説明

蓄冷熱交換器

【課題】蓄冷材に効率良く冷熱を蓄えることができるとともに、製造作業が容易な蓄冷熱交換器を提供する。
【解決手段】蓄冷熱交換器1は、エバポレータ2と、蓄冷材が封入された蓄冷器3とよりなる。エバポレータ2が、冷媒用タンク部4,5、および一端部が冷媒用タンク部4,5に通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管部6を備え、蓄冷器3が、冷媒用タンク部4,5と間隔をおくとともに冷媒流通管部6の他端部よりも冷媒流通管部6の長さ方向外側に配置された蓄冷材用タンク部4,5、および一端部が蓄冷材用タンク部4,5に通じさせられて他端部が冷媒用ヘッダ部4,5側にのびる複数の扁平状蓄冷材封入管部6を備えている。エバポレータ2の冷媒流通管部6と蓄冷器3の蓄冷材封入管部6とを、冷媒用タンク部4,5および蓄冷材用タンク部4,5の長さ方向に並べて互いに接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷熱交換器に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、通風方向下流側(図1および図7に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
ところで、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを備えた通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決したカーエアコンとして、圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサと、コンデンサを通過した冷媒を減圧する減圧器と、ケース内の通風路に配置され、かつ減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータと、エバポレータの通風方向下流側においてケース内の通風路に配置され、かつ蓄冷材が封入された蓄冷器とを備えており、エバポレータが、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部および隣り合う冷媒流通管部どうしの間に配置されたフィンを有し、蓄冷器が、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部および隣り合う蓄冷材封入管部どうしの間に配置されたフィンを有しているものが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1記載のカーエアコンによれば、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒がエバポレータに入り、エバポレータの冷媒流通管部を流れる間に、隣り合う冷媒流通管部どうしの間の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、空気が冷却されるとともに冷媒は気相となって流出する。このとき、エバポレータを通過した冷却風の有する冷熱が蓄冷器のフィンを介して蓄冷材封入管部内に存在する蓄冷材に伝えられ、その結果蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。また、圧縮機が停止した場合には、蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材の有する冷熱が、蓄冷器のフィンを介してエバポレータおよび蓄冷器を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータを通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のカーエアコンの場合、蓄冷器の蓄冷材に冷熱を蓄える際には、エバポレータの冷媒流通管部を流れる冷媒の有する冷熱は、伝熱性の低い空気を介して蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられるだけであるので、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が低くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1記載のカーエアコンの有する問題を解決することを目的として、特許文献2記載の蓄冷熱交換器が提案されている。特許文献2記載の蓄冷熱交換器は、互いに間隔をおいて配置された1対の冷媒用タンク部、および両冷媒用タンク部間に、幅方向を前後方向に向けるとともに冷媒用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がそれぞれ両冷媒用タンク部に通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管部を有するエバポレータと、エバポレータの冷媒流通管部の片面に固定状に設けられ、かつ内部に蓄冷材が封入された中空状の蓄冷容器とを備えており、冷媒流通管部と蓄冷容器とからなる組がタンク部の長さ方向に間隔をおいて設けられるとともに、隣り合う冷媒流通管部と蓄冷容器とからなる組間にフィンが配置されたものである。特許文献2記載の蓄冷熱交換器のエバポレータは、コンプレッサおよび冷媒冷却器としてのコンデンサとともに、フロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。
【0009】
特許文献2記載の蓄冷熱交換器によれば、冷媒流通管部を流れる低温の冷媒の有する冷熱は、冷媒流通管部の壁および蓄冷容器の壁を通ってり蓄冷容器内の蓄冷材に伝えられるようになっているので、特許文献1記載のカーエアコンの場合に比べて、蓄冷材に効率良く冷熱を蓄えることが可能になる。
【0010】
しかしながら、特許文献2記載の蓄冷熱交換器においては、複数の蓄冷容器内に蓄冷材を封入する作業が極めて面倒であり、製造作業が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−337537号公報
【特許文献2】特許第4043776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明の目的は、上記問題を解決し、特許文献1記載のカーエアコンに比べて蓄冷材に効率良く冷熱を蓄えることができるとともに、特許文献2記載の蓄冷熱交換器に比べて製造作業が容易な蓄冷熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0014】
1)エバポレータと、蓄冷材が封入された蓄冷器とよりなり、エバポレータが、冷媒用タンク部、および幅方向を前後方向に向けるとともに冷媒用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ一端部が冷媒用タンク部に通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管部を備え、蓄冷器が、冷媒用タンク部と間隔をおくとともに冷媒流通管部の他端部よりも冷媒流通管部の長さ方向外側に配置された蓄冷材用タンク部、および幅方向を前後方向に向けるとともに蓄冷材用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ一端部が蓄冷材用タンク部に通じさせられて他端部が冷媒用ヘッダ部側にのびる複数の扁平状蓄冷材封入管部を備えており、エバポレータの冷媒流通管部と蓄冷器の蓄冷材封入管部とが、冷媒用タンク部および蓄冷材用タンク部の長さ方向に並ぶとともに互いに接触させられている蓄冷熱交換器。
【0015】
2)エバポレータの冷媒流通管部と、当該冷媒流通管部に接触した蓄冷器の蓄冷材封入管部とからなる組が、冷媒用タンク部および蓄冷材用タンク部の長さ方向に間隔をおいて設けられるとともに、隣り合う組どうしの間が通風間隙となされ、通風間隙にフィンが配置されている上記1)記載の蓄冷熱交換器。
【0016】
3)エバポレータが、前後方向に並んで設けられた2つの冷媒用タンク部と、冷媒用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管部からなる前後2つの冷媒流通管部群とを備え、各冷媒用タンク部に各冷媒流通管部群の冷媒流通管部の一端部が通じさせられ、前後両冷媒流通管部群の冷媒流通管部が前後方向に並んでいるとともに、前後方向に並んだ2つの冷媒流通管部の他端部どうしが連通部を介して通じさせられており、蓄冷器が、前後方向に並んで設けられた2つの蓄冷材用タンク部と、蓄冷材用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置された複数の蓄冷材封入管部からなる前後2つの蓄冷材封入管部群とを備え、各蓄冷材用タンク部に各蓄冷材封入管部群の蓄冷材封入管部の一端部が通じさせられ、前後両蓄冷材封入管部群の蓄冷材封入管部が前後方向に並んでいるとともに、前後方向に並んだ2つの蓄冷材封入管部の他端部どうしが連通部を介して通じさせられており、エバポレータの冷媒用タンク部が、蓄冷器の連通部よりも蓄冷材封入管部の長さ方向外側に配置され、蓄冷器の蓄冷材用タンク部がエバポレータの連通部よりも冷媒流通管部の長さ方向外側に配置されている上記1)または2)記載の蓄冷熱交換器。
【0017】
4)エバポレータが、周縁部どうしがろう付された2枚のプレートよりなる複数の扁平中空体が積層されることにより形成されており、各扁平中空体が、2枚のプレート間に前後方向に並んで形成された2つの膨出状冷媒流通管部と、2枚のプレート間に両冷媒流通管部の一端に連なるように形成され、かつ冷媒流通管部よりも膨出高さの高い膨出状ヘッダ形成部と、2枚のプレート間に両冷媒流通管部の他端に連なるとともに両冷媒流通管部を通じさせるように形成された膨出状連通部とを備えており、隣り合う扁平中空体のヘッダ形成部どうしが接合されるとともに、全扁平中空体のヘッダ形成部により冷媒用タンク部が形成され、
蓄冷器が、周縁部どうしがろう付された2枚のプレートよりなる複数の扁平中空体が積層されることにより形成されており、各扁平中空体が、2枚のプレート間に前後方向に並んで形成された2つの膨出状蓄冷材封入管部と、2枚のプレート間に両蓄冷材封入管部の一端に連なるように形成され、かつ蓄冷材封入管部よりも膨出高さの高い膨出状ヘッダ形成部と、2枚のプレート間に両蓄冷材封入管部の他端に連なるとともに両蓄冷材封入管部を通じさせるように形成された膨出状連通部とを備えており、隣り合う扁平中空体のヘッダ形成部どうしが接合されるとともに、全扁平中空体のヘッダ形成部により蓄冷材用タンク部が形成されている上記3)記載の蓄冷熱交換器。
【0018】
5)エバポレータが、前後両冷媒用タンク部が一体化されたヘッダタンクと、両端がヘッダタンクの各冷媒用タンク部に接続されたU形曲がり扁平チューブとからなり、U形曲がり扁平チューブが、1つの扁平チューブを長さ方向の中間部で曲げることにより形成されるとともに、同一平面内に位置する2つの直管部と、両直管部を連結する連結部とにより構成され、U形曲がり扁平チューブの両直管部が冷媒流通管部となるとともに、連結部が連通部となっており、
蓄冷器が、前後両蓄冷材用タンク部が一体化されたヘッダタンクと、両端がヘッダタンクの各蓄冷材用タンク部に接続されたU形曲がり扁平チューブとからなり、U形曲がり扁平チューブが、1つの扁平チューブを長さ方向の中間部で曲げることにより形成されるとともに、同一面内に位置する2つの直管部と、両直管部を連結する連結部とにより構成され、U形曲がり扁平チューブの両直管部が蓄冷材封入管部となるとともに、連結部が連通部となっている上記3)記載の蓄冷熱交換器。
【発明の効果】
【0019】
上記1)〜5)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータと、蓄冷材が封入された蓄冷器とよりなり、エバポレータが、冷媒用タンク部、および幅方向を前後方向に向けるとともに冷媒用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ一端部が冷媒用タンク部に通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管部を備え、蓄冷器が、冷媒用タンク部と間隔をおくとともに冷媒流通管部の他端部よりも冷媒流通管部の長さ方向外側に配置された蓄冷材用タンク部、および幅方向を前後方向に向けるとともに蓄冷材用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ一端部が蓄冷材用タンク部に通じさせられて他端部が冷媒用ヘッダ部側にのびる複数の扁平状蓄冷材封入管部を備えており、エバポレータの冷媒流通管部と蓄冷器の蓄冷材封入管部とが、冷媒用タンク部および蓄冷材用タンク部の長さ方向に並ぶとともに互いに接触させられているので、エバポレータの冷媒流通管部を流れる低温の冷媒の有する冷熱が、冷媒流通管部の壁および蓄冷器の蓄冷材封入管部の壁を通って蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられることになる。したがって、特許文献1記載のカーエアコンに比べて、蓄冷材に効率良く冷熱を蓄えることができる。
【0020】
また、蓄冷器が、冷媒用タンク部と間隔をおくとともに冷媒流通管部の他端部よりも冷媒流通管部の長さ方向外側に配置された蓄冷材用タンク部、および幅方向を前後方向に向けるとともに蓄冷材用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ一端部が蓄冷材用タンク部に通じさせられて他端部が冷媒用ヘッダ部側にのびる複数の扁平状蓄冷材封入管部を備えているので、蓄冷材用タンク部から蓄冷材を入れることにより、全蓄冷材封入管部に蓄冷材を封入することができる。したがって、特許文献2記載の蓄冷熱交換器に比べて、蓄冷材の封入作業が簡単になり、全体の製造作業が容易になる。
【0021】
さらに、蓄冷器が、エバポレータの冷媒用タンク部と間隔をおくとともに冷媒流通管部の他端部よりも冷媒流通管部の長さ方向外側に配置された蓄冷材用タンク部を有しており、冷媒用タンク部と蓄冷材用タンク部とが独立しているので、たとえば1つのタンク内を冷媒用タンク部と蓄冷材用タンク部とに分離したりする必要がなく、蓄冷材の冷凍サイクルへの流出を防止することができる。
【0022】
上記2)の蓄冷熱交換器によれば、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材の有する冷熱が、フィンを介して通風間隙を通過する空気に伝えられるので、冷却性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態1の蓄冷熱交換器の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1の蓄冷熱交換器の後方から前方を見た垂直断面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】図1の蓄冷熱交換器のエバポレータの扁平中空体を示す分解斜視図である。
【図5】図1の蓄冷熱交換器のエバポレータの扁平中空体と蓄冷器の扁平中空体とを示す斜視図である。
【図6】図1の蓄冷熱交換器のエバポレータにおける冷媒の流れを示す図である。
【図7】この発明の実施形態2の蓄冷熱交換器の全体構成を示す斜視図である。
【図8】図7の蓄冷熱交換器の後方から前方を見た垂直断面図である。
【図9】図8のB−B線拡大断面図である。
【図10】図7の蓄冷熱交換器のエバポレータのU形曲がり扁平チューブの一部分を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
以下の説明において、図2および図8の上下、左右を上下、左右というものとする。
【0026】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0027】
実施形態1
この実施形態は図1〜図6に示すものである。図1および図2は実施形態1の蓄冷熱交換器の全体構成を示し、図3〜図5はその要部の構成を示す。また、図6は図1に示す蓄冷熱交換器のエバポレータにおける冷媒の流れ方を示す。
【0028】
図1〜図3において、蓄冷熱交換器(1)は、冷媒が流れるエバポレータ(2)と、蓄冷材(図示略)が封入された蓄冷器(3)とよりなる。
【0029】
エバポレータ(2)は、前後方向に並んで設けられるとともに左右方向にのびる2つの冷媒用タンク部(4)(5)と、幅方向を前後方向に向けるとともに左右方向(冷媒用タンク部(4)(5)の長さ方向)に間隔をおいて配置され、かつ上端部が前後の冷媒用タンク部(4)(5)に通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管部(6)からなる前後2つの冷媒流通管部群(7)とを備えている。エバポレータ(2)の前側の冷媒用タンク部(4)の右端に冷媒入口部材(8)が設けられるとともに、後側の冷媒用タンク部(5)の左端に冷媒出口部材(9)が設けられている。前後両冷媒流通管部群(7)の冷媒流通管部(6)は前後方向に並んでおり、前後方向に並んだ冷媒流通管部(6)の下端部どうしは連通部(11)を介して通じさせられている。
【0030】
図1〜図5に示すように、エバポレータ(2)は、幅方向を前後方向(通風方向)に向けて左右方向に積層状に並べられるとともに相互に接合された縦長方形の複数のエバポレータ用扁平中空体(12)を備えている。扁平中空体(12)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、かつ左右両側方から見た外形が同一である2枚のプレート(13)どうしをろう付することにより形成されたものである。扁平中空体(12)を構成する2枚のプレート(13)間には、上下方向にのびる前後2つの膨出状冷媒流通管部(6)と、両冷媒流通管部(6)の上端部にそれぞれ連なる膨出状タンク形成部(14)と、前後両冷媒流通管部(6)の下端部どうしを通じさせる膨出状連通部(11)とが設けられている。扁平中空体(12)の前後の冷媒流通管部(6)内に跨るように、アルミニウム製コルゲート状インナーフィン(15)が配置されており、両プレート(13)にろう付されている。扁平中空体(12)の両冷媒流通管部(6)の左右方向の高さは相互に等しくなっている。また、扁平中空体(12)の両タンク形成部(14)の左右方向の高さは相互に等しくなっているとともに、冷媒流通管部(6)の左右方向の高さよりも高くなっている。さらに、連通部(11)の左右方向の高さは冷媒流通管部(6)の左右方向の高さと等しくなっている。そして、隣接する扁平中空体(12)のタンク形成部(14)どうしが連通状にろう付されることにより、エバポレータ(2)が形成されている。
【0031】
大部分の扁平中空体(12)を構成する左側のプレート(13)は、上下方向にのびかつ左方に膨出した前後2つの管部形成用膨出部(16)と、各管部形成用膨出部(16)の上端に連なり、かつ左方に膨出するとともに管部形成用膨出部(16)よりも膨出高さの高いタンク部形成用膨出部(17)と、両管部形成用膨出部(16)の下端に跨り、かつ左方に膨出するとともに管部形成用膨出部(16)と膨出高さの等しい連通部形成用膨出部(18)とを備えている。各タンク部形成用膨出部(17)の頂壁には貫通穴(19)が形成されている。連通部形成用膨出部(18)の頂壁には右方に突出した補強リブ(21)が形成されている。大部分の第1扁平中空体(12)を構成する右側のプレート(13)は、左側プレート(13)を左右逆向きにしたものであり、同一部分には同一符号を付す。そして、2枚のプレート(13)を、インナーフィン(15)を介して膨出部(16)(17)(18)の開口どうしが対向するように組み合わせてろう付することにより、扁平中空体(12)が形成されている。このとき、両プレート(13)の補強リブ(21)どうしもろう付されている。また、隣接する2つの扁平中空体(12)のタンク形成部(14)どうしは、扁平中空体(12)のタンク部形成用膨出部(17)の貫通穴(19)どうしが通じるように相互にろう付されており、これにより隣り合う扁平中空体(12)のタンク形成部(14)どうしが連通状にろう付され、すべての扁平中空体(12)の前後両タンク形成部(14)により前後両冷媒用タンク部(4)(5)が形成されている。
【0032】
右端の扁平中空体(12)の右側プレート(13)における前側のタンク部形成用膨出部(17)の頂壁の貫通穴(19)に通じるように冷媒入口部材(8)が設けられ、左端の扁平中空体(12)の左側プレート(13)における後側のタンク部形成用膨出部(17)の頂壁の貫通穴(19)に通じるように冷媒出口部材(9)が設けられている。なお、右端の扁平中空体(12)の右側プレート(13)における後側のタンク部形成用膨出部(17)の頂壁、および左端の扁平中空体(12)の左側プレート(13)における前側のタンク部形成用膨出部(17)の頂壁には、貫通穴(19)は形成されていない。また、左右方向の中央部よりも右側に位置する扁平中空体(12)の右側プレート(13)における前側のタンク部形成用膨出部(17)の頂壁、および左右方向の中央部よりも左側に位置する扁平中空体(12)の右側プレート(13)における後側のタンク部形成用膨出部(17)の頂壁には、貫通穴(19)は形成されておらず、これにより前側冷媒用タンク部(4)内および後側冷媒用タンク部(5)内が、それぞれ仕切(22)により2つの空間に区画されている。そして、前側冷媒用タンク部(4)内および後側冷媒用タンク部(5)内が、それぞれ仕切(22)により2つの空間に区画されていることによって、冷媒入口部材(8)から前側の冷媒用タンク部(4)の右側の区画内に流入した冷媒が、すべての扁平中空体(12)を通って後側の冷媒用タンク部(5)の左側の区画内に入った後、冷媒出口部材(9)を通って流出するようになされている。
【0033】
蓄冷器(3)は、エバポレータ(2)を前後方向にのびる直線の周りに180度回転させたものとほぼ同一の構成であり、各部には同一の符号を付す。ここで、冷媒用タンク部(4)(5)が蓄冷材用タンク部、冷媒流通管部(6)が蓄冷材封入管部、冷媒流通管部群(7)が蓄冷材封入管部群、連通部(11)が蓄冷材封入管部(6)の上端部どうしを通じさせる連通部にそれぞれなっている。蓄冷器(3)におけるエバポレータ(2)との相違点は、右端の扁平中空体(12)の右側プレート(13)における前後両タンク部形成用膨出部(17)の頂壁に貫通穴(19)が形成されていること、右端の扁平中空体(12)の右側プレート(13)における前側のタンク部形成用膨出部(17)の頂壁の貫通穴(19)に通じるように蓄冷材注入部材(23)が設けられるとともに、右端の扁平中空体(12)の右側プレート(13)における後側のタンク部形成用膨出部(17)の頂壁の貫通穴(19)に通じるように空気抜き部材(24)が設けられていること、冷媒入口部材(8)および冷媒出口部材(9)が設けられていないこと、左端の扁平中空体(12)の左側プレート(13)における前後両タンク部形成用膨出部(17)の頂壁に貫通穴(19)が形成されていないこと、ならびに前後両蓄冷材用タンク部(4)(5)内が仕切により2つの空間に仕切られていないことである。また、エバポレータ(2)の冷媒用タンク部(4)(5)は、蓄冷器(3)の連通部(11)よりも上方(蓄冷材封入管部(6)の長さ方向外側)に配置され、蓄冷器(3)の蓄冷材用タンク部(4)(5)はエバポレータ(2)の連通部(11)よりも下方(冷媒流通管部(6)の長さ方向外側)に配置されている。
【0034】
蓄冷器(3)内へ封入される蓄冷材としては、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜10℃程度に調整されたものを用いることが好ましい。また、蓄冷器(3)内への蓄冷材の封入量は、全蓄冷材封入管部(6)内を上端部まで満たすとともに、連通部(11)内を満たすような量とするのがよい。蓄冷材注入部材(23)および空気抜き部材(24)は、蓄冷器(3)内への蓄冷材の封入後に閉鎖されている。
【0035】
エバポレータ(2)の扁平中空体(12)の冷媒流通管部(6)および連通部(11)と、蓄冷器(3)の扁平中空体(12)の蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)とは、左右方向(冷媒用タンク部(4)(5)および蓄冷材用タンク部(4)(5)の長さ方向)に並ぶとともに互いに接触させられた状態で相互にろう付されている。ここでは、蓄冷器(3)の扁平中空体(12)の蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)が、エバポレータ(2)の扁平中空体(12)の蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)の右側に位置させられており、蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)の左側面が冷媒流通管部(6)および連通部(11)の右側面に接触させられてろう付されている。そして、エバポレータ(2)の扁平中空体(12)の冷媒流通管部(6)および連通部(11)と、冷媒流通管部(6)に接触した蓄冷器(3)の扁平中空体(12)の蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)とからなる組(25)が、左右方向に間隔をおいて設けられており、隣り合う組(25)どうしの間が通風間隙(26)となされるととともに、通風間隙(26)にアルミニウム製のコルゲート状アウターフィン(27)が配置されて冷媒流通管部(6)および連通部(11)と、蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)とにろう付されている。アウターフィン(27)の前後方向の幅はエバポレータ(2)および蓄冷器(3)の扁平中空体(12)の前後方向の幅とほぼ等しく、前後両冷媒流通管部(6)および前後両蓄冷材封入管部(6)に跨っている。
【0036】
エバポレータ(2)の左端の扁平中空体(12)の冷媒流通管部(6)および連通部(11)、ならびに蓄冷器(3)の右端の扁平中空体(12)の蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)の外側にもアルミニウム製のコルゲート状アウターフィン(27)が配置されて冷媒流通管部(6)および連通部(11)、ならびに蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)にろう付されている。また、左右両端のアウターフィン(27)の外側にアルミニウム製サイドプレート(28)が配置されてアウターフィン(27)にろう付されている。両サイドプレート(28)の上端部は、エバポレータ(2)の左右両端の扁平中空体(12)のタンク形成部(14)の外面にろう付され、同じく下端部は蓄冷器(3)の左右両端の扁平中空体(12)のタンク形成部(14)の外面にろう付されている。エバポレータ(2)の冷媒入口部材(8)および冷媒出口部材(9)と、蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(6)および空気抜き部材(24)はサイドプレート(28)を貫通している。
【0037】
上述した蓄冷熱交換器(1)のエバポレータ(2)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、およびコンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともにカーエアコンを構成する。当該カーエアコンにおいて、圧縮機が作動している場合には、図6に示すように、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口部材(8)を通って蓄冷熱交換器(1)のエバポレータ(2)の前側冷媒用タンク部(4)の右側の区画内に入り、すべての扁平中空体(12)を通って後側冷媒用タンク部(5)の左側の区画内に入った後、冷媒出口部材(9)を通って流出する。そして、冷媒が冷媒流通管部(6)内を流れる間に、通風間隙(26)を通過する空気と熱交換をし、空気が冷却されるとともに冷媒は気相となって流出する。
【0038】
このとき、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(6)および連通部(11)内を流れる冷媒の有する冷熱が、プレート(13)(冷媒流通管部(6)および蓄冷材封入管部(6)の壁)を通って、当該冷媒流通管部(6)および連通部(11)と組(25)をなしている蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)内の蓄冷材に伝えられ、その結果蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。
【0039】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷器(3)の蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)内の蓄冷材の有する冷熱が、蓄冷材封入管部(6)および連通部(11)にろう付されているアウターフィン(27)を介して通風間隙(26)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(2)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0040】
実施形態2
この実施形態は図7〜図10に示すものである。図7および図8は実施形態2の蓄冷熱交換器の全体構成を示し、図9および図10はその要部の構成を示す。
【0041】
図7〜図9において、蓄冷熱交換器(30)は、冷媒が流れるエバポレータ(31)と、蓄冷材(図示略)が封入された蓄冷器(32)とよりなる。
【0042】
エバポレータ(31)は、前後方向に並んで設けられるとともに左右方向にのびる2つの冷媒用タンク部(33)(34)と、幅方向を前後方向に向けるとともに左右方向(冷媒用タンク部(33)(34)の長さ方向)に間隔をおいて配置され、かつ上端部が前後の冷媒用タンク部(33)(34)に通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管部(35)からなる前後2つの冷媒流通管部群(36)とを備えている。エバポレータ(31)の前側の冷媒用タンク部(33)の右端に冷媒入口部材(37)が設けられるとともに、後側の冷媒用タンク部(34)の左端に冷媒出口部材(38)が設けられている。前後両冷媒流通管部群(36)の冷媒流通管部(35)は前後方向に並んでおり、前後方向に並んだ冷媒流通管部(35)の下端部どうしは連通部(39)を介して通じさせられている。
【0043】
エバポレータ(31)は、前後両冷媒用タンク部(33)(34)が一体化されたアルミニウム製ヘッダタンク(41)と、両端がヘッダタンク(41)の各冷媒用タンク部(33)(34)に接続されたアルミニウム製U形曲がり扁平チューブ(42)とを備えている。
【0044】
ヘッダタンク(41)の前側冷媒用タンク部(33)内は、左右方向の中央部よりも右側において仕切(43)により左右2つの空間に区画されており、同じく後側冷媒用タンク部(34)内は、左右方向の中央部よりも左側において仕切(43)により左右2つの空間に区画されている。そして、前側冷媒用タンク部(33)内および後側冷媒用タンク部(34)内が、それぞれ仕切(43)により2つの空間に区画されていることによって、冷媒入口部材(37)から前側の冷媒用タンク部(33)の右側の区画内に流入した冷媒が、すべての冷媒流通管部(35)および連通部(39)を通って後側の冷媒用タンク部(34)の左側の区画内に入った後、冷媒出口部材(38)を通って流出するようになされている。
【0045】
U形曲がり扁平チューブ(42)は、1つの真っ直ぐなアルミニウム製扁平素管における長さ方向の中央部の両側部分を、元の素管に対して直角をなすように同方向に折り曲げることにより形成されたものであり、同一垂直面内に位置する2つの直管部(44)と、元の素管の非屈曲残部からなりかつ両直管部(44)を連結する連結部(45)とにより構成されている(図10参照)。U形曲がり扁平チューブ(42)の両直管部(44)が冷媒流通管部(35)となるとともに、連結部(45)が連通部(39)となっており、両直管部(44)の上端部が、ヘッダタンク(41)の両冷媒用タンク部(33)(34)に連通状にろう付されている。
【0046】
蓄冷器(32)は、エバポレータ(31)を前後方向にのびる直線の周りに180度回転させたものとほぼ同一の構成であり、各部には同一の符号を付す。ここで、冷媒用タンク部(33)(34)が蓄冷材用タンク部、冷媒流通管部(35)が蓄冷材封入管部、連通部(39)が蓄冷材封入管部(35)の上端部どうしを通じさせる連通部にそれぞれなっている。蓄冷器(32)におけるエバポレータ(31)との相違点は、前側の蓄冷材用タンク部(33)の右端に蓄冷材注入部材(46)が設けられるとともに、後側の蓄冷材用タンク部(34)の右端に空気抜き部材(47)が設けられていること、冷媒入口部材(37)および冷媒出口部材(38)が設けられていないこと、ならびに前後両蓄冷材用タンク部(33)(34)内が仕切により2つの空間に仕切られていないことである。また、エバポレータ(31)の冷媒用タンク部(33)(34)は、蓄冷器(32)の連通部(39)よりも上方(蓄冷材封入管部(35)の長さ方向外側)に配置され、蓄冷器(32)の蓄冷材用タンク部(33)(34)はエバポレータ(31)の連通部(39)よりも下方(冷媒流通管部(35)の長さ方向外側)に配置されている。
【0047】
蓄冷器(32)内へ封入される蓄冷材としては、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜10℃程度に調整されたものを用いることが好ましい。また、蓄冷器(32)内への蓄冷材の封入量は、全蓄冷材封入管部(35)内を上端部まで満たすとともに、連通部(39)内を満たすような量とするのがよい。また、蓄冷材注入部材(46)および空気抜き部材(47)は、蓄冷器(32)内への蓄冷材の封入後に閉鎖されている。
【0048】
エバポレータ(31)のU形曲がり扁平チューブ(42)の冷媒流通管部(35)および連通部(39)と蓄冷器(32)のU形曲がり扁平チューブ(42)の蓄冷材封入管部(35)および連通部(39)とは、左右方向(冷媒用タンク部(33)(34)および蓄冷材用タンク部(33)(34)の長さ方向)に並ぶとともに互いに接触させられた状態で相互にろう付されている。なお、蓄冷器(32)は、エバポレータ(31)を前後方向にのびる直線の周りに180度回転させたものとほぼ同一の構成であるから、エバポレータ(31)のU形曲がり扁平チューブ(42)の連結部(45)と蓄冷器(32)のU形曲がり扁平チューブ(42)の連結部(45)とは反対側を向いており、ここではエバポレータ(31)のU形曲がり扁平チューブ(42)の連結部(45)が右側を向くとともに、蓄冷器(32)のU形曲がり扁平チューブ(42)の連結部(45)が左側を向いている。そして、蓄冷器(32)のU形曲がり扁平チューブ(42)がエバポレータ(31)のU形曲がり扁平チューブ(42)の左側に位置させられており、蓄冷材封入管部(35)(直管部(44))および連通部(39)(連結部(45))の右側面が冷媒流通管部(35)(直管部(44))および連通部(39)(連結部(45))の左側面に接触させられてろう付されている。エバポレータ(31)の冷媒流通管部(35)および連通部(39)と、冷媒流通管部(35)に接触した蓄冷器(32)の蓄冷材封入管部(35)および連通部(39)とからなる組(48)が、左右方向に間隔をおいて設けられており、隣り合う組(48)どうしの間が通風間隙(49)となされるととともに、通風間隙(49)における冷媒流通管部(35)および蓄冷材封入管部(35)に対応する部分にアルミニウム製のコルゲート状アウターフィン(51)が配置されて冷媒流通管部(35)および蓄冷材封入管部(35)に接触させられてろう付されている。アウターフィン(51)の前後方向の幅は、エバポレータ(31)および蓄冷器(32)の前側冷媒流通管部(35)および前側蓄冷材封入管部(35)の前側縁部から後側冷媒流通管部(35)および後側蓄冷材封入管部(35)の後側縁部までの距離とほぼ等しく、前後両冷媒流通管部(35)および前後両蓄冷材封入管部(35)に跨っている。
【0049】
エバポレータ(31)の右端の冷媒流通管部(35)、および蓄冷器(32)の左端の蓄冷材封入管部(35)の外側にもアルミニウム製のコルゲート状アウターフィン(51)が配置されて冷媒流通管部(35)および蓄冷材封入管部(35)にろう付されている。また、左右両端のアウターフィン(51)の外側にアルミニウム製サイドプレート(52)が配置されてアウターフィン(51)にろう付されている。
【0050】
上述した蓄冷熱交換器(30)のエバポレータ(31)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、およびコンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともにカーエアコンを構成する。当該カーエアコンにおいて、圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口部材(37)を通って蓄冷熱交換器(30)のエバポレータ(31)の前側冷媒用タンク部(33)の右側の区画内に入り、すべてのU形曲がり扁平チューブ(42)を通って後側冷媒用タンク部(34)の左側の区画内に入った後、冷媒出口部材(38)を通って流出する。そして、冷媒が冷媒流通管部(35)内を流れる間に、通風間隙(49)を通過する空気と熱交換をし、空気が冷却されるとともに冷媒は気相となって流出する。
【0051】
このとき、エバポレータ(31)の冷媒流通管部(35)および連通部(39)内を流れる冷媒の有する冷熱が、U形曲がり扁平チューブ(42)の管壁を通って、当該冷媒流通管部(35)および連通部(39)と組(48)をなしている蓄冷器(32)の蓄冷材封入管部(35)および連通部(39)内の蓄冷材に伝えられ、その結果蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。
【0052】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷器(32)の蓄冷材封入管部(35)および連通部(39)内の蓄冷材の有する冷熱が、蓄冷材封入管部(35)にろう付されているアウターフィン(51)を介して通風間隙(49)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(31)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明による蓄冷熱交換器は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0054】
(1)(30):蓄冷熱交換器
(2)(31):エバポレータ
(3)(32):蓄冷器
(4)(5)(33)(34):冷媒用タンク部(蓄冷材用タンク部)
(6)(35):冷媒流通管部(蓄冷材封入管部)
(7)(36):冷媒流通管部群(蓄冷材封入管部群)
(11)(39):連通部
(12):扁平中空体
(13):プレート
(14):タンク形成部
(25)(48):冷媒流通管部と蓄冷材封入管部とからなる組
(26)(49):通風間隙
(27)(51):アウターフィン
(41):ヘッダタンク
(42):U形曲がり扁平チューブ
(44):直管部
(45):連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エバポレータと、蓄冷材が封入された蓄冷器とよりなり、エバポレータが、冷媒用タンク部、および幅方向を前後方向に向けるとともに冷媒用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ一端部が冷媒用タンク部に通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管部を備え、蓄冷器が、冷媒用タンク部と間隔をおくとともに冷媒流通管部の他端部よりも冷媒流通管部の長さ方向外側に配置された蓄冷材用タンク部、および幅方向を前後方向に向けるとともに蓄冷材用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ一端部が蓄冷材用タンク部に通じさせられて他端部が冷媒用ヘッダ部側にのびる複数の扁平状蓄冷材封入管部を備えており、エバポレータの冷媒流通管部と蓄冷器の蓄冷材封入管部とが、冷媒用タンク部および蓄冷材用タンク部の長さ方向に並ぶとともに互いに接触させられている蓄冷熱交換器。
【請求項2】
エバポレータの冷媒流通管部と、当該冷媒流通管部に接触した蓄冷器の蓄冷材封入管部とからなる組が、冷媒用タンク部および蓄冷材用タンク部の長さ方向に間隔をおいて設けられるとともに、隣り合う組どうしの間が通風間隙となされ、通風間隙にフィンが配置されている請求項1記載の蓄冷熱交換器。
【請求項3】
エバポレータが、前後方向に並んで設けられた2つの冷媒用タンク部と、冷媒用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管部からなる前後2つの冷媒流通管部群とを備え、各冷媒用タンク部に各冷媒流通管部群の冷媒流通管部の一端部が通じさせられ、前後両冷媒流通管部群の冷媒流通管部が前後方向に並んでいるとともに、前後方向に並んだ2つの冷媒流通管部の他端部どうしが連通部を介して通じさせられており、蓄冷器が、前後方向に並んで設けられた2つの蓄冷材用タンク部と、蓄冷材用タンク部の長さ方向に間隔をおいて配置された複数の蓄冷材封入管部からなる前後2つの蓄冷材封入管部群とを備え、各蓄冷材用タンク部に各蓄冷材封入管部群の蓄冷材封入管部の一端部が通じさせられ、前後両蓄冷材封入管部群の蓄冷材封入管部が前後方向に並んでいるとともに、前後方向に並んだ2つの蓄冷材封入管部の他端部どうしが連通部を介して通じさせられており、エバポレータの冷媒用タンク部が、蓄冷器の連通部よりも蓄冷材封入管部の長さ方向外側に配置され、蓄冷器の蓄冷材用タンク部がエバポレータの連通部よりも冷媒流通管部の長さ方向外側に配置されている請求項1または2記載の蓄冷熱交換器。
【請求項4】
エバポレータが、周縁部どうしがろう付された2枚のプレートよりなる複数の扁平中空体が積層されることにより形成されており、各扁平中空体が、2枚のプレート間に前後方向に並んで形成された2つの膨出状冷媒流通管部と、2枚のプレート間に両冷媒流通管部の一端に連なるように形成され、かつ冷媒流通管部よりも膨出高さの高い膨出状ヘッダ形成部と、2枚のプレート間に両冷媒流通管部の他端に連なるとともに両冷媒流通管部を通じさせるように形成された膨出状連通部とを備えており、隣り合う扁平中空体のヘッダ形成部どうしが接合されるとともに、全扁平中空体のヘッダ形成部により冷媒用タンク部が形成され、
蓄冷器が、周縁部どうしがろう付された2枚のプレートよりなる複数の扁平中空体が積層されることにより形成されており、各扁平中空体が、2枚のプレート間に前後方向に並んで形成された2つの膨出状蓄冷材封入管部と、2枚のプレート間に両蓄冷材封入管部の一端に連なるように形成され、かつ蓄冷材封入管部よりも膨出高さの高い膨出状ヘッダ形成部と、2枚のプレート間に両蓄冷材封入管部の他端に連なるとともに両蓄冷材封入管部を通じさせるように形成された膨出状連通部とを備えており、隣り合う扁平中空体のヘッダ形成部どうしが接合されるとともに、全扁平中空体のヘッダ形成部により蓄冷材用タンク部が形成されている請求項3記載の蓄冷熱交換器。
【請求項5】
エバポレータが、前後両冷媒用タンク部が一体化されたヘッダタンクと、両端がヘッダタンクの各冷媒用タンク部に接続されたU形曲がり扁平チューブとからなり、U形曲がり扁平チューブが、1つの扁平チューブを長さ方向の中間部で曲げることにより形成されるとともに、同一平面内に位置する2つの直管部と、両直管部を連結する連結部とにより構成され、U形曲がり扁平チューブの両直管部が冷媒流通管部となるとともに、連結部が連通部となっており、
蓄冷器が、前後両蓄冷材用タンク部が一体化されたヘッダタンクと、両端がヘッダタンクの各蓄冷材用タンク部に接続されたU形曲がり扁平チューブとからなり、U形曲がり扁平チューブが、1つの扁平チューブを長さ方向の中間部で曲げることにより形成されるとともに、同一面内に位置する2つの直管部と、両直管部を連結する連結部とにより構成され、U形曲がり扁平チューブの両直管部が蓄冷材封入管部となるとともに、連結部が連通部となっている請求項3記載の蓄冷熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−243066(P2010−243066A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92578(P2009−92578)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】