説明

蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法とこの方法で用いられる計測装置

【課題】上半部ケーシングを取外した状態でもケーシング内部構造物の位置調整を高精度に簡単且つ容易にできるようにすることにある。
【解決手段】上半部ケーシング2と下半部ケーシング1にてケーシングが構成される蒸気タービンの内部構成部品を位置合せするための方法であって、ケーシング外部を支持点としてダミーロータ4をケーシング内に貫通させ、上半部ケーシング2が取外された下半部ケーシング1の状態から上半部ケーシング2を組立てた状態にしたときのダミーロータ4に対する内部構成部品との上下、左右方向の変位量を計測し、その計測値に基づいて上半部ケーシング2が取外された状態で内部構成部品の支持点高さをオフセット調整することにより、上半部ケーシング2を組立状態にて内部構成部品を所定の位置に合せることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンの組立時および分解後の再組立時において、タービンケーシングと内部構成部品の位置調整方法とこの方法で用いられる計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンケーシングは、回転体であるタービンロータと静止部である多数の内部構成部品(主としてノズルダイヤフラム)を収容しており、しかも内部構成部品の位置が調整可能なように上半部ケーシングと下半部ケーシングにて上下の2分割構造となっている。
【0003】
回転部であるタービンロータは、シャフトと一体的に構成された1つもしくは複数のホイールを有し、そのホイールに動翼が植え込まれている。また、静止部にはタービンロータホイール間にタービンの動翼に蒸気を導くノズル(静翼)が設置され、このノズルダイヤフラムと回転部の間には径方向にリーク蒸気を減少させるべく、シール装置が設置されている。さらに、タービンロータとケーシングの両端の貫通部には蒸気が外部に漏れ出すことを防止するシール部品が設置されている。
【0004】
これらのシール装置と回転体との間は極めて狭い間隙(1mm程度)となっているが、この間隙は下半部ケーシング内にロータを組込んで、上下半部ケーシングを組立てたとき軸中心から見て径方向に全周に亘って等しくなっていることが重要である。この間隙が径方向に全周に亘って等しくなっていない場合には、回転体が静止部に接触し、タービンロータに損傷や振動を発生させる要因となる。
【0005】
しかし、シール装置と回転体の間隙調整は、上半部ケーシングを取外した状態で行われることから、下半部ケーシングに上半部ケーシングを組立てる際にシール装置と回転体との間隙に変化が発生すると、上半部ケーシングを組立てた後で間隙裕度を確保できない場合がある。
【0006】
このようにタービンの内部構成部品とタービンロータの径方向の間隙調整は、上半部ケーシングを取外した状態で実施されるが、この上半部ケーシングを取外した状態から上半部ケーシングを取付けた状態としたときの内部構成部品とタービンロータとの間隙の変化を事前に想定し、上半部ケーシングを組立てる前にその変化分をオフセットして組立てる必要がある。
【0007】
この内部構成部品とタービンロータの径方向間隙の変化の発生要因としては、タービンの上半部ケーシングを取外した状態からタービン上半部ケーシングを組込んだ状態としたときのケーシングの剛性変化、上半部ケーシングの重量によるケーシング変形及び経年機においてはタービンケーシングの上半部ケーシングと下半部ケーシングとの合せ面部(以下水平継手部と呼ぶ)の経年変形、タービンに接続される配管からの反力による変化が考えられる。
【0008】
そこで、上半部ケーシングを取外した状態からこの上半部ケーシングを下半部ケーシングに組立てる際に、内部構成部品がタービンロータに対して、上下・左右方向へどれだけ変化するかを把握し、その変化分だけ上半部ケーシングが取外された状態で事前にオフセットしておくことにより、上半部ケーシングが組立てられた状態、すなわち運転状態にて要求される間隙を確保することが可能となる。
【0009】
従来、この間隙変化を計測する方法しては、ワイヤリングと呼ばれる工法がある。このワイヤリングによる計測方法は、ケーシング内のタービン軸方向にワイヤを張り、上半部ケーシングの組立前から上半部ケーシングの組立後に内部構成部品の位置が変化する量を計測する方法である。
【0010】
また、最近では蒸気タービンの上部ケーシングが取外された状態で、下部ケーシングの高さに対する部品左右の支持点の相対的高さを求め、この相対高さに基づいて部品の左右の支持点についての予測オフセット値を計算し、この予測オフセット値により部品の左右の支持点を調整して、タービンの上部ケーシングを再取付けしたときの部品の位置合せを改善するようにした蒸気タービンの部品の位置合せ方法がある(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特表2004−516415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前者のワイヤリング計測方法では、下半部ケーシングに上半部ケーシングを組立てた状態でタービン内部に計測員が入り込んで計測する必要があるが、中小型タービンでは内部に計測員が入れないこと、また計測に特殊技能を要すること、さらに屋外に設置されたタービンにおいては、環境によりワイヤの振れ計測が困難であるという問題点があった。
【0012】
また、後者の蒸気タービンの部品位置合せ方法においては、タービンの下部ケーシングの高さに対する部品左右の支持点の相対的高さに基づいて部品の左右の支持点についてのオフセット値を予測し、この予測値により部品の左右の支持点を調整するだけなので、実際に上部ケーシングを取付けたとき、この上部ケーシングによる部品の位置変化に対する調整は困難である。
【0013】
本発明は上記のような問題を解消するため、上半部ケーシングを取外した状態でもケーシング内部構造物の位置調整を高精度に簡単且つ容易にできる蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法とこの方法で用いられる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は次のような計測方法及び計測装置により蒸気タービンの内部構成部品の位置合せを行うものである。
【0015】
本発明は、蒸気タービンの内部構成部品を位置合わせするためにケーシング外部に支持されたダミーロータ又はタービンロータがケーシング内に組み込まれた状態で、上半部ケーシングが取外された状態の下半部ケーシングの状態から上半部ケーシングが組立てられた状態としたときの内部構成部品の代表された複数の支持点でのダミーロータ又はタービンロータに対する内部構成部品の上下・左右方向の変位量を計測し、この変位量の計測結果に基づき上半部ケーシングが取外された状態で内部構成部品の支持点高さを変位量分だけオフセット調整することにより、前記上半部ケーシングを組立状態にて前記内部構成部品を所定の位置に合せることを可能にする。
【0016】
また、本発明は、内部構成部品の全ての部位計測を行わずに代表される計測点での変位量から予想変位量を算出することで、計測点以外に設置されている内部構成部品の変化量を求めると共に、計測中のダミーロータ又はタービンロータに対する内部構成部品の支持点の変位量を連続的に計測・記録する装置を設ける。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上半部ケーシングを組立てた状態にて内部構成部品の上下・左右方向の位置を要求された位置に調整することができる。また、内部構成部品の全ての部位計測を行わずに代表される計測点での変位量から予想変位量を算出し計測点以外に設置されている内部構成部品の変化量を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明による蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法を説明するための第1の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0020】
図1において、1は下半部ケーシング、2は下半部ケーシング1上に載置されて下半部ケーシングと一体的に組立てられる上半部ケーシング、3はケーシングの軸方向両端のケーシング外部に設置されたケーシング外部支持点である。また、4はケーシング内を貫通し、両端のケーシング外部支持点3で支持されるように設けたダミーロータであり、このダミーロータ4はタービンロータが例えばメンテナンスのため、現場にない場合に用いられる。
【0021】
このような蒸気タービンにおいて、図示しない内部構成部品の位置調整を次のような方法で実施する。
【0022】
まず、上半部ケーシング2が取外された状態で、下半部ケーシング1の軸方向両端のケーシング外部に設置されているケーシング外部支持点3間でダミーロータ4を支持させ、この状態で内部構成部品とダミーロータ4との間の上下、左右方向の間隙を測定する。
【0023】
次いで、上半部ケーシング2を下半部ケーシング1上に載置し、両ケーシングを一体的に組立てた状態で内部構成部品とダミーロータ4との間の上下、左右方向の間隙を測定する。
【0024】
その後、上半部ケーシング2を再度取外した状態にて、上半部ケーシング2の組立てられていないときの計測値と、上半部ケーシング2を組立てたときの計測値との偏差から求められる変位量に基づいて前記内部構成部品の支持点高さをオフセット調整する。
【0025】
このような内部構成部品の位置調整方法とすれば、下半部ケーシング上に上半部ケーシングを組立てた状態にしたとき、内部構成部品を要求する所定の位置に調整することが可能となる。
【0026】
したがって、上半部ケーシングを取外した状態でもケーシング内部構造物の位置調整を高精度に簡単且つ容易にできる。
【0027】
図2及び図3は同実施形態において、ダミーロータ4を使用した場合のケーシング外部支持点3の支持方法を説明するための構成図である。
【0028】
上記図1の実施形態において、上半部ケーシング2が組立てられている場合といない場合の荷重変化により、ケーシング外部支持点3の水平レベル変化が発生する可能性があり、また外部環境要因にて発生する熱源・冷却源によりダミーロータ4に伸び、縮みが発生する可能性がある。
【0029】
そこで、このダミーロータ4の変形による計測誤差発生を回避するため、図2(a)〜(d)に示すようにダミーロータとしてH型鋼材からなる角型ダミーロータ4を使用し、このダミーロータ5の支持点側の両端部にコ字形のダミーロータ支持用鋼材7を交差させ且つコ字凹部を上向きにして配置すると共に、各ダミーロータ支持用鋼材7の両端部にボルトをケーシング外部支持点3に向けて挿通し、ケーシングの締付時にダミーロータ4が伸縮移動可能に軽く締付け、またダミーロータ支持用鋼材7の下面には丸棒8を設置して支持させるものである。
【0030】
このように角型ダミーロータ5をケーシング外部支持点3に支持させることによって、角型ダミーロータ4に伸びや縮み及び荷重変化による変形が発生してもこれらを吸収することができる。
【0031】
また、図3(a)〜(c)ではダミーロータとして円筒型ダミーロータ42を使用し、この円筒型ダミーロータ42の支持点側の両端部にコ字形のダミーロータ支持用鋼材72を交差させ且つコ字凹部を上向きにして配置すると共に、このダミーロータ支持用鋼材72の円筒型ダミーロータ42が支持される部分にV字形の切欠きを設け、この切欠き部に円筒型ダミーロータ42を支持させるものである。
【0032】
このように円筒型ダミーロータ42をダミーロータ支持用鋼材72に設けられたV字形の切欠き部に支持させることによって、角型ダミーロータ4に伸びや縮み及び荷重変化による変形が発生してもこれらを吸収することができる。
【0033】
図4は同実施形態において、ダミーロータ支持部でのダミーロータ4の位置変化を変位計により計測する方法を説明するための斜視図である。
【0034】
上記実施形態において、内部構成部品の位置調整を行う際にダミーロータ4の支持部で位置変化が発生すると、下半部ケーシング1から上半部ケーシング2が取外された状態から組立てられた状態での変位量にダミーロータ4の支持部の位置変化が含まれる。
【0035】
そこで、図4に示すようにダミーロータ4の一方の支持点での変位量(AX、AY)及び他方の支持点での変位量(BX、BY)を図示しない変位計により計測し、その計測値をもとに支持点スパンLから比例計算によりL1での補正変位量(L1X、L1Y)を算出し、この補正変位量により上半部ケーシング2が取外されている状態から上半部ケーシング2が組立てられた状態でのダミーロータ4の支持点での変位量の測定値を補正することにより、内部構成部品の位置調整精度を向上させることが可能となる。
【0036】
次に本発明による蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法を説明するための第2の実施形態を図1により説明する。なお、図1において、3はケーシングの外部支持点が軸受部であり、43は前述のダミーロータがタービンロータである以外は前述と同様である。
【0037】
前述した第1の実施形態では、タービンロータが例えばメンテナンスのため、現場にない場合の内部構成部品の位置調整方法であるが、第2の実施形態ではタービンロータがケーシング内に組込まれている場合の内部構成部品の位置調整方法について述べる。
【0038】
まず、ケーシングの軸方向両端の軸受部3に支持されたタービンロータ4を組込んだ後、上半部ケーシング2を取外した状態で内部構成部品とタービンロータ4との間の上下、左右方向の間隙を測定する。
【0039】
次いで、上半部ケーシング2を下半部ケーシング1に載置して両者を一体的に組立てた状態で内部構成部品とタービンロータ4との間の上下、左右方向の間隙を測定する。
【0040】
その後、上半部ケーシング2を再度取外した状態において、上半部ケーシング2の組立てられていないときの測定値と、上半部ケーシング2を組立てたときの計測値との偏差から求められる変位量に基づいて前記内部構成部品の支持点高さをオフセット調整する。
【0041】
このような内部構成部品の位置調整方法とすれば、上半部ケーシングを組立てた状態にしたときの内部構成部品を要求する所定の位置に調整することが可能となる。
【0042】
したがって、上半部ケーシングを取外した状態でもケーシング内部構造物の位置調整を高精度に簡単且つ容易にできる。
【0043】
前述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、上半部ケーシング2が取外された状態のときの測定値と上半部ケーシング2を組立てたときの計測値との偏差から求められる変位量に基づいて内部構成部品の支持点高さをオフセット調整するようにしたが、上半部ケーシング2が取外された状態のときの測定値と上半部ケーシング2を組立てたときの計測値との偏差から求められる変位量と、上半部ケーシング2が組立てられているときの測定値と上半部ケーシング2を取外した状態のときの測定値との偏差から求められる変位量との平均値に基づいて内部構成部品の支持点高さをオフセット調整するようにすれば、より高精度にケーシング内部構造物の位置調整を行うことができる。
【0044】
図5は、本発明の第3の実施形態として、第1の実施形態で説明した方法を実施するための内部構成部品の位置計測装置を示す構成図である。
【0045】
図5に示すように、内部構成部品13が組込まれた下半部ケーシング1にH型鋼材からなる角型ダミーロータ41が軸方向に貫通させて設けられ、このダミーロータ4の両端部は図示しないケーシング外部支持点に支持されている。
【0046】
上記下半部ケーシング1に組込まれた半載状態の内部構成部品13の合せ面(以下水平継手面と呼ぶ)の一方にダミーロータ用測定構造物9を水平にダミーロータ41側に突出させて取付け、その突出部の上面に上下方向に移動調節可能な変位センサ取付け冶具11aを取付け、この変位センサ取付冶具11aにダミーロータ41の垂直方向位置を計測する変位センサ12aを取付ける。また、内部構成部品13の水平継手面の他方に左右方向に移動調節可能な変位センサ取付冶具11bを取付け、この変位センサ取付冶具11bにダミーロータ41の水平方向位置を計測する変位センサ12bを取付ける。
【0047】
そして、これら変位センサ12a,12bの出力は、データロガー14及びオフセット量算出装置15に入力される。
【0048】
このような構成の内部構成部品の位置計測装置とすれば、第1の実施形態で説明した方法により測定した測定値をデータロガ−14及びオフセット量算出装置15にそれぞれ入力することで、上半部ケーシング2が取外されたときの計測値と上半部ケーシング2を組立てたときの計測値との偏差から求められる変位量に基づいて内部構成部品のオフセット量を自動計算及び出力できる。
【0049】
また、常時監視及びデータの保存ができ、上半部ケーシング4が取外された状態から組立てられた状態での内部構成部品13の変位量を連続的に監視・保存することにより、計測データの信頼性向上、変位発生ポイント時間を明確にできる利点がある。
【0050】
次にオフセット量算出装置15により算出されたオフセット量に基づいて内部構成部品13の支持点高さを調整する方法について説明する。
【0051】
いま、上半部ケーシング2が組立てられていない状態から、上半部ケーシング2が組立られた状態としたときの内部構成部品13の変化量が上方にXmm上がり、左にYmm変化したとする。このときの上半部ケーシング2を取外したときの内部構成部品13を要求されたセンターラインに対して下にXmm、右にYmmの位置に調整しておけば、上半部ケーシング組立状態では要求された内部構成部品の位置となる。
【0052】
したがって、上半部ケーシング2を組立てない状態で内部構成部品13の支持点高さを調整することにより、内部構成部品13の位置を要求される位置に調整することができる。
【0053】
なお、下半部ケーシング1、上半部ケーシング2の内部には、軸方向に複数個のノズルダイヤフラムあるいは、蒸気シール部品が設置されているが、測定用構造物を軸方向全ての計測点即ち、内部構成部品13の水平方向継手面に設置せずに、下半部ケーシング1の内部に複数箇所設置し、その計測点間の任意位置における内部構成部品13の変位量をその両隣接部での計測値を軸方向距離に応じた比例計算により求め、この算出値に基づいて内部構成部品の支持点高さをオフセット調整するようにしてもよい。
【0054】
図6は、本発明の第4の実施形態として、第2の実施形態で説明した方法を実施するための内部構成物の位置計測装置を示す構成図である。
【0055】
図6に示すように、内部構成部品13が組込まれた下半部ケーシング1にロータ43が軸方向に貫通させて設けられ、このロータ43の両端部は図示しない軸受に支持されている。
【0056】
上記下半部ケーシング1に組込まれた内部構成部品13の水平継手面にロータ43の上半部を覆う面が水平面に形成されたロータ用測定構造物10を取付け、このロータ用測定構造物10の上部水平面に上下方向に移動調節可能な変位センサ取付冶具11aを取付け、この変位センサ取付冶具11aにロータ43の垂直方向位置を計測する変位センサ12aを取付ける。また、内部構成部品13の一方の上端面に左右方向に移動調節可能な変位センサ取付冶具11bを取付け、この変位センサ取付冶具11bにロータ43の水平方向位置を計測する変位センサ12bを取付ける。
【0057】
そして、これら変位センサ12a,12bの出力は、データロガー14及びオフセット量算出装置15に入力される。
【0058】
このような構成の内部構成部品の位置計測装置とすれば、第2の実施形態で説明した方法により測定した測定値をデータロガ−14及びオフセット量算出装置15にそれぞれ入力することで、前述した第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
図7は、本発明の第5の実施形態として、第2の実施形態で説明した方法を実施するための内部構成物の位置計測装置を示し、(a)は軸端側から見た図、(b)は上面図である。
【0060】
図7に示すように、半載状態の内部構成部品13が組込まれた下半部ケーシング1にロータ43が軸方向に貫通させて設けられ、このロータ43の両端部は図示しない軸受に支持されている。
【0061】
この場合、内部構成部品13は、ロータ43に適宜の間隔を存して有するロータホイール部16相互間に設置されている。
【0062】
上記ロータホイール部16相互間にロータ43と平行にロータ用測定構造物17を固定し、またロータホイール部16相互間に対応する半載状態の内部構成部品13の合わせ面上に上下方向に移動調節可能な変位センサ取付冶具11aを取付け、この変位センサ取付冶具11aにロータ用測定構造物17の垂直位置を計測する変位センサ12aを取付ける。同様に内部構成部品13の合わせ面上に左右方向に移動調節可能な変位センサ取付冶具11bを取付け、この変位センサ取付冶具11bにロータ用測定構造物17の水平位置を計測する変位センサ12bを取ける。
【0063】
そして、これら変位センサ12a,12bの出力は、データロガー14及びオフセット量算出装置15に入力される。
【0064】
このような構成の内部構成部品の位置計測装置とすれば、第2の実施形態で説明した方法によりロータ用測定構造物17と内部構成部品13との相対的な変位量を測定し、その測定値をデータロガ−14及びオフセット量算出装置15にそれぞれ入力することで、前述した第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
なお、上記第3の実施形態乃至第5の実施形態において、変位センサ12a,12bで計測される変位データ、ロータ支持部の位置変化を変位計にて計測して得られる補正データ、測定点以外の内部構成部品に対する予測変位量及び内部構成部品の諸元をオフセット量算出装置15に入して、内部構成部品のオフセット量を自動計算及び出力することにより、上半部ケーシングを取外した状態でもケーシング内部構造物の位置調整を高精度に簡単且つ容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による内部構成部品の位置調整方法が適用される第1及び第2の実施形態を説明するための2分割構造の蒸気タービンの基本構成を模式的に示す斜視図。
【図2】同実施形態において、ダミーロータを使用した場合のケーシング外部支持点の支持方法を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は(c)の破線部分の拡大図。
【図3】同実施形態において、円筒型ダミーロータを使用した場合のケーシング外部支持点の支持方法を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図4】同実施形態において、ダミーロータ支持部でのダミーロータの位置変化を変位計により計測する方法を説明するための斜視図。
【図5】本発明の第3の実施形態として、第1の実施形態で説明した方法を実施するための内部構成部品の位置調整装置を示す構成図。
【図6】本発明の第4の実施形態として、第2の実施形態で説明した方法を実施するための内部構成物の位置調整装置を示す構成図。
【図7】本発明の第5の実施形態として、第2の実施形態で説明した方法を実施するための内部構成物の位置調整装置を示し、(a)は軸端側から見た図、(b)は平面図。
【符号の説明】
【0067】
1…下半部ケーシング、2…上半部ケーシング、3…ケーシング外部支持点又は軸受、4,41,42…角型ダミーロータ、43…ロータ、7…ダミーロータ支持用鋼材、8…丸棒、9…ダミーロータ用測定構造物、10…ロータ用測定構造物、11a,11b…変位センサ取付治具、12a,12b…変位センサ、13…内部構成部品、14…データロガー、15…オフセット量算出装置、16…ロータホイール部、17…ロータ用測定構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半部ケーシングと下半部ケーシングにてタービンケーシングが構成される蒸気タービンの内部構成部品を位置合せするための方法であって、タービンケーシング外部を支持点としてダミーロータをケーシング内に貫通させ、前記上半部ケーシングが取外された下半部ケーシングの状態から前記上半部ケーシングを組立てた状態にしたときの前記ダミーロータに対する前記内部構成部品との上下、左右方向支持点の変位量を計測し、その計測値に基づいて前記上半部ケーシングが取外された状態で前記内部構成部品の支持点高さをオフセット調整することにより、前記上半部ケーシングを組立状態にて前記内部構成部品を所定の位置に合せることを可能にしたことを特徴とする蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法。
【請求項2】
上半部ケーシングと下半部ケーシングにてタービンケーシングが構成され、且つタービンケーシング外部の軸受に支持されたタービンロータがケーシング内に組込まれた蒸気タービンの内部構成部品を位置合せするための方法であって、前記上半部ケーシングが取外された下半部ケーシングの状態から前記上半部ケーシングを組立てた状態にしたときの前記タービンロータに対する前記内部構成部品の上下、左右方向支持点の変位量を計測し、その計測値に基づいて前記上半部ケーシングが取外された状態で内部構成部品の支持点高さをオフセット調整することにより、前記上半部ケーシングを組立状態にて前記内部構成部品を所定の位置に合せることを可能にしたことを特徴とする蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法。
【請求項3】
タービンケーシング内部を貫通するダミーロータとして、円筒形又は角型の鋼材からなるダミーロータが使用される場合、前記ダミーロータを支持点に対してスライド可能にして前記ダミーロータの熱伸縮による変形を吸収し、前記ダミーロータの変形による計測誤差の発生を回避することを特徴とする請求項1に記載された蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法。
【請求項4】
ダミーロータの支持点での位置変化を変位計により計測し、その測定値により前記ダミーロータに対する前記内部構成部品の上下、左右方向支持点の変位量の計測値を補正して計測誤差の発生を回避することを特徴とする請求項1に記載された蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法。
【請求項5】
上半部ケーシング取外し状態から上半部ケーシング組立状態のときの変位量と、上半部ケーシング組立状態から取外し状態のときの変位量を計測し、これら両変位量の平均値により内部構成部品の支持点高さをオフセット調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法。
【請求項6】
上半部ケーシング取外し状態から上半部ケーシング組立状態のときの変位量又は上半部ケーシング組立状態から取外し状態のときの変位量を計測する測定用構造物を軸方向に複数か所設け、測定用構造物間の任意位置の変位量を、計測によって求められた変位量から軸方向の距離に応じて算出し、この算出値に基づいて内部構成部品の支持点高さをオフセット調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法。
【請求項7】
内部構成部品の下半部側水平継手部にダミーロータ用測定構造物を配置し、このダミーロータ用測定構造物に変位センサを配置して上半部ケーシングが取外された状態から組立てられた状態にしたときの前記ダミーロータに対する前記内部構成部品の上下、左右方向支持点の変位量を計測するようにしたことを特徴とする請求項1に記載された蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法で用いられる測定装置。
【請求項8】
内部構成部品の下半部側水平継手部にロータ用測定構造物を配置し、このロータ用測定構造物の水平方向と垂直方向に変位センサを取付けて上半部ケーシングが取外された状態から組立てられた状態にしたときの前記タービンロータに対する前記内部構成部品の上下、左右方向支持点の変位量を計測するようにしたことを特徴とする請求項2に記載された蒸気タービンの内部構成部品の位置調整方法で用いられる測定装置。
【請求項9】
変位センサにより連続的に計測されたダミーロータ又はタービンロータに対する内部構成部品の上下、左右方向支持点の変位量を記録する手段を備えたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載された計測装置。
【請求項10】
変位センサにより連続的に計測されたダミーロータ又はタービンロータに対する内部構成部品の上下、左右方向支持点の変位量からオフセット量を算出するオフセット量算出手段を備えたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載された計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−32504(P2007−32504A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220331(P2005−220331)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】