説明

蓄電システム

【課題】コンパクトで収納効率の高い電池モジュールが組み込まれた蓄電システムを提供する。
【解決手段】複数の電池セルを収納した電池モジュール15を収納する収納ケース11を備え、電池モジュール15に蓄電された電荷を負荷へ供給する蓄電システム10において、収納ケース11は、基台12上に配置された最も面積の大きい面を前面部13aとする横長の直方体状とされ、引き出し22がレールシステム21によって収納ケース11の前面部13aから内部に挿入及び引き出し可能に取り付けられ、電池モジュール15は、直方体形状をしており、引き出し22内に複数配置され、引き出し22の上面部から引き出し22内へ挿入及び取り出しできるように、且つ引き出し22の前面部22aと電池モジュール15の最も面積の大きい面が対向するように複数並んで位置決め配置され、制御部18が収納ケース11内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムに関し、詳しくは、蓄電システムを構成する各種装置等が1つの収納ケース内に収納されたコンパクトな蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用電源と各負荷との系統の間に充放電可能な電池モジュールが組み込まれた蓄電システムを接続し、この蓄電システムを通信システムやコンピュータシステム等の停電時におけるバックアップ電源として使用することが行われていた。近年に至り、大型の太陽電池、風力発電機、波力発電機等、発電量の変動が大きい分散電源によって発電された電力を蓄電システムに貯蔵し、直交変換して商用電源に供給することが行われるようになってきた。
【0003】
さらに、各家庭に設置された太陽電池やマイクロ風力発電機によって発電された電力を一時的に蓄電システムに貯蔵し、家庭内でエアコンや電子レンジ等の大電力が使用されるときの補助電力として使用したり、余った電力を商用電力に供給したりすることも行われるようになってきている。このようなシステムを採用すると、外部電源から瞬間的に大電力が使用されることを抑制し、外部電源の電力の使用量の平準化が図れるようになると共に、余剰の電力を外部電源に供給することができるようになる。そして、近年ではこのようなシステムに対して「スマートグリッド」という用語が用いられるようになってきている。
【0004】
たとえば、下記特許文献1には上述のような蓄電システムを用いた無停電電源装置の発明が開示されている。下記特許文献1に開示されている無停電電源装置では、上下方向の中央部に水平に配置された隔壁によって、上部の制御室と、下部の電源室とに分割されたハウジングを備え、ハウジングの下部に設けられた電源室内には、組電池ユニットが収容されており、上部の制御室内には、組電池ユニットを制御する電源制御装置、充電回路、インバータ回路等が設けられた構成を備えている。この無停電電源装置の発明によれば、停電時には組電池ユニットに充電された電力が負荷に供給され、バックアップ電源として作動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−022317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような電池モジュールが組み込まれたシステムは一般家庭にも普及してきているが、一般家庭では設置するスペースが限られているため、システム全体をコンパクトにする必要がある。また、一般家庭では、設置スペースの都合上から屋外に設置する場合が多いため、雨水による浸水や地震等の自然環境に対する対策も必要となる。さらに、使用者の生活に不都合が生じないようメンテナンスが容易に行えるようになすことも重要である。
【0007】
なお、上記特許文献1には、無停電電源装置における組電池の交換の容易さや劣化の抑制等については示されているが、無停電電源装置をコンパクト化するための組電池等の配置やメンテナンスの容易性を実現するための構成については実質的に何も考慮されていない。
【0008】
そこで、発明者等は、蓄電システムをコンパクト化すべく種々検討を重ねた結果、電池モジュールを含む各装置を最適なレイアウトとすることにより、蓄電システム全体をコンパクト化することができ、さらにメンテナンスが容易となるようにできることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、一般家庭に設置可能な、コンパクトでメンテナンスが容易な蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の蓄電システムは、複数の電池セルを収納した電池モジュールと、前記電池モジュールを収納する収納ケースと、を備え、前記電池モジュールに蓄電された電荷を交流電力に変換して負荷へ供給する蓄電システムにおいて、前記収納ケースは、基台上に配置された最も面積の大きい面を前面部とする直方体状とされていると共に、引き出しがレールに保持されて前記収納ケースの前面部から内部に挿入及び引き出し可能に取り付けられており、前記電池モジュールは、直方体形状をしており、前記引き出し内に複数配置されると共に、前記引き出しの上面部から前記引き出し内へ挿入及び取り出しできるように、且つ前記引き出しの前面部と前記電池モジュールの最も面積の大きい面が対向するように複数並んで位置決め配置され、前記交流電力への変換又は前記電池モジュールへの充電/放電を制御する制御部が前記収納ケース内に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、第2の態様の蓄電システムは、前記第1の態様の蓄電システムにおいて、前記電池モジュールは、前記直方体形状の最も短い辺を有する4面中の1面に一対の電極用の端子を有しており、前記一対の電極用の端子を有する1面は前記引き出しの上面部と対向するように前記引き出し内に配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、第3の態様の蓄電システムは、前記第2の態様の蓄電システムにおいて、前記電池モジュールは、前記一対の端子が形成された最も短い辺を有する4面中の1面側が着脱自在の部材によって一体に固定されていることを特徴とする。
【0012】
また、第4の態様の蓄電システムは、前記第3の態様の蓄電システムにおいて、前記着脱自在の部材は、前記複数の電池モジュールの前記一対の端子を電気的に接続するための配線部材が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、第5の態様の蓄電システムは、前記第4の態様の蓄電システムにおいて、前記着脱自在の部材は、前記複数の電池モジュール間を所定間隔に保持する隙間支持部を備えていることを特徴とする。
【0014】
また、第6の態様の蓄電システムは、前記第1の態様の蓄電システムにおいて、前記引き出し内にはガイド部材が立設されており、前記電池モジュールは前記ガイド部材に沿って前記引き出しの上部から前記引き出し内に挿入及び取り出しできるように位置決め固定されていることを特徴とする。
【0015】
また、第7の態様の蓄電システムは、前記第6の態様の蓄電システムにおいて、前記電池モジュールは、最も短い辺を有する4面中の1面側が前記着脱自在の部材によって一体に固定されていると共に、前記ガイド部材の上部は、前記着脱自在の部材と接続されていることを特徴とする。
【0016】
また、第8の態様の蓄電システムは、前記第1の態様の蓄電システムにおいて、前記引き出しは、複数個取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
また、第9の態様の蓄電システムは、前記第1〜8のいずれかの態様の蓄電システムにおいて、前記収納ケースは、前面に開閉自在の蓋体が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、第10の態様の蓄電システムは、前記第1〜9のいずれかの態様の蓄電システムにおいて、前記収納ケースには、通風孔が形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、第11の態様の蓄電システムは、前記第1〜10の態様の蓄電システムにおいて、前記収納ケースには冷却ファンが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の態様の蓄電システムによれば、蓄電システムを構成する電池モジュールがレールに保持されて収納ケースの前面部から内部に挿入及び引き出し可能に取り付けられた引き出し内に配置されており、しかも、電池モジュールが引き出しの上面部から引き出しの内部へ挿入及び取り出しできるようになされているので、蓄電システム全体をコンパクト化することができると共に、メンテナンスが容易となる。また、電池モジュールを複数個配置できるようにすることで必要な電力に応じて電池モジュールを増減すことができ、しかも、引き出しの前面部と電池モジュールの最も面積の大きい面が対向するように、具体的には平行になるので、電池モジュールの数が増加したとしても蓄電システムの奥行き及び高さを小さくすることができ、蓄電システムをコンパクトにすることができる。
【0021】
また、本発明の第2の態様の蓄電システムによれば、電池モジュールの一対の端子が直方体の最も短い辺を有する4面中の1面に形成され、この一対の端子が上向きになるように引き出しの中に設置されているので、電池モジュール間ないし電池モジュールと制御部との間の配線が容易となり、しかも、たとえ蓄電システムが雨水等によって浸水するようなことがあっても、端子部分までは浸水し難いから、電池モジュールの短絡を抑制することができるようになる。しかも、電池モジュールは一対の電極用の端子が引き出しの上面部と対向するように引き出し内に配置されているので、収納ケースの奥行きを小さくすることができ、コンパクトな蓄電システムが得られる。
【0022】
また、本発明の第3の態様の蓄電システムによれば、電池モジュールが複数個であっても、これらの複数個の電池モジュールの上部を1つの着脱自在の部材で固定することができるので、電池モジュールの上部が動き難くなり、たとえ地震等によって蓄電システムが揺れるようなことがあっても、隣接する電池モジュールの上部同士が互いに衝突して破損することが抑制される。
【0023】
また、本発明の第4の態様の蓄電システムによれば、着脱自在の部材を電池モジュールの上面側を被覆するだけで、電池モジュールの上面の固定と、複数の電池モジュール間の配線を同時に行うことができるので、収納ケース内の配線を削減してすっきりさせることができ、さらに、電池モジュールの取り付け、取り外しやメンテナンスが容易となる。
【0024】
また、本発明の第5の態様の蓄電システムによれば、電池モジュール間に通気可能な隙間を形成させることができると共に電池モジュールが動き難くなるので、電池モジュールに熱がこもるのを抑制することができると共に電池モジュールの位置を安定化させることができるようになる。
【0025】
また、本発明の第6の態様の蓄電システムによれば、あらかじめ引き出し内に立設されたガイド部材に沿って電池モジュールを所定位置に正確位置決めして設置できるので、引き出しの上部から電池モジュールの挿入及び取り出しが容易となると共に、電池モジュールが振動や地震等によっても動き難くなる。
【0026】
また、本発明の第7の態様の蓄電システムによれば、ガイド部材の上部と着脱自在の部材とが固定されるため、電池モジュールの固定が確実となると共に、電池モジュールに別途固定に関する特別な構成を設ける必要がなくなる。
【0027】
また、本発明の第8の態様の蓄電システムによれば、必要な電力に応じて電池モジュールを増減すことができるが、複数の引き出しを設けて電池モジュールを横方向に並べて配置すれば、蓄電システムの奥行きをさらに小さくすることができる。
【0028】
また、本発明の第9の態様の蓄電システムによれば、収納ケースの前面に開閉自在の蓋体を形成すると、内部に埃や水滴が入り難くなると共にメンテナンス等が容易となり、また、誤って内部の高電圧部分に触れることが抑制されるので、安全性が向上する。
【0029】
また、本発明の第10の態様の蓄電システムによれば、蓄電システム内の換気を行うことができるため、制御部及び電池モジュール等からの発熱を外部に排気することができ、制御部及び電池モジュール等の動作寿命を長くすることができる。
【0030】
また、本発明の第11の態様の蓄電システムによれば、冷却ファンを設けたことにより、制御部及び電池モジュール等からの発熱を強制的に外部に排気することができ、制御部及び電池モジュール等の動作寿命をより長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係る蓄電システムの外観を示した斜視図である。
【図2】実施形態に係る蓄電システムの収納ケースの前面部を取り除いた斜視図である。
【図3】実施形態に係る蓄電システムの図2の状態から引き出しを引き出し、着脱自在の部材を取り除いた状態を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る蓄電システムの電池モジュールを示した斜視図である。
【図5】実施形態に係る蓄電システムの収納ケースのケース部を取り除き、引き出しを引き出した状態を示した斜視図である。
【図6】図6Aは図5のVIA‐VIA線での断面図であり、図6Bは図5のVIB‐VIB線での断面図であり、図6Cは図6AのVIC部の拡大断面図であり、図6Dは図6BのVID部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について、実施形態及び図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための蓄電システムの一例を説明するものであって、本発明をこの実施形態に記載された蓄電システムに特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。なお、以下の実施形態では交流−直流間の相互変換装置としてパワーコンディショナを用いた場合について説明する。
【0033】
[実施形態]
図1〜図6を参照して本実施形態の蓄電システムについて説明する。本実施形態の蓄電システム10は、図2、図3に示すように、レールシステム21、パワーコンディショナ17、制御部18、複数の電池モジュール15、ガイド部材19及び着脱自在の部材(カバー体20)で構成され、これらが収納ケース11内に収納された構成をしている。なお、ここでは電池モジュール15を複数個用いた例を示している。この蓄電システム10は、一般家庭に供給される商用電源と家電製品等の負荷との間に接続され、停電時等のバックアップ電源や補助電力として、さらには余剰の電力を商用電源に供給するために使用されるものである。なお、各家庭に太陽電池システムやマイクロ風力発電機等の家庭用分散電源が設けられている場合には、これらの家庭用分散電源も蓄電システム10に接続される。
【0034】
以下、蓄電システム10の構成について説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態の蓄電システム10は、収納ケース11と基台12とを有している。収納ケース11は、所定の高さを有し、基台12上に取り付けられる前面部13a、後面部13b、両側面部13c及び13dと、これらの上部に載置される上面部13eとで構成されるケース部13からなり、横の長さが短く背の高い直方体形状をしている。
【0035】
基台12は、所定高さを有するようにするため、平板状の脚部12aで囲まれている。このようにすることで、雨水等によって周囲に水が溜まっても、収納ケース11内へ浸水することを抑制することできる。また、基台12の表面上の周囲には、ケース部13の前面部13a、後面部13b、両側面部13c及び13dを取り付けるための溝12bが形成されており、さらに、基台12の四隅には、上面部13eが載置される柱体12cが立設されている。
【0036】
ケース部13の前面部13a及び後面部13bは、縦長の矩形状をした板体であり、最も面積の広い部分となっている。また、ケース部13の両側面部13c及び13dは、幅の狭い矩形状の板体であり、複数個の通風孔14が設けられている。ケース部13の上面部13eは、周辺が前面部13a及び後面部13bの長さと両側面部13c、13dの幅と略同じ長さを有する矩形状の板体であり、収納ケース11の上部を覆うように設置される。なお、前面部13a、後面部13b及び両側面部13c、13dは、基台12の溝12b(図5参照)に嵌め込まれるように取り付けられている。
【0037】
また、実施形態のケース部13内には、基台12の上側に基台12と対向するように、具体的には平行な棚13fが設けられている。さらに、ケース部13内には、所定の容積を有する引き出し22が設けられている。この引き出し22は、引き出し22の側面部22c、22dに取り付けられたレール21aと、ケース部13の両側面部13c、13dのそれぞれに取り付けられた対応するレールないし可動輪21bとからなるレールシステム21を備えている。
【0038】
電池モジュール15は、蓄電された電荷を負荷へ供給するものであり、図3及び図4に示すように、複数の電池セルが配列されて収容された大きな面積を有する矩形状の前面15a及び後面15bと、この前面15a及び後面15bの周囲を囲む幅の狭い矩形状の上面15c、下面15d、両側面15e及び15fとで構成された薄型の直方体形状をしている。そして、電池モジュール15の最も短い辺を有する上面15c、下面15d、両側面15e及び15fの4面中のずれか1面、例えば上面15cには一対の端子16a及び16bが形成されており、電池モジュール15は、この一対の端子16a及び16bが形成された面、すなわち上面15cが引き出し22の上面と対向するように引き出し22内に配置されている。このように、電池モジュール15を薄型の直方体形状とすることで、引き出し22を引き出した状態で上方側から正確に位置決めして挿入すること及び取出すことが容易となり、収納及び取り出しを効率よく行うことができる。なお、ここでは一対の端子16a及び16bはそれぞれソケット状の端子として形成されている。
【0039】
なお、この電池モジュール15の上面15cには、例えば電池モジュール15内の電圧や温度等のパラメータ信号を送出したり、安全装置の制御行うための信号を受信したりする通信回路を形成し、この通信回路と制御部18とを接続する通信インターフェイス(図示省略)を設けることもできる。また、電池モジュール15は、使用される状況に応じて設置する個数を適宜変更することができるが、本実施形態では電池モジュール15を4個用いた例について説明する。
【0040】
パワーコンディショナ17は、直流と交流とを互いに変換する装置であり、商用電源からの交流電流を電池モジュール15に充電させるために直流に変換したり、反対に電池モジュール15に充電された直流電流を家電製品等に使用可能な交流電流に変換したりするものである。図2、図3及び図5に示すように、パワーコンディショナ17は、外壁が鉄板等で形成された直方体形状をしており、収納ケース11の上方の柱体12cにパワーコンディショナ取付部材17aを介して取り付けられている。なお、パワーコンディショナ17は公知のものであるので、内部構成についての詳細な説明は省略する。また、交流と直流の変換ができれば、パワーコンディショナ17に限られず、公知のインバータ等を用いることもできる。
【0041】
制御部18は、パワーコンディショナ17を制御して、商用電源や外部電源から電池モジュール15への充電を行なわせたり、電池モジュール15に充電されていた電力を負荷や商用電源に供給させたりする装置であり、さらに、電池モジュール15内の電圧の管理等を行うこともできるようになされている。なお、図2、図3及び図5に示すように、本実施形態の制御部18は、高さの低い薄型の直方体で形成され、ケース部13の棚13fに設置されている。
【0042】
図3及び図5に示すように、ガイド部材19は、レールシステム21の引き出し22の内部に、電池モジュール15が設置される位置に対応して立設された複数本の柱状体で形成されており、電池モジュール15等の角部が支持されるような形状、たとえばL字状やT字状をしている。さらに、ガイド部材19には、複数の電池モジュール15間に所定間隔の隙間19dが形成されるように、支持スペーサ19bが形成されている。このような形状とすることで、電池モジュール15等の挿入が容易となり、また、地震等によって蓄電システム10が揺れるようなことがあっても、隣接する電池モジュール15の上部同士が互いに衝突して破損することが抑制される。さらに、隙間支持部20bにより、電池モジュール15等の間に所定間隔の隙間19dが形成されるので、充分に放熱することができるようになる。また、ガイド部材19の本数は収納される電池モジュール15の個数に対応して適宜調整することができる。なお、本実施形態では電池モジュールは4個用いられているので、ガイド部材19は5本ずつ対向して合計10本設けられている。
【0043】
ガイド部材19の高さは、電池モジュール15の高さよりやや低くなっており、後述する着脱自在の部材(カバー体20)と嵌合できるようになっている。また、それぞれのガイド部材19の間には間隙19cが設けられている。このようにすることで、この間隙19cから電池モジュール15の放熱を行うことができる。なお、ガイド部材19は、収納される電池モジュール15に合わせて適宜の本数を設ければよく、また、一対のガイド部材で複数本の電池モジュールを支持可能なように形成したものを用いてもよい。
【0044】
カバー体20は、図2、図5及び図6に示すように、電池モジュール15の上部が覆われる大きさの板状体で構成される。このカバー体20が電池モジュール15と接する側の周囲の四辺には、これらの辺から延設された平板状の周壁20aが形成され、複数の電池モジュール15の上部が囲まれると共に、ガイド部材19と嵌合する部分となっている。また、カバー体20の電池モジュール15と接する側の面には、複数の電池モジュール15との間に所定間隔の隙間19dが設けられるように、ガイド部材19が立設された隙間19dと略同じ間隔を有する隙間支持部20bが形成されている(図6参照)。
【0045】
このようにすることで、カバー体20により電池モジュール15等の上部を強固に固定することができ、たとえ地震等によって蓄電システム10が揺れるようなことがあっても、隣接する電池モジュール15の上部同士が互いに衝突して破損することが抑制される。さらに、隙間支持部20bによっても、電池モジュール15等の間に隙間19dが形成されるので、充分に放熱することができるようになる。
【0046】
また、カバー体20の電池モジュール15と接する側には、電池モジュール15の一対の端子16a及び16bと嵌合して電気的に接続される突起部材20dが形成され、カバー体20の内部には、電池モジュール15の一対の端子16a及び16bが配置される面と対向する面に、電池モジュール15を直列ないし並列に接続するような配線がされている。なお、電池モジュール15に通信回路を形成した場合には、カバー体20に電池モジュール15の通信回路と制御部18とを接続する通信インターフェイスを設けることもできる。さらに、カバー体20には、電池モジュール15等と対応するように開口部20cが形成されている。この開口部20cにより、電池モジュール15等の放熱を効率的に行うことができる。
【0047】
レールシステム21は、図3、図5及び図6に示すように、電池モジュール15が収納される引き出し22の側面部22c、22dに取り付けられたレール21aと、ケース部13の両側面部13c、13dのそれぞれに取り付けられた対応するレールないし可動輪21bとからなる。なお、レールシステム21の構造自体は公知の構造を用いることができるので、その詳細な説明は省略する。
【0048】
引き出し22は、ケース部13の前面部13aよりやや横の長さの短い所定面積を有する前面部22a及び後面部22bとケース部13の両側面部13c、13dの幅よりやや短い所定面積を有する側面部22c、22dと、電池モジュール15が収容される面積を有する底面部22fと、上面部22eが開口された箱状体で形成され、収納される電池モジュール15が立てて収納できる容量を有し、内側の底面部22fには前述したガイド部材19が立設されている。
【0049】
次に、図2、図3、図5及び図6を参照して、蓄電システム10を構成する各装置の配置及び収納について説明する。
【0050】
まず、収納ケース11の基台12上の溝12bにケース部13の後面部13b及びレールシステム21のレールないし可動輪21bが取り付けられた両側面部13c及び13dを取り付ける。引き出し22の内面側の底面部22fにはあらかじめガイド部材19が立設されている。このガイド部材19の取り付けは、引き出し22内に嵌め込むようにしてもいいし、ねじで固定するようにしてもよい。そして、ケース部13の両側面部13c及び13dには、レールシステム21よりも上側に、棚13fが取り付けられる。
【0051】
次に、電池モジュール15、パワーコンディショナ17及び制御部18を設置させる。このとき、これらの設置する順番には特に限定はない。
【0052】
電池モジュール15の設置は、引き出し22をケース部13の前面部13a側から引き出し、引き出し22内に立設されたガイド部材19に沿って上方から、電池モジュール15に形成された端子16a及び16bが上になるように、電池モジュール15を挿入することにより行う。このようにすることで、一対の端子16a及び16bは引き出し22内の高い位置に設けられているので、雨水による浸水等が生じた場合でも、一対の端子16a及び16bが浸水するまでの時間を遅らせることができるため、短絡故障が生じ難くなる。このとき、電池モジュール15は、電池モジュール15の前面15aが引き出し22の前面部22aと対向するように、具体的には平行になるように挿入される。
【0053】
本実施形態では、電池モジュール15を4個設置するので、4個の電池モジュールは幅方向に並んで挿入される。そして、電池モジュール15のすべてが収納されたら、電池モジュール15の上面15c側からカバー体20を装着させる。
【0054】
カバー体20の装着は、カバー体20を引き出し22の上側からガイド部材19のそれぞれの上端部19aと嵌合させることにより行う。このとき、カバー体20に形成された隙間支持部20bが電池モジュール15の間に配置されるようにする。このようにすることで、カバー体20により電池モジュール15等の上端部を強固に固定することができ、地震や振動等による電池モジュールの上端部ずれを抑制することができ、さらに、隙間支持部20bにより、電池モジュール15の間に隙間19dが形成されるので、放熱を効率的に行うことができるようになる。
【0055】
また、カバー体20の装着に際し、カバー体20に形成された電気的に接続可能な突起部材20dを電池モジュール15の端子16a及び16bに接続させる。このようにすることで、カバー体20を装着するだけで、カバー体20の内部に形成された配線によって電池モジュール15同士を直列ないし並列に接続することが可能となるので、設置やメンテナンスが容易となる。
【0056】
制御部18は、ケース部13の両側面部13c及び13dに取り付けられた棚13fの上に設置される。このとき、制御部18は単に置かれるだけでもよいが、地震や振動等によりずれを起さないようにねじ等で固定してもよく、また制御部18と棚13fとの間にゴム等のクッション部材を設けてもよい。また、電池モジュール15の電圧検出回路と制御部18とを接続させるようにしてもよく、このとき、カバー体20に形成された配線と制御部18とを接続するようにすれば、個々の電池モジュール15と接続させる必要がなくなるので、配線等の設置が容易となり、メンテナンスも容易となる。
【0057】
次に、パワーコンディショナ17は、パワーコンディショナ17に設けられたパワーコンディショナ取付部材17aと収納ケース11の柱体12cとを取り付けることで行う。このようにすることで、棚の数を少なくすることができ、また、空間を有効に使用することができる。なお、パワーコンディショナ取付部材17aはあらかじめ柱体12cに取り付けておき、その後パワーコンディショナ17を取り付けるようにしてもよい。また、本実施形態では、制御部18の上部にパワーコンディショナ17を設けたが、これらの配置を逆にしてパワーコンディショナ17の上部に制御部18を設けてもよい。そのため、棚13fは引き出し22や電池モジュール15等とパワーコンディショナ17及び制御部18とが収納するスペースを仕切る仕切り板ともいえる。
【0058】
次に、ケース部13の上面部13eを柱体12cの最上部に設置し、前面部13aを取り付けることで、本実施形態の蓄電システム10の収納が完了する。
【0059】
本実施形態の蓄電システム10は、図1に示すように、縦長の直方体形状をしているので、一般家庭のたとえば、軒下等に設置することができる。また、ケース部13の前面部13aを開けるだけで、メンテナンスも行え、さらに電池モジュールの交換に際してはレールシステム21を利用することで、収納ケース11内から引き出し22を引っ張り出して作業することができるので作業効率がよくなる。さらに、電池モジュール15は、電池モジュール15の前面15aと引き出し22の前面部22aと対向するように、具体的には平行となるように設置したので、電池モジュール15の設置や交換の際、電池モジュール15を横からもって取り扱うことができるので、電池モジュール15の取り扱いが容易となる。
【0060】
また、収納ケース11には放熱を行う通風孔14が形成されているが、通風孔14の代わりに冷却ファンを設けてもよく、また、通風孔と冷却ファンを組み合わせてもよい。
【0061】
さらに、実施形態における収納ケースの前面部13aは、基台12の溝12bに嵌め込まれるようしているが、これに限らず側面部13c及び13dの何れか一方の端部にヒンジ等を用いて収容ケースに固定した状態で開閉可能な蓋体として取り付けられてもよい。さらに、前面部13aは、一枚の板状体としてあるが、これに限らず、前面部13aを2つに分け、両側面部13c及び13dの端部にそれぞれヒンジ等を用いて収容ケースに固定した状態で開閉自在に取り付け、中央部から開閉できるようにした、いわゆる観音開きとしてもよい。このようにすることで、面積の広い前面部の開閉がスペースの限られた場所でも行うことができるようになる。
【0062】
また、実施形態における収納ケース11の前面部13aは、引き出し22や電池モジュール15等を収納するスペースとパワーコンディショナ17及び制御部18とを収納するスペースとに跨って一体となっているものを使用したが、複数の部材を使用してそれぞれのスペース毎に取り付けられるようにしてもよい。また、引き出し22に収納ケース11の前面部13aが取り付けられて、引き出し22を収納ケース11の内部に挿入すると収納ケースの前面部が閉じられ、引き出し22を収納ケース11から引き出すと収納ケース11の前面部が開くようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、引き出し22を一個用いた場合を説明したが、これに限らず2個又はそれ以上設けるようにしてもよい。このようにすることで、たとえば、電池モジュールを4個用いる場合に、2個ずつ分けて引き出し22内に収納することで、収納ケース11の幅を狭くすることができると共に、交換したい電池モジュール15がある方の引き出し22だけを引き出せばよくなるので、すべての電池モジュールを引き出す必要がなくなり、メンテナンスが容易となる。この構成は、電池モジュール15の個数がさらに増えたときに好適である。また、実施形態では、収納ケース11として縦長のものを示したが、これに限らず、例えば引き出しを2列に設ける場合等、横長のものとしてもよい。
【0064】
さらに、本実施形態では、電池モジュール15に形成する一対の端子16a及び16bをソケット状のものとして、カバー体20の突起部材20dと嵌合することにより電気的に接続される形態のものを示したが、これに限らず、電池モジュール15に形成する一対の端子16a及び16bを突起状のものとし、カバー体20側にこの電池モジュール15に形成する一対の端子16a及び16bと嵌合する形状の部材を配置してもよく、当業者が適宜に設計することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…蓄電システム 11…収納ケース 12…基台 12a…脚部 12b…溝 12c…柱体 13…ケース部 13a…前面部 13b…後面部 13c、13d…側面部 13e…上面部 13f…棚 14…通風孔 15…電池モジュール 15a…前面 15b…後面 15c…上面 15d…下面 15e、15f…側面 16a、16b…端子 17…パワーコンディショナ 17a…パワーコンディショナ取付部材 18…制御部 19…ガイド部材 19a…上端部 19b…支持スペーサ 19c…間隙 19d…隙間 20…カバー体 20a…周壁 20b…隙間支持部 20c…開口部 20d…突起部材 21…レールシステム 21a…レール 21b…レールないし可動輪 22…引き出し 22a…前面部 22b…後面部 22c、22d…側面部 22e…上面部 22f…底面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを収納した電池モジュールと、前記電池モジュールを収納する収納ケースと、を備え、
前記電池モジュールに蓄電された電荷を交流電力に変換して負荷へ供給する蓄電システムにおいて、
前記収納ケースは、基台上に配置された最も面積の大きい面を前面部とする直方体状とされていると共に、引き出しがレールに保持されて前記収納ケースの前面部から内部に挿入及び引き出し可能に取り付けられており、
前記電池モジュールは、直方体形状をしており、前記引き出し内に複数配置されると共に、前記引き出しの上面部から前記引き出し内へ挿入及び取り出しできるように、且つ前記引き出しの前面部と前記電池モジュールの最も面積の大きい面が対向するように複数並んで位置決め配置され、
前記交流電力への変換又は前記電池モジュールへの充電/放電を制御する制御部が前記収納ケース内に配置されていることを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記電池モジュールは、前記直方体形状の最も短い辺を有する4面中の1面に一対の電極用の端子を有しており、前記一対の電極用の端子を有する1面は前記引き出しの上面部と対向するように前記引き出し内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記電池モジュールは、前記一対の端子が形成された最も短い辺を有する4面中の1面側が着脱自在の部材によって一体に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記着脱自在の部材は、前記複数の電池モジュールの前記一対の端子を電気的に接続するための配線部材が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記着脱自在の部材は、前記複数の電池モジュール間を所定間隔に保持する隙間支持部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記引き出し内にはガイド部材が立設されており、前記電池モジュールは前記ガイド部材に沿って前記引き出しの上部から前記引き出し内に挿入及び取り出しできるように位置決め固定されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記電池モジュールは、最も短い辺を有する4面中の1面側が前記着脱自在の部材によって一体に固定されていると共に、前記ガイド部材の上部は前記着脱自在の部材と接続されていることを特徴とする請求項6に記載の蓄電システム。
【請求項8】
前記引き出しは、複数個取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項9】
前記収納ケースは、前面に開閉自在の蓋体が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項10】
前記収納ケースには、通風孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項11】
前記収納ケースには冷却ファンが設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の蓄電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−9310(P2012−9310A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144784(P2010−144784)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】