説明

蒸気タービンの暖機方法

本発明は、部分タービンとして中圧タービン(2)および/又は低圧タービン(6)を有し、中圧タービン(2)の出口側に堰止め装置(7)を有し、始動過程中に中圧タービン(2)を通って流れる蒸気が、出口(3)において堰止め装置(7)によって、中圧タービン(2)における蒸気圧力が高められるように堰止められる蒸気タービン(1)の暖機方法に関する。中圧タービン(2)から排出される蒸気は堰止められ、これにより、蒸気の圧力および温度が高められる。中圧タービン(2)に存在する厚肉構造部品並びに中圧タービン軸への蒸気の熱伝達が高められる。これによって、蒸気タービンにおける始動時間が短縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分タービンとして中圧タービンおよび/又は低圧タービンを有し、中圧タービンの出口側に堰止め装置を有している、蒸気タービンの暖機方法に関する。
【0002】
蒸気タービンは流体機械とも呼ばれる。水車、蒸気タービン、ガスタービン、風車、回転ポンプ、回転圧縮機並びにプロペラは流体機械と総称される。これらの全機械は、それらが他の機械を駆動するために流体からエネルギを取り出すために用いられるか、それと逆に流体の圧力を高めるために流体にエネルギを供給するために用いられることで共通している。
【0003】
ここでは高圧タービンとは、620℃までの温度と300バールまでの圧力を有する過熱蒸気が入口に供給される部分タービンを意味する。上述の温度仕様および圧力仕様は基準量でしかない。高温高圧に対して設計された部分タービンは高圧タービンとも呼ばれる。中圧部分タービンには、通常、600℃の温度と約140バールの圧力を有する過熱蒸気が供給される。低圧部分タービンには、通常、中圧部分タービンから排出された蒸気が供給される。低圧タービンから排出された蒸気は、最終的に復水器に集められ、そこで凝縮され水に戻される。一般に、高圧タービンから排出された蒸気は再熱器で過熱され、中圧タービンに導入される。
【0004】
地方自治体エネルギ供給において、発電機を駆動するために形成された蒸気タービンは、できるだけ迅速に定格回転数まで加速できることが非常に重要である。その定格回転数は周波数50Hzないし60Hzにおいてである。しかし異なった定格回転数も知られている。
【0005】
その場合、蒸気タービンにおける軸および他の厚肉構造部品が、それらの構造部品における許容できない応力発生を防止するために、全運転パラメータで負荷する前に、制御して予熱(暖機)されねばならない、という問題がある。
【0006】
通常、中圧タービンのタービン軸は真空近くで慣らし運転される。これは中圧タービンの出口側に比較的低い圧力がかかることを意味する。この理由から、中圧タービンに流入する蒸気の飽和温度および密度は低い。このために、蒸気による軸への入熱量は小さく、これは中圧タービンの暖機時に時間遅れを生じさせる。このために全体として、蒸気タービンの始動時間が長くなる。長すぎる始動時間は故障と見做される。
【0007】
本発明の課題は、蒸気タービンが迅速に暖機される方法を提供することにある。
【0008】
この課題は、部分タービンとして中圧タービンおよび/又は低圧タービンを有し、中圧タービンの出口側に堰止め装置を有している蒸気タービンの暖機方法において、始動過程中に中圧タービンを通って流れる蒸気が、出口において堰止め装置によって、中圧タービンにおける蒸気圧力が蒸気の飽和温度が高められるように増大されるように堰止められる、ことによって解決される。
【0009】
本発明は特に、蒸気タービンの始動時に中圧タービンの出口における蒸気流を制御して堰止めることによって圧力が高められるという観点から出発している。例えば弁の閉鎖によって、中圧タービンの出口における圧力が高められる。その圧力上昇は蒸気の飽和温度を高めさせる。熱伝達量は飽和蒸気において特に高い。この熱伝達量は対流暖機方式の場合より高くなる。従って、飽和時における蒸気温度は軸への入熱量にとって重要である。例えば本発明に基づく堰止めが存在しない場合、蒸気の温度は約80℃、圧力は約0.5バールである。中圧タービンの出口側蒸気を堰止め装置によって例えば蒸気圧力が4バールになるように堰止めることによって、144℃の蒸気飽和温度が生ずる。これにより、蒸気タービンに配置された軸への熱伝達が増大し、その結果、軸が比較的速く加熱される。
【0010】
また高くなった蒸気密度によって、それに続く中圧タービンの対流加熱も速められる。
【0011】
熱が中圧タービン軸により速く取り入れられる本発明に基づく処置によって、低温始動時における蒸気タービンの始動過程は1時間まで短縮される。有利な実施態様において、堰止め装置は移送管に配置されている。この場合の移送管は、中圧タービンの出口を低圧タービンの入口に流れ技術的に接続する配管である。
【0012】
この処置によって、中圧タービンの出口側における圧力を比較的簡単に高めることができる。
【0013】
他の有利な実施態様において、堰止め装置は調整可能に形成されている。
【0014】
これによって、蒸気タービンの暖機過程が制御できる。例えば、中圧タービンに非連続的に流入する蒸気質量流量を、可調整堰止め装置によって、中圧タービンの厚肉構造部品への入熱が一様に行われる、ように変化させることができる。
【0015】
堰止め装置の制御に対する入力量として、温度、圧力および/又は蒸気質量流量が利用される。
【0016】
他の有利な実施態様において、堰止め装置はバタフライ弁として形成されている。バタフライ弁の形成は、所望の効果、即ち、蒸気の堰止めを達成する比較的安価な処置である。
【0017】
他の有利な実施態様において、蒸気が出口側において3〜5バールの圧力値および130〜150℃の温度値になるように堰止められる。
【0018】
この圧力値および温度値において、中圧タービン軸への蒸気の入熱量が特に高いことが確認されている。
【0019】
以下図を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0020】
図1に蒸気タービン8が概略的に示されている。蒸気タービンは部分タービンとして高圧タービンと、中圧タービンおよび/又は低圧タービンを有している。ここで図示された蒸気タービンは中圧タービンと低圧タービンとを有している。通常、生蒸気(主蒸気)は図示されていない高圧タービンに流入し、そこで膨張し、冷えて低い温度となる。この膨張済み冷却済み蒸気は、図1に示されていない再熱器において高い温度に加熱され、続いて、配管1を介して中圧タービン2に流入する。中圧タービン2に流入した蒸気はそこで膨張し、そこで蒸気の圧力と温度は低下する。
【0021】
中圧タービン2の出口側で、膨張済み蒸気は出口3から移送管4を介して低圧タービン6の入口5に流入する。図1に示された中圧タービン2および低圧タービン6は蒸気タービンの一部である。理解し易くするために、高圧タービン、再熱器、復水器および例えばポンプのような他の機器は図示されていない。
【0022】
移送管4に堰止め装置7が配置されている。この堰止め装置7は調整可能であり、および/又はバタフライ弁として形成される。始動過程中において堰止め装置7は、出口3で流出する蒸気が弁で堰止められ、その上流に滞留され、これにより、蒸気圧力が高められるように作動される。これにより、蒸気の飽和温度が高められ、これは、中圧タービン2のタービン軸への蒸気の熱伝達量を増大させる。中圧タービン軸は図示されていない。
【0023】
良好な熱伝達量を得るために、蒸気が出口側において3〜5バールの圧力値および130〜150℃の温度値になるように堰止められねばならないことが確認されている。
【0024】
これによって、蒸気タービンの始動過程は約1時間短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】蒸気タービンの中圧タービンと低圧タービンの概略構成図。
【符号の説明】
【0026】
1 配管
2 中圧タービン
3 出口
4 移送管
6 低圧タービン
7 堰止め装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分タービンとして中圧タービン(2)および/又は低圧タービン(6)を有し、中圧タービン(2)の出口側に堰止め装置(7)を有している蒸気タービン(8)の暖機方法において、
始動過程中に中圧タービン(2)を通って流れる蒸気が、出口(3)において堰止め装置(7)によって、中圧タービン(2)における蒸気圧力が蒸気の飽和温度が高められるように増大されるように堰止められることを特徴とする蒸気タービンの暖機方法。
【請求項2】
堰止め装置(7)が移送管(4)に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
堰止め装置(7)が調整可能に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
堰止め装置(7)がバタフライ弁として形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
蒸気が出口側において3〜5バールの圧力値および130〜150℃の温度値になるように堰止められることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
部分タービンとして中圧タービン(2)および/又は低圧タービン(6)を有する蒸気タービン設備において、
中圧タービン(2)の出口側に配置された堰止め装置(7)を有していることを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項7】
堰止め装置(7)がバタフライ弁として形成されていることを特徴とする請求項6に記載の蒸気タービン設備。
【請求項8】
堰止め装置(7)が移送管(4)に配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の蒸気タービン設備。

【図1】
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【公表番号】特表2009−511812(P2009−511812A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535015(P2008−535015)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067254
【国際公開番号】WO2007/042523
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】