説明

蒸気タービンの始動方法

【課題】蒸気タービンの始動時間を短縮し、ロータが受ける過大応力のレベルを排除又は低減すること。
【解決手段】本発明は、蒸気タービン(100)の始動に伴う始動時間を短縮する技術的効果を有する。本発明の実施形態は、蒸気タービン(100)の始動中に存在する蒸気と金属の温度不整合を低減する新規の方法を提供する。本質的に、本発明の実施形態は、蒸気タービン(100)の高圧(HP)セクション(120)に付属する流入バルブ(115)の上流側の蒸気圧力を高めることができる。蒸気の初期高圧は、蒸気エンタルピーを低下させ、HPセクション(120)に流入する蒸気温度を低下させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的にターボ機械の作動に関し、より詳細には、蒸気タービンの始動時間を短縮する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの公知の蒸気タービンの始動及び負荷運転プロセスは通常、異なる負荷範囲で生じる複数のフェーズを伴う。蒸気タービンのこの始動及び負荷運転方法の1つの理由は、ロータ応力制御である。蒸気タービンのロータは、始動及び初期負荷フェーズ中に過大応力事象を生じる可能性がある。過大応力は、ロータの材料特性を悪化させる場合がある。ロータ応力制御は、ロータ応力を許容可能範囲内に維持することを目的として、蒸気タービンの負荷運転を多段にすることができる。
【0003】
過大応力事象の可能性を低減する既知の方法は、限定ではないが、比較的低温で熱回収蒸気発生器(HRSG)などのボイラーから出る蒸気の温度を維持管理することを伴う。例えば、限定ではないが、複合サイクル発電プラントでは、ガスタービンは、低負荷スピニングリザーブ又は同様のものに保持され、HRSG内で発生した蒸気の温度が蒸気タービンにとって確実に許容可能であるようにされる。低温始動では、この温度は、およそ700°Fとすることができる。低温始動は、作動中のある期間後の蒸気タービンの始動とみなすことができる。
【0004】
複合サイクル用途では、蒸気圧力は通常、ガスタービン負荷に関連する。低温始動時には、ガスタービンは、蒸気タービンの始動前に定格圧力の約40%に等しい負荷で運転するよう制限される可能性がある。初期上流側圧力が比較的低いことに起因して、蒸気が蒸気タービンに流入されたときに、上流側蒸気エンタルピーもまた比較的高くなる。これらの運転上の要因により、タービンボウルにおける蒸気タービンのセクション内部の蒸気温度は、蒸気の上流側温度よりも低いおよそ40〜50°Fになる場合がある。蒸気タービンの低温始動中、この蒸気温度の低下は、タービンロータ上の過大応力事象を防ぐのには不十分である可能性がある。
【0005】
従って、蒸気タービンの始動方法を改善する要望がある。当該方法は始動時間の短縮を行う必要がある。この方法はまた、ロータが受ける過大応力のレベルを排除又は低減する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5435138号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態では、発電プラント機械を始動する方法は、蒸気を機械トルクに変換するよう構成され、HPセクションを備えた蒸気タービンを準備するステップと、HPセクションの上流側に配置された流入バルブの上流側の蒸気の圧力を圧力適合範囲にまで高めるステップと、を含み、蒸気圧力を高めるステップにより、HPセクションへの流入前に蒸気の温度が低下するようにする。
【0008】
本発明の代替の実施形態では、蒸気タービンを備えた発電プラントを始動させる方法は、蒸気を機械トルクに変換するよう構成され、HPセクション及びバイパスシステムを備えた蒸気タービンを準備するステップと、蒸気タービンの低温始動が必要か否かを判定するステップと、HPセクションの上流側に配置された流入バルブの上流側の蒸気の圧力を圧力適合範囲にまで高めるステップと、流入バルブの上流側の蒸気が圧力適合範囲内にあるか否かを判定するステップと、始動許容条件を満足した場合に、蒸気タービンの始動を開始するステップと、HPセクションへの蒸気流を可能にするように流入バルブを調整するステップと、を含み、蒸気圧力を高めるステップにより、HPセクションへの蒸気の流入前に蒸気の温度が低下するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態が動作できる環境を代表する蒸気タービンのHPセクションを示す概略図。
【図2】蒸気タービンの公知の始動方法による動作曲線を示すチャート。
【図3】本発明の一実施形態による、蒸気タービンを始動するのに用いる方法を示すブロック図。
【図4】本発明の代替の実施形態による、ターボ機械を始動するのに使用される方法を示すブロック図。
【図5】本発明の実施形態に従った蒸気タービンの始動方法による動作曲線を示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、蒸気タービンの始動に伴う始動時間を短縮する技術的効果を有する。本発明の実施形態は、蒸気タービンの始動中に存在する蒸気と金属温度の不整合を低減する新規の方法を提供する。本質的に、本発明の実施形態は、蒸気タービンの高圧(HP)セクションに付随する流入バルブの上流側にある蒸気の圧力を高めることができる。蒸気の初期の高圧は、蒸気エンタルピーを低下させ、従って、HPセクションに流入する蒸気温度を低下させる可能性がある。
【0011】
本明細書では詳細な例示的実施形態が開示される。しかしながら、本明細書で開示される特定の構造及び機能上の詳細事項は、単に例示的実施形態を説明する目的で提示されるに過ぎない。但し、例示的実施形態は、多くの代替形態で具現化することができ、本明細書で記載される実施形態のみに限定されるものと解釈すべきではない。
【0012】
従って、例示的実施形態は、種々の修正形態及び代替形態が可能であるが、図面において例証として示されており、本明細書において詳細に説明する。しかしながら、例示的実施形態を開示される特定の形態に限定するものではなく、逆に、例示的実施形態は、その範囲内にある修正形態、均等形態、及び代替形態全てを対象とするものである点は理解されたい。
【0013】
第1、第2、その他の用語は、本明細書で様々な要素を説明するのに用いることができるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことは理解されるであろう。これらの用語は、単に、ある要素を別の要素と区別するのに使用される。例えば、第1の要素は、例示的な実施形態の範囲から逸脱することなく、第2の要素と呼ぶことができ、同様に第2の要素は第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で使用される用語「及び/又は」とは、関連する記載品目の1つ又はそれ以上の何れか及び全ての組み合わせを含む。
【0014】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、例示的実施形態の限定を意図するものではない。本明細書で使用される単数形態は、前後関係から明らかに別の意味を示さない限り、複数形態も含む。更に、本明細書内で使用する場合に、用語「備える」、「備えている」、「含む」、及び/又は「含んでいる」という用語は、そこに述べた特徴部、完全体、ステップ、動作、要素及び/又は構成部品の存在を明示しているが、1つ又はそれ以上の特徴部、完全体、ステップ、動作、要素、構成部品及び/又はそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことは理解されるであろう。
【0015】
幾つかの代替の実施においては、記載された機能/動作は、図に記載された順序とは異なる順序で行うことができる点に留意されたい。例えば、連続して示す2つの図は、実質的に同時に実行することもでき、或いは、含まれる機能に応じて逆の順序で実行してもよい場合がある。
【0016】
次に図面を参照すると、個々では種々の参照符号が複数の図を通じて同じ要素を表している。図1は、本発明の実施形態が動作できる環境を代表する蒸気タービン100のHPセクション120を示す概略図である。通常、蒸気タービン100は、限定ではないが、高圧(HP)、中圧(IP)、及び低圧(LP)の複数のセクションを備える。本発明の実施形態は、HPセクション120への蒸気流を制御することができる。従って、図1及び以下に続く検討では、凝縮器140に統合されるHPセクション120に焦点をあてて進める。簡単にするために、IPドラム及びIPセクション、LPドラム及びLPセクション、並びに再熱構成部品は図1には示されていない。しかしながら、本発明の実施形態は、これらのセクション及び構成部品の一部又は全てを備えた蒸気タービン100又は同様のものに適用することができる。
【0017】
蒸気タービン100の公知の始動方法が適用される制御システム190は、以下のステップを実施することができる。IPドラムからの蒸気は、蒸気タービン100のIPセクションに流入することができる。次に、蒸気タービン100は、全速無負荷(FSNL)まで加速することができる。次いで、蒸気タービン100は、グリッドシステムと同期することができる。次に、タービンによるIPセクションからHPセクション120への全開流への蒸気の移行を行うことができる。ここで、流入バルブ115の開放を開始することができ、蒸気がHPドラム105からHPセクション120に流入することが可能になる。同時に、制御システム190は、ロータ応力を監視する。ロータ応力が許容可能範囲を超えた場合、制御システム190は、所定の待機期間の間、HPセクション120への蒸気流を保持又は低減することができる。その後、ロータ応力が許容可能範囲にまで減少すると、制御システム190は、流入バルブ115を介して蒸気をHPセクション120に流入させ、全ての蒸気流が達成されるまで又は蒸気タービン負荷が負荷設定点に適合するまで継続することができる。
【0018】
図2は、図1で説明された蒸気タービン100の公知の始動方法による動作曲線を示すチャート200である。第1の垂直軸は、温度(°F単位)及び圧力(psia単位)を表している。第2の垂直軸は応力(パーセンテージ)を表す。第1及び第2の垂直軸は、水平軸上の始動時間(分単位)と対比している。データ系列205は、実HPロータ応力を表し、データ系列210は許容可能応力限界を表す。データ系列215及び220は、HP上流側の圧力及び温度をそれぞれ表す。上流側区域は、図1の上流側位置130として示される。データ系列225は、図1でHPボウル125として示されるHPボウル温度を表すことができる。
【0019】
上流側区域130は、流入バルブ115に上流側で隣接する領域とみなすことができる。下流側区域135は、流入バルブ115に下流側で隣接する領域とみなすことができる。
【0020】
図2は、約8分から約24分まで、HPロータ応力205が許容可能限界210を超えることを示している。この状況を是正するために、制御システム190は、所定待機期間の間、流入バルブ115を閉鎖位置に向けて調整することができる。図2に示すように、約25分において、ロータ応力は許容可能範囲にまで低下する。ここで、制御システム190は、流入バルブ115を開放位置に向けて調整し、上述のように、HPセクション120への蒸気の流入を継続することができる。HPロータ応力205が許容可能限界210を超える期間の約16分は、蒸気タービン100が始動プロセスを完了することができない。
【0021】
理解されるように、本発明は、方法、システム、又はコンピュータプログラム製品として具現化することができる。従って、本発明は、完全ハードウェア実施形態、完全ソフトウェア実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、或いはソフトウェア及びハードウェア態様を組合せた実施形態の形態をとることができ、本明細書ではそれら全てを総称して「回路」、「モジュール」又は「システム」と呼ぶ。更に、本発明は、媒体内に具現化されたコンピュータ使用可能プログラムコードを有するコンピュータ使用可能記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。更に、本発明は、媒体内に具現化されたコンピュータ使用可能プログラムコードを有するコンピュータ使用可能記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。本明細書で使用される用語「ソフトウェア」及び「ハードウェア」は同義的であり、プロセッサが実行するため、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含むメモリ内に記憶されるあらゆるコンピュータプログラムを含む。蒸気のメモリタイプは例証に過ぎず、従って、コンピュータプログラムの記憶に使用可能なメモリのタイプに関し限定するものではない。
【0022】
あらゆる好適なコンピュータ読取り可能媒体を利用することができる。コンピュータ使用可能又はコンピュータ読取り可能媒体は、限定ではないが、例えば電子、磁気、光学、電磁、赤外線又は半導体のシステム、装置、デバイス或いは伝播媒体とすることができる。コンピュータ読取り可能媒体のより具体的な実施例(非網羅的リスト)には、以下のもの、すなわち、1つ又はそれ以上のワイヤを有する電気的接続部、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、消去可能・プログラム可能読出し専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読出し専用メモリ(CD−ROM)、光学記憶装置、インターネット又はイントラネットをサポートするものなどの伝送媒体、或いは磁気記憶装置が含まれることになる。プログラムは、例えば紙又は他の媒体を光学的にスキャンすることにより電子的に取り込み、次いで必要に応じて適切な方法でコンパイルし、解釈し、又は他の方法で処理し、その後コンピュータメモリ内に記憶させることができるので、コンピュータ使用可能又はコンピュータ読取り可能媒体は、プログラムを印刷する紙又は他の好適な媒体であってもよい点に留意されたい。本明細書の文脈に照らして、コンピュータ使用可能又はコンピュータ読取り可能媒体は、命令実行システム、装置又はデバイスによって或いはこれらと関連して使用するためのプログラムを収容、記憶、通信、伝播、又は移送することができるあらゆる媒体とすることができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「プロセッサ」とは、中央処理ユニット、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途集積回路(ASIC)、ロジック回路、及び本明細書で説明される機能を実行することができる他の何らかの回路又はプロセッサを意味する。
【0024】
本発明の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java(登録商標)7、Smalltalk又はC++、或いは同様のものなどの、オブジェクト指向プログラミング言語で記述することができる。しかしながら、本発明の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードはまた、「C」プログラミング言語又は同様の言語のような、従来の手続き形プログラミング言語で記述することができる。プログラムコードは、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして全体的にユーザコンピュータ上で、部分的にユーザコンピュータ上で、或いは、部分的にユーザコンピュータ上で且つ部分的にリモートコンピュータ上で、又は全体的にリモートコンピュータ上で実行することができる。後者の場合には、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を介してユーザコンピュータに接続することができ、或いは外部コンピュータに対して接続することができる(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介して)。
【0025】
以下では、本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照しながら本発明を説明する。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック、並びにフローチャート図及び/又はブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施することができる点は理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供されてマシンを形成し、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサによって実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実施する手段をもたらすようにすることができる。
【0026】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ読取り可能メモリ内に記憶させることができる。これらの命令は、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置に命令して特定の方式で機能させることができ、コンピュータ読取り可能メモリ内に記憶された命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実施する命令手段を含む製品をもたらすようにする。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置上にロードすることができる。これらの命令により、一連の動作ステップをコンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置上で実行させてコンピュータに実装されるプロセスを生成することができる。ここで、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行される命令は、フローチャート及び/又はブロック図のブロックにおいて指定された機能/動作を実施するステップを提供する。
【0027】
本発明の実施形態は、新規の始動方法を提供する。以下で説明するように、この方法の実施形態は、HPセクション120の上流側の蒸気の圧力を高めることができる。これにより、HPセクション120への流入前に蒸気の温度を低下させることができ、ロータ応力を低減することができる。従って、初期蒸気タービン負荷運転中、本方法は、上流側蒸気圧力を低下させることができる。これにより、HPセクション120に流入する蒸気の温度をHPボウル125にて正常動作範囲にまで高めることができる。
【0028】
再び各図を参照すると、図3は、本発明の一実施形態による、蒸気タービン100を始動するのに用いる方法300を示すブロック図である。方法300は、図1に示すように制御システム190により動作することができる。制御システム190は、オペレータが方法300との対話を可能にするグラフィカルユーザインタフェース(GUI)又は同様のものを提供することができる。
【0029】
ステップ305において、方法300は、初期蒸気タービン金属温度を決定することができる。ここで、制御システム190は、蒸気タービン100のロータと一体化された温度検知デバイスから金属温度に関するデータを受け取ることができる。
【0030】
ステップ310において、方法300は、蒸気タービン100の低温始動が必要であるか否かを判定することができる。低温始動は、特定期間の間のアイドル状態になる蒸気タービン100の始動とみなすことができる。蒸気タービン100の構成部品は通常、低温始動下での運転時には、より長い暖機期間を必要とする。制御システム190は、低温始動が必要とされるタイミングを判定する作動タイマー又は同様のものを含むことができる。低温始動が必要な場合、方法300は、ステップ315に進み、そうでない場合には、ステップ325に進むことができる。
【0031】
ステップ315では、方法300は、上流側位置130におけるHP蒸気の圧力を適合圧力範囲にまで高めることができる。再び図1を参照すると、本発明の実施形態は、適合圧力範囲を可能にする位置までバイパスバルブ110を調整することができる。本発明の一実施形態では、圧力範囲は、約1200°Fから約1500°Fとすることができる。
【0032】
ステップ320において、方法300は、上流側位置130での蒸気の圧力が適合圧力範囲内にあるか否かを判定することができる。蒸気の圧力が適合圧力範囲内にある場合、方法300は、ステップ325に進み、そうでない場合には、ステップ315に戻ることができる。
【0033】
ステップ325において、方法300は、始動許容条件を満足するか否かを判定することができる。ここで、制御システム190は、蒸気タービン100の種々のシステムが始動プロセスの準備が整っている、及び/又は可能であることを確保する働きをする始動許容条件を含むことができる。始動許容条件を満足する場合、方法300は、ステップ330に進むことができ、そうでない場合には、始動許容条件を満足するまでステップ325に戻ることができる。
【0034】
ステップ330において、方法300は、蒸気タービン100の始動プロセスを開始することができる。ここで、IPドラムからの蒸気は、蒸気タービン100のIPセクションに流入することができる。次に、蒸気タービン100は、全速無負荷(FSNL)まで加速することができる。
【0035】
ステップ335において、方法300は、蒸気タービン100を同期させることができる。ここで、蒸気タービン100は、グリッドシステム又は同様のものと電気的に接続することができる。
【0036】
ステップ340において、方法300は、流入バルブ115の調整を開始することができる。これにより、HPドラム105からの蒸気がHPセクション120に隣接する配管を充填し加温することを可能にすることができる。
【0037】
ステップ345において、方法300は、IPセクションからHPセクション120への蒸気の全流れに移行することができる。ここで、流入バルブ115は更に開放させることができ、蒸気がHPセクション120に流入できるようになる。
【0038】
ステップ350において、方法300は、ロータ応力レベルが許容可能であるか否かを判定することができる。ここで、制御システム190は、ロータ応力をリアルタイムで監視し、実際のロータ応力を許容可能応力限界と比較することができる。ロータ応力が許容可能範囲にない場合、方法300は、ステップ355に進むことができ、そうでない場合、ステップ360に進むことができる。
【0039】
ステップ355において、方法300は、所定待機期間の間、HPセクション120への蒸気流を維持又は低減することができる。その後、ロータ応力が許容可能範囲にまで減少すると、制御システム190は、流入バルブ115を介して蒸気をHPセクション120に流入させ続けることができる。
【0040】
ステップ360において、方法300は、上流側位置130における蒸気の温度をほぼ定格温度にまで高めることができる。ここで、制御システム190は、蒸気の圧力を減少させることができる位置までバイパスバルブ110を調整することができ、上述のように蒸気温度を高めることが可能になる。
【0041】
ステップ365において、方法300は、HPボウル125における蒸気の温度を高めることができる。ここで、制御システム190は、蒸気の圧力を減少させることができる位置までバイパスバルブ110を調整することができ、上述のように蒸気温度を高めることが可能になる。
【0042】
ステップ370において、方法300は、負荷をベース負荷又は他の負荷設定点まで増大させることができる。ここで、制御システム190は、所望の負荷に達するまで、流入バルブ115を介して蒸気をHPセクション120に流入し続けることができる。
【0043】
ステップ375において、方法300は、負荷設定点を維持することができる。ここで、方法300は、必要に応じて負荷を維持するよう流入バルブ115を調整することができる。
【0044】
図4は、本発明の代替の実施形態による、ターボ機械を始動するのに使用される方法400を示すブロック図である。図3に記載したステップの大部分を繰り返し使用することができる。従って、図4の検討では、方法300と400の相違点に焦点を合わせることにする。方法300のステップ360及び365は、方法400においては入れ替えられている。ここで、方法400は、ステップ460において、HPボウル125での蒸気温度を高めるステップを、上流側位置130での蒸気温度を高めるステップよりも優先している。方法400におけるこの手法は、方法300で用いた手法とは対照的であり、これを用いてロータ応力レベルを更に軽減することができる。
【0045】
本発明の実施形態は、流入バルブ115の上流側の蒸気のエンタルピーを低減することができる。加えて、流入バルブ115の前後の圧力比を低減することができる。これと共に、これらの動作は、HPボウル125内部の温度を全体的に低下させることができる。本発明の一実施形態では、流入バルブ115の前後の温度低下は、約125°Fから約150°Fの範囲にわたることができる。相対的に、図2と共に説明した方法は、単に、約50°Fまでの温度低下を提供することができる。本発明の一実施形態によって提供できる温度低下の増大は、蒸気及び金属温度不整合を低減し、従って、ロータ応力を低減することができる。
【0046】
図5は、本発明の実施形態に従った図3の方法300及び図4の方法400による動作曲線を示すチャート500である。第1の垂直軸は、温度(°F単位)及び圧力(psia単位)を表している。第2の垂直軸は応力(パーセンテージ)を表す。第1及び第2の垂直軸は、水平軸上の始動時間(分単位)と対比している。データ系列505は、実HPロータ応力を表し、データ系列510は許容可能応力限界を表す。データ系列515及び520は、HP上流側の圧力及び温度をそれぞれ表す。上流側区域は、(図1に示す)上流側位置130に隣接することができる。データ系列525は、図1でHPボウル125として示されるHPボウル温度を表すことができる。
【0047】
図5は、蒸気タービン100の始動全体を通じて、HPロータ応力505が許容可能応力限界510を超えないことを示している。ここで、バイパスバルブ110は、上流側位置130の圧力を約1400psigまで高めるよう調整された。図5では、HPボウル温度525は、約575°Fである。対照的に、図2のHPボウル温度は約725°Fである。図5はまた、上述のように、上流側圧力515が低下したときのHP上流側圧力520及び温度525の増大を示している。
【0048】
当業者であれば理解されるように、幾つかの例示的な実施形態に関して上述された多くの様々な特徴及び構成は、本発明の他の実施可能な実施形態を形成するよう更に選択的に適用することができる。更に、実施可能な繰り返しの全てが本明細書で詳細には提供され又は説明されるとは限らないが、添付の複数の請求項又はその他によって包含される全ての組み合わせ及び可能な実施形態は、本出願の一部をなすことを当業者であれば理解されるであろう。加えて、本発明の複数の例示的な実施形態の蒸気の説明から、当業者は、改善、変更、及び修正を理解するであろう。当該技術分野内でのこのような改善、変更、及び修正はまた、添付の請求項により保護されるものとする。更に、上記のことは、本出願の好ましい実施形態にのみに関連しているが、添付の請求項及びその均等物によって定められる本出願の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変更及び修正を本明細書において行うことができる点を理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
100 蒸気タービン
105 HPドラム
110 バイパスバルブ
115 流入バルブ
120 HPセクション
125 HPボウル
130 上流側位置
135 下流側位置
140 凝縮器
200 チャート
205 HPロータ応力
210 許容可能応力限界
215 HP上流側圧力
220 HP上流側温度
225 HPボウル温度
300 方法
400 方法
500 チャート
505 HPロータ応力
510 許容可能応力限界
515 HP上流側圧力
520 HP上流側温度
525 HPボウル温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラント機械を始動する方法(300、400)であって、
蒸気を機械トルクに変換するよう構成され、HPセクション(120)を備えた蒸気タービン(100)を準備するステップと、
前記HPセクション(120)の上流側に配置された流入バルブ(115)の上流側の蒸気の圧力を圧力適合範囲にまで高めるステップ(315)と
を含んでおり、前記蒸気圧力を高めるステップにより、前記HPセクション(120)への流入前に蒸気の温度が低下するようにする、方法。
【請求項2】
始動許容条件を満足した(325)場合に、前記蒸気タービンの始動を開始する(330)ステップを更に含む、請求項1記載の方法(300、400)。
【請求項3】
前記流入バルブ(115)を開放し、蒸気が前記HPセクションに流入できるようにするステップ(345)を更に含む、請求項2記載の(300、400)。
【請求項4】
ロータ応力が許容可能範囲内にあるか否かを判定するステップ(350)を更に含む、請求項2記載の(300、400)。
【請求項5】
ロータ応力が許容可能範囲内になるまで前記蒸気タービンへの現在の負荷を維持するステップ(355)を更に含む、請求項4記載の(300、400)。
【請求項6】
前記流入バルブ(115)の上流側の蒸気の圧力を低下させるステップ(360)を更に含む、請求項5記載の(300、400)。
【請求項7】
前記HPセクションのHPボウル領域(125)における蒸気の温度を高めるステップ(365)を更に含む、請求項6記載の(300、400)。
【請求項8】
前記HPセクションのHPボウル領域(125)における蒸気の温度を高めるステップ(365)を更に含む、請求項5記載の(300、400)。
【請求項9】
前記流入バルブ(115)の上流側の蒸気の圧力を低下させるステップ(465)を更に含む、請求項8記載の(300、400)。
【請求項10】
蒸気タービン(100)を備えた発電プラントを始動させる方法(300、400)であって、
蒸気を機械トルクに変換するよう構成され、HPセクション(120)及びバイパスシステム(110)を備えた蒸気タービン(100)を準備するステップと、
前記蒸気タービンの低温始動が必要か否かを判定するステップ(410)と、
前記HPセクション(120)の上流側に配置された流入バルブ(115)の上流側の蒸気の圧力を圧力適合範囲にまで高めるステップ(415)と、
前記流入バルブ(115)の上流側の蒸気が前記圧力適合範囲内にあるか否かを判定するステップ(420)と、
始動許容条件を満足した(425)場合に、前記蒸気タービンの始動を開始する(430)ステップと、
前記HPセクション(120)への蒸気流を可能にするように前記流入バルブ(115)を調整するステップ(440、445)と
を含んでおり、前記蒸気圧力を高めるステップにより、前記HPセクション(120)への蒸気の流入前に蒸気の温度が低下するようにする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−132951(P2011−132951A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278690(P2010−278690)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】