説明

蒸着マスク

【課題】蒸着マスクの開口部に補強用の梁を形成することにより、精密なパターンの形成を実現すると共に、前記梁による蒸着材料の遮蔽領域を少なくし、蒸着パターンの膜厚均一性を最大限高めることができるようにした蒸着マスクを提供する。
【解決手段】本発明の蒸着マスク1は、被成膜基板10上に蒸着を用いて形成される薄膜パターン15に対応して、蒸着材料40を通過させるための開口部3が設けられ、開口部3が平行に所定の間隔をもって複数配列された薄板状の蒸着マスク1において、開口部3を横切る位置に複数の補強梁4a,4b,4c,4d,4eが形成され、複数の補強梁4a,4b,4c,4d,4eは、開口部3の中央部で相対的に密に形成され、開口部3の端部で相対的に粗に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスプレイや半導体集積回路等の分野では、蒸着マスクを用いて基板上に選択的に薄膜パターンを形成する技術が知られている。蒸着マスクを用いたパターン形成技術は、ウェットプロセスによるパターン形成技術が原理的に難しい場合に好適である。例えば、近年活発に研究が行われている低分子有機EL素子の製造プロセスでは、有機発光層や陰極等の形成材料が水分や薬液に対して十分な耐久性を備えていないため、蒸着マスクによるパターン形成技術が必須となっている。
【0003】
蒸着マスクは、メタルや単結晶シリコン等からなるシート状部材に、蒸着パターンに対応した開口部を設けたものである。開口部以外の領域は、蒸着材料を遮蔽する遮蔽パターンとなる。近年では、薄膜パターンの微細化に伴って、遮蔽パターンの微細化が進んでおり、それに応じて、遮蔽パターンの捩れや撓み等の変形が問題となってきている(特許文献1,2参照)。
【0004】
例えば、有機EL装置をプリンタの露光ヘッド(プリンタヘッド)として利用する場合には、ライン状に配列された数千から数万もの有機EL素子に対して共通の陰極を形成することになるが、このような陰極は、幅数μm、長さ数cm〜数十cmの細長い帯状の膜となり、それに対応する遮蔽パターンも細長い帯状のパターンとなる。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1,2では、蒸着マスクの開口部に細い補強用の梁(補強梁)を設けることが提案されている。このような蒸着マスクでは、補強梁の配置された部分に蒸着材料が形成されないため、特許文献1では、補強梁と基板との間に隙間を形成し、補強梁の裏面側に蒸着材料を回り込ませることによって、補強梁の部分に蒸着材料を成膜している。
【特許文献1】特開平10−330911号公報
【特許文献2】特開2004−225071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補強梁の裏面側への回り込みは僅かであるため、補強梁の裏面側には十分な膜厚を形成することができない。そのため、補強梁の配置された部分だけ膜厚が薄くなってしまう。例えば、ライン状に配列された複数の有機EL素子に対して共通の陰極を形成する場合、陰極の途中に膜厚の薄い部分が存在すると、その部分で抵抗が大きくなる。抵抗の増加が僅かであれば問題は生じないが、補強梁の数が多くなり、膜厚の薄い部分が多数形成されるようになると、抵抗の増加によって電圧降下が発生し、各有機EL素子において均一な発光特性が得られなくなる。
【0007】
したがって、補強梁を形成する場合には、その配置を工夫し、補強梁の数を最小限に抑えることが必要であるが、特許文献1,2では、そのような配置の工夫については全く開示がなく、必ずしも補強梁の数を適切に制御することができなかった。例えば、特許文献1では、補強梁を一定の間隔で形成しているが、この構造では、特に剛性の高いマスク基板の外枠部近傍(開口部の端部)で補強梁の数が必要以上に多くなってしまう可能性がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、遮光パターンの捩れや撓みを防止しつつ蒸着パターンの膜厚均一性を高めることが可能な蒸着マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の蒸着マスクは、被成膜基板上に蒸着を用いて形成される薄膜パターンに対応して、蒸着材料を通過させるための開口部が設けられ、前記開口部が平行に所定の間隔をもって複数配列された薄板状の蒸着マスクにおいて、前記開口部を横切る位置に複数の補強梁が形成され、前記複数の補強梁は、前記開口部の中央部で相対的に密に形成され、前記開口部の端部で相対的に粗に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、遮蔽パターンの捩れや撓み等の変形が起こり易い開口部の中央部で開口部の形状を確実に保持することができる。剛性の高いマスク基板の外枠部に近い開口部の端部では、遮蔽パターンの剛性が高いので補強梁の数を減らしても捩れや撓みは発生しにくい。むしろ補強梁の数を減らすことで、補強梁の影になる部分を最小限に抑えることができる。その結果、精密かつ膜厚が均一な薄膜パターンを形成することができる。
【0010】
本発明においては、前記複数の補強梁の厚さは、前記開口部の中央部で相対的に厚く形成され、前記開口部の端部で相対的に薄く形成されていることが望ましい。
この構成によれば、遮蔽パターンの捩れや撓み等の変形が起こり易い開口部の中央部で遮蔽パターンの捩れや撓み等の変形を確実に防止することができる。また、最も剛性の高いマスク基板の外枠部に近い開口部の端部で、飛来してきた蒸着材料が補強梁の影になる部分にも回り込み易くなる。その結果、精密かつ膜厚が均一な薄膜パターンを形成することができる。
【0011】
本発明においては、互いに平行に配列された複数の前記開口部には、第1補強梁が形成された第1開口部と、第2補強梁が形成された第2開口部と、が含まれ、前記第1開口部と前記第2開口部とが、前記開口部の配列方向において隣り合う位置に配置され、前記第1補強梁と前記第2補強梁とが、前記開口部の配列方向と直交する方向において異なる位置に配置されていることが望ましい。
この構成によれば、蒸着マスク全体としての剛性バランスが安定し、遮蔽パターンの捩れや撓み等の変形を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0013】
図1は本発明の蒸着マスク1の概略平面図である。蒸着マスク1は、例えば有機EL素子を構成する薄膜パターン14(図3参照)を形成する際に用いられるメタルマスクであって、図示上下方向に長手を有するマスク基板2を基体として形成されている。
【0014】
マスク基板2は、例えば金属材料で形成されており、図示上下方向に長手を有する細長い矩形状の開口部3が複数形成されている。これら開口部3の長手方向(図示上下方向)の長さは、例えば100mm以上500mm以下となっている。また、開口部3の短手方向(図示左右方向)の長さは、例えば1mm以上10mm以下となっている。
【0015】
これら複数の開口部3は、マスク基板2に形成された貫通孔であって、平行に所定の間隔をもって形成されている。また、複数の開口部3は、図3に示す被成膜基板10における薄膜パターン15に対応する形状を有している。また、開口部3はマスク基板2にエッチング処理を施すことにより形成されている。
【0016】
マスク基板2の蒸着材料40(図3参照)を遮蔽する遮蔽パターン2Bの間には、開口部3を横切るように複数の補強梁4が形成されている。これら複数の補強梁4は、遮蔽パターン2Bが捩れや撓み等の変形によって所定の位置から動き、開口部3の形状が変化するのを防ぐためのものである。
【0017】
また、複数の補強梁4は、開口部3の中央部で相対的に密に形成され、開口部4の端部で相対的に粗に形成されている。これら複数の補強梁4は、マスク基板2と同じマスク部材をエッチングすることにより、マスク基板2と一体化して形成されている。
【0018】
マスク基板2は、複数の開口部3の最外周を囲むように外枠部2Aを有している。外枠部2Aの幅は、遮蔽パターン2Bの幅よりも広く形成されている。外枠部2Aは、遮蔽パターン2Bよりも幅広のため高剛性を有しているので、外枠部2Aに近いところに位置する開口部3は、その形状が変形しにくい。
【0019】
ここで、開口部3に横切るように形成される複数の補強梁4の粗密の度合いについて説明する。複数の第1補強梁5は、外枠部2Aから最も離れる開口部3の中央部で相対的に密に形成され、外枠部2Aに最も近い開口部3の端部で相対的に粗に形成されている。より具体的には、補強梁4の間隔LcまたはLdが最も小さく形成され、補強梁4と外枠部2Aの間隔LaまたはLfが最も大きく形成されている。
【0020】
また、その他の補強梁4の間隔の大小関係を併せて示すと、補強梁4の間隔LcまたはLdよりも補強梁4の間隔LbまたはLeのほうが大きく、補強梁4の間隔LbまたはLeよりも補強梁4と外枠部2Aの間隔LaまたはLfのほうが大きくなるように形成されている。
【0021】
図2は、図1に示したA−A線に沿った断面構成を示している。ここでは、開口部3に横切るように形成された補強梁4の厚さの度合いについて、ある一列の開口部3の断面を挙げて説明する。
【0022】
開口部3は、複数の補強梁4(4a,4b,4c,4d,4e)を有している。これら複数の補強梁4は、外枠部2Aから最も離れる開口部3の中央部で相対的に厚く形成され、外枠部2Aに最も近い開口部3の端部で相対的に薄く形成されている。より具体的には、補強梁4cの厚さScが最も厚く形成され、補強梁4aの厚さSaまたは補強梁4eの厚さSeが最も薄く形成されている。
【0023】
また、その他の補強梁4の厚さの大小関係を併せて示すと、補強梁4aの厚さSaまたは補強梁4eの厚さSeよりも補強梁4bの厚さSbまたは補強梁4dの厚さSdのほうが大きく、補強梁4bの厚さSbまたは補強梁4dの厚さSdよりも補強梁4cの厚さScのほうが大きくなるように形成されている。
【0024】
なお、補強梁4の厚さSa,Sb,Sc,Sd,Seは、外枠部2Aの厚さSAよりも薄く形成されている。すなわち、蒸着マスク1の少なくとも一方の面と補強梁4との間に隙間が存在している。
【0025】
図3は、本発明の蒸着マスク1を用いて蒸着によって薄膜をパターン加工する様子を示した図である。また、図3は、図1に示したA−A線に沿った断面に対応している。
【0026】
蒸着マスク1は被成膜基板10との間に隙間が存在するように設置される。これにより、補強梁4側(図示下側)から飛来してきた蒸着材料40は、補強梁4の影になる部分にも回りこんで堆積し、薄膜パターン15が形成される。したがって、薄膜パターン15は、補強梁4よって分断されることなく、開口部3と同じ形状に形成される。
【0027】
また、補強梁4は、外枠部2Aから最も離れる開口部3の中央部で相対的に密に形成され、外枠部2Aに最も近い開口部3の端部で相対的に粗に形成されている。すなわち、開口部3の中央部よりも端部のほうが、補強梁4のピッチ(隣り合う補強梁4の間隔)が大きいので、蒸着材料40は補強梁4の影になる部分に、より回りこみ易くなっている。
【0028】
また、補強梁4の厚さは、外枠部2Aから最も離れる開口部3の中央部で相対的に厚く形成され、外枠部2Aに最も近い開口部3の端部で相対的に薄く形成されている。すなわち、開口部3の中央部よりも端部のほうが、補強梁4と被成膜基板10との間の隙間が大きいので、蒸着材料40は補強梁4の影になる部分に、より回りこみ易くなっている。
【0029】
薄膜パターン15の補強梁4の影になる部分には、補強梁4a,4b,4c,4d,4eのそれぞれに対応する位置に、凹部15a,15b,15c,15d,15eが形成される。補強梁4cの影になる部分の凹部15cが最も大きく形成され、補強梁4aの影になる部分の凹部15aまたは補強梁4eの影になる部分の凹部15eが最も小さく形成されている。
【0030】
また、その他の補強梁4の影になる部分の凹部15a,15b,15c,15d,15eの大きさの大小関係を併せて示すと、補強梁4aの影になる部分の凹部15aまたは補強梁4eの影になる部分の凹部15eよりも補強梁4bの影になる部分の凹部15bまたは補強梁4dの影になる部分の凹部15dのほうが大きく、補強梁4bの影になる部分の凹部15bまたは補強梁4dの影になる部分の凹部15dよりも補強梁4cの影になる部分の凹部15cのほうが大きくなるように形成されている。
【0031】
なお、薄膜パターン15の補強梁4の影になる部分には複数の凹部15a,15b,15c,15d,15eが形成されているが、薄膜パターン15の膜厚の誤差内におさまる程度の微小なものであり、薄膜パターン15の品質には影響しない。
【0032】
(製造方法)
図4及び図5は、蒸着マスク1の製造方法の一実施形態を示す断面工程図である。なお、本実施形態に係る製造方法では、図1に示す遮蔽パターン2Bと補強梁4を同一のマスク部材で一体的に形成することが比較的容易に可能であるエッチングを用いている。また、図4及び図5は、図1に示したA−A線に沿った断面に対応している。
【0033】
先ず、図4(a)に示すように、シート状基板2aの上面に、図1に示すマスク基板2の外枠部2Aのパターンに対応するレジスト11を形成する。なお、図示はしないが、レジスト11には図1に示す遮蔽パターン2Bに対応するレジストが一体化して形成されている。
【0034】
次に、図4(b)に示すように、エッチャント21を用いてシート状基板2aの上面をエッチングしていき、凹状基板2bを形成する。
【0035】
次に、図4(c)に示すように、凹状基板2bの上面に、図1に示す補強梁4のパターンに対応するレジスト12を形成する。次に、エッチャント21を用いて凹状基板2bの上面をエッチングしていく。
【0036】
次に、図4(d)に示すように、補強梁4のパターンに対応するレジスト12を除去する。レジスト12を用いたエッチングによって、外枠部2Aと、凹状基板2bの上面と下面を貫通する開口部3と、複数の補強梁4a,4b,4c,4d,4eが形成される。ここで、複数の補強梁4a,4b,4c,4d,4eの厚さは、それらの厚さがほぼ同じくなるように形成されている。
【0037】
次に、図5(a)に示すように、補強梁4cの上面に、補強梁4cのパターンに対応するレジスト13を形成する。次に、エッチャント21を用いて各補強梁4a,4b,4d,4eの上面をエッチングしていく。
【0038】
ここで、図5(b)に示すように、レジスト13を用いたエッチングによって、各補強梁4a,4b,4d,4eの厚さは、各々の厚さがほぼ同じくなるように形成される。
【0039】
次に、図5(c)に示すように、各補強梁4b,4c,4dの上面に、各補強梁4b,4c,4dのパターンに対応するレジスト14を形成する。次に、エッチャント21を用いて各補強梁4a,4eの上面をエッチングしていく。
【0040】
ここで、図5(e)に示すように、レジスト14を用いたエッチングによって、各補強梁4a,4eの厚さは、各々の厚さがほぼ同じくなるように形成される。このようにして、複数の補強梁4a,4b,4c,4d,4eは、外枠部2Aから最も離れる開口部3の中央部で相対的に厚く形成され、外枠部2Aに最も近い開口部3の端部で相対的に薄く形成される。
【0041】
本実施形態の蒸着マスク1によれば、遮蔽パターン2Bの捩れや撓み等の変形が起こり易い開口部3の中央部における補強梁4の数が相対的に多くなるように配置を工夫しているので、遮蔽パターン2Bの捩れや撓み等の変形が起こり易い開口部3の中央部で開口部3の形状を確実に保持することができる。剛性の高いマスク基板2の外枠部2Aに近い開口部3の端部では、遮蔽パターン2Bの剛性が高いので補強梁4の数を減らしても捩れや撓みは発生しにくい。むしろ補強梁4の数を減らすことで、補強梁4の影になる部分を最小限に抑えることができる。その結果、精密かつ膜厚が均一な薄膜パターン15を形成することができる。
【0042】
また、この構成によれば、補強梁4が一定の厚さで形成される場合に比べて、遮蔽パターンの捩れや撓み等の変形が起こり易い開口部3の中央部における補強梁4の厚さが相対的に厚く形成されるので、遮蔽パターン2Bの捩れや撓み等の変形が起こり易い開口部3の中央部で遮蔽パターン2Bの捩れや撓み等の変形を確実に防止することができる。また、最も剛性の高いマスク基板2の外枠部2Aに近い開口部3の端部で、飛来してきた蒸着材料40が補強梁4の影になる部分にも回り込み易くなる。その結果、精密かつ膜厚が均一な薄膜パターン15を形成することができる。
【0043】
また、この構成によれば、複数の補強梁4は、蒸着マスク1の基体のマスク基板2と同一のマスク部材をエッチングすることによって形成されてなるので、高精度で剛性の強い蒸着マスク1が提供できる。
【0044】
(蒸着マスクの変形例1)
図6は、本発明の蒸着マスクの他の例の蒸着マスク1Aを示した概略平面図である。マスク基板2には、互いに平行に配列された複数の開口部が配置されている。これら複数の開口部には、複数の第1補強梁7が形成された第1開口部5と、複数の第1補強梁7の形成された位置と異なる位置に複数の第2補強梁8が形成された第2開口部6と、が含まれている。そして、複数の第1開口部5と第2開口部6とが、図示左右方向(開口部の配列方向)において隣り合う位置に配置され、第1補強梁7と第2補強梁8とが、前記開口部の配列方向と直交する方向において異なる位置に配置されている。
【0045】
これら複数の第1補強梁7及び第2補強梁8は、遮蔽パターン2Bが捩れや撓み等の変形によって所定の位置から動き、第1開口部5及び第2開口部6の形状が変化するのを防ぐためのものである。ここで、複数の第1補強梁7は、第1開口部5の中央部で相対的に密に形成され、第1開口部5の端部で相対的に粗に形成されている。また、複数の第2補強梁8は、第2開口部6の中央部で相対的に密に形成され、第2開口部6の端部で相対的に粗に形成されている。これら複数の第1補強梁5及び第2補強梁6は、マスク基板2と同じマスク部材をエッチングすることにより一体化して形成されている。また、第1開口部5及び第2開口部6は遮蔽パターン2Bを介して隣り合う位置に設けられている。
【0046】
なお、本実施形態では、第1開口部5と第2開口部6は遮蔽パターン2Bを介して隣り合う位置に設けているが、これに限らない。例えば、第1開口部5の遮蔽パターン2Bを介して、一方の隣り合う位置に第2開口部6を設け、他方の隣り合う位置に第1開口部5や第2開口部6とは異なる配置の補強梁が形成された開口部を設けても良い。すなわち、補強梁が、開口部の中央部で相対的に密に形成され、開口部の端部で相対的に粗に形成されてさえいれば良い。
【0047】
図7(a)は、図6に示したB−B線に沿った断面構成を示している。ここでは、第1開口部5の第1補強梁7(図6参照)が形成されていないところを補強する第2補強梁8の補強の度合いについて、第2開口部6(図6参照)を横切るように形成される第2補強梁8の断面を挙げて説明する。
【0048】
第2補強梁8は、第1開口部5の第1補強梁7のピッチ(隣り合う第1補強梁7の間隔)を補強するように、すなわち、第1補強梁7が形成されていないところを補強するように形成されている。また、第2補強梁8は、遮蔽パターン2Bの間に第2開口部6を横切るように、マスク部材と一体化して矩形状に形成されている。これにより遮蔽パターン2Bの剛性を高くし、外枠部2Aの内側に設けられる複数の第1開口部5の遮蔽パターン2Bの捩れや撓み等による変形を防止する構造となっている。
【0049】
図7(b)は、図6に示したC−C線に沿った断面構成を示している。ここでは、図6に示す第1補強梁7及び第2補強梁8が形成されていない第1開口部5及び第2開口部6を補強する外枠部2Aの補強の度合いについて、第1補強梁7及び第2補強梁8が形成されていない第1開口部5及び第2開口部6のうち外枠部2A(点線部)に近いところの断面を挙げて説明する。
【0050】
第1開口部5及び第2開口部6は、遮蔽パターン2Bを介して、図示左側から第1開口部5、第2開口部6、第1開口部5と続く順に交互に形成されている。これら第1開口部5と第2開口部6は、遮蔽パターン2Bの間を横切るように第1補強梁7及び第2補強梁8が形成されていないところを補強するように、外枠部2Aが近くに設けられている。すなわち、第1開口部5と第2開口部6は、図示左右両端に位置する外枠部2Aと、複数の遮蔽パターン2Bと重なるように位置する外枠部2A(点線部)により補強されている。
【0051】
この構成によれば、第1開口部5に形成される第1補強梁7のピッチ間を補強するように第2補強梁8が第1開口部5と隣り合う第2開口部6に設けられるので、蒸着マスク1A全体としての剛性バランスが安定し、遮蔽パターン2Bの捩れや撓み等の変形を防止することができる。
【0052】
図8は、本発明の蒸着マスクの他の例の蒸着マスク1Bを示した概略平面図である。マスク基板2には、互いに平行に配列された複数の開口部13が配置されている。これら複数の開口部13には、遮蔽パターン2Bの間を横切るように複数の補強梁14が形成されている。これら複数の補強梁14は、外枠部2Aから最も離れる開口部13の中央部で相対的に幅(図示上下方向の長さ)が小さく形成され、外枠部2Aに最も近い開口部13の端部で相対的に幅が大きく形成されている。なお、図8に示される開口部13及び補強梁14を除いた構成は、上記実施形態に係る構成(図1参照)と同一となっている。
【0053】
複数の開口部13は、複数の補強梁14で区切られた複数の領域13a(点線部)が全て同一の矩形状になるように形成されている。複数の開口部13には、これら複数の領域13aを開口部13の端部から中央部にかけて段階的に密になるように形成されている。
【0054】
より具体的には、開口部13の中央部では、開口部13の補強部材は補強梁14のみであるが、開口部13の中央部から端部に近づくにつれて開口部13の補強用の補強梁14のみならず領域13aが埋められることで補強部材の役割をしている。この開口部13の最端部では、外枠部2A及び2つの補強梁14、さらに2つの領域13aが埋められることで開口部13の補強部材の役割をしている。
【0055】
なお、本変形例では、開口部13の端部から中央部にかけて、領域13aが埋められる箇所を、順に2箇所、1箇所として補強部材の役割をする例を挙げたが、これに限らず、複数の領域13aが開口部13の端部から中央部にかけて段階的に密になるように形成されていれば良い。
【0056】
(電子機器)
次に、本発明の蒸着マスク1を用いて形成された有機EL素子を有するラインヘッド(有機EL装置)を備えた画像形成装置(電子機器)について説明する。図9は、画像形成装置400を示す概略構成図である。
【0057】
画像形成装置400は、転写媒体422の走行経路の近傍に、像担持体としての感光体ドラム416を備えている。感光体ドラム416の周囲には、感光体ドラム416の回転方向(図中に矢印で示す)に沿って、露光装置415、現像装置418及び転写ローラ421が順次配設されている。感光体ドラム416は、回転軸417の周りに回転可能に設けられており、その外周面には、回転軸方向中央部に感光面416Aが形成されている。
露光装置415及び現像装置418は感光体ドラム416の回転軸417に沿って長軸状に配置されており、その長軸方向の幅は、感光面416Aの幅と概ね一致している。
【0058】
この画像形成装置400では、まず、感光体ドラム416が回転する過程において、露光装置415の上流側に設けられた図示略の帯電装置により感光体ドラム416の表面(感光面416A)が例えば正に帯電され、次いで露光装置415により感光体ドラム416の表面が露光されて表面に静電潜像LAが形成される。さらに、現像装置418の現像ローラ419により、トナー(現像剤)430が感光体ドラム416の表面に付与され、静電潜像LAの電気的吸着力によって静電潜像LAに対応したトナー像が形成される。なお、トナー粒子は正に帯電されている。
【0059】
現像装置418によるトナー像の形成後は、感光体ドラム416の更なる回転によりトナー像が転写媒体422に接触し、転写ローラ421により転写媒体422の背面からトナー像のトナー粒子とは逆極性の電荷(ここでは負電荷)が付与され、これに応じて、トナー像を形成するトナー粒子が感光体ドラム416の表面から転写媒体422に吸引され、トナー像が転写媒体122の表面に転写される。
【0060】
露光装置415は、複数の発光素子450を有するラインヘッド410と、ラインヘッド410から放射された光Lを正立等倍結像させる複数のレンズ素子413を有する結像光学素子412とを備えている。ラインヘッド410と結像光学素子412とは、互いにアライメントされた状態で図示略のヘッドケースによって保持され、感光体ドラム416上に固定されている。
【0061】
ラインヘッド410は、複数の発光素子450を感光体ドラム416の回転軸417に沿って配列してなる発光素子列420と、発光素子450を駆動させる図示略の駆動素子からなる駆動素子群と、これら駆動素子(駆動素子群)の駆動を制御する制御回路群411とを備えている。発光素子450、駆動素子群及び制御回路群411は長細い矩形の素子基板(基体)410A上に一体形成されている。
【0062】
結像光学素子412は、日本板硝子株式会社製のセルフォック(登録商標)レンズ素子と同様の構成からなるレンズ素子413を感光体ドラム416の回転軸417に沿って千鳥状に2列配列(配置)してなるレンズ素子列414を備えている。
【0063】
この画像形成装置400は、ラインヘッド410が本発明の蒸着マスク1を用いて形成された有機EL素子で構成されている。本発明の蒸着マスク1を用いて形成された有機EL素子は正確な薄膜パターンに形成されているので、高精細な画像を形成することが可能な画像形成装置となっている。
【0064】
なお、電子機器としては、上記画像形成装置400以外にも、携帯電話、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)、およびエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、あるいは投射型液晶表示装置、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルなどを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の蒸着マスクの概略平面図である。
【図2】開口部の断面構成図である。
【図3】本発明の蒸着マスクを用いて薄膜をパターン加工する様子を示した図である。
【図4】本発明の蒸着マスクの製造工程を示す図である。
【図5】図4に続く蒸着マスクの製造工程を示す図である。
【図6】蒸着マスクの第1変形例の概略平面図である。
【図7】第2補強梁の断面構成図である。
【図8】蒸着マスクの第2変形例の概略平面図である。
【図9】電子機器の一例であるラインヘッドを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B…蒸着マスク、2…マスク基板、3…開口部、4…補強梁、5…第1開口部、6…第2開口部、7…第1補強梁、8…第2補強梁、10…被成膜基板、15…薄膜パターン、40…蒸着材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜基板上に蒸着を用いて形成される薄膜パターンに対応して、蒸着材料を通過させるための開口部が設けられ、前記開口部が平行に所定の間隔をもって複数配列された薄板状の蒸着マスクにおいて、
前記開口部を横切る位置に複数の補強梁が形成され、
前記複数の補強梁は、前記開口部の中央部で相対的に密に形成され、前記開口部の端部で相対的に粗に形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
前記複数の補強梁の厚さは、前記開口部の中央部で相対的に厚く形成され、前記開口部の端部で相対的に薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
互いに平行に配列された複数の前記開口部には、第1補強梁が形成された第1開口部と、第2補強梁が形成された第2開口部とが含まれ、前記第1開口部と前記第2開口部とが、前記開口部の配列方向において隣り合う位置に配置され、前記第1補強梁と前記第2補強梁とが、前記開口部の配列方向と直交する方向において異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−65247(P2010−65247A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230611(P2008−230611)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】