説明

荷電粒子線装置、試料移動装置、マスク位置調整機構、試料位置調整方法及びマスク位置調整方法

【課題】配線で可動範囲が制限されたりすることなく試料又はマスクの位置をより柔軟に調整することができる荷電粒子線装置、試料移動装置、マスク位置調整機構、試料位置調整方法及びマスク位置調整方法を提供する。
【解決手段】荷電粒子線装置の試料ステージ008に対する試料の位置を調整する試料移動装置040であって、SEM制御ユニット015からの指令に応じて出力指示信号を生成する赤外線ランプ制御ユニット014と、赤外線ランプ制御ユニット014からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線ランプ010と、試料ステージ008上に固定された試料台ホルダー007と、試料台ホルダー007に対し変位可能に取り付けた試料台102と、赤外線ランプ010からの赤外線信号を受光する赤外線センサー108と、赤外線センサー108で受光した赤外線信号に応じて試料台102を駆動するモーター110とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子線装置、試料移動装置、マスク位置調整機構、試料位置調整方法及びマスク位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)、エネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X-ray Spectrometer:EDS)及び後方散乱電子回折法(Electron Back-Scatter Diffractionpattern:EBSD)等に代表される各種分析装置、更に集束イオンビーム加工観察装置(Focus Ion Beam:FIB)やブロードイオンビーム加工装置(Broad Ion Beam:BIB)等に代表される前処理装置等、試料の観察・分析・加工等に用いられる荷電粒子線装置の用途及び種類は多岐にわたる。
【0003】
こうした荷電粒子線装置では、ビームスポットに対して試料の位置や姿勢を調整するための試料ステージが備えられており、この試料ステージにもピエゾ素子を用いたもの(特許文献1等参照)や二軸回転機構を有するもの(特許文献2等参照)等、様々なものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−129654号公報
【特許文献2】特開平5−251025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、荷電粒子線装置に備え付けの試料ステージでは可動範囲に不足がある場合、大幅な改造を加えて可動範囲のより広い特殊試料ステージに交換したり、備え付けの試料ステージ上に異なる試料ステージを追加搭載したりする場合がある。しかし、こうした特殊試料ステージや追加試料ステージは、装置外部から動力を供給したり動作指令したりするために有線接続する必要があり、本来の可動範囲が配線で制限されてしまう場合があった。また、BIB加工等において試料をマスクキングするマスクの位置調整においても同様の課題が存在する。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、配線で可動範囲が制限されたりすることなく試料又はマスクの位置をより柔軟に調整することができる荷電粒子線装置、試料移動装置、マスク位置調整機構、試料位置調整方法及びマスク位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、試料室と、この試料室内に設けた試料ステージと、この試料ステージに向けて荷電粒子線を照射する荷電粒子照射系と、前記試料ステージに対する試料の位置を調整する試料移動装置とを備え、前記試料移動装置は、接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、前記試料ステージ上に固定された試料台ホルダーと、この試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けた試料台と、前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記試料台を駆動する駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、試料室と、この試料室内に設けた試料ステージと、この試料ステージに向けて荷電粒子線を照射する荷電粒子照射系と、前記試料ステージに搭載された試料に対するマスクの位置を調整するマスク位置調整機構とを備え、前記マスク位置調整機構は、接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、前記試料ステージ上に固定された試料台ホルダーと、この試料台ホルダーに取り付けた試料台と、前記試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けたマスクと、前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記マスクを駆動する駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記赤外線受光手段からの赤外線信号に応じて前記駆動装置を制御するバッテリーを有することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、前記赤外線受光手段が赤外線センサーであることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第3の発明において、前記赤外線受光手段は太陽電池であり、当該太陽電池で赤外線から得られた電気エネルギーが前記バッテリーに蓄電されることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1の発明において、前記試料台が前記試料台ホルダーに対して傾動可能に設けられていることを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第1の発明において、前記試料台が前記試料台ホルダーに対して上下に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第2の発明において、前記マスクが前記試料台ホルダーに対して水平方向に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0015】
第9の発明は、荷電粒子線装置の試料ステージに対する試料の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整する試料移動装置において、接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、前記試料ステージ上に固定された試料台ホルダーと、この試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けた試料台と、前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記試料台を駆動する駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0016】
第10の発明は、荷電粒子線の試料ステージに搭載された試料に対するマスクの位置を調整するマスク位置調整機構において、接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、前記試料ステージ上に固定された試料台ホルダーと、この試料台ホルダーに取り付けた試料台と、前記試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けたマスクと、前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記マスクを駆動する駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0017】
第11の発明は、接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、荷電粒子線装置の試料ステージ上に固定される試料台ホルダーと、この試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けた試料台と、前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記試料台を駆動する駆動装置とを備えた試料移動装置を、前記荷電粒子線装置の試料ステージ上に取り付け、前記制御装置を操作して前記赤外線照射手段を制御し、赤外線信号を利用して前記試料移動装置を無線操作して前記試料ステージに対する試料の位置を調整する。
【0018】
第12の発明は、接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、荷電粒子線装置の試料ステージ上に固定される試料台ホルダーと、この試料台ホルダーに取り付けた試料台と、前記試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けたマスクと、前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記マスクを駆動する駆動装置とを備えたマスク位置調整機構を、前記荷電粒子線装置の試料ステージ上に取り付け、前記制御装置を操作して前記赤外線照射手段を制御し、赤外線信号を利用して前記マスク位置調整機構を無線操作して前記試料ステージに搭載された試料に対するマスクの位置を調整する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、配線で可動範囲が制限されたりすることなく試料又はマスクの位置をより柔軟に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る試料移動装置を搭載した荷電粒子線装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る試料移動装置の概略構成を表す側面図、及びこの側面図中の矢印II方向から見た正面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る試料移動装置の概略構成を表す側面図、及びこの側面図中の矢印III方向から見た正面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る試料移動装置の概略構成を表す側面図、及びこの側面図中の矢印IV方向から見た正面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る試料移動装置の概略構成を表す側面図、及びこの側面図中の矢印V方向から見た正面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る試料移動装置の概略構成を表す側面図、及びこの側面図中の矢印VI方向から見た正面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係るマスク位置調整機構の概略構成を表す側面図、及びこの側面図中の矢印VII方向から見た正面図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係るマスク位置調整機構を用いて試料を加工する様子を表した概略図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係るマスク位置調整機構の概略構成を表す側面図、及びこの側面図中の矢印IX方向から見た正面図である。
【図10】本発明の第8実施形態に係る試料移動装置の概略構成を表す側面図、及びこの側面図中の矢印X方向から見た正面図である。
【図11】試料の観察面の形状が試料位置の高さ補正精度に与える影響を説明するモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態は、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)、エネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X-ray Spectrometer:EDS)及び後方散乱電子回折法(Electron Back-Scatter Diffractionpattern:EBSD)等の各種分析装置、更に集束イオンビーム加工観察装置(Focus Ion Beam:FIB)やブロードイオンビーム加工装置(Broad Ion Beam:BIB)等の前処理装置に代表される荷電粒子線装置やこれに用いる試料移動装置、これらを用いた加工・観察等の方法に係り、電子部品、半導体、材料、生物等の分野を問わず適用可能である。
【0022】
荷電粒子線装置に備え付けの試料ステージの可動範囲に不足がある場合、大幅な改造を加えて可動範囲のより広い特殊試料ステージに交換したり、備え付けの試料ステージ上に異なる試料ステージを追加搭載したりする場合がある。しかしこうした特殊試料ステージや追加試料ステージは、装置外部から動力を供給したり動作指令したりするために有線接続する必要があり、本来の可動範囲が配線で制限されてしまう場合があった。
【0023】
また、試料処理法や解析手法が多様化したことにより、最適な条件で試料処理法や各種解析手法をそれぞれ行うためには煩雑で時間を要する作業を伴い、観察・前処理装置の機構的制限により最適条件を実現できない場合がある。例えばFIBを用いて試料の断面を作製しSEMで観察する場合、FIBで作成した断面を上面方向やSEMの電子線照射方向と垂直に配置する必要がある。このように観察装置と前処理装置間では、最適な加工位置や観察位置が異なるため、異なる装置で最適な加工・観察を分担する際には、装置毎に適した試料台に試料を付け替える必要があり、これが作業の煩雑化や試料汚染の要因ともなり得る。
【0024】
更に試料を装置から取り出して付け替えるには、装置の大気開放及び真空排気等の時間も要していた。また、試料を付け替えない場合でも、各種装置を用いて試料の観察及び解析を実施する際には使用する装置のステージ機構によって試料の傾斜角度が制限されるため、試料を加工又は観察する際に装置に備え付けのステージの可動範囲以上にステージを傾斜させる必要がある場合には、結局試料を試料台から取り外して所望の傾斜面が得られるような試料台に試料を付け直さなければならない。
【0025】
また、BIBを用いた断面作製では、試料上面にイオンビームの遮蔽板となるマスクを配置し、マスク端面から突出した部分をスパッタすることで、広領域を無応力で平滑に加工する。しかしながら、近年、微細欠陥や特定位置の広領域断面作製のニーズが増加し、従来の光学顕微鏡によるマスク位置合わせでは対応できない場合がある。加えて、解析するための加工面が得られている否かの終了判断をするためには、BIBによる加工を止め、試料を取り外し光学顕微鏡やSEM等により確認する必要があり、マスク位置調整の困難さと併せて作業を困難で煩雑なものとしていた。
【0026】
更にSEM観察においても、上記のFIBやBIBによる試料断面や上面の傾斜観察では試料取り付け時の高さ調整を目視で行うため、試料上面の高さとステージの傾斜軸中心を一致させることは困難であり、観察位置がユーセントリック位置にならず、試料傾斜時に観察位置がずれるなどの問題がある。これらに対しては、事前に試料面の高さを数点計測し、補正する手法もあるが、試料上面が平坦である場合は補正可能であるが、傾斜が一様でない場合や傾斜面が凸凹な試料では補正精度が確保できない。
【0027】
以上のように、試料処理法や解析手法が多様化したことにより、それぞれ最適な条件で試料処理法や各種解析手法を行うために、煩雑で時間を要する作業を強いられる、また装置の機構的制限によって各々の試料処理法や各種解析手法に最適な条件を実現できない等の問題があった。
【0028】
以下にこれら問題点を解決する実施形態を説明する。
【0029】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る試料移動装置を搭載した荷電粒子線装置の概略構成図である。また、図2は本発明の第1実施形態に係る試料移動装置の概略構成図で、図2(a)は側面図、図2(b)は図2(a)中の矢印II方向から見た正面図である。
【0030】
本実施形態では、赤外線ランプと赤外線センサーを持つ試料傾斜機構を本発明の試料移動装置の一態様、また当該試料移動機構を搭載した走査電子顕微鏡を本発明の荷電粒子線装置の一態様としてそれぞれ例示している。
【0031】
図1に示した荷電粒子線装置は、試料室011と、この試料室011内に設けた当該荷電粒子線装置に備え付けの試料ステージ008と、この試料ステージ008に向けて荷電粒子線として電子ビーム001を照射する荷電粒子照射系030と、試料ステージ008に対する試料101の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整する試料移動装置040と、試料101からの二次電子等を検出する検出器009と、試料室011及び装置内を真空に保つための排気ポンプ012と、装置全体の動作を制御するSEM制御ユニット(制御装置)015とを備えている。
【0032】
荷電粒子照射系030は、荷電粒子線カラム031内に、電子ビーム001を取り出すための電子銃002と、この電子銃002を収容する電子銃室003と、電子ビーム001を収束させる集束レンズ004と、電子ビーム001を偏向させる偏向コイル005と、対物レンズ006とを備えている。電子銃002から取り出された電子ビーム001は、集束レンズ004と対物レンズ006によって細く集束され、偏向コイル005によって試料101上を走査される。電子ビーム001の走査により試料101から放出された二次荷電粒子を検出器009で捕らえることで、検出された二次電子粒子を基に例えばSEM制御ユニット015でSEM像が取得される。
【0033】
試料室011は、荷電粒子線カラム031と連結されていて、試料ステージ008のステージ部020や試料101からの二次電子等を検出する検出器009等を収容しており、側部には試料交換室013を備えている。試料ステージ008は、ステージ部020をX,Y方向(水平方向)及びZ方向(高さ方向)に平行移動させる。加えて、鉛直な軸周りにステージ部020を回転させたり、水平な軸周りにステージ部020を傾斜させたりできるように構成される場合もある。
【0034】
試料移動装置040は、図1、図2(a)及び図2(b)に示したように、接続されるSEM制御ユニット015からの指令に応じて出力指示信号を生成する赤外線ランプ制御ユニット(出力指示手段)014と、赤外線ランプ制御ユニット014からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線ランプ(赤外線照射手段)010と、試料室011内において試料ステージ008のステージ部020上に固定された試料台ホルダー007と、この試料台ホルダー007に対し変位可能に取り付けた試料台102と、赤外線ランプ010からの赤外線信号を受光する赤外線センサー(赤外線受光手段)108と、この赤外線センサー108で受光した赤外線信号に応じて試料台102を駆動するモーター(駆動装置)110と、このモーター110に電線を経由して給電するとともにモーター110の制御機能を有するバッテリー109とを備えている。
【0035】
赤外線ランプ010は、オプションの取り付けやメンテナンス等のために試料室011に設けられたサービスポート(図示せず)を利用して、赤外線の照射部が試料室011の内部に臨むように試料室011に取り付けられている。赤外線ランプ制御ユニット014は、赤外線ランプ010及びSEM制御ユニット015に有線接続されている。
【0036】
試料台ホルダー007は、モーター110及びバッテリー109を搭載したベース016と、このベース016上に立設した互いに対向する側壁017,018とを備えている。ベース016の底面にはねじ穴111が開けられていて、このねじ穴111を利用してねじ(図示せず)で試料ステージ008のステージ部020に直接又は治具(図示せず)を介して試料台ホルダー007が固定される。本実施形態においてモーター110は、バッテリー109を挟んで赤外線センサー108の反対側に支持部材を介してベース016上に搭載されている。側壁017,018は、試料台102の傾斜軸103を回転自在に支持している。傾斜軸103は、モーター110の回転軸105とともに水平(ベース016と平行)な姿勢を採っている。また、試料台ホルダーの一方の側壁018には、赤外線センサー108が取り付けられている。赤外線センサー108はバッテリー109に有線接続されている。
【0037】
モーター110の回転軸105には駆動アーム106が取り付けられていて、この駆動アーム106は試料台102の傾斜軸103に取り付けられた従動アーム104に対してピン107で係合している。モーター110の回転軸105は、試料台102の傾斜軸103と平行でかつほぼ真下に位置し、駆動アーム106は従動アーム104に比べて回転半径が小さい。ピン107は駆動アーム106に対しては固定関係にあり、従動アーム104に対しては従動アーム104に設けた長穴内に摺動可能に収容されている。ピン107を収容した長穴は、従動アーム104の長手方向に延びている。特に図示していないが、ピン107の駆動アーム106に対する取り付け位置は段階的或いは無段階に調整可能な構成としてある。
【0038】
なお、図1及び図2に示した装置構成は一例であり、機械的および電気的可動機構は図示した態様に限定されない。
【0039】
上記構成の試料移動装置040では、赤外線ランプ制御ユニット014で赤外線ランプ010を制御して赤外線ランプ010から赤外線を照射し、試料室011内で反射又は散乱した赤外線を赤外線センサー108で検知し、赤外線信号に応じてバッテリー109によってモーター110が制御される。モーター110の回転軸105が回転すると、駆動アーム106が回転し、この駆動アーム106の動きがピン107及び従動アーム104を介して傾斜軸103に伝達され、試料台102が傾斜軸103周りに傾動する。
【0040】
なお、モーター110の始動・停止及び回転方向は、赤外線ランプ010の点灯時間及び点灯間隔、或いは赤外線の波長等の組み合わせで指示することができる。赤外線ランプ010の点灯時間及び点灯間隔、或いは赤外線の波長等は、例えばSEM制御ユニット015のGUIを操作することで、赤外線ランプ制御ユニット014により制御される。また、更に動作ロジックを簡素化し、単に赤外線の照射中のみモーター110が継続的に動作する構成とすることもできる。
【0041】
このように、本実施形態の試料移動装置040は、荷電粒子線装置本体とは独立して単体で動作可能であり、試料101の姿勢を調整することができる。
【0042】
また、試料台102の傾斜角度(θ)の範囲は従動アーム104の振れ幅に依存するため、例えば駆動アーム106に対するピン107の位置を回転軸105側に移動させる、或いは駆動アーム106を短縮することで、試料台102の傾動範囲が狭まる。反対に、例えば駆動アーム106に対するピン107の位置を回転軸105と反対側に移動させる、或いは駆動アーム106を延長することで、試料台102の傾動範囲を広げることができる。このように、駆動アーム106に対するピン107の位置によって試料台102の傾動範囲を変更することができる。
【0043】
更に、ピン107の位置調整では試料台102の傾動範囲の不足を補いきれない場合でも、試料移動機構を試料ステージ008の傾斜機構と併用することで高角度の試料傾斜が実現できる。また、試料ステージ008のローテーション機構と併用することで二軸傾斜も可能となる。更に試料ステージ008に傾斜機構がない場合でも、本実施形態の試料移動機構を搭載することで試料傾斜が可能となる。更には、試料移動装置040が試料ステージ008にねじで固定されていることから、例えば図1の電子銃002をイオンガンに変更した場合、ミリングレートがイオンビームの照射角度に依存するイオンミリング法を用いた試料の加工に利用することも可能となり、異なる種類の荷電粒子線装置に共用できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、試料室011のサービスポートを利用して赤外線ランプ010を取り付け、試料台ホルダー007を試料ステージ008に固定することで簡単に取り付けられるので、荷電粒子線装置を大幅に改造する必要もない。そして、赤外線を利用してモーター110を無線制御することから、試料移動装置に対する動力供給や動作制御のために有線接続する場合と異なり、配線で可動範囲が制限されることがないので、試料の位置や姿勢をより柔軟に調整することができる。さらに、試料101や試料台102を付け替えることなく、試料の前処理(加工)、観察、高角度の試料傾斜が必要となるEBSD等の解析まで幅広い工程に対応することができることから、作業の簡素化とともに試料の汚染や破損を回避することができ、個々の装置において最適条件で工程を施行することができる。
【0045】
ここで、SEMやFIB・BIB等の荷電粒子線を用いた装置においては、試料から発生した二次荷電粒子を検出し観察に用いるが、その二次荷電粒子を検出する検出器は一般的には二次荷電粒子を補足し、蛍光物質等で光に変換した後、光電子増倍管等で増幅させる。したがって、試料移動装置を無線制御するにしても、これらの工程に影響を与える可視光の光源は使用できない。
【0046】
それに対し、本実施形態では赤外線を利用することで問題を解決している。本実施形態で用いるのは長波長の赤外線すなわち不可視光であり、照射による光電効果を回避することができることから、電子ビーム001や二次荷電粒子の検出器009に影響を与えずに観察・解析に適用可能である。仮に何らかの影響があっても消灯すればその影響はなくなる。
【0047】
<第2実施形態>
図3は本発明の第2実施形態に係る試料移動装置040Aの概略構成図で、図3(a)は側面図、図3(b)は図3(a)中の矢印III方向から見た正面図である。
【0048】
本実施形態は、赤外線センサー108に代えて太陽電池112を赤外線受光手段として用いた例である。太陽電池112は、赤外線センサー108と同様に試料台ホルダー007の側壁018に取り付けられている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0049】
本実施形態においては、赤外線が太陽電池112に入射すると、光電効果により赤外線から変換された電気エネルギーがバッテリー109に入力されるので、この電気エネルギーの入力に応じてバッテリー109によってモーター110が制御される。したがって、本実施形態においても装置外部から有線により制御や動力を供給されることなく荷電粒子線装置本体とは独立して試料移動装置040Aを単独で動作させることができる。また、動作の始動・停止や動作方向は、第1実施形態と同様に太陽電池112と赤外線ランプ010の点灯時間及び間隔や波長等の組み合わせにより制御することができる。このように観察像取得動作に影響を与えることなく試料移動装置040Aを無線制御することができるので、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0050】
加えて、赤外線でも発電する太陽電池112を用いることで、バッテリー109に充電することも可能となる。
【0051】
<第3実施形態>
図4は本発明の第3実施形態に係る試料移動装置040Bの概略構成図で、図4(a)は側面図、図4(b)は図4(a)中の矢印IV方向から見た正面図である。
【0052】
本実施形態は、赤外線受光手段として赤外線センサー108と太陽電池112を併せ持つ例である。赤外線センサー108及び太陽電池112は、先の実施形態と同様に試料台ホルダー007の側壁018に取り付けられており、それぞれバッテリー109にコードで接続されている。その他の構成は先の実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態においても、赤外線受光手段として赤外線センサー108及び太陽電池112を備えているので、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
<第4実施形態>
図5は本発明の第4実施形態に係る試料移動装置040Cの概略構成図で、図5(a)は側面図、図5(b)は図5(a)中の矢印V方向から見た正面図である。
【0055】
本実施形態は、試料台102の傾動範囲を更に広げ、試料台102を360度傾動させられる例である。本実施形態において、モーター110の回転軸105と試料台102の傾斜軸103にはそれぞれギヤ113,114が取り付けられていて、ギヤ113,114の間には中間ギヤ019が介設されている。中間ギヤ019は、例えば試料台ホルダー007の側壁017に軸受を介して回転自在に支持されている。したがって、モーター110の回転軸105の回転はギヤ113、中間ギヤ019、ギヤ114を介して傾斜軸103に伝達され、試料台102の傾動動作に変換される。試料ステージ008とは独立して、ギヤ113の回転方向によって試料台102が二方向に傾動する。このモーター110から傾斜軸103への動力伝達機構を除いて本実施形態は第1実施形態と同様の構成であるが、第2及び第3実施形態のように赤外線センサー108に太陽電池112を代替又は併用しても良い。
【0056】
本実施形態においても、赤外線を利用して試料移動装置040Cを無線制御できるので、先の実施形態と同様の効果が得られる。加えて、先に説明した各実施形態のようなリンク機構では従動アーム104の振れ幅で試料台102の傾動範囲が制限されていたのに対し、本実施形態ではギヤ伝達機構であるため傾動範囲の制約がないこともメリットである。
【0057】
<第5実施形態>
図6は本発明の第5実施形態に係る試料移動装置040Dの概略構成図で、図6(a)は側面図、図6(b)は図6(a)中の矢印VI方向から見た正面図である。
【0058】
本実施形態は、第3実施形態に示した構成において、試料台102の試料載置面を拡大し、試料台102に大型試料115を固定した例である。その他の構成は第3実施形態と同様であるが、当然ながら本実施形態はその他の実施形態と組み合わせることもできる。このように試料の大きさを考慮して予め試料台102の大きさを調整しておくことで、荷電粒子線装置の試料室011や試料交換室013の容量や試料ステージ008の可動範囲で大型試料115を傾斜させることも可能となる。
【0059】
<第6実施形態>
図7は本発明の第6実施形態に係るマスク位置調整機構041の概略構成図で、図7(a)は側面図、図7(b)は図7(a)中の矢印VII方向から見た正面図である。
【0060】
本実施形態は、例えばBIB加工において試料ステージに対してマスクの位置を調整するマスク位置調整機構041を荷電粒子線装置に取り付けた例である。図7に示したマスク位置調整機構041は、接続されるSEM制御ユニット015からの指令に応じて出力指示信号を生成する赤外線ランプ制御ユニット(出力指示手段)014と、赤外線ランプ制御ユニット014からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線ランプ(赤外線照射手段)010と、試料室011内において試料ステージ008のステージ部020上に固定された試料台ホルダー007と、この試料台ホルダー007に取り付けた試料台102と、試料台ホルダー007に対し変位可能に取り付けたマスク117と、赤外線ランプ010からの赤外線信号を受光する赤外線センサー(赤外線受光手段)108と、この赤外線センサー108で受光した赤外線信号に応じてマスク117を移動させるモーター(駆動装置)131と、このモーター131に電線を経由して給電するとともにモーター110の制御機能を有するバッテリー109とを備えている。
【0061】
モーター131は、試料台ホルダー007の側壁017,018に対して支持部材を介して支持されている。
【0062】
マスク117は、試料台ホルダー007の側壁017,018に対して、モーター131の回転軸132と直交する方向に水平に移動可能に取り付けられている。マスク117には側壁017,018間に延びる長穴が設けられている。長穴はモーター131の回転軸132と直交する方向に水平に幅を持っている。この長穴には側壁017,018に軸受を介して回転自在に取り付けたピン116が通っている。ピン116にはギヤ134が取り付けられており、このギヤ134は中間ギヤ135を介してモーター131の回転軸132に取り付けたギヤ133に噛合している。中間ギヤ135は、例えば試料台ホルダー007の側壁017に軸受を介して回転自在に支持されている。
【0063】
したがって、赤外線信号を受けてバッテリー109でモーター131に動作指令が出力されると、モーター131の回転軸132の回転がギヤ133、中間ギヤ135、ギヤ134を介してピン116に伝達され、ピン116が回転してマスク117が長穴の幅方向に送られる。これによりマスク117の位置が調整され、試料101の加工位置調整が可能となる。
【0064】
また、本実施形態の場合、試料台102は上下に平行移動可能なように側壁017,018に取り付けられており、試料台位置調整ピン118を操作することで試料101の厚さに応じて試料台102の高さを調整することができる構成である。既出の符号を付した部材は先の実施形態の対応の部材と同様であり、赤外線を利用したモーター131の制御態様も基本的に同様である。第2及び第3実施形態のように、赤外線センサー108に太陽電池112を代替又は併用することもできる。
【0065】
ここで、従来は光学顕微鏡等でマスクの位置合わせを行っていたことから、微小な異物や不良部等の特定領域の位置合わせでは分解能が不足し、加工位置の調整が困難な場合があった。それに対し、本実施形態のマスク位置調整機構を用いた場合、光学顕微鏡より高分解能で焦点深度の深いSEMで観察しながらマスクの位置合わせを行うことが可能となり、例えば図8(a)に示したように試料101とその上側に配置されたマスク117の両方をSEMで観察しながらマスク117の位置を調整できるため、微小領域の加工位置調整を容易に行うことができる。
【0066】
また、BIBを用いた前処理装置にマスクの位置調整済みの試料台ホルダー007をそのままセットすることで、図8(b)に示すように試料101の特定位置や微小欠陥の断面作製において高精度な加工を実現することができる。
【0067】
<第7実施形態>
図9は本発明の第7実施形態に係るマスク位置調整機構041Aの概略構成図で、図9(a)は側面図、図9(b)は図9(a)中の矢印IX方向から見た正面図である。
【0068】
本実施形態は、第6実施形態に試料傾斜機構を加えた構成例であり、赤外線ランプ制御ユニット014を用いてマスク位置調整と試料傾斜を選択・制御することが可能である。
【0069】
本実施形態においては、ベース016上に支持部材141,142が立設されており、支持部材141,142に水平に通された傾斜軸119の両端に側壁017,018が固定されている。先の各実施形態と異なり、側壁017,018はベース016に固定されておらず、底部がU字型(半円形)に形成されており、傾斜軸119を中心にして傾動する構成である。また、ベース016上には傾斜用モーター121が搭載されており、傾斜用モーター121の回転軸に取り付けたギヤ143が、傾斜軸119に取り付けたギヤ144に噛合している。したがって、モーター121の回転軸の回転がギヤ143,144を介して傾斜軸119に伝達され、図9(c)に示したように側壁017,018ごと試料台102やマスク117が傾斜する。
【0070】
マスク位置調整機構等のその他の構成は第6実施形態と同様である。また、第2及び第3実施形態と同様に、赤外線センサー108に太陽電池112を代替又は併用することもできる。
【0071】
本実施形態の場合、第6実施形態で説明したようにマスク位置を調整した後、モーター121の動作を第1実施形態等と同じ要領で制御することにより、側壁017,018を傾斜させ、試料101を傾斜させることができる。このとき、側壁017,018の底部はU字型であることから、180度の傾動範囲が確保されている。
【0072】
本実施形態においても、赤外線通信によってマスク位置や試料の姿勢を調整することができるので、先の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
ここで、BIB法で作製した断面が解析や観察に必要な加工面となっているかどうかの判断は、従来、加工を止めてマスク117や試料101を取り外し、SEMや光学顕微鏡で確認することが必要であり、これらの作業が煩雑であった。また、解析や観察に必要な加工面が得られていないと判断されれば追加加工が必要になり、その場合は再度試料101を元の荷電粒子線装置に取り付け直し、再びマスク117の位置を合わせなければならず、光学顕微鏡での位置合わせも含めて作業が煩雑であり、試料の汚染や損傷の要因にもなっていた。
【0074】
それに対し、本実施形態では、マスク117や試料101を取り外さなくてもマスク位置調整機構041Aごと移載することで加工面の確認や追加加工を容易化することができる。
【0075】
<第8実施形態>
図10は本発明の第8実施形態に係る試料移動装置040Eの概略構成図で、図10(a)は側面図、図10(b)は図10(a)中の矢印X方向から見た正面図である。
【0076】
本実施形態は、試料台127の高さ調整機能を有する試料移動装置040Eの構成例である。本実施形態では、試料台ホルダー007の側壁017,018に上下に延びる長穴内を上下に摺動するピン128に試料台127が固定されている。この試料台127の下面は側面視でピン128の延在方向にピン128に対して一定の角度で直線的に傾斜している。この傾斜面には傾斜方向に延びる一定深さの溝が設けられており、この溝の底面(この場合、上面)をローラー124に載せることで試料台127が支持されている。
【0077】
ローラー124は、ボールシャフト受け126でボールシャフト125に螺合したアーム123に回転自在に支持されている。ボールシャフト125は側壁017,018に軸受を介して回転自在に支持されており、片側の側壁017の近傍にギヤ146を有している。ギヤ146は、ベース016上に搭載したモーター147の回転軸148に取り付けたギヤ145に噛合しており、赤外線信号に基づくバッテリー109からの指令によりモーター147が駆動すると、その回転動力がギヤ145,146を介してボールシャフト145に伝達され、ボールシャフト145の回転運動がアーム123の直線運動(図10(a)中の横向き矢印参照)に変換される。そして、アーム123が直線移動するとローラー124が試料台127の傾斜面の溝内を転動し、試料台127が上下方向に平行移動し(図10(a)中の縦向き矢印参照)、試料101の高さを調整することができる。試料101の高さ調整の分解能は、試料台127の底部の傾斜面の傾斜角度で調整することができる。
【0078】
本実施形態においても、第2及び第3実施形態のように、赤外線センサー108に太陽電池112を代替又は併用することができる。また、他の実施形態と組み合わせて構成することもできる。
【0079】
ここで、例えばFIBやBIBによる試料断面や試料上面の傾斜をSEMで観察する場合、従来は試料台に試料を取り付ける際の試料の高さ調整は目視で行っていた。そのため、SEMのステージの傾斜軸中心に試料上面の高さを一致させることは非常に難しく、試料観察面がユーセントリック位置にないため試料を傾斜させると観察位置がずれてしまうという問題があった。これに対しては、事前に試料上面の高さを数点計測し補正する手法もあるものの、図11(a)に例示した試料101(a)のように試料上面が平坦で一様に傾斜している場合は補正可能であるが、図11(b)及び図11(c)に例示した試料101(b),101(c)のように傾斜面が一様でない場合や凹凸が大きい場合は計測点から得られたデータと実際の試料面との形状の誤差が大きく補正も難しかった。
【0080】
それに対し、本実施形態では、試料101(b),101(c)のような試料でも例えばSEM像で観察しながら試料台127の高さを調整することができるので、試料上面の高さを試料ステージ008の傾斜軸中心に一致させてユーセントリック位置にすることが可能となり、試料傾斜時の観察位置のずれを回避することができる。
【0081】
以上、第1−第8実施形態によれば、荷電粒子線装置に備え付けの試料ステージに依存せず試料の傾斜角度や高さを変更することができ、第1−第8実施形態の試料移動装置又はマスク位置調整機構を単独、或いは荷電粒子線装置の試料ステージと併用することで、試料の加工・観察・分析において試料の位置や姿勢をそれぞれ最適化することができる。試料移動装置又はマスク位置調整機構ごと荷電粒子線装置間で設置し直すことができるので、試料自体を試料台から取り外す必要がなく、試料の取り外し及び取り付けの作業の手間が大きく軽減されることに加え、試料の汚染や破損を抑制することができ、多様な試料を多様な手法で加工・観察・分析する上で非常に有用である。
【0082】
なお、以上の各実施形態においては、試料台102を傾斜又は上下方向へ平行移動させる試料移動装置を例示したが、試料台102を水平方向に平行移動させる機構、水平面内で回転させる機構、或いは各可動機構を組み合わせた機構を有する試料移動装置にも本発明は適用可能である。また、マスク117を水平方向へ平行移動させるマスク位置調整機構を例示したが、必要であれば、マスク117を上下方向へ平行移動させる機構、水平面内で回転させる機構、傾斜させる機構、或いは各可動機構を組み合わせた機構を有するマスク位置調整機構にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
001 電子ビーム(荷電粒子線)
007 試料台ホルダー
008 試料ステージ
010 赤外線ランプ(赤外線照射手段)
011 試料室
014 赤外線ランプ制御ユニット(出力指示手段)
015 SEM制御ユニット(制御装置)
030 荷電粒子照射系
040,040A−E 試料移動装置
101 試料
102 試料台
108 赤外線センサー(赤外線受光手段)
109 バッテリー
110 モーター(駆動装置)
112 太陽電池(赤外線受光手段)
115 試料
117 マスク
121 モーター(駆動装置)
127 試料台
131 モーター(駆動装置)
141,141A マスク位置調整機構
147 モーター(駆動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料室と、
この試料室内に設けた試料ステージと、
この試料ステージに向けて荷電粒子線を照射する荷電粒子照射系と、
前記試料ステージに対する試料の位置を調整する試料移動装置とを備え、
前記試料移動装置は、
接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、
前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、
前記試料ステージ上に固定された試料台ホルダーと、
この試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けた試料台と、
前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、
この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記試料台を駆動する駆動装置と
を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
試料室と、
この試料室内に設けた試料ステージと、
この試料ステージに向けて荷電粒子線を照射する荷電粒子照射系と、
前記試料ステージに搭載された試料に対するマスクの位置を調整するマスク位置調整機構とを備え、
前記マスク位置調整機構は、
接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、
前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、
前記試料ステージ上に固定された試料台ホルダーと、
この試料台ホルダーに取り付けた試料台と、
前記試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けたマスクと、
前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、
この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記マスクを駆動する駆動装置と
を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1又は2の荷電粒子線装置において、前記赤外線受光手段からの赤外線信号に応じて前記駆動装置を制御するバッテリーを有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項3の荷電粒子線装置において、前記赤外線受光手段が赤外線センサーであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項3の荷電粒子線装置において、前記赤外線受光手段は太陽電池であり、当該太陽電池で赤外線から得られた電気エネルギーが前記バッテリーに蓄電されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1の荷電粒子線装置において、前記試料台が前記試料台ホルダーに対して傾動可能に設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1の荷電粒子線装置において、前記試料台が前記試料台ホルダーに対して上下に移動可能に設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項2の荷電粒子線装置において、前記マスクが前記試料台ホルダーに対して水平方向に移動可能に設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
荷電粒子線装置の試料ステージに対する試料の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整する試料移動装置において、
接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、
前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、
前記試料ステージ上に固定された試料台ホルダーと、
この試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けた試料台と、
前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、
この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記試料台を駆動する駆動装置と
を備えたことを特徴とする試料移動装置。
【請求項10】
荷電粒子線の試料ステージに搭載された試料に対するマスクの位置を調整するマスク位置調整機構において、
接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、
前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、
前記試料ステージ上に固定された試料台ホルダーと、
この試料台ホルダーに取り付けた試料台と、
前記試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けたマスクと、
前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、
この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記マスクを駆動する駆動装置と
を備えたことを特徴とするマスク位置調整機構。
【請求項11】
接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、荷電粒子線装置の試料ステージ上に固定される試料台ホルダーと、この試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けた試料台と、前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記試料台を駆動する駆動装置とを備えた試料移動装置を、前記荷電粒子線装置の試料ステージ上に取り付け、
前記制御装置を操作して前記赤外線照射手段を制御し、赤外線信号を利用して前記試料移動装置を無線操作して前記試料ステージに対する試料の位置を調整する試料位置調整方法。
【請求項12】
接続される制御装置からの指令に応じて出力指示信号を生成する出力指示手段と、前記出力指示手段からの出力指示信号に応じて赤外線信号を照射する赤外線照射手段と、荷電粒子線装置の試料ステージ上に固定される試料台ホルダーと、この試料台ホルダーに取り付けた試料台と、前記試料台ホルダーに対し変位可能に取り付けたマスクと、前記試料台ホルダーに取り付けられ、前記赤外線照射手段からの赤外線信号を受光する赤外線受光手段と、この赤外線受光手段で受光した赤外線信号に応じて前記マスクを駆動する駆動装置とを備えたマスク位置調整機構を、前記荷電粒子線装置の試料ステージ上に取り付け、
前記制御装置を操作して前記赤外線照射手段を制御し、赤外線信号を利用して前記マスク位置調整機構を無線操作して前記試料ステージに搭載された試料に対するマスクの位置を調整するマスク位置調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−249246(P2011−249246A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123469(P2010−123469)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】