荷電粒子ビーム露光方法と半導体装置の製造方法
【課題】荷電粒子ビーム露光方法と半導体装置の製造方法において、近接効果を考慮して露光データを補正すること。
【解決手段】露光データDEを準備するステップS1と、露光強度分布の中心の近傍にあるデバイスパターン30の各々を積分領域にし、露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップS2と、上記積分値が基準値e0に等しくなるようにデバイスパターン30の形状を補正するステップS3と、デバイスパターン30に重心g同士が一致するようにマスクパターン14cを割り当てるステップS4と、マスクパターン14cを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、マスクパターン14cに露光量を割り当てるステップS5と、露光データDEに基づいて前記レジスト層を露光するステップS8とを有する荷電粒子ビーム露光方法による。
【解決手段】露光データDEを準備するステップS1と、露光強度分布の中心の近傍にあるデバイスパターン30の各々を積分領域にし、露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップS2と、上記積分値が基準値e0に等しくなるようにデバイスパターン30の形状を補正するステップS3と、デバイスパターン30に重心g同士が一致するようにマスクパターン14cを割り当てるステップS4と、マスクパターン14cを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、マスクパターン14cに露光量を割り当てるステップS5と、露光データDEに基づいて前記レジスト層を露光するステップS8とを有する荷電粒子ビーム露光方法による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム露光方法と半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジストを露光する露光装置としては、光露光装置と電子ビーム露光装置がある。なかでも電子ビーム露光装置は、光露光装置のようなレチクルが不要であるため、レチクルを作製するための時間とコストを削減でき、エンジニアリングサンプルのような少量生産に適している。
【0003】
その電子ビーム露光装置においては、スループットを向上させるために、高頻度で使用される複数のマスクパターンをブロックマスクに形成し、それら複数のマスクパターンを一括して露光する部分一括露光方法が採用されている。
【0004】
ところが、半導体装置の微細化によって上記のパターンが微細化されると、隣接するマスクパターンの各々に入射した電子がレジスト内で散乱し、いわゆる近接効果によって出来上がりのレジストパターンの形状が目標から外れてしまう。
【0005】
そのような近接効果を抑制する方法として、例えば、ブロックマスク内に搭載してあるマスクパターンの辺の位置を調節して、隣接するマスクパターン同士が影響しあうのを防止する方法がある。但し、この方法だと、露光対象の品種が変更された場合に、ブロックマスク内のマスクパターンをその品種に対して流用することができなくなるため、品種毎にブロックマスクが必要になってしまい、時間とコストについてのメリットを活かせなくなる。
【0006】
また、近接効果を抑制するために、ブロックパターンに搭載されたマスクパターンを予め一律に小さくしておく方法もある。しかしながら、近接効果の影響はマスク上の場所によって異なるため、全てのマスクパターンを一律に小さくしたのではマスク上の全ての場所において近接効果を抑制できないおそれがある。
【0007】
一方、近接効果が小さくて露光量が不足する部分の露光を補うために補助露光を行う方法もある。この方法では、ブロックマスク内の一つのマスクパターンを小領域に細分し、各小領域に最適な補助露光量を算出して、それぞれの小領域に補助露光を行うことになる。但し、これでは補助露光の算出に要する時間が長期に及ぶと共に、その算出のために計算機内のメモリ等の資源の多くが占有されてしまう。更に、補助露光によりショット数が増加し、電子ビーム露光装置のスループットが低下するという点でもこの方法は不利である。
【0008】
また、電子の散乱がレジストに与える影響を考慮しつつ、既存のブロックマスク内のマスクパターンの中に目標とするレジストパターンの形状に近いものがあれば、そのマスクパターンを用いて露光を行う方法もある。しかしながら、この用法では隣接するマスクパターン間の近接効果を考慮していないので、近接効果が大きい場合には出来上がりのレジストパターンの形が目標から外れてしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S. Manaki et al., "New Electron Beam Proximity Effects Correction Approach for 45 and 32 nm Nodes", Japan Journal of Applied Physics, Vol.45, 6462 (2006)
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−353101号公報
【特許文献2】特開2007−227564号公報
【特許文献3】特開2003−332225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
荷電粒子ビーム露光方法と半導体装置の製造方法において、近接効果を考慮して露光データを補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の開示の一観点によれば、複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、前記露光量を割り当てた後、前記露光データを用いて前記レジスト層を露光するステップとを有する荷電粒子ビーム露光方法が提供される。
【0013】
また、その開示の別の観点によれば、複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、前記露光量を割り当てた後、前記設計データに基づいて、半導体基板の上方に形成されたフォトレジスト層を露光するステップと、前記フォトレジスト層を現像してレジストパターンにするステップと、前記レジストパターンをマスクにしながら、該レジストパターンの下の膜をエッチングすることにより、デバイスパターンを形成するステップとを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
開示の荷電粒子ビーム露光方法によれば、デバイスパターンの形状を補正した後、そのデバイスパターンと重心が一致するようにマスクパターンを割り当てる。このように補正後のデバイスパターンにマスクパターンを割り当てると、設計上のパターン密度が密な領域ではマスクパターン同士の間隔を広げることができる。そのため、パターンの疎密差に起因した露光量不足を解消すべくマスクパターンへの露光量を増やすと、隣接するマスクパターンの像が互いに寄る方向に移動し、設計通りの間隔にデバイスパターンを形成することができる。これにより、近接効果に起因したデバイスパターンの位置ずれや、形状の崩れを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、第1実施形態に係る電子ビーム露光装置の構成図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るブロックマスクの要部拡大平面図である。
【図3】図3は、可変矩形露光について説明するための斜視図である。
【図4】図4は、ブロック露光について説明するための斜視図である。
【図5】図5は、第1実施形態におけるデバイスパターンの配列の一例について示す平面図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る露光データの補正方法について示すフローチャートである。
【図7】図7は、電子の前方散乱と後方散乱について説明するための断面図である。
【図8】図8は図5の一部拡大平面図である。
【図9】図9は、第1実施形態において、補正前の二つのデバイスパターン同士の間隔と、補正後の辺の移動量との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、第1実施形態において、補正前と補正後の前方散乱強度Ff0(x,y)を模式的に示すグラフである。
【図11】図11(a)、(b)は、第1実施形態において、デバイスパターンへの代表マスクパターンの割り当て方について示す平面図である。
【図12】図12は、第1実施形態における式(7)、(8)の物理的な意味を説明するための前方散乱強度のグラフである。
【図13】図13は、第1実施形態において計算された前方散乱強度の一例を模式的に示す平面図である。
【図14】図14は、第1実施形態における面積密度法について説明するための拡大平面図である。
【図15】図15は、第1実施形態における後方散乱比率ηの定義について示すための図である。
【図16】図16は、第1実施形態において算出された露光量の一例を模式的に表す平面図である。
【図17】図17は、第1実施形態において、複数の代表マスクパターンの各々を露光両毎にグループ分けした一例を示す平面図である。
【図18】図18は、第1実施形態において、マスクパターンのブロックの選択の仕方の一例について模式的に示す平面図である。
【図19】図19は、第1実施形態のステップS3、S4を省いたときの問題点について説明するための平面図である。
【図20】図20は、第1実施形態において、基準値e0を設定する際のシミュレーションについて示す平面図である。
【図21】図21は、第1実施形態のステップS1〜S3を行って得られた補正後のデバイスパターンの配置を示す平面図である。
【図22】図22は、図21のデバイスパターンにマスクパターンcを割り当て、デバイスパターンの露光を行った場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図23】図23は、図21のような形状補正をすることなく、補正がされていない露光データをそのまま使用した場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】図24は、図21に示した補正後のデバイスパターンのそれぞれに、第1実施形態のステップS4に従って代表パターンを割り当てたときの平面図である。
【図25】図25は、第1実施形態に従って露光をした場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図26】図26は、第2実施形態に係る荷電粒子ビーム露光方法のフローチャートである。
【図27】図27は、第2実施形態のステップS10の処理内容を模式的に説明するための平面図である。
【図28】図28は、第2実施形態において、ブロック露光における電子ビームの散乱強度と、レジスト層内の位置との関係を模式的に示すグラフである。
【図29】図29は、第2実施形態における追加露光について模式的に示す平面図である。
【図30】図30は、第2実施形態における追加露光を行う場合の電子ビームの散乱強度と、レジスト層内の位置との関係を模式的に示すグラフである。
【図31】図31は、第3実施形態で使用される複数種類の代表マスクパターンの一例を示す平面図である。
【図32】図32(a)、(b)は、第3実施形態において、デバイスパターンへの代表マスクパターンの割り当て方法について示す平面図である。
【図33】図33(a)、(b)は、長尺状のデバイスパターンを得るための露光方法について示す平面図である。
【図34】図34(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図35】図35(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図36】図36(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図37】図37(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図38】図38(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図39】図39(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図40】図40(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その7)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態で使用される電子ビーム露光装置1の構成図である。
【0017】
この電子ビーム露光装置1は、露光データ作成部2と、制御部3と、電子光学系4とを有する。
【0018】
このうち、電子光学系4は内部が減圧されたコラム5を備えており、そのコラム5の内部には電子線EBを生成するための電子銃11が設けられる。
【0019】
そして、電子銃11の下流には、アパーチャ12aが形成された整形マスク12が設けられる。アパーチャ12aの平面形状は矩形状であり、整形マスク12を透過した電子線EBはその断面形状が矩形状に整形される。
【0020】
更に、その整形マスク12の下流には、第1のマスク偏向器13、露光マスク14、及び第2のマスク偏向器15が設けられる。電子ビームEBは、各偏向器13、15により偏向し、露光マスク14内の所定の位置にあるマスクパターンに偏向される。
【0021】
なお、露光マスク14は、不図示の駆動手段に接続されており、後述のマスクパターンが電子ビームEBに当たるように水平面内を移動することができる。この駆動手段は主に露光を開始する前に露光マスク14の位置を調整するため用いられ、露光中は第1のマスク偏向器13や第2のマスク偏向器15により露光マスク14の所定のマスクパターンに電子ビームEBを偏向する。
【0022】
そして、第2のマスク偏向器15の下流には、半導体基板20の表面上に電子ビームEBの焦点を合わせるためのフォーカスレンジ16と、半導体基板20の所定の部分に電子ビームEBを偏向するための第1の偏向器17と第2の偏向器18が設けられる。
【0023】
なお、半導体基板20は、ステージ19上に載置されており、ステージ19によって水平面内を移動する。
【0024】
このような電子ビーム露光装置1においては、デバイスパターンの設計データD0に基づいて露光データ作成部2が露光データDEを作成する。設計データD0には、コンタクトホール等のデバイスパターンの位置と形状とが含まれる。そして、露光データDEには、設計データD0で特定されるデバイスパターンを得るための露光量や電子ビームEBの偏向量等が含まれる。
【0025】
なお、露光データ作成部2には、後述のように露光データDEを補正する際に使用する記憶部2aが設けられる。
【0026】
制御部3は、そのような露光データDEに基づいて、電子光学系4の各部に制御信号を出力する。
【0027】
例えば、電子銃11から発生する電子ビームEBの強度は、強度信号SIにより制御される。
【0028】
また、ブロックマスク14上での電子ビームEBの偏向量は、マスク偏向信号SMDにより制御される。更に、ブロックマスク14の移動量はマスク移動信号SMSにより制御され、電子ビームEBの焦点はフォーカス信号SFにより制御される。そして、半導体基板20上での電子ビームEBの偏向量は基板偏向信号SSにより制御され、ステージ19の移動量はステージ制御信号SCにより制御される。
【0029】
図2は、上記したブロックマスク14の要部拡大平面図である。
【0030】
ブロックマスク14には、開口14aとマスクパターン14bとが形成される。
【0031】
このうち、開口14aは矩形状の平面形状を有し、後述のように可変矩形露光を行う際に使用される。
【0032】
一方、マスクパターン14bは、コンタクトホール等のデバイスパターンに対応するものであって、デバイスへの使用頻度が高いピッチと個数でブロック単位で形成される。
【0033】
例えば、この例では第1〜第3のブロックBLK1〜BLK3が画定されており、第1のブロックBLK1と第2のブロックBLK2では三つのマスクパターン14bが形成される。そして、第3のブロックBLK3では、3×3個の配列でマスクパターン14bが形成される。
【0034】
更に、本実施形態では、後述の露光データの補正の際に使用する代表ブロックBLK0も露光マスク14に画定される。その代表ブロックBLK0には、一つの代表マスクパターン14cのみが形成される。
【0035】
代表マスクパターン14cの大きさと平面形状は特に限定されないが、本実施形態では他のブロックBLK1〜BLK3におけるマスクパターン14bと同一の大きさを有する正方形に代表マスク14cを形成する。本実施形態では、代表ブロックBLK0に収まる大きさである一辺が4μm以下の正方形状に代表マスクパターン14cを形成する。
【0036】
図3は、そのような露光マスク14を利用した可変矩形露光について説明するための斜視図である。
【0037】
可変矩形露光においては、アパーチャ12aで整形された電子ビームEBの一部を露光マスク14の開口14aに通すことで、アパーチャ12aと開口14aとの重複部分に相当する形状を基板20上に描画する。
【0038】
一方、図4は、上記の露光マスク14を利用したブロック露光について説明するための斜視図である。
【0039】
ブロック露光では、ブロックBLK1〜BLK4のそれぞれに電子ビームEBが照射され、各ブロックBLK1〜BLK4を通った電子ビームEBによって、ブロック内のマスクパターン14bが一括して基板20上に描画される。
【0040】
ところで、図4のようにブロック露光を行う際には、一つのブロック内で隣接するパターン14bを通った電子ビームEBが互いに影響を及ぼしあう近接効果が発生する。その近接効果により、基板20上のレジストパターンの幅が設計幅から外れてしまうことになる。
【0041】
そこで、本実施形態では、次のように露光データ作成部2(図1参照)において露光データDEを補正することにより、近接効果を抑制するようにする。
【0042】
以下では、その補正方法について、デバイスパターンが図5のように配列されている場合を例にしながら説明する。
【0043】
図5は、デバイスパターン30の配列の一例を示す平面図である。デバイスパターン30は例えばコンタクトホールであり、この例ではパターン密度が疎な領域Aと密な領域Bに配列されている。
【0044】
また、図6は、本実施形態に係る露光方法について示すフローチャートである。
【0045】
まず、最初のステップS1では、露光データ作成部2において、既述の露光データDEを準備する。
【0046】
次に、ステップS2に移り、以下のようにして近接効果を考慮しつつ露光データDEを補正する。
【0047】
近接効果を考慮するには、レジスト層の一点に入射した電子がその周囲に与える影響を考える必要がある。その影響は次の式(1)で定義される露光強度分布により把握することができる。
【0048】
【数1】
【0049】
f(x,y)は、EID(Exposure Intensity Distribution)関数とも呼ばれ、レジスト層の一点(0,0)に入射した電子によって点(x,y)におけるレジスト層に蓄積される単位面積あたりのエネルギを表す。
【0050】
レジスト層へのエネルギの蓄積は、前方散乱した電子による影響と、後方散乱した電子による影響の総和として考えることができる。
【0051】
図7は、電子の前方散乱と後方散乱について説明するための断面図である。
【0052】
図7のように、基板20上に形成されたレジスト層30に電子ビームEBが入射すると、電子の中には基板20の深くで反射して再びレジスト層30に戻るものや、基板20の表面近くで反射してレジスト層30に戻るものもある。
【0053】
よって、レジスト層30に蓄積されるエネルギは、そのように反射する前の電子により与えられたものと、反射後の電子によって与えられたものの和となる。
【0054】
本実施形態では、基板20の深くで反射した電子によってレジスト層30に蓄積されたエネルギを後方散乱成分fb(x,y)と定義する。そして、反射前にレジスト層30を通過した電子や、基板20の表面近くで反射した電子によってレジスト層30に蓄積されたエネルギを前方散乱成分ff(x,y)と定義する。
【0055】
式(1)のEID関数において、右辺第1項と第2項の和が前方散乱成分ff(x,y)に相当し、右辺第3項が後方散乱成分fb(x,y)に相当する。すなわち、次の式(2)、(3)が成り立つ。
【0056】
【数2】
【0057】
【数3】
【0058】
また、式(1)〜(3)において、βfは第1前方散乱径であり、レジスト層30を通過する電子によってレジスト層30に蓄積されるエネルギを表す。また、βfは第2前方散乱径であって、基板20の表面近くで反射した電子によってレジスト層30に蓄積されるエネルギを表す。そして、βbは後方散乱径であり、基板20の深くで反射した電子によってレジスト層30に蓄積されるエネルギを表す。
【0059】
また、ηaは第2前方散乱比率、ηbは後方散乱比率を表す。
【0060】
本ステップS2では、レジスト層30の一点に入射した電子がその周囲のレジスト層30に与える影響のうち、式(2)の前方散乱成分ff(x,y)に起因したものを、図8の領域Sの範囲内で考慮する。
【0061】
図8は図5の一部拡大平面図である。
【0062】
図8に示されるように、領域Sは、一つのデバイスパターン30の一辺30xに中心座標(xi,yi)がある円形の領域である。そして、その領域Sは、中心座標(xi,yi)が存在するデバイスパターン30の近傍の複数のデバイスパターン30に重なるように設定される。
【0063】
そして、この領域Sを積分領域にし、次の式(4)で表される積分値Ff0(xi,yi)を算出する。
【0064】
【数4】
【0065】
式(4)において、関数pは次の式(5)で定義される。
【0066】
【数5】
【0067】
すなわち、点(x',y')がいずれかのデバイスパターン30に属している場合にはp(x',y')は1に等しく、それ以外の場合にはp(x',y')は0となる。
【0068】
このような関数p(x',y')の性質から、式(4)の積分値Ff0(xi,yi)は、露光強度分布の中心(xi,yi)の近傍にあるデバイスパターン30の各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分ff(x,y)を積分して得られた積分値と等価になる。なお、中心(xi,yi)のことを、以下では評価点(xi,yi)という場合もある。
【0069】
また、このように定義される積分値Ff0(xi,yi)は、前方散乱強度と呼ばれる。
【0070】
次に、ステップS3に移行する。
【0071】
ステップS3では、上記の前方散乱強度Ff0(xi,yi)が基準値e0に等しくなるように、各デバイスパターン30の形状を補正する。そのような補正は、例えば、各デバイスパターン30の各辺を移動することにより逐次的に行われ、n回目の辺の移動量ΔLとn+1回目の辺の移動量ΔLとの間に実質的な差がなくなった場合に補正を終了する。
【0072】
図8では、そのようにして形状を補正した後のデバイスパターン30yを点線で示している。
【0073】
或いは、上記のように逐次的な計算を行うのに代えて、ルールベース補正でデバイスパターン30の形状を補正するようにしてもよい。
【0074】
次の表1は、そのようなルールベース補正で使用されるテーブルの一例である。
【0075】
【表1】
【0076】
このテーブルは、露光データ作成部2(図1参照)の記憶部2aに格納されており、図9のグラフを利用して作成される
図9のグラフA〜Cは、補正前の二つのデバイスパターン30同士の間隔pと、補正後の辺の移動量ΔLとの関係を示すものである。また、図9の下側には各グラフA〜Cの意味を説明するための模式図を併記してある。
【0077】
このうち、グラフAは、中心(xi,yi)が存在するデバイスパターン30の他に、隣接する8個のデバイスパターン30が積分範囲Sに重なる場合のものである。また、グラフBは、中心(xi,yi)が存在するデバイスパターン30の他に、隣接する3個のデバイスパターン30が積分範囲Sに重なる場合のものである。そして、グラフCは、中心(xi,yi)が存在するデバイスパターン30の他に、隣接する1個のデバイスパターン30のみが積分範囲Sに重なる場合のものである。
【0078】
これらのグラフの縦軸は、式(4)の前方散乱強度Ff0(xi,yi)が既述の基準値e0になる場合のデバイスパターン30の辺の移動量ΔLである。
【0079】
実際に露光データDEを補正する場合には、デバイスパターン30の各辺を連続的に移動させるよりも、各辺の移動量を整数単位でステップ的に各辺を移動する方が簡単である。
【0080】
例えば、図9のグラフCでは、p<70nmのときは、ΔLの小数点以下を無視してΔLを0nmとする。また、70nm≦p<80nmのときもはΔLの小数点以下を無視してΔLを1nmとし、80nm<pのときは小数点以下を切り上げてΔLを2nmとする。これをまとめたものが上記の表1のテーブルである。
【0081】
本ステップS3では、そのようなテーブルを用いたルールベースによる補正、或いは式(4)を用いた数値計算により、デバイスパターン30の各辺を移動量ΔLだけ移動させる。
【0082】
図10は、補正前と補正後の前方散乱強度Ff0(x,y)を模式的に示すグラフである。
【0083】
なお、図10では、図の簡略化のために、密な領域Bにおけるデバイスパターン30の個数を3個に留めてある。
【0084】
図10に示されるように、補正前では、密な領域Bにおける前方散乱強度Ff0(x,y)は、疎な領域Aにおけるよりも上側にシフトする。これは、密な領域Bでは、それぞれのデバイスパターン30が隣接するデバイスパターン30から影響を受けるためである。
【0085】
これに対し、補正前の疎な領域Aでは、周囲のデバイスパターン30からの影響がないので、密な領域Bと比較して前方散乱強度Ff0(x,y)は下側にシフトする。
【0086】
そして、補正を行った後では、基準値e0をスライスレベルとしたときのグラフの幅Wが、各デバイスパターン30yにおいて同一となる。
【0087】
よって、このように補正された露光データDEを用いて露光を行えば、各デバイスパターン30は、近接効果によって像の大きさが不均一になることなく、レジスト層において同一の幅で解像されることになる。
【0088】
ただし、このように補正を行うためには、補正によって辺の長さがまちまちとなった各デバイスパターン30yを個別に描画しなければならいので、ブロック単位で一括露光ができなくなり、電子ビーム露光装置のスループットが低下してしまう。
【0089】
そこで、本実施形態では、以下のようにして補正後のデバイスパターン30yを代表マスクパターン14cで描画することにし、露光量の過不足については別途補正することとする。
【0090】
まず、ステップS4では、図11(a)に示すように、上記の補正後の設計データDEにおけるデバイスパターン30yのそれぞれに、該デバイスパターン30と重心g同士が一致するように、代表マスクパターン14c(図2参照)を割り当てる。なお、図11(a)では、補正後のデバイスパターン30yの平面形状が正方形である場合を前提としている。
【0091】
次いで、代表マスクパターン14cを透過した電子がレジスト層に与える影響を把握するめ、次の式(6)で定義される前方散乱強度Ff(x,y,W,H)を考える。
【0092】
【数6】
【0093】
式(6)で定義される前方散乱強度Ff(x,y,W,H)は、式(4)で定義されるFf0(xi,yi)とは異なり、積分範囲が対象となる一つのデバイスパターン30yに限定されている。
【0094】
すなわち、この前方散乱強度Ff(x,y,W,H)は、幅がWで高さがHのデバイスパターン30yに均一に電子ビームを照射した場合において、点(x,y)におけるレジスト層に蓄積されるエネルギの前方散乱成分を表すものである。そして、前方散乱強度Ff(x,y,W,H)は、デバイスパターン30yの中心(0,0)からの距離(x,y)の関数となる。
【0095】
このような前方散乱強度Ff(x,y,W,H)を用いると、レジストパターンの設計幅W'は、次の式(7)を満たす。
【0096】
【数7】
【0097】
すなわち、デバイスパターン30yの中心からの距離xが設計幅W'の1/2のときの前方散乱強度が基準値e0となる。
【0098】
なお、補正後のデバイスパターン30yの形状が正方形ではなく、図11(b)のように各辺の長さW、Hが異なる長方形になることがある。その場合には、図11(b)の点線に示すように、補正後のデバイスパターン30yと面積が同一の仮想正方形32を想定する。その仮想正方形32の一辺の幅W"は(W×H)1/2となる。そして、その幅W"を式(7)の幅Wに代入し、これ以降の計算を行う。
【0099】
次いで、式(7)のW'を利用して、マスクパターン14cの各々について次の式(8)により前方散乱強度ekを求める。
【0100】
【数8】
【0101】
式(8)におけるW0は、正方形状の代表マスクパターン14cの一辺の幅である。また、ekにおけるkは適当な整数であって、同一の前方散乱強度同士をグループ化するための添え字である。
【0102】
図12は、これらの式(7)、(8)の物理的な意味を説明するための前方散乱強度のグラフである。
【0103】
代表マスクパターン14cは、その幅W0が補正後のデバイスパターン30yの幅Wよりも狭い。よって、代表マスクパターン14cを通った電子ビームEBによってレジスト層にエネルギが蓄積される範囲は、補正後のデバイスパターン30yにおけるよりも狭くなる。
【0104】
そのため、図12に示すように、代表マスクパターン14cの前方散乱強度Ff(x,y,W0,W0)のグラフはデバイスパターン30yの前方散乱強度Ff(x,y,W,W)よりも下側にシフトする。
【0105】
そして、式(7)、(8)によれば、各グラフの幅がW'となるときのスライスレベルが、代表マスクパターン14cの前方散乱強度Ff(x,y,W0,W0)についてはekに、デバイスパターン30の前方散乱強度Ff(x,y,W,W)についてはe0に等しいことになる。
【0106】
なお、W0とW'との差ΔW(=W0−W')はプロセスシフトと呼ばれる。
【0107】
設計幅W'よりも代表マスクパターン14cの幅W0を小さくし、プロセスシフトΔWを負の値にすると、露光時に代表マスクパターン14cを通る電子ビームの強度プロファイルが急峻となり、高コントラストを実現できる。
【0108】
本ステップでは、式(8)に従って、各デバイスパターン30yに割り当てられた代表マスクパターン14cのそれぞれに対して前方散乱強度ekを計算する。
【0109】
図13は、その計算結果の一例を模式的に示す平面図である。
【0110】
図13の例では、四つの異なる値の前方散乱強度e0〜e3が代表マスクパターン14cに付与されている。
【0111】
次に、ステップS5に移り、次のようにして代表マスクパターン14cのそれぞれに露光量を割り当てる。
【0112】
露光量の割り当てにあたっては、まず、面積密度法により、電子ビームEBの後方散乱強度を次のように計算する。
【0113】
図14は、面積密度法について説明するための拡大平面図である。
【0114】
面積密度法では、図14に示すように、補正後の各デバイスパターン30yを細かいメッシュ状に分割する。メッシュの形状は正方形であり、その一辺の長さΔpは後方散乱長βbの1/10程度、例えば1μm程度とするのが好ましい。
【0115】
そして、各メッシュにおいて補正後のデバイスパターン30yが占める割合を露光データ作成装置2が計算する。その割合は面積密度αと呼ばれる。図14では、その面積密度αをメッシュ内に併記してある。
【0116】
その後、一つのデバイスパターン30yにおいて、面積密度αの最大値αmaxを抽出する。図14の例では、最大値αmaxは1である。
【0117】
次に、散乱比率ηを算出する。
【0118】
図15は、散乱比率ηの定義について示すための図である。
【0119】
図15では、式(3)で定義される後方散乱成分fb(x,y)のグラフと、横軸とで囲まれた部分の面積をIbで示している。なお、横軸の距離rはr=(x2+y2)1/2で定義される。
【0120】
更に、図15では、前方散乱成分ff(x,y)と後方散乱成分fb(x,y)の各グラフで囲まれた部分の面積をIfで示している。
【0121】
これらの面積Ib、Ifを用いて、散乱比率ηは次の式(9)で定義される。
【0122】
【数9】
【0123】
上記のαmaxとηとを用い、本実施形態では、補正後のデバイスパターン30yにおける電子ビームの後方散乱強度をαmax・ηと近似する。
【0124】
また、レジスト層が解像するのに要する電子ビームの最低限の蓄積エネルギをEthとするとき、露光量dkは次の式(10)を満たす。
【0125】
【数10】
【0126】
これから、露光量dkは次の式(11)のようになる。
【0127】
【数11】
【0128】
本実施形態では、式(11)を利用して、露光データ作成部2が露光量dkを算出する。なお、dkにおけるkは適当な整数であって、同一の露光量同士をグループ化するための添え字である。
【0129】
図16は、このようにして算出された露光量dkの一例を模式的に表す平面図である。
【0130】
図16の例では、四つの異なる値の露光量d0〜d3が各代表マスクパターン14cに付与されている。
【0131】
このような露光量dkで各デバイスパターン30を露光することにより、露光したレジスト層から得られるレジストパターンの幅を設計幅W'にすることができる。
【0132】
次に、ステップS6に移り、複数の代表マスクパターン14cの各々を、露光データ作成部2が露光量毎に複数のグループに分ける。
【0133】
図17は、そのようなグループ分けを先の図16の例に対して行った場合の平面図である。
【0134】
この例では、露光量がd0のグループG0、露光量がd1のグループG1、露光量がd2のグループG2、露光量がd3のグループG3に各デバイスパターン30のグループ分けを行う。
【0135】
次いで、ステップS7に移り、露光マスク14のブロックBLK0〜BLK3(図2参照)の中から、グループG0〜G3内におけるのと同一の配列でマスクパターン14bが形成されたブロックを選択する。
【0136】
図18は、そのような選択の仕方について模式的に示す平面図である。
【0137】
この例では、グループG0に対してブロックBLK3が選択され、グループG1に対してはブロックBLK1とブロックBLK2が選択される。そして、グループG2とグループG3に対しては代表グループBLK0が選択される。
【0138】
以上により、露光データDEの補正が終了した。
【0139】
この後は、ステップS8に移り、ステップS7で選択した各ブロックBLK1〜BLK3を用いて、露光データDEに基づいてレジスト層に対してブロック露光を行う。
【0140】
上記した本実施形態によれば、ステップS3においてデバイスパターン30の形状を一度補正した後、ステップS4において補正後デバイスパターン30yと重心gが一致するようにマスクパターン14cを割り当てる。
【0141】
図19は、これらのステップS3、S4を省いたときの問題点について説明するための平面図であって、レジストパターンにおけるデバイスパターン30の配置を示すものである。
【0142】
なお、図19では、設計上のデバイスパターン30を点線で示し、実際にレジストに形成されるデバイスパターン30を実線で示している。
【0143】
図19に示されるように、密な領域Bにおいて行列状に配置されたデバイスパターン30のうち、四隅のデバイスパターン30は、中央のデバイスパターン30と比べて周囲からの電子ビームの影響を受け難い。よって、四隅のデバイスパターン30については、設計幅を得るために、中央のデバイスパターン30と比べて露光量を上げる必要がある。その結果、矢印で示すように四隅のデバイスパターン30は中央に寄るようになり、設計通りの配列ピッチでデバイスパターン30を形成するのが困難となる。
【0144】
これに対し、本実施形態では、ステップS3で形状が補正されたデバイスパターン30と重心gが一致するようにマスクパターン14cを割り当てるので、密な領域Bでのマスクパターン14c同士の間隔を広げることができる。
【0145】
そのため、パターンの疎密差に起因した露光量不足を解消すべく四隅のマスクパターン14cへの露光量を増やすと、隣接するマスクパターン14cの像が互いに寄る方向に移動し、設計通りの間隔にデバイスパターン30を形成することができる。これにより、近接効果に起因したデバイスパターン30の位置ずれや、形状の崩れを抑制することが可能となる。
【0146】
次に、本実施形態のシミュレーション結果について説明する。
【0147】
このシミュレーションでは、式(1)のEID関数の形を次の式(12)のように仮定した。
【0148】
【数12】
【0149】
また、目標とするデバイスパターン30の設計幅W'は60nmとし、代表マスクパターン14cの幅W0は50nmとした。したがって、プロセスシフトΔW(=W0−W')は−10nmとなる。
【0150】
更に、デバイスパターン30同士の間隔の設計値については60nmとした。
【0151】
図20は、基準値e0を設定する際のシミュレーションについて示す平面図である。
【0152】
図20において、各デバイスパターン30に付されている数字は、デバイスパターン30の各々について計算したFf(xi,yi,W,H)の値である。その計算に際しては、W=H=50nmとした。また、(xi,yi)は各デバイスパターン30の評価点である。
【0153】
そして、本シミュレーションでは、図20における9個のデバイスパターン30のそれぞれのFf(xi,yi,W,H)の合計をe0に設定し、e0=0.528757とした。
【0154】
図21は、上記の条件でステップS1〜S3を行って得られた補正後のデバイスパターン30yの配置について示す平面図である。
【0155】
なお、図21においては、デバイスパターン30yの各辺の長さと、各デバイスパターン30y間の間隔がnm単位で併記してある。
【0156】
図22は、比較のために、図21のデバイスパターン30yにマスクパターン14cを割り当て、デバイスパターン30の露光を行った場合のシミュレーション結果を示す図である。なお、このシミュレーションでは、上記した本実施形態と異なり、図14、図15で説明したような後方散乱成分を考慮することなく露光量を設定した。これは、シミュレーションに用いたデバイスパターン30が後方散乱の広がりに比べて十分小さく、後方散乱の影響を無視できるためである。
【0157】
また、図22において、各デバイスパターン30の間の数字は隣接するパターン30の間隔を示す。また、デバイスパターン30の内側の数字は、上段が当該パターン30の幅Wを示し、下段が当該パターン30の高さHを示すものである。
【0158】
図22に示されるように、デバイスパターン30の形状を補正しただけでは、密な領域Bに、他のデバイスパターン30と比較して辺の長さが1nm以上乖離するデバイスパターン30が発生してしまう。
【0159】
また、図23は、比較のために、図21のような形状補正をすることなく、補正がされていない露光データDEをそのまま使用した場合のシミュレーション結果を示す図である。なお、図23における各数字の意味は図22におけるのと同様である。
【0160】
図23に示すように、デバイスパターン30の形状を補正しない場合には、各パターン30のそれぞれの辺の長さが設計幅(60nm)と比較して大きく乖離する。また、各パターン30の間隔も、設計値(60nm)から外れている。
【0161】
図24は、図21に示した補正後のデバイスパターン30yのそれぞれに、ステップS4に従って代表パターン14cを割り当てたときの平面図である。
【0162】
なお、図24には、各代表パターン14c間の間隔の他に、ステップS4で算出した前方散乱強度eとステップS5で算出した露光量dも併記してある。
【0163】
図25は、このように代表パターン14cを割り当て、露光量dで露光をした場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0164】
なお、図25における各数字の意味は図22及び図23におけるのと同様である。
【0165】
図25に示されるように、ステップS1〜S5まで行うと、先の図22及び図23と比較して、辺の各パターン30のそれぞれの辺の長さを設計幅(60nm)に近づけることが可能となると共に、各パターン30の間隔も設計値(60nm)に近づけることができる。
【0166】
このことから、本実施形態にしたがって露光データDEを補正することが、設計レイアウトに近い配列のデバイスパターン30を得るのに有用であることが確認された。
【0167】
(第2実施形態)
上記した第1実施形態では、ステップS6において複数のマスクパターン14cを露光量毎にグループG0〜G3に分け、各グループG0〜G3を個別にブロック露光した。
【0168】
これに対し、本実施形態では、そのようなグループ化を行わずにブロック露光を以下のように行う。
【0169】
図26は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム露光方法のフローチャートである。
【0170】
本実施形態では、第1実施形態に従ってステップS1〜S5を行った後、ステップS10に移る。
【0171】
図27は、ステップS10の処理内容を模式的に説明するための平面図である。
【0172】
図27では、第1実施形態のステップS5を行ったことにより、各代表マスクパターン14cに露光量d1〜d3が割り当てられた状態を示す。
【0173】
そして、本ステップS10では、露光マスク14のブロックBLK0〜BLK3の中から、マスクパターン14bの配列が上記の代表マスクパターン14cと同一の配列を有するブロックBLK1を選択する。
【0174】
このとき、マスクパターン14cに対する露光量d1〜d3は同一とは限らない。そこで、個々のマスクパターン14cの露光量d1〜d3を、露光データ作成部2の記憶部2a(図1参照)内に予め格納しておく。
【0175】
次に、ステップS11に移り、上記のブロックBLK1を用いて、ブロック露光によりレジスト層に対して電子ビームを一括露光する。
【0176】
このときの露光量dとしては、d1〜d3のうちの最小値を利用する。例えば、d3>d2>d1なる大小関係があるときは、最小値である露光量d1でこのブロック露光を行う。
【0177】
図28は、このようなブロック露光における電子ビームの散乱強度と、レジスト層内の位置xとの関係を模式的に示すグラフである。
【0178】
上記のように露光量d(=d1)で露光を行うと、当該露光量dが適正露光量である露光マスク14bでは、レジストにおいて解像される幅が設計幅W'となる。
【0179】
これに対し、適正露光量がd2、d3のデバイスパターン30では露光量不足となり、レジスト層で解像される幅W2、W3が設計幅W'よりも狭くなってしまう。
【0180】
そのような露光量不足を補うため、次のステップS12では追加露光を行う。
【0181】
図29は、その追加露光について模式的に示す平面図である。
【0182】
図29に示すように、追加の露光パターン31は、各マスクパターン14bよりも大きく整形された状態で露光マスク14に照射される。
【0183】
そのような露光パターン31は、図3において説明した可変矩形露光により、電子ビームEBの断面形状をマスクパターン14bよりも大きく整形することで得られる。
【0184】
また、露光パターン31の大きさについては、露光装置1で発生する最大の位置ずれ量をdP、マスクパターン14bの幅をW1とするときに、W1+2dPとするのが好ましい。このように位置ずれdPを考慮して露光パターン31の大きさを設定することで、各パターン31、14bの位置ずれが原因でマスクパターン14bを透過した電子ビームの一部が欠けるのを防止できる。
【0185】
一方、追加の露光量Δdについては、ブロック露光における露光量との合計が適正露光量になるようにする。
【0186】
例えば、適正露光量がd2の露光マスク14bに対しては、追加の露光量Δdをd2−dとする。また、適正露光量がd3の露光マスク14bに対しては、追加の露光量Δdをd3−dとする。
【0187】
図30は、このような追加露光を行う場合の電子ビームの散乱強度と、レジスト層内の位置xとの関係を模式的に示すグラフである。
【0188】
図30に示されるように、追加の露光を行うことで、各露光マスク14bを通った電子ビームの前方散乱強度が上側にシフトする。これにより、各露光マスク14bで露光したレジスト層から得られるレジストパターンの幅を設計幅W'に等しくすることが可能となる。
【0189】
以上により、本実施形態に係る電子ビーム露光方法の基本ステップが終了した。
【0190】
上記したように、本実施形態では、複数のマスクパターン14bをブロック露光で一括露光し、露光不足となったマスクパターン14bに対して追加の露光を行う。追加露光の露光量は小さいため、マスクパターンを個別に露光する場合に比べて、トータルの電子ビームの照射時間は短くなる。これにより、ブロック露光のメリットである優れたスループットを活かしつつ、レジスト層で解像される幅を設計幅に近づけることが可能となる。
【0191】
(第3実施形態)
第1実施形態では、図2に示したように代表ブロックBLK0に属する代表マスクパターン14cの大きさと形状が正方形の一種類のみであるとの前提で説明を行った。
【0192】
露光マスク14に形成する代表マスクパターン14cは、このように一種類だけでなく、形状と大きさが異なる複数種類あってもよい。
【0193】
図31は、そのような複数種類の代表マスクパターン14cの一例を示す平面図である。
【0194】
以下では、図31のように大きさと各辺の比率とが異なる複数種類の代表マスクパターン14cが存在する場合に、第1実施形態のステップS4の処理方法について説明する。
【0195】
ステップS4は、第1実施形態で説明したように、形状を補正した後のデバイスパターン30yに代表マスクパターン14cを割り当てるステップである。代表マスクパターン14cが形状補正をした後のデバイスパターン30yと相似か否かにより処理方法が異なるので、場合分けをして説明する。
【0196】
(i)代表マスクパターン14cの中に補正後のデバイスパターン30yと相似なものがあるとき
この場合は、図32(a)に示すように、複数の代表マスクパターン14cの中から、デバイスパターン30yとの形状差が最も少ない代表マスクパターン14cを選択する。
【0197】
形状差は、デバイスパターン30yとマスクパターン14cのそれぞれの重心gを一致させたときにおける長辺のずれ量Δxで定義される。なお、短辺のずれ量Δyで形状差を定義してもよい。
【0198】
そして、それぞれの重心g同士が一致するように、デバイスパターン30yにマスクパターン14cを割り当てる。
【0199】
また、前方散乱強度の基準値e0については、式(7)の右辺の4番目の変数をHに変えた次の式(13)から算出する。
【0200】
【数13】
【0201】
なお、変数W、Hは、それぞれ補正後のデバイスパターン30yの幅と高さである。
【0202】
また、前方散乱強度ekについては、式(8)の右辺の4番目の変数をH0に変えた次の式(14)から算出する。
【0203】
【数14】
【0204】
なお、変数W0、H0は、それぞれ代表パターン14cの幅と高さである。
【0205】
このようにして算出されたe、e0を用いて、第1実施形態のステップS4が行われることになる。
【0206】
(ii)代表マスクパターン14cの中に補正後のデバイスパターン30yと相似なものがないとき
図32(b)にこの場合の平面図を示す。
【0207】
この場合は、補正後のデバイスパターン30yの幅Wと高さHの比率H/Wが基準比率R以下であるか否かに応じ、更に以下のような場合分けをする。なお、基準比率Rは特に限定されないが、以下ではR=2とする。
【0208】
(a)H/W≦Rのとき
この場合は、図32(b)に示すように、デバイスパターン30yと面積が同一の仮想矩形35を考え、その仮想矩形35との形状差が最も小さく且つ仮想矩形35と相似になる代表パターン14cを選択する。そして、それぞれの重心g同士が一致するように、その代表パターン14cをデバイスパターン30yに割り当てる。
【0209】
ここで、上記のようにデバイスパターン30と仮想矩形35との面積が同一になるには、次の式(15)が成り立つ。
【0210】
【数15】
【0211】
ここで、W0、H0はそれぞれ代表パターン14cの幅と高さであり、pW0、pH0はそれぞれ仮想矩形35の幅と高さである。
【0212】
そして、代表パターン14cと仮想矩形35との相似比pは、式(15)から次の式(16)のように書ける。
【0213】
【数16】
【0214】
この相似比pを利用して、前方散乱強度eとその基準値e0を次の式(17)、(18)から算出する。
【0215】
【数17】
【0216】
【数18】
【0217】
式(18)のように、本例では、仮想矩形35の幅pW0と高さpH0を利用して前方散乱強度の基準値e0を算出する。これは、実際に露光に使用する代表パターン14cと相似な仮想矩形の幅pW0と高さpH0を利用する方が、デバイスパターン30yの幅Wと高さHを利用する場合よりも、補正の精度が向上するためである。
【0218】
(b)H/W>Rのとき
この場合は、上記のような仮想矩形35を利用せず、既述の式(13)、(14)を利用して前方散乱強度eとその基準値e0を算出する。これは、H/Wが大きいと、式(6)で定義される前方散乱強度Ff(x,y,W,H)がHに依らなくなるため、式(18)のように仮想矩形35の幅pW0と高さpH0を利用して基準値e0を算出する実益がないからである。
【0219】
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では、ホール形状のデバイスパターン30を例にして説明したが、これらの実施形態で説明した露光方法はゲート電極のような長尺状のデバイスパターンにも適用し得る。
【0220】
図33(a)は、そのような長尺状のデバイスパターン38に対して第1実施形態のステップS1〜S3を行い、デバイスパターン38の形状を補正した後の平面図である。
【0221】
このような形状のデバイスパターン38を露光するには、図33(b)に示すように、デバイスパターン38を複数の矩形パターン38a〜38gに分割する。
【0222】
そして、これらの矩形パターン38a〜38gに対応した形状のマスクパターンを備えた露光マスクを使用して、各パターン38a〜38gを個別に露光することで、図33(a)に示したような長尺状のデバイスパターン38を実現し得る。
【0223】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1〜第4実施形態で説明した露光方法を利用した半導体装置の製造方法について説明する。
【0224】
図34〜図40は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0225】
以下では、半導体装置としてMOSトランジスタを製造する。
【0226】
まず、図34(a)に示すように、半導体基板としてのシリコン基板50を熱酸化して熱酸化膜51を約10nmの厚さに形成した後、その上に減圧CVD法により窒化シリコン膜52を約140nmの厚さに形成する。
【0227】
次に、図34(b)に示すように、第1の窓53aを備えた第1のレジストパターン53を窒化シリコン膜52の上に形成する。そして、この第1のレジストパターン53をマスクとして使用しながら、フッ素系のガスをエッチングガスにするRIE(Reactive Ion Etching)により窒化シリコン膜52をエッチングし、第1のホール52aを形成する。その後、エッチングガスを塩素系のガスに変えて、第1のホール52aの下の熱酸化膜51をエッチングして第2のホール51aを形成する。
【0228】
そして、エッチングガスをそのままにして更にエッチングを進めることにより、各ホール51a、52aの下のシリコン基板50をエッチングして、深さが約300nm程度のSTI(Shallow Trench Isolation)用の溝50aを形成する。なお、溝50aの幅は特に限定されないが、本実施形態ではその幅を約40μmとする。
【0229】
その後に、第1のレジストパターン53を除去する。
【0230】
次に、図35(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、プラズマCVD法により全面に酸化シリコン膜を形成してそれにより溝50aを完全に埋め込む。その後、窒化シリコン膜52を研磨ストッパとして使用しながらその酸化シリコン膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により研磨し、窒化シリコン膜52の上面から除去すると共に、溝50a内に残された酸化シリコン膜を素子分離絶縁膜54とする。なお、窒化シリコン膜52は、このCMPによって膜減りしてその厚さが約50nm程度にまで薄くなる。
【0231】
また、上記ではSTI用の素子分離絶縁膜54を形成したが、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により素子分離絶縁膜を形成してもよい。
【0232】
次いで、図35(b)に示すように、燐酸を用いて窒化シリコン膜52をウエットエッチングして除去する。
【0233】
次に、図36(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0234】
まず、熱酸化膜51をスルー膜として使用しながら、シリコン基板50にボロン等のp型不純物をイオン注入してpウエル55を形成する。その後に、このイオン注入によってダメージを受けた熱酸化膜51をウエットエッチングして除去し、シリコン基板50の清浄面を露出させる。そのウエットエッチングでは、例えばフッ酸溶液がエッチング液として使用される。
【0235】
続いて、シリコン基板50を再び熱酸化して厚さ約5nmの熱酸化膜を形成し、それをゲート絶縁膜56とする。
【0236】
その後、シランを反応ガスとして使用するCVD法により、素子分離絶縁膜54とゲート絶縁膜56の上に導電膜57としてポリシリコン膜を厚さ約100nm程度に形成する。
【0237】
次に、図36(b)に示すように、導電膜57の上に第1のレジスト層58を形成する。
【0238】
そして、図1に示した電子ビーム露光装置1内にシリコン基板50を入れ、電子ビームEBによりその第1のレジスト層58を露光することにより、第1のレジスト層58にゲート電極形状の第1の潜像58aを形成する。
【0239】
露光に際しては、第1〜第4実施形態に従って露光データDEを補正する。これにより、電子ビームEBの近接効果が原因で第1の潜像58aの形状や大きさが崩れるのが抑制され、設計幅に近い幅を有する第1の潜像58aを第1のレジスト層58に形成することができる。
【0240】
次いで、図37(a)に示すように、第1のレジスト層58を現像することにより、上記の第1の潜像58aを第1のレジストパターン58bとして残す。
【0241】
そして、その第1のレジストパターン58bをマスクにし、塩素系のガスをエッチングガスとするRIEにより導電膜57を選択的にエッチングし、ゲート電極57aを形成する。
【0242】
この後に、第1のレジストパターン58bは除去される。
【0243】
次に、図37(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0244】
まず、ゲート電極57aをマスクにしながらシリコン基板50にヒ素等のn型不純物をイオン注入することにより、ゲート電極57aの側方のシリコン基板50にn型ソース/ドレインエクステンション59を形成する。
【0245】
次いでCVD法によりシリコン基板50の上側全面に酸化シリコン膜等の絶縁膜を形成した後、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極57aの側面に絶縁性サイドウォール60として残す。
【0246】
その後、ゲート電極57aと絶縁性サイドウォール60をマスクにして、リン等のn型不純物をシリコン基板50にイオン注入する。これにより、ゲート電極57aの側方のシリコン基板50に、n型ソース/ドレインエクステンション59よりも深くて不純物濃度の高いn型ソース/ドレイン領域61が形成される。
【0247】
続いて、図38(a)に示すように、シリコン基板50の上側全面にスパッタ法によりコバルト膜を形成した後、RTA(Rapid Thermal Anneal)によりコバルトとシリコンとを反応させる。続いて、素子分離絶縁膜54等の上で未反応となっているコバルト膜をウエットエッチングにより除去し、ソース/ドレイン領域61の上にコバルトシリサイド層62を残す。そのコバルトシリサイド層はゲート電極57aの上面にも形成され、それによりゲート電極57aはポリサイド構造となる。
【0248】
次いで、図38(b)に示すように、シリコン基板50の上側全面にエッチングストッパ膜63として窒化シリコン膜をCVD法により形成し、更にその上にCVD法により酸化シリコン膜等の絶縁膜64を形成して、これらの膜63、64を層間絶縁膜65とする。その後に、層間絶縁膜65の上面をCMP法により研磨して平坦化する。その平坦化の結果、層間絶縁膜65の厚さは、シリコン基板50の平坦面上で約700nmとなる。
【0249】
次に、図39(a)に示すように、層間絶縁膜65の上に第2のレジスト層68を形成する。
【0250】
そして、第1〜第4実施形態に従って補正された露光データDEに基づいて、露光装置1(図1参照)内において電子ビームEBにより第2のレジスト層68を露光することにより、ホール形状の第2の潜像68aを第2のレジスト層68に形成する。
【0251】
このように第1〜第4実施形態に従って露光データDを補正することで、電子ビームEBの近接効果が原因で第2の潜像68aの形状や大きさが崩れるのが抑制され、第2の潜像68aの幅を設計幅に近づけることが可能となる。
【0252】
その後に、図39(b)に示すように、第2のレジスト層68を現像することにより第2の潜像68aを除去し、第2の窓68bを備えた第2のレジストパターン68cを形成する。
【0253】
次に、図40(a)に示すように、第2のレジストパターン68cをマスクにするRIEにより層間絶縁膜65をエッチングして、コバルトシリサイド層62に至る深さのコンタクトホール65aを層間絶縁膜65に形成する。
【0254】
そのエッチングは、絶縁膜64に対するエッチングとエッチングストッパ膜63に対するエッチングとの2ステップで行われ、エッチングストッパ膜63のエッチングでは下地のコバルトシリサイド層62がエッチングストッパとして機能する。
【0255】
そして、これらのエッチングにおけるエッチングガスとしては、絶縁膜64に対してはC4F8、O2、及びArの混合ガスが使用され、エッチングストッパ膜63に対してはC4F8、CF4、O2、及びArの混合ガスが使用される。
【0256】
この後に、第2のレジストパターン68cは除去される。
【0257】
次に、図40(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0258】
まず、コンタクトホール65aの内面と層間絶縁膜65の上面に、スパッタ法によりチタン膜と窒化チタン膜とをこの順に形成し、それらをグルー膜とする。続いて、このグルー膜の上に、六フッ化タングステンを反応ガスとして使用するCVD法によりタングステン膜を形成し、そのタングステン膜によりコンタクトホール65aを完全に埋め込む。その後に、層間絶縁膜65上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により除去し、それらの膜をホール65aの中に導電性プラグ69として残す。その導電性プラグ69は、n型ソース/ドレイン領域61と電気的に接続される。
【0259】
ここまでの工程により、ゲート電極57aやn型ソース/ドレイン領域61等を有するMOSトランジスタTRの基本構造が完成したことになる。
【0260】
以上説明した本実施形態によれば、図36(b)と図39(a)を参照して説明したように、第1のレジスト層58と第2のレジスト層68を電子ビームEBで露光するときに、第1〜第4実施形態で説明した露光方法を採用する。
【0261】
そのため、露光時の近接効果によって各レジスト層58、68に形成される潜像58a、68aの形状と大きさが崩れるのを抑制でき、ゲート電極57aやコンタクトホール65a等のデバイスパターンの寸法を設計値に近づけることが可能となる。
【0262】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0263】
(付記1) 複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、
露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、
前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、
前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、
前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、
前記露光量を割り当てた後、前記露光データに基づいて前記レジスト層を露光するステップと、
を有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
【0264】
(付記2) 前記露光量の割り当ての後、複数の前記マスクパターンを前記露光量毎に複数のグループに分けるステップと、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクの中から、前記グループ内におけるのと同一の配列で前記マスクパターンが形成されたブロックを選択するステップとを更に有し、
前記レジスト層を露光するステップにおいて、前記選択されたブロックを利用して、ブロック露光を行うことを特徴とする付記1に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0265】
(付記3) 前記レジスト層の露光は、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクを用い、前記ブロック内で前記露光量が最も小さい前記マスクパターンの該露光量で一括露光し、
前記露光量が最も小さい前記マスクパターン以外の前記マスクパターンに対しては追加露光を行い、該露光量の不足分を補うことを特徴とする付記1に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0266】
(付記4) 前記追加露光は、前記マスクパターンよりも大きな断面形状に整形された前記荷電粒子のビームを前記マスクパターンに照射することにより行われることを特徴とする付記3に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0267】
(付記5) 前記露光マスクは、形状と大きさが異なる複数の前記マスクパターンを備えており、
前記デバイスパターンに前記マスクパターンを割り当てるステップは、
前記複数のマスクパターンのうち、前記補正後の前記デバイスパターンとの形状差が最も小さい前記マスクパターンを前記デバイスパターンに割り当てることにより行われることを特徴とする付記1〜4のいずれかに記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0268】
(付記6) 前記複数のマスクパターンの中に、前記補正後の前記デバイスパターンとの相似なマスクパターンがない場合、前記補正後の前記バイスパターンと面積が同一の仮想矩形を想定し、前記複数のマスクパターンの中で前記仮想矩形との形状差が最も小さい前記マスクパターンを前記デバイスパターンに割り当てることを特徴とする付記5に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0269】
(付記7) 前記マスクパターンへの前記露光量の割り当ては、
前記補正後の前記デバイスパターンを積分領域にしたときの前記前方散乱成分の積分値で定義される前方散乱強度を、前記マスクパターンの中心からの距離の関数として算出し、
前記距離が前記設計幅の1/2のときの前記前方散乱強度の値を求め、
前記補正後の前記デバイスパターンについての荷電粒子の後方散乱強度を求め、
前記レジスト層が解像するのに要する前記荷電粒子の最低限の蓄積エネルギと、前記前方散乱強度の前記値と前記後方散乱強度の和との比を、前記露光量として算出することにより行われることを特徴とする付記1〜付記6のいずれかに記載の露光方法。
【0270】
(付記8) 複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、
露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、
前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、
前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、
前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、
前記露光量を割り当てた後、前記設計データに基づいて、半導体基板の上方に形成されたフォトレジスト層を露光するステップと、
前記フォトレジスト層を現像してレジストパターンにするステップと、
前記レジストパターンをマスクにしながら、該レジストパターンの下の膜をエッチングすることにより、デバイスパターンを形成するステップと、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0271】
(付記9) 前記露光量の割り当ての後、複数の前記マスクパターンを前記露光量毎に複数のグループに分けるステップと、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクの中から、前記グループ内におけるのと同一の配列で前記マスクパターンが形成されたブロックを選択するステップとを更に有し、
前記レジスト層を露光するステップにおいて、前記選択されたブロックを利用して、ブロック露光を行うことを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0272】
(付記10) 前記レジスト層の露光は、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクを用い、前記ブロック内で前記露光量が最も小さいマスクパターンの該露光量で一括露光し、
前記露光量が最も小さいマスクパターン以外の前記マスクパターンに対しては追加露光を行い、該露光量の不足分を補うことを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0273】
(付記11) 前記デバイスパターンは、ホール又はゲート電極であることを特徴とする付記8〜10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0274】
1…電子ビーム露光装置、2…露光データ作成部、3…制御部、4…電子光学系、5…コラム、11…電子銃、12…整形マスク、13…第1のマスク偏向器、14…露光マスク、14a…開口、14b…マスクパターン、14c…代表マスクパターン、15…第2のマスク偏向器、16…フォーカスレンジ、17…第1の偏向器、18…第2の偏向器、19…ステージ、20…半導体基板、30…デバイスパターン、30x…一辺、30y…補正後のデバイスパターン、31…追加の露光パターン、32…仮想正方形、35…仮想矩形、38…長尺状のデバイスパターン、38a〜38g…矩形パターン、50…シリコン基板、50a…溝、51…熱酸化膜、51a…第2のホール、52…窒化シリコン膜、52a…第1のホール、53…第1のレジストパターン、53a…第1の窓、54…素子分離絶縁膜、55…pウエル、56…ゲート絶縁膜、57…導電膜、57a…ゲート電極、58…第1のレジスト層、58a…第1の潜像、58b…第1のレジストパターン、59…n型ソース/ドレインエクステンション、60…絶縁性サイドウォール、61…n型ソース/ドレイン領域、62…コバルトシリサイド層、63…エッチングストッパ膜、64…絶縁膜、65…層間絶縁膜、68…第2のレジスト層、68a…第2の潜像、68b…第2の窓、68c…第2のレジストパターン、69…導電性プラグ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム露光方法と半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジストを露光する露光装置としては、光露光装置と電子ビーム露光装置がある。なかでも電子ビーム露光装置は、光露光装置のようなレチクルが不要であるため、レチクルを作製するための時間とコストを削減でき、エンジニアリングサンプルのような少量生産に適している。
【0003】
その電子ビーム露光装置においては、スループットを向上させるために、高頻度で使用される複数のマスクパターンをブロックマスクに形成し、それら複数のマスクパターンを一括して露光する部分一括露光方法が採用されている。
【0004】
ところが、半導体装置の微細化によって上記のパターンが微細化されると、隣接するマスクパターンの各々に入射した電子がレジスト内で散乱し、いわゆる近接効果によって出来上がりのレジストパターンの形状が目標から外れてしまう。
【0005】
そのような近接効果を抑制する方法として、例えば、ブロックマスク内に搭載してあるマスクパターンの辺の位置を調節して、隣接するマスクパターン同士が影響しあうのを防止する方法がある。但し、この方法だと、露光対象の品種が変更された場合に、ブロックマスク内のマスクパターンをその品種に対して流用することができなくなるため、品種毎にブロックマスクが必要になってしまい、時間とコストについてのメリットを活かせなくなる。
【0006】
また、近接効果を抑制するために、ブロックパターンに搭載されたマスクパターンを予め一律に小さくしておく方法もある。しかしながら、近接効果の影響はマスク上の場所によって異なるため、全てのマスクパターンを一律に小さくしたのではマスク上の全ての場所において近接効果を抑制できないおそれがある。
【0007】
一方、近接効果が小さくて露光量が不足する部分の露光を補うために補助露光を行う方法もある。この方法では、ブロックマスク内の一つのマスクパターンを小領域に細分し、各小領域に最適な補助露光量を算出して、それぞれの小領域に補助露光を行うことになる。但し、これでは補助露光の算出に要する時間が長期に及ぶと共に、その算出のために計算機内のメモリ等の資源の多くが占有されてしまう。更に、補助露光によりショット数が増加し、電子ビーム露光装置のスループットが低下するという点でもこの方法は不利である。
【0008】
また、電子の散乱がレジストに与える影響を考慮しつつ、既存のブロックマスク内のマスクパターンの中に目標とするレジストパターンの形状に近いものがあれば、そのマスクパターンを用いて露光を行う方法もある。しかしながら、この用法では隣接するマスクパターン間の近接効果を考慮していないので、近接効果が大きい場合には出来上がりのレジストパターンの形が目標から外れてしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S. Manaki et al., "New Electron Beam Proximity Effects Correction Approach for 45 and 32 nm Nodes", Japan Journal of Applied Physics, Vol.45, 6462 (2006)
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−353101号公報
【特許文献2】特開2007−227564号公報
【特許文献3】特開2003−332225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
荷電粒子ビーム露光方法と半導体装置の製造方法において、近接効果を考慮して露光データを補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の開示の一観点によれば、複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、前記露光量を割り当てた後、前記露光データを用いて前記レジスト層を露光するステップとを有する荷電粒子ビーム露光方法が提供される。
【0013】
また、その開示の別の観点によれば、複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、前記露光量を割り当てた後、前記設計データに基づいて、半導体基板の上方に形成されたフォトレジスト層を露光するステップと、前記フォトレジスト層を現像してレジストパターンにするステップと、前記レジストパターンをマスクにしながら、該レジストパターンの下の膜をエッチングすることにより、デバイスパターンを形成するステップとを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
開示の荷電粒子ビーム露光方法によれば、デバイスパターンの形状を補正した後、そのデバイスパターンと重心が一致するようにマスクパターンを割り当てる。このように補正後のデバイスパターンにマスクパターンを割り当てると、設計上のパターン密度が密な領域ではマスクパターン同士の間隔を広げることができる。そのため、パターンの疎密差に起因した露光量不足を解消すべくマスクパターンへの露光量を増やすと、隣接するマスクパターンの像が互いに寄る方向に移動し、設計通りの間隔にデバイスパターンを形成することができる。これにより、近接効果に起因したデバイスパターンの位置ずれや、形状の崩れを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、第1実施形態に係る電子ビーム露光装置の構成図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るブロックマスクの要部拡大平面図である。
【図3】図3は、可変矩形露光について説明するための斜視図である。
【図4】図4は、ブロック露光について説明するための斜視図である。
【図5】図5は、第1実施形態におけるデバイスパターンの配列の一例について示す平面図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る露光データの補正方法について示すフローチャートである。
【図7】図7は、電子の前方散乱と後方散乱について説明するための断面図である。
【図8】図8は図5の一部拡大平面図である。
【図9】図9は、第1実施形態において、補正前の二つのデバイスパターン同士の間隔と、補正後の辺の移動量との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、第1実施形態において、補正前と補正後の前方散乱強度Ff0(x,y)を模式的に示すグラフである。
【図11】図11(a)、(b)は、第1実施形態において、デバイスパターンへの代表マスクパターンの割り当て方について示す平面図である。
【図12】図12は、第1実施形態における式(7)、(8)の物理的な意味を説明するための前方散乱強度のグラフである。
【図13】図13は、第1実施形態において計算された前方散乱強度の一例を模式的に示す平面図である。
【図14】図14は、第1実施形態における面積密度法について説明するための拡大平面図である。
【図15】図15は、第1実施形態における後方散乱比率ηの定義について示すための図である。
【図16】図16は、第1実施形態において算出された露光量の一例を模式的に表す平面図である。
【図17】図17は、第1実施形態において、複数の代表マスクパターンの各々を露光両毎にグループ分けした一例を示す平面図である。
【図18】図18は、第1実施形態において、マスクパターンのブロックの選択の仕方の一例について模式的に示す平面図である。
【図19】図19は、第1実施形態のステップS3、S4を省いたときの問題点について説明するための平面図である。
【図20】図20は、第1実施形態において、基準値e0を設定する際のシミュレーションについて示す平面図である。
【図21】図21は、第1実施形態のステップS1〜S3を行って得られた補正後のデバイスパターンの配置を示す平面図である。
【図22】図22は、図21のデバイスパターンにマスクパターンcを割り当て、デバイスパターンの露光を行った場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図23】図23は、図21のような形状補正をすることなく、補正がされていない露光データをそのまま使用した場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】図24は、図21に示した補正後のデバイスパターンのそれぞれに、第1実施形態のステップS4に従って代表パターンを割り当てたときの平面図である。
【図25】図25は、第1実施形態に従って露光をした場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図26】図26は、第2実施形態に係る荷電粒子ビーム露光方法のフローチャートである。
【図27】図27は、第2実施形態のステップS10の処理内容を模式的に説明するための平面図である。
【図28】図28は、第2実施形態において、ブロック露光における電子ビームの散乱強度と、レジスト層内の位置との関係を模式的に示すグラフである。
【図29】図29は、第2実施形態における追加露光について模式的に示す平面図である。
【図30】図30は、第2実施形態における追加露光を行う場合の電子ビームの散乱強度と、レジスト層内の位置との関係を模式的に示すグラフである。
【図31】図31は、第3実施形態で使用される複数種類の代表マスクパターンの一例を示す平面図である。
【図32】図32(a)、(b)は、第3実施形態において、デバイスパターンへの代表マスクパターンの割り当て方法について示す平面図である。
【図33】図33(a)、(b)は、長尺状のデバイスパターンを得るための露光方法について示す平面図である。
【図34】図34(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図35】図35(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図36】図36(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図37】図37(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図38】図38(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図39】図39(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図40】図40(a)、(b)は、第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その7)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態で使用される電子ビーム露光装置1の構成図である。
【0017】
この電子ビーム露光装置1は、露光データ作成部2と、制御部3と、電子光学系4とを有する。
【0018】
このうち、電子光学系4は内部が減圧されたコラム5を備えており、そのコラム5の内部には電子線EBを生成するための電子銃11が設けられる。
【0019】
そして、電子銃11の下流には、アパーチャ12aが形成された整形マスク12が設けられる。アパーチャ12aの平面形状は矩形状であり、整形マスク12を透過した電子線EBはその断面形状が矩形状に整形される。
【0020】
更に、その整形マスク12の下流には、第1のマスク偏向器13、露光マスク14、及び第2のマスク偏向器15が設けられる。電子ビームEBは、各偏向器13、15により偏向し、露光マスク14内の所定の位置にあるマスクパターンに偏向される。
【0021】
なお、露光マスク14は、不図示の駆動手段に接続されており、後述のマスクパターンが電子ビームEBに当たるように水平面内を移動することができる。この駆動手段は主に露光を開始する前に露光マスク14の位置を調整するため用いられ、露光中は第1のマスク偏向器13や第2のマスク偏向器15により露光マスク14の所定のマスクパターンに電子ビームEBを偏向する。
【0022】
そして、第2のマスク偏向器15の下流には、半導体基板20の表面上に電子ビームEBの焦点を合わせるためのフォーカスレンジ16と、半導体基板20の所定の部分に電子ビームEBを偏向するための第1の偏向器17と第2の偏向器18が設けられる。
【0023】
なお、半導体基板20は、ステージ19上に載置されており、ステージ19によって水平面内を移動する。
【0024】
このような電子ビーム露光装置1においては、デバイスパターンの設計データD0に基づいて露光データ作成部2が露光データDEを作成する。設計データD0には、コンタクトホール等のデバイスパターンの位置と形状とが含まれる。そして、露光データDEには、設計データD0で特定されるデバイスパターンを得るための露光量や電子ビームEBの偏向量等が含まれる。
【0025】
なお、露光データ作成部2には、後述のように露光データDEを補正する際に使用する記憶部2aが設けられる。
【0026】
制御部3は、そのような露光データDEに基づいて、電子光学系4の各部に制御信号を出力する。
【0027】
例えば、電子銃11から発生する電子ビームEBの強度は、強度信号SIにより制御される。
【0028】
また、ブロックマスク14上での電子ビームEBの偏向量は、マスク偏向信号SMDにより制御される。更に、ブロックマスク14の移動量はマスク移動信号SMSにより制御され、電子ビームEBの焦点はフォーカス信号SFにより制御される。そして、半導体基板20上での電子ビームEBの偏向量は基板偏向信号SSにより制御され、ステージ19の移動量はステージ制御信号SCにより制御される。
【0029】
図2は、上記したブロックマスク14の要部拡大平面図である。
【0030】
ブロックマスク14には、開口14aとマスクパターン14bとが形成される。
【0031】
このうち、開口14aは矩形状の平面形状を有し、後述のように可変矩形露光を行う際に使用される。
【0032】
一方、マスクパターン14bは、コンタクトホール等のデバイスパターンに対応するものであって、デバイスへの使用頻度が高いピッチと個数でブロック単位で形成される。
【0033】
例えば、この例では第1〜第3のブロックBLK1〜BLK3が画定されており、第1のブロックBLK1と第2のブロックBLK2では三つのマスクパターン14bが形成される。そして、第3のブロックBLK3では、3×3個の配列でマスクパターン14bが形成される。
【0034】
更に、本実施形態では、後述の露光データの補正の際に使用する代表ブロックBLK0も露光マスク14に画定される。その代表ブロックBLK0には、一つの代表マスクパターン14cのみが形成される。
【0035】
代表マスクパターン14cの大きさと平面形状は特に限定されないが、本実施形態では他のブロックBLK1〜BLK3におけるマスクパターン14bと同一の大きさを有する正方形に代表マスク14cを形成する。本実施形態では、代表ブロックBLK0に収まる大きさである一辺が4μm以下の正方形状に代表マスクパターン14cを形成する。
【0036】
図3は、そのような露光マスク14を利用した可変矩形露光について説明するための斜視図である。
【0037】
可変矩形露光においては、アパーチャ12aで整形された電子ビームEBの一部を露光マスク14の開口14aに通すことで、アパーチャ12aと開口14aとの重複部分に相当する形状を基板20上に描画する。
【0038】
一方、図4は、上記の露光マスク14を利用したブロック露光について説明するための斜視図である。
【0039】
ブロック露光では、ブロックBLK1〜BLK4のそれぞれに電子ビームEBが照射され、各ブロックBLK1〜BLK4を通った電子ビームEBによって、ブロック内のマスクパターン14bが一括して基板20上に描画される。
【0040】
ところで、図4のようにブロック露光を行う際には、一つのブロック内で隣接するパターン14bを通った電子ビームEBが互いに影響を及ぼしあう近接効果が発生する。その近接効果により、基板20上のレジストパターンの幅が設計幅から外れてしまうことになる。
【0041】
そこで、本実施形態では、次のように露光データ作成部2(図1参照)において露光データDEを補正することにより、近接効果を抑制するようにする。
【0042】
以下では、その補正方法について、デバイスパターンが図5のように配列されている場合を例にしながら説明する。
【0043】
図5は、デバイスパターン30の配列の一例を示す平面図である。デバイスパターン30は例えばコンタクトホールであり、この例ではパターン密度が疎な領域Aと密な領域Bに配列されている。
【0044】
また、図6は、本実施形態に係る露光方法について示すフローチャートである。
【0045】
まず、最初のステップS1では、露光データ作成部2において、既述の露光データDEを準備する。
【0046】
次に、ステップS2に移り、以下のようにして近接効果を考慮しつつ露光データDEを補正する。
【0047】
近接効果を考慮するには、レジスト層の一点に入射した電子がその周囲に与える影響を考える必要がある。その影響は次の式(1)で定義される露光強度分布により把握することができる。
【0048】
【数1】
【0049】
f(x,y)は、EID(Exposure Intensity Distribution)関数とも呼ばれ、レジスト層の一点(0,0)に入射した電子によって点(x,y)におけるレジスト層に蓄積される単位面積あたりのエネルギを表す。
【0050】
レジスト層へのエネルギの蓄積は、前方散乱した電子による影響と、後方散乱した電子による影響の総和として考えることができる。
【0051】
図7は、電子の前方散乱と後方散乱について説明するための断面図である。
【0052】
図7のように、基板20上に形成されたレジスト層30に電子ビームEBが入射すると、電子の中には基板20の深くで反射して再びレジスト層30に戻るものや、基板20の表面近くで反射してレジスト層30に戻るものもある。
【0053】
よって、レジスト層30に蓄積されるエネルギは、そのように反射する前の電子により与えられたものと、反射後の電子によって与えられたものの和となる。
【0054】
本実施形態では、基板20の深くで反射した電子によってレジスト層30に蓄積されたエネルギを後方散乱成分fb(x,y)と定義する。そして、反射前にレジスト層30を通過した電子や、基板20の表面近くで反射した電子によってレジスト層30に蓄積されたエネルギを前方散乱成分ff(x,y)と定義する。
【0055】
式(1)のEID関数において、右辺第1項と第2項の和が前方散乱成分ff(x,y)に相当し、右辺第3項が後方散乱成分fb(x,y)に相当する。すなわち、次の式(2)、(3)が成り立つ。
【0056】
【数2】
【0057】
【数3】
【0058】
また、式(1)〜(3)において、βfは第1前方散乱径であり、レジスト層30を通過する電子によってレジスト層30に蓄積されるエネルギを表す。また、βfは第2前方散乱径であって、基板20の表面近くで反射した電子によってレジスト層30に蓄積されるエネルギを表す。そして、βbは後方散乱径であり、基板20の深くで反射した電子によってレジスト層30に蓄積されるエネルギを表す。
【0059】
また、ηaは第2前方散乱比率、ηbは後方散乱比率を表す。
【0060】
本ステップS2では、レジスト層30の一点に入射した電子がその周囲のレジスト層30に与える影響のうち、式(2)の前方散乱成分ff(x,y)に起因したものを、図8の領域Sの範囲内で考慮する。
【0061】
図8は図5の一部拡大平面図である。
【0062】
図8に示されるように、領域Sは、一つのデバイスパターン30の一辺30xに中心座標(xi,yi)がある円形の領域である。そして、その領域Sは、中心座標(xi,yi)が存在するデバイスパターン30の近傍の複数のデバイスパターン30に重なるように設定される。
【0063】
そして、この領域Sを積分領域にし、次の式(4)で表される積分値Ff0(xi,yi)を算出する。
【0064】
【数4】
【0065】
式(4)において、関数pは次の式(5)で定義される。
【0066】
【数5】
【0067】
すなわち、点(x',y')がいずれかのデバイスパターン30に属している場合にはp(x',y')は1に等しく、それ以外の場合にはp(x',y')は0となる。
【0068】
このような関数p(x',y')の性質から、式(4)の積分値Ff0(xi,yi)は、露光強度分布の中心(xi,yi)の近傍にあるデバイスパターン30の各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分ff(x,y)を積分して得られた積分値と等価になる。なお、中心(xi,yi)のことを、以下では評価点(xi,yi)という場合もある。
【0069】
また、このように定義される積分値Ff0(xi,yi)は、前方散乱強度と呼ばれる。
【0070】
次に、ステップS3に移行する。
【0071】
ステップS3では、上記の前方散乱強度Ff0(xi,yi)が基準値e0に等しくなるように、各デバイスパターン30の形状を補正する。そのような補正は、例えば、各デバイスパターン30の各辺を移動することにより逐次的に行われ、n回目の辺の移動量ΔLとn+1回目の辺の移動量ΔLとの間に実質的な差がなくなった場合に補正を終了する。
【0072】
図8では、そのようにして形状を補正した後のデバイスパターン30yを点線で示している。
【0073】
或いは、上記のように逐次的な計算を行うのに代えて、ルールベース補正でデバイスパターン30の形状を補正するようにしてもよい。
【0074】
次の表1は、そのようなルールベース補正で使用されるテーブルの一例である。
【0075】
【表1】
【0076】
このテーブルは、露光データ作成部2(図1参照)の記憶部2aに格納されており、図9のグラフを利用して作成される
図9のグラフA〜Cは、補正前の二つのデバイスパターン30同士の間隔pと、補正後の辺の移動量ΔLとの関係を示すものである。また、図9の下側には各グラフA〜Cの意味を説明するための模式図を併記してある。
【0077】
このうち、グラフAは、中心(xi,yi)が存在するデバイスパターン30の他に、隣接する8個のデバイスパターン30が積分範囲Sに重なる場合のものである。また、グラフBは、中心(xi,yi)が存在するデバイスパターン30の他に、隣接する3個のデバイスパターン30が積分範囲Sに重なる場合のものである。そして、グラフCは、中心(xi,yi)が存在するデバイスパターン30の他に、隣接する1個のデバイスパターン30のみが積分範囲Sに重なる場合のものである。
【0078】
これらのグラフの縦軸は、式(4)の前方散乱強度Ff0(xi,yi)が既述の基準値e0になる場合のデバイスパターン30の辺の移動量ΔLである。
【0079】
実際に露光データDEを補正する場合には、デバイスパターン30の各辺を連続的に移動させるよりも、各辺の移動量を整数単位でステップ的に各辺を移動する方が簡単である。
【0080】
例えば、図9のグラフCでは、p<70nmのときは、ΔLの小数点以下を無視してΔLを0nmとする。また、70nm≦p<80nmのときもはΔLの小数点以下を無視してΔLを1nmとし、80nm<pのときは小数点以下を切り上げてΔLを2nmとする。これをまとめたものが上記の表1のテーブルである。
【0081】
本ステップS3では、そのようなテーブルを用いたルールベースによる補正、或いは式(4)を用いた数値計算により、デバイスパターン30の各辺を移動量ΔLだけ移動させる。
【0082】
図10は、補正前と補正後の前方散乱強度Ff0(x,y)を模式的に示すグラフである。
【0083】
なお、図10では、図の簡略化のために、密な領域Bにおけるデバイスパターン30の個数を3個に留めてある。
【0084】
図10に示されるように、補正前では、密な領域Bにおける前方散乱強度Ff0(x,y)は、疎な領域Aにおけるよりも上側にシフトする。これは、密な領域Bでは、それぞれのデバイスパターン30が隣接するデバイスパターン30から影響を受けるためである。
【0085】
これに対し、補正前の疎な領域Aでは、周囲のデバイスパターン30からの影響がないので、密な領域Bと比較して前方散乱強度Ff0(x,y)は下側にシフトする。
【0086】
そして、補正を行った後では、基準値e0をスライスレベルとしたときのグラフの幅Wが、各デバイスパターン30yにおいて同一となる。
【0087】
よって、このように補正された露光データDEを用いて露光を行えば、各デバイスパターン30は、近接効果によって像の大きさが不均一になることなく、レジスト層において同一の幅で解像されることになる。
【0088】
ただし、このように補正を行うためには、補正によって辺の長さがまちまちとなった各デバイスパターン30yを個別に描画しなければならいので、ブロック単位で一括露光ができなくなり、電子ビーム露光装置のスループットが低下してしまう。
【0089】
そこで、本実施形態では、以下のようにして補正後のデバイスパターン30yを代表マスクパターン14cで描画することにし、露光量の過不足については別途補正することとする。
【0090】
まず、ステップS4では、図11(a)に示すように、上記の補正後の設計データDEにおけるデバイスパターン30yのそれぞれに、該デバイスパターン30と重心g同士が一致するように、代表マスクパターン14c(図2参照)を割り当てる。なお、図11(a)では、補正後のデバイスパターン30yの平面形状が正方形である場合を前提としている。
【0091】
次いで、代表マスクパターン14cを透過した電子がレジスト層に与える影響を把握するめ、次の式(6)で定義される前方散乱強度Ff(x,y,W,H)を考える。
【0092】
【数6】
【0093】
式(6)で定義される前方散乱強度Ff(x,y,W,H)は、式(4)で定義されるFf0(xi,yi)とは異なり、積分範囲が対象となる一つのデバイスパターン30yに限定されている。
【0094】
すなわち、この前方散乱強度Ff(x,y,W,H)は、幅がWで高さがHのデバイスパターン30yに均一に電子ビームを照射した場合において、点(x,y)におけるレジスト層に蓄積されるエネルギの前方散乱成分を表すものである。そして、前方散乱強度Ff(x,y,W,H)は、デバイスパターン30yの中心(0,0)からの距離(x,y)の関数となる。
【0095】
このような前方散乱強度Ff(x,y,W,H)を用いると、レジストパターンの設計幅W'は、次の式(7)を満たす。
【0096】
【数7】
【0097】
すなわち、デバイスパターン30yの中心からの距離xが設計幅W'の1/2のときの前方散乱強度が基準値e0となる。
【0098】
なお、補正後のデバイスパターン30yの形状が正方形ではなく、図11(b)のように各辺の長さW、Hが異なる長方形になることがある。その場合には、図11(b)の点線に示すように、補正後のデバイスパターン30yと面積が同一の仮想正方形32を想定する。その仮想正方形32の一辺の幅W"は(W×H)1/2となる。そして、その幅W"を式(7)の幅Wに代入し、これ以降の計算を行う。
【0099】
次いで、式(7)のW'を利用して、マスクパターン14cの各々について次の式(8)により前方散乱強度ekを求める。
【0100】
【数8】
【0101】
式(8)におけるW0は、正方形状の代表マスクパターン14cの一辺の幅である。また、ekにおけるkは適当な整数であって、同一の前方散乱強度同士をグループ化するための添え字である。
【0102】
図12は、これらの式(7)、(8)の物理的な意味を説明するための前方散乱強度のグラフである。
【0103】
代表マスクパターン14cは、その幅W0が補正後のデバイスパターン30yの幅Wよりも狭い。よって、代表マスクパターン14cを通った電子ビームEBによってレジスト層にエネルギが蓄積される範囲は、補正後のデバイスパターン30yにおけるよりも狭くなる。
【0104】
そのため、図12に示すように、代表マスクパターン14cの前方散乱強度Ff(x,y,W0,W0)のグラフはデバイスパターン30yの前方散乱強度Ff(x,y,W,W)よりも下側にシフトする。
【0105】
そして、式(7)、(8)によれば、各グラフの幅がW'となるときのスライスレベルが、代表マスクパターン14cの前方散乱強度Ff(x,y,W0,W0)についてはekに、デバイスパターン30の前方散乱強度Ff(x,y,W,W)についてはe0に等しいことになる。
【0106】
なお、W0とW'との差ΔW(=W0−W')はプロセスシフトと呼ばれる。
【0107】
設計幅W'よりも代表マスクパターン14cの幅W0を小さくし、プロセスシフトΔWを負の値にすると、露光時に代表マスクパターン14cを通る電子ビームの強度プロファイルが急峻となり、高コントラストを実現できる。
【0108】
本ステップでは、式(8)に従って、各デバイスパターン30yに割り当てられた代表マスクパターン14cのそれぞれに対して前方散乱強度ekを計算する。
【0109】
図13は、その計算結果の一例を模式的に示す平面図である。
【0110】
図13の例では、四つの異なる値の前方散乱強度e0〜e3が代表マスクパターン14cに付与されている。
【0111】
次に、ステップS5に移り、次のようにして代表マスクパターン14cのそれぞれに露光量を割り当てる。
【0112】
露光量の割り当てにあたっては、まず、面積密度法により、電子ビームEBの後方散乱強度を次のように計算する。
【0113】
図14は、面積密度法について説明するための拡大平面図である。
【0114】
面積密度法では、図14に示すように、補正後の各デバイスパターン30yを細かいメッシュ状に分割する。メッシュの形状は正方形であり、その一辺の長さΔpは後方散乱長βbの1/10程度、例えば1μm程度とするのが好ましい。
【0115】
そして、各メッシュにおいて補正後のデバイスパターン30yが占める割合を露光データ作成装置2が計算する。その割合は面積密度αと呼ばれる。図14では、その面積密度αをメッシュ内に併記してある。
【0116】
その後、一つのデバイスパターン30yにおいて、面積密度αの最大値αmaxを抽出する。図14の例では、最大値αmaxは1である。
【0117】
次に、散乱比率ηを算出する。
【0118】
図15は、散乱比率ηの定義について示すための図である。
【0119】
図15では、式(3)で定義される後方散乱成分fb(x,y)のグラフと、横軸とで囲まれた部分の面積をIbで示している。なお、横軸の距離rはr=(x2+y2)1/2で定義される。
【0120】
更に、図15では、前方散乱成分ff(x,y)と後方散乱成分fb(x,y)の各グラフで囲まれた部分の面積をIfで示している。
【0121】
これらの面積Ib、Ifを用いて、散乱比率ηは次の式(9)で定義される。
【0122】
【数9】
【0123】
上記のαmaxとηとを用い、本実施形態では、補正後のデバイスパターン30yにおける電子ビームの後方散乱強度をαmax・ηと近似する。
【0124】
また、レジスト層が解像するのに要する電子ビームの最低限の蓄積エネルギをEthとするとき、露光量dkは次の式(10)を満たす。
【0125】
【数10】
【0126】
これから、露光量dkは次の式(11)のようになる。
【0127】
【数11】
【0128】
本実施形態では、式(11)を利用して、露光データ作成部2が露光量dkを算出する。なお、dkにおけるkは適当な整数であって、同一の露光量同士をグループ化するための添え字である。
【0129】
図16は、このようにして算出された露光量dkの一例を模式的に表す平面図である。
【0130】
図16の例では、四つの異なる値の露光量d0〜d3が各代表マスクパターン14cに付与されている。
【0131】
このような露光量dkで各デバイスパターン30を露光することにより、露光したレジスト層から得られるレジストパターンの幅を設計幅W'にすることができる。
【0132】
次に、ステップS6に移り、複数の代表マスクパターン14cの各々を、露光データ作成部2が露光量毎に複数のグループに分ける。
【0133】
図17は、そのようなグループ分けを先の図16の例に対して行った場合の平面図である。
【0134】
この例では、露光量がd0のグループG0、露光量がd1のグループG1、露光量がd2のグループG2、露光量がd3のグループG3に各デバイスパターン30のグループ分けを行う。
【0135】
次いで、ステップS7に移り、露光マスク14のブロックBLK0〜BLK3(図2参照)の中から、グループG0〜G3内におけるのと同一の配列でマスクパターン14bが形成されたブロックを選択する。
【0136】
図18は、そのような選択の仕方について模式的に示す平面図である。
【0137】
この例では、グループG0に対してブロックBLK3が選択され、グループG1に対してはブロックBLK1とブロックBLK2が選択される。そして、グループG2とグループG3に対しては代表グループBLK0が選択される。
【0138】
以上により、露光データDEの補正が終了した。
【0139】
この後は、ステップS8に移り、ステップS7で選択した各ブロックBLK1〜BLK3を用いて、露光データDEに基づいてレジスト層に対してブロック露光を行う。
【0140】
上記した本実施形態によれば、ステップS3においてデバイスパターン30の形状を一度補正した後、ステップS4において補正後デバイスパターン30yと重心gが一致するようにマスクパターン14cを割り当てる。
【0141】
図19は、これらのステップS3、S4を省いたときの問題点について説明するための平面図であって、レジストパターンにおけるデバイスパターン30の配置を示すものである。
【0142】
なお、図19では、設計上のデバイスパターン30を点線で示し、実際にレジストに形成されるデバイスパターン30を実線で示している。
【0143】
図19に示されるように、密な領域Bにおいて行列状に配置されたデバイスパターン30のうち、四隅のデバイスパターン30は、中央のデバイスパターン30と比べて周囲からの電子ビームの影響を受け難い。よって、四隅のデバイスパターン30については、設計幅を得るために、中央のデバイスパターン30と比べて露光量を上げる必要がある。その結果、矢印で示すように四隅のデバイスパターン30は中央に寄るようになり、設計通りの配列ピッチでデバイスパターン30を形成するのが困難となる。
【0144】
これに対し、本実施形態では、ステップS3で形状が補正されたデバイスパターン30と重心gが一致するようにマスクパターン14cを割り当てるので、密な領域Bでのマスクパターン14c同士の間隔を広げることができる。
【0145】
そのため、パターンの疎密差に起因した露光量不足を解消すべく四隅のマスクパターン14cへの露光量を増やすと、隣接するマスクパターン14cの像が互いに寄る方向に移動し、設計通りの間隔にデバイスパターン30を形成することができる。これにより、近接効果に起因したデバイスパターン30の位置ずれや、形状の崩れを抑制することが可能となる。
【0146】
次に、本実施形態のシミュレーション結果について説明する。
【0147】
このシミュレーションでは、式(1)のEID関数の形を次の式(12)のように仮定した。
【0148】
【数12】
【0149】
また、目標とするデバイスパターン30の設計幅W'は60nmとし、代表マスクパターン14cの幅W0は50nmとした。したがって、プロセスシフトΔW(=W0−W')は−10nmとなる。
【0150】
更に、デバイスパターン30同士の間隔の設計値については60nmとした。
【0151】
図20は、基準値e0を設定する際のシミュレーションについて示す平面図である。
【0152】
図20において、各デバイスパターン30に付されている数字は、デバイスパターン30の各々について計算したFf(xi,yi,W,H)の値である。その計算に際しては、W=H=50nmとした。また、(xi,yi)は各デバイスパターン30の評価点である。
【0153】
そして、本シミュレーションでは、図20における9個のデバイスパターン30のそれぞれのFf(xi,yi,W,H)の合計をe0に設定し、e0=0.528757とした。
【0154】
図21は、上記の条件でステップS1〜S3を行って得られた補正後のデバイスパターン30yの配置について示す平面図である。
【0155】
なお、図21においては、デバイスパターン30yの各辺の長さと、各デバイスパターン30y間の間隔がnm単位で併記してある。
【0156】
図22は、比較のために、図21のデバイスパターン30yにマスクパターン14cを割り当て、デバイスパターン30の露光を行った場合のシミュレーション結果を示す図である。なお、このシミュレーションでは、上記した本実施形態と異なり、図14、図15で説明したような後方散乱成分を考慮することなく露光量を設定した。これは、シミュレーションに用いたデバイスパターン30が後方散乱の広がりに比べて十分小さく、後方散乱の影響を無視できるためである。
【0157】
また、図22において、各デバイスパターン30の間の数字は隣接するパターン30の間隔を示す。また、デバイスパターン30の内側の数字は、上段が当該パターン30の幅Wを示し、下段が当該パターン30の高さHを示すものである。
【0158】
図22に示されるように、デバイスパターン30の形状を補正しただけでは、密な領域Bに、他のデバイスパターン30と比較して辺の長さが1nm以上乖離するデバイスパターン30が発生してしまう。
【0159】
また、図23は、比較のために、図21のような形状補正をすることなく、補正がされていない露光データDEをそのまま使用した場合のシミュレーション結果を示す図である。なお、図23における各数字の意味は図22におけるのと同様である。
【0160】
図23に示すように、デバイスパターン30の形状を補正しない場合には、各パターン30のそれぞれの辺の長さが設計幅(60nm)と比較して大きく乖離する。また、各パターン30の間隔も、設計値(60nm)から外れている。
【0161】
図24は、図21に示した補正後のデバイスパターン30yのそれぞれに、ステップS4に従って代表パターン14cを割り当てたときの平面図である。
【0162】
なお、図24には、各代表パターン14c間の間隔の他に、ステップS4で算出した前方散乱強度eとステップS5で算出した露光量dも併記してある。
【0163】
図25は、このように代表パターン14cを割り当て、露光量dで露光をした場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0164】
なお、図25における各数字の意味は図22及び図23におけるのと同様である。
【0165】
図25に示されるように、ステップS1〜S5まで行うと、先の図22及び図23と比較して、辺の各パターン30のそれぞれの辺の長さを設計幅(60nm)に近づけることが可能となると共に、各パターン30の間隔も設計値(60nm)に近づけることができる。
【0166】
このことから、本実施形態にしたがって露光データDEを補正することが、設計レイアウトに近い配列のデバイスパターン30を得るのに有用であることが確認された。
【0167】
(第2実施形態)
上記した第1実施形態では、ステップS6において複数のマスクパターン14cを露光量毎にグループG0〜G3に分け、各グループG0〜G3を個別にブロック露光した。
【0168】
これに対し、本実施形態では、そのようなグループ化を行わずにブロック露光を以下のように行う。
【0169】
図26は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム露光方法のフローチャートである。
【0170】
本実施形態では、第1実施形態に従ってステップS1〜S5を行った後、ステップS10に移る。
【0171】
図27は、ステップS10の処理内容を模式的に説明するための平面図である。
【0172】
図27では、第1実施形態のステップS5を行ったことにより、各代表マスクパターン14cに露光量d1〜d3が割り当てられた状態を示す。
【0173】
そして、本ステップS10では、露光マスク14のブロックBLK0〜BLK3の中から、マスクパターン14bの配列が上記の代表マスクパターン14cと同一の配列を有するブロックBLK1を選択する。
【0174】
このとき、マスクパターン14cに対する露光量d1〜d3は同一とは限らない。そこで、個々のマスクパターン14cの露光量d1〜d3を、露光データ作成部2の記憶部2a(図1参照)内に予め格納しておく。
【0175】
次に、ステップS11に移り、上記のブロックBLK1を用いて、ブロック露光によりレジスト層に対して電子ビームを一括露光する。
【0176】
このときの露光量dとしては、d1〜d3のうちの最小値を利用する。例えば、d3>d2>d1なる大小関係があるときは、最小値である露光量d1でこのブロック露光を行う。
【0177】
図28は、このようなブロック露光における電子ビームの散乱強度と、レジスト層内の位置xとの関係を模式的に示すグラフである。
【0178】
上記のように露光量d(=d1)で露光を行うと、当該露光量dが適正露光量である露光マスク14bでは、レジストにおいて解像される幅が設計幅W'となる。
【0179】
これに対し、適正露光量がd2、d3のデバイスパターン30では露光量不足となり、レジスト層で解像される幅W2、W3が設計幅W'よりも狭くなってしまう。
【0180】
そのような露光量不足を補うため、次のステップS12では追加露光を行う。
【0181】
図29は、その追加露光について模式的に示す平面図である。
【0182】
図29に示すように、追加の露光パターン31は、各マスクパターン14bよりも大きく整形された状態で露光マスク14に照射される。
【0183】
そのような露光パターン31は、図3において説明した可変矩形露光により、電子ビームEBの断面形状をマスクパターン14bよりも大きく整形することで得られる。
【0184】
また、露光パターン31の大きさについては、露光装置1で発生する最大の位置ずれ量をdP、マスクパターン14bの幅をW1とするときに、W1+2dPとするのが好ましい。このように位置ずれdPを考慮して露光パターン31の大きさを設定することで、各パターン31、14bの位置ずれが原因でマスクパターン14bを透過した電子ビームの一部が欠けるのを防止できる。
【0185】
一方、追加の露光量Δdについては、ブロック露光における露光量との合計が適正露光量になるようにする。
【0186】
例えば、適正露光量がd2の露光マスク14bに対しては、追加の露光量Δdをd2−dとする。また、適正露光量がd3の露光マスク14bに対しては、追加の露光量Δdをd3−dとする。
【0187】
図30は、このような追加露光を行う場合の電子ビームの散乱強度と、レジスト層内の位置xとの関係を模式的に示すグラフである。
【0188】
図30に示されるように、追加の露光を行うことで、各露光マスク14bを通った電子ビームの前方散乱強度が上側にシフトする。これにより、各露光マスク14bで露光したレジスト層から得られるレジストパターンの幅を設計幅W'に等しくすることが可能となる。
【0189】
以上により、本実施形態に係る電子ビーム露光方法の基本ステップが終了した。
【0190】
上記したように、本実施形態では、複数のマスクパターン14bをブロック露光で一括露光し、露光不足となったマスクパターン14bに対して追加の露光を行う。追加露光の露光量は小さいため、マスクパターンを個別に露光する場合に比べて、トータルの電子ビームの照射時間は短くなる。これにより、ブロック露光のメリットである優れたスループットを活かしつつ、レジスト層で解像される幅を設計幅に近づけることが可能となる。
【0191】
(第3実施形態)
第1実施形態では、図2に示したように代表ブロックBLK0に属する代表マスクパターン14cの大きさと形状が正方形の一種類のみであるとの前提で説明を行った。
【0192】
露光マスク14に形成する代表マスクパターン14cは、このように一種類だけでなく、形状と大きさが異なる複数種類あってもよい。
【0193】
図31は、そのような複数種類の代表マスクパターン14cの一例を示す平面図である。
【0194】
以下では、図31のように大きさと各辺の比率とが異なる複数種類の代表マスクパターン14cが存在する場合に、第1実施形態のステップS4の処理方法について説明する。
【0195】
ステップS4は、第1実施形態で説明したように、形状を補正した後のデバイスパターン30yに代表マスクパターン14cを割り当てるステップである。代表マスクパターン14cが形状補正をした後のデバイスパターン30yと相似か否かにより処理方法が異なるので、場合分けをして説明する。
【0196】
(i)代表マスクパターン14cの中に補正後のデバイスパターン30yと相似なものがあるとき
この場合は、図32(a)に示すように、複数の代表マスクパターン14cの中から、デバイスパターン30yとの形状差が最も少ない代表マスクパターン14cを選択する。
【0197】
形状差は、デバイスパターン30yとマスクパターン14cのそれぞれの重心gを一致させたときにおける長辺のずれ量Δxで定義される。なお、短辺のずれ量Δyで形状差を定義してもよい。
【0198】
そして、それぞれの重心g同士が一致するように、デバイスパターン30yにマスクパターン14cを割り当てる。
【0199】
また、前方散乱強度の基準値e0については、式(7)の右辺の4番目の変数をHに変えた次の式(13)から算出する。
【0200】
【数13】
【0201】
なお、変数W、Hは、それぞれ補正後のデバイスパターン30yの幅と高さである。
【0202】
また、前方散乱強度ekについては、式(8)の右辺の4番目の変数をH0に変えた次の式(14)から算出する。
【0203】
【数14】
【0204】
なお、変数W0、H0は、それぞれ代表パターン14cの幅と高さである。
【0205】
このようにして算出されたe、e0を用いて、第1実施形態のステップS4が行われることになる。
【0206】
(ii)代表マスクパターン14cの中に補正後のデバイスパターン30yと相似なものがないとき
図32(b)にこの場合の平面図を示す。
【0207】
この場合は、補正後のデバイスパターン30yの幅Wと高さHの比率H/Wが基準比率R以下であるか否かに応じ、更に以下のような場合分けをする。なお、基準比率Rは特に限定されないが、以下ではR=2とする。
【0208】
(a)H/W≦Rのとき
この場合は、図32(b)に示すように、デバイスパターン30yと面積が同一の仮想矩形35を考え、その仮想矩形35との形状差が最も小さく且つ仮想矩形35と相似になる代表パターン14cを選択する。そして、それぞれの重心g同士が一致するように、その代表パターン14cをデバイスパターン30yに割り当てる。
【0209】
ここで、上記のようにデバイスパターン30と仮想矩形35との面積が同一になるには、次の式(15)が成り立つ。
【0210】
【数15】
【0211】
ここで、W0、H0はそれぞれ代表パターン14cの幅と高さであり、pW0、pH0はそれぞれ仮想矩形35の幅と高さである。
【0212】
そして、代表パターン14cと仮想矩形35との相似比pは、式(15)から次の式(16)のように書ける。
【0213】
【数16】
【0214】
この相似比pを利用して、前方散乱強度eとその基準値e0を次の式(17)、(18)から算出する。
【0215】
【数17】
【0216】
【数18】
【0217】
式(18)のように、本例では、仮想矩形35の幅pW0と高さpH0を利用して前方散乱強度の基準値e0を算出する。これは、実際に露光に使用する代表パターン14cと相似な仮想矩形の幅pW0と高さpH0を利用する方が、デバイスパターン30yの幅Wと高さHを利用する場合よりも、補正の精度が向上するためである。
【0218】
(b)H/W>Rのとき
この場合は、上記のような仮想矩形35を利用せず、既述の式(13)、(14)を利用して前方散乱強度eとその基準値e0を算出する。これは、H/Wが大きいと、式(6)で定義される前方散乱強度Ff(x,y,W,H)がHに依らなくなるため、式(18)のように仮想矩形35の幅pW0と高さpH0を利用して基準値e0を算出する実益がないからである。
【0219】
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では、ホール形状のデバイスパターン30を例にして説明したが、これらの実施形態で説明した露光方法はゲート電極のような長尺状のデバイスパターンにも適用し得る。
【0220】
図33(a)は、そのような長尺状のデバイスパターン38に対して第1実施形態のステップS1〜S3を行い、デバイスパターン38の形状を補正した後の平面図である。
【0221】
このような形状のデバイスパターン38を露光するには、図33(b)に示すように、デバイスパターン38を複数の矩形パターン38a〜38gに分割する。
【0222】
そして、これらの矩形パターン38a〜38gに対応した形状のマスクパターンを備えた露光マスクを使用して、各パターン38a〜38gを個別に露光することで、図33(a)に示したような長尺状のデバイスパターン38を実現し得る。
【0223】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1〜第4実施形態で説明した露光方法を利用した半導体装置の製造方法について説明する。
【0224】
図34〜図40は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0225】
以下では、半導体装置としてMOSトランジスタを製造する。
【0226】
まず、図34(a)に示すように、半導体基板としてのシリコン基板50を熱酸化して熱酸化膜51を約10nmの厚さに形成した後、その上に減圧CVD法により窒化シリコン膜52を約140nmの厚さに形成する。
【0227】
次に、図34(b)に示すように、第1の窓53aを備えた第1のレジストパターン53を窒化シリコン膜52の上に形成する。そして、この第1のレジストパターン53をマスクとして使用しながら、フッ素系のガスをエッチングガスにするRIE(Reactive Ion Etching)により窒化シリコン膜52をエッチングし、第1のホール52aを形成する。その後、エッチングガスを塩素系のガスに変えて、第1のホール52aの下の熱酸化膜51をエッチングして第2のホール51aを形成する。
【0228】
そして、エッチングガスをそのままにして更にエッチングを進めることにより、各ホール51a、52aの下のシリコン基板50をエッチングして、深さが約300nm程度のSTI(Shallow Trench Isolation)用の溝50aを形成する。なお、溝50aの幅は特に限定されないが、本実施形態ではその幅を約40μmとする。
【0229】
その後に、第1のレジストパターン53を除去する。
【0230】
次に、図35(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、プラズマCVD法により全面に酸化シリコン膜を形成してそれにより溝50aを完全に埋め込む。その後、窒化シリコン膜52を研磨ストッパとして使用しながらその酸化シリコン膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により研磨し、窒化シリコン膜52の上面から除去すると共に、溝50a内に残された酸化シリコン膜を素子分離絶縁膜54とする。なお、窒化シリコン膜52は、このCMPによって膜減りしてその厚さが約50nm程度にまで薄くなる。
【0231】
また、上記ではSTI用の素子分離絶縁膜54を形成したが、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により素子分離絶縁膜を形成してもよい。
【0232】
次いで、図35(b)に示すように、燐酸を用いて窒化シリコン膜52をウエットエッチングして除去する。
【0233】
次に、図36(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0234】
まず、熱酸化膜51をスルー膜として使用しながら、シリコン基板50にボロン等のp型不純物をイオン注入してpウエル55を形成する。その後に、このイオン注入によってダメージを受けた熱酸化膜51をウエットエッチングして除去し、シリコン基板50の清浄面を露出させる。そのウエットエッチングでは、例えばフッ酸溶液がエッチング液として使用される。
【0235】
続いて、シリコン基板50を再び熱酸化して厚さ約5nmの熱酸化膜を形成し、それをゲート絶縁膜56とする。
【0236】
その後、シランを反応ガスとして使用するCVD法により、素子分離絶縁膜54とゲート絶縁膜56の上に導電膜57としてポリシリコン膜を厚さ約100nm程度に形成する。
【0237】
次に、図36(b)に示すように、導電膜57の上に第1のレジスト層58を形成する。
【0238】
そして、図1に示した電子ビーム露光装置1内にシリコン基板50を入れ、電子ビームEBによりその第1のレジスト層58を露光することにより、第1のレジスト層58にゲート電極形状の第1の潜像58aを形成する。
【0239】
露光に際しては、第1〜第4実施形態に従って露光データDEを補正する。これにより、電子ビームEBの近接効果が原因で第1の潜像58aの形状や大きさが崩れるのが抑制され、設計幅に近い幅を有する第1の潜像58aを第1のレジスト層58に形成することができる。
【0240】
次いで、図37(a)に示すように、第1のレジスト層58を現像することにより、上記の第1の潜像58aを第1のレジストパターン58bとして残す。
【0241】
そして、その第1のレジストパターン58bをマスクにし、塩素系のガスをエッチングガスとするRIEにより導電膜57を選択的にエッチングし、ゲート電極57aを形成する。
【0242】
この後に、第1のレジストパターン58bは除去される。
【0243】
次に、図37(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0244】
まず、ゲート電極57aをマスクにしながらシリコン基板50にヒ素等のn型不純物をイオン注入することにより、ゲート電極57aの側方のシリコン基板50にn型ソース/ドレインエクステンション59を形成する。
【0245】
次いでCVD法によりシリコン基板50の上側全面に酸化シリコン膜等の絶縁膜を形成した後、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極57aの側面に絶縁性サイドウォール60として残す。
【0246】
その後、ゲート電極57aと絶縁性サイドウォール60をマスクにして、リン等のn型不純物をシリコン基板50にイオン注入する。これにより、ゲート電極57aの側方のシリコン基板50に、n型ソース/ドレインエクステンション59よりも深くて不純物濃度の高いn型ソース/ドレイン領域61が形成される。
【0247】
続いて、図38(a)に示すように、シリコン基板50の上側全面にスパッタ法によりコバルト膜を形成した後、RTA(Rapid Thermal Anneal)によりコバルトとシリコンとを反応させる。続いて、素子分離絶縁膜54等の上で未反応となっているコバルト膜をウエットエッチングにより除去し、ソース/ドレイン領域61の上にコバルトシリサイド層62を残す。そのコバルトシリサイド層はゲート電極57aの上面にも形成され、それによりゲート電極57aはポリサイド構造となる。
【0248】
次いで、図38(b)に示すように、シリコン基板50の上側全面にエッチングストッパ膜63として窒化シリコン膜をCVD法により形成し、更にその上にCVD法により酸化シリコン膜等の絶縁膜64を形成して、これらの膜63、64を層間絶縁膜65とする。その後に、層間絶縁膜65の上面をCMP法により研磨して平坦化する。その平坦化の結果、層間絶縁膜65の厚さは、シリコン基板50の平坦面上で約700nmとなる。
【0249】
次に、図39(a)に示すように、層間絶縁膜65の上に第2のレジスト層68を形成する。
【0250】
そして、第1〜第4実施形態に従って補正された露光データDEに基づいて、露光装置1(図1参照)内において電子ビームEBにより第2のレジスト層68を露光することにより、ホール形状の第2の潜像68aを第2のレジスト層68に形成する。
【0251】
このように第1〜第4実施形態に従って露光データDを補正することで、電子ビームEBの近接効果が原因で第2の潜像68aの形状や大きさが崩れるのが抑制され、第2の潜像68aの幅を設計幅に近づけることが可能となる。
【0252】
その後に、図39(b)に示すように、第2のレジスト層68を現像することにより第2の潜像68aを除去し、第2の窓68bを備えた第2のレジストパターン68cを形成する。
【0253】
次に、図40(a)に示すように、第2のレジストパターン68cをマスクにするRIEにより層間絶縁膜65をエッチングして、コバルトシリサイド層62に至る深さのコンタクトホール65aを層間絶縁膜65に形成する。
【0254】
そのエッチングは、絶縁膜64に対するエッチングとエッチングストッパ膜63に対するエッチングとの2ステップで行われ、エッチングストッパ膜63のエッチングでは下地のコバルトシリサイド層62がエッチングストッパとして機能する。
【0255】
そして、これらのエッチングにおけるエッチングガスとしては、絶縁膜64に対してはC4F8、O2、及びArの混合ガスが使用され、エッチングストッパ膜63に対してはC4F8、CF4、O2、及びArの混合ガスが使用される。
【0256】
この後に、第2のレジストパターン68cは除去される。
【0257】
次に、図40(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0258】
まず、コンタクトホール65aの内面と層間絶縁膜65の上面に、スパッタ法によりチタン膜と窒化チタン膜とをこの順に形成し、それらをグルー膜とする。続いて、このグルー膜の上に、六フッ化タングステンを反応ガスとして使用するCVD法によりタングステン膜を形成し、そのタングステン膜によりコンタクトホール65aを完全に埋め込む。その後に、層間絶縁膜65上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により除去し、それらの膜をホール65aの中に導電性プラグ69として残す。その導電性プラグ69は、n型ソース/ドレイン領域61と電気的に接続される。
【0259】
ここまでの工程により、ゲート電極57aやn型ソース/ドレイン領域61等を有するMOSトランジスタTRの基本構造が完成したことになる。
【0260】
以上説明した本実施形態によれば、図36(b)と図39(a)を参照して説明したように、第1のレジスト層58と第2のレジスト層68を電子ビームEBで露光するときに、第1〜第4実施形態で説明した露光方法を採用する。
【0261】
そのため、露光時の近接効果によって各レジスト層58、68に形成される潜像58a、68aの形状と大きさが崩れるのを抑制でき、ゲート電極57aやコンタクトホール65a等のデバイスパターンの寸法を設計値に近づけることが可能となる。
【0262】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0263】
(付記1) 複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、
露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、
前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、
前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、
前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、
前記露光量を割り当てた後、前記露光データに基づいて前記レジスト層を露光するステップと、
を有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
【0264】
(付記2) 前記露光量の割り当ての後、複数の前記マスクパターンを前記露光量毎に複数のグループに分けるステップと、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクの中から、前記グループ内におけるのと同一の配列で前記マスクパターンが形成されたブロックを選択するステップとを更に有し、
前記レジスト層を露光するステップにおいて、前記選択されたブロックを利用して、ブロック露光を行うことを特徴とする付記1に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0265】
(付記3) 前記レジスト層の露光は、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクを用い、前記ブロック内で前記露光量が最も小さい前記マスクパターンの該露光量で一括露光し、
前記露光量が最も小さい前記マスクパターン以外の前記マスクパターンに対しては追加露光を行い、該露光量の不足分を補うことを特徴とする付記1に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0266】
(付記4) 前記追加露光は、前記マスクパターンよりも大きな断面形状に整形された前記荷電粒子のビームを前記マスクパターンに照射することにより行われることを特徴とする付記3に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0267】
(付記5) 前記露光マスクは、形状と大きさが異なる複数の前記マスクパターンを備えており、
前記デバイスパターンに前記マスクパターンを割り当てるステップは、
前記複数のマスクパターンのうち、前記補正後の前記デバイスパターンとの形状差が最も小さい前記マスクパターンを前記デバイスパターンに割り当てることにより行われることを特徴とする付記1〜4のいずれかに記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0268】
(付記6) 前記複数のマスクパターンの中に、前記補正後の前記デバイスパターンとの相似なマスクパターンがない場合、前記補正後の前記バイスパターンと面積が同一の仮想矩形を想定し、前記複数のマスクパターンの中で前記仮想矩形との形状差が最も小さい前記マスクパターンを前記デバイスパターンに割り当てることを特徴とする付記5に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0269】
(付記7) 前記マスクパターンへの前記露光量の割り当ては、
前記補正後の前記デバイスパターンを積分領域にしたときの前記前方散乱成分の積分値で定義される前方散乱強度を、前記マスクパターンの中心からの距離の関数として算出し、
前記距離が前記設計幅の1/2のときの前記前方散乱強度の値を求め、
前記補正後の前記デバイスパターンについての荷電粒子の後方散乱強度を求め、
前記レジスト層が解像するのに要する前記荷電粒子の最低限の蓄積エネルギと、前記前方散乱強度の前記値と前記後方散乱強度の和との比を、前記露光量として算出することにより行われることを特徴とする付記1〜付記6のいずれかに記載の露光方法。
【0270】
(付記8) 複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、
露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、
前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、
前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、
前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、
前記露光量を割り当てた後、前記設計データに基づいて、半導体基板の上方に形成されたフォトレジスト層を露光するステップと、
前記フォトレジスト層を現像してレジストパターンにするステップと、
前記レジストパターンをマスクにしながら、該レジストパターンの下の膜をエッチングすることにより、デバイスパターンを形成するステップと、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0271】
(付記9) 前記露光量の割り当ての後、複数の前記マスクパターンを前記露光量毎に複数のグループに分けるステップと、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクの中から、前記グループ内におけるのと同一の配列で前記マスクパターンが形成されたブロックを選択するステップとを更に有し、
前記レジスト層を露光するステップにおいて、前記選択されたブロックを利用して、ブロック露光を行うことを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0272】
(付記10) 前記レジスト層の露光は、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクを用い、前記ブロック内で前記露光量が最も小さいマスクパターンの該露光量で一括露光し、
前記露光量が最も小さいマスクパターン以外の前記マスクパターンに対しては追加露光を行い、該露光量の不足分を補うことを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0273】
(付記11) 前記デバイスパターンは、ホール又はゲート電極であることを特徴とする付記8〜10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0274】
1…電子ビーム露光装置、2…露光データ作成部、3…制御部、4…電子光学系、5…コラム、11…電子銃、12…整形マスク、13…第1のマスク偏向器、14…露光マスク、14a…開口、14b…マスクパターン、14c…代表マスクパターン、15…第2のマスク偏向器、16…フォーカスレンジ、17…第1の偏向器、18…第2の偏向器、19…ステージ、20…半導体基板、30…デバイスパターン、30x…一辺、30y…補正後のデバイスパターン、31…追加の露光パターン、32…仮想正方形、35…仮想矩形、38…長尺状のデバイスパターン、38a〜38g…矩形パターン、50…シリコン基板、50a…溝、51…熱酸化膜、51a…第2のホール、52…窒化シリコン膜、52a…第1のホール、53…第1のレジストパターン、53a…第1の窓、54…素子分離絶縁膜、55…pウエル、56…ゲート絶縁膜、57…導電膜、57a…ゲート電極、58…第1のレジスト層、58a…第1の潜像、58b…第1のレジストパターン、59…n型ソース/ドレインエクステンション、60…絶縁性サイドウォール、61…n型ソース/ドレイン領域、62…コバルトシリサイド層、63…エッチングストッパ膜、64…絶縁膜、65…層間絶縁膜、68…第2のレジスト層、68a…第2の潜像、68b…第2の窓、68c…第2のレジストパターン、69…導電性プラグ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、
露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、
前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、
前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、
前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、
前記露光量を割り当てた後、前記露光データに基づいて前記レジスト層を露光するステップと、
を有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項2】
前記露光量の割り当ての後、複数の前記マスクパターンを前記露光量毎に複数のグループに分けるステップと、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクの中から、前記グループ内におけるのと同一の配列で前記マスクパターンが形成されたブロックを選択するステップとを更に有し、
前記レジスト層を露光するステップにおいて、前記選択されたブロックを利用して、ブロック露光を行うことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項3】
前記レジスト層の露光は、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクを用い、前記ブロック内で前記露光量が最も小さい前記マスクパターンの該露光量で一括露光し、
前記露光量が最も小さい前記マスクパターン以外の前記マスクパターンに対しては追加露光を行い、該露光量の不足分を補うことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項4】
前記追加露光は、前記マスクパターンよりも大きな断面形状に整形された前記荷電粒子のビームを前記マスクパターンに照射することにより行われることを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項5】
前記露光マスクは、形状と大きさが異なる複数の前記マスクパターンを備えており、
前記デバイスパターンに前記マスクパターンを割り当てるステップは、
前記複数のマスクパターンのうち、前記補正後の前記デバイスパターンとの形状差が最も小さい前記マスクパターンを前記デバイスパターンに割り当てることにより行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項6】
前記複数のマスクパターンの中に、前記補正後の前記デバイスパターンとの相似なマスクパターンがない場合、前記補正後の前記バイスパターンと面積が同一の仮想矩形を想定し、前記複数のマスクパターンの中で前記仮想矩形との形状差が最も小さい前記マスクパターンを前記デバイスパターンに割り当てることを特徴とする請求項5に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項7】
前記マスクパターンへの前記露光量の割り当ては、
前記補正後の前記デバイスパターンを積分領域にしたときの前記前方散乱成分の積分値で定義される前方散乱強度を、前記マスクパターンの中心からの距離の関数として算出し、
前記距離が前記設計幅の1/2のときの前記前方散乱強度の値を求め、
前記補正後の前記デバイスパターンについての荷電粒子の後方散乱強度を求め、
前記レジスト層が解像するのに要する前記荷電粒子の最低限の蓄積エネルギと、前記前方散乱強度の前記値と前記後方散乱強度の和との比を、前記露光量として算出することにより行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の露光方法。
【請求項8】
複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、
露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、
前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、
前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、
前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、
前記露光量を割り当てた後、前記設計データに基づいて、半導体基板の上方に形成されたフォトレジスト層を露光するステップと、
前記フォトレジスト層を現像してレジストパターンにするステップと、
前記レジストパターンをマスクにしながら、該レジストパターンの下の膜をエッチングすることにより、デバイスパターンを形成するステップと、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記露光量の割り当ての後、複数の前記マスクパターンを前記露光量毎に複数のグループに分けるステップと、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクの中から、前記グループ内におけるのと同一の配列で前記マスクパターンが形成されたブロックを選択するステップとを更に有し、
前記レジスト層を露光するステップにおいて、前記選択されたブロックを利用して、ブロック露光を行うことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記デバイスパターンは、ホール又はゲート電極であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、
露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、
前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、
前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、
前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、
前記露光量を割り当てた後、前記露光データに基づいて前記レジスト層を露光するステップと、
を有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項2】
前記露光量の割り当ての後、複数の前記マスクパターンを前記露光量毎に複数のグループに分けるステップと、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクの中から、前記グループ内におけるのと同一の配列で前記マスクパターンが形成されたブロックを選択するステップとを更に有し、
前記レジスト層を露光するステップにおいて、前記選択されたブロックを利用して、ブロック露光を行うことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項3】
前記レジスト層の露光は、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクを用い、前記ブロック内で前記露光量が最も小さい前記マスクパターンの該露光量で一括露光し、
前記露光量が最も小さい前記マスクパターン以外の前記マスクパターンに対しては追加露光を行い、該露光量の不足分を補うことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項4】
前記追加露光は、前記マスクパターンよりも大きな断面形状に整形された前記荷電粒子のビームを前記マスクパターンに照射することにより行われることを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項5】
前記露光マスクは、形状と大きさが異なる複数の前記マスクパターンを備えており、
前記デバイスパターンに前記マスクパターンを割り当てるステップは、
前記複数のマスクパターンのうち、前記補正後の前記デバイスパターンとの形状差が最も小さい前記マスクパターンを前記デバイスパターンに割り当てることにより行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項6】
前記複数のマスクパターンの中に、前記補正後の前記デバイスパターンとの相似なマスクパターンがない場合、前記補正後の前記バイスパターンと面積が同一の仮想矩形を想定し、前記複数のマスクパターンの中で前記仮想矩形との形状差が最も小さい前記マスクパターンを前記デバイスパターンに割り当てることを特徴とする請求項5に記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【請求項7】
前記マスクパターンへの前記露光量の割り当ては、
前記補正後の前記デバイスパターンを積分領域にしたときの前記前方散乱成分の積分値で定義される前方散乱強度を、前記マスクパターンの中心からの距離の関数として算出し、
前記距離が前記設計幅の1/2のときの前記前方散乱強度の値を求め、
前記補正後の前記デバイスパターンについての荷電粒子の後方散乱強度を求め、
前記レジスト層が解像するのに要する前記荷電粒子の最低限の蓄積エネルギと、前記前方散乱強度の前記値と前記後方散乱強度の和との比を、前記露光量として算出することにより行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の露光方法。
【請求項8】
複数のデバイスパターンの露光データを準備するステップと、
露光強度分布の中心の近傍にある前記デバイスパターンの各々を積分領域にしながら、該露光強度分布の前方散乱成分の積分値を求めるステップと、
前記露光データを補正することにより、前記積分値が基準値に等しくなるように複数の前記デバイスパターンのそれぞれの形状を補正するステップと、
前記補正の後、前記デバイスパターンのそれぞれに、該デバイスパターンと重心同士が一致するように、露光マスク内のマスクパターンを割り当てるステップと、
前記デバイスパターンのそれぞれに前記マスクパターンを割り当てた後、該マスクパターンを透過した荷電粒子で露光したレジスト層によって設計幅を有するレジストパターンが得られるように、前記マスクパターンに露光量を割り当てるステップと、
前記露光量を割り当てた後、前記設計データに基づいて、半導体基板の上方に形成されたフォトレジスト層を露光するステップと、
前記フォトレジスト層を現像してレジストパターンにするステップと、
前記レジストパターンをマスクにしながら、該レジストパターンの下の膜をエッチングすることにより、デバイスパターンを形成するステップと、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記露光量の割り当ての後、複数の前記マスクパターンを前記露光量毎に複数のグループに分けるステップと、
前記マスクパターンがブロック単位で形成された前記露光マスクの中から、前記グループ内におけるのと同一の配列で前記マスクパターンが形成されたブロックを選択するステップとを更に有し、
前記レジスト層を露光するステップにおいて、前記選択されたブロックを利用して、ブロック露光を行うことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記デバイスパターンは、ホール又はゲート電極であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2011−35273(P2011−35273A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181870(P2009−181870)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]