説明

蒸着マスク

【課題】低コストであり大型化に対応可能な蒸着マスクを提供する。
【解決手段】本発明の蒸着マスクは、膜パターンが形成される被処理基板Wに当接させられて用いられる板状体の蒸着マスク1であって、膜材料を透過させるマスク開口121を有する板状の複数のマスク片11が、板状体の面方向に配列されて連結されてなり、複数のマスク片11の各々において被処理基板Wに当接させられる当接面111が、複数のマスク片11で略面一になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種デバイスにおける電極や配線等の金属膜パターンの形成、有機エレクトロルミネッセンス装置における有機層等の有機膜パターンの形成等に蒸着法が用いられている。蒸着法により膜パターンを形成するには、膜パターンの形成領域に対応したマスク開口を有するマスクを用意する。そして、被処理基板とマスクとを位置合わせした後に、マスク開口内に露出した部分の被処理基板に気化させた膜材料を接触させる。これにより、膜材料が被処理基板にマスク開口のパターンで転写され、膜パターンが得られる。蒸着法に用いるマスクとしては、金属薄板からなるメタルマスクが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、開口パターンを形成した金属薄板をフレームに固定してマスクを製造する製造方法が開示されている。このようなマスクよれば、マスクの開口パターンを高精細にすることができるので、高精細な膜パターンを形成することが可能になる。
【特許文献1】特開2003−311335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、デバイスにおいて金属膜パターンや有機膜パターンを高精細にすることができるので、デバイスを高性能にすることが可能になると考えられる。ところで、デバイスには高性能化の他にも低コスト化が求められており、また例えば有機EL装置等のデバイスには大画面化等も求められている。このような要求に応えるためには、デバイスの母材を大型化し、多面取りにより多数のデバイスを一括して製造する手法やデバイス自体を大型化する手法が有効である。これらの手法を用いるためには、大型のマスクが必要になる。
【0005】
しかしながら、大型の金属薄板に高精細な開口パターンを低コストで形成することが難しいので、マスクを大型にすることが困難である。したがって、特許文献1の技術を用いても、大型の母材を用いたデバイスの製造に対応できないおそれがある。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑み成されたものであって、低コストであり大型化に対応可能な蒸着マスクを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蒸着マスクは、膜パターンが形成される被処理基板に当接させられて用いられる板状体の蒸着マスクであって、膜材料を透過させるマスク開口を有する板状の複数のマスク片が、前記板状体の面方向に配列されて連結されてなり、前記複数のマスク片の各々において前記被処理基板に当接させられる当接面が、前記複数のマスク片で略面一になっていることを特徴とする。
【0008】
大型の蒸着マスクを1つのマスク片で構成すると、マスク片を形成する装置が大型になることや、マスク片の母材が自重により変形してマスク開口の形成精度が低下し、マスク片の歩留りが低下すること等により蒸着マスクの製造コストが高騰してしまう。
【0009】
前記の構成によれば、複数のマスク片により蒸着マスクが構成されるので、マスク片1つ当りの面方向の寸法が蒸着マスク全体の面方向の寸法よりも小さくなる。したがって、マスク開口の精度を確保しつつマスク片の製造コストを低くすることができ、蒸着マスクを大型にすることが容易になる。
【0010】
また、複数のマスク片の各々において表面と裏面とのうちの一方の面が、複数のマスク片で略面一になっているので、一方の面を被処理基板に隙間無く当接させることができる。したがって、隙間に膜材料が回りこむことや隙間側にマスク片がたるむこと等が防止され、高精度な膜パターンを形成可能な蒸着マスクになる。
【0011】
以上のように、本発明によれば高精度な膜パターンを形成可能であり、しかも低コストで大型化に対応可能な蒸着マスクにすることができる。このような蒸着マスクを用いれば、多面取りの大型の被処理基板に高精度な膜パターンを形成することができ、良好なデバイスを低コストで製造することが可能になる。また、大型のデバイスを製造することもでき、例えば有機EL装置等の表示装置を大画面化することも可能になる。
【0012】
また、前記複数のマスク片のうちの互いに隣接する一対のマスク片は、互いの周縁部が重ね合わされて連結されており、前記一対のマスク片のうち、第1のマスク片は前記周縁部が前記当接面側から薄肉化されており、第2のマスク片は前記周縁部が前記当接面の裏面側から薄肉化されていてもよい。
【0013】
薄肉化による第1のマスク片の周縁部における板厚の減少量と、第2のマスク片の周縁部の板厚とを同一にすることにより、当接面が第1のマスク片と第2のマスク片とで面一になる。前記の構成によれば、周縁部が薄肉化されていない場合に比べて、互いに重ね合わされた連結部における一対のマスク片の総厚が、マスク片の中央部の板厚に近くなる。したがって、連結部と連結部以外の部分とで機械特性が均一になり、複数のマスク片を実質的に一体化することができる。
【0014】
また、前記一対のマスク片のうち、一方のマスク片は前記周縁部に貫通孔が設けられており、他方のマスク片は前記周縁部が前記貫通孔の内側と重なる部分に凸部を残して薄肉化されていてもよい。
このようにすれば、貫通孔に凸部を嵌め込むことにより、一対のマスク片を高精度に位置合わせすることができる。
【0015】
また、前記複数のマスク片の各々は、前記当接面の裏面側に接続部材が接合されており、前記接続部材を介して隣接するマスク片と連結されていてもよい。
このようにすれば、接続部材が当接面の裏面側に接合されており、接続部材が当接面の凹凸になることがないので、接続部材の形状や寸法、材質の選択自由度が高くなる。例えば、接続部材として、加工しやすい形状や寸法、材質のものを選択すれば、複数のマスク片を連結することが容易になる。また、接続部材としてマスク片よりも強度が高い材質のものを選択すれば、接続部材により蒸着マスクを補強することができ、自重による蒸着マスクの変形量を少なくすることができる。これにより、蒸着マスクの形状精度を確保しつつ、蒸着マスクを大型にすることが可能になる。
なお、一方のマスク片が、前記第1のマスク片又は第2のマスク片のいずれであってもよい。
【0016】
また、前記複数のマスク片に、隣接するマスク片の境界をまたいでアライメントマークが設けられていることが好ましい。
このようにすれば、隣接するマスク片の間でアライメントマークが連続するようにマスク片の位置を調整することにより、高精度かつ容易に位置合わせすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以降の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、構造の特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造はその寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせて示す場合がある。
【0018】
[第1実施形態]
図1(a)は、第1実施形態の蒸着マスク1の概略構成を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A’線矢視断面図である。なお、図1(b)には、使用状態の蒸着マスク1を模式的に示している。
【0019】
図1(a)に示すように、蒸着マスク1は、枠状体10と複数のマスク片11とからなっている。複数のマスク片11は、厚み方向の一方の面である当接面111が複数のマスク片11で略面一になるように連結されている。連結された複数のマスク片11の外周に沿う周縁部には、複数の溶接部13が設けられている。溶接部13は、マスク片11と枠状体10とがスポット溶接により接合された部分である。マスク片11は、複数の開口エリア12を有しており、開口エリア12には多数のマスク開口121が設けられている。開口エリア12は、枠状体10の内側101と重なり合うように配置されている。
【0020】
図1(b)に示すように、蒸着マスク1は、当接面111が被処理基板Wの被処理面W1に当接させられて用いられる。被処理基板Wは、例えば複数のデバイスを一括して製造可能な多面取り用の大型基板である。ここでは、開口エリア12の1つが、被処理基板Wにおいてデバイスの1つになる部分に対応している。また、近接する一対のマスク片11の境界が、被処理基板においてデバイスになる複数の部分の境界とほぼ一致するようになっている。
【0021】
蒸着マスク1を用いて蒸着法により被処理基板Wに膜パターンを形成するには、まず被処理面W1に当接面111を当接させて蒸着マスク1を配置する。そして、蒸着マスク1を介して被処理面W1を気化した膜材料である蒸着粒子Pを含んだ雰囲気に曝露する。蒸着粒子Pは、枠状体10の内側101、及びマスク開口121を通って、マスク開口121内に露出した部分の被処理面W1に付着する。これにより、マスク開口121のパターンが被処理基板Wに転写され、膜パターンを形成することができる。
【0022】
マスク片11は、平面視略長方形の薄板状のものである。本実施形態のマスク片11は、板厚が50μm程度の金属薄板からなり、金属薄板の材質としては、インバやスーパーインバ、ステンレスインバ等の熱膨張係数が小さいものが好ましい。成膜時のマスク開口121の熱変形が極めて小さくなり、高精度な膜パターンを形成可能になるからである。インバは、例えばニッケル(36atm%)及び鉄(64atm%)からなる合金であり、線膨張係数が1.0(ppm/K)程度のものである。スーパーインバは、例えばニッケル(32atm%)、鉄(63atm%)、コバルト(5atm%)からなる合金であり、線膨張係数が0.3〜0.5(ppm/K)程度である。
【0023】
ロール・ツー・ロール方式によりマスク片11を形成するには、金属薄板を巻き取ったロールから金属薄板を送り出しつつ搬送する。そして、搬送経路において、金属薄板にエッチング等によりマスク開口121を形成する。そして、マスク開口121が形成された金属薄板を切断することにより、マスク片11が得られる。ロール・ツー・ロール方式によれば、低コストで効率よくマスク片11を形成することが可能である。
【0024】
マスク片の形成時に、金属薄板の搬送方向における金属薄板を切断する間隔を調整することは容易である。したがって、搬送方向に対応するマスク片の寸法を大きくすることは容易である。一方、ロールの幅方向に対応するマスク片の寸法を大きくすることは、ロール自体の寸法を大きくする必要があるため、容易ではない。また、ロールの幅を大きくした場合であっても、金属薄板が自重により変形してマスク開口の加工精度が低下し、マスク片の歩留りが低下するおそれがある。マスク開口の加工精度を確保しようとすれば、ロールの大型化により製造装置が大型化することに加えて搬送経路において金属薄板を支持する支持機構が複雑になり、製造装置のコストが高騰するおそれがある。
【0025】
以上のような事情により、マスク片11の平面形状は、ロールの幅に対応する方向が短辺になっており、金属薄板の搬送方向に対応する方向が長辺になっている。本実施形態では、複数のマスク片11が短辺に沿う方向に配列されており(図1(a)参照)、長辺に沿う周縁部において隣接するマスク片11と連結されている。
【0026】
図2(a)は、互いに隣接して配置された一対のマスク片の連結部を拡大して示す平面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B’線矢視断面図である。図2(a)、(b)に示すように、一対のマスク片の一方のマスク片11Aは、周縁部112が当接面111の裏面115側から薄肉化されている。一対のマスク片の他方のマスク片11Bは、周縁部112が当接面111側から薄肉化されている。
【0027】
本実施形態のマスク片11A、11Bは、いずれも母材の金属薄板において周縁部112になる部分が、エッチング(ハーフエッチング)により所定の厚みだけ除去されて薄肉化されている。マスク片11Aの周縁部112における板厚は、マスク片11Bの周縁部112において除去された前記所定の厚みと略一致している。マスク片11A、11Bは、互いの周縁部112が重ね合わされた状態で接合されている。これにより、マスク片11Aとマスク片11Bとで、当接面111が略面一になっている。
【0028】
ここでは、マスク片11A、11Bの周縁部112は、板厚が50μm程度の金属薄板のうちの25μm程度の厚み部分が除去され、25μm程度の板厚まで薄肉化されている。すなわち、マスク片11A、11Bの周縁部112における板厚が略一致しているとともに、マスク片11A、11Bの周縁部112における総厚(50μm程度)が、マスク片11A、11Bの中央部における板厚(50μm程度)と略一致している。これにより、周縁部112においてマスク片11A、11Bの強度等の機械的特性が均一なるとともに、マスク片11A、11Bの周縁部112の機械的特性が、マスク片11A、11Bの各々の中央部とほぼ同じになる。
【0029】
マスク片11A、11Bには、マスク片11A、11Bの境界をまたいで連続した形状のアライメントマーク113が設けられている。マスク片11A、11Bの境界は、マスク片11A、11Bの平面視長辺方向に沿っており、アライメントマーク113は平面視長辺方向と直交して延設されている。マスク片11A、11Bは、互いの周縁部112が重ね合わされ、かつアライメントマーク113により位置合わせされた状態で、溶接により接合されている。
【0030】
マスク片11A、11Bの周縁部112には、複数の溶接部114が設けられている。溶接部114は、マスク片11A、11Bの周縁部112が互いにスポット的に溶接された部分である。溶接部114は、例えば内径が0.5mm程度の平面視略円形の部分である。周縁部112の幅が、例えば1〜5mm程度であれば、周縁部112を溶接代として機能させることができる。
【0031】
次に、蒸着マスク1の製造方法の一例を説明する。蒸着マスク1を製造するには、まず複数のマスク片11を用意する。ここでは、前記したロール・ツー・ロール方式により形成されたマスク片11を用いる。以下、隣接する一対のマスク片11A、11Bの連結部に着目して説明する。
【0032】
図3(a)〜(c)は、蒸着マスク1の製造方法を概略して示す断面工程図である。図3(a)に示すように、マスク片11A、11Bを互いの周縁部112を重ね合わせるとともにワークテーブル6に載置する。ワークテーブル6は、石英ガラス等からなりレーザ光を吸収しない材質のものである。また、ワークテーブル6は、マグネットや真空吸着によりマスク片11A、11Bを着脱可能に固定する固定手段を備えている。なお、ワークテーブル6は、図示略の定盤に移動可能に保持されている。ここでは、マスク片11A、11Bの裏面115をワークテーブル6に当接させて、マスク片11A、11Bを載置するとともに、ワークテーブル6に対して固定しないでおく。
【0033】
次いで、図3(b)に示すようにマスク片11Aとマスク片11Bとを位置合わせするとともに、レーザヘッド7から周縁部112にYAGレーザ光Lをスポット的に照射して、溶接によりマスク片11A、11Bを互いに接合する。
【0034】
ここでは、図4(a)〜(c)に示す手順で、マスク片11Aとマスク片11Bとを位置合わせする。まず、図4(a)に示すように、マスク片11A、11Bの各々の当接面111における長辺方向の端部116を近づけて、各々の端部116を一致させる。端部116自体をアライメントマークとして機能させることができ、容易かつ高精度に位置合わせすることができる。
【0035】
次いで図4(b)に示すように、マスク片11Aとマスク片11Bとの相対位置を長辺に沿う方向において変化させ、アライメントマーク113A、113Bが連続するように位置合わせする。アライメントマーク113Aは、アライメントマーク113のうちのマスク片11Aに設けられた部分であり、アライメントマーク113Bは、アライメントマーク113のうちのマスク片11Bに設けられた部分である。
【0036】
マスク片11A、11Bの端部116を一致させているので、アライメントマーク113A、113Bが端部116を挟んで近接して配置される。したがって、端部から離れた位置にアライメントマークが設けられている場合よりも、長辺方向に直交する方向においてアライメントマーク113A、113Bの位置を容易に比較することができ、容易かつ高精度に位置合わせすることができる。
【0037】
以上のようにして、図4(c)に示すようにアライメントマーク113A、113Bが、マスク片11A、11Bの境界である端部116を挟んで連続した形状になる。図3(b)の説明に戻り、位置合わせされたマスク片11A、11Bを前記の固定手段によりワークテーブル6に着脱可能に固定する。そして、ワークテーブル6を移動させて、レーザヘッド7に対する周縁部112の位置を変化させつつ、周縁部112にYAGレーザ光Lをスポット的に照射して複数箇所にてマスク片11A、11Bを互いに溶接する。スポット的にマスク片11A、11Bを溶接すれば、ライン状に溶接する場合に比べて溶接の熱による歪がラインに沿って累積することが防止される。したがって、マスク開口121が変形することが防止され、高精度な形状のマスク開口121にすることができる。
【0038】
なお、YAGレーザ光を連続的に照射しつつ周縁部を走査させて、ライン状にマスク片を溶接することも可能である。また、ワークテーブル6を固定しておき、レーザヘッド7を移動させて、レーザヘッド7に対する周縁部112の位置を変化させてもよい。
【0039】
次いで、図3(c)に示すように、連結されたマスク片11A、11Bに互いに離れる方向の引張力Fを作用させた状態で、マスク片11A、11Bを枠状体10に当接させる。そして、連結されたマスク片11A、11Bの外周に沿う周縁部にレーザヘッド7からYAGレーザをスポット的に照射して、連結されたマスク片11A、11Bと枠状体10とを溶接により接合する。引張力Fを作用させて溶接する具体的な手法としては、例えば連結されたマスク片11A、11Bの寸法を、枠状体10の外側に張り出す程度の寸法にしておき、張出し部に引張力Fを作用させて枠状体10に溶接した後、張出し部分を除去する手法が挙げられる。これにより、図1(a)に示した蒸着マスク1が得られる。
【0040】
以上のような構成の蒸着マスク1にあっては、開口エリア12を有する複数のマスク片11が連結されているので、マスク片11を小型にすることができるとともに、蒸着マスク1全体でマスク開口121が配置される領域を大型にすることができる。マスク片11を小型にすれば、マスク開口121を高精度にすることができるとともに、マスク片11を低コストにすることができる。また、マスク開口121が配置される領域を大型にすれば、大型の被処理基板Wに効率よく膜パターンを形成することができ、多数のデバイスを一括して製造することや大型のデバイスを製造することが可能になる。
【0041】
また、複数のマスク片11の周縁部が薄肉化されて重ね合わされているので、被処理基板Wに当接させられる当接面111が複数のマスク片11で略面一になっている。したがって、被処理面W1に蒸着マスク1を良好に当接させることができ、マスク開口121の近傍が被処理面W1から浮き上がることが防止されるので、高精度な形状の膜パターンを形成可能な蒸着マスクになる。
【0042】
なお、蒸着マスクの1方向に沿って3以上のマスク片が配置されて連結されていてもよいし、蒸着マスクの2方向に沿ってマスク片が2次元配置されて連結されていてもよい。
また、複数のマスク片にわたってマスク開口が設けられていてもよく、例えば蒸着マスク全体が1つのデバイスを製造用のものであってもよい。
【0043】
連結方法としては、スポット溶接の他に、抵抗溶接や接着等を用いてもよい。マスク片の厚みに応じてネジ、あるいはボルト・ナット等により連結してもよい。この場合には、ねじの頭部を収容する凹部を形成しておくことにより、複数のマスク片で当接面を略面一にすることができる。また、当接面111側からYAGレーザ光Lを照射する代わりに、裏面115側から照射してもよい。この場合には、アライメントマークを裏面115側に設けておけば、良好に位置合わせすることができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の蒸着マスクについて説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、近接するマスク片の一方の凸部、他方に貫通孔が形成されており、凸部と貫通孔を嵌め合わせることによりアライメントを行う点である。
【0045】
図5(a)は、第2実施形態の蒸着マスク2において複数のマスク片の連結部を拡大して示す平面図であり、図5(b)は図5(a)のB−B’線矢視断面図である。なお、図5(b)には、説明のために連結前の状態のマスク片を図示している。図5(a)、(b)において、第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同じ符号を付している。また、第1実施形態と同様の構成要素については、説明を省略する場合がある。
【0046】
第2実施形態の蒸着マスク2は、枠状体10と複数のマスク片21とからなっている。複数のマスク片21は、当接面111が複数のマスク片21で略面一になるように連結されている。互いに隣接して配置された一対のマスク片21A、21Bは、第1実施形態と同様に各々の周縁部112が薄肉化され、重ね合わされて接合されている。
【0047】
マスク片21A、22Aの周縁部には、第1実施形態のアライメントマーク113の代わりにアライメント部213が設けられている。図5(b)に示すように、アライメント部213は、貫通孔213Aと凸部213Bとからなっている。
【0048】
貫通孔213Aは、一方のマスク片21Aの周縁部112を貫通して設けられている。貫通孔213Aは、例えばマスク開口121と一括して形成されたものである。貫通孔213Aが、周縁部112の薄肉化とともに形成されたものであってもよい。
【0049】
凸部213Bは、他方のマスク片21Bの周縁部に設けられており、貫通孔213Aに嵌合可能になっている。凸部213Bは、例えばマスク片21Bの周縁部112が凸部213Bを残して薄肉化されることにより形成されている。
【0050】
蒸着マスク2は、凸部213Bを貫通孔213Aに嵌め合わせることにより、マスク片21A、21Bが位置合わせされている。また、マスク片21A、21Bが位置合わせされた状態で、第1実施形態と同様に周縁部112がスポット溶接されることにより、マスク片21A、21Bが接合(連結)されている。
【0051】
蒸着マスク2にあっては、マスク片21A、21Bの形成工程において、工数を増やすことなく貫通孔213A、凸部213Bを形成することが可能であり、独立した工程でアライメントマークを設ける手間を省くことができる。また、貫通孔213Aと凸部213Bとを嵌め合わせた状態で、マスク片21A、21Bの面方向の位置が保持されるので、位置合わせのための治具が簡略化あるいは不要化される。
【0052】
なお、凸部の高さが貫通孔の深さ以下であればよく、これにより当接面から被処理基板W側に突出した部分がなくなるので、当接面を面一にすることができる。また、周縁部112において被処理基板Wと当接する側に配置されるマスク片に凸部が設けられており、これと対になるマスク片に貫通孔が設けられていてもよい。この場合には、当接面111への加工が少なくなるので、当接面111を良好に面一にすることができる。
【0053】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の蒸着マスクについて説明する。第3実施形態が第1、2実施形態と異なる点は、近接するマスク片の互いの周縁部にわたって接合部材が設けられている点である。
【0054】
図6(a)は、第3実施形態の蒸着マスク2において複数のマスク片の連結部を拡大して示す平面図であり、図6(b)は図6(a)のB−B’線矢視断面図である。図6(a)、(b)において、第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同じ符号を付している。また、第1実施形態と同様の構成要素については、説明を省略する場合がある。
【0055】
第3実施形態の蒸着マスク3は、枠状体10と複数のマスク片31とからなっている。複数のマスク片31は、当接面111が複数のマスク片31で略面一になるように連結されている。互いに隣接して配置された一対のマスク片31A、31Bは、板厚が略同一のものである。一対のマスク片31A、31Bは、厚み方向に対する側面が互いに当接されて配置されている。
【0056】
マスク片31A、31Bの裏面115には、マスク片31A、31Bの境界をわたって接続部材312が設けられている。本実施形態の接続部材312は、マスク片31A、31Bの長辺に沿う周縁部の全体と重ね合わされている。また、枠状体10と接続部材312とが重なり合う部分の枠状体10には、接続部材312の逃げ部が設けられている。接続部材312の厚みとしては、裏面115側からマスク開口121への蒸着粒子の入射を妨げない範囲内であれば特に限定されない。この範囲内で厚みを厚くすることにより蒸着マスク3を補強することができる。
【0057】
接続部材312がマスク片31Aの周縁部と重なり合う部分と、接続部材312がマスク片31Bの周縁部と重なり合う部分とには、それぞれスポット溶接による溶接部114が設けられている。接続部材312は、溶接部114によりマスク片31A、31Bの各々と接合されている。すなわち、マスク片31A、31Bは、接続部材312を介して連結されている。なお、裏面115には、第1実施形態と同様にマスク片31A、31Bの境界をまたいで連続したアライメントマークが設けられている。
【0058】
蒸着マスク3は、例えば以下のようにして製造される。まず、前記したワークテーブル6上に当接面111を当接させてマスク片31A、31Bを載置する。そして、図4に示した手順でマスク片31A、31Bを位置合わせするとともに、マスク片31A、31Bをワークテーブル6に着脱可能に固定する。そして、マスク片31A、31Bにわたって接続部材312を配置して、裏面115側からYAGレーザ光を接続部材312にスポット的に照射する。これにより、マスク片31A、31Bと接続部材312を互いに溶接することができ、後の工程を行うことにより蒸着マスク3が得られる。
【0059】
蒸着マスク3にあっては、マスク片31A、31Bの周縁部を薄肉化しなくとも当接面111を略面一にすることができるので、蒸着マスク3を低コストで簡便に構成することができる。また、マスク片31A、31Bの周縁部を接続部材312で補強することができ、蒸着マスク3が自重でたわむこと等によるマスク開口121の歪みを防止することができる。
【0060】
なお、マスク片の間に隙間が設けられていてもよい。接続部材が隙間全体を重ね合わされるようにすれば、蒸着粒子が隙間を通って被処理基板に付着することがない。また、例えばマスク片の長辺に沿う周縁部に部分的に接続部材を設けることにより、隙間の一部をマスク開口として機能させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)は第1実施形態の平面図、(b)はA−A’線矢視断面図である。
【図2】(a)は連結部の平面拡大図、(b)はB−B’線矢視断面図である。
【図3】(a)〜(c)は蒸着マスクの製造方法を概略して示す断面工程図である。
【図4】(a)〜(c)は、マスク片の位置合わせ方法を示す平面模式図である。
【図5】(a)は第2実施形態の平面図、(b)はC−C’線矢視断面図である。
【図6】(a)は第3実施形態の平面図、(b)はD−D’線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1、2、3・・・蒸着マスク、10・・・枠状体、11、11A、11B、21、21A、21B、31、31A、31B・・・マスク片、111・・・当接面、112・・・周縁部、113、113A、113B・・・アライメントマーク、114、13・・・溶接部、121・・・マスク開口、W・・・被処理基板、W1・・・被処理面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜パターンが形成される被処理基板に当接させられて用いられる板状体の蒸着マスクであって、
膜材料を透過させるマスク開口を有する板状の複数のマスク片が、前記板状体の面方向に配列されて連結されてなり、
前記複数のマスク片の各々において前記被処理基板に当接させられる当接面が、前記複数のマスク片で略面一になっていることを特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
前記複数のマスク片のうちの互いに隣接する一対のマスク片は、互いの周縁部が重ね合わされて連結されており、
前記一対のマスク片のうち、第1のマスク片は前記周縁部が前記当接面側から薄肉化されており、第2のマスク片は前記周縁部が前記当接面の裏面側から薄肉化されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記一対のマスク片のうち、一方のマスク片は前記周縁部に貫通孔が設けられており、他方のマスク片は前記周縁部が前記貫通孔の内側と重なる部分に凸部を残して薄肉化されていることを特徴とする請求項2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記複数のマスク片の各々は、前記当接面の裏面側に接続部材が接合されており、前記接続部材を介して隣接するマスク片と連結されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記複数のマスク片に、隣接するマスク片の境界をまたいでアライメントマークが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−90415(P2010−90415A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259335(P2008−259335)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】