蒸着装置及びスクリーンの製造方法
【課題】表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な蒸着装置を提供する。
【解決手段】表面に凹凸形状が形成されている長尺シートW1における凹凸形状の一部に、蒸着材料Mを選択的に蒸着する蒸着装置であって、長尺シートW1を搬送する搬送部20と、蒸着時において蒸着材料Mを収容し加熱する蒸着源30と、蒸着材料Mの放出方向を制限する放出方向制限部40とを備えることを特徴とする蒸着装置1。
【解決手段】表面に凹凸形状が形成されている長尺シートW1における凹凸形状の一部に、蒸着材料Mを選択的に蒸着する蒸着装置であって、長尺シートW1を搬送する搬送部20と、蒸着時において蒸着材料Mを収容し加熱する蒸着源30と、蒸着材料Mの放出方向を制限する放出方向制限部40とを備えることを特徴とする蒸着装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置及びスクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺シートに蒸着材料を蒸着する蒸着装置であって、長尺シートを搬送する搬送部と、蒸着時において蒸着材料を収容し加熱する蒸着源とを備える蒸着装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の蒸着装置によれば、長尺シートに蒸着材料を連続的に蒸着することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−323552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の蒸着装置においては、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合、凹凸形状の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な蒸着装置を提供することを目的とする。また、上記のような蒸着装置を用いるスクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の蒸着装置は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートにおける前記凹凸形状の一部に、蒸着材料を選択的に蒸着する蒸着装置であって、前記長尺シートを搬送する搬送部と、蒸着時において前記蒸着材料を収容し加熱する蒸着源と、前記蒸着材料の放出方向を制限する放出方向制限部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このため、本発明の蒸着装置によれば、搬送部及び蒸着源を備えるため、従来の蒸着装置と同様に、長尺シートに蒸着材料を連続的に蒸着することが可能となる。
【0008】
また、本発明の蒸着装置によれば、蒸着材料の放出方向を制限する放出方向制限部を備えるため、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0009】
なお、「表面に凹凸形状が形成されている長尺シート」は、例えば、プロジェクターからの投写光を主に使用者に向けて反射する投写用のスクリーンを製造するときに用いられる(後述する実施形態1参照。)。本発明の蒸着装置は、上記のようなスクリーンを製造する用途において(つまり、投写用スクリーン製造用蒸着装置として)好適に用いることができる。
【0010】
「凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着する」とは、例えば、凹凸形状が山形形状からなる場合には、当該山形形状の一方の面上の全部又は一部に蒸着材料を蒸着することをいう。また、凹凸形状が略半球形状の凹部(いわゆるマイクロレンズ)の組み合わせからなる場合には、当該略半球形状の一部の面上に蒸着材料を蒸着することをいう。
【0011】
蒸着材料としては、目的に応じて様々なものを用いることができ、例えば、金属や無機誘電体を用いることができる。好適に用いることができるものの例としては、融点が比較的低く、かつ、反射率が比較的高いアルミニウムを挙げることができる。
長尺シートとしては、目的に応じて様々な材料からなるものを用いることができる。好適に用いることができるものの例としては、プレス成形や型による転写等により蒸着面の凹凸形状を容易に形成することが可能なもの(熱可塑性樹脂等からなるもの等)を挙げることができる。
【0012】
[2]本発明の蒸着装置においては、前記放出方向制限部の少なくとも一部は、前記蒸着材料が付着しない所定の温度に保温可能であることが好ましい。
【0013】
このような構成とすることにより、放出方向制限部に蒸着材料が到達しても放出方向制限部への付着を防ぐことができるため、蒸着装置(特に放出方向制限部)のメンテナンスを容易なものとすることが可能となる。この観点からは、放出方向制限部の全体が所定の温度に保温可能であることが好ましい。
また、放出方向制限部に蒸着材料が付着することにより蒸着材料の飛散方向が変化してしまうのを防止することが可能となり、その結果、蒸着するにつれて蒸着位置が不均一となることを防止することが可能となる。この観点からは、少なくとも放出方向制限部の端部が所定の温度に保温可能であることが好ましい。
【0014】
上記の場合においては、放出方向制限部が蒸着材料よりも高い融点を有する物質からなることが好ましい。一例を挙げれば、蒸着材料としてアルミニウムを用いる場合にはステンレス鋼からなる放出方向制限部を用いることができる。
保温は、例えば、電流による加熱(電流加熱)により行うことができる。
【0015】
[3]本発明の蒸着装置においては、前記放出方向制限部は、前記蒸着源と前記搬送部との間に配置され前記蒸着材料の放出方向を制限する遮蔽部と、前記遮蔽部を支持する支持部とを有することが好ましい。
【0016】
このような構成とすることにより、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0017】
なお、上記[3]の場合においては、遮蔽部のみが、蒸着材料が付着しない所定の温度に保温可能であるようにしてもよい。
【0018】
[4]本発明の蒸着装置においては、前記放出方向制限部は、四角形の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなり、前記遮蔽部は、前記平板のうち折り曲げられた部分からなり、前記支持部は、前記平板のうち平面状のままの部分からなることが好ましい。
【0019】
このような構成とすることにより、単純な形状の放出方向制限部で凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0020】
なお、「平板」は、平面状の板のことをいう。当該平板は、例えば、金属からなるものを用いることができる。
「折り曲げられた形状」は、円筒形状に従って折り曲げられた形状、多角形形状に従って折り曲げられた形状等、種々の形状を含む。
【0021】
[5]本発明の蒸着装置においては、前記蒸着源及び前記放出方向制限部は、前記長尺シートに蒸着する場所より下方に配置されており、前記遮蔽部の先端と前記先端に接する鉛直な線とのなす角度であって、前記先端と前記鉛直な線とが交わる交点より上方を基準とし、前記平板が折り曲げられた方向回りの角度を先端角度とするとき、前記先端角度が70°以上であり、かつ、360°より小さいことが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、長尺シートの下方から安定した蒸着を行うことが可能となる
【0023】
また、前記先端角度が70°以上であり、かつ、360°より小さいため、上記[2]に記載したように放出方向制限部が保温されている場合には、遮蔽部の先端に到達した蒸着材料が長尺シートの意図しない部分に付着してしまうのを防止することが可能となる。
【0024】
[6]本発明の蒸着装置においては、前記遮蔽部は、平板を円筒形状に従って折り曲げられた形状を有することが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、平板を加工して容易に放出方向制限部を製造することが可能となる。
【0026】
[7]本発明の蒸着装置においては、前記搬送部は、回転ドラムを有し、前記蒸着装置は、前記回転ドラムの周面上にある前記長尺シートに前記蒸着材料を蒸着することが好ましい。
【0027】
このような構成とすることにより、回転ドラムの周面上という安定した場所で蒸着を行うため、長尺シート上における蒸着材料の厚みを一層均一にすることが可能となる。
【0028】
[8]本発明の蒸着装置においては、前記凹凸形状は、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなることが好ましい。
【0029】
本発明の蒸着装置は、このような凹凸形状を有する長尺シートの蒸着に好適に用いることが可能である。
【0030】
なお、「鋸刃状の断面形状を有する山形形状」とは、断面形状を見たとき、山形形状を構成する稜線の傾斜角度が一方と他方とで異なるもののことをいう(図2(b)及び図8(b)参照。)。
【0031】
[9]本発明のスクリーンの製造方法は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いて、前記凹凸形状の一部に反射層が形成されたスクリーンを製造するスクリーンの製造方法であって、本発明の蒸着装置を用いて、前記長尺シートにおける前記凹凸形状の一部に蒸着材料を選択的に蒸着し、当該蒸着材料を用いて前記反射層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0032】
本発明のスクリーンの製造方法によれば、本発明の蒸着装置を用いて、長尺シートにおける凹凸形状の一部に蒸着材料を選択的に蒸着し、当該蒸着材料を用いて反射層を形成する工程を含むため、プロジェクターからの投写光(特に、斜方から投写される投写光)を主に使用者に向けて反射することが可能な投写用のスクリーンを容易に製造することが可能となる。
【0033】
なお、本発明のスクリーンの製造方法は、上記工程以外にも既知の方法を用いる種々の工程(例えば、プレス成形や型による転写等により長尺シートの蒸着面に凹凸形状を形成する工程等)を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態1に係る蒸着装置1の正面図。
【図2】実施形態1における長尺シートW1を説明するために示す図。
【図3】実施形態1における蒸着の様子を説明するために示す図。
【図4】実施形態1における放出方向制限部40の正面図。
【図5】実施形態1におけるスクリーンSCR1の部分拡大断面図。
【図6】実施形態1に係るスクリーンの製造方法のフローチャート。
【図7】実施形態2における蒸着の様子を説明するために示す図。
【図8】実施形態3における長尺シートW3を説明するために示す図。
【図9】変形例1における放出方向制限部60の正面図。
【図10】変形例2における放出方向制限部70の正面図。
【図11】変形例3における長尺シートW4及びスクリーンSCR2を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の蒸着装置及びスクリーンの製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0036】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る蒸着装置1の正面図である。なお、蒸着装置やその構成要素を説明する図面においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれz軸方向(図1において長尺シートW1が蒸着装置1に入っていく方向)、x軸方向(図1における紙面に垂直かつz軸に垂直な方向)及びy軸方向(図1における紙面に平行かつz軸に垂直な方向)として表示する。また、便宜上、図1の方向から見る図を蒸着装置1やその構成要素の正面図としている。
【0037】
図2は、実施形態1における長尺シートW1を説明するために示す図である。図2(a)は長尺シートW1の1単位を示す上面図であり、図2(b)は図2(a)のA1−A1断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。なお、図2(b)においては、長尺シートW1を寝せて(横にして)表示している。図2以下の図においては、説明のために長尺シートの凹凸形状を大きく表示している。
【0038】
図3は、実施形態1における蒸着の様子を説明するために示す図である。図3(a)は蒸着装置1の主要部の正面図であり、図3(b)は蒸着装置1の主要部の側面図である。
図4は、実施形態1における放出方向制限部40の正面図である。
図5は、実施形態1におけるスクリーンSCR1の部分拡大断面図である。なお、図5は模式図であり、蒸着された蒸着材料Mの厚さを大きく表示している。これは後述する図11(c)においても同様である。
【0039】
まず、実施形態1に係る蒸着装置1の構成を説明する。
実施形態1に係る蒸着装置1は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートW1における凹凸形状の一部に、蒸着材料Mを選択的に蒸着する蒸着装置であって、図1に示すように、真空チャンバー10と、搬送部20と、蒸着源30と、放出方向制限部40とを備える。蒸着源30及び放出方向制限部40は、長尺シートW1に蒸着する場所(後述する回転ドラム24)より下方に配置されている。実施形態1においては、蒸着装置1は投写用のスクリーンSCR1(後述)を製造するために用いられる。
【0040】
なお、本発明に係る蒸着装置1は、上記のように長尺シートが真空チャンバーに出入りする構成に限られるものではない。長尺シートが真空チャンバーに出入りしない構成(つまり、繰り出しロールや巻き取りロール等も真空チャンバー内にあり、真空チャンバー内で長尺シートの搬送が完結する構成)としてもよい。
【0041】
蒸着装置1は、長尺シートW1の蒸着面のうち一部に、蒸着材料Mを選択的に蒸着するように構成されている。
長尺シートW1における凹凸形状は、図2に示すように、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなる。
【0042】
実施形態1で用いる長尺シートW1は、図2(a)に示す長尺シートW1の1単位を紙面縦方向に連結したパターンを有する。つまり、実施形態1においては、長尺シートW1の山形形状の頂点を結んだ方向(A1−A1の直線に対して垂直な方向)が搬送方向と垂直となる(図3参照。)。
【0043】
実施形態1で用いる長尺シートW1においては、当該山形形状の頂点を結んだ線(図2(a)の長方形内の実線)は直線である。本発明の蒸着装置においては、上記の長尺シートW1に限られず、製造するものに合わせて様々な凹凸形状が形成された長尺シートに蒸着を行うことができる。
【0044】
実施形態1においては、蒸着装置1は、山形形状の広い方(断面形状としたとき、稜線の傾斜角度が緩い方)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着する(図5参照。)。なお、実施形態1においては、後述するスクリーンの製造方法に示すように、図5の状態のものが実施形態1に係るスクリーンの製造方法で製造を目的とするスクリーンSCR1であるということになる。
【0045】
真空チャンバー10は、内部を蒸着に適した環境(例えば、10−2Pa〜10−3Paの低圧環境)に保つ。図1に示すように、搬送部20、蒸着源30及び放出方向制限部40は真空チャンバー10内に配置されている。真空チャンバー10は、図示しない真空ポンプ及び排気装置を有する。なお、各図においては、説明のために真空チャンバー10については断面図としている。
【0046】
真空チャンバー10においては、詳しい説明は省略するが、長尺シートW1の出入り口に圧力を保つための機構を備える。当該機構としては、例えば、内圧が徐々に変化する複数の減圧室を有する機構や、ごく狭い出入り口を通じて長尺シートを通過させる機構を用いることができる。
【0047】
搬送部20は、補助ローラー22,26及び回転ドラム24を有し、長尺シートW1を一定の速度で連続的に搬送する。このため、実施形態1に係る蒸着装置1は長尺シートW1に連続的に蒸着を行う、いわゆる連続式の蒸着装置であるということになる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、いわゆるバッチ式の蒸着装置としてもよい。この場合、搬送部は、長尺シートをステップ式(搬送と停止を交互に繰り返す方式)で搬送することが好ましい。
蒸着装置1は、図3に示すように、回転ドラム24の周面上にある長尺シートW1に蒸着材料Mを蒸着する。
【0048】
蒸着源30は、蒸着時において蒸着材料Mを収容し加熱する。実施形態1においては、蒸着材料Mはアルミニウムからなる。詳しい説明は省略するが、蒸着源30は蒸着材料Mを収容するるつぼ及び蒸着材料Mを加熱する電子銃(電子ビームを射出する装置)を備える。実施形態1においては、電子銃からの電子ビームによりるつぼ中の蒸着材料Mが加熱され、微細な粒子となった蒸着材料Mが真空チャンバー10内に放出される。
【0049】
実施形態1に係る蒸着装置1においては、図3(b)に示すように、3個の蒸着源30を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。蒸着装置や長尺シートの大きさ等に合わせて任意の数の蒸着源を用いることができる。
【0050】
放出方向制限部40は、図3及び図4に示すように、遮蔽部42及び支持部44を有し、蒸着材料Mの放出方向を制限する。放出方向制限部40は、四角形(この場合、長方形)の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなる。放出方向制限部40の全体が、蒸着材料M(アルミニウム)が付着しない所定の温度に保温されている。放出方向制限部40は電流加熱により保温され、所定の温度は、例えば700℃である。
放出方向制限部40は、蒸着材料であるアルミニウムよりも融点の高い物質からなり、例えば、ステンレス鋼からなる。
【0051】
実施形態1に係る蒸着装置1においては、図3に示すように、1個の放出方向制限部40を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、蒸着源と同数(実施形態1のように蒸着源が3個であれば3個)の放出方向制限部を用いることもできる。
【0052】
遮蔽部42は、蒸着源30と搬送部20との間に配置され、蒸着材料Mの放出方向を制限する。遮蔽部42は、放出方向制限部40を構成する平板のうち、折り曲げられた部分からなる。実施形態1においては、遮蔽部42の先端と先端に接する鉛直な線(図4におけるy軸方向に沿う点線を参照。)とのなす角度であって、先端と鉛直な線とが交わる交点より上方を基準とし、平板が折り曲げられた方向回り(図4においては反時計回り)の角度を先端角度とするとき、先端角度が70°以上であり、例えば、80°である。なお、図4における斜めの点線は、遮蔽部42における先端の接線と平行な線である。
支持部44は、遮蔽部42を支持する。支持部44は、放出方向制限部40を構成する平板のうち、平面状のままの部分からなる。
【0053】
次に、実施形態1に係るスクリーンの製造方法について説明する。
図6は、実施形態1に係るスクリーンの製造方法のフローチャートである。
【0054】
実施形態1に係るスクリーンの製造方法は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートW1を用いて、凹凸形状の一部に反射層が形成されたスクリーンを製造するスクリーンの製造方法であって、図6に示すように、長尺シート準備工程S1及び蒸着工程S2を含む。
長尺シート準備工程S1は、長尺シートW1を準備する工程である。長尺シートW1の準備については一般的な方法を用いることができ、例えば、プレス成形や型による転写により蒸着面の凹凸形状(実施形態1においては鋸刃状の山形形状)を形成することにより長尺シートW1を準備することができる。
【0055】
蒸着工程S2は、実施形態1に係る蒸着装置1を用いて、長尺シートW1における凹凸形状の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着し、当該蒸着材料Mを用いて反射層を形成する工程である。具体的には、蒸着装置1を用い、山形形状の広い方(断面形状としたとき、稜線の傾斜角度が緩い方)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着して、当該蒸着材料Mを反射層とする(図5参照。)。その後、長尺シートW1を1単位ごとに切り出すことによりスクリーンSCR1を製造することができる。
【0056】
次に、実施形態1に係る蒸着装置1及びスクリーンの製造方法の効果を説明する。
【0057】
実施形態1に係る蒸着装置1によれば、搬送部20及び蒸着源30を備えるため、従来の蒸着装置と同様に、長尺シートに蒸着材料を連続的に蒸着することが可能となる。
【0058】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、蒸着材料Mの放出方向を制限する放出方向制限部40を備えるため、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、放出方向制限部40の少なくとも一部は、蒸着材料Mが付着しない所定の温度に保温可能であるため、放出方向制限部に蒸着材料が到達しても放出方向制限部への付着を防ぐことができ、蒸着装置(特に放出方向制限部)のメンテナンスを容易なものとすることが可能となる。また、放出方向制限部(特に端部)に蒸着材料が付着することにより蒸着材料の飛散方向が変化してしまうのを防止することが可能となり、その結果、蒸着するにつれて蒸着位置が不均一となることを防止することが可能となる。
【0060】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、放出方向制限部40は、蒸着源30と搬送部20との間に配置され蒸着材料Mの放出方向を制限する遮蔽部42と、遮蔽部42を支持する支持部44とを有するため、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0061】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、放出方向制限部40が四角形の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなり、遮蔽部42は平板のうち折り曲げられた部分からなり、支持部44は平板のうち平面状のままの部分からなるため、単純な形状の放出方向制限部で凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0062】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、蒸着源30及び放出方向制限部40は、長尺シートW1に蒸着する場所より下方に配置されているため、長尺シートの下方から安定した蒸着を行うことが可能となる
【0063】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、先端角度が70°以上であり、かつ、360°より小さいため、遮蔽部の先端に到達した蒸着材料が長尺シートの意図しない部分に付着してしまうのを防止することが可能となる。
【0064】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、遮蔽部42が平板を円筒形状に従って折り曲げられた形状を有するため、平板を加工して容易に放出方向制限部を製造することが可能となる。
【0065】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、搬送部20は回転ドラム24を有し、蒸着装置1は回転ドラム24の周面上にある長尺シートW1に蒸着材料Mを蒸着するため、回転ドラムの周面上という安定した場所で蒸着を行うことから、長尺シート上における蒸着材料の厚みを一層均一にすることが可能となる。
【0066】
実施形態1に係る蒸着装置1は、上記のように、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状を有する長尺シートW1の蒸着に好適に用いることが可能である。
【0067】
実施形態1に係るスクリーンの製造方法によれば、実施形態1に係る蒸着装置1を用いて、長尺シートW1における凹凸形状の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着し、当該蒸着材料Mを用いて反射層を形成する工程(蒸着工程S2)を含むため、プロジェクターからの投写光(特に、斜方から投写される投写光)を主に使用者に向けて反射することが可能な投写用のスクリーンを容易に製造することが可能となる。
【0068】
[実施形態2]
図7は、実施形態2における蒸着の様子を説明するために示す図である。図7(a)は蒸着装置2(符号を図示せず。)の主要部の正面図であり、図7(b)は蒸着装置2の主要部の側面図である。
【0069】
実施形態2に係る蒸着装置2は、基本的には実施形態1に係る蒸着装置1と同様の構成を有するが、蒸着する長尺シートが異なるため、放出方向制限部の構成が実施形態1に係る蒸着装置とは異なる。すなわち、実施形態2に係る蒸着装置2は、図7に示すように、実施形態1における長尺シートW1と1単位(図2(a)参照。)は同様であるが、当該1単位を図2(a)における紙面横方向に連結したパターンを有する長尺シートW2(つまり、長尺シートW2の山形形状の頂点を結んだ方向が搬送方向と平行となる。)に蒸着を行うためのものである。このため、蒸着装置2は、実施形態1における遮蔽装置40とは向き及び幅が異なる3個の遮蔽装置50を備える。なお、これに伴って、実施形態2に係る蒸着装置2においては、3個の蒸着源30の位置も実施形態1に係る蒸着装置1とは異なるものとなっている。
【0070】
このように、実施形態2に係る蒸着装置2は、放出方向制限部の構成が実施形態1に係る蒸着装置1とは異なるが、蒸着材料Mの放出方向を制限する放出方向制限部50を備えるため、実施形態1に係る蒸着装置1の場合と同様に、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0071】
なお、実施形態2に係る蒸着装置2は、放出方向制限部の構成以外は実施形態1に係る蒸着装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る蒸着装置1が有する効果をそのまま有する。
【0072】
[実施形態3]
図8は、実施形態3における長尺シートW3を説明するために示す図である。図8(a)は長尺シートW3の1単位を示す上面図であり、図8(b)は図8(a)のA2−A2断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。なお、図8(b)においては、長尺シートW3を寝せて(横にして)表示している。
【0073】
実施形態3においては、蒸着する長尺シートが実施形態1とは異なる。すなわち、実施形態3における長尺シートW3は、図8に示すように、実施形態1における長尺シートW1と1単位が異なる(特に図8(a)参照。)。長尺シートW3は、図8(a)に示す長尺シートW3の1単位を紙面縦方向に連結したパターンを有する。なお、実施形態3に係る蒸着装置3(図示せず。)そのものの構成は実施形態1に係る蒸着装置1と基本的に同様であるため、図示を省略する。
【0074】
実施形態3に係る蒸着装置3は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートW3における凹凸形状の一部に、蒸着材料Mを選択的に蒸着する蒸着装置である。
実施形態3における長尺シートW3では、山形形状の頂点を結んだ線(図8(a)の長方形内の実線)は曲線となる。図8(a)において示す曲線の曲率は例示であり、蒸着装置により製造する製品に合わせて様々な曲率のものを用いることができる。
【0075】
長尺シートW3における凹凸形状は、図8に示すように、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなる。つまり、長尺シートW3は、断面図としたときにおける凹凸形状については、実施形態1における長尺シートW1と基本的に同様であるということになる。
実施形態3においては、蒸着装置3は、山形形状の広い方(断面形状としたとき、稜線の傾斜角度が緩い方)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着する。
【0076】
このように、実施形態3に係る蒸着装置3は、蒸着する長尺シートが実施形態1に係る蒸着装置1とは異なるが、蒸着材料Mの放出方向を制限する放出方向制限部を備えるため、実施形態1に係る蒸着装置1の場合と同様に、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0077】
なお、実施形態3に係る蒸着装置3は、蒸着する長尺シート以外は実施形態1に係る蒸着装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る蒸着装置1が有する効果をそのまま有する。
【0078】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0079】
(1)上記各実施形態において記載した蒸着装置の構成要素や長尺シートの数、材質、形状等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0080】
(2)上記実施形態3においては、長尺シートとして、図8(a)に示す長尺シートW3の1単位を紙面縦方向に連結した長尺シートW3を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態3における長尺シートW3と1単位は同様であるが、当該1単位を図8(a)の紙面横方向に連結した長尺シートを用いてもよい。この場合、蒸着装置として、例えば、実施形態2に係る蒸着装置2と同様の構成を有する蒸着装置を用いることができる。本発明の蒸着装置は、このような場合においても凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能である。
【0081】
(3)上記実施形態1においては、先端角度が80°である放出方向制限部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図9は、変形例1における放出方向制限部60の正面図である。例えば、図9に示すように、本発明の効果を得られるものであれば、先端角度が80°以外の放出方向制限部を用いてもよい。なお、変形例1における放出方向制限部60においては、先端角度は150°である。
【0082】
(4)上記各実施形態においては、平板を円筒形状に従って折り曲げられた形状を有する遮蔽部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図10は、変形例2における放出方向制限部70の正面図である。例えば、図10に示すように、本発明の効果を得られる形状であれば任意の形状(変形例2においては、多角柱形状に従って折り曲げられた形状)の遮蔽部を用いてもよい。
【0083】
(5)上記各実施形態においては、板状の部材からなる遮蔽部及び支持部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。ブロック状の部材等からなる遮蔽部及び支持部を用いてもよい。
【0084】
(6)上記各実施形態においては、四角形の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなる放出方向制限部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。四角形以外の平板の一端が折り曲げられた形状からなる放出方向制限部を用いてもよい。また、遮蔽部と支持部とが別々に製作され、後に溶接や接着等により一体化された放出方向制限部を用いてもよい。
【0085】
(7)上記各実施形態においては、長尺シートとして、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状を有する長尺シートを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図11は、変形例3における長尺シートW4及びスクリーンSCR2を説明するために示す図である。図11(a)は長尺シートW4の1単位を示す上面図であり、図11(b)は図11(a)のA3−A3断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図であり、図11(c)は変形例3におけるスクリーンSCR2の部分拡大断面図である。なお、図11(b)及び図11(c)においては、長尺シートW1を寝せて(横にして)表示している。また、図11(a)においては、略半球状の凹部の配置をわかりやすくするために、凹部の数を少なく表示している。例えば、図11に示すように、略半球状の凹部(いわゆるマイクロレンズ)の組み合わせからなる凹凸形状が形成されている長尺シートを用いてもよい。また、他の形状からなる凹凸形状が形成されている長尺シートを用いてもよい。
【0086】
(8)上記実施形態1においては、長尺シート準備工程S1及び蒸着工程S2を含むスクリーンの製造方法を例にとって本発明のスクリーンの製造方法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、長尺シート準備工程を含まなくてもよいし、長尺シート準備工程及び蒸着工程以外の工程(例えば、蒸着工程後の後処理工程や仕上工程)を含んでもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…蒸着装置、10…真空チャンバー、20…搬送部、22,26…補助ローラー、24…回転ドラム、30…蒸着源、40,50,60,70…放出方向制限部、42,52,62,72…遮蔽部、44,54,64,74…支持部、M…蒸着材料、SCR1,SCR2…スクリーン、W1,W2,W3…長尺シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置及びスクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺シートに蒸着材料を蒸着する蒸着装置であって、長尺シートを搬送する搬送部と、蒸着時において蒸着材料を収容し加熱する蒸着源とを備える蒸着装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の蒸着装置によれば、長尺シートに蒸着材料を連続的に蒸着することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−323552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の蒸着装置においては、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合、凹凸形状の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な蒸着装置を提供することを目的とする。また、上記のような蒸着装置を用いるスクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の蒸着装置は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートにおける前記凹凸形状の一部に、蒸着材料を選択的に蒸着する蒸着装置であって、前記長尺シートを搬送する搬送部と、蒸着時において前記蒸着材料を収容し加熱する蒸着源と、前記蒸着材料の放出方向を制限する放出方向制限部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このため、本発明の蒸着装置によれば、搬送部及び蒸着源を備えるため、従来の蒸着装置と同様に、長尺シートに蒸着材料を連続的に蒸着することが可能となる。
【0008】
また、本発明の蒸着装置によれば、蒸着材料の放出方向を制限する放出方向制限部を備えるため、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0009】
なお、「表面に凹凸形状が形成されている長尺シート」は、例えば、プロジェクターからの投写光を主に使用者に向けて反射する投写用のスクリーンを製造するときに用いられる(後述する実施形態1参照。)。本発明の蒸着装置は、上記のようなスクリーンを製造する用途において(つまり、投写用スクリーン製造用蒸着装置として)好適に用いることができる。
【0010】
「凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着する」とは、例えば、凹凸形状が山形形状からなる場合には、当該山形形状の一方の面上の全部又は一部に蒸着材料を蒸着することをいう。また、凹凸形状が略半球形状の凹部(いわゆるマイクロレンズ)の組み合わせからなる場合には、当該略半球形状の一部の面上に蒸着材料を蒸着することをいう。
【0011】
蒸着材料としては、目的に応じて様々なものを用いることができ、例えば、金属や無機誘電体を用いることができる。好適に用いることができるものの例としては、融点が比較的低く、かつ、反射率が比較的高いアルミニウムを挙げることができる。
長尺シートとしては、目的に応じて様々な材料からなるものを用いることができる。好適に用いることができるものの例としては、プレス成形や型による転写等により蒸着面の凹凸形状を容易に形成することが可能なもの(熱可塑性樹脂等からなるもの等)を挙げることができる。
【0012】
[2]本発明の蒸着装置においては、前記放出方向制限部の少なくとも一部は、前記蒸着材料が付着しない所定の温度に保温可能であることが好ましい。
【0013】
このような構成とすることにより、放出方向制限部に蒸着材料が到達しても放出方向制限部への付着を防ぐことができるため、蒸着装置(特に放出方向制限部)のメンテナンスを容易なものとすることが可能となる。この観点からは、放出方向制限部の全体が所定の温度に保温可能であることが好ましい。
また、放出方向制限部に蒸着材料が付着することにより蒸着材料の飛散方向が変化してしまうのを防止することが可能となり、その結果、蒸着するにつれて蒸着位置が不均一となることを防止することが可能となる。この観点からは、少なくとも放出方向制限部の端部が所定の温度に保温可能であることが好ましい。
【0014】
上記の場合においては、放出方向制限部が蒸着材料よりも高い融点を有する物質からなることが好ましい。一例を挙げれば、蒸着材料としてアルミニウムを用いる場合にはステンレス鋼からなる放出方向制限部を用いることができる。
保温は、例えば、電流による加熱(電流加熱)により行うことができる。
【0015】
[3]本発明の蒸着装置においては、前記放出方向制限部は、前記蒸着源と前記搬送部との間に配置され前記蒸着材料の放出方向を制限する遮蔽部と、前記遮蔽部を支持する支持部とを有することが好ましい。
【0016】
このような構成とすることにより、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0017】
なお、上記[3]の場合においては、遮蔽部のみが、蒸着材料が付着しない所定の温度に保温可能であるようにしてもよい。
【0018】
[4]本発明の蒸着装置においては、前記放出方向制限部は、四角形の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなり、前記遮蔽部は、前記平板のうち折り曲げられた部分からなり、前記支持部は、前記平板のうち平面状のままの部分からなることが好ましい。
【0019】
このような構成とすることにより、単純な形状の放出方向制限部で凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0020】
なお、「平板」は、平面状の板のことをいう。当該平板は、例えば、金属からなるものを用いることができる。
「折り曲げられた形状」は、円筒形状に従って折り曲げられた形状、多角形形状に従って折り曲げられた形状等、種々の形状を含む。
【0021】
[5]本発明の蒸着装置においては、前記蒸着源及び前記放出方向制限部は、前記長尺シートに蒸着する場所より下方に配置されており、前記遮蔽部の先端と前記先端に接する鉛直な線とのなす角度であって、前記先端と前記鉛直な線とが交わる交点より上方を基準とし、前記平板が折り曲げられた方向回りの角度を先端角度とするとき、前記先端角度が70°以上であり、かつ、360°より小さいことが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、長尺シートの下方から安定した蒸着を行うことが可能となる
【0023】
また、前記先端角度が70°以上であり、かつ、360°より小さいため、上記[2]に記載したように放出方向制限部が保温されている場合には、遮蔽部の先端に到達した蒸着材料が長尺シートの意図しない部分に付着してしまうのを防止することが可能となる。
【0024】
[6]本発明の蒸着装置においては、前記遮蔽部は、平板を円筒形状に従って折り曲げられた形状を有することが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、平板を加工して容易に放出方向制限部を製造することが可能となる。
【0026】
[7]本発明の蒸着装置においては、前記搬送部は、回転ドラムを有し、前記蒸着装置は、前記回転ドラムの周面上にある前記長尺シートに前記蒸着材料を蒸着することが好ましい。
【0027】
このような構成とすることにより、回転ドラムの周面上という安定した場所で蒸着を行うため、長尺シート上における蒸着材料の厚みを一層均一にすることが可能となる。
【0028】
[8]本発明の蒸着装置においては、前記凹凸形状は、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなることが好ましい。
【0029】
本発明の蒸着装置は、このような凹凸形状を有する長尺シートの蒸着に好適に用いることが可能である。
【0030】
なお、「鋸刃状の断面形状を有する山形形状」とは、断面形状を見たとき、山形形状を構成する稜線の傾斜角度が一方と他方とで異なるもののことをいう(図2(b)及び図8(b)参照。)。
【0031】
[9]本発明のスクリーンの製造方法は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いて、前記凹凸形状の一部に反射層が形成されたスクリーンを製造するスクリーンの製造方法であって、本発明の蒸着装置を用いて、前記長尺シートにおける前記凹凸形状の一部に蒸着材料を選択的に蒸着し、当該蒸着材料を用いて前記反射層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0032】
本発明のスクリーンの製造方法によれば、本発明の蒸着装置を用いて、長尺シートにおける凹凸形状の一部に蒸着材料を選択的に蒸着し、当該蒸着材料を用いて反射層を形成する工程を含むため、プロジェクターからの投写光(特に、斜方から投写される投写光)を主に使用者に向けて反射することが可能な投写用のスクリーンを容易に製造することが可能となる。
【0033】
なお、本発明のスクリーンの製造方法は、上記工程以外にも既知の方法を用いる種々の工程(例えば、プレス成形や型による転写等により長尺シートの蒸着面に凹凸形状を形成する工程等)を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態1に係る蒸着装置1の正面図。
【図2】実施形態1における長尺シートW1を説明するために示す図。
【図3】実施形態1における蒸着の様子を説明するために示す図。
【図4】実施形態1における放出方向制限部40の正面図。
【図5】実施形態1におけるスクリーンSCR1の部分拡大断面図。
【図6】実施形態1に係るスクリーンの製造方法のフローチャート。
【図7】実施形態2における蒸着の様子を説明するために示す図。
【図8】実施形態3における長尺シートW3を説明するために示す図。
【図9】変形例1における放出方向制限部60の正面図。
【図10】変形例2における放出方向制限部70の正面図。
【図11】変形例3における長尺シートW4及びスクリーンSCR2を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の蒸着装置及びスクリーンの製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0036】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る蒸着装置1の正面図である。なお、蒸着装置やその構成要素を説明する図面においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれz軸方向(図1において長尺シートW1が蒸着装置1に入っていく方向)、x軸方向(図1における紙面に垂直かつz軸に垂直な方向)及びy軸方向(図1における紙面に平行かつz軸に垂直な方向)として表示する。また、便宜上、図1の方向から見る図を蒸着装置1やその構成要素の正面図としている。
【0037】
図2は、実施形態1における長尺シートW1を説明するために示す図である。図2(a)は長尺シートW1の1単位を示す上面図であり、図2(b)は図2(a)のA1−A1断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。なお、図2(b)においては、長尺シートW1を寝せて(横にして)表示している。図2以下の図においては、説明のために長尺シートの凹凸形状を大きく表示している。
【0038】
図3は、実施形態1における蒸着の様子を説明するために示す図である。図3(a)は蒸着装置1の主要部の正面図であり、図3(b)は蒸着装置1の主要部の側面図である。
図4は、実施形態1における放出方向制限部40の正面図である。
図5は、実施形態1におけるスクリーンSCR1の部分拡大断面図である。なお、図5は模式図であり、蒸着された蒸着材料Mの厚さを大きく表示している。これは後述する図11(c)においても同様である。
【0039】
まず、実施形態1に係る蒸着装置1の構成を説明する。
実施形態1に係る蒸着装置1は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートW1における凹凸形状の一部に、蒸着材料Mを選択的に蒸着する蒸着装置であって、図1に示すように、真空チャンバー10と、搬送部20と、蒸着源30と、放出方向制限部40とを備える。蒸着源30及び放出方向制限部40は、長尺シートW1に蒸着する場所(後述する回転ドラム24)より下方に配置されている。実施形態1においては、蒸着装置1は投写用のスクリーンSCR1(後述)を製造するために用いられる。
【0040】
なお、本発明に係る蒸着装置1は、上記のように長尺シートが真空チャンバーに出入りする構成に限られるものではない。長尺シートが真空チャンバーに出入りしない構成(つまり、繰り出しロールや巻き取りロール等も真空チャンバー内にあり、真空チャンバー内で長尺シートの搬送が完結する構成)としてもよい。
【0041】
蒸着装置1は、長尺シートW1の蒸着面のうち一部に、蒸着材料Mを選択的に蒸着するように構成されている。
長尺シートW1における凹凸形状は、図2に示すように、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなる。
【0042】
実施形態1で用いる長尺シートW1は、図2(a)に示す長尺シートW1の1単位を紙面縦方向に連結したパターンを有する。つまり、実施形態1においては、長尺シートW1の山形形状の頂点を結んだ方向(A1−A1の直線に対して垂直な方向)が搬送方向と垂直となる(図3参照。)。
【0043】
実施形態1で用いる長尺シートW1においては、当該山形形状の頂点を結んだ線(図2(a)の長方形内の実線)は直線である。本発明の蒸着装置においては、上記の長尺シートW1に限られず、製造するものに合わせて様々な凹凸形状が形成された長尺シートに蒸着を行うことができる。
【0044】
実施形態1においては、蒸着装置1は、山形形状の広い方(断面形状としたとき、稜線の傾斜角度が緩い方)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着する(図5参照。)。なお、実施形態1においては、後述するスクリーンの製造方法に示すように、図5の状態のものが実施形態1に係るスクリーンの製造方法で製造を目的とするスクリーンSCR1であるということになる。
【0045】
真空チャンバー10は、内部を蒸着に適した環境(例えば、10−2Pa〜10−3Paの低圧環境)に保つ。図1に示すように、搬送部20、蒸着源30及び放出方向制限部40は真空チャンバー10内に配置されている。真空チャンバー10は、図示しない真空ポンプ及び排気装置を有する。なお、各図においては、説明のために真空チャンバー10については断面図としている。
【0046】
真空チャンバー10においては、詳しい説明は省略するが、長尺シートW1の出入り口に圧力を保つための機構を備える。当該機構としては、例えば、内圧が徐々に変化する複数の減圧室を有する機構や、ごく狭い出入り口を通じて長尺シートを通過させる機構を用いることができる。
【0047】
搬送部20は、補助ローラー22,26及び回転ドラム24を有し、長尺シートW1を一定の速度で連続的に搬送する。このため、実施形態1に係る蒸着装置1は長尺シートW1に連続的に蒸着を行う、いわゆる連続式の蒸着装置であるということになる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、いわゆるバッチ式の蒸着装置としてもよい。この場合、搬送部は、長尺シートをステップ式(搬送と停止を交互に繰り返す方式)で搬送することが好ましい。
蒸着装置1は、図3に示すように、回転ドラム24の周面上にある長尺シートW1に蒸着材料Mを蒸着する。
【0048】
蒸着源30は、蒸着時において蒸着材料Mを収容し加熱する。実施形態1においては、蒸着材料Mはアルミニウムからなる。詳しい説明は省略するが、蒸着源30は蒸着材料Mを収容するるつぼ及び蒸着材料Mを加熱する電子銃(電子ビームを射出する装置)を備える。実施形態1においては、電子銃からの電子ビームによりるつぼ中の蒸着材料Mが加熱され、微細な粒子となった蒸着材料Mが真空チャンバー10内に放出される。
【0049】
実施形態1に係る蒸着装置1においては、図3(b)に示すように、3個の蒸着源30を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。蒸着装置や長尺シートの大きさ等に合わせて任意の数の蒸着源を用いることができる。
【0050】
放出方向制限部40は、図3及び図4に示すように、遮蔽部42及び支持部44を有し、蒸着材料Mの放出方向を制限する。放出方向制限部40は、四角形(この場合、長方形)の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなる。放出方向制限部40の全体が、蒸着材料M(アルミニウム)が付着しない所定の温度に保温されている。放出方向制限部40は電流加熱により保温され、所定の温度は、例えば700℃である。
放出方向制限部40は、蒸着材料であるアルミニウムよりも融点の高い物質からなり、例えば、ステンレス鋼からなる。
【0051】
実施形態1に係る蒸着装置1においては、図3に示すように、1個の放出方向制限部40を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、蒸着源と同数(実施形態1のように蒸着源が3個であれば3個)の放出方向制限部を用いることもできる。
【0052】
遮蔽部42は、蒸着源30と搬送部20との間に配置され、蒸着材料Mの放出方向を制限する。遮蔽部42は、放出方向制限部40を構成する平板のうち、折り曲げられた部分からなる。実施形態1においては、遮蔽部42の先端と先端に接する鉛直な線(図4におけるy軸方向に沿う点線を参照。)とのなす角度であって、先端と鉛直な線とが交わる交点より上方を基準とし、平板が折り曲げられた方向回り(図4においては反時計回り)の角度を先端角度とするとき、先端角度が70°以上であり、例えば、80°である。なお、図4における斜めの点線は、遮蔽部42における先端の接線と平行な線である。
支持部44は、遮蔽部42を支持する。支持部44は、放出方向制限部40を構成する平板のうち、平面状のままの部分からなる。
【0053】
次に、実施形態1に係るスクリーンの製造方法について説明する。
図6は、実施形態1に係るスクリーンの製造方法のフローチャートである。
【0054】
実施形態1に係るスクリーンの製造方法は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートW1を用いて、凹凸形状の一部に反射層が形成されたスクリーンを製造するスクリーンの製造方法であって、図6に示すように、長尺シート準備工程S1及び蒸着工程S2を含む。
長尺シート準備工程S1は、長尺シートW1を準備する工程である。長尺シートW1の準備については一般的な方法を用いることができ、例えば、プレス成形や型による転写により蒸着面の凹凸形状(実施形態1においては鋸刃状の山形形状)を形成することにより長尺シートW1を準備することができる。
【0055】
蒸着工程S2は、実施形態1に係る蒸着装置1を用いて、長尺シートW1における凹凸形状の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着し、当該蒸着材料Mを用いて反射層を形成する工程である。具体的には、蒸着装置1を用い、山形形状の広い方(断面形状としたとき、稜線の傾斜角度が緩い方)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着して、当該蒸着材料Mを反射層とする(図5参照。)。その後、長尺シートW1を1単位ごとに切り出すことによりスクリーンSCR1を製造することができる。
【0056】
次に、実施形態1に係る蒸着装置1及びスクリーンの製造方法の効果を説明する。
【0057】
実施形態1に係る蒸着装置1によれば、搬送部20及び蒸着源30を備えるため、従来の蒸着装置と同様に、長尺シートに蒸着材料を連続的に蒸着することが可能となる。
【0058】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、蒸着材料Mの放出方向を制限する放出方向制限部40を備えるため、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、放出方向制限部40の少なくとも一部は、蒸着材料Mが付着しない所定の温度に保温可能であるため、放出方向制限部に蒸着材料が到達しても放出方向制限部への付着を防ぐことができ、蒸着装置(特に放出方向制限部)のメンテナンスを容易なものとすることが可能となる。また、放出方向制限部(特に端部)に蒸着材料が付着することにより蒸着材料の飛散方向が変化してしまうのを防止することが可能となり、その結果、蒸着するにつれて蒸着位置が不均一となることを防止することが可能となる。
【0060】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、放出方向制限部40は、蒸着源30と搬送部20との間に配置され蒸着材料Mの放出方向を制限する遮蔽部42と、遮蔽部42を支持する支持部44とを有するため、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0061】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、放出方向制限部40が四角形の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなり、遮蔽部42は平板のうち折り曲げられた部分からなり、支持部44は平板のうち平面状のままの部分からなるため、単純な形状の放出方向制限部で凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0062】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、蒸着源30及び放出方向制限部40は、長尺シートW1に蒸着する場所より下方に配置されているため、長尺シートの下方から安定した蒸着を行うことが可能となる
【0063】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、先端角度が70°以上であり、かつ、360°より小さいため、遮蔽部の先端に到達した蒸着材料が長尺シートの意図しない部分に付着してしまうのを防止することが可能となる。
【0064】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、遮蔽部42が平板を円筒形状に従って折り曲げられた形状を有するため、平板を加工して容易に放出方向制限部を製造することが可能となる。
【0065】
また、実施形態1に係る蒸着装置1によれば、搬送部20は回転ドラム24を有し、蒸着装置1は回転ドラム24の周面上にある長尺シートW1に蒸着材料Mを蒸着するため、回転ドラムの周面上という安定した場所で蒸着を行うことから、長尺シート上における蒸着材料の厚みを一層均一にすることが可能となる。
【0066】
実施形態1に係る蒸着装置1は、上記のように、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状を有する長尺シートW1の蒸着に好適に用いることが可能である。
【0067】
実施形態1に係るスクリーンの製造方法によれば、実施形態1に係る蒸着装置1を用いて、長尺シートW1における凹凸形状の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着し、当該蒸着材料Mを用いて反射層を形成する工程(蒸着工程S2)を含むため、プロジェクターからの投写光(特に、斜方から投写される投写光)を主に使用者に向けて反射することが可能な投写用のスクリーンを容易に製造することが可能となる。
【0068】
[実施形態2]
図7は、実施形態2における蒸着の様子を説明するために示す図である。図7(a)は蒸着装置2(符号を図示せず。)の主要部の正面図であり、図7(b)は蒸着装置2の主要部の側面図である。
【0069】
実施形態2に係る蒸着装置2は、基本的には実施形態1に係る蒸着装置1と同様の構成を有するが、蒸着する長尺シートが異なるため、放出方向制限部の構成が実施形態1に係る蒸着装置とは異なる。すなわち、実施形態2に係る蒸着装置2は、図7に示すように、実施形態1における長尺シートW1と1単位(図2(a)参照。)は同様であるが、当該1単位を図2(a)における紙面横方向に連結したパターンを有する長尺シートW2(つまり、長尺シートW2の山形形状の頂点を結んだ方向が搬送方向と平行となる。)に蒸着を行うためのものである。このため、蒸着装置2は、実施形態1における遮蔽装置40とは向き及び幅が異なる3個の遮蔽装置50を備える。なお、これに伴って、実施形態2に係る蒸着装置2においては、3個の蒸着源30の位置も実施形態1に係る蒸着装置1とは異なるものとなっている。
【0070】
このように、実施形態2に係る蒸着装置2は、放出方向制限部の構成が実施形態1に係る蒸着装置1とは異なるが、蒸着材料Mの放出方向を制限する放出方向制限部50を備えるため、実施形態1に係る蒸着装置1の場合と同様に、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0071】
なお、実施形態2に係る蒸着装置2は、放出方向制限部の構成以外は実施形態1に係る蒸着装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る蒸着装置1が有する効果をそのまま有する。
【0072】
[実施形態3]
図8は、実施形態3における長尺シートW3を説明するために示す図である。図8(a)は長尺シートW3の1単位を示す上面図であり、図8(b)は図8(a)のA2−A2断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。なお、図8(b)においては、長尺シートW3を寝せて(横にして)表示している。
【0073】
実施形態3においては、蒸着する長尺シートが実施形態1とは異なる。すなわち、実施形態3における長尺シートW3は、図8に示すように、実施形態1における長尺シートW1と1単位が異なる(特に図8(a)参照。)。長尺シートW3は、図8(a)に示す長尺シートW3の1単位を紙面縦方向に連結したパターンを有する。なお、実施形態3に係る蒸着装置3(図示せず。)そのものの構成は実施形態1に係る蒸着装置1と基本的に同様であるため、図示を省略する。
【0074】
実施形態3に係る蒸着装置3は、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートW3における凹凸形状の一部に、蒸着材料Mを選択的に蒸着する蒸着装置である。
実施形態3における長尺シートW3では、山形形状の頂点を結んだ線(図8(a)の長方形内の実線)は曲線となる。図8(a)において示す曲線の曲率は例示であり、蒸着装置により製造する製品に合わせて様々な曲率のものを用いることができる。
【0075】
長尺シートW3における凹凸形状は、図8に示すように、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなる。つまり、長尺シートW3は、断面図としたときにおける凹凸形状については、実施形態1における長尺シートW1と基本的に同様であるということになる。
実施形態3においては、蒸着装置3は、山形形状の広い方(断面形状としたとき、稜線の傾斜角度が緩い方)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着する。
【0076】
このように、実施形態3に係る蒸着装置3は、蒸着する長尺シートが実施形態1に係る蒸着装置1とは異なるが、蒸着材料Mの放出方向を制限する放出方向制限部を備えるため、実施形態1に係る蒸着装置1の場合と同様に、表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いた場合に、凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能となる。
【0077】
なお、実施形態3に係る蒸着装置3は、蒸着する長尺シート以外は実施形態1に係る蒸着装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る蒸着装置1が有する効果をそのまま有する。
【0078】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0079】
(1)上記各実施形態において記載した蒸着装置の構成要素や長尺シートの数、材質、形状等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0080】
(2)上記実施形態3においては、長尺シートとして、図8(a)に示す長尺シートW3の1単位を紙面縦方向に連結した長尺シートW3を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態3における長尺シートW3と1単位は同様であるが、当該1単位を図8(a)の紙面横方向に連結した長尺シートを用いてもよい。この場合、蒸着装置として、例えば、実施形態2に係る蒸着装置2と同様の構成を有する蒸着装置を用いることができる。本発明の蒸着装置は、このような場合においても凹凸形状のうち一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能である。
【0081】
(3)上記実施形態1においては、先端角度が80°である放出方向制限部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図9は、変形例1における放出方向制限部60の正面図である。例えば、図9に示すように、本発明の効果を得られるものであれば、先端角度が80°以外の放出方向制限部を用いてもよい。なお、変形例1における放出方向制限部60においては、先端角度は150°である。
【0082】
(4)上記各実施形態においては、平板を円筒形状に従って折り曲げられた形状を有する遮蔽部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図10は、変形例2における放出方向制限部70の正面図である。例えば、図10に示すように、本発明の効果を得られる形状であれば任意の形状(変形例2においては、多角柱形状に従って折り曲げられた形状)の遮蔽部を用いてもよい。
【0083】
(5)上記各実施形態においては、板状の部材からなる遮蔽部及び支持部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。ブロック状の部材等からなる遮蔽部及び支持部を用いてもよい。
【0084】
(6)上記各実施形態においては、四角形の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなる放出方向制限部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。四角形以外の平板の一端が折り曲げられた形状からなる放出方向制限部を用いてもよい。また、遮蔽部と支持部とが別々に製作され、後に溶接や接着等により一体化された放出方向制限部を用いてもよい。
【0085】
(7)上記各実施形態においては、長尺シートとして、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状を有する長尺シートを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図11は、変形例3における長尺シートW4及びスクリーンSCR2を説明するために示す図である。図11(a)は長尺シートW4の1単位を示す上面図であり、図11(b)は図11(a)のA3−A3断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図であり、図11(c)は変形例3におけるスクリーンSCR2の部分拡大断面図である。なお、図11(b)及び図11(c)においては、長尺シートW1を寝せて(横にして)表示している。また、図11(a)においては、略半球状の凹部の配置をわかりやすくするために、凹部の数を少なく表示している。例えば、図11に示すように、略半球状の凹部(いわゆるマイクロレンズ)の組み合わせからなる凹凸形状が形成されている長尺シートを用いてもよい。また、他の形状からなる凹凸形状が形成されている長尺シートを用いてもよい。
【0086】
(8)上記実施形態1においては、長尺シート準備工程S1及び蒸着工程S2を含むスクリーンの製造方法を例にとって本発明のスクリーンの製造方法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、長尺シート準備工程を含まなくてもよいし、長尺シート準備工程及び蒸着工程以外の工程(例えば、蒸着工程後の後処理工程や仕上工程)を含んでもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…蒸着装置、10…真空チャンバー、20…搬送部、22,26…補助ローラー、24…回転ドラム、30…蒸着源、40,50,60,70…放出方向制限部、42,52,62,72…遮蔽部、44,54,64,74…支持部、M…蒸着材料、SCR1,SCR2…スクリーン、W1,W2,W3…長尺シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸形状が形成されている長尺シートにおける前記凹凸形状の一部に、蒸着材料を選択的に蒸着する蒸着装置であって、
前記長尺シートを搬送する搬送部と、
蒸着時において前記蒸着材料を収容し加熱する蒸着源と、
前記蒸着材料の放出方向を制限する放出方向制限部とを備えることを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸着装置において、
前記放出方向制限部の少なくとも一部は、前記蒸着材料が付着しない所定の温度に保温可能であることを特徴とする蒸着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸着装置において、
前記放出方向制限部は、
前記蒸着源と前記搬送部との間に配置され前記蒸着材料の放出方向を制限する遮蔽部と、
前記遮蔽部を支持する支持部とを有することを特徴とする蒸着装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸着装置において、
前記放出方向制限部は、四角形の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなり、
前記遮蔽部は、前記平板のうち折り曲げられた部分からなり、
前記支持部は、前記平板のうち平面状のままの部分からなることを特徴とする蒸着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸着装置において、
前記蒸着源及び前記放出方向制限部は、前記長尺シートに蒸着する場所より下方に配置されており、
前記遮蔽部の先端と前記先端に接する鉛直な線とのなす角度であって、前記先端と前記鉛直な線とが交わる交点より上方を基準とし、前記平板が折り曲げられた方向回りの角度を先端角度とするとき、
前記先端角度が70°以上であり、かつ、360°より小さいことを特徴とする蒸着装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の蒸着装置において、
前記遮蔽部は、平板を円筒形状に従って折り曲げられた形状を有することを特徴とする蒸着装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着装置において、
前記搬送部は、回転ドラムを有し、
前記蒸着装置は、前記回転ドラムの周面上にある前記長尺シートに前記蒸着材料を蒸着することを特徴とする蒸着装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の蒸着装置において、
前記凹凸形状は、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなることを特徴とする蒸着装置。
【請求項9】
表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いて、前記凹凸形状の一部に反射層が形成されたスクリーンを製造するスクリーンの製造方法であって、
請求項1〜8のいずれかに記載の蒸着装置を用いて、前記長尺シートにおける前記凹凸形状の一部に蒸着材料を選択的に蒸着し、当該蒸着材料を用いて前記反射層を形成する工程を含むことを特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項1】
表面に凹凸形状が形成されている長尺シートにおける前記凹凸形状の一部に、蒸着材料を選択的に蒸着する蒸着装置であって、
前記長尺シートを搬送する搬送部と、
蒸着時において前記蒸着材料を収容し加熱する蒸着源と、
前記蒸着材料の放出方向を制限する放出方向制限部とを備えることを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸着装置において、
前記放出方向制限部の少なくとも一部は、前記蒸着材料が付着しない所定の温度に保温可能であることを特徴とする蒸着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸着装置において、
前記放出方向制限部は、
前記蒸着源と前記搬送部との間に配置され前記蒸着材料の放出方向を制限する遮蔽部と、
前記遮蔽部を支持する支持部とを有することを特徴とする蒸着装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸着装置において、
前記放出方向制限部は、四角形の平板における一辺側が折り曲げられた形状からなり、
前記遮蔽部は、前記平板のうち折り曲げられた部分からなり、
前記支持部は、前記平板のうち平面状のままの部分からなることを特徴とする蒸着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸着装置において、
前記蒸着源及び前記放出方向制限部は、前記長尺シートに蒸着する場所より下方に配置されており、
前記遮蔽部の先端と前記先端に接する鉛直な線とのなす角度であって、前記先端と前記鉛直な線とが交わる交点より上方を基準とし、前記平板が折り曲げられた方向回りの角度を先端角度とするとき、
前記先端角度が70°以上であり、かつ、360°より小さいことを特徴とする蒸着装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の蒸着装置において、
前記遮蔽部は、平板を円筒形状に従って折り曲げられた形状を有することを特徴とする蒸着装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着装置において、
前記搬送部は、回転ドラムを有し、
前記蒸着装置は、前記回転ドラムの周面上にある前記長尺シートに前記蒸着材料を蒸着することを特徴とする蒸着装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の蒸着装置において、
前記凹凸形状は、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなることを特徴とする蒸着装置。
【請求項9】
表面に凹凸形状が形成されている長尺シートを用いて、前記凹凸形状の一部に反射層が形成されたスクリーンを製造するスクリーンの製造方法であって、
請求項1〜8のいずれかに記載の蒸着装置を用いて、前記長尺シートにおける前記凹凸形状の一部に蒸着材料を選択的に蒸着し、当該蒸着材料を用いて前記反射層を形成する工程を含むことを特徴とするスクリーンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−241240(P2012−241240A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113199(P2011−113199)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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