説明

蒸気発生装置および加熱調理器

【課題】簡単な構成で蒸気発生の立ち上がりを早くできると共に、ヒータ部の取り付けが容易にでき、さらに掃除が簡単に行える蒸気発生装置およびそれを用いた加熱調理器を提供する。
【解決手段】全体が略平板状の基部Aの下側に第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bを取り付ける。基部A上の所定の領域の一部を囲むように基部Aに畝状の凸部46を設けて、水供給部から基部A上に供給された水が基部A上の所定の領域内から外側に広がりにくくする。基部Aが略長方形の底部となる略直方体形状の蒸発容器41を、長手方向が略水平になるように配置する。略直方体形状の蒸発容器41は、基部Aの一方の長辺側の側面に設けられた開口部41aを有し、その開口部41aに開閉自在な蓋体44を取り付けている。上記第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bにより基部Aを加熱することによって、水供給部から基部A上に供給された水を蒸発させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気発生装置および加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器としては、ポット内の底近傍にヒータ部を配置し、そのヒータ部が浸かる程度にポット内に水を供給して、ヒータ部により水を加熱することによって蒸気を発生させる蒸気発生装置を備えたものがある(例えば、特開2005−241187号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
この加熱調理器の蒸気発生装置では、ヒータ部が水に浸かるようにするため、ポット内に供給される水の量をさらに少なくすることができず、蒸気発生の立ち上がりをこれ以上早くできないという問題がある。また、上記加熱調理器の蒸気発生装置では、ポット内の底近傍にヒータ部が配置されているため、ヒータ部の取り付けが容易でなく、さらにポット内を簡単に清掃することができないという問題がある。ポット内において蒸気が発生する過程で、水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの無機塩類が濃縮されていき、スケールとなってポット内に析出して堆積すると、蒸気発生装置の熱効率が悪化する。
【特許文献1】特開2005−241187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この発明の課題は、簡単な構成で蒸気発生の立ち上がりを早くできると共に、ヒータ部の取り付けが容易にでき、さらに掃除が簡単に行える蒸気発生装置およびそれを用いた加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、この発明の蒸気発生装置は、
全体が略平板状の基部と、
上記基部の下側に取り付けられたヒータ部と、
上記基部上に水を供給する水供給部と、
上記基部上の所定の領域の少なくとも一部を囲むように上記基部に設けられ、上記水供給部から上記基部上に供給された水が上記所定の領域内から外側に広がりにくくするための畝状の凸部と
を備え、
上記ヒータ部により上記基部を加熱することによって、上記水供給部から上記基部上に供給された水を蒸発させることを特徴とする。
【0006】
上記構成の蒸気発生装置によれば、上記基部に設けられた畝状の凸部によって、基部上の所定の領域の少なくとも一部を囲むようにして、水供給部から基部上に供給された水が基部上の所定の領域内から外側に広がりにくくしている。これにより、上記水供給部から基部上に供給された水は、上記所定の領域内にほぼ留まり、例えば基部の下側に取り付けられたヒータ部により上記所定の領域に熱が集中するように加熱することによって、加熱された基部上の所定の領域の水が効率よく蒸発して蒸気が発生する。そうして、上記基部上の水の蒸発の程度(基部の温度などにより判断)に応じて水供給部から水の供給を間欠的または連続的に行うことによって、蒸気を連続的に発生させることが可能となる。
【0007】
したがって、簡単な構成で蒸気発生の立ち上がりを早くできる。また、全体が略平板状の基部の下側全体も略平面であるから、ポット内にヒータ部を取り付ける場合に比べてヒータ部の取り付けが極めて容易にできる。さらに、基部の上面は、畝状の凸部を除いて全体が略平面であるので、掃除が簡単に行える。なお、上記水供給部から基部上の所定の領域内に少量の水を間欠的または連続的に供給して、蒸気発生を繰り返すことができ、ポット内にヒータ部を配置したものに比べて基部を大幅に小さくすることが可能になり、この蒸気発生装置の小型化が図れる。
【0008】
また、一実施形態の蒸気発生装置では、
長手方向が略水平になるように配置され、上記基部が略長方形の底部となる略直方体形状の蒸発容器を備え、
上記略直方体形状の蒸発容器は、上記基部の一方の長辺側の側面に設けられた開口部を有し、その開口部に開閉自在な蓋体が取り付けられている。
【0009】
上記実施形態によれば、上記基部が略長方形の底部となる略直方体形状の蒸発容器を、長手方向が略水平になるように配置して、その蒸発容器の基部の一方の長辺側の側面に設けられた開口部に、開閉自在な蓋体を取り付けているので、使用者が蓋体を取り外すことにより容易に蒸発容器内を掃除することができる。
【0010】
また、一実施形態の蒸気発生装置では、上記基部の下側にヒータ取付板を介して上記ヒータ部を取り付けている。
【0011】
上記実施形態によれば、上記基部にヒータ部を直接取り付けると、基部の下側平面の一部にしかヒータ部が接触しないような場合でも、基部の下側にヒータ取付板を介してヒータ部を取り付けることによって、ヒータ部からの熱をヒータ取付板により均一に分散させて基部の下側(例えば所定の領域に対向する部分)をムラなく加熱でき、熱損失を低減できる。
【0012】
また、一実施形態の蒸気発生装置では、
上記ヒータ部は、複数本のシーズヒータであって、
上記複数本のシーズヒータのうちの給水側のシーズヒータが他のシーズヒータよりも発熱量が大きい。
【0013】
上記実施形態によれば、上記ヒータ部の複数本のシーズヒータのうちの給水側のシーズヒータの発熱量を他のシーズヒータよりも大きくして、基部上でも最も水が存在する確率の高い給水側の領域に、他の領域よりもできるだけ熱を集中させることによって、蒸気発生の立ち上がりや効率を向上できる。
【0014】
また、一実施形態の蒸気発生装置では、上記水供給部から上記基部上に水を供給するための給水口の近傍かつ上記基部の下側に、上記基部の温度を検出する温度センサを配置している。
【0015】
上記実施形態によれば、上記水供給部から上記基部上に水を供給するための給水口の近傍に配置された温度センサによって、基部の温度変化を正確に測定することができる。
【0016】
また、この発明の加熱調理器では、上記のいずれか1つに記載の蒸気発生装置を備えたことを特徴とする。
【0017】
上記構成の加熱調理器によれば、簡単な構成で蒸気発生の立ち上がりを早くできると共に、ヒータ部の取り付けが容易にでき、さらに掃除が簡単に行える蒸気発生装置を用いることによって、低コストで高性能な加熱調理器を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上より明らかなように、この発明の蒸気発生装置によれば、簡単な構成で蒸気発生の立ち上がりを早くできると共に、ヒータ部の取り付けが容易にでき、さらに掃除が簡単に行える蒸気発生装置を実現することができる。
【0019】
また、この発明の加熱調理器によれば、上記蒸気発生装置を用いることによって低コストで高性能な加熱調理器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の蒸気発生装置および加熱調理器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0021】
図1はこの発明の一実施の形態の蒸気発生装置を用いた加熱調理器の外観斜視図を示している。この加熱調理器1は、直方体形状の本体ケーシング10の正面に、下端側の辺を略中心に回動する扉12を設けている。扉12の右側に操作パネル11を設け、扉12の上部にハンドル13を設けると共に、扉12の略中央に耐熱ガラス製の窓14を設けている。
【0022】
また、図2は加熱調理器1の扉12を開いた状態の外観斜視図を示しており、本体ケーシング10内に直方体形状の調理室20が設けられている。調理室20は、扉12に面する正面側に開口部20aを有し、調理室20の側面,底面および天面をステンレス鋼板で形成している。また、扉12は、調理室20に面する側をステンレス鋼板で形成している。調理室20の周囲および扉12の内側に断熱材(図示せず)を配置して、調理室20内と外部とを断熱している。
【0023】
また、調理室20の底面に、ステンレス製の受皿21が置かれ、受皿21上に被加熱物を載置するためのステンレス鋼線製のラック22が置かれている。なお、扉12を開いた状態で、扉12の上面側は略水平となって、被加熱物を取り出すときに一旦扉12の上面に置くことができる。
【0024】
さらに、本体ケーシング10の調理室20の右側に、水タンク30を収納するための水タンク用収納部37を設けている。水タンク30は、前面側から後面側に向かって水タンク用収納部37内に挿入される。
【0025】
図3は、加熱調理器1の基本構成を示す概略構成図である。図3に示すように、この加熱調理器1は、調理室20と、蒸気用の水を貯める水タンク30と、水タンク30から供給された水を蒸発させて蒸気を発生させる蒸気発生装置40と、蒸気発生装置40からの蒸気を加熱する蒸気昇温装置50と、蒸気発生装置40や蒸気昇温装置50等の動作を制御する制御装置80とを備えている。調理室20内に設置された受皿21上には格子状のラック22が載置され、そのラック22の略中央に被加熱物90が置かれる。そうして、被加熱物90は、調理室20の底面から間隔をあけた状態で調理室20内に収容されている。
【0026】
また、水タンク30の下側に設けられた接続部30aは、水位検知部31の一端に設けられた漏斗形状の受入口31aに接続可能になっている。そして、水位検知部31に第1給水パイプ32の一端が接続され、第1給水パイプ32の他端にポンプ33の吸込側が接続されている。また、そのポンプ33の吐出側に第2給水パイプ34の一端が接続され、第2給水パイプ34の他端が蒸気発生装置40に接続されている。さらに、水位検知部31には、水タンク用水位センサ36が配設されている。
【0027】
上記水タンク用水位センサ36は、長さが同じ2本の第1,第2電極と、その第1,第2電極よりも短い第3電極と、その第3電極よりもさらに短い第4電極からなる。水タンク用水位センサ36の第1電極を共通電極として、長さの異なる第2〜第4電極により3つの水位を検出することができる。また、水タンク30と第1給水パイプ32とポンプ33と第2給水パイプ34で水供給部を構成している。
【0028】
また、蒸気発生装置40は、第2給水パイプ34の他端が接続され、長手側の一方の側面に開口部41aが設けられたステンレス製の直方体形状の蒸発容器41と、蒸発容器41の下側に配置されたヒータ部の一例としての第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bと、蒸発容器41の下側かつ第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42B間に配置された温度センサ43と、蒸発容器41の開口部41aを蓋する蓋体44とを有している。温度センサ43を給水口71a(図8に示す)の近傍に配置している。
【0029】
また、調理室20の側面上部に設けられた吸込口25の外側には、ファンケーシング26を配置している。そして、ファンケーシング26に設置された送風ファン28によって、調理室20内の蒸気は、吸込口25から吸い込まれて、第2蒸気供給パイプ61を介して蒸気昇温装置50に供給される。また、蒸気発生装置40で発生した蒸気は、送風ファン28により第1蒸気供給パイプ35を介して吸い込まれて、調理室20内から吸い込まれた蒸気と合流し、第2蒸気供給パイプ61を介して蒸気昇温装置50に供給される。
【0030】
なお、図3では、調理室20と蒸気発生装置40は離れて示しているが、後述するように加熱室20内の後面側側壁かつ加熱室20の外側に、蓋体44側が加熱室20内に面するように取り付けられている。
【0031】
上記ファンケーシング26,第2蒸気供給パイプ61および蒸気昇温装置50で外部循環経路を形成している。また、調理室20の側面の下側に設けられた放出口27には放出通路64の一端が接続され、放出通路64の他端には第1排気口65を設けている。さらに、循環経路を形成する第2蒸気供給パイプ61には、排気通路62の一端が接続され、排気通路62の他端には第2排気口63を設けている。また、第2蒸気供給パイプ61と排気通路62との接続点に、排気通路62を開閉するダンパ68を配置している。
【0032】
また、蒸気昇温装置50は、調理室20の天井側であって且つ略中央に、開口を下側にして配置された皿型ケース51と、この皿型ケース51内に配置された蒸気加熱ヒータ52とを有している。皿形ケース51の底面は、加熱室20の天井面に設けられた金属製の天井パネル54で形成されている。天井パネル54には、複数の天井蒸気吹出口55を形成している。
【0033】
さらに、蒸気昇温装置50は、調理室20の左右両側に延びる蒸気供給通路23(図3では一方のみを示す)の一端が夫々接続されている。そして、蒸気供給通路23の他端は、調理室20の両側面に沿って下方に延び、調理室20の両側面かつ下側に設けられた側面蒸気吹出口24に接続されている。
【0034】
次に、図4に示す加熱調理器1の制御ブロックについて説明する。
【0035】
図4に示すように、制御装置80には、送風ファン28と、蒸気加熱ヒータ52と、ダンパ68と、第1蒸気発生ヒータ42Aと、第2蒸気発生ヒータ42Bと、操作パネル11と、水タンク用水位センサ36と、温度センサ43と、調理室20(図3に示す)内の温度を検出する調理室用温度センサ81と、調理室20内の湿度を検出する調理室用湿度センサ82と、ポンプ33が接続されている。
【0036】
上記制御装置80は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、水タンク用水位センサ36,温度センサ43, 調理室用温度センサ81および調理室用湿度センサ82からの検出信号に基づいて、送風ファン28,蒸気加熱ヒータ52,ダンパ68,第1蒸気発生ヒータ42A,第2蒸気発生ヒータ42B,操作パネル11およびポンプ33を所定のプログラムに従って制御する。
【0037】
図5は上記加熱調理器1の扉のない状態の正面図を示しており、図5に示すように、本体ケーシング10の水タンク用収納部37に、前面側から後面側に向かって水タンク30を挿入している。また、本体ケーシング10の調理室20内の後面側の壁面には、右上側コーナー部の近傍に吸込口25が設けられ、左下側コーナー部の近傍に放出口27が設けられている。そして、調理室20内の後面側壁面の中央部やや左側かつ調理室20の外側に、蓋体44により蓋された開口部41a側が調理室20側に面するように蒸気発生装置40を配置している。なお、蒸気発生装置の取り付け位置はこれに限らず、調理室内の左右の側壁面のいずれか一方かつ調理室の外側に、開口部側が調理室側に面するように蒸気発生装置を配置してもよいし、開口部側が本体ケーシングの外側に面するように、本体ケーシング内かつ調理室の外側に蒸気発生装置を配置してもよい。
【0038】
また、図6は上記加熱調理器1の本体ケーシング10のない状態の裏面図を示している。なお、図6では、図を見やすくするため、水位検知部31,第1給水パイプ32,ポンプ33,第2給水パイプ34,水タンク用水位センサ36および制御装置80などを省略している。
【0039】
図6に示すように、調理室20(図5に示す)の後面側に蒸気発生装置40を配置し、吸込口25(図5に示す)の裏面側に、送風ファン28が収納されたファンケーシング26を配置している。このファンケーシング26と蒸気発生装置40とを第1蒸気供給パイプ35を介して接続している。また、図5に示す放出口27に放出通路64の一端を接続し、上側の第1排気口65(図3に示す)に放出通路64の他端を接続している。
【0040】
また、調理室20の上側に配置された蒸気昇温装置50からの蒸気供給通路23,23を、調理室20の左右両側に設けている。
【0041】
また、図7は加熱調理器1の蒸気発生装置40の上面図を示し、図8は蒸気発生装置40の正面図を示し、図9は蒸気発生装置40の下面図を示している。
【0042】
図7〜図9に示すように、この蒸気発生装置40は、長手側の一方の側面(正面側)に開口部41aが設けられた略直方体形状を有するアルミダイキャスト製の蒸発容器41を備えている。この蒸発容器41は、底部となる略長方形状の基部Aと、その基部Aの背面側の長辺から立設する壁部Bと、その基部Aの左右両側の短辺から立設する壁部C,Dと、壁部B,C,Dの上端側かつ基部Aに対向するように設けられた上板部Eとを有している。この実施の形態では、蒸発容器41は幅が約200mm、奥行きが約60mm、高さが約50mmとなるように構成している。また、蒸発容器41の裏面側の壁部Bの略中央に、第2給水パイプ34(図3に示す)が接続される接続部71を設けると共に、蒸発容器41の上板部Eの略中央に、第1蒸気供給パイプ35(図3に示す)が接続される接続部72を設けている。蒸発容器41の正面側の開口部41aの縁にフランジ部74を設け、そのフランジ部74に外縁部が当接するように、蒸発容器41の開口部41aに開閉自在な蓋体44を取り付けている。
【0043】
また、図8に示すように、蓋体44の中央に、略長方形状の耐熱ガラス製の窓45を設けている。窓45は透明であり、この窓45を介して蒸発容器41内部を視認することができるようになっているため、蒸発容器41内部のスケールの付き具合をチェックして清掃のタイミングを知ることができる。
【0044】
また、図9に示すように、両端に接続端子を有する棒状のシーズヒータである第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bを、蒸発容器41の基部Aの下面側にヒータ取付板73を介して蒸発容器41の長手方向に沿って略平行に所定の間隔をあけて取り付けている。ヒータ取付板73は、蒸発容器41の基部Aに溶接またははんだ付けにより接着されと共に、第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bは、ヒータ取付板73にはんだ付けにより接着されている。これにより、第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bを蒸発容器41の基部Aにヒータ取付板73を介して密着させて、熱伝導性を向上している。また、ヒータ取付板73の略中央かつ第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42B間に温度センサ43を取り付けている。
【0045】
また、図10Aは上記蒸気発生装置40の側面図を示しており、図10Bは図8のXB−XB線から見た断面図を示している。図10A,図10Bにおいて、図7〜図9に示す同一構成部には同一参照番号を付している。
【0046】
図10A,図10Bに示すように、蒸発容器41の基部Aには、畝状の凸部46を設けている。この実施の形態では、凸部46の断面形状は蒸発容器41の基部Aの基準面に対して高さが約3mm、幅が約7mmの三角形状としている。また、図10Bに示すように、畝状の凸部46と裏面側の壁部Bに囲まれた所定の領域の水溜部Sに、接続部71,給水口71aを介して供給された水が溜まる。この実施の形態では、水溜部Sは幅が約160mm、奥行きが約45mm、容量が約20cm3としている。そして、第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bにより基部Aが加熱され、水溜部Sに溜まった水が蒸発して蒸気が発生し、発生した蒸気は、供給口72a,接続72を介して蒸気昇温装置50に供給される。この実施の形態では、第1蒸気発生ヒータの出力は1000W、第2蒸気発生ヒータの出力は500Wとしている。
【0047】
図11は図8のXI−XI線から見た断面図を示しており、図11に示すように、蒸発容器41の基部Aの凸部46は、蒸発容器41の開口部41aの縁に沿って略平行にかつ基部Aの前面側に設けられた直線部分46aと、その直線部分46aの両端から裏面側に向かって屈曲して延びるように設けられた屈曲部分46b,46cとを有する。ポンプ33により水タンク30から供給された水は、コの字状の凸部46により三方を、壁部Bで残り一方を囲まれることにより四方を囲まれた所定の領域の水溜部Sに溜まる。この実施の形態では、1回の給水量は16〜20cm3の一定量としたが、給水量はこれに限らず、蒸気発生装置の形態などに応じて適宜設定してよい。例えば、この発明の蒸気発生装置の水供給部は、間欠的に給水する1回の水の量を供給毎に代えてもよいし、連続的に水を供給してもよく、それらを組み合わせて水の供給を制御してもよい。また、この実施の形態では、所定の領域をコの字状に囲むように畝状の凸部46を基部Aに設けたが、畝状の凸部の形状はこれに限らず、上記所定の領域の少なくとも一部を囲むものであればよい。
【0048】
また、図12(a)は上記蓋体44の上面図を示し、図12(b)は蓋体44の側面図を示し、図12(c)は蓋体44の側面図を示している。この蓋体44は、図12に示すように、中央に窓45が配置された耐熱樹脂製の本体部44aと、その本体部44aの前面側かつ外縁側に設けられたフランジ部44bと、本体部44aの外周に形成された環状の溝75に嵌め込まれた耐熱性のシール部材73とを有する。この蓋体44の本体部44aを蒸発容器41(図7〜図11に示す)の開口部41aに嵌め込むことにより、蒸発容器41の内周面と蓋体44とをシール部材73によりシールすると共に、蓋体44が蒸発容器41に固定されて蓋体44の脱落を防止する。
【0049】
上記構成の加熱調理器1において、図1に示す操作パネル11中の電源スイッチ(図示せず)が押されて電源がオンし、操作パネル11の操作により加熱調理の運転を開始する。そうすると、まず、図3に示す制御装置80は、第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bを通電し、ダンパ68により排気通路62を閉じた状態でポンプ33の運転を開始する。ポンプ33により水タンク30から第1,第2給水パイプ32,33を介して蒸気発生装置40の蒸発容器41内に給水される。
【0050】
そして、蒸発容器41内に溜まった所定量の水を第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bにより加熱する。
【0051】
次に、第1,第2蒸気発生ヒータ42A,42Bの通電と同時に、送風ファン28をオンすると共に、蒸気昇温装置50の蒸気加熱ヒータ52を通電する。そうすると、送風ファン28は、調理室20内の空気(蒸気を含む)を吸込口25から吸い込み、第2蒸気供給パイプ61に空気(蒸気を含む)を送り出す。この送風ファン28に遠心ファンを用いることによって、プロペラファンに比べて高圧を発生させることができる。さらに、送風ファン28に用いる遠心ファンを直流モータで高速回転させることによって、循環気流の流速を極めて速くすることができる。
【0052】
次に、蒸気発生装置40の蒸発容器41内の水が沸騰すると、飽和蒸気が発生し、発生した飽和蒸気は、第1蒸気供給パイプ35を介して送風ファン28により吸い込まれて、第2蒸気供給パイプ61を通る循環気流に合流する。循環気流に合流した蒸気は、第2蒸気供給パイプ61を介して高速で蒸気昇温装置50に流入する。
【0053】
そして、蒸気昇温装置50に流入した蒸気は、蒸気加熱ヒータ52により加熱されて略300℃(調理内容により異なる)の過熱蒸気となる。この過熱蒸気の一部は、下側の天井パネル54に設けられた複数の天井蒸気吹出口55から加熱室20内の下方に向かって噴出する。また、過熱蒸気の他の一部は、蒸気昇温装置50の左右両側に設けられた蒸気供給通路23を介して加熱室20の両側面の側面蒸気吹出口24から噴出する。
【0054】
ここで、加熱室20内において、中央部では上昇し、その外側では吹き下ろすという形の対流が生じる。そして、対流する蒸気は、順次吸込口25に吸い込まれて、循環経路を通って再び加熱室20内に戻るという循環を繰り返す。
【0055】
なお、調理中、制御装置80は、温度センサ43により検出された蒸気発生装置40の蒸発容器41の基部Aの温度が、110℃〜120℃では基部A上に水があると判断する。一方、温度センサ43により検出された基部Aの温度が、例えば140℃以上になると基部A上の水が無くなったと判断して、ポンプ33を運転して、水タンク30から第1,第2給水パイプ32,33を介して蒸気発生装置40の蒸発容器41内に所定量の水を供給する。このようにして、蒸発容器41の基部Aの温度変化に基づいて、制御装置80が蒸気発生装置40の蒸発容器41内に所定量の水を間欠的に供給することによって、ほぼ連続して蒸気が発生する。
【0056】
このようにして加熱室20内で過熱蒸気の対流を形成することにより、加熱室20内の温度,湿度分布を均一に維持しつつ、蒸気昇温装置50からの過熱蒸気を天井蒸気吹出口55と側面蒸気吹出口24から噴出して、ラック22上に載置された被加熱物90に効率よく衝突させることが可能となる。そうして、過熱蒸気の衝突により被加熱物90を加熱する。このとき、被加熱物90の表面に接触した過熱蒸気は、被加熱物90の表面で結露するときに潜熱を放出することによっても被加熱物90を加熱する。これにより、過熱蒸気の大量の熱を確実にかつ速やかに被加熱物90全面に均等に与えることができる。したがって、むらがなく仕上がりよい加熱調理を実現することができる。また、過熱蒸気が充満した加熱室20内は、約1%程度の低酸素濃度状態になるので、被加熱物90の酸化を抑え、ビタミンC等が損なわれることがない。
【0057】
また、上記加熱調理の運転において、時間が経過すると、調理室20内の蒸気量が増加し、量的に余剰となった分の蒸気は、放出口27から放出通路64を介して第1排気口65から外部に放出される。
【0058】
調理終了後、制御装置80により操作パネル11に調理終了のメッセージを表示し、さらに操作パネル11に設けられたブザー(図示せず)により合図の音を鳴らす。それにより、調理終了を知った使用者が扉12を開けると、制御装置80は、扉12が開いたことをセンサ(図示せず)により検知して、排気通路62のダンパ68を瞬時に開く。それにより、循環経路の第2蒸気供給パイプ61が排気通路62を介して第2排気口63に連通し、調理室20内の蒸気は、送風ファン28により吸込口25,第2蒸気供給パイプ61および排気通路62を介して第2排気口63から排出される。このダンパ動作は、調理中に使用者が扉12を開いても同様である。これにより、使用者は、蒸気にさらされることなく、安全に被加熱物90を調理室20内から取り出すことができる。
【0059】
上記構成の加熱調理器1によれば、簡単な構成で蒸気発生の立ち上がりを早くできると共に、ヒータ部(42A,42B)の取り付けが容易にでき、さらに掃除が簡単に行える蒸気発生装置を実現することができる。また、調理終了時に蒸気発生装置40の蒸発容器41内に水が残らないように、水供給部からの水の供給やヒータ部(42A,42B)の通電を制御することによって、蒸発容器41の排水を行う必要がなく、衛生面が向上すると共に、排水バルブや排水経路などが不要となり、構成を簡略化して小型化と低コスト化を図ることができる。さらに、上記水供給部から基部A上の所定の領域内に少量の水を間欠的に供給して蒸気発生を繰り返すことができ、ポット内にヒータ部を配置したものに比べて基部Aを大幅に小さくすることが可能になり、この蒸気発生装置の小型化が図れる。
【0060】
また、上記蒸気発生装置40の基部Aが略長方形の底部となる略直方体形状の蒸発容器41を、長手方向が略水平になるように配置して、その蒸発容器41の基部Aの一方の長辺側の側面に設けられた開口部41aに、開閉自在な蓋体44を取り付けることによって、使用者が蓋体44を取り外して容易に蒸発容器41内を掃除することができる。なお、蓋体の開閉構造はこれに限らず、他の構造の開閉自在な蓋体を用いたものにこの発明を適用してもよい。例えば、調理室20の壁面側に蓋体の開閉構造を設けてもよい。
【0061】
また、上記基部Aの下側にヒータ取付板73を介してヒータ部(42A,42B)を取り付けることによって、ヒータ部(42A,42B)からの熱がヒータ取付板73により均一に分散されて、基部Aの下側をムラなく加熱でき、熱損失を低減して、効率を向上できる。
【0062】
また、上記ヒータ部(42A,42B)に用いられた2本のシーズヒータのうちの給水側のシーズヒータ(42A)の発熱量を他のシーズヒータ(42B)よりも大きくして、基部A上でも最も水が存在する給水側の領域に、他の領域よりもできるだけ熱を集中させることによって、蒸気発生の効率を向上できる。この実施の形態では、ヒータ部(42A,42B)に2本のシーズヒータを用いたが、3本以上のシーズヒータを用いてもよいし、他の加熱手段を用いてもよい。
【0063】
また、上記水供給部から基部A上に水を供給するための給水口71aの近傍に温度センサ43を配置することによって、その温度センサ43により基部Aの温度変化を正確に測定することができる。
【0064】
また、この発明の加熱調理器によれば、低コストで高性能な加熱調理器を実現することができる。
【0065】
また、上記構成の蒸気発生装置40によれば、蓋体44により蒸発容器41の開口部41aを閉じた状態でヒータ部(42A,42B)により蒸発容器41を加熱することによって、給水口71aから給水された水溜部Sの水を蒸発させて、蒸発容器41内から供給口72aを介して外部に蒸気を供給することが可能となる。そして、上記蓋体44を開いて蒸発容器41の側面に設けられた開口部41aを介して蒸発容器41の内部をあらわにすることによって、蒸発容器41内に手が入れやすくなる。したがって、蒸発容器41内の清掃が容易にできる衛生的な蒸気発生装置40を実現することができる。
【0066】
また、上記蒸発容器41の開口部41aが設けられた側面に開閉可能に蓋体44を設けることによって、蒸発容器41の開口部41aと蓋体44との嵌め合わせが確実にでき、蒸発容器41の開口部41aのシール性を向上できる。
【0067】
また、上記蒸発容器41の開口部41aに対向する開口を調理室20の内壁面に設けることによって、調理室20内側から見て蓋体44を開いた蒸発容器41の内部は開口部41aを介してあらわになり、調理室20から蒸発容器41内に手が入れやすくなって、蒸発容器41内の清掃が容易にできる。なお、上記蒸発容器41の開口部41aに対向する開口を本体ケーシング10の外壁面に設けてもよく、この場合、本体ケーシングの外側から見て蒸発容器の内部が開口部を介してあらわになり、外側から蒸発容器内に手が入れやすくなって、蒸発容器内の清掃が容易にできる。
なお、上記実施の形態では、蒸気発生装置40側に蓋体44を設けたが、蓋体を調理室の内壁面に設けてもよい。この場合、蒸発容器の蓋体が調理室の内壁面の一部を兼ねるので、蓋体44のための余分なスペースを本体ケーシング10に確保する必要がなく、加熱調理器の小型化が図れると共に、調理室20の内壁面のスペースに余裕があるので、蒸発容器41側よりも蓋体44を開閉する開閉機構を容易に設けることができる。また、上記開口部を開閉可能にする蓋体を本体ケーシングの外壁面に設けてもよく、この場合も、蒸発容器の蓋体が本体ケーシングの外壁面の一部を兼ねるので、蓋体44のための余分なスペースを本体ケーシング10に確保する必要がなく、加熱調理器の小型化が図れると共に、本体ケーシングの外壁面のスペースに余裕があるので、蒸発容器側よりも蓋体を開閉する開閉機構を容易に設けることができる。
【0068】
また、この実施の形態では、蒸気発生装置40の蒸発容器41の開口部41aに対向する開口を調理室20の後面側の内壁面に設けられた開口に、蒸発容器41の開口部41aが対向するように蒸気発生装置40を本体ケーシング10内に配置したが、調理室内に蒸気発生装置を配置してもよい。この場合、蓋体を開いた蒸発容器の内部は開口部を介してあらわになり、調理室の蒸発容器内に手が入れやすくなって、蒸発容器内の清掃が容易にできる。
【0069】
また、上記実施の形態では、長手側の一方の側面に開口部41aが設けられたステンレス製の直方体形状の蒸発容器41を備えた蒸気発生装置40について説明したが、蒸気発生装置の蒸発容器の形状はこれに限らず、全体が略平板状の基部を有するものであればよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、蒸気発生装置40を用いた加熱調理器1について説明したが、加熱調理器に限らず、蒸気を用いる他の装置にこの発明の蒸気発生装置を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1はこの発明の一実施の形態の蒸気発生装置を用いた加熱調理器の外観斜視図である。
【図2】図2は図1に示す加熱調理器の扉を開いた状態の外観斜視図である。
【図3】図3は図1に示す加熱調理器の概略構成図である。
【図4】図4は図1に示す加熱調理器の制御ブロック図である。
【図5】図5は上記加熱調理器の扉のない状態の正面図である。
【図6】図6は上記加熱調理器の本体ケーシングのない状態の裏面図である。
【図7】図7は上記加熱調理器の蒸気発生装置の上面図である。
【図8】図8は上記蒸気発生装置の正面図である。
【図9】図9は上記蒸気発生装置の面図である。
【図10A】図10Aは上記蒸気発生装置の側面図である。
【図10B】図10Bは図8のXB−XB線から見た断面図である。
【図11】図11は図8のXI−XI線から見た断面図である。
【図12】図12は上記蒸気発生装置の蓋体の上面図と正面図と側面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…加熱調理器
10…本体ケーシング
11…操作パネル
12…扉
13…ハンドル
14…窓
20…調理室
21…受皿
22…ラック
25…吸込口
26…ファンケーシング
27…放出口
28…送風ファン
30…水タンク
31…水位検知部
32…第1給水パイプ
34…第2給水パイプ
33…ポンプ
35…第1蒸気供給パイプ
36…水タンク用水位センサ
37…水タンク用収納部
40…蒸気発生装置
41…蒸発容器
41a…開口部
42A…第1蒸気発生ヒータ
42B…第2蒸気発生ヒータ
43…温度センサ
46…凸部
50…蒸気昇温装置
51…皿形ケース
52…蒸気加熱ヒータ
61…第2蒸気供給パイプ
62…排気通路
63…第2排気口
64…放出通路
65…第1排気口
68…ダンパ
71,72…接続部
71a…給水口
72a…供給口
80…制御装置
81…調理室用温度センサ
82…調理室用湿度センサ
90…被加熱物
S…水溜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が略平板状の基部と、
上記基部の下側に取り付けられたヒータ部と、
上記基部上に水を供給する水供給部と、
上記基部上の所定の領域の少なくとも一部を囲むように上記基部に設けられ、上記水供給部から上記基部上に供給された水が上記所定の領域内から外側に広がりにくくするための畝状の凸部と
を備え、
上記ヒータ部により上記基部を加熱することによって、上記水供給部から上記基部上に供給された水を蒸発させることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気発生装置において、
長手方向が略水平になるように配置され、上記基部が略長方形の底部となる略直方体形状の蒸発容器を備え、
上記略直方体形状の蒸発容器は、上記基部の一方の長辺側の側面に設けられた開口部を有し、その開口部に開閉自在な蓋体が取り付けられていることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蒸気発生装置において、
上記基部の下側にヒータ取付板を介して上記ヒータ部を取り付けたことを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の蒸気発生装置において、
上記ヒータ部は、複数本のシーズヒータであって、
上記複数本のシーズヒータのうちの給水側のシーズヒータが他のシーズヒータよりも発熱量が大きいことを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の蒸気発生装置において、
上記水供給部から上記基部上に水を供給するための給水口の近傍かつ上記基部の下側に、上記基部の温度を検出する温度センサを配置していることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の蒸気発生装置を備えたことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−8534(P2008−8534A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177746(P2006−177746)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】