説明

蒸練機、蒸練麺生地及び蒸練麺

【課題】 麺原料等を十分に混捏することができる蒸練機を提供する。
【解決手段】 ドラム3に設けた回転軸4を回転させてこの回転軸4に設けた混捏片5を回転させることによってドラム3内に投入された麺原料又はこの麺原料から得られた生地の混捏を行う蒸練機であって、前記混捏片5が、断面円形又は断面楕円形の棒状に形成され、この混捏片5が前記回転軸4にその周方向に120°間隔でかつその軸方向に間隔をあけて放射状で3つ設けられ、これら3つの混捏片5が1セットとして2セット以上設けられていることにより、前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほうとう、うどんなどの生麺として用いられる蒸練麺生地を生成するための蒸練機、その蒸練機を用いて得られた蒸練麺生地、及び蒸練麺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸練麺生地を製造する際には、小麦等の麺原料を水等と共に混捏する工程と加熱処理を行う工程との2つの工程を行える蒸練機が用いられることが知られている(特許文献1参照。)。この蒸練機は、蓋体によってそれぞれ密閉可能な原料投入口と生地取出口とを有する円筒状のドラムと、このドラム内に同軸上に挿通され、回転駆動される回転軸と、ドラム内の回転軸に設けられ、麺原料等を混捏するための混捏片と、ドラムに接続され、蒸気を供給する蒸気供給管とを備えてなる。ドラム内に原料投入口から小麦等の麺原料を投入してから、回転軸を回転駆動させて混捏片を回転させることで混捏処理を行え、かつ、蒸気供給管から蒸気をドラム内に供給することで加熱処理を行って蒸練麺生地を製造することができる。
【特許文献1】特開2005−6524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、混捏片は、ドラム内で回転させることにより小麦等の麺原料を混捏して粘弾性を有する麺生地を生成するためのものである。この混捏片が板状に形成されていると、小麦等の麺原料や麺生地を捏ねるときに、混捏片の角部によって麺原料や麺生地が切断されてぶつ切りになり、十分に混捏を行えないことがあった。特に、ほうとう、うどんの生麺として用いられる蒸練麺生地を生成するときには、ほうとう、うどんとなったときに、コシの強い、保形性に優れた麺となるように十分に麺原料や麺生地の混捏が必要である。
【0004】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、麺原料等を十分に混捏することができる蒸練機、蒸練麺生地及び蒸練麺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するための本発明に係る蒸練機は、ドラムに設けた回転軸を回転させてこの回転軸に設けた混捏片を回転させることによってドラム内に投入された麺原料又はこの麺原料から得られた麺生地の混捏を行う蒸練機であって、前記混捏片が、断面円形又は断面楕円形の棒状に形成され、この混捏片が前記回転軸にその周方向に120°間隔でかつその軸方向に間隔をあけて放射状で3つ設けられ、これら3つの混捏片が1セットとして2セット以上設けられていることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、混捏片が断面円形又は断面楕円形の棒状に形成されていることから、混捏片で麺原料や麺生地を混捏するときに、混捏片によって麺原料又はこの麺原料から得られた麺生地が簡単に切れることがなく十分に麺原料や麺生地の混捏を行える。また、各混捏片は、回転軸にその軸方向に間隔をあけて設けられているために、各混捏片の回転軌跡が異なるので、効率よく麺原料や麺生地の混捏を行える。また、混捏片を回転させることにより、麺原料や麺生地はドラム内で圧縮されたり、引き伸ばされたり、折りたたまれたり、ひっくり返されたりして混捏される。特にひっくり返される場合には、回転する混捏片によって麺原料や麺生地が持ち上げられて混捏片が上昇する途中でその混捏片から麺原料や麺生地がドラム内にひっくり返された状態で落ちるが、3つの混捏片を1セットとして2セット以上設けられているので、麺原料や麺生地は2つ以上の混捏片によって確実に持ち上げられてひっくり返すことが可能となり、かたよりなく十分に混捏することができる。
【0007】
本発明に係る蒸練機において、前記ドラムが、円筒状に形成され、このドラムの同軸上に前記回転軸が設けられ、この回転軸に、前記混捏片が2セット合計6つ放射状に設けられていることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る蒸練麺生地は、前記の蒸練機を用いて、この蒸練機のドラムに主原料である小麦粉と少量の食塩と水と蒸気とを供給して得られる蒸練麺生地であって、前記蒸気を供給する前に前記主原料に少量の食塩と水を加えた状態でこの原料を攪拌することによってグルテン形成を図り、この攪拌操作終了後、前記蒸気を供給して急速に麺生地の温度を上昇させてそのアルファー化を図る立ち上げ操作を行って得られることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る蒸練麺生地において、前記グルテン形成に要する時間を品温20℃〜30℃の間で1分〜1分30秒とすることが好ましい。また、本発明に係る蒸練麺生地において、前記麺生地のアルファー化開始までに要する時間を20秒〜30秒とすることが好ましい。また、本発明に係る蒸練麺生地において、前記回転軸の回転速度は、前記攪拌操作時には200rpm±50とすることが好ましい。また、本発明に係る蒸練麺生地において、前記立ち上げ操作時の蒸気導入圧力を1〜3kg/cmとし、前記回転軸の回転数を150rpm±30とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る蒸練麺は、前記の蒸練麺生地から得られたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明に係る蒸練機によれば、断面円形又は断面楕円形の棒状の混捏片が回転軸にその周方向に120°間隔でかつその軸方向に間隔をあけて放射状で3つ設けられ、これら3つの混捏片が1セットとして2セット以上設けられているので、麺原料や麺生地が簡単に切れることなく圧縮されたり、引き伸ばされたり、折りたたまれたり、ひっくり返されたりして、十分に効率よく麺原料や麺生地の混捏を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る蒸練機を添付図面に基づいて詳述する。
【0013】
図1〜図5は本発明に係る蒸練機の一例を示す図である。本発明に係る蒸練機は、図1〜図5に示すように、ドラム3に設けた回転軸4を回転させてこの回転軸4に設けた混捏片5を回転させることによってドラム3内に投入された麺原料又はこの麺原料から得られた麺生地の混捏を行うもので、特に、ほうとう、うどんなどの生麺として用いられる蒸練麺生地(麺生地ということがある。)を生成するためのものである。蒸練麺生地は、小麦粉等の麺原料を単に撹拌して混ぜ合わせるものでなく、十分に混捏してほうとうやうどん等の麺となったときに、コシが強く、保形性に優れた麺が得られるものである。このため、本発明に係る蒸練機1としては、麺原料又はこの麺原料から得られた麺生地を十分に混捏し得ることが求められる。なお、本発明に係る蒸練機1は通常約50kgの小麦粉を1回の蒸練処理操作で処理することができる能力を有しているものであるが、処理量はこれに限定されない。
【0014】
本発明に係る蒸練機1は、麺原料が投入されて麺原料又はこの麺原料から得られた麺生地の混捏が行われるドラム3と、このドラム3内に同軸上に挿通され、回転駆動される回転軸4と、ドラム3内の回転軸4に設けられ、麺原料又は麺生地を混捏する混捏片5と、ドラム3に接続され、蒸気を供給する蒸気供給管10とを備えている。この本発明に係る蒸練機1は、混捏片5が断面円形又は断面楕円形の棒状に形成され、この混捏片5が回転軸4にその周方向に120°間隔でかつその軸方向に間隔をあけて放射状で3つ設けられ、これら3つの混捏片5が1セットとして2セット以上設けられていることに特徴がある。
【0015】
ドラム3は、有底円筒体状に形成されている。このドラム3は、開口部22が外側に向くと共に軸が水平と略平行となるように本体フレーム2に取り付けられている。本体フレーム2は枠体によって形成されている。ドラム3の開口部22には、密閉可能な横蓋7が着脱可能に取り付けられている。この横蓋7には、当該横蓋7を開口部22に密閉状態で取り付けるためのロック手段7aが設けられていると共に、横蓋7を取り付けるためのハンドル16が設けられている。
【0016】
回転軸4は、ドラム3に略同軸上に設けられている。回転軸4の一端部が横蓋7の略中央部に回転可能に軸支されている。回転軸4は、ドラム3の略同軸上を延び、ドラム3の底部である壁部3aをシールドパッキン28を貫通してドラム3外に延びている。回転軸4の他端部は、本体フレーム2に回転可能に軸支されている。回転軸4の他端部近傍には、プーリー14が取り付けられ、減速機構付きの正逆回転可能な駆動モーター9より駆動力伝達手段15を介して駆動力が伝達され、回転軸4が適宜回転速度で回転駆動されるようになっている。尚、この駆動力伝達手段15は実施の形態のものに限定されるものではなく、チェーン、ギヤ、Vベルト等の公知のものを用いることができる。
【0017】
ドラム3の上部、すなわち、ドラム3を本体フレーム2に取り付けたときに上部となる周面の一部は、開口されて原料投入口21として形成されている。この原料投入口21には、ホッパー23が設けられ、このホッパー23の開口部23aには、密閉可能な上蓋6が着脱可能に取り付けられている。この上蓋6には、当該上蓋6をホッパー23の開口部23aに密閉状態で取り付けるためのロック手段6aが設けられている。ホッパー23を介して原料投入口21から麺原料がドラム3内に投入される。
【0018】
ドラム3の下部、すなわち、ドラム3を本体フレーム2に取り付けたときに下部となる周面の一部は、開口されて生地取出口25として形成されている。この生地取出口25には、密閉可能な下蓋26が着脱可能に取り付けられている。この下蓋26には、当該下蓋26を生地取出口25に密閉状態で取り付けるためのロック手段(図示せず)が設けられている。下蓋26の内面26aは、ドラム3の内面と同一な曲面状に形成されており、この下蓋26を生地取出口25に密閉状態で取り付けたとき、下蓋26の内面26aとドラム3の内面3bとが同一曲面上になるように下蓋26をドラム3に取り付けることが好ましい。下蓋26のドラム3への開閉手段は、下蓋26を開閉できれば特に限定されず、例えば、生地取出口25の一方の端部、図5に示す例では右側の端部に例えばヒンジ等の開閉部材を介して開閉する回転方式でもよいし、また、ドラム3の周面に沿って下蓋26をスライドさせて開閉を行うスライド方式でもよい。また、下蓋26を開閉させる駆動手段としては、特に限定されず、シリンダー、モーター等の一般に周知である駆動機器を用いることができる。
【0019】
麺原料は、ほうとう、うどんなどの生麺として用いられる蒸練麺生地の原料として用いられているものであれば特に限定されず、例えば、主原料が小麦粉等である。この主原料の小麦粉としては、特に限定されず、例えば、主として中力1等粉と準強力1等粉等が挙げられる。中力1等粉としては、オーストラリア産FAQの規格でニューサウス ウエルス ウエスタンオーストラリア クイーンスランド産のものを適宜選択して使用され、準強力1等粉としては、アメリカ産 ダークハードウィンター ダークンノーザンスプリング、カナダ産マニトバノーザン等を適宜規格に合致するように使用される。
【0020】
ホッパー23には、水供給管8が取り付けられており、所定量の水がドラム3内に供給されるようになっている。この水供給管8には、流量調節可能な開閉弁17が設けられている。所定量の水がドラム3内に供給されるようになっている。
【0021】
また、ドラム3の壁部の下方の2箇所には、蒸気ヘッダー11に連通されている蒸気供給管10がそれぞれ取り付けられており、ドラム3の可能の2箇所に蒸気が供給されるようになっている。蒸気ヘッダー11には、圧力調節弁12を有する蒸気供給ライン13が接続されている。また、蒸気ヘッダー11の下部には、排気弁19を有する排気管18が接続されている。
【0022】
混捏片5は、麺原料等を混捏するためのものである。混捏片5は、断面円形又は断面楕円形の棒状、図示例では、断面円形の棒状に形成されている。混捏片5は、一端部である基端部が回転軸4にその径方向外方に延びるように設けられている。この混捏片5は、他端部である先端部がドラム3の周面の内壁近傍に位置される寸法で形成されていることが好ましい。この混捏片5は、回転軸4にその周方向に120°間隔でかつその軸方向に間隔をあけて放射状で3つ設けられている。これら3つの混捏片5が1セットとして2セット以上、好ましくは2の倍数のセット以上、特に好ましくは2セット設けられていることが好ましい。具体的には、6つの断面円形の混捏片5は、回転軸4にその軸方向に等間隔でずれて配置されている。また、6つの混捏片5を横蓋に近い方から第1混捏片5a、第2混捏片5b、第3混捏片5c、第4混捏片5d、第5混捏片5e、第6混捏片5fとすると、第1混捏片5a、第2混捏片5b及び第3混捏片5cは、回転軸4の周方向の右回りに120°間隔で配置されていると共に、第4混捏片5d、第5混捏片5e及び第6混捏片5fは、回転軸4の周方向の右回りに120°間隔であって第4混捏片5dが第1混捏片5aと同じ位置、第5混捏片5eが第2混捏片5bと同じ位置及び第6混捏片5fが第3混捏片5cと同じ位置になるようにそれぞれ配置されている。なお、混捏片5を3セット以上設けることで、ドラムが横方向に延びて大容量の麺原料を処理することが可能となる。
【0023】
次に本発明に係る蒸練機を用いて蒸練麺生地及び蒸練麺を生成する場合について説明する。
【0024】
例えば、小麦粉を50kgと、約0.5%程度の食塩を水に溶かした食塩水と、60%(生地水分47%)の常温水とからなる麺原料を蒸練機1のドラム3内へ入れることによって、蒸練麺生地の生成を開始する。
【0025】
まず、小麦粉と水に溶かした少量の食塩とをドラム3の上蓋6を開けてドラム3の内部へ投入し、上蓋6を閉じてロック手段6aでロックした後、水供給管8より常温水をドラム3内へ導入する。この麺原料の投入に続いて駆動モーター9をONさせて、6つの混捏片5を設けた回転軸4を例えば図5に示す状態においてで回転数200rpmで右回りに回転させる。麺原料は、6つの混捏片5によって高速攪拌されてから混捏され、その品温は蒸練機1の潜熱も加わって20℃〜30℃程度になる。この品温は夏と冬及び蒸練機1の持つ潜熱によって異なるが、ほぼ20℃〜30℃の範囲であれば品質に影響が出ない。また、回転軸4の回転数は、小麦粉等の原料の種類、配合比、温度等によって異なり、上下50rpmの幅を持たせることができる。
【0026】
この攪拌時間(混捏時間でもある。)は小麦粉の種類、量、外気温等によって異なるが、1分〜1分30秒程度である。1分以下だと空気が均一に混ざり合う十分な攪拌又は混練が行われず、1分30秒を超えると麺生地の粘弾性が弱まるので、好ましくは1分程度である。このような麺生地の形成工程を終えると、小麦粉はフワフワした豆腐状の麺生地となる。そして、このような豆腐状の麺生地は、小麦粉と水が十分に混ざり合ってグルテン形成されると共に、極めて均一に空気が混ざり合ったものとなる。
【0027】
このとき、混捏片5が断面円形又は断面楕円形の棒状に形成されているために、混捏片5で麺原料や麺生地を混捏するときに、混捏片5によって麺原料又はこの麺原料から得られた麺生地が簡単に切れることがなく十分に麺原料や麺生地の混捏を行える。また、各混捏片5は、回転軸4にその軸方向に間隔をあけて設けられているために、各混捏片5の回転軌跡が異なるので、効率よく麺原料や麺生地の混捏を行える。
【0028】
また、混捏片5を回転させることにより、麺原料や麺生地はドラム3内で圧縮されたり、引き伸ばされたり、折りたたまれたり、持ち上げられてひっくり返されたりして混捏される。特に持ち上げられる場合には、回転する混捏片5によって麺原料や麺生地が持ち上げられて混捏片5が上昇する途中でその混捏片5から落ちてひっくり返されたりするが、混捏片5を6つ設けた(混捏片5を2セット設けた)ことにより、麺原料や麺生地を確実に持ち上げることができ、かたよりなく十分に混捏することができる。すなわち、混捏片を120°間隔に3つだけ回転軸に設ける場合には、1つの混捏片だけでは麺原料や麺生地を持ち上げることができない。これに対して、混捏片5を6つ回転軸4に設けた場合には、回転軸4の軸方向に間隔をあけた2つの混捏片5(例えば、第1混捏片5aと第4混捏片5d)で麺原料や麺生地を持ち上げるので、確実に麺原料や麺生地の持ち上げを行うことができる。その結果、持ち上げられた麺原料や麺生地は、ドラム3の上方にいったりするとそれら混捏片5から落ちたりして、ひっくり返ったり、折りたたまれたりするので、かたよりなく十分に混捏することができる。すなわち、麺生地を捏ね上げて持ち上げて逆転させて落とすことにより、かたよりなく略均一に麺生地の混捏を行えることになる。また、麺生地は、2つの混捏片5によって持ち上げられて落ちると、混捏片5が回転軸4に120°間隔に設けられているので、次の2つの混捏片5(例えば、第2混捏片5bと第5混捏片5e)によって即座に持ち上げられる。その結果、120°間隔に設けられた2組の混捏片5によって間隔をあけることなく次から次へと持ち上げられて落とされるので、高速回転の際の生地負荷荷重の軽減と均等化を図りつつ効率よく混捏を行える。従って、十分に効率よく麺原料や麺生地の混捏を行うことができる。
【0029】
グルテン形成されて豆腐状の麺生地が形成されると、直ちに蒸練機1内へ蒸気供給管10を介して蒸気の導入を図り、立ち上げ蒸練操作に入る。導入する蒸気の温度は、小麦粉の種類、量、外気温等によって異なり、例えば127℃であり、その圧力は2.0kg/cmを標準とするが、±0.5kg/cmの間で小麦粉等の種類、量、配合比、ドラム3の潜熱、外気温等によって適宜調節する。この時の回転軸4の回転数は攪拌操作の時と違って150rpmを最適とするが、この回転数に限定されない。この回転数も小麦粉等の原料、量、配合比等によって異なり、上下30rpmの範囲で適宜調節するものとする。この立ち上げ蒸練操作時には、小麦粉生地の酵素活性対策を念頭に置くことが大切であり、アミラーゼ活性帯である30℃〜52℃、プロテナーゼ活性帯である35℃〜55℃の温度帯を速やかに通過すべく生地温度の上昇を図ることが重要である。この間の所要時間を20秒〜30秒程度例えば30秒程度とすることが望ましい。このように、急速に蒸気を吹き込み、アルファー化開始温度62℃から麺生地にアルファー化が速やかに起こる90°C以上の温度に上げてやることが重要である。
【0030】
この立ち上げ蒸練操作時の蒸気の投入温度と上昇速度の制御に当っては、当然のことながら蒸気温度と蒸気量の制御が最も大切であり、立ち上がり温度上昇の成否が上述した酵素活性対策の決め手となる。そのためには安定した温度と蒸気量の供給が必要となり、上述したように、大きなスペースを有するヘッダーを用意することが望ましいことになる。
【0031】
蒸練操作を開始して1分15秒程度を経過すると、麺生地の温度が100℃以上となるので、回転軸4の回転を150rpmに維持したままで蒸練機1の上蓋6のロック手段6aを弛めて1分45秒〜2分45秒程度持続する。この本捏蒸練操作により、生地のアルファー化が十分に行き渡ることになる。同時にこのことにより蒸練機1内の圧力が急激に上昇するのが防止され、余剰蒸気を外部へ排出することが可能となるものである。
【0032】
続いて、蒸気の圧力調節弁12を調節して蒸気圧力を1kg/cmに減圧し、同時に回転軸4の回転を100rpmに下げて仕上げ蒸練操作を行う。
【0033】
このようにして、立ち上げ蒸練操作から仕上げ蒸練操作に要する時間は合計でも3〜4分である。
【0034】
このように、蒸練操作が終了した蒸練麺生地の品温は約97℃であるが、蒸練機1の下蓋26を開いて生地取出口25から蒸練麺生地を取り出す。この取り出した蒸練麺生地を直ちに図示してない公知構成の圧延機を用いて圧延し、圧延された麺生地は600mm×1200mmの大きさに静置網枠取り付け積み重ね方式を用いて1枚ごとに網枠通風除冷を行い、30℃〜40℃まで除冷する。この除冷所要時間は外気温の高い時には2〜3時間を要するが、冬期は30分〜40分程度で足りる。なお、蒸練機1から蒸練麺生地を取り出すとき、蒸練麺生地が混捏片5や回転軸4に絡み付いていることがあるが、この場合、駆動モーター9の回転駆動方向を逆方向に逆回転スイッチ等により切り替えた後、この駆動モーター9を例えば1秒〜2秒間駆動させて回転軸4を逆回転(例えば図5に示す例では左回りに回転)させる寸動動作を複数回行う。具体的には、回転軸4及び混捏片5を回転軸4の軸回りに混捏時とは逆方向に例えば略120°寸動させる寸動動作を行う寸動スイッチ(図示せず)を設け、この寸動スイッチのオン・オフにより間隔をあけて寸動動作を複数回行う。このように、回転軸4及び混捏片5が逆方向に複数回寸動させることにより、混捏片5等に絡み付いた蒸練麺生地が混捏片5等から解けてドラム3内の下方に落下するので、蒸練麺生地の生地取出口25からの取り出しを容易に速やかに行うことができる。
【0035】
蒸練麺生地の温度が30℃〜40℃となった時点で、麺生地を制菌空調機付きの低温保管室(室温10℃〜20℃)内に移して熟成させる。この熟成に要する時間は、季節や外気温、麺生地の種類や大きさによって異なるが、おおよそ5時間〜20時間である。
【0036】
熟成を終えた平板シート状の蒸練麺生地を図示してない裁断機にかけて裁断を行う。長さは300mm単位として、断面は略矩形状となるように幅が10mm〜20mm平均15mmの巾で厚みが3mm〜4mmの裁断サイズを選定する。これにより、本発明に係る蒸練麺としての煮ほうとう用の麺が得られる。
【0037】
このように得られた麺の麺線は、内部までアルファー化が均一になされ、グルテンのダブル結合がなされている結果、手作りの麺と同じ食感、風味、粘弾性、及び保形性を持った麺を提供できるものであり、切り口の色も、内外ともに同じ乳白色又はアメ色となり、従来の製法による麺線のように、内部が白濁していることはないので、視覚的にもこれを識別することが可能である。
【0038】
裁断した麺生地は好ましくは、重さ250gずつアルコール70%濃度のものを約5%添加して袋詰めにされ、常温又は冷蔵室で保管される。尚、袋詰した麺生地を冷凍する場合にはアルコール添加は行わない。また、麺生地を冷凍麺にする場合には、低温保管室の室温を−22℃〜−25℃として、40分〜60分放置すると、麺生地の氷結固形化が起きるので、さらに5時間〜20時間放置して熟成を図るものである。
【0039】
調理方法としては、具材をつゆの材料と共に火にかけてから、これに煮ほうとう用の麺を加えて5分〜10分例えば10分ほど煮込むことにより供食するものである。出来上がったほうとうは、手作り麺と同じように、光沢があり煮崩れはなく、保形性及び粘弾性に優れ、これを食したところ、手作り麺に勝るとも劣らない、歯切れ、風味、食感が得られた。すなわち、前述のようにして得られた麺生地からの麺(煮ほうとう用の麺)は、急速に短時間で麺生地を蒸気で加熱してアルファー化を効率よく十分に行っているので、調理時間が早く、手作り麺と同じように、光沢があり煮崩れはなく、保形性及び粘弾性に優れ、手作り麺に勝るとも劣らない、歯切れ、風味、食感を得ることができた。また、冷凍麺とした場合、急速に短時間で麺生地を蒸気で加熱するために、麺中の含水率が低いので、冷凍麺の解凍時間を早くすることができ、調理時間が早くなる。また、冷凍麺として解凍した場合、麺中の含水率が低いために、解凍した麺の形が崩れることはなく、手作り麺と同じように、光沢があり煮崩れはなく、保形性及び粘弾性に優れ、手作り麺に勝るとも劣らない、歯切れ、風味、食感を得ることができた。
【0040】
なお、本発明の実施の形態では、煮ほうとう用の麺を作ってこの麺を調理した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、うどん用の麺を作って調理するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように本発明に係る蒸練機は、断面円形又は断面楕円形の棒状の混捏片が回転軸にその周方向に120°間隔でかつその軸方向に間隔をあけて放射状で3つ設けられ、これら3つの混捏片が1セットとして2セット以上設けられているので、麺原料や生地が簡単に切れることなく圧縮されたり、引き伸ばされたり、折りたたまれたり、ひっくり返されたりして、十分に効率よく麺原料や生地の混捏を行うことができることから、工業的にほうとう、うどんなどの生麺として用いられる蒸練麺生地を生成する蒸練機として最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る蒸練機の一部断面正面図である。
【図2】図1に示した蒸練機の左側面図である。
【図3】図1に示した蒸練機の一部断面平面面図である。
【図4】図1に示した蒸練機のドラムの部分の要部を示す断面図である。
【図5】図1に示した蒸練機のドラムの部分の要部を示す左側断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 蒸練機
2 本体フレーム
3 ドラム
4 回転軸
5 混捏片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムに設けた回転軸を回転させてこの回転軸に設けた混捏片を回転させることによってドラム内に投入された麺原料又はこの麺原料から得られた麺生地の混捏を行う蒸練機であって、
前記混捏片が、断面円形又は断面楕円形の棒状に形成され、この混捏片が前記回転軸にその周方向に120°間隔でかつその軸方向に間隔をあけて放射状で3つ設けられ、これら3つの混捏片が1セットとして2セット以上設けられていることを特徴とする、蒸練機。
【請求項2】
前記ドラムが、円筒状に形成され、このドラムの同軸上に前記回転軸が設けられ、この回転軸に、前記混捏片が2セット合計6つ放射状に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の蒸練機。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の蒸練機を用いて、この蒸練機のドラムに主原料である小麦粉と少量の食塩と水と蒸気とを供給して得られる蒸練麺生地であって、前記蒸気を供給する前に前記主原料に少量の食塩と水を加えた状態でこの原料を攪拌することによってグルテン形成を図り、この攪拌操作終了後、前記蒸気を供給して急速に麺生地の温度を上昇させてそのアルファー化を図る立ち上げ操作を行って得られることを特徴とする、蒸練麺生地。
【請求項4】
前記グルテン形成に要する時間を品温20℃〜30℃の間で1分〜1分30秒としたことを特徴とする、請求項3に記載の蒸練麺生地。
【請求項5】
前記麺生地のアルファー化開始までに要する時間を20秒〜30秒としたことを特徴とする、請求項3又は4に記載の蒸練麺生地。
【請求項6】
前記回転軸の回転速度は、前記攪拌操作時には200rpm±50とすることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の蒸練麺生地。
【請求項7】
前記立ち上げ操作時の蒸気導入圧力を1〜3kg/cmとし、前記回転軸の回転数を150rpm±30とすることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の蒸練麺生地。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載の蒸練麺生地から得られたことを特徴とする、蒸練麺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−97482(P2007−97482A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291403(P2005−291403)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(591095708)株式会社新井機械製作所 (15)
【Fターム(参考)】