蓄圧式燃料噴射装置
【課題】圧力制御弁の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できる蓄圧式燃料噴射装置を得る。
【解決手段】燃料圧センサ7により検出した燃料圧と目標圧とに基づく通電時期及び予め設定された通電期間に応じた駆動信号により圧力制御弁34を制御してコモンレール2の燃料圧を制御する。その際、コモンレール2の目標圧や送油量がほぼ一定の定常運転時に(S110)、燃料圧と目標圧とに基づいてフィードバック制御する正常時の通電時期TF1に対して、応答性悪化時の通電時期TF2が進角した悪化角度量△TF に基づいて応答性悪化量△Tを算出する(S120)。応答性悪化量△Tを通電期間Tssに加算して、通電期間を長く変更する(S130)。
【解決手段】燃料圧センサ7により検出した燃料圧と目標圧とに基づく通電時期及び予め設定された通電期間に応じた駆動信号により圧力制御弁34を制御してコモンレール2の燃料圧を制御する。その際、コモンレール2の目標圧や送油量がほぼ一定の定常運転時に(S110)、燃料圧と目標圧とに基づいてフィードバック制御する正常時の通電時期TF1に対して、応答性悪化時の通電時期TF2が進角した悪化角度量△TF に基づいて応答性悪化量△Tを算出する(S120)。応答性悪化量△Tを通電期間Tssに加算して、通電期間を長く変更する(S130)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧燃料が蓄圧されるコモンレールへの高圧燃料供給ポンプからの送油量を圧力制御弁により制御する蓄圧式燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1にあるように、コモンレールから燃料噴射弁に燃料を供給する蓄圧式燃料噴射装置では、高圧燃料供給ポンプからコモンレールに高圧燃料を供給すると共に、圧力制御弁により高圧燃料供給ポンプからの送油量を調整して、コモンレールの燃料圧を制御している。
【0003】
その際、プランジャ式の高圧燃料供給ポンプの圧縮行程の途中で、圧力制御弁を閉弁させて、高圧燃料をコモンレールに供給してコモンレールの燃料圧を制御するプレストローク制御が行われている。また、センサによりコモンレールの燃料圧を検出し、検出した燃料圧と目標圧とに基づいて、燃料圧と目標圧との差が小さくなるように、圧力制御弁への通電時期をフィードバック制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−163994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした従来のものでは、通電時期での圧力制御弁への駆動信号の出力により、圧力制御弁を閉弁するようにしている。圧力制御弁は閉弁すると高圧燃料の圧力を閉弁方向に受けて閉弁状態を維持するように構成されている。
【0006】
例えば、図11(a)に示すように、圧力制御弁に駆動信号を出力して高圧燃料を高圧燃料供給ポンプからコモンレールに供給する。このときの駆動信号は通電期間が圧力制御弁の応答性を考慮した予め定められた一定期間に設定され、不必要に通電期間を長くすることなく省エネを図っている。
【0007】
そして、図11(b)に示すように、経年変化等により圧力制御弁の応答が遅くなると、フィードバック制御により駆動信号の通電時期を進角側に制御して、コモンレール圧力を目標圧に制御している。
【0008】
しかし、圧力制御弁の応答性悪化がさらに進むと、以下のような問題点が発生することが発明者らの研究により明らかになった。すなわち、圧力制御弁の応答時間が、ソレノイドへの通電期間を越えてしまうほど長くなると閉弁に達することができない、という問題である。すなわち、図11(c)に示すように、応答性の悪化に応じて駆動信号の通電時期を進角しても、通電期間終了時になっても圧力制御弁の弁体のリフトが十分に行われず、フルリフト位置(閉弁位置)に達することができないことがある。その場合、圧力制御弁が閉弁し切れなくなり、高圧燃料供給ポンプから高圧燃料が供給されなくなる可能性がある。このため、高圧燃料供給ポンプからの高圧燃料供給が確実に維持できない、という問題があった。
【0009】
本発明の課題は、圧力制御弁の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できる蓄圧式燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
高圧に蓄圧された燃料を保持し前記燃料噴射弁に供給するコモンレールと、
該コモンレールに高圧燃料を供給する高圧燃料供給ポンプと、
駆動信号の入力により閉弁して高圧燃料を前記高圧燃料供給ポンプから前記コモンレールに供給すると共に、前記高圧燃料の圧力を閉弁方向に受けて閉弁を維持し、前記高圧燃料供給ポンプからの供給を制御する圧力制御弁と、
前記コモンレールの燃料圧を検出する燃料圧検出手段とを備え、
前記燃料圧検出手段により検出した前記燃料圧と目標圧とに基づく通電時期及び予め設定された通電期間に応じた前記駆動信号により前記圧力制御弁を制御して前記コモンレールの燃料圧を制御する蓄圧式燃料噴射装置において、
前記通電時期に基づいて前記圧力制御弁の応答性悪化量を算出し、該応答性悪化量に基づいて前記圧力制御弁への前記通電期間を長く変更する補正手段を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置がそれである。
【0011】
前記補正手段は、前記燃料圧と前記目標圧とに基づいてフィードバック制御する前記通電時期の変化に基づいて前記応答性悪化量を算出するようにしてもよい。その際、前記補正手段は、前記フィードバック制御での前記通電時期の補正量のうちの積分項分の変化に基づいて前記応答性悪化量を算出するようにしてもよい。
【0012】
また、前記補正手段は、前記フィードバック制御での前記通電時期と前記燃料圧検出手段により検出される前記コモンレールの燃料圧の変化に基づいて算出する送油量に対応する通電時期とに基づいて前記応答性悪化量を算出するようにしてもよい。その際、前記補正手段は、オープン制御時に前記応答性悪化量を算出するようにしてもよい。
【0013】
更に、前記補正手段は、前記応答性悪化量を加算して、前記通電期間を長く変更するようにしてもよい。あるいは、前記補正手段は、前記圧力制御弁の応答時間と前記通電期間との比が一定となるように、前記応答性悪化量に基づいて前記通電期間を長く変更するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蓄圧式燃料噴射装置は、圧力制御弁の応答性悪化量を算出し、応答性悪化量に基づいて圧力制御弁の通電期間を長く変更するので、不必要に通電期間を長くすることなく省エネを図りながら、圧力制御弁の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できるという効果を奏する。
【0015】
フィードバック制御する通電時期の変化に基づいて応答性悪化量を算出することにより、容易に応答性悪化量を定量的に算出できる。また、通電時期の補正量のうちの積分項分の変化に基づいて応答性悪化量を算出することにより、経時変化による応答性悪化を捉えることができる。
【0016】
また、フィードバック制御での通電時期とコモンレールの燃料圧の変化に基づいて算出する送油量に対応する通電時期とに基づいて応答性悪化量を算出することにより、容易に応答性悪化量を定量的に算出できる。その際、オープン制御時に応答性悪化量を算出することにより、正確に算出できる。
【0017】
更に、応答性悪化量を加算して、通電期間を長く変更することにより、容易に通電期間を変更できる。あるいは、応答時間と通電期間との比が一定となるように、通電期間を変更することにより、より省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態としての蓄圧式燃料噴射装置を示す全体構成図である。
【図2】本実施形態の圧力制御弁と駆動信号との説明図である。
【図3】本実施形態のフィードバック制御の制御ロジックを示すブロック図である。
【図4】本実施形態の積分項と応答性悪化度合との関係を示すグラフである。
【図5】本実施形態の圧力制御弁の送油量と通電時期との関係を示すグラフである。
【図6】本実施形態の電子制御回路において行われる応答性悪化補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態の圧力制御弁の駆動信号と弁リフトとポンプカムとのタイミングチャートである。
【図8】別の実施形態の電子制御回路において行われる応答性悪化補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】別の実施形態の圧力制御弁の送油量と通電時期との関係を示すグラフである。
【図10】別の実施形態の圧力制御弁の駆動信号と弁リフトとポンプカムとのタイミングチャートである。
【図11】従来の圧力制御弁の駆動信号と弁リフトとポンプカムとのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態としての蓄圧式燃料噴射装置を示す全体構成図である。
図1に示すように、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、4気筒のディーゼル機関としての内燃機関1に適用されており、高圧燃料を蓄えるコモンレール2と、燃料タンク3からフィードポンプ10により汲み上げた燃料を加圧してコモンレール2に供給する高圧燃料供給ポンプ4と、高圧配管17を介してコモンレール2より供給される高圧燃料を内燃機関1の気筒内の燃焼室21に噴射する燃料噴射弁5と、燃料噴射弁5等を電子制御する電子制御ユニット6(以下ECU6と呼ぶ)とを備えている。
【0020】
コモンレール2は、ECU6により運転状態等に基づいて目標圧が設定され、高圧燃料供給ポンプ4から供給された高圧燃料を目標圧に蓄圧する。このコモンレール2には、蓄圧された燃料圧を検出してECU6に出力する燃料圧検出手段としての燃料圧センサ7が取り付けられている。
【0021】
高圧燃料供給ポンプ4は、図2に示すように、内燃機関1に駆動されて回転するカム24により、ローラ26を介してピストン28を往復動させ、フィードポンプ10より送り出された燃料を加圧室30に吸入し、加圧室30から加圧された燃料を吐出弁32を押し開いてコモンレール2に供給するように構成されている。
【0022】
高圧燃料供給ポンプ4には、圧力制御弁34が設けられており、圧力制御弁34は図示しないソレノイドを励磁することにより弁体36を摺動させて弁座38に着座させて閉弁する。また、弁体36は加圧室30内の燃料圧を閉弁方向に受けて閉弁状態を維持し、加圧室30の負圧による作用力や図示しないバネ等の付勢部材の付勢力等により弁体36を弁座38から離間させて開弁する。
【0023】
圧力制御弁34には、予め設定された通電期間Tssの駆動信号が入力されて、ソレノイドが励磁される。駆動信号は高圧燃料供給ポンプ4の圧縮行程時の所定の通電時期に入力され、ソレノイドの励磁による弁体36の弁リフトにより弁座38に着座して閉弁する。圧力制御弁34が閉弁すると、加圧室30からの高圧燃料がコモンレール2に供給され、通電時期を変更することにより、高圧燃料供給ポンプ4からコモンレール2に供給される送油量を可変でき、コモンレール2の燃料圧を制御できる。
【0024】
高圧燃料供給ポンプ4の圧縮行程中に圧力制御弁34への通電期間Tssが経過して、ソレノイドの励磁が停止しても、弁体36は加圧室30の燃料圧を受けて、弁座38に着座する閉弁状態を維持し、高圧燃料供給ポンプ4が圧縮行程から吸入工程に変わると、弁体36は弁座38から離間して開弁する。これにより、フィードポンプ10からの燃料を加圧室30に吸入する。
【0025】
このように、加圧室30に燃料を吸入した後、ピストン28が圧縮行程に移行しても直ちに圧力制御弁34を閉弁せずに、加圧室30内の燃料が所定量となるまで開弁を保持して余剰の燃料を排出し、供給時に送油量の調量を行なうプレストローク制御を行っている。また、閉弁後は燃料圧により閉弁状態が維持されるので、通電期間Tssは圧力制御弁34の基本応答時間TFDを加味して、最小の期間に予め設定して、省エネを図っている。
【0026】
前記各センサ等はECU6に接続されており、ECU6は、図1に示すように、周知のCPU62、ROM64、RAM66等を中心に論理演算回路として構成され、外部と入出力を行う入出力回路、ここでは入出力回路68をコモンバス70を介して相互に接続されている。
【0027】
CPU62は、燃料圧センサ7、パルサ16に形成された複数の歯を検出する電磁ピックアップを用いた回転センサ18及びアクセルペダル19の踏込量に応じたアクセル開度を検出するアクセル開度センサ20からの入力信号を入出力回路68を介して入力する。
【0028】
これらの信号及びROM64、RAM66内のデータや予め記憶された制御プログラムに基づいてCPU62は、回転センサ18により検出される回転数やアクセル開度センサ20により検出されるアクセル開度等の運転状態に基づいて燃料噴射弁5からの噴射量や噴射時期を算出する。また、回転数や噴射量に基づいて、コモンレール2の目標圧を算出し、噴射量とコモンレール2の目標圧とに基づいて、高圧燃料供給ポンプ4からコモンレール2に供給する送油量を算出する。
【0029】
送油量の算出の際には、図3の制御ロジックに示すように、フィードバック制御が行われ、燃料圧センサ7により検出されるコモンレール2の燃料圧と、目標圧との圧力偏差△Pを算出する。比例ゲインKp に圧力偏差△Pを乗算してフィードバック制御の補正量に用いられる比例項を算出する。次に、積分ゲインKi に燃料圧と目標圧との圧力偏差△Pの積分値を乗算して、積分項を算出する。続いて、指令送油量に比例項と積分項とを加算して圧力制御弁34に出力し、圧力制御弁34をフィードバック制御する。
【0030】
下記(1)式のように、補正量に微分ゲインKd に圧力偏差△Pの微分値を乗算した微分項を加味したPID制御によるフィードバック制御を行ってもよい。
補正量=Kp ×△P+Ki ×∫△P+Kd ×d/dt△P…(1)
経時変化等により、圧力制御弁34の応答性が低下すると、補正量のうち、積分項が増加し、図4に示すように、特に、負荷が一定の運転状態である定常運転時の積分項の増加と圧力制御弁34の応答性悪化度合とは比例する。
【0031】
また、コモンレール2への送油量Qとそれによるコモンレール2内の圧力変化量△Pとの関係は下記(2)式により算出できる。ここで、VCRはコモンレール2の容積、Kはコモンレール2内の燃料の体積弾性係数である。
【0032】
Q=△P×VCR/K…(2)
一方、図5に実線で示すように、予め送油量Qと圧力制御弁34への通電時期TF との関係が記憶されており、この関係に基づいて、送油量Qから圧力制御弁34への通電時期TF が算出される。
【0033】
次に、ECU6により実行される補正手段としての応答性悪化処理について図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、回転センサ18により検出される回転数、アクセル開度センサ20により検出されるアクセル開度、燃料圧センサ7により検出されるコモンレール2の燃料圧等に基づいて、現在の運転状態を認識する(ステップ100。以下S100という。以下同様。)。次に、認識した運転状態に基づいて、定常状態であるか否かを判断する(S110)。定常状態とは、車両が平坦な道路を定速で走行し、回転数がほぼ一定で、アクセル開度もほぼ一定の運転状態で、コモンレール2の燃料圧の変動が少なく、コモンレール2の目標圧や送油量がほぼ一定の状態をいう。定常状態であるときには、負荷の変動等がなく、コモンレール2の燃料圧の変化が少ない。
【0034】
定常状態でないと判断したときには(S110:NO)、本制御処理を一旦終了し、定常状態であると判断すると(S110:YES)、フィードバック制御の補正量のうち、積分項分の認識に基づいて応答性悪化量△Tを算出する(S120)。
【0035】
図5に示すように、圧力制御弁34の応答性が悪化した際、同じ通電時期TF1のままでは、送油量△Qが減少する。同じ送油量を維持するために、フィーバック制御により圧力制御弁34の新品当時等の正常時の通電時期TF1に対して、応答性悪化時の通電時期TF2に進角する。正常時の通電時期TF1に対して、応答性悪化時の通電時期TF2が進角した悪化角度量△TF は下記(3)式により算出できる。
【0036】
△TF=TF1−TF2…(3)
正常時の通電時期TF1は、正常時の定常運転時に記憶し、定常運転時に(3)式により悪化角度量△TF を算出することにより、悪化角度量△TF は積分項の補正量に相当し、悪化角度量△TF は圧力制御弁34の応答性の悪化に対応する。また、悪化角度量△TF はフィードバック制御の積分項から直接算出するようにしてもよい。
【0037】
次に、この悪化角度量△TF から、下記(4)式により、応答性悪化量△Tを算出する。ここで、Np は高圧燃料供給ポンプ4のカム24の回転数(rpm)であり、角度が単位である悪化角度量△TF を時間に変換する。
【0038】
△T=△TF/((Np/60)×360))…(4)
次に、この応答性悪化量△Tを通電期間Tssに加算して、補正通電期間Tssb を下記(5)式により算出する(S130)。
【0039】
Tssb=Tss+△T…(5)
通電期間Tssを応答性悪化量△Tの分だけ長くした補正通電期間Tssb により圧力制御弁34を制御することにより、図7に示すように、駆動信号の通電期間が長くなり、応答性が悪化した圧力制御弁34でも、弁体36が弁座38に確実に着座して閉弁し、高圧燃料供給ポンプ4から高圧の燃料がコモンレール2に供給される。よって、不必要に通電期間を長くすることなく省エネを図りながら、圧力制御弁34の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できる。
【0040】
補正通電期間Tssb は、通電期間Tssに応答性悪化量△Tを加算する場合に限らず、圧力制御弁34の基本応答時間TFDと通電期間Tssとの比が一定となるように、下記(6)式により補正通電期間Tssb を算出してもよい。
【0041】
TFD/Tss=(△T+TFD)/Tssb=一定…(6)
次に、前述した応答性悪化処理と異なる別の実施形態の補正手段としての応答性悪化処理について、図8のフローチャートによって説明する。
【0042】
まず、オープン制御時か否かを判断する(S200)。始動時や検査モード時には、圧力制御弁34に、予め設定された指定送油量となるように、予め設定された通電時期TFaの駆動パルスが入力され、オープン制御される。オープン制御時には一定の送油量がコモンレール2に供給され、負荷の変動等がなく、コモンレール2の燃料圧の変化が少ない。
【0043】
オープン制御時でないときには(S200:NO)、一旦本制御処理を終了し、オープン制御時には(S200:YES)、図9に示すように、指定送油量での通電時期TFaを認識する(S210)。次に、オープン制御時の実送油量を算出する(S220)。
【0044】
実送油量Qは、図10に示すように、オープン制御時の圧力制御弁34に駆動信号を出力して閉弁した際のコモンレール2の圧力変化量△Pを燃料圧センサ7により検出し、その圧力変化量△Pから前述した(2)式により算出する。
【0045】
そして、この算出した実送油量Qに対応する通電時期TFbを図9に実線で示す正常時の送油量と通電時期との関係から算出する(S230)。続いて、指定送油量での通電時期TFaから実送油量での通電時期TFbを減算して、下記(7)式のように、悪化角度量△TF を算出する。圧力制御弁34の応答性が悪化すると、指定送油量に対して実送油量Qが減少するので、悪化角度量△TF は圧力制御弁34の応答性の悪化に対応する。
【0046】
△TF=|TFa−TFb|…(7)
次に、悪化角度量△TF から、前述した(4)式により、悪化角度量△TF を時間に変換した応答性悪化量△Tを算出する(S240)。この応答性悪化量△Tを通電期間Tssに加算して、補正通電期間Tssb を前述した(5)式により算出する(S250)。あるいは、圧力制御弁34の基本応答時間TFDと通電期間Tssとの比が一定となるように、(6)式により補正通電期間Tssb を算出してもよい。
【0047】
前述した実施形態と同様、駆動信号の通電期間が長くなり、応答性が悪化した圧力制御弁34でも、弁体36が弁座38に確実に着座して閉弁し、高圧燃料供給ポンプ4から高圧の燃料がコモンレール2に供給される。よって、不必要に通電期間を長くすることなく省エネを図りながら、圧力制御弁34の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できる。
【0048】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0049】
1…内燃機関 2…コモンレール
3…燃料タンク 4…高圧燃料供給ポンプ
5…燃料噴射弁 6…電子制御ユニット
7…燃料圧センサ 10…フィードポンプ
17…高圧配管 18…回転センサ
20…アクセル開度センサ 21…燃焼室
24…カム 26…ローラ
28…ピストン 30…加圧室
32…吐出弁 34…圧力制御弁
36…弁体 38…弁座
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧燃料が蓄圧されるコモンレールへの高圧燃料供給ポンプからの送油量を圧力制御弁により制御する蓄圧式燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1にあるように、コモンレールから燃料噴射弁に燃料を供給する蓄圧式燃料噴射装置では、高圧燃料供給ポンプからコモンレールに高圧燃料を供給すると共に、圧力制御弁により高圧燃料供給ポンプからの送油量を調整して、コモンレールの燃料圧を制御している。
【0003】
その際、プランジャ式の高圧燃料供給ポンプの圧縮行程の途中で、圧力制御弁を閉弁させて、高圧燃料をコモンレールに供給してコモンレールの燃料圧を制御するプレストローク制御が行われている。また、センサによりコモンレールの燃料圧を検出し、検出した燃料圧と目標圧とに基づいて、燃料圧と目標圧との差が小さくなるように、圧力制御弁への通電時期をフィードバック制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−163994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした従来のものでは、通電時期での圧力制御弁への駆動信号の出力により、圧力制御弁を閉弁するようにしている。圧力制御弁は閉弁すると高圧燃料の圧力を閉弁方向に受けて閉弁状態を維持するように構成されている。
【0006】
例えば、図11(a)に示すように、圧力制御弁に駆動信号を出力して高圧燃料を高圧燃料供給ポンプからコモンレールに供給する。このときの駆動信号は通電期間が圧力制御弁の応答性を考慮した予め定められた一定期間に設定され、不必要に通電期間を長くすることなく省エネを図っている。
【0007】
そして、図11(b)に示すように、経年変化等により圧力制御弁の応答が遅くなると、フィードバック制御により駆動信号の通電時期を進角側に制御して、コモンレール圧力を目標圧に制御している。
【0008】
しかし、圧力制御弁の応答性悪化がさらに進むと、以下のような問題点が発生することが発明者らの研究により明らかになった。すなわち、圧力制御弁の応答時間が、ソレノイドへの通電期間を越えてしまうほど長くなると閉弁に達することができない、という問題である。すなわち、図11(c)に示すように、応答性の悪化に応じて駆動信号の通電時期を進角しても、通電期間終了時になっても圧力制御弁の弁体のリフトが十分に行われず、フルリフト位置(閉弁位置)に達することができないことがある。その場合、圧力制御弁が閉弁し切れなくなり、高圧燃料供給ポンプから高圧燃料が供給されなくなる可能性がある。このため、高圧燃料供給ポンプからの高圧燃料供給が確実に維持できない、という問題があった。
【0009】
本発明の課題は、圧力制御弁の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できる蓄圧式燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
高圧に蓄圧された燃料を保持し前記燃料噴射弁に供給するコモンレールと、
該コモンレールに高圧燃料を供給する高圧燃料供給ポンプと、
駆動信号の入力により閉弁して高圧燃料を前記高圧燃料供給ポンプから前記コモンレールに供給すると共に、前記高圧燃料の圧力を閉弁方向に受けて閉弁を維持し、前記高圧燃料供給ポンプからの供給を制御する圧力制御弁と、
前記コモンレールの燃料圧を検出する燃料圧検出手段とを備え、
前記燃料圧検出手段により検出した前記燃料圧と目標圧とに基づく通電時期及び予め設定された通電期間に応じた前記駆動信号により前記圧力制御弁を制御して前記コモンレールの燃料圧を制御する蓄圧式燃料噴射装置において、
前記通電時期に基づいて前記圧力制御弁の応答性悪化量を算出し、該応答性悪化量に基づいて前記圧力制御弁への前記通電期間を長く変更する補正手段を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置がそれである。
【0011】
前記補正手段は、前記燃料圧と前記目標圧とに基づいてフィードバック制御する前記通電時期の変化に基づいて前記応答性悪化量を算出するようにしてもよい。その際、前記補正手段は、前記フィードバック制御での前記通電時期の補正量のうちの積分項分の変化に基づいて前記応答性悪化量を算出するようにしてもよい。
【0012】
また、前記補正手段は、前記フィードバック制御での前記通電時期と前記燃料圧検出手段により検出される前記コモンレールの燃料圧の変化に基づいて算出する送油量に対応する通電時期とに基づいて前記応答性悪化量を算出するようにしてもよい。その際、前記補正手段は、オープン制御時に前記応答性悪化量を算出するようにしてもよい。
【0013】
更に、前記補正手段は、前記応答性悪化量を加算して、前記通電期間を長く変更するようにしてもよい。あるいは、前記補正手段は、前記圧力制御弁の応答時間と前記通電期間との比が一定となるように、前記応答性悪化量に基づいて前記通電期間を長く変更するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蓄圧式燃料噴射装置は、圧力制御弁の応答性悪化量を算出し、応答性悪化量に基づいて圧力制御弁の通電期間を長く変更するので、不必要に通電期間を長くすることなく省エネを図りながら、圧力制御弁の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できるという効果を奏する。
【0015】
フィードバック制御する通電時期の変化に基づいて応答性悪化量を算出することにより、容易に応答性悪化量を定量的に算出できる。また、通電時期の補正量のうちの積分項分の変化に基づいて応答性悪化量を算出することにより、経時変化による応答性悪化を捉えることができる。
【0016】
また、フィードバック制御での通電時期とコモンレールの燃料圧の変化に基づいて算出する送油量に対応する通電時期とに基づいて応答性悪化量を算出することにより、容易に応答性悪化量を定量的に算出できる。その際、オープン制御時に応答性悪化量を算出することにより、正確に算出できる。
【0017】
更に、応答性悪化量を加算して、通電期間を長く変更することにより、容易に通電期間を変更できる。あるいは、応答時間と通電期間との比が一定となるように、通電期間を変更することにより、より省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態としての蓄圧式燃料噴射装置を示す全体構成図である。
【図2】本実施形態の圧力制御弁と駆動信号との説明図である。
【図3】本実施形態のフィードバック制御の制御ロジックを示すブロック図である。
【図4】本実施形態の積分項と応答性悪化度合との関係を示すグラフである。
【図5】本実施形態の圧力制御弁の送油量と通電時期との関係を示すグラフである。
【図6】本実施形態の電子制御回路において行われる応答性悪化補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態の圧力制御弁の駆動信号と弁リフトとポンプカムとのタイミングチャートである。
【図8】別の実施形態の電子制御回路において行われる応答性悪化補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】別の実施形態の圧力制御弁の送油量と通電時期との関係を示すグラフである。
【図10】別の実施形態の圧力制御弁の駆動信号と弁リフトとポンプカムとのタイミングチャートである。
【図11】従来の圧力制御弁の駆動信号と弁リフトとポンプカムとのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態としての蓄圧式燃料噴射装置を示す全体構成図である。
図1に示すように、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、4気筒のディーゼル機関としての内燃機関1に適用されており、高圧燃料を蓄えるコモンレール2と、燃料タンク3からフィードポンプ10により汲み上げた燃料を加圧してコモンレール2に供給する高圧燃料供給ポンプ4と、高圧配管17を介してコモンレール2より供給される高圧燃料を内燃機関1の気筒内の燃焼室21に噴射する燃料噴射弁5と、燃料噴射弁5等を電子制御する電子制御ユニット6(以下ECU6と呼ぶ)とを備えている。
【0020】
コモンレール2は、ECU6により運転状態等に基づいて目標圧が設定され、高圧燃料供給ポンプ4から供給された高圧燃料を目標圧に蓄圧する。このコモンレール2には、蓄圧された燃料圧を検出してECU6に出力する燃料圧検出手段としての燃料圧センサ7が取り付けられている。
【0021】
高圧燃料供給ポンプ4は、図2に示すように、内燃機関1に駆動されて回転するカム24により、ローラ26を介してピストン28を往復動させ、フィードポンプ10より送り出された燃料を加圧室30に吸入し、加圧室30から加圧された燃料を吐出弁32を押し開いてコモンレール2に供給するように構成されている。
【0022】
高圧燃料供給ポンプ4には、圧力制御弁34が設けられており、圧力制御弁34は図示しないソレノイドを励磁することにより弁体36を摺動させて弁座38に着座させて閉弁する。また、弁体36は加圧室30内の燃料圧を閉弁方向に受けて閉弁状態を維持し、加圧室30の負圧による作用力や図示しないバネ等の付勢部材の付勢力等により弁体36を弁座38から離間させて開弁する。
【0023】
圧力制御弁34には、予め設定された通電期間Tssの駆動信号が入力されて、ソレノイドが励磁される。駆動信号は高圧燃料供給ポンプ4の圧縮行程時の所定の通電時期に入力され、ソレノイドの励磁による弁体36の弁リフトにより弁座38に着座して閉弁する。圧力制御弁34が閉弁すると、加圧室30からの高圧燃料がコモンレール2に供給され、通電時期を変更することにより、高圧燃料供給ポンプ4からコモンレール2に供給される送油量を可変でき、コモンレール2の燃料圧を制御できる。
【0024】
高圧燃料供給ポンプ4の圧縮行程中に圧力制御弁34への通電期間Tssが経過して、ソレノイドの励磁が停止しても、弁体36は加圧室30の燃料圧を受けて、弁座38に着座する閉弁状態を維持し、高圧燃料供給ポンプ4が圧縮行程から吸入工程に変わると、弁体36は弁座38から離間して開弁する。これにより、フィードポンプ10からの燃料を加圧室30に吸入する。
【0025】
このように、加圧室30に燃料を吸入した後、ピストン28が圧縮行程に移行しても直ちに圧力制御弁34を閉弁せずに、加圧室30内の燃料が所定量となるまで開弁を保持して余剰の燃料を排出し、供給時に送油量の調量を行なうプレストローク制御を行っている。また、閉弁後は燃料圧により閉弁状態が維持されるので、通電期間Tssは圧力制御弁34の基本応答時間TFDを加味して、最小の期間に予め設定して、省エネを図っている。
【0026】
前記各センサ等はECU6に接続されており、ECU6は、図1に示すように、周知のCPU62、ROM64、RAM66等を中心に論理演算回路として構成され、外部と入出力を行う入出力回路、ここでは入出力回路68をコモンバス70を介して相互に接続されている。
【0027】
CPU62は、燃料圧センサ7、パルサ16に形成された複数の歯を検出する電磁ピックアップを用いた回転センサ18及びアクセルペダル19の踏込量に応じたアクセル開度を検出するアクセル開度センサ20からの入力信号を入出力回路68を介して入力する。
【0028】
これらの信号及びROM64、RAM66内のデータや予め記憶された制御プログラムに基づいてCPU62は、回転センサ18により検出される回転数やアクセル開度センサ20により検出されるアクセル開度等の運転状態に基づいて燃料噴射弁5からの噴射量や噴射時期を算出する。また、回転数や噴射量に基づいて、コモンレール2の目標圧を算出し、噴射量とコモンレール2の目標圧とに基づいて、高圧燃料供給ポンプ4からコモンレール2に供給する送油量を算出する。
【0029】
送油量の算出の際には、図3の制御ロジックに示すように、フィードバック制御が行われ、燃料圧センサ7により検出されるコモンレール2の燃料圧と、目標圧との圧力偏差△Pを算出する。比例ゲインKp に圧力偏差△Pを乗算してフィードバック制御の補正量に用いられる比例項を算出する。次に、積分ゲインKi に燃料圧と目標圧との圧力偏差△Pの積分値を乗算して、積分項を算出する。続いて、指令送油量に比例項と積分項とを加算して圧力制御弁34に出力し、圧力制御弁34をフィードバック制御する。
【0030】
下記(1)式のように、補正量に微分ゲインKd に圧力偏差△Pの微分値を乗算した微分項を加味したPID制御によるフィードバック制御を行ってもよい。
補正量=Kp ×△P+Ki ×∫△P+Kd ×d/dt△P…(1)
経時変化等により、圧力制御弁34の応答性が低下すると、補正量のうち、積分項が増加し、図4に示すように、特に、負荷が一定の運転状態である定常運転時の積分項の増加と圧力制御弁34の応答性悪化度合とは比例する。
【0031】
また、コモンレール2への送油量Qとそれによるコモンレール2内の圧力変化量△Pとの関係は下記(2)式により算出できる。ここで、VCRはコモンレール2の容積、Kはコモンレール2内の燃料の体積弾性係数である。
【0032】
Q=△P×VCR/K…(2)
一方、図5に実線で示すように、予め送油量Qと圧力制御弁34への通電時期TF との関係が記憶されており、この関係に基づいて、送油量Qから圧力制御弁34への通電時期TF が算出される。
【0033】
次に、ECU6により実行される補正手段としての応答性悪化処理について図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、回転センサ18により検出される回転数、アクセル開度センサ20により検出されるアクセル開度、燃料圧センサ7により検出されるコモンレール2の燃料圧等に基づいて、現在の運転状態を認識する(ステップ100。以下S100という。以下同様。)。次に、認識した運転状態に基づいて、定常状態であるか否かを判断する(S110)。定常状態とは、車両が平坦な道路を定速で走行し、回転数がほぼ一定で、アクセル開度もほぼ一定の運転状態で、コモンレール2の燃料圧の変動が少なく、コモンレール2の目標圧や送油量がほぼ一定の状態をいう。定常状態であるときには、負荷の変動等がなく、コモンレール2の燃料圧の変化が少ない。
【0034】
定常状態でないと判断したときには(S110:NO)、本制御処理を一旦終了し、定常状態であると判断すると(S110:YES)、フィードバック制御の補正量のうち、積分項分の認識に基づいて応答性悪化量△Tを算出する(S120)。
【0035】
図5に示すように、圧力制御弁34の応答性が悪化した際、同じ通電時期TF1のままでは、送油量△Qが減少する。同じ送油量を維持するために、フィーバック制御により圧力制御弁34の新品当時等の正常時の通電時期TF1に対して、応答性悪化時の通電時期TF2に進角する。正常時の通電時期TF1に対して、応答性悪化時の通電時期TF2が進角した悪化角度量△TF は下記(3)式により算出できる。
【0036】
△TF=TF1−TF2…(3)
正常時の通電時期TF1は、正常時の定常運転時に記憶し、定常運転時に(3)式により悪化角度量△TF を算出することにより、悪化角度量△TF は積分項の補正量に相当し、悪化角度量△TF は圧力制御弁34の応答性の悪化に対応する。また、悪化角度量△TF はフィードバック制御の積分項から直接算出するようにしてもよい。
【0037】
次に、この悪化角度量△TF から、下記(4)式により、応答性悪化量△Tを算出する。ここで、Np は高圧燃料供給ポンプ4のカム24の回転数(rpm)であり、角度が単位である悪化角度量△TF を時間に変換する。
【0038】
△T=△TF/((Np/60)×360))…(4)
次に、この応答性悪化量△Tを通電期間Tssに加算して、補正通電期間Tssb を下記(5)式により算出する(S130)。
【0039】
Tssb=Tss+△T…(5)
通電期間Tssを応答性悪化量△Tの分だけ長くした補正通電期間Tssb により圧力制御弁34を制御することにより、図7に示すように、駆動信号の通電期間が長くなり、応答性が悪化した圧力制御弁34でも、弁体36が弁座38に確実に着座して閉弁し、高圧燃料供給ポンプ4から高圧の燃料がコモンレール2に供給される。よって、不必要に通電期間を長くすることなく省エネを図りながら、圧力制御弁34の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できる。
【0040】
補正通電期間Tssb は、通電期間Tssに応答性悪化量△Tを加算する場合に限らず、圧力制御弁34の基本応答時間TFDと通電期間Tssとの比が一定となるように、下記(6)式により補正通電期間Tssb を算出してもよい。
【0041】
TFD/Tss=(△T+TFD)/Tssb=一定…(6)
次に、前述した応答性悪化処理と異なる別の実施形態の補正手段としての応答性悪化処理について、図8のフローチャートによって説明する。
【0042】
まず、オープン制御時か否かを判断する(S200)。始動時や検査モード時には、圧力制御弁34に、予め設定された指定送油量となるように、予め設定された通電時期TFaの駆動パルスが入力され、オープン制御される。オープン制御時には一定の送油量がコモンレール2に供給され、負荷の変動等がなく、コモンレール2の燃料圧の変化が少ない。
【0043】
オープン制御時でないときには(S200:NO)、一旦本制御処理を終了し、オープン制御時には(S200:YES)、図9に示すように、指定送油量での通電時期TFaを認識する(S210)。次に、オープン制御時の実送油量を算出する(S220)。
【0044】
実送油量Qは、図10に示すように、オープン制御時の圧力制御弁34に駆動信号を出力して閉弁した際のコモンレール2の圧力変化量△Pを燃料圧センサ7により検出し、その圧力変化量△Pから前述した(2)式により算出する。
【0045】
そして、この算出した実送油量Qに対応する通電時期TFbを図9に実線で示す正常時の送油量と通電時期との関係から算出する(S230)。続いて、指定送油量での通電時期TFaから実送油量での通電時期TFbを減算して、下記(7)式のように、悪化角度量△TF を算出する。圧力制御弁34の応答性が悪化すると、指定送油量に対して実送油量Qが減少するので、悪化角度量△TF は圧力制御弁34の応答性の悪化に対応する。
【0046】
△TF=|TFa−TFb|…(7)
次に、悪化角度量△TF から、前述した(4)式により、悪化角度量△TF を時間に変換した応答性悪化量△Tを算出する(S240)。この応答性悪化量△Tを通電期間Tssに加算して、補正通電期間Tssb を前述した(5)式により算出する(S250)。あるいは、圧力制御弁34の基本応答時間TFDと通電期間Tssとの比が一定となるように、(6)式により補正通電期間Tssb を算出してもよい。
【0047】
前述した実施形態と同様、駆動信号の通電期間が長くなり、応答性が悪化した圧力制御弁34でも、弁体36が弁座38に確実に着座して閉弁し、高圧燃料供給ポンプ4から高圧の燃料がコモンレール2に供給される。よって、不必要に通電期間を長くすることなく省エネを図りながら、圧力制御弁34の応答性悪化時でも高圧燃料の供給を維持できる。
【0048】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0049】
1…内燃機関 2…コモンレール
3…燃料タンク 4…高圧燃料供給ポンプ
5…燃料噴射弁 6…電子制御ユニット
7…燃料圧センサ 10…フィードポンプ
17…高圧配管 18…回転センサ
20…アクセル開度センサ 21…燃焼室
24…カム 26…ローラ
28…ピストン 30…加圧室
32…吐出弁 34…圧力制御弁
36…弁体 38…弁座
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
高圧に蓄圧された燃料を保持し前記燃料噴射弁に供給するコモンレールと、
該コモンレールに高圧燃料を供給する高圧燃料供給ポンプと、
駆動信号の入力により閉弁して高圧燃料を前記高圧燃料供給ポンプから前記コモンレールに供給すると共に、前記高圧燃料の圧力を閉弁方向に受けて閉弁を維持し、前記高圧燃料供給ポンプからの供給を制御する圧力制御弁と、
前記コモンレールの燃料圧を検出する燃料圧検出手段とを備え、
前記燃料圧検出手段により検出した前記燃料圧と目標圧とに基づく通電時期及び予め設定された通電期間に応じた前記駆動信号により前記圧力制御弁を制御して前記コモンレールの燃料圧を制御する蓄圧式燃料噴射装置において、
前記通電時期に基づいて前記圧力制御弁の応答性悪化量を算出し、該応答性悪化量に基づいて前記圧力制御弁への前記通電期間を長く変更する補正手段を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記燃料圧と前記目標圧とに基づいてフィードバック制御する前記通電時期の変化に基づいて前記応答性悪化量を算出することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記フィードバック制御での前記通電時期の補正量のうちの積分項分の変化に基づいて前記応答性悪化量を算出することを特徴とする請求項2に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記フィードバック制御での前記通電時期と前記燃料圧検出手段により検出される前記コモンレールの燃料圧の変化に基づいて算出する送油量に対応する通電時期とに基づいて前記応答性悪化量を算出することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項5】
前記補正手段は、オープン制御時に前記応答性悪化量を算出することを特徴とする請求項4に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記応答性悪化量を加算して、前記通電期間を長く変更することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記圧力制御弁の応答時間と前記通電期間との比が一定となるように、前記応答性悪化量に基づいて前記通電期間を長く変更することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項1】
内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
高圧に蓄圧された燃料を保持し前記燃料噴射弁に供給するコモンレールと、
該コモンレールに高圧燃料を供給する高圧燃料供給ポンプと、
駆動信号の入力により閉弁して高圧燃料を前記高圧燃料供給ポンプから前記コモンレールに供給すると共に、前記高圧燃料の圧力を閉弁方向に受けて閉弁を維持し、前記高圧燃料供給ポンプからの供給を制御する圧力制御弁と、
前記コモンレールの燃料圧を検出する燃料圧検出手段とを備え、
前記燃料圧検出手段により検出した前記燃料圧と目標圧とに基づく通電時期及び予め設定された通電期間に応じた前記駆動信号により前記圧力制御弁を制御して前記コモンレールの燃料圧を制御する蓄圧式燃料噴射装置において、
前記通電時期に基づいて前記圧力制御弁の応答性悪化量を算出し、該応答性悪化量に基づいて前記圧力制御弁への前記通電期間を長く変更する補正手段を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記燃料圧と前記目標圧とに基づいてフィードバック制御する前記通電時期の変化に基づいて前記応答性悪化量を算出することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記フィードバック制御での前記通電時期の補正量のうちの積分項分の変化に基づいて前記応答性悪化量を算出することを特徴とする請求項2に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記フィードバック制御での前記通電時期と前記燃料圧検出手段により検出される前記コモンレールの燃料圧の変化に基づいて算出する送油量に対応する通電時期とに基づいて前記応答性悪化量を算出することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項5】
前記補正手段は、オープン制御時に前記応答性悪化量を算出することを特徴とする請求項4に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記応答性悪化量を加算して、前記通電期間を長く変更することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記圧力制御弁の応答時間と前記通電期間との比が一定となるように、前記応答性悪化量に基づいて前記通電期間を長く変更することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の蓄圧式燃料噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−172552(P2012−172552A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33539(P2011−33539)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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