説明

蒸気発生器

【課題】一次流体の圧力損失を低減させることにより、原子炉の熱効率を向上させる蒸気発生器を提供することを目的とする。
【解決手段】蒸気発生器10は、給水ノズルから二次流体を内部に入力し蒸気ノズルから水蒸気を出力する外胴15と、この外胴15の内部において一次流体5を流動させて熱交換により二次流体を水蒸気にする伝熱管17と、この伝熱管17の一端に連通するよう外胴15に形成された入口室31へ一次流体5を供給する供給ノズル26と、外胴15に接続した供給ノズル26の接続部24から伝熱管17の一端の方向に向かって一次流体5を案内する案内路20と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の一次流体と熱交換することにより二次流体を蒸気にする蒸気発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉は、原子炉において核燃料を燃焼させ、加熱した一次流体(軽水)を循環させてこの燃焼熱を蒸気発生器に送る。そして、この一次流体は、蒸気発生器で熱交換して二次流体(軽水)を水蒸気にするとともに、原子炉に戻って核燃料の燃焼熱により再加熱される(例えば、特許文献1)。
【0003】
この蒸気発生器から出力された水蒸気がタービンに送られて、水蒸気の熱エネルギーは、タービンの運動エネルギーに変換され、さらに発電機において電気エネルギーに変換される。そして、仕事を終えた水蒸気は、冷却されて凝縮して二次流体に復水し、蒸気発生器を循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−333288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この蒸気発生器の出力を向上させるためには、一次流体の流量を増加させる必要がある。また、この一次流体の流量を増加させるためには、循環ポンプの動力を増大させることが考えられるが、その動力の増大は逆に熱効率の低下を招来する。
【0006】
このような事情の下、一次流体の流量を増加させて熱効率を向上させるためには、蒸気発生器の流路における一次流体の圧力損失を低減させることが考えられる。この流路における一次流体の圧力損失は、炉心、蒸気発生器の伝熱管に続きその入口室において、大きな割合を占めると考えられている。
しかし、これまでにおいて、蒸気発生器の入口室における一次流体の圧力損失を低減させる施策については、特に検討されていなかった。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、入口室における一次流体の圧力損失を低減させることにより、原子炉の熱効率を向上させる蒸気発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蒸気発生器は、給水ノズルから二次流体を内部に入力し蒸気ノズルから蒸気を出力する外胴と、前記外胴の内部において一次流体を流動させて熱交換により前記二次流体を前記蒸気にする伝熱管と、前記伝熱管の一端に連通するよう前記外胴に内部形成された入口室へ前記一次流体を供給する供給ノズルと、前記外胴に接続した前記供給ノズルの接続部から前記伝熱管の一端の方向に向かって前記一次流体を案内する案内路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、入口室における一次流体の圧力損失を低減させることにより、原子炉の熱効率を向上させる蒸気発生器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る蒸気発生器の実施形態を示す断面図。
【図2】(A)第1実施形態に係る蒸気発生器の下部の拡大断面図、(B)蒸気発生器の図2(A)B−B水平断面図、(C)その他の例を示す図2(A)B−B水平断面図。
【図3】第2実施形態に係る蒸気発生器の下部の拡大断面図。
【図4】第3実施形態に係る蒸気発生器の下部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、蒸気発生器10は、給水ノズル14から二次流体6を内部に入力し蒸気ノズル11から水蒸気7を出力する外胴15と、この外胴15の内部において一次流体5を流動させて熱交換により二次流体6を水蒸気7にする伝熱管17と、この伝熱管17の一端に連通するよう外胴15に内部形成された入口室31へ一次流体5を供給する供給ノズル26(図2(A))と、外胴15に接続した供給ノズル26の接続部24から伝熱管17の一端の方向に向かって一次流体5を案内する案内路20と、を備えている。
【0012】
外胴15は、円筒形を有し、タービンの復水器(図示略)から二次流体6が給水ノズル14より供給される。この外胴15の内面に沿って、ラッパー16が設けられている。給水ノズル14に供給された二次流体6は、外胴15とラッパー16との間の空間を通りぬけて熱交換領域18に導入される。
【0013】
この熱交換領域18には、U字型の伝熱管17が多数設けられている(図1においては、一部のみが記載)。そして、このU字型の伝熱管17を高温側領域と低温側領域とに分離するように隔壁21が設けられている。
この隔壁21及び複数の伝熱管17は、熱交換領域18と入口室31及び出口室32とを仕切る管板22に設けられている。
【0014】
伝熱管17の両端は、管板22に開口接続し、仕切板23で仕切られた入口室31と出口室32とにそれぞれ連通している。入口室31には、接続部24に設けられた給水ノズル14から高温に加熱された一次流体5が原子炉(図示略)から供給される。この一次流体5は、入口室31を経由して伝熱管17に流入し、出口室32に導かれる。出口室32に到達した一次流体5は、接続部25に設けられたノズル27(図2)から原子炉(図示略)に戻される。
【0015】
伝熱管17を通り抜ける一次流体5は、熱交換領域18に導入された二次流体6と熱交換して、二次流体6を加熱する。加熱された二次流体6は、一部が気化して気相と液相とが混合した気液二相流体となり、+z軸方向に流れてセパレータ13に導かれる。このセパレータ13は、気液二相流体の気相成分と液相成分とを分離して、湿分を含む蒸気である湿蒸気を生成する。この湿蒸気は、ドライヤ12に導入され、湿分が除去され乾燥した水蒸気7となり、蒸気ノズル11からタービン(図示略)に供給される。
【0016】
図2(A)に示すように、蒸気発生器10における案内路20は、一次流体5の流動方向に向かって断面が拡張するように形成されている。そして、供給ノズル26は、接続部24から鉛直方向下側に延びている。
【0017】
そして、案内路20の終端の形状は、図2(B)(図2(A)B−B水平断面)に示すように楕円に形成されたり、図2(C)に示すように複数の伝熱管17における一端の配置形状(図では、半円状)にオーバーラップするように形成されたりする。
【0018】
これにより、供給ノズル26から供給される一次流体5は、仕切板23等の入口室31の内壁に衝突することなく、伝熱管17の一端開口からその長さ方向に沿って流入する。したがって、入口室31の内部において一次流体5の流れによどみが形成されず、圧力損失の増加につながらない。よって、循環ポンプの動力を増大させることなく一次流体5の流量を増加させることができ、原子炉の熱効率を向上させることができる。
【0019】
さらに、案内路20は、一次流体5の平均流速をw、鉛直方向座標をz、定数をcとする場合、d(w2)/dz=cの式を満たす内面形状となることが望ましい。
これにより、案内路20の広がり部における一次流体5の圧力損失がさらに低下して、原子炉の熱効率が向上する。
【0020】
(第2実施形態)
次に図3を参照して本発明における第2実施形態について説明する。なお、図3において図2と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図3に示すように、第2実施形態に係る蒸気発生器10は、案内路20の終端の縁部分が入口室31の内壁に、例えば溶接点33等により結合している。そして、案内路20の裏側の空間に、振動を抑制する緩衝材34が充填されている。
【0021】
一般に、入口室31には、一次流体5が10 m/s程度の流速で流入し、供給ノズル26を振動させる。案内路20の終端部分を入口室31の内壁に結合させたり、緩衝材34を充填したりすることによりこの振動を抑えることができる。この緩衝材34としては、例えばオイルやゴム、ステンレスの詰めものが適用される。
これにより、一次流体5の圧力損失がさらに低下して、原子炉の熱効率が向上する。
【0022】
(第3実施形態)
次に図4を参照して本発明における第3実施形態について説明する。なお、図4において図2と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図4に示すように、第3実施形態に係る蒸気発生器10は、伝熱管17の長さ方向に対し斜め方向から一次流体5が流入するように供給ノズル26が入口室31に連通している。
案内路20は、この一次流体5の流れ方向が伝熱管17の長さ方向に一致するような曲面を有しており、一次流体5が仕切板23に衝突して圧力損失が大きくなることを回避している。
【0023】
なお、第3実施形態において案内路20は、第1実施形態や第2実施形態で示したように、供給ノズル26の先端を拡張して形成されたものでなく、入口室31の底部に充填された案内部材35の側面により形成されている。
【0024】
このような案内部材35が充填されることにより、入口室31の底部に死水領域が形成されないために、一次流体5の圧力損失の増大を回避して原子炉の熱効率を向上させる。なお、この案内部材35は取り外し可能な構造として、既存の蒸気発生器10に設置してその圧力損失を低減させることもできる。
【0025】
本発明は前記した実施形態に限定されるものでなく、共通する技術思想の範囲内において、適宜変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
5…一次流体、6…二次流体、7…水蒸気、10…蒸気発生器、11…蒸気ノズル、12…ドライヤ、13…セパレータ、14…給水ノズル、15…外胴、16…ラッパー、17…伝熱管、18…熱交換領域、20…案内路、21…隔壁、22…管板、23…仕切板、24,25…接続部、26…供給ノズル、31…入口室、32…出口室、33…溶接点、34…緩衝材、35…案内部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ノズルから二次流体を内部に入力し蒸気ノズルから蒸気を出力する外胴と、
前記外胴の内部において一次流体を流動させて熱交換により前記二次流体を前記蒸気にする伝熱管と、
前記伝熱管の一端に連通するよう前記外胴に内部形成された入口室へ前記一次流体を供給する供給ノズルと、
前記外胴に接続した前記供給ノズルの接続部から前記伝熱管の一端の方向に向かって前記一次流体を案内する案内路と、を備えることを特徴とする蒸気発生器。
【請求項2】
請求項2に記載の蒸気発生器において、
前記案内路は、前記一次流体の流動方向に向かって断面が拡張するように形成されることを特徴とする蒸気発生器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蒸気発生器において、
前記供給ノズルは、前記接続部から鉛直方向下側に延びることを特徴とする蒸気発生器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蒸気発生器において、
前記案内路の終端の形状を楕円とするか又は複数の前記伝熱管における一端の配置形状にオーバーラップするように形成することを特徴とする蒸気発生器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蒸気発生器において、
前記案内路の終端の縁部分が前記入口室の内壁に結合していることを特徴とする蒸気発生器。
【請求項6】
請求項5に記載の蒸気発生器において、
前記案内路の裏側の空間が充填されていることを特徴とする蒸気発生器。
【請求項7】
請求項6に記載の蒸気発生器において、
前記案内路の裏側の空間は、振動を抑制する緩衝材が充填されていることを特徴とする蒸気発生器。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の蒸気発生器において、
前記案内路は、前記一次流体の平均流速をw、鉛直方向座標をz、定数をcとする場合、d(w2)/dz=cの式を満たす内面形状であることを特徴とする蒸気発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−251697(P2012−251697A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123744(P2011−123744)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】