蒸着源および成膜方法
【課題】本発明は、形成される膜厚が均一であり、成膜効率が高く、さらに種々の成膜材料を適用することが可能な蒸着源、およびその成膜方法を提供することを目的とする。
【解決手段】成膜材料を蒸着させるための蒸着源であって、開口部を有する容器と、該容器内に配置された前記成膜材料を収容する成膜材料収容部と、前記成膜材料収容部と前記蒸着源の開口部との間に配置される、加熱可能な多孔質材部とを備えることを特徴とする蒸着源が提供される。本発明はまた、この蒸着源を用いた成膜方法を提供する。
【解決手段】成膜材料を蒸着させるための蒸着源であって、開口部を有する容器と、該容器内に配置された前記成膜材料を収容する成膜材料収容部と、前記成膜材料収容部と前記蒸着源の開口部との間に配置される、加熱可能な多孔質材部とを備えることを特徴とする蒸着源が提供される。本発明はまた、この蒸着源を用いた成膜方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜材料を蒸着させるための蒸着源、特に有機EL素子の製造に使用される蒸着源に関する。さらに、本発明は、該蒸着源を使用する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種情報産業機器の表示ディスプレイや発光素子等においては、薄型化が図られるとともに視認性や耐衝撃性等に優れることから、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略す)の利用が進んでいる。有機EL素子は、基板上に一対の電極に挟持された有機層を含む構成を有する。有機層は、機能の異なる複数の層が積層されており、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を含む。
【0003】
このような有機EL素子の有機層は、例えば、蒸着法により成膜される。蒸着による成膜の際には、成膜材料である有機材料を坩堝等の容器内に充填し、真空状態で容器ごとに加熱して有機材料を蒸発させることにより成膜を行う。加熱方法としては、抵抗加熱、電子ビーム加熱、高周波加熱、レーザ加熱等が用いられる。
【0004】
例えば、抵抗加熱では、容器の外周にヒータ等の熱源が配置され、この熱源から発せられた熱が容器に伝達される。そして、容器を介して、容器内に収容された有機材料に熱が伝達されて有機材料が加熱される。このような有機材料の加熱時には、容器の内壁に近い領域の有機材料が先に加熱され、その後、内側に向かって徐々に加熱が進んでいく。そして、有機材料全体が所定温度に近い温度に昇温されると、容器内の有機材料表面、すなわち、被成膜基板に対向する面である有機材料表面から有機材料が蒸発または昇華して蒸着が行われる。
【0005】
ここで、上記のような有機材料の蒸着による成膜では、容器内の有機材料全体が所定温度に近づくと有機材料の蒸発または昇華が開始するので、有機材料の蒸発または昇華に要する熱量が多くなり、加熱に時間を要する。それゆえ、この方法による蒸着には、加熱効率の向上が求められる。また、かかる方法では、容器内における有機材料の温度分布が不均一となりやすく、有機材料の加熱状態の調整が困難である。それゆえ、有機材料の蒸発量または昇華量の制御が困難となり、その結果、成膜レートの制御が困難になるとともに、成膜される膜の特性の劣化を招くおそれがある。それゆえ、膜の生産性および品質の向上を図るには、有機材料の良好な加熱制御が求められる。
【0006】
上記要求を満たす方法の一つに、例えば、容器の上下に熱源としてヒータを配置するとともに、容器内に充填された成膜材料の表面近傍に金属板を配設する方法がある(特許文献1参照)。
【0007】
また、成膜材料を収容する成膜材料収容部と、該成膜材料収容部に収容された成膜材料の表面に配置されて発熱するとともに、成膜材料の表面に連通する貫通孔を有する加熱体とを備えた成膜源およびそれを用いた成膜方法も開示されている(特許文献2参照)。
【0008】
さらに、図1に示すように、ルツボ容器10と、該容器内に含有された昇華性材料18および熱容量の大きい物質20により蒸着を行う成膜方法、並びに、ルツボ容器10の上部の首部14と、該首部14に設けられた平板16とに特徴を有する昇華性材料を蒸着させるための蒸着用ルツボおよびそれを用いた成膜方法も開示されている(特許文献3参考)。
【0009】
【特許文献1】特開昭58−19471号公報
【特許文献2】特開2006−2218号公報
【特許文献3】特開2004−152698号公報
【特許文献4】特開2007−51033号公報
【特許文献5】特開2007−177280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1における金属板からの伝熱による加熱は、成膜材料を均一に加熱するための補助的なものである。したがって、上下に配設されたヒータにより成膜材料全体を均一に加熱する必要があり、成膜材料の蒸発または昇華に多くの熱量を要する。また、成膜材料の加熱状態の調整が困難であるため、成膜材料の温度分布に不均一が生じやすく、成膜レートを精度よく制御することが困難である。さらに、成膜材料全体を均一に加熱しようとすると、成膜材料表面以外の部分においても蒸発または昇華が起こり、これが膜質等に悪影響を及ぼす可能性もある。例えば、数百nmレベルといった高精度の成膜技術が要求される有機EL素子の製造方法において、成膜レートの制御が不十分であるか、材料片の混入等の問題が生じると、有機EL素子の生産性が低下するとともに、製造された素子においてリーク電流等が発生し、素子特性が劣化することもある。
【0011】
また、特許文献2に開示の方法は、大面積の基板上に膜を形成する場合、膜厚を均一にすることが困難である。すなわち、図2に示すように、成膜材料収容部32に収容された成膜材料の蒸気流Xは、成膜源30の貫通孔34を介して抜け出るため、基板36の貫通孔34の真上に位置する面には膜が形成し易いが、それ以外の面には膜が形成し難い。その結果、基板36上に形成される膜の膜厚が不均一となり易い。この問題を克服するために、蒸着源30の寸法を基板36の寸法に併せて大きくするか、または蒸着源30と基板36との距離を大きくして蒸気流Xを基板全面に均一に到達させることが考えられる。しかしながら、この場合には、蒸着装置自体が大きくなり、蒸着装置のコストが増加するという新たな問題が起こり得る。
【0012】
さらに、特許文献3に記載の方法では、昇華性材料が好適な成膜材料であるため、適用可能な成膜材料に制限がある一方、マザーガラスの大面積化、たとえば、第三世代(550×650mm)に対応できない欠点もある。
【0013】
したがって、本発明の目的は、上述の課題を解決すべく、形成される膜厚が均一であり、成膜効率が高く、さらに種々の成膜材料を適用することが可能な蒸着源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一は、開口部を有する容器と、該容器内に配置された成膜材料を収容する成膜材料収容部と、該成膜材料収容部と該蒸着源の開口部との間に配置される、加熱可能な多孔質材部とを備えることを特徴とする蒸着源に関する。この蒸着源では、多孔質材部は加熱体と多孔質材とから構成される場合と、多孔質材から構成され、この多孔質材自体が発熱体となる場合の2つの態様が包含される。前記多孔質材部は、1または複数設けることができる。
【0015】
本発明の第二は、第一の蒸着源を用いて成膜材料を被蒸着基板に堆積させる方法に関する。具体的には、本発明の方法は、(a)成膜材料を収容した蒸着源を準備する工程と、(b)該成膜材料を加熱して、蒸発させ、被蒸着基板に該成膜材料を堆積する工程とを含み、上記蒸着源が、上記本発明の蒸着源であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蒸着源および成膜方法は、形成される膜厚が均一であり、成膜効率が高く、さらに種々の成膜材料に適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。以下の説明において適宜図面を参照するが、図面に記載された態様は本発明の例示であり、本発明はこれらの図面に記載された態様に制限されない。
【0018】
先ず、本発明の蒸着源について説明する。
【0019】
本発明の蒸着源は、開口部を有する容器と、この容器内に配置された成膜材料を収容する成膜材料収容部と、この成膜材料収容部と蒸着源の開口部との間に配置される、加熱可能な多孔質材部とを備える。以下に本発明の蒸着源の具体例を、図3を参照して説明する。図3は、蒸着源の概略断面図である。
【0020】
本発明の蒸着源は、図3に示すように、開口部150を有する容器110と、この容器内の成膜材料を収容する成膜材料収容部120と、加熱可能な多孔質材部140とを含む。成膜材料収容部120は、通常、容器110の底壁部160に接して配置される。
【0021】
以下に各構成要素について説明する。
【0022】
(容器)
本発明の蒸着源100の容器110は、どのような形状であってもよいが、上端が開口され下端が底壁で封止された円筒形状であることが好ましい。容器の寸法は、蒸着の対象である被蒸着材料により異なるが、例えば、上記円筒形状である場合、直径2cm〜20cm、20cm3〜3000cm3の容積を有することができる。
【0023】
蒸着源100の容器110を構成する材料は、該容器に収容される成膜材料よりも熱伝導率が高く、成膜材料が蒸発する温度で、蒸発または分解しない程度に高い融点を有する必要がある。具体的には、例えば、W、Ta、Mo等の高融点金属、Au、Ag、Au等の重金属または、Ni、Fe、Co−Ni合金、ステンレス鋼、黒鉛、TiN等の金属およびセラミックス等を挙げることができる。またはアルミナ(Al2O3)、ベリリア(BeO)、炭化ケイ素(SiC)などの耐熱性の強い化合物も利用できる。特に、Au、Ag、Au等の重金属を使用することにより腐食性の高いルイス酸のようなアクセプタドーピング材料の蒸着が可能となる。
【0024】
(成膜材料収容部)
蒸着源100の成膜材料収容部120は、成膜材料を収納するための空間部分をいう。成膜材料収容部120の寸法および形状は、成膜材料を適切に収納することができれば特に制限されない。例えば、上記円筒形状の容器の場合、形状を同様の円筒形状とすることができ、その場合、20cm3〜3000cm3の容積を有することができる。
【0025】
本発明の蒸着源100は、成膜材料収容部120に成膜材料を収容して蒸着を行う。成膜材料は、特に制限されないが、加熱により蒸発または昇華する材料、例えば、昇華性材料、溶融性材料、半昇華性材料などが含まれる。このような成膜材料は、固体であってもよく、または、液体であってもよい。
【0026】
特に、本発明の蒸着源100は、有機EL素子を構成する有機材料、すなわち、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、および電子輸送層の材料、ならびに発光材料およびドープ材料を成膜材料として用いることができる。これらの材料は、各種文献に公開されている。
【0027】
正孔注入層および正孔輸送層を構成する材料としては、正孔を注入、輸送する能力を有し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。正孔注入層及び正孔輸送層に用いられる材料として、公知のフェニルアミン多量体材料系のN、N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1、1’−ビフェニル)−4、4’−ジアミン;N、N−ジフェニル−N、N´−(3−メチルフェニル)−1、1´−ビフェニル−4、4´−ジアミン;1、1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;4、4´−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル等の化合物、ヒドラゾン化合物、シラザン化合物、キナクリドン化合物、フタロシアニン誘導体などを用いることができる。
【0028】
電子注入層及び電子輸送層を構成する材料としては、電子を輸送する能力を有し、それぞれの材料を組み合わせることにより、陰極からの電子注入効果を有するとともに、有機発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、さらに正孔の電子輸送層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。具体的には、フルオレン、バソフェナントロリン、バソクプロイン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、アントラキノジメタン等やそれらの化合物、金属錯体化合物もしくは含窒素五員環誘導体が好ましい。金属錯体化合物の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリ(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム等があるが、これらに限定されるものではない。また含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2、5−ビス(1−フェニル)−1、3、4−オキサゾール、2、5−ビス(1−フェニル)−1、3、4−チアゾール、2、5−ビス(1−フェニル)−1、3、4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1、3、4−オキサジアゾール、2、5−ビス(1−ナフチル)−1、3、4−オキサジアゾール、1、4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2、5−ビス(1−ナフチル)−1、3、4−トリアゾール、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1、2、4−トリアゾール等があるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
発光材料およびドープ材料としては、公知の緑、赤色の4−ジシアノメチレン−2メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリン)−4H−ピラン(DCM)等のジシアニン系色素;1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1、3−ブタジエニル)−ピリジウム−パーコラレイト(ピリジン1)等のピリジン系材料、ローダミン系のキサンテン系材料;他にオキサジン系や、クマリン色素、アクリジン色素、その他の縮合芳香族環材料も利用できる。また、青色の発光材料およびドープ材料を用いることもできる。青色発光材料としては、オキサザール金属錯体、ジスチリルベンゼン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アゾメチン亜鉛錯体、アルミニウム錯体を用いることができ、必要に応じて,青色蛍光色素をドープすることも可能である。青色ドープ材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4-メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及びこれらの発光性化合物からなる基を分子内の一部に有するものを挙げられる。
【0030】
(多孔質材部)
多孔質材部140は、図3に示すように、成膜材料収容部120と蒸着源の開口部150との間に配置される。具体的には、多孔質材部140は、成膜材料収容部120に収容された成膜材料と離れて配置されていてもよく、或いは、成膜材料の表面に載置されていてもよい。多孔質材部140が成膜材料と離れて配置される場合には、空隙130が存在する。なお、空隙130が大きすぎると、多孔質材部140を加熱させた場合に、成膜材料を適切に加熱することができないため、空隙130は大きくないこと、例えば直径10cmの大きさの容器である場合、多孔質材部140と成膜材料との距離は15mm以下であることが好ましい。
【0031】
多孔質材部140が成膜材料に載置されるとは、成膜材料が固体材料である場合には、材料表面に多孔質材部140が接触して置かれた状態のことをいう。また、成膜材料が液体材料である場合には、材料表面に多孔質材部140が浮いた状態、または、多孔質材部140の下部が成膜材料の中に沈むとともに、残りの部分が材料表面より上に浮かんだ状態のことをいう。
【0032】
多孔質材部140は、成膜材料収容部120と蒸着源の開口部150との間に適切に固定され得る。固定方法は、その機能が妨げられない範囲において、任意に選択することが可能である。具体的には、多孔質材部の周辺に穴を開け、耐熱性の高い金属ネジを用いて各部分と隙間がないように止めるか、蒸着源と多孔質材部自体にネジを加工し、ネジをあわせて止めることが挙げられる。この場合、多孔質材部140が容器110内部において高さ調節が可能となるように装着されていてもよい。また、多孔質材部140を容器110に固定せずに、成膜材料の表面に載置してもよい。さらに、多孔質材部140は、容器110の内部において、回転可能に構成されてもよい。
【0033】
多孔質材部140の形状は、容器110の内壁と多孔質材部140の間に空隙が形成されないような形状であれば、特に制限されない。例えば、上記円筒形の容器の場合には、容器の内面に接する円形で且つ、図3に示すような矩形の断面形状を有するものとすることができる。このほか、断面形状は、基板表面に形成する膜の均一性を向上するために、図4(a)に示したように、多孔質材部220の中心領域が厚く、容器内壁へ近づくにつれて厚みが薄くなる楕円形状であってもよい。或いは、多孔質材部の中心領域が薄く、容器内壁へ近づくにつれて厚みが厚くなる凹球面形状を容器開口部側および底部側に有する形状であってもよい(図示せず)。さらに、図4(b)に示したように、多孔質材部225の断面形状が、開口部150側の一辺のみを円弧状にした矩形であってもよい。
【0034】
本発明の蒸着源では、加熱可能な多孔質材部を加熱することにより、成膜材料収容部に収容された蒸着材料のうち表面部分を蒸発または昇華させる。従って、このような蒸発または昇華が可能な多孔質材部であれば、どのようなものでも採用することができるが、特に、以下に説明する2種類の実施形態をとることが好ましい。即ち、多孔質材部が加熱体と多孔質材とから構成されるもの(第一の実施形態)、および、多孔質材部が多孔質材からなり、この多孔質材自体が加熱体となりうるもの(第二の実施形態)である。これらの実施形態を、図5を参照して説明する。図5において、図3と同じ構成部分は、図3と同じ符番を用いた。
【0035】
先ず、第一の実施形態の多孔質材部について図5(a)を参照して説明する。
【0036】
図5(a)に示す、第一の実施形態の蒸着源100は、基本的に図3の蒸着源100と同じであるが、多孔質材部140が加熱体162と多孔質材164とから構成されている。特に制限するわけではないが、加熱体162は、多孔質材164の内部に埋め込まれていることが好ましい。
【0037】
この実施形態において多孔質材164は、電気絶縁性材料からできており、特に耐熱性の材料で構成されていていることが好ましい。具体的には、アルミナ(Al2O3)、ベリリア(BeO)、セラミクス材料などを挙げることができる。多孔質材の製造方法は、当技術分野で公知の方法を用いて製造することができる。例えば、特許文献4に開示された製法を用いることができる。具体的には、多孔質材は、金属粉末とバインダから構成されるMIM原料に気孔形成材を添加し、成形、脱脂・焼結により調製することができる。
【0038】
加熱体が埋め込まれた多孔質材は、例えば上記多孔質体により加熱体を挟持することで調製することができる。
【0039】
なお、本明細書において、多孔質材とは、その内部に無数の微細な孔(細孔)を有する固体物質をいう。孔は1マイクロメートルから数ミリメートル程度の形を有する。多孔質材部は、多くの細孔を有することで表面積が大きくなり、気体や液体分子、イオンなどに対して高い吸着力を持つ一方、これらの分子やイオンなどが通過できる通気性も有する。
【0040】
多孔質材164は、適用する成膜材料の性質に応じて、多孔質材164の密度、孔の平均半径、多孔質粒子の半径を自由に調節することができる。例えば、加熱されにくい成膜材料を用いる場合には、加熱効率を向上させるために、多孔質材164の孔径を大きくするか、または多孔質材164の厚さを薄くしてもよい。その結果、成膜材料は蒸着源の外部に効率良く抜け出ることが可能となる。
【0041】
第一の実施形態において加熱体162は、金属ヒータであることが好ましい。また、金属ヒータは、Ta、Mo、W等の高融点金属で構成されたフィラメント状またはボート状の抵抗加熱用ヒータで構成することができる。さらに金属ヒータは、網状であってもよく、この網状金属ヒータの材料は線材であることが好ましい。線材としては、例えば、鉄線、亜鉛引鉄線、ステンレス線(SUS−304、SUS−316、SUS−316L等)、硬鋼線、アルミニウム線、銅線、真鍮線、青銅線、燐青銅線、ニッケル線、モネルメタル線、チタン線などを挙げることができる。線材を所定の形状に成形する場合、成形型の硬さとの関係が問題となることがあるがその関係は、ビッカース硬さが、成形型よりも小さいことが好ましい。銅合金の場合、ビッカース硬さは60〜130程度である。
【0042】
上記例示の中でも、ステンレス製の線材は、延性が大きく好ましい。また、アルミニウム製の線材も軽量性で好ましい。また、チタン製の線材は炭素繊維との電気腐食が起こらないため、強化繊維として炭素繊維を用いる場合に好ましい。
【0043】
線材の線径は0.05〜2mmの細いものが好ましい。この範囲内であると、成形型の動きで線材が容易に変形できるからである。また、線径が2mmを越えると、変形しにくいため成形型が傷付く可能性があるからである。最も好ましい線径は0.5〜1mmの範囲内である。尚、線径はマイクロメーターで測定することができる。
【0044】
金属ヒータが網状である場合の織構造には、平織金網、綾織金網、畳織金網、筵織金網、撚線織金網、簾織金網などがあるが、本発明では、単位面積当たりの線材の交点が多く、方向性の少ない平織金網が好ましい。また、綾織金網も、平織金網より形状追従性が大きくて、金網を複雑形状に変形させる必要がある場合に好ましい織構造である。金網のメッシュ(25.4mm間の目の数、JIS−G3555参照)が2〜20の金網が特に好ましい。
【0045】
次に、第二の実施形態について、図5(b)を参照して説明する。
【0046】
図5(b)に示す蒸着源100は、基本的に上記図5(a)に示す蒸着源と同様の構成を有するが、加熱可能な多孔質材部170(図3の多孔質材部140)が多孔質材からなり、この多孔質材自体が加熱体となり得るものである。
【0047】
本実施形態における多孔質材部170の例には、それ自体が加熱体となるため、導電性材料から構成される多孔質体を挙げることができる。導電性材料は、金属であることが好ましい。例えば、好適な金属は、Fe、Alなどである。
【0048】
多孔質材部170が、金属多孔質材の場合の製造方法は、当技術分野で公知の方法を用いて製造することができる。例えば、特許文献5に開示された製法を用いることができる。具体的には、分散媒と、平均粒径10μm以下の金属粉末と、アニオン系分散剤とを含むスラリーを、所定の発泡樹脂フォームに塗布浸透させた後、乾燥させて前駆体を形成し、次いで、該前駆体の前記発泡樹脂フォームを消失させ、該金属粉末を焼結させて金属多孔質体を形成する。
【0049】
あるいは、多孔質材部170は、線状金属を、所望の微細な孔が形成されるように不定形状に絡ませた金属多孔質材、例えば、金属たわしの形状のものであって、多孔質部材部170に適した所望の形状を有するものであってもよい。なお、線材の例は上述した通りである。
【0050】
次に、本発明の別の形態について説明する。上記の形態では成膜材料収容部120と蒸着源の開口部150との間に多孔質材部140が1つ配置された場合について説明したが、別の実施形態として、図6に示したように、多孔質材部140と蒸着源の開口部150との間に、さらに加熱可能な多孔質材部140が配置されていてもよい。
【0051】
本発明の蒸着源は、種々の形態で利用可能である。例えば、ポイントソースまたはラインソースに適用することができる。なお本明細書において、ポイントソースとは、円形蒸着源をいい、ラインソースとは、長方形蒸着源をいう。
【0052】
特に、本発明の蒸着源は、有機EL素子を構成する有機材料、すなわち、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、および電子輸送層の材料、ならびに発光材料およびドープ材料を好適に使用することができる。その結果、上述の材料を使用した場合であっても蒸着を良好に実施することが可能となり、高品質で信頼性の高い有機EL素子を作製することができる。
【0053】
次に成膜材料を被蒸着基板に成膜させる方法について説明する。
【0054】
本発明の第二は、本発明の第一の蒸着源を用いて、成膜材料を被蒸着基板に成膜させる方法に関する。
【0055】
具体的には、本発明の成膜方法は、(a)成膜材料を収容した蒸着源を準備する工程と、(b)該成膜材料を加熱して、蒸発させ、被蒸着基板に該成膜材料を成膜する工程とを含み、蒸着源として上述の本発明の蒸着源を用いることを特徴とする。図7は、本発明の成膜方法に使用する蒸着装置300の一例を示した概略図である。以下、この概略図を適宜参照して成膜方法を説明する。
【0056】
(a)の工程は、成膜材料を収容した蒸着源100を準備する工程である。具体的には、第一の発明で説明した蒸着源100の成膜材料収容部120に、所定の成膜材料を収容し、この蒸着源を蒸着装置300に設置する。なお、蒸着源100、成膜材料の詳細は、第一の発明で説明したとおりである。
【0057】
(b)の工程は、成膜材料を加熱して、蒸発させ、被蒸着基板200に成膜材料を成膜する工程である。具体的には、先ず、蒸着源100の多孔質材部140に通電することにより、多孔質材部を一定の温度にまで加熱する。この多孔質材部の熱により、成膜材料収容部120内に収容された成膜材料の表面が所定の温度にまで加熱され、成膜材料が蒸発または昇華して、蒸気流が発生する。次いで、この蒸気流は、多孔質材部140、開口部150を通過し、蒸着源100から抜け出る。蒸着源100を抜け出た蒸気流は、成膜用マスク(図示せず)の開口を透過して基板200の成膜面に到達し、該成膜面に堆積して薄膜を形成する。薄膜は、成膜用マスクのマスクパターンに応じて、基板200の所望の領域に形成される。また成膜時には、膜厚モニタ210により薄膜の膜厚検出を行い、その検出値に基づいて成膜レートを制御することができる。
【0058】
多孔質材部140の加熱温度は、成膜材料により異なるが、例えば、150〜600℃である。ここで、本発明の蒸着源100による成膜材料の加熱では、成膜材料の表面のみを蒸発または昇華温度まで加熱すればよく、成膜材料全体をほぼ均一な温度に加熱する必要がない。したがって、加熱に要する熱量が低減されて加熱効率の向上が図られる。また、成膜材料の表面の加熱状態は、多孔質材部140の温度を調節することにより容易に制御することができるため、成膜効率の向上が図られるとともに、成膜レートの制御を容易にかつ精度よく行うことが可能となる。
【0059】
なお、真空蒸着を実施する場合には、最初に、真空ポンプ(図示せず)を稼動して蒸着装置の内部を真空に保ってから、多孔質材部140を加熱して、成膜材料の蒸気流を発生させればよい。真空度は、成膜材料により異なるが、10-2〜10-7Paが好ましい。
【0060】
成膜レートは、特に制限するわけでないが、0.001〜10nm/sが好ましい。
【0061】
被蒸着基板には、例えば、ガラス基板等が用いられる。
【0062】
膜厚モニタは、従来構造のモニタを用いることができる。
【0063】
本発明の成膜方法では、上記の本発明の蒸着源を用いて成膜することにより、被蒸着基板に形成される膜厚が均一になる。これは、本発明の蒸着源が以下の作用効果を有することによる。即ち、本発明の蒸着源100では、加熱により発生させた成膜材料の蒸気流が、多孔質材部140に進入し、多孔質材部140内で多方向に分散し、蒸着装置内で均一な蒸気流が形成され、結果として、被蒸着基板に形成される膜厚が均一になる。
【0064】
以下、この蒸気流の多孔質材部140での流れを、図8を参照して詳細に説明する。図8は、多孔質材部140の拡大図であり、その多孔質材部140を通過する蒸気流の流れを示す状態図である。図8では、多孔質材部140を構成している多孔質材の多孔質粒子400とその粒子間に存在する細孔410、および多孔質材部140に進入する蒸気流Xと多孔質材部140から抜け出る蒸気流Yがそれぞれ示されている。
【0065】
図8に示すように、成膜材料を加熱することにより発生した蒸気流Xは、多孔質材部140の細孔410内に進入する。細孔410は、不規則な構造および大きさを有するため、成膜材料側420から容器の開口部側430に向けた直線状の貫通孔を有することがない。このため、多孔質材部140に進入した蒸気流Xは、図8の矢印で示したように、細孔410内を多方向に分散し、上昇する。最終的に蒸気流Xは、多方向に分散した状態を維持したまま、蒸気流Yとして多孔質材部140から多方向に抜け出る。
【0066】
このように、多孔質材部140から多方向に抜け出た蒸気流Yは、図9に示すように、蒸着源から基板200面全体に均一に到達して、均一な膜を形成することが可能となる。
【0067】
本発明ではさらに、成膜材料の加熱は、多孔質材部140の加熱により行うため、加熱により発生した成膜材料の蒸気流Xが多孔質材部140内を通過する際、冷却されて多孔質材部内に堆積して、多孔質材の細孔を閉塞することがない。
【0068】
以上説明したとおり、本発明の蒸着方法は、形成される膜厚が均一であり、成膜効率が高く、さらに種々の成膜材料を適用することが可能である。したがって、本発明は様々な用途に適用可能であり、特に有機EL素子の製造に好適であり、特性の安定した有機EL素子を提供することができる。
【実施例】
【0069】
以下に本発明を実施例に従ってさらに詳細に説明する。
【0070】
(実施例1)
本実施例では、蒸着源100として図5(a)に示したものを用いた。また、蒸着装置300の概略は、図7に示した通りである。蒸着装置300(真空チャンバー)の直径は1mであり、蒸着源100の上面と基板200との距離は35cmであった。基板200はガラス基板を用い、その大きさは200×200mm2であった。蒸着源100は、内部直径が8cmの円筒形であり、多孔質材部140と成膜材料との距離は1cmであった。多孔質材164は、厚さが12mmのアルミナであり、多孔質材164中にはモリブデン線から形成した網状の加熱ヒータ162を埋め込んだものを用いた。モリブデン線の直径は0.5mmであり、網の開目は2×2mmであった。280℃の定温加熱を行いながら、真空度4×10-5Pa以下、成膜速度0.3nm/secで成膜材料の蒸着を行った。成膜材料は、有機EL材料であるAlq(アルミキレート)を使用した。
【0071】
100nmの膜厚を目標値として設定して、成膜を行った。その結果、平均膜厚が99.5nmであり、面内最大膜厚偏差は2%以下であった。ここで、最大面内膜厚偏差は、式:(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚により算出した。
【0072】
(実施例2)
本実施例は、下記に記載する蒸着条件を除いて、実施例1と同様な方法により成膜を行った。
【0073】
基板200の大きさを200×200mm2から370×470mm2に変更した。また、蒸着源100は、内部直径が9cmのものを使用した。なお、多孔質材部140は、図4(b)に示したように、その断面形状が開口部150側の一辺のみを円弧状にした矩形のものを用いた。具体的には、多孔質材の直径が蒸着源の内部直径と同じ9cmであり、図4(b)に示したエッジ部Aの長さが2cmであり、多孔質材の中心部の長さBが5cmである形状のものを用いた。多孔質材の材質はSiCである。また、多孔質材部140中にはモリブデン線から形成した網状の加熱ヒータを埋め込んだものを用いた。加熱ヒータの網の開目は8×8mmであった。加熱ヒータの温度は165℃であった。
【0074】
100nmの膜厚を目標値として設定して、成膜を行った結果、平均膜厚が99.8nmであり、面内最大膜厚偏差は5%以下であった。
【0075】
(実施例3)
上記実施例2と同様な蒸着条件で成膜を行った。但し、有機EL材料は、α―NPDを用い、加熱ヒータの温度は100℃を採用した。
【0076】
100nmの膜厚を目標値として設定して成膜を行った結果、平均膜厚は99.2nmであった。そして面内最大膜厚偏差は5%以下であった。
【0077】
(実施例4)
本実施例では、図5(b)に示されるような多孔質材自体が加熱体となる多孔質材部170を備える蒸着源100を用いた。多孔質材部170には、厚さが12mmの鉄製たわしを用いた。その他の蒸着源100の構成は、実施例1で用いた蒸着源100と同様である。また、蒸着条件は、実施例1に記載の通りである。
【0078】
100nmの膜厚を目標値として設定して、成膜を行った。その結果、平均膜厚が99.3nmであり、面内最大膜厚偏差は4%以下であった。
【0079】
(比較例1)
本比較例では、本発明の蒸着源100の代わりに、特許文献3で開示された図1に示すような蒸着用ルツボ10を用い、熱容量の大きい物質20として平均直径1mmのSiN粒子を用いた。その他については、実施例1と同様の蒸着条件で、成膜を実施した。
【0080】
100nmの膜厚を目標値として設定して成膜を行った結果、平均膜厚95nmであり、面内最大膜厚偏差は35%以下であった。
【0081】
(比較例2)
本比較例では、実施例1で用いた蒸着源100において、加熱ヒータ162を装備しない多孔質材を用いたことと、成膜材料としてAlqとNPDの2種類を使用したことを除いて、実施例1と同様の蒸着条件で成膜を実施した。なお、成膜材料の加熱は、蒸着源の底部に装備された加熱ヒータにより加熱をして、蒸着を実施した。
【0082】
成膜を行った結果、蒸着源の上部に設置された多孔質材に成膜材料が閉塞してしまい、適切に成膜することが出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】従来の蒸着源の概略を示す断面図である。
【図2】従来の蒸着源を用いて成膜する場合の蒸気流を示す概略図である。
【図3】本発明の蒸着源の概略を示す断面図である。
【図4】(a)および(b)は本発明の別の蒸着源の概略を示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の蒸着源の第一の実施形態の概略を示す断面図であり、(b)は本発明の蒸着源の第二の実施形態の概略を示す断面図である。
【図6】本発明の別の態様の蒸着源の概略を示す断面図である。
【図7】本発明の蒸着源を含む蒸着装置を用いて成膜を行う場合の蒸着方法を説明するための図である。
【図8】本発明の蒸着源を含む蒸着装置を用いて成膜する場合の多孔質材部内部の蒸気の流れを説明するための概略図である。
【図9】本発明の蒸着源を含む蒸着装置を用いて成膜する場合の装置内の蒸発流の状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0084】
100 蒸着源
110 容器
120 成膜材料収容部
140、170、220、225 加熱可能な多孔質材部
150 開口部
160 容器底部
162 加熱体
164 多孔質材
200 基板
210 膜厚モニタ
300 蒸着装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜材料を蒸着させるための蒸着源、特に有機EL素子の製造に使用される蒸着源に関する。さらに、本発明は、該蒸着源を使用する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種情報産業機器の表示ディスプレイや発光素子等においては、薄型化が図られるとともに視認性や耐衝撃性等に優れることから、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略す)の利用が進んでいる。有機EL素子は、基板上に一対の電極に挟持された有機層を含む構成を有する。有機層は、機能の異なる複数の層が積層されており、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を含む。
【0003】
このような有機EL素子の有機層は、例えば、蒸着法により成膜される。蒸着による成膜の際には、成膜材料である有機材料を坩堝等の容器内に充填し、真空状態で容器ごとに加熱して有機材料を蒸発させることにより成膜を行う。加熱方法としては、抵抗加熱、電子ビーム加熱、高周波加熱、レーザ加熱等が用いられる。
【0004】
例えば、抵抗加熱では、容器の外周にヒータ等の熱源が配置され、この熱源から発せられた熱が容器に伝達される。そして、容器を介して、容器内に収容された有機材料に熱が伝達されて有機材料が加熱される。このような有機材料の加熱時には、容器の内壁に近い領域の有機材料が先に加熱され、その後、内側に向かって徐々に加熱が進んでいく。そして、有機材料全体が所定温度に近い温度に昇温されると、容器内の有機材料表面、すなわち、被成膜基板に対向する面である有機材料表面から有機材料が蒸発または昇華して蒸着が行われる。
【0005】
ここで、上記のような有機材料の蒸着による成膜では、容器内の有機材料全体が所定温度に近づくと有機材料の蒸発または昇華が開始するので、有機材料の蒸発または昇華に要する熱量が多くなり、加熱に時間を要する。それゆえ、この方法による蒸着には、加熱効率の向上が求められる。また、かかる方法では、容器内における有機材料の温度分布が不均一となりやすく、有機材料の加熱状態の調整が困難である。それゆえ、有機材料の蒸発量または昇華量の制御が困難となり、その結果、成膜レートの制御が困難になるとともに、成膜される膜の特性の劣化を招くおそれがある。それゆえ、膜の生産性および品質の向上を図るには、有機材料の良好な加熱制御が求められる。
【0006】
上記要求を満たす方法の一つに、例えば、容器の上下に熱源としてヒータを配置するとともに、容器内に充填された成膜材料の表面近傍に金属板を配設する方法がある(特許文献1参照)。
【0007】
また、成膜材料を収容する成膜材料収容部と、該成膜材料収容部に収容された成膜材料の表面に配置されて発熱するとともに、成膜材料の表面に連通する貫通孔を有する加熱体とを備えた成膜源およびそれを用いた成膜方法も開示されている(特許文献2参照)。
【0008】
さらに、図1に示すように、ルツボ容器10と、該容器内に含有された昇華性材料18および熱容量の大きい物質20により蒸着を行う成膜方法、並びに、ルツボ容器10の上部の首部14と、該首部14に設けられた平板16とに特徴を有する昇華性材料を蒸着させるための蒸着用ルツボおよびそれを用いた成膜方法も開示されている(特許文献3参考)。
【0009】
【特許文献1】特開昭58−19471号公報
【特許文献2】特開2006−2218号公報
【特許文献3】特開2004−152698号公報
【特許文献4】特開2007−51033号公報
【特許文献5】特開2007−177280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1における金属板からの伝熱による加熱は、成膜材料を均一に加熱するための補助的なものである。したがって、上下に配設されたヒータにより成膜材料全体を均一に加熱する必要があり、成膜材料の蒸発または昇華に多くの熱量を要する。また、成膜材料の加熱状態の調整が困難であるため、成膜材料の温度分布に不均一が生じやすく、成膜レートを精度よく制御することが困難である。さらに、成膜材料全体を均一に加熱しようとすると、成膜材料表面以外の部分においても蒸発または昇華が起こり、これが膜質等に悪影響を及ぼす可能性もある。例えば、数百nmレベルといった高精度の成膜技術が要求される有機EL素子の製造方法において、成膜レートの制御が不十分であるか、材料片の混入等の問題が生じると、有機EL素子の生産性が低下するとともに、製造された素子においてリーク電流等が発生し、素子特性が劣化することもある。
【0011】
また、特許文献2に開示の方法は、大面積の基板上に膜を形成する場合、膜厚を均一にすることが困難である。すなわち、図2に示すように、成膜材料収容部32に収容された成膜材料の蒸気流Xは、成膜源30の貫通孔34を介して抜け出るため、基板36の貫通孔34の真上に位置する面には膜が形成し易いが、それ以外の面には膜が形成し難い。その結果、基板36上に形成される膜の膜厚が不均一となり易い。この問題を克服するために、蒸着源30の寸法を基板36の寸法に併せて大きくするか、または蒸着源30と基板36との距離を大きくして蒸気流Xを基板全面に均一に到達させることが考えられる。しかしながら、この場合には、蒸着装置自体が大きくなり、蒸着装置のコストが増加するという新たな問題が起こり得る。
【0012】
さらに、特許文献3に記載の方法では、昇華性材料が好適な成膜材料であるため、適用可能な成膜材料に制限がある一方、マザーガラスの大面積化、たとえば、第三世代(550×650mm)に対応できない欠点もある。
【0013】
したがって、本発明の目的は、上述の課題を解決すべく、形成される膜厚が均一であり、成膜効率が高く、さらに種々の成膜材料を適用することが可能な蒸着源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一は、開口部を有する容器と、該容器内に配置された成膜材料を収容する成膜材料収容部と、該成膜材料収容部と該蒸着源の開口部との間に配置される、加熱可能な多孔質材部とを備えることを特徴とする蒸着源に関する。この蒸着源では、多孔質材部は加熱体と多孔質材とから構成される場合と、多孔質材から構成され、この多孔質材自体が発熱体となる場合の2つの態様が包含される。前記多孔質材部は、1または複数設けることができる。
【0015】
本発明の第二は、第一の蒸着源を用いて成膜材料を被蒸着基板に堆積させる方法に関する。具体的には、本発明の方法は、(a)成膜材料を収容した蒸着源を準備する工程と、(b)該成膜材料を加熱して、蒸発させ、被蒸着基板に該成膜材料を堆積する工程とを含み、上記蒸着源が、上記本発明の蒸着源であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蒸着源および成膜方法は、形成される膜厚が均一であり、成膜効率が高く、さらに種々の成膜材料に適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。以下の説明において適宜図面を参照するが、図面に記載された態様は本発明の例示であり、本発明はこれらの図面に記載された態様に制限されない。
【0018】
先ず、本発明の蒸着源について説明する。
【0019】
本発明の蒸着源は、開口部を有する容器と、この容器内に配置された成膜材料を収容する成膜材料収容部と、この成膜材料収容部と蒸着源の開口部との間に配置される、加熱可能な多孔質材部とを備える。以下に本発明の蒸着源の具体例を、図3を参照して説明する。図3は、蒸着源の概略断面図である。
【0020】
本発明の蒸着源は、図3に示すように、開口部150を有する容器110と、この容器内の成膜材料を収容する成膜材料収容部120と、加熱可能な多孔質材部140とを含む。成膜材料収容部120は、通常、容器110の底壁部160に接して配置される。
【0021】
以下に各構成要素について説明する。
【0022】
(容器)
本発明の蒸着源100の容器110は、どのような形状であってもよいが、上端が開口され下端が底壁で封止された円筒形状であることが好ましい。容器の寸法は、蒸着の対象である被蒸着材料により異なるが、例えば、上記円筒形状である場合、直径2cm〜20cm、20cm3〜3000cm3の容積を有することができる。
【0023】
蒸着源100の容器110を構成する材料は、該容器に収容される成膜材料よりも熱伝導率が高く、成膜材料が蒸発する温度で、蒸発または分解しない程度に高い融点を有する必要がある。具体的には、例えば、W、Ta、Mo等の高融点金属、Au、Ag、Au等の重金属または、Ni、Fe、Co−Ni合金、ステンレス鋼、黒鉛、TiN等の金属およびセラミックス等を挙げることができる。またはアルミナ(Al2O3)、ベリリア(BeO)、炭化ケイ素(SiC)などの耐熱性の強い化合物も利用できる。特に、Au、Ag、Au等の重金属を使用することにより腐食性の高いルイス酸のようなアクセプタドーピング材料の蒸着が可能となる。
【0024】
(成膜材料収容部)
蒸着源100の成膜材料収容部120は、成膜材料を収納するための空間部分をいう。成膜材料収容部120の寸法および形状は、成膜材料を適切に収納することができれば特に制限されない。例えば、上記円筒形状の容器の場合、形状を同様の円筒形状とすることができ、その場合、20cm3〜3000cm3の容積を有することができる。
【0025】
本発明の蒸着源100は、成膜材料収容部120に成膜材料を収容して蒸着を行う。成膜材料は、特に制限されないが、加熱により蒸発または昇華する材料、例えば、昇華性材料、溶融性材料、半昇華性材料などが含まれる。このような成膜材料は、固体であってもよく、または、液体であってもよい。
【0026】
特に、本発明の蒸着源100は、有機EL素子を構成する有機材料、すなわち、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、および電子輸送層の材料、ならびに発光材料およびドープ材料を成膜材料として用いることができる。これらの材料は、各種文献に公開されている。
【0027】
正孔注入層および正孔輸送層を構成する材料としては、正孔を注入、輸送する能力を有し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。正孔注入層及び正孔輸送層に用いられる材料として、公知のフェニルアミン多量体材料系のN、N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1、1’−ビフェニル)−4、4’−ジアミン;N、N−ジフェニル−N、N´−(3−メチルフェニル)−1、1´−ビフェニル−4、4´−ジアミン;1、1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;4、4´−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル等の化合物、ヒドラゾン化合物、シラザン化合物、キナクリドン化合物、フタロシアニン誘導体などを用いることができる。
【0028】
電子注入層及び電子輸送層を構成する材料としては、電子を輸送する能力を有し、それぞれの材料を組み合わせることにより、陰極からの電子注入効果を有するとともに、有機発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、さらに正孔の電子輸送層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。具体的には、フルオレン、バソフェナントロリン、バソクプロイン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、アントラキノジメタン等やそれらの化合物、金属錯体化合物もしくは含窒素五員環誘導体が好ましい。金属錯体化合物の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリ(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム等があるが、これらに限定されるものではない。また含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2、5−ビス(1−フェニル)−1、3、4−オキサゾール、2、5−ビス(1−フェニル)−1、3、4−チアゾール、2、5−ビス(1−フェニル)−1、3、4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1、3、4−オキサジアゾール、2、5−ビス(1−ナフチル)−1、3、4−オキサジアゾール、1、4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2、5−ビス(1−ナフチル)−1、3、4−トリアゾール、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1、2、4−トリアゾール等があるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
発光材料およびドープ材料としては、公知の緑、赤色の4−ジシアノメチレン−2メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリン)−4H−ピラン(DCM)等のジシアニン系色素;1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1、3−ブタジエニル)−ピリジウム−パーコラレイト(ピリジン1)等のピリジン系材料、ローダミン系のキサンテン系材料;他にオキサジン系や、クマリン色素、アクリジン色素、その他の縮合芳香族環材料も利用できる。また、青色の発光材料およびドープ材料を用いることもできる。青色発光材料としては、オキサザール金属錯体、ジスチリルベンゼン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アゾメチン亜鉛錯体、アルミニウム錯体を用いることができ、必要に応じて,青色蛍光色素をドープすることも可能である。青色ドープ材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4-メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及びこれらの発光性化合物からなる基を分子内の一部に有するものを挙げられる。
【0030】
(多孔質材部)
多孔質材部140は、図3に示すように、成膜材料収容部120と蒸着源の開口部150との間に配置される。具体的には、多孔質材部140は、成膜材料収容部120に収容された成膜材料と離れて配置されていてもよく、或いは、成膜材料の表面に載置されていてもよい。多孔質材部140が成膜材料と離れて配置される場合には、空隙130が存在する。なお、空隙130が大きすぎると、多孔質材部140を加熱させた場合に、成膜材料を適切に加熱することができないため、空隙130は大きくないこと、例えば直径10cmの大きさの容器である場合、多孔質材部140と成膜材料との距離は15mm以下であることが好ましい。
【0031】
多孔質材部140が成膜材料に載置されるとは、成膜材料が固体材料である場合には、材料表面に多孔質材部140が接触して置かれた状態のことをいう。また、成膜材料が液体材料である場合には、材料表面に多孔質材部140が浮いた状態、または、多孔質材部140の下部が成膜材料の中に沈むとともに、残りの部分が材料表面より上に浮かんだ状態のことをいう。
【0032】
多孔質材部140は、成膜材料収容部120と蒸着源の開口部150との間に適切に固定され得る。固定方法は、その機能が妨げられない範囲において、任意に選択することが可能である。具体的には、多孔質材部の周辺に穴を開け、耐熱性の高い金属ネジを用いて各部分と隙間がないように止めるか、蒸着源と多孔質材部自体にネジを加工し、ネジをあわせて止めることが挙げられる。この場合、多孔質材部140が容器110内部において高さ調節が可能となるように装着されていてもよい。また、多孔質材部140を容器110に固定せずに、成膜材料の表面に載置してもよい。さらに、多孔質材部140は、容器110の内部において、回転可能に構成されてもよい。
【0033】
多孔質材部140の形状は、容器110の内壁と多孔質材部140の間に空隙が形成されないような形状であれば、特に制限されない。例えば、上記円筒形の容器の場合には、容器の内面に接する円形で且つ、図3に示すような矩形の断面形状を有するものとすることができる。このほか、断面形状は、基板表面に形成する膜の均一性を向上するために、図4(a)に示したように、多孔質材部220の中心領域が厚く、容器内壁へ近づくにつれて厚みが薄くなる楕円形状であってもよい。或いは、多孔質材部の中心領域が薄く、容器内壁へ近づくにつれて厚みが厚くなる凹球面形状を容器開口部側および底部側に有する形状であってもよい(図示せず)。さらに、図4(b)に示したように、多孔質材部225の断面形状が、開口部150側の一辺のみを円弧状にした矩形であってもよい。
【0034】
本発明の蒸着源では、加熱可能な多孔質材部を加熱することにより、成膜材料収容部に収容された蒸着材料のうち表面部分を蒸発または昇華させる。従って、このような蒸発または昇華が可能な多孔質材部であれば、どのようなものでも採用することができるが、特に、以下に説明する2種類の実施形態をとることが好ましい。即ち、多孔質材部が加熱体と多孔質材とから構成されるもの(第一の実施形態)、および、多孔質材部が多孔質材からなり、この多孔質材自体が加熱体となりうるもの(第二の実施形態)である。これらの実施形態を、図5を参照して説明する。図5において、図3と同じ構成部分は、図3と同じ符番を用いた。
【0035】
先ず、第一の実施形態の多孔質材部について図5(a)を参照して説明する。
【0036】
図5(a)に示す、第一の実施形態の蒸着源100は、基本的に図3の蒸着源100と同じであるが、多孔質材部140が加熱体162と多孔質材164とから構成されている。特に制限するわけではないが、加熱体162は、多孔質材164の内部に埋め込まれていることが好ましい。
【0037】
この実施形態において多孔質材164は、電気絶縁性材料からできており、特に耐熱性の材料で構成されていていることが好ましい。具体的には、アルミナ(Al2O3)、ベリリア(BeO)、セラミクス材料などを挙げることができる。多孔質材の製造方法は、当技術分野で公知の方法を用いて製造することができる。例えば、特許文献4に開示された製法を用いることができる。具体的には、多孔質材は、金属粉末とバインダから構成されるMIM原料に気孔形成材を添加し、成形、脱脂・焼結により調製することができる。
【0038】
加熱体が埋め込まれた多孔質材は、例えば上記多孔質体により加熱体を挟持することで調製することができる。
【0039】
なお、本明細書において、多孔質材とは、その内部に無数の微細な孔(細孔)を有する固体物質をいう。孔は1マイクロメートルから数ミリメートル程度の形を有する。多孔質材部は、多くの細孔を有することで表面積が大きくなり、気体や液体分子、イオンなどに対して高い吸着力を持つ一方、これらの分子やイオンなどが通過できる通気性も有する。
【0040】
多孔質材164は、適用する成膜材料の性質に応じて、多孔質材164の密度、孔の平均半径、多孔質粒子の半径を自由に調節することができる。例えば、加熱されにくい成膜材料を用いる場合には、加熱効率を向上させるために、多孔質材164の孔径を大きくするか、または多孔質材164の厚さを薄くしてもよい。その結果、成膜材料は蒸着源の外部に効率良く抜け出ることが可能となる。
【0041】
第一の実施形態において加熱体162は、金属ヒータであることが好ましい。また、金属ヒータは、Ta、Mo、W等の高融点金属で構成されたフィラメント状またはボート状の抵抗加熱用ヒータで構成することができる。さらに金属ヒータは、網状であってもよく、この網状金属ヒータの材料は線材であることが好ましい。線材としては、例えば、鉄線、亜鉛引鉄線、ステンレス線(SUS−304、SUS−316、SUS−316L等)、硬鋼線、アルミニウム線、銅線、真鍮線、青銅線、燐青銅線、ニッケル線、モネルメタル線、チタン線などを挙げることができる。線材を所定の形状に成形する場合、成形型の硬さとの関係が問題となることがあるがその関係は、ビッカース硬さが、成形型よりも小さいことが好ましい。銅合金の場合、ビッカース硬さは60〜130程度である。
【0042】
上記例示の中でも、ステンレス製の線材は、延性が大きく好ましい。また、アルミニウム製の線材も軽量性で好ましい。また、チタン製の線材は炭素繊維との電気腐食が起こらないため、強化繊維として炭素繊維を用いる場合に好ましい。
【0043】
線材の線径は0.05〜2mmの細いものが好ましい。この範囲内であると、成形型の動きで線材が容易に変形できるからである。また、線径が2mmを越えると、変形しにくいため成形型が傷付く可能性があるからである。最も好ましい線径は0.5〜1mmの範囲内である。尚、線径はマイクロメーターで測定することができる。
【0044】
金属ヒータが網状である場合の織構造には、平織金網、綾織金網、畳織金網、筵織金網、撚線織金網、簾織金網などがあるが、本発明では、単位面積当たりの線材の交点が多く、方向性の少ない平織金網が好ましい。また、綾織金網も、平織金網より形状追従性が大きくて、金網を複雑形状に変形させる必要がある場合に好ましい織構造である。金網のメッシュ(25.4mm間の目の数、JIS−G3555参照)が2〜20の金網が特に好ましい。
【0045】
次に、第二の実施形態について、図5(b)を参照して説明する。
【0046】
図5(b)に示す蒸着源100は、基本的に上記図5(a)に示す蒸着源と同様の構成を有するが、加熱可能な多孔質材部170(図3の多孔質材部140)が多孔質材からなり、この多孔質材自体が加熱体となり得るものである。
【0047】
本実施形態における多孔質材部170の例には、それ自体が加熱体となるため、導電性材料から構成される多孔質体を挙げることができる。導電性材料は、金属であることが好ましい。例えば、好適な金属は、Fe、Alなどである。
【0048】
多孔質材部170が、金属多孔質材の場合の製造方法は、当技術分野で公知の方法を用いて製造することができる。例えば、特許文献5に開示された製法を用いることができる。具体的には、分散媒と、平均粒径10μm以下の金属粉末と、アニオン系分散剤とを含むスラリーを、所定の発泡樹脂フォームに塗布浸透させた後、乾燥させて前駆体を形成し、次いで、該前駆体の前記発泡樹脂フォームを消失させ、該金属粉末を焼結させて金属多孔質体を形成する。
【0049】
あるいは、多孔質材部170は、線状金属を、所望の微細な孔が形成されるように不定形状に絡ませた金属多孔質材、例えば、金属たわしの形状のものであって、多孔質部材部170に適した所望の形状を有するものであってもよい。なお、線材の例は上述した通りである。
【0050】
次に、本発明の別の形態について説明する。上記の形態では成膜材料収容部120と蒸着源の開口部150との間に多孔質材部140が1つ配置された場合について説明したが、別の実施形態として、図6に示したように、多孔質材部140と蒸着源の開口部150との間に、さらに加熱可能な多孔質材部140が配置されていてもよい。
【0051】
本発明の蒸着源は、種々の形態で利用可能である。例えば、ポイントソースまたはラインソースに適用することができる。なお本明細書において、ポイントソースとは、円形蒸着源をいい、ラインソースとは、長方形蒸着源をいう。
【0052】
特に、本発明の蒸着源は、有機EL素子を構成する有機材料、すなわち、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、および電子輸送層の材料、ならびに発光材料およびドープ材料を好適に使用することができる。その結果、上述の材料を使用した場合であっても蒸着を良好に実施することが可能となり、高品質で信頼性の高い有機EL素子を作製することができる。
【0053】
次に成膜材料を被蒸着基板に成膜させる方法について説明する。
【0054】
本発明の第二は、本発明の第一の蒸着源を用いて、成膜材料を被蒸着基板に成膜させる方法に関する。
【0055】
具体的には、本発明の成膜方法は、(a)成膜材料を収容した蒸着源を準備する工程と、(b)該成膜材料を加熱して、蒸発させ、被蒸着基板に該成膜材料を成膜する工程とを含み、蒸着源として上述の本発明の蒸着源を用いることを特徴とする。図7は、本発明の成膜方法に使用する蒸着装置300の一例を示した概略図である。以下、この概略図を適宜参照して成膜方法を説明する。
【0056】
(a)の工程は、成膜材料を収容した蒸着源100を準備する工程である。具体的には、第一の発明で説明した蒸着源100の成膜材料収容部120に、所定の成膜材料を収容し、この蒸着源を蒸着装置300に設置する。なお、蒸着源100、成膜材料の詳細は、第一の発明で説明したとおりである。
【0057】
(b)の工程は、成膜材料を加熱して、蒸発させ、被蒸着基板200に成膜材料を成膜する工程である。具体的には、先ず、蒸着源100の多孔質材部140に通電することにより、多孔質材部を一定の温度にまで加熱する。この多孔質材部の熱により、成膜材料収容部120内に収容された成膜材料の表面が所定の温度にまで加熱され、成膜材料が蒸発または昇華して、蒸気流が発生する。次いで、この蒸気流は、多孔質材部140、開口部150を通過し、蒸着源100から抜け出る。蒸着源100を抜け出た蒸気流は、成膜用マスク(図示せず)の開口を透過して基板200の成膜面に到達し、該成膜面に堆積して薄膜を形成する。薄膜は、成膜用マスクのマスクパターンに応じて、基板200の所望の領域に形成される。また成膜時には、膜厚モニタ210により薄膜の膜厚検出を行い、その検出値に基づいて成膜レートを制御することができる。
【0058】
多孔質材部140の加熱温度は、成膜材料により異なるが、例えば、150〜600℃である。ここで、本発明の蒸着源100による成膜材料の加熱では、成膜材料の表面のみを蒸発または昇華温度まで加熱すればよく、成膜材料全体をほぼ均一な温度に加熱する必要がない。したがって、加熱に要する熱量が低減されて加熱効率の向上が図られる。また、成膜材料の表面の加熱状態は、多孔質材部140の温度を調節することにより容易に制御することができるため、成膜効率の向上が図られるとともに、成膜レートの制御を容易にかつ精度よく行うことが可能となる。
【0059】
なお、真空蒸着を実施する場合には、最初に、真空ポンプ(図示せず)を稼動して蒸着装置の内部を真空に保ってから、多孔質材部140を加熱して、成膜材料の蒸気流を発生させればよい。真空度は、成膜材料により異なるが、10-2〜10-7Paが好ましい。
【0060】
成膜レートは、特に制限するわけでないが、0.001〜10nm/sが好ましい。
【0061】
被蒸着基板には、例えば、ガラス基板等が用いられる。
【0062】
膜厚モニタは、従来構造のモニタを用いることができる。
【0063】
本発明の成膜方法では、上記の本発明の蒸着源を用いて成膜することにより、被蒸着基板に形成される膜厚が均一になる。これは、本発明の蒸着源が以下の作用効果を有することによる。即ち、本発明の蒸着源100では、加熱により発生させた成膜材料の蒸気流が、多孔質材部140に進入し、多孔質材部140内で多方向に分散し、蒸着装置内で均一な蒸気流が形成され、結果として、被蒸着基板に形成される膜厚が均一になる。
【0064】
以下、この蒸気流の多孔質材部140での流れを、図8を参照して詳細に説明する。図8は、多孔質材部140の拡大図であり、その多孔質材部140を通過する蒸気流の流れを示す状態図である。図8では、多孔質材部140を構成している多孔質材の多孔質粒子400とその粒子間に存在する細孔410、および多孔質材部140に進入する蒸気流Xと多孔質材部140から抜け出る蒸気流Yがそれぞれ示されている。
【0065】
図8に示すように、成膜材料を加熱することにより発生した蒸気流Xは、多孔質材部140の細孔410内に進入する。細孔410は、不規則な構造および大きさを有するため、成膜材料側420から容器の開口部側430に向けた直線状の貫通孔を有することがない。このため、多孔質材部140に進入した蒸気流Xは、図8の矢印で示したように、細孔410内を多方向に分散し、上昇する。最終的に蒸気流Xは、多方向に分散した状態を維持したまま、蒸気流Yとして多孔質材部140から多方向に抜け出る。
【0066】
このように、多孔質材部140から多方向に抜け出た蒸気流Yは、図9に示すように、蒸着源から基板200面全体に均一に到達して、均一な膜を形成することが可能となる。
【0067】
本発明ではさらに、成膜材料の加熱は、多孔質材部140の加熱により行うため、加熱により発生した成膜材料の蒸気流Xが多孔質材部140内を通過する際、冷却されて多孔質材部内に堆積して、多孔質材の細孔を閉塞することがない。
【0068】
以上説明したとおり、本発明の蒸着方法は、形成される膜厚が均一であり、成膜効率が高く、さらに種々の成膜材料を適用することが可能である。したがって、本発明は様々な用途に適用可能であり、特に有機EL素子の製造に好適であり、特性の安定した有機EL素子を提供することができる。
【実施例】
【0069】
以下に本発明を実施例に従ってさらに詳細に説明する。
【0070】
(実施例1)
本実施例では、蒸着源100として図5(a)に示したものを用いた。また、蒸着装置300の概略は、図7に示した通りである。蒸着装置300(真空チャンバー)の直径は1mであり、蒸着源100の上面と基板200との距離は35cmであった。基板200はガラス基板を用い、その大きさは200×200mm2であった。蒸着源100は、内部直径が8cmの円筒形であり、多孔質材部140と成膜材料との距離は1cmであった。多孔質材164は、厚さが12mmのアルミナであり、多孔質材164中にはモリブデン線から形成した網状の加熱ヒータ162を埋め込んだものを用いた。モリブデン線の直径は0.5mmであり、網の開目は2×2mmであった。280℃の定温加熱を行いながら、真空度4×10-5Pa以下、成膜速度0.3nm/secで成膜材料の蒸着を行った。成膜材料は、有機EL材料であるAlq(アルミキレート)を使用した。
【0071】
100nmの膜厚を目標値として設定して、成膜を行った。その結果、平均膜厚が99.5nmであり、面内最大膜厚偏差は2%以下であった。ここで、最大面内膜厚偏差は、式:(最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚により算出した。
【0072】
(実施例2)
本実施例は、下記に記載する蒸着条件を除いて、実施例1と同様な方法により成膜を行った。
【0073】
基板200の大きさを200×200mm2から370×470mm2に変更した。また、蒸着源100は、内部直径が9cmのものを使用した。なお、多孔質材部140は、図4(b)に示したように、その断面形状が開口部150側の一辺のみを円弧状にした矩形のものを用いた。具体的には、多孔質材の直径が蒸着源の内部直径と同じ9cmであり、図4(b)に示したエッジ部Aの長さが2cmであり、多孔質材の中心部の長さBが5cmである形状のものを用いた。多孔質材の材質はSiCである。また、多孔質材部140中にはモリブデン線から形成した網状の加熱ヒータを埋め込んだものを用いた。加熱ヒータの網の開目は8×8mmであった。加熱ヒータの温度は165℃であった。
【0074】
100nmの膜厚を目標値として設定して、成膜を行った結果、平均膜厚が99.8nmであり、面内最大膜厚偏差は5%以下であった。
【0075】
(実施例3)
上記実施例2と同様な蒸着条件で成膜を行った。但し、有機EL材料は、α―NPDを用い、加熱ヒータの温度は100℃を採用した。
【0076】
100nmの膜厚を目標値として設定して成膜を行った結果、平均膜厚は99.2nmであった。そして面内最大膜厚偏差は5%以下であった。
【0077】
(実施例4)
本実施例では、図5(b)に示されるような多孔質材自体が加熱体となる多孔質材部170を備える蒸着源100を用いた。多孔質材部170には、厚さが12mmの鉄製たわしを用いた。その他の蒸着源100の構成は、実施例1で用いた蒸着源100と同様である。また、蒸着条件は、実施例1に記載の通りである。
【0078】
100nmの膜厚を目標値として設定して、成膜を行った。その結果、平均膜厚が99.3nmであり、面内最大膜厚偏差は4%以下であった。
【0079】
(比較例1)
本比較例では、本発明の蒸着源100の代わりに、特許文献3で開示された図1に示すような蒸着用ルツボ10を用い、熱容量の大きい物質20として平均直径1mmのSiN粒子を用いた。その他については、実施例1と同様の蒸着条件で、成膜を実施した。
【0080】
100nmの膜厚を目標値として設定して成膜を行った結果、平均膜厚95nmであり、面内最大膜厚偏差は35%以下であった。
【0081】
(比較例2)
本比較例では、実施例1で用いた蒸着源100において、加熱ヒータ162を装備しない多孔質材を用いたことと、成膜材料としてAlqとNPDの2種類を使用したことを除いて、実施例1と同様の蒸着条件で成膜を実施した。なお、成膜材料の加熱は、蒸着源の底部に装備された加熱ヒータにより加熱をして、蒸着を実施した。
【0082】
成膜を行った結果、蒸着源の上部に設置された多孔質材に成膜材料が閉塞してしまい、適切に成膜することが出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】従来の蒸着源の概略を示す断面図である。
【図2】従来の蒸着源を用いて成膜する場合の蒸気流を示す概略図である。
【図3】本発明の蒸着源の概略を示す断面図である。
【図4】(a)および(b)は本発明の別の蒸着源の概略を示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の蒸着源の第一の実施形態の概略を示す断面図であり、(b)は本発明の蒸着源の第二の実施形態の概略を示す断面図である。
【図6】本発明の別の態様の蒸着源の概略を示す断面図である。
【図7】本発明の蒸着源を含む蒸着装置を用いて成膜を行う場合の蒸着方法を説明するための図である。
【図8】本発明の蒸着源を含む蒸着装置を用いて成膜する場合の多孔質材部内部の蒸気の流れを説明するための概略図である。
【図9】本発明の蒸着源を含む蒸着装置を用いて成膜する場合の装置内の蒸発流の状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0084】
100 蒸着源
110 容器
120 成膜材料収容部
140、170、220、225 加熱可能な多孔質材部
150 開口部
160 容器底部
162 加熱体
164 多孔質材
200 基板
210 膜厚モニタ
300 蒸着装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料を蒸着させるための蒸着源であって、
開口部を有する容器と、
該容器内に配置された前記成膜材料を収容する成膜材料収容部と、
前記成膜材料収容部と前記蒸着源の開口部との間に配置される、加熱可能な多孔質材部とを備えることを特徴とする蒸着源。
【請求項2】
前記多孔質材部が、加熱体と多孔質材から構成されるか、または、加熱体となる多孔質材からなることを特徴とする、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項3】
前記多孔質材部が加熱体と多孔質材から構成される場合には、加熱体が加熱ヒータであることを特徴とする、請求項2に記載の蒸着源。
【請求項4】
前記多孔質材部が加熱体である多孔質材である場合には、多孔質材は金属たわしの形状を有することを特徴とする、請求項2に記載の蒸着源。
【請求項5】
前記多孔質材部が、側方断面で楕円形であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項6】
前記多孔質材部が、前記容器内において高さ調節可能であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項7】
前記多孔質材部が複数配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項8】
前記蒸着源を、ポイントソースまたはラインソースに適用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項9】
前記成膜材料が、昇華性材料、溶融性材料、および半昇華性材料のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項10】
(a)成膜材料を収容した蒸着源を準備する工程と、
(b)前記成膜材料を加熱して、蒸発させ、被蒸着基板に前記成膜材料を堆積する工程
とを含む、被蒸着基板への成膜材料を堆積する方法であって、
前記蒸着源が、請求項1〜9のいずれかに記載のものであることを特徴とする方法。
【請求項1】
成膜材料を蒸着させるための蒸着源であって、
開口部を有する容器と、
該容器内に配置された前記成膜材料を収容する成膜材料収容部と、
前記成膜材料収容部と前記蒸着源の開口部との間に配置される、加熱可能な多孔質材部とを備えることを特徴とする蒸着源。
【請求項2】
前記多孔質材部が、加熱体と多孔質材から構成されるか、または、加熱体となる多孔質材からなることを特徴とする、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項3】
前記多孔質材部が加熱体と多孔質材から構成される場合には、加熱体が加熱ヒータであることを特徴とする、請求項2に記載の蒸着源。
【請求項4】
前記多孔質材部が加熱体である多孔質材である場合には、多孔質材は金属たわしの形状を有することを特徴とする、請求項2に記載の蒸着源。
【請求項5】
前記多孔質材部が、側方断面で楕円形であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項6】
前記多孔質材部が、前記容器内において高さ調節可能であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項7】
前記多孔質材部が複数配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項8】
前記蒸着源を、ポイントソースまたはラインソースに適用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項9】
前記成膜材料が、昇華性材料、溶融性材料、および半昇華性材料のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の蒸着源。
【請求項10】
(a)成膜材料を収容した蒸着源を準備する工程と、
(b)前記成膜材料を加熱して、蒸発させ、被蒸着基板に前記成膜材料を堆積する工程
とを含む、被蒸着基板への成膜材料を堆積する方法であって、
前記蒸着源が、請求項1〜9のいずれかに記載のものであることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−197259(P2009−197259A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37784(P2008−37784)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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