説明

蒸気タービン過負荷バルブ及びそれに関連する方法

【課題】蒸気タービン運転システムを提供する。
【解決手段】本蒸気タービン運転システムは、少なくとも高圧タービンセクション及び低圧セクションと、ボイラから高圧タービンセクションに蒸気を流入させるように構成された1以上の制御バルブと、低圧セクションから排出された蒸気を受けかつ該蒸気を液体に転換するように構成された凝縮器と、凝縮器から液体を受け、該液体を高圧セクションからの蒸気により熱交換器を介して加熱しかつ該加熱液体をボイラに還流させるように構成されたトップヒータと、1以上の制御バルブを迂回してトップヒータに直接蒸気を供給するように構成されたバイパス過負荷バルブとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高負荷での運転のためにタービン供給予備力を使用して蒸気タービンを作動させることに関する。
【背景技術】
【0002】
発電産業で使用するタイプの大型蒸気タービンは、公称定格能力を超える幾らかの付加的な負荷能力、すなわち一般に「保証ポイント」と呼ばれる運転ポイントを備えるように大まかに設計される。公称定格能力は、出力に関して述べたものであり、通常は、この条件は、全開以下の開度の1以上の制御バルブで達成されて、制御バルブを全開にすることによって付加的な能力が得られるさせる。タービン設計が全開の蒸気流入バルブで公称定格能力が発生するようにされている場合には、そのポイントにおけるタービン効率は、エネルギー利用又は熱消費率に関して大幅に改善されることになる。しかしながら、制御バルブが全開の場合には、それによって蒸気タービンの供給予備力を得ることができる手段に制約が生じる。
【0003】
全開の制御バルブで公称定格能力が生じる場合におけるタービンで過剰能力を達成する1つの公知の方法は、バイパスバルブを設け、それによって制御バルブを迂回してタービンの後方低圧段に余分な蒸気を流すことである。この方法(過去に使用されていたような)は、3つの欠点を有する。第1に、タービン制御システム内にバイパスバルブを統合することが必要であり、実際には流入制御バルブとの間で制御かつ調整した方法で絞る付加的な制御バルブとして該バイパスバルブを製作するこが必要であると考えられてきた。このことは、制御システムを大幅に複雑なものにしている。第2に、絞りタイプのバイパスバルブについての発電産業の増分規定要件を満たすためには、制御バルブとバイパスバルブとの間に幾らかのオーバラップを設けることが必要であった。言い換えると、制御バルブが全開になる前に、バイパスバルブを開放し始めることが必要になる。このことは、その公称定格能力におけるタービンの効率を低下させる。第3に、そのようなバイパスバルブの小さな容量の故に、タービンを該タービンが連結された電力システムにおける周波数制御に関与させるためには、大きなバルブストローク運動を必要とする。この大きな運動により、大きな摩耗が生じ、バルブの早期損傷を招く。
【0004】
別の方法では、バイパス過負荷バルブを使用して、迂回又はバイパス蒸気を下流タービン段内に再導入することにより、タービン制御システムに対して大きな変更を加えずにタービンの供給予備力を得る。この方法は、本願出願人の米国特許第4403476号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4403476号明細書
【特許文献2】米国特許第3097488号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示した例示的だが非限定的な実施形態では、ボイラによって供給されかつ蒸気タービン入口の上流に位置する過負荷バルブに向かって送給された蒸気は、下流タービン段ではなくてトップヒータに向け直される。
【0007】
従って、1つの態様では、本発明は、蒸気タービン運転システムに関し、本蒸気タービン運転システムは、少なくとも高圧タービンセクション及び低圧セクションと、ボイラから高圧タービンセクションに蒸気を流入させるように構成された1以上の制御バルブと、低圧セクションから排出された蒸気を受けかつ該蒸気を液体に転換するように構成された凝縮器と、凝縮器から液体を受け、該液体を高圧セクションからの蒸気により熱交換器を介して加熱しかつ該加熱液体をボイラに還流させるように構成されたトップヒータと、1以上の制御バルブを迂回してトップヒータに直接蒸気を供給するように構成されたバイパス過負荷バルブとを含む。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、連結負荷に動力を送給しかつ蒸気発生源から蒸気を受ける蒸気タービンであって、該タービンのより高圧段への蒸気の流入を制御する1以上の制御バルブを有しまた蒸気源から蒸気を受けるように連結されたバイパス過負荷バルブを有する蒸気タービンを運転する方法に関し、本方法は、(a)バイパス過負荷バルブを閉鎖状態に維持しながら、タービンに蒸気を流入させるように制御バルブを制御可能に位置決めして、事前選択した出力負荷を持続させるステップと、(b)バイパス過負荷バルブを少なくとも部分的に開放するステップと、(c)バイパス過負荷バルブを通って流れる蒸気をトップヒータに還流させるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】その中でタービンが公知の構成によるバイパス過負荷バルブを利用している蒸気タービン発電プラントの簡易概略図。
【図2】図1と同様であるが、本明細書に開示した例示的だが非限定的な実施形態の主題を組入れるように修正した簡易概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1の発電プラントでは、ボイラ10は、高圧蒸気源として働き、高圧(HP)セクション14、中圧(IP)セクション16及び低圧(LP)セクション18を備えた再熱蒸気タービンを駆動するための駆動流体を供給する。タービンセクション14、16及び18は、シャフト22によって互いにまた発電機20に直列に結合されるように示しているが、その他の結合構成も使用することができる。さらに、本明細書に開示した本発明は、IPセクションを有しない非再熱タービンに対しても同様にかつ良好に適用されることが分かるであろう。
【0011】
ボイラからの蒸気流路は、蒸気導管24を通してのものであり、蒸気導管24から蒸気を取り出して、1以上の流入制御バルブ(複数のバルブを参照符号25〜28で示している)を通してHPタービン14に流すことができる。各制御バルブ25〜28は、部分流入構成としての円周方向配置ノズルアークを通してか又は単一流入構成としての第1段ノズルの前方の単一スペースへかのいずれかで蒸気をHPセクション14に吐出するように連結される。これらの構成の両方とも、当技術分野ではよく知られている。さらに、部分流入構成の場合におけるタービンの制御バルブは、蒸気が集合均一円周方向パターンとしてHPセクション14に流入して、タービンが単一流入タービンと同様に作動するさせる完全アークモードで同時に作動させるか、或いは蒸気が最初は1以上のノズルアークに流入し、その後タービン負荷が増大するにつれて順次その他のノズルアークに流入する部分アークモードで連続的に作動させるかのいずれかで作動させることができる。
【0012】
HPセクション14から排出された蒸気は、再熱器を通って流れ、再熱器において、蒸気の温度を上昇させる。その後、再熱器からの蒸気は、IPセクション16に流れ、次にクロスオーバ導管32を通してLPセクション18に流れる。LPセクション18から排出された蒸気は、凝縮器34に流れ、凝縮器34は、流体の状態を気体すなわち蒸気から液体すなわち水に変化させる。水は次に、ボイラに還流し、ボイラにおいて、水は、蒸気に変化して戻り、1以上の流入制御バルブを通ってタービンに還流する。
【0013】
蒸気タービンの制御は、非常に複雑かつ面倒なプロセスであるが、タービンが本質的に定常状態で運転している場合には、主要な考慮事項は、タービンの速度及び負荷を維持することである。図1を参照すると、これらの変数は、フィードバック制御システム38によって制御され、フィードバック制御システム38は、タービン12により多くの又はより少ない蒸気が流入するように制御バルブ25〜28を位置決めする(すなわち、その開度を決定する)。そのような制御システムは、よく知られており、例えば制御システム38は、米国特許第3097488号によって開示されているタイプのものとすることができる。
【0014】
実際には、あらゆるタービンは、公称定格能力を超える出力を発生する供給予備力を備えるように設計される。制御バルブがその限界つまり全開位置に達した後にタービンから付加的な出力を得るために、蒸気供給導管24と再熱器30の前方の再熱ポイントとの間にバイパス過負荷バルブ40が連結される。バイパス過負荷バルブ40の制御のために、公称定格能力よりも負荷需要が大きい時にはいつでも、該バルブ40を開放するように作動させる単純開放−閉鎖(手動又は自動)制御装置42が設けられる。過負荷バルブ40を手動で作動させるために、単純スイッチ構成を使用することができ、またバルブ40は、制御バルブ25〜28が全開した時はいつでも運転要員の自由裁量で開放させることができる。
【0015】
例えば、制御バルブ25〜28が全開しておりかつタービン12がその公称定格能力で運転している状態では、続いてバイパス過負荷バルブ40を開放することによって、付加的な出力が得られる。このことは、多量の蒸気がタービンのより高圧セクションを迂回しかつ再熱器30の低温側に流入するのを可能にする。しかしながら、それに代えて、過負荷バルブ40を通るバイパス蒸気は、点線44で示すように高圧セクション14の低圧段に流入させることができる。いずれのケースでも、タービン内への全蒸気流量の増大が生じ、それを維持した場合には、タービン12がより大きな出力を発生することが可能になる。
【0016】
次に、同様な参照符号を利用しているが接頭文字「1」を付して対応する構成要素を示している図2を参照すると、ボイラ110から過負荷バルブ140に向かって迂回させた蒸気は、図1の構成におけるように下流タービンに向け直されるのではなくて、管路46を介してタービントップヒータ48に向け直される。従って、HPセクション114からトップヒータ48への流入蒸気(又は、HPタービン膨張における途中位置から抽出された蒸気)及び管路46を介してトップヒータに流入するバイパス蒸気は、混合して、凝縮器134からの液体凝縮物を加熱する。加熱凝縮物はボイラ110に還流し、ボイラ110において、加熱凝縮物は蒸気に転換されて戻りかつタービンに再循環されるが、一方、HPセクション114及び管路46からの今は低温になった蒸気は、単にトップヒータからドレンされる。過負荷バルブは、あらゆる好適な公知の制御装置によって、つまり絞り方式で徐々に増加する(単純なオン/オフ作動ではなくて)ように開放及び/又は閉鎖させ、従ってサイクル条件に一層応答した状態にすることができる。
【0017】
この例示的だが非限定的な構成は、より多くの従来型の構成に関連する問題点を解決する。例えば、この構成は、通常は非常に高価である蒸気タービン内の別の制御段の必要性を排除する。蒸気をトップヒータに直接バイパスさせることはまた、蒸気通路が中断されるのを防止する。本構成はまた、バイパス流が蒸気通路に流入するポイントにおいて熱ひずみを引き起こす、タービン構造体内の温度不一致に関連する問題点を排除する。熱ひずみは、回転及び固定構成要素間に大きな間隙を生じて、蒸気漏洩を増加させかつ効率を低下させるおそれがある。
【0018】
現在最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、逆に特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内に含まれる様々な変更及び均等な構成を保護しようとするものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0019】
10、110 ボイラ
12、112 蒸気タービン
14、114 高圧(HP)セクション
16、116 中圧(IP)セクション
18、118 低圧(LP)セクション
20、120 発電機
22、122 シャフト
24、124 蒸気導管
25〜28、125〜128 制御バルブ
30、130 再熱器
32、132 クロスオーバ導管
34、134 凝縮器
38 制御システム
40、140 バイパス過負荷バルブ
42 制御装置
46 管路
48 トップヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも高圧タービンセクション(114)及び低圧セクション(118)と、ボイラ(110)から前記高圧タービンセクションに蒸気を流入させるように構成された1以上の制御バルブ(125〜128)と、前記低圧セクション(118)から排出された蒸気を受けかつ該蒸気を液体に転換するように構成された凝縮器(134)と、前記凝縮器(134)から液体を受け、該液体を前記高圧セクション(114)からの蒸気により熱交換器を介して加熱しかつ該加熱液体を前記ボイラ(110)に還流させるように構成されたトップヒータ(48)と
を備える蒸気タービン運転システムであって、前記1以上の制御バルブを迂回して前記トップヒータ(48)に直接蒸気を供給するように構成されたバイパス過負荷バルブ(140)をさらに含む、運転システム。
【請求項2】
前記バイパス過負荷バルブ(140)からの蒸気及び前記高圧タービンセクション(114)からの蒸気が、前記トップヒータ(48)からドレンされる、請求項1記載の運転システム。
【請求項3】
前記バイパス過負荷バルブ(140)が、開放及び閉鎖位置間で移動可能である、請求項1記載の運転システム。
【請求項4】
前記バイパス過負荷バルブ(140)が、絞り方式で徐々に増加するように移動可能である、請求項3記載の運転システム。
【請求項5】
前記バイパス過負荷バルブ(140)が、運転要員の自由裁量で手動により移動可能である、請求項3記載の運転システム。
【請求項6】
前記バイパス過負荷バルブ(140)が、タービン負荷を示す信号に応じて自動的に移動可能である、請求項3記載の運転システム。
【請求項7】
連結負荷に動力を送給しかつ蒸気発生源から蒸気を受ける蒸気タービン(112)であって、該タービンのより高圧段への蒸気の流入を制御する1以上の制御バルブ(125〜128)と、該タービンから排出された蒸気を受けかつ該蒸気を液体に転換するように構成された凝縮器(134)と、前記蒸気源から蒸気を受けるように連結されたバイパス過負荷バルブ(140)とを有する蒸気タービンを運転する方法であって、
(a)前記バイパス過負荷バルブ(140)を閉鎖状態に維持しながら、前記タービンに蒸気を流入させるように前記制御バルブ(125〜128)を制御可能に位置決めして、事前選択した出力負荷を持続させるステップと、
(b)前記バイパス過負荷バルブ(140)を少なくとも部分的に開放するステップと、
(c)前記バイパス及びヒート過負荷バルブ(140)を通って流れる蒸気を、前記凝縮器からの液体を受けるように構成されたトップヒータ(48)に還流させるステップと
を含む方法。
【請求項8】
前記バイパス過負荷バルブ(140)が、運転要員の自由裁量で手動により開放及び閉鎖される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記バイパス過負荷バルブ(140)が、タービン負荷を示す信号に応じて自動的に開放及び閉鎖される、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−14114(P2010−14114A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148180(P2009−148180)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】