料面の高さあるいは表面電位を測定する測定手段を有し、前記測定手段による測定値の関数として前記荷電粒子ビーム用軌道補正器の前記軸上電極あるいは軸外電極に印加する電圧を制御することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項14】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器を加熱するヒータを有することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項15】
請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム用軌道補正器の近傍にコールドトラップ機構を具備したことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−227160(P2012−227160A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161163(P2012−161163)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2007−300847(P2007−300847)の分割
【原出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2007−300847(P2007−300847)の分割
【原出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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