蓄電装置及びその電極
本発明は概して電極、該電極を含む蓄電装置及び該電極及び該蓄電装置を製造する方法に関する。これらの電極は、集電体、電導性マット、第1電気活物質及び第2電気活物質から成り、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有している。該電導性マットは該高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質の少なくとも1つを構造上及び電導性上の支えとなる。該電極は種々の形状で提供することができ、また、高率、高エネルギー蓄電装置に具備でき、サイクル寿命を改善することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電極、該電極を含む蓄電装置及び該電極及び蓄電装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通及び通信装置用の新しい電池及び電動ネットワークの開発に多くの重要な進展がなされているが、異なったタイプの電池は特定の環境で用いられたときに、種々の問題を発生させる場合があり得る。例えば、電動車用に現在用いられている電池は色々な問題に直面する。車操作における色々な段階で、該電池から引き出されたり、該電池に再充電されたりする電流に関連して、これらの電池には高い要求が課される。例えば、電動車においては、加速を可能にするために電池からの高率放電が必要とされ、回生制動には電池の高率再充電が伴う。特にハイブリッド・タイプの電動車において、鉛蓄電池が用いられている場合は、電池の高率放・充電によって、負極板の表面に硫酸鉛の層形成をもたらし、負極板と正極板での水素及び酸素ガスの発生をもたらす。これは主として蓄電池に対する高電流要求の結果として発生する。これらの蓄電池が一般に作動する部分充電状態(PSoC)は、電気車の場合は20-100%であり、ハイブリッド・タイプの電気車の場合は40-60%、そして、マイルド・ハイブリッド・タイプの電気車の場合は70-90%である。これは高率部分充電状態(HRPSoC)である。ハイブリッド・タイプ及びマイルド・ハイブリッド・タイプの電気車の運転のようなHRPSoCのシミュレーション実験下では、鉛蓄電池は主として、負極板の表面上に硫酸鉛が漸次蓄積されることが原因で早期に故障を起こす可能性がある。これは硫酸鉛は、回生制動から又はエンジンから充電中にスポンジ鉛に効果的に戻すことが出来ないからである。その結果として、この硫酸鉛層は、その電極板の有効表面積を著しく減らしてしまい、電極板がその自動車から要求される高電流をもはや提供することが出来ないような程度にまで進展してしまう。これは蓄電池が本来有している寿命をかなり短縮させてしまう。
【0003】
再充電可能な電気化学蓄電池及びキャパシタなどの携帯用及び再充電可能なエネルギー貯蔵装置は広範な現代的な交通及び通信装置にとって、益々必要不可欠のものとなりつつある。上記に述べたように、多くの装置において、瞬間的な高い電力或いは高率と高エネルギーとの組み合わせが要求される。パルス出力利用のピーク出力要求を満たすべく電気活性キャパシタを電気化学電池と組み合わせたハイブリッド電極及び蓄電池が開発されている。このタイプの組み合わせ構造はサイクル寿命の延長など電池性能をかなり改善するが、電池の全体的な性能とサイクル寿命を依然として限定する該ハイブリッド装置には尚種々の問題がある。
【0004】
従って、現在用いられている蓄電池と比較してより改良された寿命及び/又は性能を有する改良型鉛蓄電池を含む別の電極及び蓄電装置を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一般には、蓄電装置用の電極を提供する。本発明はまた、該電極を含む鉛蓄電池などの該電極を含む蓄電装置を提供する。
【0006】
第1の側面において、集電体と、第1電気活物質と、第2電気活物質と電導性マットから成る蓄電装置用の電極において、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有し、また、該電導性マットは該第1電気活物質と該第2電気活物質のうちの少なくとも一方の構造上及び電導性を支えることを特徴とする蓄電装置用電極を提供する。
【0007】
1つの実施態様において、該電導性マットは該第1電気活物質と該第2電気活物質のうちの少なくとも一方の構造的な支えをもたらし、該電極からの分離を減らすことができる。別の実施態様では、該電導性マットは炭素繊維シート、例えば、炭素繊維不織シートである。該電導性マットは多孔性及び/又は相互接続された電導性繊維の網状構造であってもよい。
【0008】
該第1電気活物質、該第2電気活物質及び該電導性マットの夫々は該集電体上に設けてもよいし、どのような順序或いは構成で、被覆層とか層とか又は領域として、相互に重ね合わせることも可能であるし、或いは、その他の被覆層、層(介在層を含む)又はその他の物質と組み合わせた構成とすることもできる。いずれか1つ又は複数の領域、層、或いは被覆層は該第1電気活物質及び第2電気活物質を含んでいてもよいし、或いは、いずれか1つ以上の領域、層、被覆層は該第1電気活物質及び/又は第2電気活物質を含んでもよいし、随意に1種以上の添加物を添加した構成であってもよく、また、バインダー、結合剤、増粘剤、繊維、電導性材料及び造孔剤などを含有させてもよい。該第1電気活物質は1つ以上の領域、被覆層或いは層内で該第2電気活物質と色々な配合量で混ぜ合わせていてもよいし、或いは、該第1電気活物質は該第2電気活物質の1つ以上の個別的な領域、被覆層、或いは層内に設けることもできる。
【0009】
更に、1つの実施態様は、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方から成る1つ以上の被覆層、層、或いは領域を含むことができる。他の実施態様では、該電導性マットは該第1電気活物質或いは該第2電気活物質を含む1つ以上の被覆層、層或いは領域を含んでいてもよいし、更に、随意に1種以上の添加物を添加してもよい。更に、別の実施態様では、該電導性マットは該第1電気活物質と該第2電気活物質とを分離する介在層として設けられる。更に、別の実施態様では、該第1電気活物質と該第2電気活物質の少なくともいずれか一方は該電導性マット上に堆積させるか、その内部に組み込まれる。
【0010】
更に別の実施態様では、該第1電気活物質及び第2電気活物質の一方は該集電体上に堆積された第1個別層として設けられ、該第1電気活物質及び第2電気活物質の残る他方は該第1個別層上に堆積された第2個別層として設けられた配列構成とし、該構成において、該電導性マットは該第2個別層に接触した第3個別層として設けられる。
【0011】
更に別の実施態様では、該第1電気活物質は該集電体上に堆積された第1個別層として設けられ、そして、該電導性マットは該第1個別層と接触した第2個別層として設けられ、また該第2電気活物質は該第2個別層上に堆積された第3個別層として設けられる。
【0012】
該第1電気活物質はLa、Li、Na、Al、Fe、Zn、Cd、Pb、Sn、Bi、V、Mn、Co、Ni、Ag及びそれらの合金、酸化物、水酸化物、水素化物、炭化物、窒化物或いは硫化物、炭素、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオロフェニルチオペン、ポリピロール、n又はpドープポリマー、レドックスポリマー及びそれらの混合物から成る群から選択することができる。1つの実施態様において、該第1電気活物質は鉛を基とした物質、例えば、鉛蓄電池の負極に代表的に用いられるスポンジ鉛であり、或いは、鉛蓄電池の正極に代表的に用いられる二酸化鉛であり、或いは、活性化作用でスポンジ鉛か二酸化鉛を形成することができる物質である。
【0013】
該第2電気活物質はNb、Hf、Ti、Ta、Li、Fe、Zn、Sn、Ru、Ag、Pt、Ir、Pb、Mo、W、Ni、Co及びそれらの酸化物、水酸化物、水素化物、炭化物、窒化物或いは亜硫酸化物、炭素、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオロフェニルチオペン、ポリピロール、n又はpドープポリマー、レドックスポリマー及びそれらの混合物から成る群から選択することができる。1つの実施態様において、該第2電気活物質は高表面積炭素、酸化ルテニウム、酸化銀、酸化コバルト及び電導性ポリマーから成る群から選択される。該高表面積炭素は活性炭素、カーボンブラック、アモルファス炭素、炭素ナノ粒子、炭素ナノチューブ、炭素繊維、或いはそれらの混合物であってよい。その1つの実施例では、該第2電気活物質は活性炭である。
【0014】
第2の側面では、少なくとも一対の負極及び正極から成る蓄電装置において、少なくとも1つの電極は茲に上記の第1の側面で述べた電極であることを特徴とする蓄電装置が提供される。
【0015】
該第1の側面に従った電極は、該蓄電装置の負極を構成することができ、この場合において、該第1電気活物質はカドミウム、金属水素化物、鉛及び亜鉛から成る群から1種以上が選択される。1つの実施例では、該第1電気活物質は鉛である。
【0016】
該第1の側面に従った該電極は、該蓄電装置の正極を構成することができ、この場合において、該第1電気活物質は酸化ニッケル、酸化鉛及び銀から成る群から1種以上が選択される。1つの実施例では、該第1電気活物質は酸化鉛である。
【0017】
1つの実施例では、該蓄電装置は約80kPa以下の圧縮力下で作動するように構成される。
【0018】
第3の側面では、硫酸電解液内に配置された少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極から成る蓄電装置が提供され、この蓄電装置において、少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極は、
集電体と、
該集電体上に堆積されスポンジ鉛から成る第1層と、
該第1層と接触され且つ、相互接続された電導性炭素繊維網状構造で構成された電導性マットから成る第2層と、
該第2層に堆積され且つ、第2電気活物質から成る第3層とで構成され、
該スポンジ鉛は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該スポンジ鉛より高い高率放・充電可能出力を有することを特徴とする。
【0019】
第4の側面において、前記に述べた第1の側面に従って電極の組立方法の提供において、この組立方法は、
該電導性マット上に堆積された及び/又は該電導性マットの内部に組み込まれた該第1電気活物質と該第2電気活物質のうちの少なくとも一方から成る複合層を形成すること、
該複合層を該集電体に結合すること
から成る電極の組立方法。
【0020】
更に、1つの実施態様において、該組立方法は更に、該集電体上に該第1電気活物質の被覆層を形成すること、該複合層を該集電体上の該第1電気活物質の被覆層に結合することとから成る。
【0021】
本発明は、請求項1に記載の通り、集電体と、第1電気活物質と、第2電気活物質、電導性マットから成る蓄電装置用の電極において、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有し、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方の構造上及び電導性上の支えとなっていることを特徴とする電極に存する。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、該電導性マットは相互接続された電導性繊維の多孔性網状構造から成ることを特徴とする請求項1に記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項3に記載の通り、該電導性マットは炭素繊維シートであることを特徴とする請求項2に記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項4に記載の通り、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方から成る1つ以上の被覆層、層、或いは領域で構成されていることを特徴とする請求項1-3のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項5に記載の通り、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の1つ以上の被覆層、層、或いは領域で構成され、随時に1種以上の添加物を添加されていることを特徴とする請求項1-4のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項6に記載の通り、該電導性マットは該第2電気活物質から該第1電気活物質を離隔する介在層として設けられていることを特徴とする請求項1-5のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項7に記載の通り、該第1電気活物質は鉛を基とした物質であることを特徴とする請求項1-6のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項8に記載の通り、該第2電気活物質は高表面積カーボン、酸化ルテニウム、酸化銀、酸化コバルト及び電導ポリマーで構成される群から1種以上を選択されることを特徴とする請求項1-7のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項9に記載の通り、高表面積カーボンは活性炭、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ及び炭素繊維で構成される群から1種以上選択されることを特徴とする請求項8に記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項10に記載の通り、該高表面積カーボンは活性炭であることを特徴とする請求項9に記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項11に記載の通り、少なくとも一対の負極と正極から成る蓄電装置において、少なくとも1つの電極は請求項1-10のいずれか1つに記載の電極であることを特徴とする蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項12に記載の通り、該少なくとも1つの電極は、カドミウム、金属水素化物、鉛及び亜鉛から成る群から1種以上を選択された第1電気活物質を含む負極であることを特徴とする請求項11に記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項13に記載の通り、該第1電気活物質は鉛であることを特徴とする請求項12に記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項14に記載の通り、該少なくとも1つの電極は、酸化ニッケル、酸化鉛及び銀から成る群から1種以上を選択された第1電気活物質を含む正極であることを特徴とする請求項11-13のいずれか1つに記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項15に記載の通り、該第1電気活物質は酸化鉛であることを特徴とする請求項14に記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項16に記載の通り、該装置は弁制御装置であることを特徴とする請求項11-15のいずれか1つに記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項17に記載の通り、該蓄電装置が約80kPa未満の圧縮力下で作動するように構成されていることを特徴とする請求項11-16のいずれか1つに記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項18に記載の通り、硫酸電解質溶液内に配置された少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と、少なくとも1つの鉛に基づく負極とから成る蓄電装置において、該少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極は、
集電体と、
該集電体上に堆積されたスポンジ鉛から成る第1層と、
該第1層と接触されると共に、相互に接続された電導性炭素繊維の網状体から成る電導性マットで構成された第2層と、
該第2層上に堆積された第2電気活物質から成る第3層とで形成されており、更に
該スポンジ鉛は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該スポンジ鉛より高い高率可能出力を有していることを特徴とする蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項19に記載の通り、請求項1-10のいずれか1つに記載の電極の組立方法において、該方法は、
該電導性マット上に及び/又は内に組み込まれて配置された該第1電気活物質と該第2電気活物質の少なくとも1つを含む複合層を形成すること、そして
該複合層を該集電体に結合させること
から成る該電極の組立方法に存する。
更に本発明は、請求項20に記載の通り、請求項19記載の電極の組立方法において、該方法は、更に、該集電体上に該第1電気活物質の被覆層を形成すること、そして、該複合層を該集電体上の第1電気活物質の被覆層に結合させることを特徴とする組立法に存する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電極の組立方法を示し、図1a及び図1bは本発明の実施例による電極の2つのタイプの構成を実現する夫々の組立工程を段階的に示す。
【図2】本発明の電極の集電体を含む組立方法を示し、図2a及び2bは夫々図1a及び図1bに示されており鉛合金グリッドで形成されている集電体を含む2つのタイプの構成を実現する夫々の段階的な組立工程を示す。
【図3】作動セル内に組み込まれたときの圧縮の範囲下において、電極のサイクリング性能を決定するために用いられる試験機器及び配列構成を示す。
【図4】図3に示す試験機器及び配列構成で用いられる充電及び放電手順を含む試験操作のプロフィールを示す。
【図5】本発明の種々の実施例による異なった負極から製造された4種のセルの異なった圧縮力下でのサイクリング性能を示すグラフである。
【図6】試験された電極のサイクル数と電池圧縮力との一般的な関係を示すグラフである。
【図7】炭素繊維不織シートを試験する場合に伴う1サイクル、20mAでの充電及び放電中のセル電圧と正極電位及び負極電位の変化を含む充電及び放電プロフィールを示すグラフである。
【図8】該炭素繊維不織シートの試験に係る10サイクルを1セットとする時間でのセル電圧と負極電位の変化を示すグラフである。
【図9】該炭素繊維不織シートの試験に係る1サイクル、50mAでの充電及び放電中のセル電圧と正極電位及び負極電位の変化を示すグラフである。
【図10】該炭素繊維不織シートの試験に係る4サイクルの時間でのセル電圧と負極電位の変化を示すグラフである。
【図11】本発明の種々の実施例による高率電気活物質の4種の異なった組成物の変化を調べるのに用いられたセルの構成を示す。
【図12】本発明の種々の実施例による異なった電導性マットの変化を調べるのに用いられるセルの構成を示す。
【図13】該セルの鉛シート上に直接塗布された20重量%の酸化鉛と20重量%のブラックカーボンと30重量%の活性炭から成るキャパシタ組成物を含むセルの高電流充電/放電プロトコールでのセル電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図14】該セルの鉛シート上に直接塗着された20重量%の酸化鉛と20重量%のブラックカーボンと45重量%の活性炭から成るキャパシタ組成物を含む電池の高電流充電/放電プロトコールでのセル電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図15】炭素繊維不織シート8000040を含み且つその上に塗着された20重量%の酸化鉛と30重量%のブラックカーボンと35重量%の活性炭から成るキャパシタ組成物を含むセルの高電流充電/放電プロトコールでのセル電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図16】炭素繊維不織シート8000030(1”)を含み且つその上に塗着された20重量%の酸化鉛と30重量%のブラックカーボンと35重量%の活性炭から成るキャパシタ組成物を含むセルの高電流充電/放電プロトコールでのセル電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図17】キャパシタ材料を含む炭素繊維不織シートを含む弁制御型鉛(VRLA)2V蓄電池の性能をテストするのに用いられるセルの構成を示す。
【図18】図17のセル性能を試験するための42V充電及び放電サイクリング処理を示すグラフである。
【図19】図17に示す該セルの試験での電池電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図20】高率電気活物質を塗布された電導性マットから成る複合層を製造するための本発明の1つの実施形態例による装置と製造工程方法を示す。
【図21】その各側面に施された複合層を備えた二重電極を製造するための本発明の1つの実施形態例による装置と製造工程方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施例を、例示としてのみの目的で、添付図面を参照して更に説明し図示するが、これらの図のうち、性能が改良された蓄電池用の電極の種々選択される材料と配置や配列を確認する試みにおいて、2つの異なった電気活物質の組み合わせを含む電極と共に使用される電導性マットは、該電気活物質の一方はその他方より高いエネルギー密度とより低い低率性能を有し、サイクル寿命の改良などを含む特定の利点をもたらされ得ることを知見した。本発明の非限定的な具体的な実施形態例を以下に説明する。
【0024】
本発明の該電極は第1電気活物質と第2電気活物質から成り、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有する。便宜上、より高いエネルギー密度を有する電気活物質(該第1電気活物質)を以下では『高エネルギー電気活物質』と称し、より高い高率可能出力を有している電気活物質(該第2電気活物質)を以下においては『高率電気活物質』と称することにする。
【0025】
本発明は、一般的に、集電体と、高エネルギー電気活物質と、高率電気活物質とこれらの高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質の少なくとも一方の構造及び電導性を支える電導性マットとから成る高率、高エネルギー蓄電装置用の電極に関する。茲に述べる第1の側面を有する電極は高率高エネルギー蓄電装置に用いることができる。
【0026】
一般的用語:
『高率』という用語は、高率或いは高電流の放電或いは再充電を行うことができる装置や材料の性能を一般に指称し、低い内部抵抗と高表面積を有する装置や材料により促進される。高率放電は、高表面積炭素などのエネルギーを容量的に蓄えることができる従来のキャパシタ電極材料によってもたらされることはよく知られている。
【0027】
『高エネルギー』という用語は大量の放電或いは再充電を行うことができる装置や材料の性能を一般に指称し、一般に保持される放電や再充電が維持される間、しかし低率でもたらされる。高エネルギー材料は、鉛蓄電池で用いられる鉛ペーストなどのエネルギーを電気化学的に蓄えることが出来る従来の電池電極材料によってもたらされると考えられる。
【0028】
『電気活性』、『活性電極材料』などこれに似た用語は、ある充電の電源を受け取ったり、蓄えたり、或いは提供したりする能力を指称し、エネルギーを容量的に蓄えることができるキャパシタ電極材料及びエネルギーを電気化学的に蓄えることができる電池電極材料を含む。
【0029】
その他の具体的な用語は、具体的な実施形態例の参照において、より適切な個所に述べてある。
【0030】
電極構成:
電極は一般には活性電極材料を施された集電体(典型例は格子板又は板)から成る。該活性電極材料は最も一般的には該集電体の少なくとも1つの領域にペースト形態で施される。該ペーストは添加物又は該活性電極材料以外の材料を含んでもよい。
【0031】
電極は一般には、平板状(グリッド)板或いは角柱又はコラム電池用の螺旋状プレートの形状をしているが、どのような形状であってもよい。設計を単純にするために、平板或いはグリッドが一般に好ましい。集電体は通常は1つの電極の基盤構造を提供し、一般的には電導性金属からつくられ、例えば、鉛蓄電池における集電体として鉛合金が用いられている。更に、該集電体用の材料は電解質環境に安定でなければならない。
【0032】
上に述べたように、本発明は基本的には、集電体、高エネルギー電気活物質、高率電気活物質及び該高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質のための電導性の構造的及び物理的な支えとなる電導性マットで構成される高率高エネルギー蓄電装置用の電極を提供する。
【0033】
該高エネルギー電気活物質、該高率電気活物質及び該電導性マットの夫々は、該集電体上に或いはお互いの上に、被覆層、層、或いは領域として設けることができ、更に、その他のどのような順序及び配列で他の材料や層と共に配置してもよい。電極の色々な配列及び実施形態を以下に記載する。
【0034】
該第1電気活物質及び第2電気活物質は1つ以上の被覆層、層、或いは領域内において相互に混ぜ合わすことができ、また、随意的に、1つ以上の他の添加物と相互に混ぜ合わせでもよい。該第1電気活物質はいずれか1つ以上の被覆層、層、或いは領域内において、該第2電気活物質から分離しておくこともできる。
【0035】
1つの実施例において、該電極は個別的な第1領域及び第2領域を有する。即ち、該高エネルギー電気活物質は1つ以上の第1領域に配置され、該高率電気活物質は1つ以上の第2領域に配置されている。該第1領域及び第2領域は互いに近接して、或いは互いに間隔をあけて、或いは重なり合っていて、或いは一方が他方の上に層状に配置されていてもよい。これらの領域は集電体上、及び/又は該電導性マット上に設けられ、該マットでこれら領域の一方又は両方を支えるようにする。該電導性マットは使用中の電極から該電気活物質からの分離防止効果を容易にする。別の実施例において、該電導性マットはその表面上に位置された該第1領域及び第2領域を有する該集電体上に層状に配置してもよい。
【0036】
別の実施例において、高エネルギー及び高率電気活物質のうちのいずれか一方は該集電体上に堆積された第1個別層として設けることができ、該高エネルギー及び高率電気活物質の他方は該第1個別層上に堆積された第2の個別層として設けることができ、この場合に該電導性マットは該第2個別層に接触した第3個別層となる。これに代わる別の実施例において、該高エネルギー電気活物質は該集電体上に堆積された第1個別層として設けることができ、該電導性マットは該第1個別層と接触した該第2個別層として設けることができ、該高率電気活物質は該第2個別層上に堆積された第3個別層として設けることができる。
【0037】
高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質は該電導性マット上への堆積及び/又は該電導性マット内への組み込みから成る複合層を形成することができる。1つの実施例において、該電極は高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質のうちの少なくとも一方で被覆された、好ましくは、少なくとも高率電気活物質で被覆された該電導性マットから成る複合層から成る。該電極或いは該電極を含む装置の製造に関しては、該複合層は予め作成して貯蔵しておき、それから、適切な時期に該電極又は装置に組み込まれ、かくしてこれらの電極や装置の製造に定の効率性をもたらす。例えば、複合層は二重側面電極の各側面に同時に圧着させるようにすれば、電極の効率的な製造をもたらす。
【0038】
別の実施例において、該電導性マットは該高エネルギー電気活物質を高率電気活物質から離隔する介在層として設けられる。該介在層は個別層として設けてもよい。該電導性マットの多孔性は、また、該高率電気活物質が使用中、該電導性マットから逸脱を防止することを促進する。選択された多孔性は、装置の特性とその装置の使用を意図する環境に依存する。例えば、高率材料を該電導性マットの一方の側面に堆積させ、該高エネルギー電気活物質は該電導性マットの他方の側面に堆積させることができ、該高率電気活物質と高エネルギー電気活物質の分離を維持するように電導性マットの多孔性を選択するようにする。
【0039】
上記の電極の配列は、電池の負極及び正極の両方を形成に適用することができる。
【0040】
電気活物質:
『高エネルギー電気活物質』は『高率電気活物質』よりも高いエネルギー密度を有し、『高率電気活物質』は『高エネルギー電気活物質』より高い高率可能出力を有する。これらの材料のエネルギー値の絶対比率又は絶対エネルギー値は材料の量及び種類及びこれらの材料が用いられる環境と構造を含む多くの要因に依存することが理解できるであろう。
【0041】
『高エネルギー電気活物質』は高エネルギー密度を提供するために電池電極で従来用いられているどんな材料であってもよい。これらの材料は一般的に持続的なエネルギー出力を提供するが、高率電気活物質に比しより低比率又は動力を提供する。再充電可能水性電池の負極に用いられている普通の高エネルギー材料のいくつかの例は、カドミウム、金属水素化物、鉛、亜鉛であり、一方、正極用の材料は酸化ニッケル、酸化鉛、銀、酸素や空気から触媒と共に製造される。リチウムイオン再充電可能電池用の高エネルギー負極の例は、炭素(リチウム-インターカレーション)、WO3、TiSx、SnOxであり、対応する正極材料の例としてはLixNiyOz、LiCoO2、LiMn2O2、LixTiyOz、LiV6O13であり、但、ここにおいて、x、y及びzの値は0.1と10の間である。その他の高エネルギー材料は、La、Li、Al、Fe、Zn、Cd、Pb、Sn、Bi、C、V、Mn、Co、Ni、Ag及びこれらの酸化物、水酸化物、水素化物、炭化物、窒化物或いは硫酸塩、更に、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオロフェニルチオペン、ポリピロール、n又はpドープポリマー、レドックスポリマー及びこれらの混合物である。例えば、蓄電装置は、リチウムイオン、金属リチウム、金属リチウム水素化物、金属ニッケル水素化物、ニッケルと亜鉛を基とした系から成り、また、ニッケルと銀を基とした装置系又は電極系から成る。
【0042】
1つの実施例において、該高エネルギー電気活物質は鉛を基礎とした材料、例えば、鉛形式の蓄電池の場合、負極材料として用いられるスポンジ鉛及び正極材料として用いられる二酸化鉛である。
【0043】
『高率電気活物質』は一般にキャパシタの特性を示すどのような高率(或いは高出力)材料であっても差し支えない。そのような材料は従来よく知られている。これらの材料は、短期間の初期高率或いは高出力を一般に提供するが、高エネルギー材料に比し低いエネルギー密度を有する。キャパシタに従来用いられているいくつかの高率材料の例は、高表面積炭素、酸化ルテニウム、酸化銀、酸化コバルト及び電導性ポリマー(例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオロフェニルチオペン、n又はpドープポリマー、レドックスポリマー、或いはポリピロール)である。高表面積炭素素材の例は、活性炭、カーボンブラック、無定形カーボン、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維及びそれらの混合物である。その他の高率素材の例は、C、Nb、Hf、Ti、Ta、Li、Fe、Zn、Sn、Ru、Ag、Pt、Ir、Pb、Mo、W、Ni、Co及びこれらの酸化物、水酸化物、水素化物、炭素化物、窒化物或いは硫化物及びこれらの混合物である。
【0044】
該高エネルギー電気活物質と該高率電気活物質は電極上の領域、層、或いは被覆物として一般に設けられる。電気活物質は、集電体、電導性マット或いは電極の1つ又はそれ以上の他の構成部材上に施され、或いは塗布される。例えばペーストとして、カルボキシメチル・セルロース、ネオプレン、スチレン・ブタジエン・ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)或いはポリビナリデンウルオライド(PVDF)/キナール及びそれらの組み合わせから成る接着剤又は結合剤と共に、更に、随意的に、カーボンブラック、プラスチック繊維又は炭素繊維、増粘剤、或いは造孔剤などの電導性材料を含む1種以上の添加物と共に塗布される該高エネルギー電気活物質はバインダーや結合剤を使う必要なく、該集電体、電導性マット、或いはその電極の1つ以上のその他の構成部材上に被覆させることができる。
【0045】
該高率電気活物質を電極の他の1つ又はそれ以上の構成部材に施すためのペーストは、表面積(従って静電容量)と電導性との適切なバランスを得るために、しばしば他の材料を含む。現在、コスト上の理由から、活性炭が高率電気活物質のための最も適切な原料である。適切な活性炭は、例えば、約1000及び3500m2/gの範囲で、少なくとも500m2/g程度の表面積でよい。適切なカーボンブラック材料の表面積は20-1000m2/gの範囲であってよい。
【0046】
該電気活物質は1つ又はそれ以上の添加物と組み合わせて用いることができる。該添加物は、バインダーや結合剤、増粘剤、繊維、電導性材料及び造孔剤を含むことができる。該添加物は、領域、被覆層、層の一部を形成し、かくして電極の性能を向上させるべく、該電気活物質を含む混合物やペーストの状態で提供してもよい。
【0047】
造孔剤は亜鉛粉末、樟脳粉末、ナフタレン及びアルミニウム粉末から成る群からその1種又は2種以上を選択する。該造孔剤は該電気活物質を含む領域、被覆層、或いは層の多孔性を増大させて、電解液の電極表面への供給を容易にし、該電極性能を改善する。
【0048】
該電導性材料は該領域、被覆層及び層に充分な量の電導性をもたらし、カーボンブラックやその他の電導性材料を含ませてよい。該電導性材料はこれらの領域、被覆層又は層に少なくとも5重量%、例えば、10-60重量%の範囲で具備することができる。
【0049】
該バインダーや該結合剤は電気活物質同士の結着及び該材料の該集電体、電極或いは該電導性マットの表面との結着を改善するに有用である。該バインダーはまた、電気活物質、領域、層、被覆層間の或いは電極成分間の電気的な相互接続をもたらし、かくして、該材料が乾燥した時に、充分な度合の多孔性の維持を容易にする。該バインダー又は該結合剤はポリクロロプレン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)を含んでもよい。該バインダーは、領域、被覆層又は層内に少なくとも1-20重量%、例えば、5-15重量%の範囲で具備せしめることができる。
【0050】
該バインダー又は結合剤とも称することができる増粘剤は、該材料の混合物をペーストの形状に調製するのに有用である。水性ペーストのためには、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びメチルセルロース(MC)、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコールなどのセルロース誘導体が適切であり、また、有機性ペーストのためには、NMP(N-メチル-2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが適切である。該増粘剤は、充分な量の電導性を維持するように、乾燥残滓が10重量%を越えないように、例えば、領域、被覆層或いは層内に1-6重量%の範囲で具備せしめることができる。
【0051】
繊維はプラスチック、ガラス、或いは炭素の繊維を含んでよい。繊維は補強材として寄与することができ、作動中に該電極で生成されるガスの透過性を改善する。プラスチック繊維はポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂を含んでよい。該繊維は一般に短く、例えば、太さは1-30μmの範囲であり、長さは0.05-4.0mmの範囲である。該繊維は、約15%以下、例えば、4-12重量%の範囲で提供される。
【0052】
これらの材料の適切な混合物は、0-80%のカーボンブラック、15-95%の活性炭、0-10%のプラスチック繊維及び/又は炭素繊維及び5-25%の範囲の調製用バインダーから構成することができる。全ての測量は特に断らない限り、重量によりなされる。尚、上記の実施例及び以下の実施例において、カーボンブラックはその他の電導材料や電導材料の混合物の代わりに用いてもよく、また、活性炭はその他の高率材料や高率材料の混合物の代わりに用いてよいことが理解されるであろう。特に断らない限り、これらの混合物は負極或いは正極に用いてよい。特定のタイプの電池系列の特定の電極や構造に用いられるとき、更なる効果をもたらす。
【0053】
別の適切な混合物は活性炭1-95%(高率材料として)、バインダー5-20%(例えば、ネオプリン及び/又はカルボキシメチルセルロース)、カーボンブラック0-80%及びプラスチック繊維及び/又は炭素繊維0-5%から成る。該高率電気活物質を、カーボンブラックや該電導性マットの電導性材料或いは構成部材上に、或いはこれらの材料内に、或いはその構成材料と接触状態に(例えば層状、或いは被覆層により)分散されるような実施形態が利点をもたらす。該高率電気活物質が該電導性マットと接触している特定の実施形態例においては、その混合物内に用いられる該電導性材料(例えば、カーボンブラック)の量は減らしてもよいし、省いてもよい。例えば、該電導性マットに施すに適するであろう該高率電気活物質、該結合剤及び電導性材料から成るペーストは、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、或いは5重量%未満の電導性材料を含んでいてもよい。該バインダー及び該増粘剤は5-25%の範囲でよい。該ペーストはまた、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、或いは90重量%以上の高率電気活物質を含んでいてもよい。カーボンブラックなどの電導性材料は、通常、ある種の電池系列においてガス発生問題を引き起こし得るある不純物を一般に含んでいる。これらの実施形態例における電導性マットは、それ故、構造的及び機械的支持特性に加えて、該高率電気活物質に電導特性を与えることができる。該高率電気活物質が該電導性マットから分離されているような実施形態では、カーボンブラックなどの電導性材料を該高率電気活物質との混合物の状態で使用することにより性能を改善できることは理解されるであろう。
【0054】
1つの実施例において、該高率電気活物質は、好ましくは約1000-3500m2/gの表面積を有する活性炭である。該活性炭はバインダーや増粘剤、例えば、5-20%の範囲の量のネオプレン及び/又はカルボキシメチルセルロース混合物を用いることにより、ペースト状に調製することができる。該ペーストは80-95%の活性炭と5-20%のバインダーを含むことができ、例えば、85%活性炭と15%バインダーとから成る。上記したように、これらの実施形態は、該高率電気活物質が該電導性マットと接触している電極構成(例えば、該電導性マット上に該高率電気活物質の領域、被覆層或いは層が設けられている)にとり更なる利点をもたらす。
【0055】
別の実施形態例において、該ペーストは、約20-50重量%の範囲の活性炭、約30-60重量%の範囲のカーボンブラック及び約5-25%の範囲のバインダーから成る。例えば、該ペーストは活性炭約35重量%、カーボンブラック約45重量%、バインダー約10重量%から成り、残りは1種又は2種以上の添加物から成る。1つの形態例で、該ペーストは活性炭素35%、カーボンブラック45%、バインダー15%及びプラスチック粒子/炭素繊維粒子5%から成る。上記したように、これらの実施形態例は、該高率電気活物質が該電導性マットと接触していない電極構成にとり、更なる利点をもたらす。
【0056】
一般に、単独の電極に用いられる高率電気活物質と該高エネルギー電気活物質の配合比率は重量ベースで夫々約3:17対1:19の範囲である。例えば、10gの高率電気活物質は予め、100gの高率電気活物質で被覆された電極上に層として使用することができる。
【0057】
電導性マット:
該電導性マットは高度の電気伝導性を有し、その結果として低い内部抵抗を有しているいかなる材料を含み、該電極上に高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質を物理的或いは機械的な支持を提供することができるいかなる材料でもよい。該電導性マットは高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質に対する支えを提供し、エネルギー蓄積装置の充電及び放電期間中電極からのこれら材料の逸脱防止を促進する。該電導性マットは所望の電解質環境に一般に安定である。該電導性マットは(例えば電導性を増大する)集電体として作用し、また、(例えば機械的強度を増大する)該電気活物質に対する物理的支持を提供する。該電導性マットは多孔性であってもよいし、相互に接続された電導性繊維の網状構造に構成してもよく、例えばカーボンブラック不織シートでもよい。該電導性マットは織布でも不織布のいずれでもよい。
【0058】
該電導性マットは第1電気活物質、第2電気活物質、或いはこれら両方のための支えを提供する。
【0059】
該電導性マットは接着、付着、取り外しできる付着、或いは非付着のいずれかによって、該高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質と関連させた支持層を提供する。他の介在層もまた、接着、付着、取り外しできる付着、或いは非付着の方法により該電導性マット、該高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質と関連させることができる。該電導性マットは一般に半剛性或いは剛性であり、また、フィルム、薄膜、マトリックス基板、或いはシートの形状であってよい。該電導性マットはその上に配設された相互につながった電導性繊維の網状構造から成るシート或いは層で構成することができ、例えば、支持シート上に保持された炭素繊維を含むことができる。意図される使用に依存して、該電導性マットはエネルギー蓄積装置の高率充電及び放電中のガス発生を抑制する材料から選択することができる。
【0060】
電導性マットの1例は、炭素繊維の不織シートのような炭素繊維材料で形成された層などを含む。電導性マットの他の例は、導電性セラミックス、導電性ガラス繊維及び導電性プラスチックを含む各種材料から形成され且つ相互に接続された網状構造であってもよい。該電導性マットが液状の電解質を透過性を可能にする多孔性を有することは理解されるであろう。例えば、適切な有孔性は40-80%の範囲である。
【0061】
適切な電導性マットの1つの具体的な例は、以下の諸特性を有する炭素繊維不織シートである。
・ 基本重量: 10-70g/m2
・ 厚さ: 0.06-0.55mm
・ DM引張強度: 0.91-4.3kN/m
・ CD引張強度: 0.52-4.3kN/m
・ 表面抵抗: 3-10 DCΩ/m2
【0062】
1つの実施形態例において、該電導性マットは炭素繊維シートであり、好ましくは、該繊維に沿っての良好な電子伝導とこれら繊維内に相互の良好な接触状態を保証するほぼ静止した空間固定を保証する肉薄の不織シートである。他の炭素素材の場合と同様に、該シートは内部抵抗が低く、該高率キャパシタ電気活物質及び高エネルギー電気活物質と組み合わせて使用する場合に要求される理想的な特性である。本発明者は、高エネルギー材料と高率材料を含む電極においては、該高率材料がサイクル中に部分的に逸脱する可能性があることを知見した。本発明者は、更に、該高率材料に対する構造的支承となる電導性マットを用いることによって、この逸脱現象は減らしたり阻止したりすることができることを知見した。
【0063】
1つの実施形態例において、該高率材料及び/又は高エネルギー材料は、該電導性マット上に堆積させたり、或いは該マット内に組み込む。この構成において、該電導性マットは、例えば、鉛蓄電池内でのガス発生に際して、該エネルギー蓄積装置の高率充電及び放電中に、該電極からの高率材料及び/又は高エネルギー材料の逸脱防止を容易にする。
【0064】
別の実施形態例において、該電導性マットは高率電気活物質及び/又は該高エネルギー電気活物質の個別層或いは領域、好ましくは、少なくとも該高率電気活物質の個別層或いは領域に対する支えとなる。
【0065】
別の実施形態例において、該電導性マットの内部及び/又は表面の少なくとも領域は、高率及び/又は高エネルギー電気活物質を含んでいる。該電導性マットは、該マットの一方の側面に施されたどのような材料でも、該マットの反対側の側面に透過したり移動しない多孔度を選択することができる。
【0066】
該高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質は該電導性マット上に堆積及び/又はその内部への組み入れて複合層を形成するようにすることができる。そのような実施形態例においては、該電導性マットは、複合層の製造を介して、エネルギー蓄積装置の製造における効率的な(製造工程)を可能にする。例えば、該複合層を予め作製しておき、次いで、適切な時点で電極や装置に組み込むことができる。
【0067】
蓄電装置に炭素繊維不織シートの形状の電導性マットを使用することは、電導性マットを有しない従来の電極或いはハイブリッド/複合電極の場合に比し低い圧縮力で最大サイクル数(通常、約6000-8000サイクルとの間)を可能にすることを示した。例えば、前者では80kPaの圧縮力であるに対して、後者では70kPa未満以上の圧縮力が必要である。1つの実施例で、該電導性マットはハイブリッド或いは複合電極(即ち、高率キャパシタ材料と高エネルギー材料から成る電極)に用いられ、この場合、蓄電装置は約70kPa未満、約60kPa未満、そして、好ましくは約30-60kPaの範囲の圧縮力下で作動する。この範囲より外側の圧縮力を尚用いても差し支えないことは言うまでもない。
【0068】
蓄電装置:
該蓄電装置は少なくとも一対の正極及び負極を含み、この場合に、少なくとも1枚の電極は上記に述べた第1の側面に従った電極である。
【0069】
該蓄電装置、例えば、鉛蓄電池は、一般にアノードとカソード(即ち、負極と正極)で組み立てられる。鉛蓄電池に関し、該装置は一般に、少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と、多孔性の非導電性セパレータと、少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極を含んでおり、これらが硫酸から成る電解液内で連結される。該蓄電装置は弁制御装置であってよい。
【0070】
該高率材料及び高エネルギー材料は色々な仕方で、集電体上に設置される。例えば、重ね合わせた層構造(電導性マットなどの介在層を含んでいる場合と含んでいない場合がある)、互いにした隣接させた層或いは相互に混ぜ合わせた構造状態、或いは、一方の材料が他方の材料の粒子を被覆して混合物を形成し該集電体上に堆積した混合物に形成する。該電導性マットは該高率材料及び/又は高エネルギー材料に対し物理的或いは機械的支持を提供するように配設される。有利なことには、該電導性マットは高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質を該集電体の上に、或いは内部に組み込んだとき、実質上、平坦な層の形成を可能にし、そして、これら電極の効率的な製造を容易にする。
【0071】
該蓄電装置は、上記に述べたように、1つ又はそれ以上の負極、正極、或いは負極と正極の各対で構成することができる。所望の電極上の該高エネルギー電気活物質及び高率電気活物質の活性電気化学ポテンシャルの範囲は、その電極の望ましい作動範囲の全域と重なるべきである。該高エネルギー電気活物質及び高率電気活物質はまた、対イオンを供給し、そのエネルギー蓄積セル内の電気回路を完成する電解質に接触する必要がある。化学的相溶性を考慮する必要がある。例えば、これら2種類の材料が共通の電解質を共にするならば、両者は、該電解液に安定でなければならない。
【0072】
該高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質は、一般に、それらが電気的に接触するように、共通の集電体上に配設される。この配設のいくつかの例は、両側面、分散、重層、横並び及び被覆粉末である。異なった材料の明確な相を設けることは、電極の性能をより予測しやすくなる。その他の例としては、2種類の材料を等しい形状のチェッカー盤型又は各材料を交互に配設した縞模様に織り交ぜた領域などのように単一の面に横並びの領域がある。
【0073】
該蓄電装置の負極はカドミウム、金属水素化物、鉛及び亜鉛から成る群から選択された1種又は2種以上の高エネルギー電気活物質を含むことができる。1つの実施例において、該高エネルギー電気活物質は鉛である。
【0074】
該蓄電装置の正極は酸化ニッケル、酸化鉛及び銀から成る群から選択された1種又は2種以上の高エネルギー電気活物質を含むことができる。1つの実施例において、該高エネルギー電気活物質は二酸化鉛である。
【0075】
1つの実施例において、該正極は二酸化鉛正極で、該負極はスポンジ鉛負極である。電解質は好ましくは硫酸電解液である。
【0076】
1つの実施例において、硫酸電解液内に配置された少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極とから成る該蓄電装置において、該負極は
集電体と
該集電体上に堆積され且つスポンジ鉛から成る第1層と、
該第1層と接触しており、且つ相互に電気的に接続された電導性炭素繊維の網状構造から成る電導性マットから成る第2層と、
該第2層上に堆積され、且つ第2電気活物質から成る第3層
とで構成され、
更に、該スポンジ鉛は該第2電気活物質よりも高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該スポンジ鉛よりも高い高率可能出力を有していることを特徴とする。該蓄電装置は、一般に、更に該少なくとも1枚の二酸化鉛を基とした正極と該少なくとも1枚のスポンジ鉛を基とした負極とを分離する多孔な非導電性セパレータを含む。いくつかの実施形態例において、該第2層は該第1層と該第3層を分離している。
【0077】
該蓄電装置は非水性系或いは水性系のいずれの形態であってもよい。非水性系は一般にリチウムイオンを基としている。水性系は酸性、中性又は塩基性である。両系は、固体、液体、或いはゲルである電解質を用いる。また、両系は、適切な液体電解質に浸漬された従来のセパレータを用いてもよい。水性電解質系では、一般的に、酸性、中性、或いは塩基性電解質を用い、また、混合イオン電解質を含んでもよい。
【0078】
該高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質は上記した配列の1つを用い、同じ電極上に組み立てることができる。該高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質の相対的な量或いは積載量は該蓄電装置の究極の性能に影響を及ぼすことに留意しておくことが重要である。若し、該装置の利用が比較的長い時間に亘りピーク出力を要求するならば、そのときは、該高率電気活物質の積載量を増やすべきである。若し、パルス持続時間が相対的に短いか、電流の要求が少ないならば、そのときは、該高率電気活物質の積載量を減らしてよい。
【0079】
1つの実施例において、該電池は正極と負極を交互に配設させた一連から成り、これらの電極に接触している電解質を具備し、これら正極を直接接続する第1導電体とこれら負極を直接接続する第2導電体とで構成された電池において、少なくとも一対の隣接する正極域及び負極域は(容量的エネルギーを蓄えることで)キャパシタを形成し、また少なくとも一対の隣接する正極域及び負極域は(該2つの電極対間の電気化学電位としてのエネルギーを蓄えることにより)電池を形成する。
【0080】
該蓄電装置の上記の実施形態例は、例えば高率部分充電状態(HRPSoC)下で作動される高性能の鉛蓄電池の問題であるサルフェーションを低減或いは防止することができる。1つの実施形態例において、約20-100%の範囲(例えば、電気車にとり一般的)、約40-60%の範囲(例えば、ハイブリッド電気車にとり一般的)、或いは約70-90%(例えば、マイルド・ハイブリッド・タイプの電気車にとり一般的)の部分充電状態(PSoC)下で、上記した実施形態例に従った蓄電装置が使用される。
【0081】
電解質:
夫々異なった電解質系列は異なったタイプの蓄電池と異なったエネルギー蓄積装置には通常必要であることは明らかである。鉛蓄電池の場合、どのような酸電解質でも用いることができる。該電解質は、液体又はゲルの形状である。鉛蓄電池の場合、該電解質は一般に硫酸電解質である。その他のタイプの蓄電池の場合は、該電解質は水性又は有機電解質であり、これらには、カリウムやその他の水酸化物のようなアルカリ類、液体或いは固体状態の水酸化物、リチウム-イオンを含む有機溶剤、ポリマー電解質、イオン性電解液などである。選択された蓄電池の正極及び負極材料に適した電解質は、通常の知識を有する者であればいつものように選択できる。
【0082】
バスバー或いは導電体:
鉛蓄電池のバスバーは任意の適当な構造のものでもよく、従来公知の任意の適切な電導性材料から作ることができる。バスバーの文脈において使用されている用語『に接続されてる』は直接の物理的な接続が好ましいが、電気的な接続を意味している。電池がバスバーを具備した典型的な鉛蓄電池でない場合は、どのような導電体でも用いられ、その形状や材料は従来公知である。
【0083】
その他の電池の特徴:
概して、電池の構成部品は用いられる電池に適した更なる特徴を具備して電池容器内に収容される。例えば、鉛蓄電池の場合、該鉛蓄電池は開放形か、弁制御型である。該鉛蓄電池が弁制御型鉛蓄電池である場合、該蓄電池はどのような適切な設計であってよく、例えば、ゲル電解質を含んでもよい。そうした設計に適した蓄電池ユニットの具体的な特徴は、従来の発明で公知である。
【0084】
該鉛蓄電池に加えられる圧力は開放形設計の場合は5-20kPaの範囲、そして、弁制御型鉛蓄電池設計の場合は20-80kPaの範囲である。
【0085】
セパレータ:
一般的に、正極及び負極の夫々は多孔性のセパレータによって互いに隣接する電極と分離されている。これらのセパレータは隣接電極間の適切な分離距離を維持する。直接隣接する鉛を基とした負極と二酸化鉛を基とした正極の間に位置しているセパレータは、多孔性ポリマー材料或いは吸収性ガラスマイクロファイバー(“AGM”)など、この技術分野で普通に使われているどのような適切な多孔性材料から作成される。該分離距離(セパレータの厚みに相当する)は一般に、これらのセパレータの場合、1-2.5mmの範囲である。該電池の部分を形成する正極と負極間のセパレータを形成するに有用なポリマー材料はポリエチレン及びAGMである。ポリエチレンセパレータは適切には厚みが1-1.5mmの範囲で、AGMセパレータの場合は、適切には厚みが1.2-2.5mmの範囲である。
【0086】
該正極と該キャパシタ負極との間に配置されたセパレータの場合、その適切な厚みは、該鉛蓄電池の電池部のセパレータより著しく肉薄である。好ましくは、該セパレータの厚みは0.01-0.1mmの範囲であり、より好ましくは、その厚みは0.03-0.07mmの範囲である。該セパレータは微孔性ポリプロピレンなどの微孔性ポリマー素材から作られるのが適切である。その他のセパレータはAGMで、この種のセパレータの厚みは0.1-1mmの範囲であり、好ましくは0.1-0.5mmの範囲である。
【0087】
鉛蓄電池の化成:
適切な構成部品を電池容器内に組み立てた後、一般的には、鉛蓄電池を化成することが必要である。化成作業は当技術分野で良く知られている。“鉛を基とした”(“Lead-based”)及び“二酸化鉛を基とした”(“Lead dioxide based”)という表現は、鉛自体或いは二酸化鉛自体、金属/二酸化金属を含む材料、或いは、任意の電極が場合により、鉛又は二酸化鉛に変換される材料を夫々意味するべく使用されることは理解できるであろう。
【0088】
上記に用いられた用語により示されるように、該鉛蓄電池は夫々のタイプの電極を少なくとも1つ含む。該電池内の個々のセル(1つの負極板と1つの正極板で構成されている)即ち、セルの数は各電池の所望の電圧に依存する。マイルド・ハイブリッド電気車用の蓄電池(42Vまで充電される)として使用するのに適した36-V電池の場合、これは18個のセルを含む。
【0089】
電極配列:
概して、これらの正極及びこれらの負極は、各正極がその片側に1つの負極が来るように交互に配置される。しかしながら、他の電極の配列を構想される適用例に依存して用いることができるのは明白であろう。
【0090】
作動:
高率キャパシタから成る電極は高エネルギー電池材料だけから成る電極より内部抵抗が低い。それ故、高率キャパシタ材料を具備した電極は高率充電(回生制動用)中、或いは高率放電(車加速及びエンジン制動用中に高エネルギー電池材料だけから成る電極より前に、電荷を吸収したり放出したりする。該高エネルギー電池材料から成る電極は高性能特性を可能にし、且つかなり長い寿命を有する鉛蓄電池を提供する。該高エネルギー電池材料と高率キャパシタ材料の両者から成る電極は、鉛蓄電池と通常関連した高エネルギー特性と共に高率可能出力を可能にする簡単且つ効果的な設計を提供する。
【0091】
鉛蓄電池に関しては、該電池の高電流充電及び放電中に電極表面上に硫酸鉛形成が起こるが、本発明の実施形態例によれば、高率電気活物質を電導性マットと組み合わせて使用することによりこれを最小減にすることができる。
【0092】
各電池のセル或いはその一対の負極及び正極は2Vを提供する。電気車用電池の広い分野への使用に適する鉛(Lead-acid)電池の1つの実施例は8枚の負極と9枚の正極から成り、これら負極のうちの4枚は鉛を基とした負極である。これら電極の配列及び相対的な数もまた適切である。ただし、それは、正極又は負極の最低1個を用いる。
【0093】
電極用の具体的な添加物:
これら電極の1つの電位枠或いは電位作動範囲にミスマッチがあるならば、水素及び/又は酸素ガス発生が起きる。水素ガス発生を抑制するべく、鉛、亜鉛、カドミウム、銀及びビスマスの酸化物、水酸化物又は硫酸塩、或いはこれらの混合物から選択した添加物或いは該添加物の混合物を含ませることができる。一般的に、該添加物は鉛か亜鉛の少なくとも1つの酸化物、水酸化物或いは硫酸塩を含むことが好ましい。便宜上、該添加物は、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化銀及び酸化ビスマスから選択された1種又は2種以上の酸化物が適当である。電極は高率キャパシタ材料及び/又は高エネルギー電池材料に加えて該添加物を含む。毒性の理由から、カドミウム化合物は好ましくない。それ故、好ましくは、その組成物は鉛化合物及び/又は亜鉛化合物であり、随意的に銀化合物から成る。コスト上の理由から、酸化銀及び酸化ビスマスは通常使われない。
【0094】
該添加物が添加される形状に関係なく、電解質(例えば、硫酸)との接触の際に、該添加物は反応して、元の金属酸化物、硫酸塩、或いは水酸化物から誘導される他の金属化合物に変換される。主題の添加物の酸化物と硫酸塩及び水酸化物という語は、該添加物と該電解質との間の反応で生じる生成物を含むように読むべきである。同様に、蓄電装置の充電状態或いは放電状態中に、該添加物が酸化還元反応を経由して別の形体に変換されるならば、酸化物、硫酸塩及び水酸化物の語は、該添加物の酸化還元反応の全ての生成物を含むように読むべきである。
【0095】
1つの実施形態例において、該添加物はPb2O3(“鉛丹”);アンチモンの酸化物、水酸化物、或いは硫酸塩;及び随意的に、鉄及び鉛の酸化物、水酸化物或いは硫酸塩から選択された1種又は2種以上から成る。
【0096】
アンチモンの化合物は正極での(酸素)ガス発生を抑制するのに有益である。しかしながら、それが負極方向に移動するならば、その電極で水素ガス発生という有害な結果を生ぜしめる。該アンチモン化合物を該正極に固定する薬品がない場合には、アンチモン化合物が電解質に接触したとき、それは電解質に溶解して、電流が流されるとき、負極上に沈積する。鉛丹はアンチモンの負極への移動を防止するために使用される。鉛及び鉄の化合物(即ち、酸化物、硫酸塩又は水酸化物)もまた有益であるから、添加物の混合物に用いられる。
【0097】
夫々の場合において、該添加物は水素ガス発生及び酸素ガス発生を回避できる量で用いられる。これは、一般にキャパシタの負極及び正極の電位窓を通常の±0.9V或いは±1.0Vから少なくとも±1.2Vに、そして、好ましくは±1.3Vに増大させる量である。一般的な条件では、酸化物の全含有量は、全活物質組成物(高率材料或いは高エネルギー材料、バインダー及び乾燥させたペースト組成物内のいかなる他の成分を含む)に対して5-40重量%の範囲である。
【0098】
負極への添加物は1-40重量%のPb化合物(より好ましくは1-20重量%)、1-20重量のZn化合物(より好ましくは1-10重量%)、0-5重量%のCd化合物及び0-5重量%のAg化合物から成る。好ましくは、その全量は上記した5-40重量%の範囲である。ZnO添加物だけの使用は、PbOだけ、或いはPbOとZnOの混合物の使用と同様に、良好な結果をもたらす。
【0099】
正極への添加物は酸化物、硫酸塩及び水酸化物の形態において0-30重量%の範囲のPb、酸化物、硫酸塩及び水酸化物の形態において1-10重量%のPb2O3、酸化物、硫酸塩及び水酸化物の形態において0-2重量%のFe及び酸化物、硫酸塩及び水酸化物の形態において0.05-1重量%のSbから成る。好ましくは、Sbは酸化物として添加する。好ましくは、総量は上記した5-40重量%の範囲である。
【0100】
鉛蓄電池用のこれら電極への添加物は、上記に議論したように水素ガス発生を避けるように提供される。該添加物はニッケル再充電可能電池、リチウム金属或いはリチウムイオン再充電可能電池などのその他の種類の電池に対し含有せしめる。適切な種類の電池の正極材料は、酸化ニッケル、酸化銀、酸化マグネシウム、リチウムポリマー材料、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物及びリチウムバナジウム酸化物を含む混合リチウム酸化物及びリチウム電導性正極材料などが含まれる。適切な種類の電池の負極材料は、亜鉛、カドミウム、金毒水素化物、金属又はアルミニウムなど他の金属との合金又は金属形態のリチウム及びリチウムイオンインターカレーション材料が含まれる。種々の種類の蓄電池に用いられるこれら電極材料の詳細と代替物は、本発明の技術分野における種々の刊行物から収集することができる。
【0101】
組立方法:
茲で記述した電極の組立方法は、該電導性マット上に堆積された及び/又は該電導性マット内に組み込まれた該第1電気活物質と該第2電気活物質のうちの少なくとも一方から成る複合層を形成することと、該複合層を該集電体に結合させることから成る。
【0102】
結合させられる集電体は該第1電気活物質、第2電気活物質、他の添加物又は添加物の混合物、他の電極材料、又はその組み合わせの堆積、層、或いは被覆層を含む。その方法は、更に、該集電体上に該第1電気活物質の被覆層を形成することと、該集電体上の第1電気活物質の被覆層に該複合層を結合させることから成る。
【0103】
該第1電気活物質、該第2電気活物質及び該電導性マットは上記した種々の特徴のための色々な実施形態と一致する。該高率電気活物質電極材で被覆された電導性マットなどのような複合層は組立工程中に予定のサイズに切断することができるように層状シートに形成できる(図13)。
【0104】
電極や装置の加工処理及び製造に関し、該電導性マットは多くの利点を提供する。例えば、該電導性マットを含む複合層は予め作製し、貯蔵し得られ、それから、必要な時に電極又は装置に組み込むことができる。このことはそうしたそのような電極及び装置の製造にある効率性をもたらす。例えば、複合層は二面性電極の夫々の側面に同時に施すことができ、そのような電極の効率的な製造工程をもたらす(図14)。
【0105】
本発明につき、多様な形態例及び/又は変形態様が本発明の精神と範囲から逸脱することなしに、具体的な実施形態により示された種々の変更・修正を加えられることは当業者には明らかであろう。それ故、本発明の実施形態例は、全ての面で例示的であり、限定的なのものではないと当業者は考えるべきである。
【0106】
何等かの従来技術の刊行物が茲に引用されるならば、その引用例は、オーストラリア及びその他のいかなる国においても、その引用された刊行物は、従来技術におけるありふれた一般的知識の一部を形成しているとは認められない。
【0107】
実験例:
1.負極及び正極の作製
負極用の高エネルギー電気活物質は、鉛酸化物、カーボンブラック、プラスチック繊維、エキスパンダ及び硫酸溶液を混合することによりペースト状に形成された。これを、次いで厚み:1.7mm、高さ:75mm、幅:75mmの寸法を有する鉛合金グリッドに塗布した。
【0108】
正極用の高エネルギー電気活物質は、エキスパンダを加えない鉛酸化物、プラスチック繊維及び硫酸溶液を混合することによりペースト状に形成された。これを、次いで、該負極に用いられるのと同じタイプのグリッド上に塗布した。
【0109】
これらの電極を熟成・乾燥し、次いで、セル内に組み入れた。該1枚の負極を2枚の正極間に挟み、且つポリマー・セパレータで分離した。次に、該セルに比重1.07の硫酸を添加した。これら電極について、該正極の高エネルギー電気活物質を二酸化鉛(PbO2)に変換し、且つ該負極の高エネルギー電気活物質をスポンジ鉛に変換する化成処理を施した。該化成後、それらの電極を次いで水で洗浄して、次いで乾燥した。
【0110】
図1a及び図1bは電導性マットと高率電気活物質を、既に高エネルギー電気活物質で被覆されている集電体に施す工程を含む電極(112及び114)の2つのタイプの配設構造を実現する段階的な組立方法を示す。図1aに示すように、集電体(102)は高エネルギー電気活物質(104)で被覆され、化成された負極(106)(即ち、既に高エネルギー電気活物質を含んでいる集電体)を提供する。化成された負極(106)の両側面は夫々、炭素繊維不織シート形状の電導性マット(108)で被覆される。次に、高率電気活物質(110)を該炭素繊維上に塗布して、高エネルギー及び高率可能出力を具備する高エネルギー及び高率電気活物質(112)から成る電極を形成する。この電極を一般に“ハイブリッド”或いは“複合”電極とも称する。使用された高率電気活物質は活性炭であった。該活性炭は、好ましくは、約2000m2/gの表面積を有し、ネオプレンとカルボキシメチルセルロースのバインダー混合物を用いることによりペースト状に調製される。例えば、キャパシタペースト材料は85%の活性炭と15%のバインダー混合物から成る。このハイブリッド電極に代わる配設構造を図1bに示す。この場合は、高率キャパシタ材料(110)は該化成された負極(106)(即ち、既に高エネルギー電気活物質の被覆層を含む電極)上に先ず始めに被覆され、それから、炭素繊維シート(108)で被覆される。本構造において、これら電極用の集電体は平板状の鉛グリッドから形成されている。それ故、上記の製造工程はその平板状のグリッドの夫々の側面に実施される。これらの複合電極を80℃で1時間乾燥した。
【0111】
該鉛負極用高エネルギー電気活物質のためのペースト組成物は、鉛酸化物(1Kg)、繊維0.8g、BaSO415.0g、カーボンブラック12g、バニスパース3g、H2SO4(1.36相対密度)86.6ml、水140ml、酸対酸化物比5.5%及びペースト密度4.1g/cm3であった。二酸化鉛正極のペースト組成物は、酸化鉛1Kg、繊維0.8g、H2SO4(1.360相対密度)120ml、水90ml、酸対酸化物比5.4%及びペースト密度4.2g/mlであった。鉛酸化物は化成技術により鉛酸化物を二酸化鉛と鉛に変換された。バニスパースとBaSO4(エキスパンダとして知られている)は作動中に大きな粒子の成長を防止することによりPbとPbSO4の多孔性と分散を促進することが理解されるであろう。
【0112】
該高率電気活物質は比表面積60m2/gのカーボンブラック45重量%、カルボキシメチルセルロース4重量%、ネオプレン11重量%及び比表面積1500m2/g-1の活性炭35重量%とプラスチック繊維5重量%から成る。
【0113】
各セルは表1の記載に従い異なった負極構成を有する4種類のセルを作製した。
【0114】
【表1】
【0115】
上記表1のセル3は、それ故、図1aに示す該電極(112)の配設に従って形成された負極から成り、表1のセル4は図1bに示す電極(114)の配設によって形成された負極から成る。
【0116】
図2aと図2bは段階的工程が鉛合金グリッド(102)から形成される集電体から始まっているが、夫々図1aと図1bに示している2つのタイプの配設を実現する段階的工程を反復して示している。図1aと図1bに示す上記の特徴は図2aと図2bのその他の特徴に夫々対応する。
【0117】
これらハイブリッド或いは複合電極を次いで、熟成,乾燥する。該乾燥された複合負極及び複合正極をセパレータと共に、セル容器内に組み込み、且つ該容器に硫酸溶液を満たした。所望の電流を所望の時間付与して鉛酸化物、塩基性硫酸鉛及び硫酸鉛を正極では二酸化鉛に、負極ではスポンジ鉛に変換させた。
【0118】
使用した該電導性マットは米国のホリングワース アンド ボース(Hollingworth and Vose)社によって供給された市販品である下記の特有を有する炭素繊維シート(不織)であった。
基本重量: 10g/m2
厚さ: 0.063mm
MD引張強度: 0.91kN/m
CD引張強度: 0.52kN/m
表面抵抗: 6.5DCΩ/m2
【0119】
使用された該炭素繊維は好ましくは肉薄で、該繊維に沿って良好な電子伝導性を確保する部分的に整然とした構造を具備することと、該繊維同士間を良好な接触を確保するほぼ固定した空間固定を具備する2つの具体的な利点を有する。その他の炭素材料と同様に、該シートは電気活性キャパシタに使用するに要求される理想的な特性である低い内部抵抗を有する。該シートはサイクル中に部分的に逸脱されていたことが従来確認されている高率電気活物質の構造を維持するのに役立ち、高率電気活物質を炭素繊維上に堆積したり、或いは該炭素繊維内に組み込む時に、その逸脱を低減し、或いは防止することができる。
【0120】
2. セル1-4の電極構成の性能結果
図3はセル1-4(表1)の性能をテストするために用いられた実験装置を示す。1枚の負極(302)はポリマー/ガラス・マットセパレータ(304)で覆われ、2枚の正極(306)間に挟置された。これら2枚の正極は純粋な鉛タブ(308)により接続された。次に、これらの電極をセパレータと共にプラスチック製の袋(図示せず)内に入れ、その全体の組立体をセル容器(310)内に入れた。次に、比重1.30の硫酸溶液(312)を該プラスチック製の袋に注入した。試験中の正極と負極の電位を測定するための銀/硫酸銀対照電極(313)を該プラスチック製の袋に挿入した。これらの電極を30分間浸漬した後、該セルに充分に充電し、1時間容量を決定した。容量決定後、該セルにつき異なったセル圧縮条件下でサイクリング試験を行った。必要な圧縮力はボルト(314)を時計方向に回して、負荷セル(316)とピストン(318)をセル群に押し付けて所望の圧縮値を提供することにより遂行された。該セル1-4(表1)のサイクリング性能は広範囲の圧縮力、例えば、10-90kPaの圧縮力下で評価した。
【0121】
図4は実験装置において、上記したように、図3に従った試験機器と装置で用いた充電及び放電手順を含む試験処理を示す。このテストの該プロフィールを図4に示す。該試験テストの手順は以下の通り。
(i) CAの電流から50%SoC(C=セルの1-h容量)での放電;
(ii) セルを開路状態で1時間放置(休止時間);
(iii) 2.45Vの定電圧下4C Aの最大電流で30-33秒間セルを充電(注:充電時間の変化は、この充電段階中の充電入力と放電段階中の充電出力の等量を維持するためv);
(iv) セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 4C Aの電流で30秒間セルを放電;
(vi) セルを開路状態で10秒間放置;
(vii) 該セル電圧が放電段階中に1.83Vのカット・オフ値に達するまで段階(iii)から段階(vi)までを反復。
【0122】
図5は4つの異なった電極構成によるセル1-4(表1)につき異なった圧縮力下でのサイクリング性能を示すグラフである。所望のタイプのセルについては、一般に、圧縮力の増大に伴いサイクル数の増大は、増大率の異なる3つの領域、つまり、領域I、領域II及び領域IIIを示す。圧縮力の増大に伴うサイクル数の変化を図6に概略的に説明している。圧縮力に伴うサイクル数の増大は該圧縮力がまだ低い場合、領域Iにおいてゆっくりしている。該圧縮力がある定の値に達するときサイクル数が増大し始める(領域II)。最後に、該圧縮力がある定の値を超えると、サイクル数の増大がゆっくりとなり、殆ど変化しないようになる。
【0123】
領域Iにおいて、セル1-4の全てについて同様に、圧縮力の増大に伴ってサイクル数はゆっくり増大する。図5を参照するに、セル1(高率電気活物質或いは電導性マットなしの化成負極)を曲線1により示し、セル2(高率電気活物質を被覆されているが何等炭素繊維シートを欠く化成負極)を曲線2で示し、セル3(高率電気活性キャパシタ材料で被覆して、次いで、炭素繊維シートで被覆されている化成負極)を曲線3で示し、また、セル4(炭素繊維で被覆され、次いで、キャパシタ材料で被覆された化成負極)を曲線4で示している。“化成負極”の語は、このテストにおいて、その高エネルギー電気活物質とは二酸化鉛を基にした材料に変換し得る鉛を基とした材料である高エネルギー電気活物質で被覆された集電体を意味する。各セル間のサイクル数の増大は以下の順序:セル1<セル2<セル3≦セル4で示される。
【0124】
領域IIにおいて、各セルにおける圧縮力の増大に伴うサイクル数の増大は領域Iにおけるそれに比し速くなる。セル間のサイクル数の増大は以下の順序:セル1<セル2<セル3≦セル4で示される。
【0125】
領域IIIにおいて、これらのセルのサイクル数の最終レベルは以下の順序:セル1<セル2、セル3、セル4で示される。
【0126】
結論として、セル3とセル4ではセル1及びセル2よりサイクル数の増大が速く、これら両方のセルは、圧縮力が60kPaより大きいときに最大高さのサイクル数に達する。一方、セル1及びセル2は、圧縮力が夫々80kPa及び70kPaより大きいときに、夫々が対応する最大サイクル数に達する。これは、炭素繊維不織シートの添加が、セル3及びセル4は低い圧縮力、例えば60kPaでさえ、セル1及びセル2より速く最大サイクル数に達する助けとなることを示している。
【0127】
3.電導性マットの機能
次の処置は、炭素繊維不織シートの変換が以下の事項を促進するかどうかを知る実験(図7-10)に係る。その事項とは、(i)該高率電気活性キャパシタ材料を一体に保持し、それ故、該キャパシタ層の伝導性と機械的な強度を増大させること、(ii)該キャパシタ層に増大したエネルギーと動力を提供すること及び(iii)該キャパシタ層の伝導性と機械的な強度を増大させると共に該キャパシタ層に増大したエネルギーと電力を提供すること。
【0128】
該炭素繊維不織布は、正極鉛電極用に使用された鉛合金グリッドの形状と同様の高さ(75mm)及び幅(75mm)を有する形状に切断されるが、厚みは異なっている(例えば、正極鉛合金グリッドの厚み1.7mmに対し、炭素繊維不織シートの厚みは0.5mmである。)該炭素繊維不織シートはガラス・マットセパレータで被覆され、2枚の正極鉛酸(高エネルギー)電極間に挟持された。該2枚の正極は純粋な鉛タブで接続された。これら電極はセパレータと共にプラスチック製袋に入れ、その全体の組立体はセル容器内に収納された。次いで、比重1.30の硫酸溶液を該プラスチック製袋に注入した。電極を30分間浸漬した後、該セルを以下の処理を施した。
(i) 該セルを定電圧(2.45V)、0.02Aの最大電流で20秒間充電させる;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セル電圧が1Vのカット・オフ値に達するまで、0.02Aの電流で該セルを放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 2.45Vの定電圧、0.02Aの最大電流で20秒間該セルを再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(vii) 段階(iii)から段階(vi)までを10回反復
【0129】
図7は1サイクルにおける20mAでの充電及び放電中のセル電圧、正極電位及び負極電位の変化を示す。図8は10サイクルを1セットとしたセル電圧及び負極電位の変化を示す。該セル電圧と負極電位は1.0秒以内に1Vと-0.1Vに急速に低下していることが明らかである。その結果、該炭素繊維不織シートの放電容量は非常に小さく、即ち、約0.005-0.013mAの範囲である。該炭素繊維不織シートの重量は0.38gであり、それ故、その比容量は1グラム当たり0.013-0.034mAhの範囲である。
【0130】
図9は1サイクルにおける50mAでの放電及び充電中のセル電圧、正極電位及び負極電位の変化を示す(注:爾後の充電段階中の荷電入力量は以前の放電段階のそれより20%大きい)。図10は4サイクルを1セットとしたセル電圧及び負極電位の経時変化を示す。裸炭素繊維不織シートとは異なり、キャパシタ材料で被覆された炭素繊維不織シートは放電時間が著しく長くなり、それ故、容量が著しく高くなる。即ち、20-25mAh対0.005-0.01mAhである。キャパシタ材料で被覆された炭素繊維シートの重量は1.92gであるので、そのキャパシタ材料で被覆された炭素繊維シートの比容量は、該裸シートのそれとを比較すると、後者は1グラム当たり0.013-0.034mAhの範囲であるに対し、前者は1グラム当たり10.417-13.021mAhの範囲である。このことは、該炭素繊維不織シートは、エネルギーや動力を増大するためではなく、該キャパシタ層の機械的強度と伝導性の両方を増大するために付加されることを示している。
【0131】
以下の実験は、ペースト中に、高率電気活性キャパシタ材料が該炭素繊維不織シートの孔を通過し鉛蓄電池の負極板の隣接表面に接触するかどうかを知るためになされた。該高率電気活性キャパシタ材料は、カーボンブラックと活性炭とバインダーと水を混合してペースト状に調製された。該キャパシタペーストは、次いで、炭素繊維不織シートの中間域に塗布して、その塗布されたシートは、白い紙の上に置いた。該炭素繊維不織シートの多孔性に依存して、キャパシタ材料はその隣接する表面に通過移動したり移動しないことが見られた。このことは、炭素繊維不織シートの使用は高率電気活性キャパシタ材料又はそのペーストを炭素繊維シートを通し対向する面に滲み出したり移動するのを防止する有孔性を持つように具体化することができることを示す。
【0132】
4. 高率電気活物質の性能
次の段階は高率電気活性(キャパシタ)材料の最適組成物を知るための実験に係る。表2に示すように、4種類のタイプのキャパシタ組成物が調製され、ホーリングワース アンド ボース カンパニーから入手した同じ特性を有する4枚の炭素繊維不織シート上に塗布された。該炭素繊維シートは該正極鉛酸電極と同じように高さ75mm及び幅75mmの形状に切断された。
【0133】
【表2】
【0134】
表2に示す試験セルタイプ1-4に用いられた装置の構成は図11に示される。キャパシタ電極は炭素繊維不織シート(324)とキャパシタ材料(326)とから成り、該炭素繊維不織シートはこの実施形態例では集電体として作用せしめた。該キャパシタ電極はガラス・マットセパレータ(322)で被覆され、且つ2枚の鉛酸(高エネルギー)正極(320)間に挟持せしめた。電気的接触のため、該炭素繊維不織シートのタブは2枚の金属鉛シート(334)で留めた。次に、得られた極板群は、プラスチック容器内に水平に設置した。15Kgの鉛塊(332)を該極板群上に設置されプラスチックシート上に載荷し、図11に示されているように、10kPaの圧縮力を付与した。比重1.30の硫酸溶液(328)がセル容器内に上位の正極より僅かに高いレベルまで注入され、また、銀/硫酸銀対照電極(330)を挿入した。それらの電極を30分間浸漬した後、該セルを以下の試験処理を施した。
(i) 該セルを定電圧(2.45V)、0.02Aの最大電流で1時間充電;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セルが1Vのカット・オフ値に達するまで、該セルを0.05Aの電流で放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 20%の過充電状態に到達するまで、該セルを定電圧2.45V、0.05Aの最大電流再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(Vii) 該段階(iii)から該段階(vi)までを10回反復。
【0135】
10回目のサイクルでの容量が表2に示されている。この表は容量は活性炭は、増大と共に増大し、また、カーボンブラックの減少、或いは除去でさえ、増大することを示している。このことは、該炭素繊維不織シートが充分な導電性を有するので、高率電気活物質はカーボンブラックの添加を必要としていないことを示している。
【0136】
5.電導性マットの性能:
最適の炭素繊維不織シートを見出すための実験も行った。上記装置(図11参照)及び試験処理がこの実験に用いられた。同じ高率電気活性(キャパシタ)組成物、即ち、カーボンブラック10重量%、活性炭素70%、カルボキシメチルセルロース4重量%、ネオプレン11重量%及びプラスチック繊維5重量%から成るものが用いられ、異なったタイプの炭素繊維不織シート、即ち、8000018、8000030(1-インチ)、8000030(0.5-インチ)、8000040及び8000154、上に塗布された。これらの炭素繊維不織シートは異なった特性と厚みを有する。その結果、8000030(1-インチ)、8000030(0.5-インチ)及び8000040の夫々の炭素繊維不織シートが同様の性能を有することを示した。
【0137】
次の実験は、より高い放電電流下で上記の3枚の炭素繊維シートを評価するべくなされた(図12)。該実験装置は、該セルがより高い高率で放電及び充電をすることができるように変更した。該炭素繊維不織シートと純粋な鉛金属シート(厚み=約1mm)は鉛酸正極のそれと同じである75mmの高さ及び75mmの幅を有する形状に切断された。該3枚の炭素繊維シートは、活性炭重量85%、カルボキシメチルセルロース4重量%及びネオプレン11重量%から成る同じ高率キャパシタ材料(表3)で被覆された。各被覆された炭素繊維シートは炭素繊維不織シート(334)とキャパシタ材料(336)から成り、鉛金属シート(338)、ガラス・マットセパレータ(340)及び正極鉛酸電極(342)と共に、図12に示すプラスチック容器内に組み立てられた。図11の配列構造と異なり、該鉛金属シートは集電体として作用し、電流を該キャパシタ層から及びへの流れを可能とする。比重1.30の硫酸溶液を上位の正極より僅かに高いレベルまで該セル容器内に注入した。これら電極は30分間浸漬した後、該セルを以下の処理を施された。
(i) 該セルを定電圧(2.45V)、0.02Aの最大電流で1時間充電;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セル電圧が1Vのカット・オフ値に達するまで0.15Aの電流で放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v)過充電20%が達成されるまで、2.45Vの定電圧、0.15Aの最大電流で該セルを1時間再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(Vii) 段階ステップ(iii)から段階(vi)までを10回反復。
【0138】
その結果は、図12に示す該キャパシタ電極の変形例は、これらのセルは図11に配設した構成に比しより高い高率で充放電することができることを立証した。これらのセルは容量に大きな差異はない。即ち、1グラム当たり175-180mAhの範囲である(表3)。このことは、該炭素繊維不織シート、即ち、8000030(1-インチ)、8000030(0.5-インチ)及び8000040はキャパシタ材料用導電性及び機械的支持部材として使用し得られることを証明する。
【0139】
【表3】
【0140】
6.酸化鉛添加の高率電気活物質の性能:
高率電気活物質への二酸化鉛の添加効果を調べる実験も行った。この実験は、キャパシタ材料はより増大したエネルギーを提供できるかどうか、即ち、高エネルギー電気活物質とエネルギーを共有し得るかどうかを決定することに在る。この実験に、図12に従った装置を用いた。高率電気活性(キャパシタ)組成物は酸化鉛、カーボンブラック及び活性炭の相互間を多少変更した。これらを鉛シート、或いは炭素繊維不織シート(8000030或いは8000040)上に直接被覆した。該組成物とセル構成を表4に示す。実験は、より高い放電電流下で、異なった組成物及び異なった構成を評価するために行った。
【0141】
【表4】
【0142】
これらの炭素繊維不織シートとこれらの純粋な金属鉛シート(厚さ=約1mm)は、鉛酸正極の形状と同様に、高さ75mm及び幅75mmの形状に裁断された。これら4つのタイプのセルは二酸化鉛、カーボンブラック及び上記に列挙した(表4)活性炭組成物と、カルボキシメチルセルロース5重量%及びネオプレン10重量%とで被覆された。セル1とセル2は鉛シート(338)に直接被覆された高率炭素キャパシタ材料を含み、次いで、ガラス・マットセパレータ(340)で包まれて、更に、図12に示すようにプラスチック容器内に正極鉛酸電極(342)と共に組み立てられた。セル1及び2の配列構成とは異なり、セル3とセル4は夫々8000040及び8000030(1インチ)の炭素繊維不織シート(334)上に被覆された高率炭素キャパシタ材料を夫々有する。これらは次いで、鉛シート(338)の上面に設置され、ガラス・マットセパレータ(340)で包み、更に、図12に示すように、プラスチック容器内に正極鉛酸電極(342)と共に組み立てられた。
【0143】
比重1.30の硫酸溶液を該セル容器内に、上位の正極より僅かに高いレベルまで注入した。それらの電極を30分間浸漬した後、セルに以下の試験処理を行った。
(i) 定電池(2.45V)、0.02Aの最大電流で、該セルを1時間充電;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セル電圧が1Vのカット・オフ値に達するまで、該セルを0.5Aの電流で放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 10%の過充電に達するまで、2.45Vの定電圧、0.5Aの最大電流で再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(vii) 段階(iii)から段階(vi)までを50回反復;
(viii) 段階(iii)の1.75Vのカット・オフ電圧で段階(ii)から段階(vii)までを反復。
【0144】
その結果は、キャパシタ電極内への酸化鉛の添加で、これらのセルは酸化鉛を添加されてないセルと比較し、より高い高率で放電し得られることを示す。しかしながら、表4に示されている1.0Vまで放電されたセルの容量は高率活性炭成分を高い含有キャパシタの容量に比較し著しく低い(表3参照)。1.75Vまでの放電で記録された容量は該キャパシタ内に存在する酸化鉛に起因する。
【0145】
上記のこれらのセルについて、次いで、より高い電流を受け入れる能力を試験する別の実験を行った。これらのセルにつき、以下の処理を行った。
(i) 定電圧(2.65V)、0.02Aの最大電流で該セルを1.5時間充電;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セルを0.5Aの電流で20秒間放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 時間を調節することにより、100%の充電に達するまで、2.45Vの定電圧、0.5Aの70%の最大電圧で該セルを再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(ix) セル電圧が1.75Vのカット・オフ値に達するまで、段階(iii)から段階(vi)までを反復。
(x) 放電電流を1Aにまで増大する段階(ii)から段階(vii)を反復。段階(v)での充電電流を1Aに増大。充電量が放電量と同じかそれ以上になるように、充電中(即ち、段階(v))に時間を調整することにより、放電に等しいか或いは放電より大きいように該セルに流入する充電の均衡。該放電電流が該セルをカット・オフ電圧に到達せしめるならば、そのときは、それは最大放電電流である。
(xi) 放電電流と充電電流を2Aまで増大する段階(ii)から段階(vii)までの反復。充電量が放電量と同じかそれより大きくなるように、充電中(段階(v))時間を調節することにより、該セルに流入される電荷の均衡。放電電流が2Aを超えて増大するならば、そのときは、充電電流を2Aに保ち、充電を放電とマッチし得るように時間を変更する。
【0146】
セル1についての実験結果は図13に、セル2についての実験結果は図14に、セル3についての実験結果は図15に、セル4についての実験結果は図16に夫々示す。セル1の結果は、放電電流を0.5Aまで維持することができることを示している。セル2、3及び4の結果は、放電電流は5A(89mAcm-2)まで増大し得られ、容量は4mAh/g-1まで増大し得られることを示している。
【0147】
7.弁制御セルの性能:
高率キャパシタ材料を含む炭素繊維不織シートの形状の電導性マットを含んでいる弁制御鉛酸(VRLA)2Vセルの性能を調べる実験も行った。図17に示されている装置を該実験に用いた。
【0148】
活性炭86重量%、カルボキシメチルセルロース4重量%及びネオプレン10重量%から成る高率電気活性(キャパシタ)組成物(350)を8000040炭素繊維不織シート(352)の8枚の部材に被覆した。これらのシートは75mmの高さと75mm幅をもつ形状に裁断され、その形状は鉛酸正極(354)及び鉛酸負極(356)と似ている。該セルは4枚の正極と5枚の負極を有する。次いで、これらの炭素繊維不織シートは、負極上に設置し、該炭素繊維不織シートを該負極と対面せしめた。これらの炭素不織布シートは、これらの負極がこれらの正極に対面しているならば、該負極に隣接させて挿入される。これらの正極は正極集電体(358)上にスポット溶接された。これらの負極は負極集電体(360)上にスポット溶接された。ガラス・マットセパレータ(362)はカーボンキャパシタ/炭素繊維不織シートと該正極の間に挿入された。交互に配置されたこれらの負極、カーボンキャパシタ/炭素繊維不織シート、これらの正極及びガラス・マットセパレータはアクリル製容器(364)内に収容され、且つ70kPaに圧縮された。該容器は圧力弁(368)を固設されたアクリル製の蓋(366)で密封された。正極での電位を記録するために、銀/硫酸銀参照電極(370)が該ガラス・マットセパレータ内に挿入された。
【0149】
比重1.30の硫酸溶液が該セル容器内にガラス・マットセパレータの頂面より僅か高いレベルまで注入された。該セルを8時間浸漬した後、該セルは2.55Vの最大電圧、6Aで24時間充電された。充電後、酸の比重を1.30に調整して、過剰な酸はセルから取り除いた。充電後、酸の比重を1.30に調節され、且つ過剰な酸を該セルから除去した。該セルにつき、以下の実験処理を行った。
1) 1時間容量(C1)の決定
2) マイルド・ハイブリッド運転条件下での操作をシミュレーションするべく42Vプロフィールを使用するセルのサイクリング性能の決定
【0150】
該セルの1時間容量を、以下の処理を用いて決定し、更に、42Vプロフィール・サイクリング試験中に達成された10000サイクル毎に決定した:
(i) 定電圧(2.45V)、2.5Aの最大電流で該セルを1時間充電;
(ii) セル電圧が1.67Vのカット・オフ値に達するまで、9.95Aの電流で該セルを放電;
(iv) 115%の充電又は30時間に達するまで、2.45Vの定電圧と9.95Aの最大電流で該セルを再充電;
(v) 段階(ii)を18回反復;。
(vi) 1時間容量を決定するべくピュカート方程式(Peukert’ Equation)を使用。
【0151】
該セルの初期容量は9.22Ahと決定された。それ故、C1率は9.22Aであった。この値を42Vサイクリング試験に用いた。
【0152】
次の実験は、図18に示す構成で、42Vサイクリングプロフィール下でのセルの性能を調べた。このプロフィールは、C1=9.4Aで、以下の段階を含んだ。
(i) 内部抵抗(iR)測定
100ミリ秒間、12Aの電流パルス
(ii) アイドリング・ストップ操作
1.4C1で60秒間放電。セル電圧が1.2Vのカット・オフ電圧(CoV)に達するなら、その時に、サイクリングを終了。
(iii) クランキング操作
12C1で0.5秒間放電。CoV<1.2になったら、サイクリングを終了。
(iv) パワーアシスト操作
6C1で0.5秒間放電。CoV<1.2Vとなったら、サイクリングを終了。
(v) エンジン充電操作
1.4C1で70秒間充電。或いは、ToCV(最高の充電電圧) 2.45V
0電流5秒間。
3.2C1で5秒間充電、或いはToCV=2.45V
(vi) 10,000サイクルに達するまで段階(i)を反復。
(vii) 残留容量テスト
C1で放電。CoV<1.67V
(viii) 24時間フル充電及び1時間容量試験
0.5C1で24時間充電、ToCV=2.45Vで
CoV<1.67Vとなるまで、CIで放電。
(ix) 24時間満充電-プロフィール終了
0.5C1で24時間充電、或いは、充電/放電容量=115%
(x) CoV<1.2Vとなるまで、次の10,000サイクル試験を開始。
【0153】
42Vサイクリングの結果を図19に示す。該容量は42Vサイクリング試験中に完了した10000サイクル毎に決定した。該グラフは、該セルが1.2Vのカット・オフ電圧に未だ到達してなかったこと、即ち、該セルは27389サイクル後に停電してなかったことを示している。該セルの容量は10000サイクル毎に測定した。最初の7389サイクル中は僅かに増大し、(該セルはこの時点で、停電によりこの時点でサイクリングを停止していた)それから、該セルがサイクリング処理が長時間に伴い徐々に減少した。
【0154】
8. 複合層の製造及び電極の実施例:
キャパシタ複合層、即ち、炭素繊維不織シートの形状である電導性マット上に被覆された高率(キャパシタ)電気活物質を含む複合層に係る2つの製造法の実施例を図20及び図21に示す。
【0155】
図20はキャパシタ複合層又はシートを製造する方法を示す。その製品は、貯蔵し得られ、その後、蓄電池組立中に負極板及び正極鉛酸板と、更にセパレータと共に使用し得る。1枚の負極鉛酸板は該負極鉛酸板の両側面に設置された2枚のキャパシタ複合シートと組み立てることができる(図21)。
【0156】
図20において、長手帯状の炭素繊維不織シート(350)を搬送ベルト(352)でペースト塗布装置、即ちホッパー(354)に搬送する。そこで、高率電気活物質を含むキャパシタペースト(356)を該長手シート上に塗布される。次いで、取り扱いを容易にするように、長手帯状の紙(358)を該キャパシタ複合帯状層の表面上に設置し、次いで、その複合層を回転カッター(360)で一定の長さを有する板状に切断する。これらの該キャパシタ複合板を次いで、気流乾燥器(362)を通して搬送し、茲で、該キャパシタ複合板の表面の水分を除去する。これらのキャパシタ複合板を積み重ね、その後、乾燥用オーブンに移送する。
【0157】
図21は高エネルギー電気活物質で被覆された集電体を含む電極層面を被覆する2枚の(高率)キャパシタ複合層の同時利用を示す。負極鉛酸高エネルギー(蓄電池用)ペースト(372)をペースト塗布装置(370)で該集電体上に塗布し電極層を形成する。該集電体は、連続鋳造鉛合金グリッド(366)の形状であり、搬送ベルト(368)により該ペースト塗布機に搬送される。事前に形成された2枚のキャパシタ複合層(376)をローラー対(378)により連続ペースト塗布することによって、該電極層(374)の両側に圧着させ、複合電極構成要素を形成する。該2枚のキャパシタ複合層の塗着は付属のペースト混合機及び塗布装置で同時に行うことができる。そして、この全体の複合電極構成要素(380)は、回転カッター(382)により一定の長さを有する板形状(384)に切断する。これらの複合板(384)は次いで、気流乾燥機(386)を通して移送され、これら複合板の表面水分を除去する。これらの複合板は積み重ねられ(388)、その後、熟成及び乾燥工程の段階に移送する。
【符号の説明】
【0158】
102 集電体
104 高エネルギー電気活物質
106 負極
108 電導性マット、炭素繊維マット
110 高率電気活物質、高率キャパシタ材料
112 電極
114 電極
302 負極
304 ガラス・マットセパレータ
306 正極
310 セル容器
312 硫酸溶液
313 銀/硫酸銀対照電極
320 正極
324 炭素繊維不織シート
326 キャパシタ材料
328 硫酸溶液
330 銀/硫酸銀対照電極
332 鉛塊
334 炭素繊維不織シート
336 キャパシタ材料
338 鉛金属シート
340 ガラス・マットセパレータ
342 正極鉛酸電極
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電極、該電極を含む蓄電装置及び該電極及び蓄電装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通及び通信装置用の新しい電池及び電動ネットワークの開発に多くの重要な進展がなされているが、異なったタイプの電池は特定の環境で用いられたときに、種々の問題を発生させる場合があり得る。例えば、電動車用に現在用いられている電池は色々な問題に直面する。車操作における色々な段階で、該電池から引き出されたり、該電池に再充電されたりする電流に関連して、これらの電池には高い要求が課される。例えば、電動車においては、加速を可能にするために電池からの高率放電が必要とされ、回生制動には電池の高率再充電が伴う。特にハイブリッド・タイプの電動車において、鉛蓄電池が用いられている場合は、電池の高率放・充電によって、負極板の表面に硫酸鉛の層形成をもたらし、負極板と正極板での水素及び酸素ガスの発生をもたらす。これは主として蓄電池に対する高電流要求の結果として発生する。これらの蓄電池が一般に作動する部分充電状態(PSoC)は、電気車の場合は20-100%であり、ハイブリッド・タイプの電気車の場合は40-60%、そして、マイルド・ハイブリッド・タイプの電気車の場合は70-90%である。これは高率部分充電状態(HRPSoC)である。ハイブリッド・タイプ及びマイルド・ハイブリッド・タイプの電気車の運転のようなHRPSoCのシミュレーション実験下では、鉛蓄電池は主として、負極板の表面上に硫酸鉛が漸次蓄積されることが原因で早期に故障を起こす可能性がある。これは硫酸鉛は、回生制動から又はエンジンから充電中にスポンジ鉛に効果的に戻すことが出来ないからである。その結果として、この硫酸鉛層は、その電極板の有効表面積を著しく減らしてしまい、電極板がその自動車から要求される高電流をもはや提供することが出来ないような程度にまで進展してしまう。これは蓄電池が本来有している寿命をかなり短縮させてしまう。
【0003】
再充電可能な電気化学蓄電池及びキャパシタなどの携帯用及び再充電可能なエネルギー貯蔵装置は広範な現代的な交通及び通信装置にとって、益々必要不可欠のものとなりつつある。上記に述べたように、多くの装置において、瞬間的な高い電力或いは高率と高エネルギーとの組み合わせが要求される。パルス出力利用のピーク出力要求を満たすべく電気活性キャパシタを電気化学電池と組み合わせたハイブリッド電極及び蓄電池が開発されている。このタイプの組み合わせ構造はサイクル寿命の延長など電池性能をかなり改善するが、電池の全体的な性能とサイクル寿命を依然として限定する該ハイブリッド装置には尚種々の問題がある。
【0004】
従って、現在用いられている蓄電池と比較してより改良された寿命及び/又は性能を有する改良型鉛蓄電池を含む別の電極及び蓄電装置を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一般には、蓄電装置用の電極を提供する。本発明はまた、該電極を含む鉛蓄電池などの該電極を含む蓄電装置を提供する。
【0006】
第1の側面において、集電体と、第1電気活物質と、第2電気活物質と電導性マットから成る蓄電装置用の電極において、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有し、また、該電導性マットは該第1電気活物質と該第2電気活物質のうちの少なくとも一方の構造上及び電導性を支えることを特徴とする蓄電装置用電極を提供する。
【0007】
1つの実施態様において、該電導性マットは該第1電気活物質と該第2電気活物質のうちの少なくとも一方の構造的な支えをもたらし、該電極からの分離を減らすことができる。別の実施態様では、該電導性マットは炭素繊維シート、例えば、炭素繊維不織シートである。該電導性マットは多孔性及び/又は相互接続された電導性繊維の網状構造であってもよい。
【0008】
該第1電気活物質、該第2電気活物質及び該電導性マットの夫々は該集電体上に設けてもよいし、どのような順序或いは構成で、被覆層とか層とか又は領域として、相互に重ね合わせることも可能であるし、或いは、その他の被覆層、層(介在層を含む)又はその他の物質と組み合わせた構成とすることもできる。いずれか1つ又は複数の領域、層、或いは被覆層は該第1電気活物質及び第2電気活物質を含んでいてもよいし、或いは、いずれか1つ以上の領域、層、被覆層は該第1電気活物質及び/又は第2電気活物質を含んでもよいし、随意に1種以上の添加物を添加した構成であってもよく、また、バインダー、結合剤、増粘剤、繊維、電導性材料及び造孔剤などを含有させてもよい。該第1電気活物質は1つ以上の領域、被覆層或いは層内で該第2電気活物質と色々な配合量で混ぜ合わせていてもよいし、或いは、該第1電気活物質は該第2電気活物質の1つ以上の個別的な領域、被覆層、或いは層内に設けることもできる。
【0009】
更に、1つの実施態様は、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方から成る1つ以上の被覆層、層、或いは領域を含むことができる。他の実施態様では、該電導性マットは該第1電気活物質或いは該第2電気活物質を含む1つ以上の被覆層、層或いは領域を含んでいてもよいし、更に、随意に1種以上の添加物を添加してもよい。更に、別の実施態様では、該電導性マットは該第1電気活物質と該第2電気活物質とを分離する介在層として設けられる。更に、別の実施態様では、該第1電気活物質と該第2電気活物質の少なくともいずれか一方は該電導性マット上に堆積させるか、その内部に組み込まれる。
【0010】
更に別の実施態様では、該第1電気活物質及び第2電気活物質の一方は該集電体上に堆積された第1個別層として設けられ、該第1電気活物質及び第2電気活物質の残る他方は該第1個別層上に堆積された第2個別層として設けられた配列構成とし、該構成において、該電導性マットは該第2個別層に接触した第3個別層として設けられる。
【0011】
更に別の実施態様では、該第1電気活物質は該集電体上に堆積された第1個別層として設けられ、そして、該電導性マットは該第1個別層と接触した第2個別層として設けられ、また該第2電気活物質は該第2個別層上に堆積された第3個別層として設けられる。
【0012】
該第1電気活物質はLa、Li、Na、Al、Fe、Zn、Cd、Pb、Sn、Bi、V、Mn、Co、Ni、Ag及びそれらの合金、酸化物、水酸化物、水素化物、炭化物、窒化物或いは硫化物、炭素、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオロフェニルチオペン、ポリピロール、n又はpドープポリマー、レドックスポリマー及びそれらの混合物から成る群から選択することができる。1つの実施態様において、該第1電気活物質は鉛を基とした物質、例えば、鉛蓄電池の負極に代表的に用いられるスポンジ鉛であり、或いは、鉛蓄電池の正極に代表的に用いられる二酸化鉛であり、或いは、活性化作用でスポンジ鉛か二酸化鉛を形成することができる物質である。
【0013】
該第2電気活物質はNb、Hf、Ti、Ta、Li、Fe、Zn、Sn、Ru、Ag、Pt、Ir、Pb、Mo、W、Ni、Co及びそれらの酸化物、水酸化物、水素化物、炭化物、窒化物或いは亜硫酸化物、炭素、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオロフェニルチオペン、ポリピロール、n又はpドープポリマー、レドックスポリマー及びそれらの混合物から成る群から選択することができる。1つの実施態様において、該第2電気活物質は高表面積炭素、酸化ルテニウム、酸化銀、酸化コバルト及び電導性ポリマーから成る群から選択される。該高表面積炭素は活性炭素、カーボンブラック、アモルファス炭素、炭素ナノ粒子、炭素ナノチューブ、炭素繊維、或いはそれらの混合物であってよい。その1つの実施例では、該第2電気活物質は活性炭である。
【0014】
第2の側面では、少なくとも一対の負極及び正極から成る蓄電装置において、少なくとも1つの電極は茲に上記の第1の側面で述べた電極であることを特徴とする蓄電装置が提供される。
【0015】
該第1の側面に従った電極は、該蓄電装置の負極を構成することができ、この場合において、該第1電気活物質はカドミウム、金属水素化物、鉛及び亜鉛から成る群から1種以上が選択される。1つの実施例では、該第1電気活物質は鉛である。
【0016】
該第1の側面に従った該電極は、該蓄電装置の正極を構成することができ、この場合において、該第1電気活物質は酸化ニッケル、酸化鉛及び銀から成る群から1種以上が選択される。1つの実施例では、該第1電気活物質は酸化鉛である。
【0017】
1つの実施例では、該蓄電装置は約80kPa以下の圧縮力下で作動するように構成される。
【0018】
第3の側面では、硫酸電解液内に配置された少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極から成る蓄電装置が提供され、この蓄電装置において、少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極は、
集電体と、
該集電体上に堆積されスポンジ鉛から成る第1層と、
該第1層と接触され且つ、相互接続された電導性炭素繊維網状構造で構成された電導性マットから成る第2層と、
該第2層に堆積され且つ、第2電気活物質から成る第3層とで構成され、
該スポンジ鉛は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該スポンジ鉛より高い高率放・充電可能出力を有することを特徴とする。
【0019】
第4の側面において、前記に述べた第1の側面に従って電極の組立方法の提供において、この組立方法は、
該電導性マット上に堆積された及び/又は該電導性マットの内部に組み込まれた該第1電気活物質と該第2電気活物質のうちの少なくとも一方から成る複合層を形成すること、
該複合層を該集電体に結合すること
から成る電極の組立方法。
【0020】
更に、1つの実施態様において、該組立方法は更に、該集電体上に該第1電気活物質の被覆層を形成すること、該複合層を該集電体上の該第1電気活物質の被覆層に結合することとから成る。
【0021】
本発明は、請求項1に記載の通り、集電体と、第1電気活物質と、第2電気活物質、電導性マットから成る蓄電装置用の電極において、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有し、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方の構造上及び電導性上の支えとなっていることを特徴とする電極に存する。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、該電導性マットは相互接続された電導性繊維の多孔性網状構造から成ることを特徴とする請求項1に記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項3に記載の通り、該電導性マットは炭素繊維シートであることを特徴とする請求項2に記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項4に記載の通り、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方から成る1つ以上の被覆層、層、或いは領域で構成されていることを特徴とする請求項1-3のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項5に記載の通り、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の1つ以上の被覆層、層、或いは領域で構成され、随時に1種以上の添加物を添加されていることを特徴とする請求項1-4のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項6に記載の通り、該電導性マットは該第2電気活物質から該第1電気活物質を離隔する介在層として設けられていることを特徴とする請求項1-5のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項7に記載の通り、該第1電気活物質は鉛を基とした物質であることを特徴とする請求項1-6のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項8に記載の通り、該第2電気活物質は高表面積カーボン、酸化ルテニウム、酸化銀、酸化コバルト及び電導ポリマーで構成される群から1種以上を選択されることを特徴とする請求項1-7のいずれか1つに記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項9に記載の通り、高表面積カーボンは活性炭、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ及び炭素繊維で構成される群から1種以上選択されることを特徴とする請求項8に記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項10に記載の通り、該高表面積カーボンは活性炭であることを特徴とする請求項9に記載の電極に存する。
更に本発明は、請求項11に記載の通り、少なくとも一対の負極と正極から成る蓄電装置において、少なくとも1つの電極は請求項1-10のいずれか1つに記載の電極であることを特徴とする蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項12に記載の通り、該少なくとも1つの電極は、カドミウム、金属水素化物、鉛及び亜鉛から成る群から1種以上を選択された第1電気活物質を含む負極であることを特徴とする請求項11に記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項13に記載の通り、該第1電気活物質は鉛であることを特徴とする請求項12に記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項14に記載の通り、該少なくとも1つの電極は、酸化ニッケル、酸化鉛及び銀から成る群から1種以上を選択された第1電気活物質を含む正極であることを特徴とする請求項11-13のいずれか1つに記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項15に記載の通り、該第1電気活物質は酸化鉛であることを特徴とする請求項14に記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項16に記載の通り、該装置は弁制御装置であることを特徴とする請求項11-15のいずれか1つに記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項17に記載の通り、該蓄電装置が約80kPa未満の圧縮力下で作動するように構成されていることを特徴とする請求項11-16のいずれか1つに記載の蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項18に記載の通り、硫酸電解質溶液内に配置された少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と、少なくとも1つの鉛に基づく負極とから成る蓄電装置において、該少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極は、
集電体と、
該集電体上に堆積されたスポンジ鉛から成る第1層と、
該第1層と接触されると共に、相互に接続された電導性炭素繊維の網状体から成る電導性マットで構成された第2層と、
該第2層上に堆積された第2電気活物質から成る第3層とで形成されており、更に
該スポンジ鉛は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該スポンジ鉛より高い高率可能出力を有していることを特徴とする蓄電装置に存する。
更に本発明は、請求項19に記載の通り、請求項1-10のいずれか1つに記載の電極の組立方法において、該方法は、
該電導性マット上に及び/又は内に組み込まれて配置された該第1電気活物質と該第2電気活物質の少なくとも1つを含む複合層を形成すること、そして
該複合層を該集電体に結合させること
から成る該電極の組立方法に存する。
更に本発明は、請求項20に記載の通り、請求項19記載の電極の組立方法において、該方法は、更に、該集電体上に該第1電気活物質の被覆層を形成すること、そして、該複合層を該集電体上の第1電気活物質の被覆層に結合させることを特徴とする組立法に存する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電極の組立方法を示し、図1a及び図1bは本発明の実施例による電極の2つのタイプの構成を実現する夫々の組立工程を段階的に示す。
【図2】本発明の電極の集電体を含む組立方法を示し、図2a及び2bは夫々図1a及び図1bに示されており鉛合金グリッドで形成されている集電体を含む2つのタイプの構成を実現する夫々の段階的な組立工程を示す。
【図3】作動セル内に組み込まれたときの圧縮の範囲下において、電極のサイクリング性能を決定するために用いられる試験機器及び配列構成を示す。
【図4】図3に示す試験機器及び配列構成で用いられる充電及び放電手順を含む試験操作のプロフィールを示す。
【図5】本発明の種々の実施例による異なった負極から製造された4種のセルの異なった圧縮力下でのサイクリング性能を示すグラフである。
【図6】試験された電極のサイクル数と電池圧縮力との一般的な関係を示すグラフである。
【図7】炭素繊維不織シートを試験する場合に伴う1サイクル、20mAでの充電及び放電中のセル電圧と正極電位及び負極電位の変化を含む充電及び放電プロフィールを示すグラフである。
【図8】該炭素繊維不織シートの試験に係る10サイクルを1セットとする時間でのセル電圧と負極電位の変化を示すグラフである。
【図9】該炭素繊維不織シートの試験に係る1サイクル、50mAでの充電及び放電中のセル電圧と正極電位及び負極電位の変化を示すグラフである。
【図10】該炭素繊維不織シートの試験に係る4サイクルの時間でのセル電圧と負極電位の変化を示すグラフである。
【図11】本発明の種々の実施例による高率電気活物質の4種の異なった組成物の変化を調べるのに用いられたセルの構成を示す。
【図12】本発明の種々の実施例による異なった電導性マットの変化を調べるのに用いられるセルの構成を示す。
【図13】該セルの鉛シート上に直接塗布された20重量%の酸化鉛と20重量%のブラックカーボンと30重量%の活性炭から成るキャパシタ組成物を含むセルの高電流充電/放電プロトコールでのセル電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図14】該セルの鉛シート上に直接塗着された20重量%の酸化鉛と20重量%のブラックカーボンと45重量%の活性炭から成るキャパシタ組成物を含む電池の高電流充電/放電プロトコールでのセル電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図15】炭素繊維不織シート8000040を含み且つその上に塗着された20重量%の酸化鉛と30重量%のブラックカーボンと35重量%の活性炭から成るキャパシタ組成物を含むセルの高電流充電/放電プロトコールでのセル電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図16】炭素繊維不織シート8000030(1”)を含み且つその上に塗着された20重量%の酸化鉛と30重量%のブラックカーボンと35重量%の活性炭から成るキャパシタ組成物を含むセルの高電流充電/放電プロトコールでのセル電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図17】キャパシタ材料を含む炭素繊維不織シートを含む弁制御型鉛(VRLA)2V蓄電池の性能をテストするのに用いられるセルの構成を示す。
【図18】図17のセル性能を試験するための42V充電及び放電サイクリング処理を示すグラフである。
【図19】図17に示す該セルの試験での電池電圧及び容量の変化を示すグラフである。
【図20】高率電気活物質を塗布された電導性マットから成る複合層を製造するための本発明の1つの実施形態例による装置と製造工程方法を示す。
【図21】その各側面に施された複合層を備えた二重電極を製造するための本発明の1つの実施形態例による装置と製造工程方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施例を、例示としてのみの目的で、添付図面を参照して更に説明し図示するが、これらの図のうち、性能が改良された蓄電池用の電極の種々選択される材料と配置や配列を確認する試みにおいて、2つの異なった電気活物質の組み合わせを含む電極と共に使用される電導性マットは、該電気活物質の一方はその他方より高いエネルギー密度とより低い低率性能を有し、サイクル寿命の改良などを含む特定の利点をもたらされ得ることを知見した。本発明の非限定的な具体的な実施形態例を以下に説明する。
【0024】
本発明の該電極は第1電気活物質と第2電気活物質から成り、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有する。便宜上、より高いエネルギー密度を有する電気活物質(該第1電気活物質)を以下では『高エネルギー電気活物質』と称し、より高い高率可能出力を有している電気活物質(該第2電気活物質)を以下においては『高率電気活物質』と称することにする。
【0025】
本発明は、一般的に、集電体と、高エネルギー電気活物質と、高率電気活物質とこれらの高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質の少なくとも一方の構造及び電導性を支える電導性マットとから成る高率、高エネルギー蓄電装置用の電極に関する。茲に述べる第1の側面を有する電極は高率高エネルギー蓄電装置に用いることができる。
【0026】
一般的用語:
『高率』という用語は、高率或いは高電流の放電或いは再充電を行うことができる装置や材料の性能を一般に指称し、低い内部抵抗と高表面積を有する装置や材料により促進される。高率放電は、高表面積炭素などのエネルギーを容量的に蓄えることができる従来のキャパシタ電極材料によってもたらされることはよく知られている。
【0027】
『高エネルギー』という用語は大量の放電或いは再充電を行うことができる装置や材料の性能を一般に指称し、一般に保持される放電や再充電が維持される間、しかし低率でもたらされる。高エネルギー材料は、鉛蓄電池で用いられる鉛ペーストなどのエネルギーを電気化学的に蓄えることが出来る従来の電池電極材料によってもたらされると考えられる。
【0028】
『電気活性』、『活性電極材料』などこれに似た用語は、ある充電の電源を受け取ったり、蓄えたり、或いは提供したりする能力を指称し、エネルギーを容量的に蓄えることができるキャパシタ電極材料及びエネルギーを電気化学的に蓄えることができる電池電極材料を含む。
【0029】
その他の具体的な用語は、具体的な実施形態例の参照において、より適切な個所に述べてある。
【0030】
電極構成:
電極は一般には活性電極材料を施された集電体(典型例は格子板又は板)から成る。該活性電極材料は最も一般的には該集電体の少なくとも1つの領域にペースト形態で施される。該ペーストは添加物又は該活性電極材料以外の材料を含んでもよい。
【0031】
電極は一般には、平板状(グリッド)板或いは角柱又はコラム電池用の螺旋状プレートの形状をしているが、どのような形状であってもよい。設計を単純にするために、平板或いはグリッドが一般に好ましい。集電体は通常は1つの電極の基盤構造を提供し、一般的には電導性金属からつくられ、例えば、鉛蓄電池における集電体として鉛合金が用いられている。更に、該集電体用の材料は電解質環境に安定でなければならない。
【0032】
上に述べたように、本発明は基本的には、集電体、高エネルギー電気活物質、高率電気活物質及び該高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質のための電導性の構造的及び物理的な支えとなる電導性マットで構成される高率高エネルギー蓄電装置用の電極を提供する。
【0033】
該高エネルギー電気活物質、該高率電気活物質及び該電導性マットの夫々は、該集電体上に或いはお互いの上に、被覆層、層、或いは領域として設けることができ、更に、その他のどのような順序及び配列で他の材料や層と共に配置してもよい。電極の色々な配列及び実施形態を以下に記載する。
【0034】
該第1電気活物質及び第2電気活物質は1つ以上の被覆層、層、或いは領域内において相互に混ぜ合わすことができ、また、随意的に、1つ以上の他の添加物と相互に混ぜ合わせでもよい。該第1電気活物質はいずれか1つ以上の被覆層、層、或いは領域内において、該第2電気活物質から分離しておくこともできる。
【0035】
1つの実施例において、該電極は個別的な第1領域及び第2領域を有する。即ち、該高エネルギー電気活物質は1つ以上の第1領域に配置され、該高率電気活物質は1つ以上の第2領域に配置されている。該第1領域及び第2領域は互いに近接して、或いは互いに間隔をあけて、或いは重なり合っていて、或いは一方が他方の上に層状に配置されていてもよい。これらの領域は集電体上、及び/又は該電導性マット上に設けられ、該マットでこれら領域の一方又は両方を支えるようにする。該電導性マットは使用中の電極から該電気活物質からの分離防止効果を容易にする。別の実施例において、該電導性マットはその表面上に位置された該第1領域及び第2領域を有する該集電体上に層状に配置してもよい。
【0036】
別の実施例において、高エネルギー及び高率電気活物質のうちのいずれか一方は該集電体上に堆積された第1個別層として設けることができ、該高エネルギー及び高率電気活物質の他方は該第1個別層上に堆積された第2の個別層として設けることができ、この場合に該電導性マットは該第2個別層に接触した第3個別層となる。これに代わる別の実施例において、該高エネルギー電気活物質は該集電体上に堆積された第1個別層として設けることができ、該電導性マットは該第1個別層と接触した該第2個別層として設けることができ、該高率電気活物質は該第2個別層上に堆積された第3個別層として設けることができる。
【0037】
高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質は該電導性マット上への堆積及び/又は該電導性マット内への組み込みから成る複合層を形成することができる。1つの実施例において、該電極は高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質のうちの少なくとも一方で被覆された、好ましくは、少なくとも高率電気活物質で被覆された該電導性マットから成る複合層から成る。該電極或いは該電極を含む装置の製造に関しては、該複合層は予め作成して貯蔵しておき、それから、適切な時期に該電極又は装置に組み込まれ、かくしてこれらの電極や装置の製造に定の効率性をもたらす。例えば、複合層は二重側面電極の各側面に同時に圧着させるようにすれば、電極の効率的な製造をもたらす。
【0038】
別の実施例において、該電導性マットは該高エネルギー電気活物質を高率電気活物質から離隔する介在層として設けられる。該介在層は個別層として設けてもよい。該電導性マットの多孔性は、また、該高率電気活物質が使用中、該電導性マットから逸脱を防止することを促進する。選択された多孔性は、装置の特性とその装置の使用を意図する環境に依存する。例えば、高率材料を該電導性マットの一方の側面に堆積させ、該高エネルギー電気活物質は該電導性マットの他方の側面に堆積させることができ、該高率電気活物質と高エネルギー電気活物質の分離を維持するように電導性マットの多孔性を選択するようにする。
【0039】
上記の電極の配列は、電池の負極及び正極の両方を形成に適用することができる。
【0040】
電気活物質:
『高エネルギー電気活物質』は『高率電気活物質』よりも高いエネルギー密度を有し、『高率電気活物質』は『高エネルギー電気活物質』より高い高率可能出力を有する。これらの材料のエネルギー値の絶対比率又は絶対エネルギー値は材料の量及び種類及びこれらの材料が用いられる環境と構造を含む多くの要因に依存することが理解できるであろう。
【0041】
『高エネルギー電気活物質』は高エネルギー密度を提供するために電池電極で従来用いられているどんな材料であってもよい。これらの材料は一般的に持続的なエネルギー出力を提供するが、高率電気活物質に比しより低比率又は動力を提供する。再充電可能水性電池の負極に用いられている普通の高エネルギー材料のいくつかの例は、カドミウム、金属水素化物、鉛、亜鉛であり、一方、正極用の材料は酸化ニッケル、酸化鉛、銀、酸素や空気から触媒と共に製造される。リチウムイオン再充電可能電池用の高エネルギー負極の例は、炭素(リチウム-インターカレーション)、WO3、TiSx、SnOxであり、対応する正極材料の例としてはLixNiyOz、LiCoO2、LiMn2O2、LixTiyOz、LiV6O13であり、但、ここにおいて、x、y及びzの値は0.1と10の間である。その他の高エネルギー材料は、La、Li、Al、Fe、Zn、Cd、Pb、Sn、Bi、C、V、Mn、Co、Ni、Ag及びこれらの酸化物、水酸化物、水素化物、炭化物、窒化物或いは硫酸塩、更に、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオロフェニルチオペン、ポリピロール、n又はpドープポリマー、レドックスポリマー及びこれらの混合物である。例えば、蓄電装置は、リチウムイオン、金属リチウム、金属リチウム水素化物、金属ニッケル水素化物、ニッケルと亜鉛を基とした系から成り、また、ニッケルと銀を基とした装置系又は電極系から成る。
【0042】
1つの実施例において、該高エネルギー電気活物質は鉛を基礎とした材料、例えば、鉛形式の蓄電池の場合、負極材料として用いられるスポンジ鉛及び正極材料として用いられる二酸化鉛である。
【0043】
『高率電気活物質』は一般にキャパシタの特性を示すどのような高率(或いは高出力)材料であっても差し支えない。そのような材料は従来よく知られている。これらの材料は、短期間の初期高率或いは高出力を一般に提供するが、高エネルギー材料に比し低いエネルギー密度を有する。キャパシタに従来用いられているいくつかの高率材料の例は、高表面積炭素、酸化ルテニウム、酸化銀、酸化コバルト及び電導性ポリマー(例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフルオロフェニルチオペン、n又はpドープポリマー、レドックスポリマー、或いはポリピロール)である。高表面積炭素素材の例は、活性炭、カーボンブラック、無定形カーボン、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維及びそれらの混合物である。その他の高率素材の例は、C、Nb、Hf、Ti、Ta、Li、Fe、Zn、Sn、Ru、Ag、Pt、Ir、Pb、Mo、W、Ni、Co及びこれらの酸化物、水酸化物、水素化物、炭素化物、窒化物或いは硫化物及びこれらの混合物である。
【0044】
該高エネルギー電気活物質と該高率電気活物質は電極上の領域、層、或いは被覆物として一般に設けられる。電気活物質は、集電体、電導性マット或いは電極の1つ又はそれ以上の他の構成部材上に施され、或いは塗布される。例えばペーストとして、カルボキシメチル・セルロース、ネオプレン、スチレン・ブタジエン・ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)或いはポリビナリデンウルオライド(PVDF)/キナール及びそれらの組み合わせから成る接着剤又は結合剤と共に、更に、随意的に、カーボンブラック、プラスチック繊維又は炭素繊維、増粘剤、或いは造孔剤などの電導性材料を含む1種以上の添加物と共に塗布される該高エネルギー電気活物質はバインダーや結合剤を使う必要なく、該集電体、電導性マット、或いはその電極の1つ以上のその他の構成部材上に被覆させることができる。
【0045】
該高率電気活物質を電極の他の1つ又はそれ以上の構成部材に施すためのペーストは、表面積(従って静電容量)と電導性との適切なバランスを得るために、しばしば他の材料を含む。現在、コスト上の理由から、活性炭が高率電気活物質のための最も適切な原料である。適切な活性炭は、例えば、約1000及び3500m2/gの範囲で、少なくとも500m2/g程度の表面積でよい。適切なカーボンブラック材料の表面積は20-1000m2/gの範囲であってよい。
【0046】
該電気活物質は1つ又はそれ以上の添加物と組み合わせて用いることができる。該添加物は、バインダーや結合剤、増粘剤、繊維、電導性材料及び造孔剤を含むことができる。該添加物は、領域、被覆層、層の一部を形成し、かくして電極の性能を向上させるべく、該電気活物質を含む混合物やペーストの状態で提供してもよい。
【0047】
造孔剤は亜鉛粉末、樟脳粉末、ナフタレン及びアルミニウム粉末から成る群からその1種又は2種以上を選択する。該造孔剤は該電気活物質を含む領域、被覆層、或いは層の多孔性を増大させて、電解液の電極表面への供給を容易にし、該電極性能を改善する。
【0048】
該電導性材料は該領域、被覆層及び層に充分な量の電導性をもたらし、カーボンブラックやその他の電導性材料を含ませてよい。該電導性材料はこれらの領域、被覆層又は層に少なくとも5重量%、例えば、10-60重量%の範囲で具備することができる。
【0049】
該バインダーや該結合剤は電気活物質同士の結着及び該材料の該集電体、電極或いは該電導性マットの表面との結着を改善するに有用である。該バインダーはまた、電気活物質、領域、層、被覆層間の或いは電極成分間の電気的な相互接続をもたらし、かくして、該材料が乾燥した時に、充分な度合の多孔性の維持を容易にする。該バインダー又は該結合剤はポリクロロプレン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)を含んでもよい。該バインダーは、領域、被覆層又は層内に少なくとも1-20重量%、例えば、5-15重量%の範囲で具備せしめることができる。
【0050】
該バインダー又は結合剤とも称することができる増粘剤は、該材料の混合物をペーストの形状に調製するのに有用である。水性ペーストのためには、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びメチルセルロース(MC)、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコールなどのセルロース誘導体が適切であり、また、有機性ペーストのためには、NMP(N-メチル-2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが適切である。該増粘剤は、充分な量の電導性を維持するように、乾燥残滓が10重量%を越えないように、例えば、領域、被覆層或いは層内に1-6重量%の範囲で具備せしめることができる。
【0051】
繊維はプラスチック、ガラス、或いは炭素の繊維を含んでよい。繊維は補強材として寄与することができ、作動中に該電極で生成されるガスの透過性を改善する。プラスチック繊維はポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂を含んでよい。該繊維は一般に短く、例えば、太さは1-30μmの範囲であり、長さは0.05-4.0mmの範囲である。該繊維は、約15%以下、例えば、4-12重量%の範囲で提供される。
【0052】
これらの材料の適切な混合物は、0-80%のカーボンブラック、15-95%の活性炭、0-10%のプラスチック繊維及び/又は炭素繊維及び5-25%の範囲の調製用バインダーから構成することができる。全ての測量は特に断らない限り、重量によりなされる。尚、上記の実施例及び以下の実施例において、カーボンブラックはその他の電導材料や電導材料の混合物の代わりに用いてもよく、また、活性炭はその他の高率材料や高率材料の混合物の代わりに用いてよいことが理解されるであろう。特に断らない限り、これらの混合物は負極或いは正極に用いてよい。特定のタイプの電池系列の特定の電極や構造に用いられるとき、更なる効果をもたらす。
【0053】
別の適切な混合物は活性炭1-95%(高率材料として)、バインダー5-20%(例えば、ネオプリン及び/又はカルボキシメチルセルロース)、カーボンブラック0-80%及びプラスチック繊維及び/又は炭素繊維0-5%から成る。該高率電気活物質を、カーボンブラックや該電導性マットの電導性材料或いは構成部材上に、或いはこれらの材料内に、或いはその構成材料と接触状態に(例えば層状、或いは被覆層により)分散されるような実施形態が利点をもたらす。該高率電気活物質が該電導性マットと接触している特定の実施形態例においては、その混合物内に用いられる該電導性材料(例えば、カーボンブラック)の量は減らしてもよいし、省いてもよい。例えば、該電導性マットに施すに適するであろう該高率電気活物質、該結合剤及び電導性材料から成るペーストは、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、或いは5重量%未満の電導性材料を含んでいてもよい。該バインダー及び該増粘剤は5-25%の範囲でよい。該ペーストはまた、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、或いは90重量%以上の高率電気活物質を含んでいてもよい。カーボンブラックなどの電導性材料は、通常、ある種の電池系列においてガス発生問題を引き起こし得るある不純物を一般に含んでいる。これらの実施形態例における電導性マットは、それ故、構造的及び機械的支持特性に加えて、該高率電気活物質に電導特性を与えることができる。該高率電気活物質が該電導性マットから分離されているような実施形態では、カーボンブラックなどの電導性材料を該高率電気活物質との混合物の状態で使用することにより性能を改善できることは理解されるであろう。
【0054】
1つの実施例において、該高率電気活物質は、好ましくは約1000-3500m2/gの表面積を有する活性炭である。該活性炭はバインダーや増粘剤、例えば、5-20%の範囲の量のネオプレン及び/又はカルボキシメチルセルロース混合物を用いることにより、ペースト状に調製することができる。該ペーストは80-95%の活性炭と5-20%のバインダーを含むことができ、例えば、85%活性炭と15%バインダーとから成る。上記したように、これらの実施形態は、該高率電気活物質が該電導性マットと接触している電極構成(例えば、該電導性マット上に該高率電気活物質の領域、被覆層或いは層が設けられている)にとり更なる利点をもたらす。
【0055】
別の実施形態例において、該ペーストは、約20-50重量%の範囲の活性炭、約30-60重量%の範囲のカーボンブラック及び約5-25%の範囲のバインダーから成る。例えば、該ペーストは活性炭約35重量%、カーボンブラック約45重量%、バインダー約10重量%から成り、残りは1種又は2種以上の添加物から成る。1つの形態例で、該ペーストは活性炭素35%、カーボンブラック45%、バインダー15%及びプラスチック粒子/炭素繊維粒子5%から成る。上記したように、これらの実施形態例は、該高率電気活物質が該電導性マットと接触していない電極構成にとり、更なる利点をもたらす。
【0056】
一般に、単独の電極に用いられる高率電気活物質と該高エネルギー電気活物質の配合比率は重量ベースで夫々約3:17対1:19の範囲である。例えば、10gの高率電気活物質は予め、100gの高率電気活物質で被覆された電極上に層として使用することができる。
【0057】
電導性マット:
該電導性マットは高度の電気伝導性を有し、その結果として低い内部抵抗を有しているいかなる材料を含み、該電極上に高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質を物理的或いは機械的な支持を提供することができるいかなる材料でもよい。該電導性マットは高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質に対する支えを提供し、エネルギー蓄積装置の充電及び放電期間中電極からのこれら材料の逸脱防止を促進する。該電導性マットは所望の電解質環境に一般に安定である。該電導性マットは(例えば電導性を増大する)集電体として作用し、また、(例えば機械的強度を増大する)該電気活物質に対する物理的支持を提供する。該電導性マットは多孔性であってもよいし、相互に接続された電導性繊維の網状構造に構成してもよく、例えばカーボンブラック不織シートでもよい。該電導性マットは織布でも不織布のいずれでもよい。
【0058】
該電導性マットは第1電気活物質、第2電気活物質、或いはこれら両方のための支えを提供する。
【0059】
該電導性マットは接着、付着、取り外しできる付着、或いは非付着のいずれかによって、該高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質と関連させた支持層を提供する。他の介在層もまた、接着、付着、取り外しできる付着、或いは非付着の方法により該電導性マット、該高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質と関連させることができる。該電導性マットは一般に半剛性或いは剛性であり、また、フィルム、薄膜、マトリックス基板、或いはシートの形状であってよい。該電導性マットはその上に配設された相互につながった電導性繊維の網状構造から成るシート或いは層で構成することができ、例えば、支持シート上に保持された炭素繊維を含むことができる。意図される使用に依存して、該電導性マットはエネルギー蓄積装置の高率充電及び放電中のガス発生を抑制する材料から選択することができる。
【0060】
電導性マットの1例は、炭素繊維の不織シートのような炭素繊維材料で形成された層などを含む。電導性マットの他の例は、導電性セラミックス、導電性ガラス繊維及び導電性プラスチックを含む各種材料から形成され且つ相互に接続された網状構造であってもよい。該電導性マットが液状の電解質を透過性を可能にする多孔性を有することは理解されるであろう。例えば、適切な有孔性は40-80%の範囲である。
【0061】
適切な電導性マットの1つの具体的な例は、以下の諸特性を有する炭素繊維不織シートである。
・ 基本重量: 10-70g/m2
・ 厚さ: 0.06-0.55mm
・ DM引張強度: 0.91-4.3kN/m
・ CD引張強度: 0.52-4.3kN/m
・ 表面抵抗: 3-10 DCΩ/m2
【0062】
1つの実施形態例において、該電導性マットは炭素繊維シートであり、好ましくは、該繊維に沿っての良好な電子伝導とこれら繊維内に相互の良好な接触状態を保証するほぼ静止した空間固定を保証する肉薄の不織シートである。他の炭素素材の場合と同様に、該シートは内部抵抗が低く、該高率キャパシタ電気活物質及び高エネルギー電気活物質と組み合わせて使用する場合に要求される理想的な特性である。本発明者は、高エネルギー材料と高率材料を含む電極においては、該高率材料がサイクル中に部分的に逸脱する可能性があることを知見した。本発明者は、更に、該高率材料に対する構造的支承となる電導性マットを用いることによって、この逸脱現象は減らしたり阻止したりすることができることを知見した。
【0063】
1つの実施形態例において、該高率材料及び/又は高エネルギー材料は、該電導性マット上に堆積させたり、或いは該マット内に組み込む。この構成において、該電導性マットは、例えば、鉛蓄電池内でのガス発生に際して、該エネルギー蓄積装置の高率充電及び放電中に、該電極からの高率材料及び/又は高エネルギー材料の逸脱防止を容易にする。
【0064】
別の実施形態例において、該電導性マットは高率電気活物質及び/又は該高エネルギー電気活物質の個別層或いは領域、好ましくは、少なくとも該高率電気活物質の個別層或いは領域に対する支えとなる。
【0065】
別の実施形態例において、該電導性マットの内部及び/又は表面の少なくとも領域は、高率及び/又は高エネルギー電気活物質を含んでいる。該電導性マットは、該マットの一方の側面に施されたどのような材料でも、該マットの反対側の側面に透過したり移動しない多孔度を選択することができる。
【0066】
該高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質は該電導性マット上に堆積及び/又はその内部への組み入れて複合層を形成するようにすることができる。そのような実施形態例においては、該電導性マットは、複合層の製造を介して、エネルギー蓄積装置の製造における効率的な(製造工程)を可能にする。例えば、該複合層を予め作製しておき、次いで、適切な時点で電極や装置に組み込むことができる。
【0067】
蓄電装置に炭素繊維不織シートの形状の電導性マットを使用することは、電導性マットを有しない従来の電極或いはハイブリッド/複合電極の場合に比し低い圧縮力で最大サイクル数(通常、約6000-8000サイクルとの間)を可能にすることを示した。例えば、前者では80kPaの圧縮力であるに対して、後者では70kPa未満以上の圧縮力が必要である。1つの実施例で、該電導性マットはハイブリッド或いは複合電極(即ち、高率キャパシタ材料と高エネルギー材料から成る電極)に用いられ、この場合、蓄電装置は約70kPa未満、約60kPa未満、そして、好ましくは約30-60kPaの範囲の圧縮力下で作動する。この範囲より外側の圧縮力を尚用いても差し支えないことは言うまでもない。
【0068】
蓄電装置:
該蓄電装置は少なくとも一対の正極及び負極を含み、この場合に、少なくとも1枚の電極は上記に述べた第1の側面に従った電極である。
【0069】
該蓄電装置、例えば、鉛蓄電池は、一般にアノードとカソード(即ち、負極と正極)で組み立てられる。鉛蓄電池に関し、該装置は一般に、少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と、多孔性の非導電性セパレータと、少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極を含んでおり、これらが硫酸から成る電解液内で連結される。該蓄電装置は弁制御装置であってよい。
【0070】
該高率材料及び高エネルギー材料は色々な仕方で、集電体上に設置される。例えば、重ね合わせた層構造(電導性マットなどの介在層を含んでいる場合と含んでいない場合がある)、互いにした隣接させた層或いは相互に混ぜ合わせた構造状態、或いは、一方の材料が他方の材料の粒子を被覆して混合物を形成し該集電体上に堆積した混合物に形成する。該電導性マットは該高率材料及び/又は高エネルギー材料に対し物理的或いは機械的支持を提供するように配設される。有利なことには、該電導性マットは高率電気活物質及び/又は高エネルギー電気活物質を該集電体の上に、或いは内部に組み込んだとき、実質上、平坦な層の形成を可能にし、そして、これら電極の効率的な製造を容易にする。
【0071】
該蓄電装置は、上記に述べたように、1つ又はそれ以上の負極、正極、或いは負極と正極の各対で構成することができる。所望の電極上の該高エネルギー電気活物質及び高率電気活物質の活性電気化学ポテンシャルの範囲は、その電極の望ましい作動範囲の全域と重なるべきである。該高エネルギー電気活物質及び高率電気活物質はまた、対イオンを供給し、そのエネルギー蓄積セル内の電気回路を完成する電解質に接触する必要がある。化学的相溶性を考慮する必要がある。例えば、これら2種類の材料が共通の電解質を共にするならば、両者は、該電解液に安定でなければならない。
【0072】
該高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質は、一般に、それらが電気的に接触するように、共通の集電体上に配設される。この配設のいくつかの例は、両側面、分散、重層、横並び及び被覆粉末である。異なった材料の明確な相を設けることは、電極の性能をより予測しやすくなる。その他の例としては、2種類の材料を等しい形状のチェッカー盤型又は各材料を交互に配設した縞模様に織り交ぜた領域などのように単一の面に横並びの領域がある。
【0073】
該蓄電装置の負極はカドミウム、金属水素化物、鉛及び亜鉛から成る群から選択された1種又は2種以上の高エネルギー電気活物質を含むことができる。1つの実施例において、該高エネルギー電気活物質は鉛である。
【0074】
該蓄電装置の正極は酸化ニッケル、酸化鉛及び銀から成る群から選択された1種又は2種以上の高エネルギー電気活物質を含むことができる。1つの実施例において、該高エネルギー電気活物質は二酸化鉛である。
【0075】
1つの実施例において、該正極は二酸化鉛正極で、該負極はスポンジ鉛負極である。電解質は好ましくは硫酸電解液である。
【0076】
1つの実施例において、硫酸電解液内に配置された少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極とから成る該蓄電装置において、該負極は
集電体と
該集電体上に堆積され且つスポンジ鉛から成る第1層と、
該第1層と接触しており、且つ相互に電気的に接続された電導性炭素繊維の網状構造から成る電導性マットから成る第2層と、
該第2層上に堆積され、且つ第2電気活物質から成る第3層
とで構成され、
更に、該スポンジ鉛は該第2電気活物質よりも高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該スポンジ鉛よりも高い高率可能出力を有していることを特徴とする。該蓄電装置は、一般に、更に該少なくとも1枚の二酸化鉛を基とした正極と該少なくとも1枚のスポンジ鉛を基とした負極とを分離する多孔な非導電性セパレータを含む。いくつかの実施形態例において、該第2層は該第1層と該第3層を分離している。
【0077】
該蓄電装置は非水性系或いは水性系のいずれの形態であってもよい。非水性系は一般にリチウムイオンを基としている。水性系は酸性、中性又は塩基性である。両系は、固体、液体、或いはゲルである電解質を用いる。また、両系は、適切な液体電解質に浸漬された従来のセパレータを用いてもよい。水性電解質系では、一般的に、酸性、中性、或いは塩基性電解質を用い、また、混合イオン電解質を含んでもよい。
【0078】
該高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質は上記した配列の1つを用い、同じ電極上に組み立てることができる。該高率電気活物質及び高エネルギー電気活物質の相対的な量或いは積載量は該蓄電装置の究極の性能に影響を及ぼすことに留意しておくことが重要である。若し、該装置の利用が比較的長い時間に亘りピーク出力を要求するならば、そのときは、該高率電気活物質の積載量を増やすべきである。若し、パルス持続時間が相対的に短いか、電流の要求が少ないならば、そのときは、該高率電気活物質の積載量を減らしてよい。
【0079】
1つの実施例において、該電池は正極と負極を交互に配設させた一連から成り、これらの電極に接触している電解質を具備し、これら正極を直接接続する第1導電体とこれら負極を直接接続する第2導電体とで構成された電池において、少なくとも一対の隣接する正極域及び負極域は(容量的エネルギーを蓄えることで)キャパシタを形成し、また少なくとも一対の隣接する正極域及び負極域は(該2つの電極対間の電気化学電位としてのエネルギーを蓄えることにより)電池を形成する。
【0080】
該蓄電装置の上記の実施形態例は、例えば高率部分充電状態(HRPSoC)下で作動される高性能の鉛蓄電池の問題であるサルフェーションを低減或いは防止することができる。1つの実施形態例において、約20-100%の範囲(例えば、電気車にとり一般的)、約40-60%の範囲(例えば、ハイブリッド電気車にとり一般的)、或いは約70-90%(例えば、マイルド・ハイブリッド・タイプの電気車にとり一般的)の部分充電状態(PSoC)下で、上記した実施形態例に従った蓄電装置が使用される。
【0081】
電解質:
夫々異なった電解質系列は異なったタイプの蓄電池と異なったエネルギー蓄積装置には通常必要であることは明らかである。鉛蓄電池の場合、どのような酸電解質でも用いることができる。該電解質は、液体又はゲルの形状である。鉛蓄電池の場合、該電解質は一般に硫酸電解質である。その他のタイプの蓄電池の場合は、該電解質は水性又は有機電解質であり、これらには、カリウムやその他の水酸化物のようなアルカリ類、液体或いは固体状態の水酸化物、リチウム-イオンを含む有機溶剤、ポリマー電解質、イオン性電解液などである。選択された蓄電池の正極及び負極材料に適した電解質は、通常の知識を有する者であればいつものように選択できる。
【0082】
バスバー或いは導電体:
鉛蓄電池のバスバーは任意の適当な構造のものでもよく、従来公知の任意の適切な電導性材料から作ることができる。バスバーの文脈において使用されている用語『に接続されてる』は直接の物理的な接続が好ましいが、電気的な接続を意味している。電池がバスバーを具備した典型的な鉛蓄電池でない場合は、どのような導電体でも用いられ、その形状や材料は従来公知である。
【0083】
その他の電池の特徴:
概して、電池の構成部品は用いられる電池に適した更なる特徴を具備して電池容器内に収容される。例えば、鉛蓄電池の場合、該鉛蓄電池は開放形か、弁制御型である。該鉛蓄電池が弁制御型鉛蓄電池である場合、該蓄電池はどのような適切な設計であってよく、例えば、ゲル電解質を含んでもよい。そうした設計に適した蓄電池ユニットの具体的な特徴は、従来の発明で公知である。
【0084】
該鉛蓄電池に加えられる圧力は開放形設計の場合は5-20kPaの範囲、そして、弁制御型鉛蓄電池設計の場合は20-80kPaの範囲である。
【0085】
セパレータ:
一般的に、正極及び負極の夫々は多孔性のセパレータによって互いに隣接する電極と分離されている。これらのセパレータは隣接電極間の適切な分離距離を維持する。直接隣接する鉛を基とした負極と二酸化鉛を基とした正極の間に位置しているセパレータは、多孔性ポリマー材料或いは吸収性ガラスマイクロファイバー(“AGM”)など、この技術分野で普通に使われているどのような適切な多孔性材料から作成される。該分離距離(セパレータの厚みに相当する)は一般に、これらのセパレータの場合、1-2.5mmの範囲である。該電池の部分を形成する正極と負極間のセパレータを形成するに有用なポリマー材料はポリエチレン及びAGMである。ポリエチレンセパレータは適切には厚みが1-1.5mmの範囲で、AGMセパレータの場合は、適切には厚みが1.2-2.5mmの範囲である。
【0086】
該正極と該キャパシタ負極との間に配置されたセパレータの場合、その適切な厚みは、該鉛蓄電池の電池部のセパレータより著しく肉薄である。好ましくは、該セパレータの厚みは0.01-0.1mmの範囲であり、より好ましくは、その厚みは0.03-0.07mmの範囲である。該セパレータは微孔性ポリプロピレンなどの微孔性ポリマー素材から作られるのが適切である。その他のセパレータはAGMで、この種のセパレータの厚みは0.1-1mmの範囲であり、好ましくは0.1-0.5mmの範囲である。
【0087】
鉛蓄電池の化成:
適切な構成部品を電池容器内に組み立てた後、一般的には、鉛蓄電池を化成することが必要である。化成作業は当技術分野で良く知られている。“鉛を基とした”(“Lead-based”)及び“二酸化鉛を基とした”(“Lead dioxide based”)という表現は、鉛自体或いは二酸化鉛自体、金属/二酸化金属を含む材料、或いは、任意の電極が場合により、鉛又は二酸化鉛に変換される材料を夫々意味するべく使用されることは理解できるであろう。
【0088】
上記に用いられた用語により示されるように、該鉛蓄電池は夫々のタイプの電極を少なくとも1つ含む。該電池内の個々のセル(1つの負極板と1つの正極板で構成されている)即ち、セルの数は各電池の所望の電圧に依存する。マイルド・ハイブリッド電気車用の蓄電池(42Vまで充電される)として使用するのに適した36-V電池の場合、これは18個のセルを含む。
【0089】
電極配列:
概して、これらの正極及びこれらの負極は、各正極がその片側に1つの負極が来るように交互に配置される。しかしながら、他の電極の配列を構想される適用例に依存して用いることができるのは明白であろう。
【0090】
作動:
高率キャパシタから成る電極は高エネルギー電池材料だけから成る電極より内部抵抗が低い。それ故、高率キャパシタ材料を具備した電極は高率充電(回生制動用)中、或いは高率放電(車加速及びエンジン制動用中に高エネルギー電池材料だけから成る電極より前に、電荷を吸収したり放出したりする。該高エネルギー電池材料から成る電極は高性能特性を可能にし、且つかなり長い寿命を有する鉛蓄電池を提供する。該高エネルギー電池材料と高率キャパシタ材料の両者から成る電極は、鉛蓄電池と通常関連した高エネルギー特性と共に高率可能出力を可能にする簡単且つ効果的な設計を提供する。
【0091】
鉛蓄電池に関しては、該電池の高電流充電及び放電中に電極表面上に硫酸鉛形成が起こるが、本発明の実施形態例によれば、高率電気活物質を電導性マットと組み合わせて使用することによりこれを最小減にすることができる。
【0092】
各電池のセル或いはその一対の負極及び正極は2Vを提供する。電気車用電池の広い分野への使用に適する鉛(Lead-acid)電池の1つの実施例は8枚の負極と9枚の正極から成り、これら負極のうちの4枚は鉛を基とした負極である。これら電極の配列及び相対的な数もまた適切である。ただし、それは、正極又は負極の最低1個を用いる。
【0093】
電極用の具体的な添加物:
これら電極の1つの電位枠或いは電位作動範囲にミスマッチがあるならば、水素及び/又は酸素ガス発生が起きる。水素ガス発生を抑制するべく、鉛、亜鉛、カドミウム、銀及びビスマスの酸化物、水酸化物又は硫酸塩、或いはこれらの混合物から選択した添加物或いは該添加物の混合物を含ませることができる。一般的に、該添加物は鉛か亜鉛の少なくとも1つの酸化物、水酸化物或いは硫酸塩を含むことが好ましい。便宜上、該添加物は、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化銀及び酸化ビスマスから選択された1種又は2種以上の酸化物が適当である。電極は高率キャパシタ材料及び/又は高エネルギー電池材料に加えて該添加物を含む。毒性の理由から、カドミウム化合物は好ましくない。それ故、好ましくは、その組成物は鉛化合物及び/又は亜鉛化合物であり、随意的に銀化合物から成る。コスト上の理由から、酸化銀及び酸化ビスマスは通常使われない。
【0094】
該添加物が添加される形状に関係なく、電解質(例えば、硫酸)との接触の際に、該添加物は反応して、元の金属酸化物、硫酸塩、或いは水酸化物から誘導される他の金属化合物に変換される。主題の添加物の酸化物と硫酸塩及び水酸化物という語は、該添加物と該電解質との間の反応で生じる生成物を含むように読むべきである。同様に、蓄電装置の充電状態或いは放電状態中に、該添加物が酸化還元反応を経由して別の形体に変換されるならば、酸化物、硫酸塩及び水酸化物の語は、該添加物の酸化還元反応の全ての生成物を含むように読むべきである。
【0095】
1つの実施形態例において、該添加物はPb2O3(“鉛丹”);アンチモンの酸化物、水酸化物、或いは硫酸塩;及び随意的に、鉄及び鉛の酸化物、水酸化物或いは硫酸塩から選択された1種又は2種以上から成る。
【0096】
アンチモンの化合物は正極での(酸素)ガス発生を抑制するのに有益である。しかしながら、それが負極方向に移動するならば、その電極で水素ガス発生という有害な結果を生ぜしめる。該アンチモン化合物を該正極に固定する薬品がない場合には、アンチモン化合物が電解質に接触したとき、それは電解質に溶解して、電流が流されるとき、負極上に沈積する。鉛丹はアンチモンの負極への移動を防止するために使用される。鉛及び鉄の化合物(即ち、酸化物、硫酸塩又は水酸化物)もまた有益であるから、添加物の混合物に用いられる。
【0097】
夫々の場合において、該添加物は水素ガス発生及び酸素ガス発生を回避できる量で用いられる。これは、一般にキャパシタの負極及び正極の電位窓を通常の±0.9V或いは±1.0Vから少なくとも±1.2Vに、そして、好ましくは±1.3Vに増大させる量である。一般的な条件では、酸化物の全含有量は、全活物質組成物(高率材料或いは高エネルギー材料、バインダー及び乾燥させたペースト組成物内のいかなる他の成分を含む)に対して5-40重量%の範囲である。
【0098】
負極への添加物は1-40重量%のPb化合物(より好ましくは1-20重量%)、1-20重量のZn化合物(より好ましくは1-10重量%)、0-5重量%のCd化合物及び0-5重量%のAg化合物から成る。好ましくは、その全量は上記した5-40重量%の範囲である。ZnO添加物だけの使用は、PbOだけ、或いはPbOとZnOの混合物の使用と同様に、良好な結果をもたらす。
【0099】
正極への添加物は酸化物、硫酸塩及び水酸化物の形態において0-30重量%の範囲のPb、酸化物、硫酸塩及び水酸化物の形態において1-10重量%のPb2O3、酸化物、硫酸塩及び水酸化物の形態において0-2重量%のFe及び酸化物、硫酸塩及び水酸化物の形態において0.05-1重量%のSbから成る。好ましくは、Sbは酸化物として添加する。好ましくは、総量は上記した5-40重量%の範囲である。
【0100】
鉛蓄電池用のこれら電極への添加物は、上記に議論したように水素ガス発生を避けるように提供される。該添加物はニッケル再充電可能電池、リチウム金属或いはリチウムイオン再充電可能電池などのその他の種類の電池に対し含有せしめる。適切な種類の電池の正極材料は、酸化ニッケル、酸化銀、酸化マグネシウム、リチウムポリマー材料、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物及びリチウムバナジウム酸化物を含む混合リチウム酸化物及びリチウム電導性正極材料などが含まれる。適切な種類の電池の負極材料は、亜鉛、カドミウム、金毒水素化物、金属又はアルミニウムなど他の金属との合金又は金属形態のリチウム及びリチウムイオンインターカレーション材料が含まれる。種々の種類の蓄電池に用いられるこれら電極材料の詳細と代替物は、本発明の技術分野における種々の刊行物から収集することができる。
【0101】
組立方法:
茲で記述した電極の組立方法は、該電導性マット上に堆積された及び/又は該電導性マット内に組み込まれた該第1電気活物質と該第2電気活物質のうちの少なくとも一方から成る複合層を形成することと、該複合層を該集電体に結合させることから成る。
【0102】
結合させられる集電体は該第1電気活物質、第2電気活物質、他の添加物又は添加物の混合物、他の電極材料、又はその組み合わせの堆積、層、或いは被覆層を含む。その方法は、更に、該集電体上に該第1電気活物質の被覆層を形成することと、該集電体上の第1電気活物質の被覆層に該複合層を結合させることから成る。
【0103】
該第1電気活物質、該第2電気活物質及び該電導性マットは上記した種々の特徴のための色々な実施形態と一致する。該高率電気活物質電極材で被覆された電導性マットなどのような複合層は組立工程中に予定のサイズに切断することができるように層状シートに形成できる(図13)。
【0104】
電極や装置の加工処理及び製造に関し、該電導性マットは多くの利点を提供する。例えば、該電導性マットを含む複合層は予め作製し、貯蔵し得られ、それから、必要な時に電極又は装置に組み込むことができる。このことはそうしたそのような電極及び装置の製造にある効率性をもたらす。例えば、複合層は二面性電極の夫々の側面に同時に施すことができ、そのような電極の効率的な製造工程をもたらす(図14)。
【0105】
本発明につき、多様な形態例及び/又は変形態様が本発明の精神と範囲から逸脱することなしに、具体的な実施形態により示された種々の変更・修正を加えられることは当業者には明らかであろう。それ故、本発明の実施形態例は、全ての面で例示的であり、限定的なのものではないと当業者は考えるべきである。
【0106】
何等かの従来技術の刊行物が茲に引用されるならば、その引用例は、オーストラリア及びその他のいかなる国においても、その引用された刊行物は、従来技術におけるありふれた一般的知識の一部を形成しているとは認められない。
【0107】
実験例:
1.負極及び正極の作製
負極用の高エネルギー電気活物質は、鉛酸化物、カーボンブラック、プラスチック繊維、エキスパンダ及び硫酸溶液を混合することによりペースト状に形成された。これを、次いで厚み:1.7mm、高さ:75mm、幅:75mmの寸法を有する鉛合金グリッドに塗布した。
【0108】
正極用の高エネルギー電気活物質は、エキスパンダを加えない鉛酸化物、プラスチック繊維及び硫酸溶液を混合することによりペースト状に形成された。これを、次いで、該負極に用いられるのと同じタイプのグリッド上に塗布した。
【0109】
これらの電極を熟成・乾燥し、次いで、セル内に組み入れた。該1枚の負極を2枚の正極間に挟み、且つポリマー・セパレータで分離した。次に、該セルに比重1.07の硫酸を添加した。これら電極について、該正極の高エネルギー電気活物質を二酸化鉛(PbO2)に変換し、且つ該負極の高エネルギー電気活物質をスポンジ鉛に変換する化成処理を施した。該化成後、それらの電極を次いで水で洗浄して、次いで乾燥した。
【0110】
図1a及び図1bは電導性マットと高率電気活物質を、既に高エネルギー電気活物質で被覆されている集電体に施す工程を含む電極(112及び114)の2つのタイプの配設構造を実現する段階的な組立方法を示す。図1aに示すように、集電体(102)は高エネルギー電気活物質(104)で被覆され、化成された負極(106)(即ち、既に高エネルギー電気活物質を含んでいる集電体)を提供する。化成された負極(106)の両側面は夫々、炭素繊維不織シート形状の電導性マット(108)で被覆される。次に、高率電気活物質(110)を該炭素繊維上に塗布して、高エネルギー及び高率可能出力を具備する高エネルギー及び高率電気活物質(112)から成る電極を形成する。この電極を一般に“ハイブリッド”或いは“複合”電極とも称する。使用された高率電気活物質は活性炭であった。該活性炭は、好ましくは、約2000m2/gの表面積を有し、ネオプレンとカルボキシメチルセルロースのバインダー混合物を用いることによりペースト状に調製される。例えば、キャパシタペースト材料は85%の活性炭と15%のバインダー混合物から成る。このハイブリッド電極に代わる配設構造を図1bに示す。この場合は、高率キャパシタ材料(110)は該化成された負極(106)(即ち、既に高エネルギー電気活物質の被覆層を含む電極)上に先ず始めに被覆され、それから、炭素繊維シート(108)で被覆される。本構造において、これら電極用の集電体は平板状の鉛グリッドから形成されている。それ故、上記の製造工程はその平板状のグリッドの夫々の側面に実施される。これらの複合電極を80℃で1時間乾燥した。
【0111】
該鉛負極用高エネルギー電気活物質のためのペースト組成物は、鉛酸化物(1Kg)、繊維0.8g、BaSO415.0g、カーボンブラック12g、バニスパース3g、H2SO4(1.36相対密度)86.6ml、水140ml、酸対酸化物比5.5%及びペースト密度4.1g/cm3であった。二酸化鉛正極のペースト組成物は、酸化鉛1Kg、繊維0.8g、H2SO4(1.360相対密度)120ml、水90ml、酸対酸化物比5.4%及びペースト密度4.2g/mlであった。鉛酸化物は化成技術により鉛酸化物を二酸化鉛と鉛に変換された。バニスパースとBaSO4(エキスパンダとして知られている)は作動中に大きな粒子の成長を防止することによりPbとPbSO4の多孔性と分散を促進することが理解されるであろう。
【0112】
該高率電気活物質は比表面積60m2/gのカーボンブラック45重量%、カルボキシメチルセルロース4重量%、ネオプレン11重量%及び比表面積1500m2/g-1の活性炭35重量%とプラスチック繊維5重量%から成る。
【0113】
各セルは表1の記載に従い異なった負極構成を有する4種類のセルを作製した。
【0114】
【表1】
【0115】
上記表1のセル3は、それ故、図1aに示す該電極(112)の配設に従って形成された負極から成り、表1のセル4は図1bに示す電極(114)の配設によって形成された負極から成る。
【0116】
図2aと図2bは段階的工程が鉛合金グリッド(102)から形成される集電体から始まっているが、夫々図1aと図1bに示している2つのタイプの配設を実現する段階的工程を反復して示している。図1aと図1bに示す上記の特徴は図2aと図2bのその他の特徴に夫々対応する。
【0117】
これらハイブリッド或いは複合電極を次いで、熟成,乾燥する。該乾燥された複合負極及び複合正極をセパレータと共に、セル容器内に組み込み、且つ該容器に硫酸溶液を満たした。所望の電流を所望の時間付与して鉛酸化物、塩基性硫酸鉛及び硫酸鉛を正極では二酸化鉛に、負極ではスポンジ鉛に変換させた。
【0118】
使用した該電導性マットは米国のホリングワース アンド ボース(Hollingworth and Vose)社によって供給された市販品である下記の特有を有する炭素繊維シート(不織)であった。
基本重量: 10g/m2
厚さ: 0.063mm
MD引張強度: 0.91kN/m
CD引張強度: 0.52kN/m
表面抵抗: 6.5DCΩ/m2
【0119】
使用された該炭素繊維は好ましくは肉薄で、該繊維に沿って良好な電子伝導性を確保する部分的に整然とした構造を具備することと、該繊維同士間を良好な接触を確保するほぼ固定した空間固定を具備する2つの具体的な利点を有する。その他の炭素材料と同様に、該シートは電気活性キャパシタに使用するに要求される理想的な特性である低い内部抵抗を有する。該シートはサイクル中に部分的に逸脱されていたことが従来確認されている高率電気活物質の構造を維持するのに役立ち、高率電気活物質を炭素繊維上に堆積したり、或いは該炭素繊維内に組み込む時に、その逸脱を低減し、或いは防止することができる。
【0120】
2. セル1-4の電極構成の性能結果
図3はセル1-4(表1)の性能をテストするために用いられた実験装置を示す。1枚の負極(302)はポリマー/ガラス・マットセパレータ(304)で覆われ、2枚の正極(306)間に挟置された。これら2枚の正極は純粋な鉛タブ(308)により接続された。次に、これらの電極をセパレータと共にプラスチック製の袋(図示せず)内に入れ、その全体の組立体をセル容器(310)内に入れた。次に、比重1.30の硫酸溶液(312)を該プラスチック製の袋に注入した。試験中の正極と負極の電位を測定するための銀/硫酸銀対照電極(313)を該プラスチック製の袋に挿入した。これらの電極を30分間浸漬した後、該セルに充分に充電し、1時間容量を決定した。容量決定後、該セルにつき異なったセル圧縮条件下でサイクリング試験を行った。必要な圧縮力はボルト(314)を時計方向に回して、負荷セル(316)とピストン(318)をセル群に押し付けて所望の圧縮値を提供することにより遂行された。該セル1-4(表1)のサイクリング性能は広範囲の圧縮力、例えば、10-90kPaの圧縮力下で評価した。
【0121】
図4は実験装置において、上記したように、図3に従った試験機器と装置で用いた充電及び放電手順を含む試験処理を示す。このテストの該プロフィールを図4に示す。該試験テストの手順は以下の通り。
(i) CAの電流から50%SoC(C=セルの1-h容量)での放電;
(ii) セルを開路状態で1時間放置(休止時間);
(iii) 2.45Vの定電圧下4C Aの最大電流で30-33秒間セルを充電(注:充電時間の変化は、この充電段階中の充電入力と放電段階中の充電出力の等量を維持するためv);
(iv) セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 4C Aの電流で30秒間セルを放電;
(vi) セルを開路状態で10秒間放置;
(vii) 該セル電圧が放電段階中に1.83Vのカット・オフ値に達するまで段階(iii)から段階(vi)までを反復。
【0122】
図5は4つの異なった電極構成によるセル1-4(表1)につき異なった圧縮力下でのサイクリング性能を示すグラフである。所望のタイプのセルについては、一般に、圧縮力の増大に伴いサイクル数の増大は、増大率の異なる3つの領域、つまり、領域I、領域II及び領域IIIを示す。圧縮力の増大に伴うサイクル数の変化を図6に概略的に説明している。圧縮力に伴うサイクル数の増大は該圧縮力がまだ低い場合、領域Iにおいてゆっくりしている。該圧縮力がある定の値に達するときサイクル数が増大し始める(領域II)。最後に、該圧縮力がある定の値を超えると、サイクル数の増大がゆっくりとなり、殆ど変化しないようになる。
【0123】
領域Iにおいて、セル1-4の全てについて同様に、圧縮力の増大に伴ってサイクル数はゆっくり増大する。図5を参照するに、セル1(高率電気活物質或いは電導性マットなしの化成負極)を曲線1により示し、セル2(高率電気活物質を被覆されているが何等炭素繊維シートを欠く化成負極)を曲線2で示し、セル3(高率電気活性キャパシタ材料で被覆して、次いで、炭素繊維シートで被覆されている化成負極)を曲線3で示し、また、セル4(炭素繊維で被覆され、次いで、キャパシタ材料で被覆された化成負極)を曲線4で示している。“化成負極”の語は、このテストにおいて、その高エネルギー電気活物質とは二酸化鉛を基にした材料に変換し得る鉛を基とした材料である高エネルギー電気活物質で被覆された集電体を意味する。各セル間のサイクル数の増大は以下の順序:セル1<セル2<セル3≦セル4で示される。
【0124】
領域IIにおいて、各セルにおける圧縮力の増大に伴うサイクル数の増大は領域Iにおけるそれに比し速くなる。セル間のサイクル数の増大は以下の順序:セル1<セル2<セル3≦セル4で示される。
【0125】
領域IIIにおいて、これらのセルのサイクル数の最終レベルは以下の順序:セル1<セル2、セル3、セル4で示される。
【0126】
結論として、セル3とセル4ではセル1及びセル2よりサイクル数の増大が速く、これら両方のセルは、圧縮力が60kPaより大きいときに最大高さのサイクル数に達する。一方、セル1及びセル2は、圧縮力が夫々80kPa及び70kPaより大きいときに、夫々が対応する最大サイクル数に達する。これは、炭素繊維不織シートの添加が、セル3及びセル4は低い圧縮力、例えば60kPaでさえ、セル1及びセル2より速く最大サイクル数に達する助けとなることを示している。
【0127】
3.電導性マットの機能
次の処置は、炭素繊維不織シートの変換が以下の事項を促進するかどうかを知る実験(図7-10)に係る。その事項とは、(i)該高率電気活性キャパシタ材料を一体に保持し、それ故、該キャパシタ層の伝導性と機械的な強度を増大させること、(ii)該キャパシタ層に増大したエネルギーと動力を提供すること及び(iii)該キャパシタ層の伝導性と機械的な強度を増大させると共に該キャパシタ層に増大したエネルギーと電力を提供すること。
【0128】
該炭素繊維不織布は、正極鉛電極用に使用された鉛合金グリッドの形状と同様の高さ(75mm)及び幅(75mm)を有する形状に切断されるが、厚みは異なっている(例えば、正極鉛合金グリッドの厚み1.7mmに対し、炭素繊維不織シートの厚みは0.5mmである。)該炭素繊維不織シートはガラス・マットセパレータで被覆され、2枚の正極鉛酸(高エネルギー)電極間に挟持された。該2枚の正極は純粋な鉛タブで接続された。これら電極はセパレータと共にプラスチック製袋に入れ、その全体の組立体はセル容器内に収納された。次いで、比重1.30の硫酸溶液を該プラスチック製袋に注入した。電極を30分間浸漬した後、該セルを以下の処理を施した。
(i) 該セルを定電圧(2.45V)、0.02Aの最大電流で20秒間充電させる;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セル電圧が1Vのカット・オフ値に達するまで、0.02Aの電流で該セルを放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 2.45Vの定電圧、0.02Aの最大電流で20秒間該セルを再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(vii) 段階(iii)から段階(vi)までを10回反復
【0129】
図7は1サイクルにおける20mAでの充電及び放電中のセル電圧、正極電位及び負極電位の変化を示す。図8は10サイクルを1セットとしたセル電圧及び負極電位の変化を示す。該セル電圧と負極電位は1.0秒以内に1Vと-0.1Vに急速に低下していることが明らかである。その結果、該炭素繊維不織シートの放電容量は非常に小さく、即ち、約0.005-0.013mAの範囲である。該炭素繊維不織シートの重量は0.38gであり、それ故、その比容量は1グラム当たり0.013-0.034mAhの範囲である。
【0130】
図9は1サイクルにおける50mAでの放電及び充電中のセル電圧、正極電位及び負極電位の変化を示す(注:爾後の充電段階中の荷電入力量は以前の放電段階のそれより20%大きい)。図10は4サイクルを1セットとしたセル電圧及び負極電位の経時変化を示す。裸炭素繊維不織シートとは異なり、キャパシタ材料で被覆された炭素繊維不織シートは放電時間が著しく長くなり、それ故、容量が著しく高くなる。即ち、20-25mAh対0.005-0.01mAhである。キャパシタ材料で被覆された炭素繊維シートの重量は1.92gであるので、そのキャパシタ材料で被覆された炭素繊維シートの比容量は、該裸シートのそれとを比較すると、後者は1グラム当たり0.013-0.034mAhの範囲であるに対し、前者は1グラム当たり10.417-13.021mAhの範囲である。このことは、該炭素繊維不織シートは、エネルギーや動力を増大するためではなく、該キャパシタ層の機械的強度と伝導性の両方を増大するために付加されることを示している。
【0131】
以下の実験は、ペースト中に、高率電気活性キャパシタ材料が該炭素繊維不織シートの孔を通過し鉛蓄電池の負極板の隣接表面に接触するかどうかを知るためになされた。該高率電気活性キャパシタ材料は、カーボンブラックと活性炭とバインダーと水を混合してペースト状に調製された。該キャパシタペーストは、次いで、炭素繊維不織シートの中間域に塗布して、その塗布されたシートは、白い紙の上に置いた。該炭素繊維不織シートの多孔性に依存して、キャパシタ材料はその隣接する表面に通過移動したり移動しないことが見られた。このことは、炭素繊維不織シートの使用は高率電気活性キャパシタ材料又はそのペーストを炭素繊維シートを通し対向する面に滲み出したり移動するのを防止する有孔性を持つように具体化することができることを示す。
【0132】
4. 高率電気活物質の性能
次の段階は高率電気活性(キャパシタ)材料の最適組成物を知るための実験に係る。表2に示すように、4種類のタイプのキャパシタ組成物が調製され、ホーリングワース アンド ボース カンパニーから入手した同じ特性を有する4枚の炭素繊維不織シート上に塗布された。該炭素繊維シートは該正極鉛酸電極と同じように高さ75mm及び幅75mmの形状に切断された。
【0133】
【表2】
【0134】
表2に示す試験セルタイプ1-4に用いられた装置の構成は図11に示される。キャパシタ電極は炭素繊維不織シート(324)とキャパシタ材料(326)とから成り、該炭素繊維不織シートはこの実施形態例では集電体として作用せしめた。該キャパシタ電極はガラス・マットセパレータ(322)で被覆され、且つ2枚の鉛酸(高エネルギー)正極(320)間に挟持せしめた。電気的接触のため、該炭素繊維不織シートのタブは2枚の金属鉛シート(334)で留めた。次に、得られた極板群は、プラスチック容器内に水平に設置した。15Kgの鉛塊(332)を該極板群上に設置されプラスチックシート上に載荷し、図11に示されているように、10kPaの圧縮力を付与した。比重1.30の硫酸溶液(328)がセル容器内に上位の正極より僅かに高いレベルまで注入され、また、銀/硫酸銀対照電極(330)を挿入した。それらの電極を30分間浸漬した後、該セルを以下の試験処理を施した。
(i) 該セルを定電圧(2.45V)、0.02Aの最大電流で1時間充電;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セルが1Vのカット・オフ値に達するまで、該セルを0.05Aの電流で放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 20%の過充電状態に到達するまで、該セルを定電圧2.45V、0.05Aの最大電流再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(Vii) 該段階(iii)から該段階(vi)までを10回反復。
【0135】
10回目のサイクルでの容量が表2に示されている。この表は容量は活性炭は、増大と共に増大し、また、カーボンブラックの減少、或いは除去でさえ、増大することを示している。このことは、該炭素繊維不織シートが充分な導電性を有するので、高率電気活物質はカーボンブラックの添加を必要としていないことを示している。
【0136】
5.電導性マットの性能:
最適の炭素繊維不織シートを見出すための実験も行った。上記装置(図11参照)及び試験処理がこの実験に用いられた。同じ高率電気活性(キャパシタ)組成物、即ち、カーボンブラック10重量%、活性炭素70%、カルボキシメチルセルロース4重量%、ネオプレン11重量%及びプラスチック繊維5重量%から成るものが用いられ、異なったタイプの炭素繊維不織シート、即ち、8000018、8000030(1-インチ)、8000030(0.5-インチ)、8000040及び8000154、上に塗布された。これらの炭素繊維不織シートは異なった特性と厚みを有する。その結果、8000030(1-インチ)、8000030(0.5-インチ)及び8000040の夫々の炭素繊維不織シートが同様の性能を有することを示した。
【0137】
次の実験は、より高い放電電流下で上記の3枚の炭素繊維シートを評価するべくなされた(図12)。該実験装置は、該セルがより高い高率で放電及び充電をすることができるように変更した。該炭素繊維不織シートと純粋な鉛金属シート(厚み=約1mm)は鉛酸正極のそれと同じである75mmの高さ及び75mmの幅を有する形状に切断された。該3枚の炭素繊維シートは、活性炭重量85%、カルボキシメチルセルロース4重量%及びネオプレン11重量%から成る同じ高率キャパシタ材料(表3)で被覆された。各被覆された炭素繊維シートは炭素繊維不織シート(334)とキャパシタ材料(336)から成り、鉛金属シート(338)、ガラス・マットセパレータ(340)及び正極鉛酸電極(342)と共に、図12に示すプラスチック容器内に組み立てられた。図11の配列構造と異なり、該鉛金属シートは集電体として作用し、電流を該キャパシタ層から及びへの流れを可能とする。比重1.30の硫酸溶液を上位の正極より僅かに高いレベルまで該セル容器内に注入した。これら電極は30分間浸漬した後、該セルを以下の処理を施された。
(i) 該セルを定電圧(2.45V)、0.02Aの最大電流で1時間充電;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セル電圧が1Vのカット・オフ値に達するまで0.15Aの電流で放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v)過充電20%が達成されるまで、2.45Vの定電圧、0.15Aの最大電流で該セルを1時間再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(Vii) 段階ステップ(iii)から段階(vi)までを10回反復。
【0138】
その結果は、図12に示す該キャパシタ電極の変形例は、これらのセルは図11に配設した構成に比しより高い高率で充放電することができることを立証した。これらのセルは容量に大きな差異はない。即ち、1グラム当たり175-180mAhの範囲である(表3)。このことは、該炭素繊維不織シート、即ち、8000030(1-インチ)、8000030(0.5-インチ)及び8000040はキャパシタ材料用導電性及び機械的支持部材として使用し得られることを証明する。
【0139】
【表3】
【0140】
6.酸化鉛添加の高率電気活物質の性能:
高率電気活物質への二酸化鉛の添加効果を調べる実験も行った。この実験は、キャパシタ材料はより増大したエネルギーを提供できるかどうか、即ち、高エネルギー電気活物質とエネルギーを共有し得るかどうかを決定することに在る。この実験に、図12に従った装置を用いた。高率電気活性(キャパシタ)組成物は酸化鉛、カーボンブラック及び活性炭の相互間を多少変更した。これらを鉛シート、或いは炭素繊維不織シート(8000030或いは8000040)上に直接被覆した。該組成物とセル構成を表4に示す。実験は、より高い放電電流下で、異なった組成物及び異なった構成を評価するために行った。
【0141】
【表4】
【0142】
これらの炭素繊維不織シートとこれらの純粋な金属鉛シート(厚さ=約1mm)は、鉛酸正極の形状と同様に、高さ75mm及び幅75mmの形状に裁断された。これら4つのタイプのセルは二酸化鉛、カーボンブラック及び上記に列挙した(表4)活性炭組成物と、カルボキシメチルセルロース5重量%及びネオプレン10重量%とで被覆された。セル1とセル2は鉛シート(338)に直接被覆された高率炭素キャパシタ材料を含み、次いで、ガラス・マットセパレータ(340)で包まれて、更に、図12に示すようにプラスチック容器内に正極鉛酸電極(342)と共に組み立てられた。セル1及び2の配列構成とは異なり、セル3とセル4は夫々8000040及び8000030(1インチ)の炭素繊維不織シート(334)上に被覆された高率炭素キャパシタ材料を夫々有する。これらは次いで、鉛シート(338)の上面に設置され、ガラス・マットセパレータ(340)で包み、更に、図12に示すように、プラスチック容器内に正極鉛酸電極(342)と共に組み立てられた。
【0143】
比重1.30の硫酸溶液を該セル容器内に、上位の正極より僅かに高いレベルまで注入した。それらの電極を30分間浸漬した後、セルに以下の試験処理を行った。
(i) 定電池(2.45V)、0.02Aの最大電流で、該セルを1時間充電;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セル電圧が1Vのカット・オフ値に達するまで、該セルを0.5Aの電流で放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 10%の過充電に達するまで、2.45Vの定電圧、0.5Aの最大電流で再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(vii) 段階(iii)から段階(vi)までを50回反復;
(viii) 段階(iii)の1.75Vのカット・オフ電圧で段階(ii)から段階(vii)までを反復。
【0144】
その結果は、キャパシタ電極内への酸化鉛の添加で、これらのセルは酸化鉛を添加されてないセルと比較し、より高い高率で放電し得られることを示す。しかしながら、表4に示されている1.0Vまで放電されたセルの容量は高率活性炭成分を高い含有キャパシタの容量に比較し著しく低い(表3参照)。1.75Vまでの放電で記録された容量は該キャパシタ内に存在する酸化鉛に起因する。
【0145】
上記のこれらのセルについて、次いで、より高い電流を受け入れる能力を試験する別の実験を行った。これらのセルにつき、以下の処理を行った。
(i) 定電圧(2.65V)、0.02Aの最大電流で該セルを1.5時間充電;
(ii) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(iii) 該セルを0.5Aの電流で20秒間放電;
(iv) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(v) 時間を調節することにより、100%の充電に達するまで、2.45Vの定電圧、0.5Aの70%の最大電圧で該セルを再充電;
(vi) 該セルを開路状態で10秒間放置;
(ix) セル電圧が1.75Vのカット・オフ値に達するまで、段階(iii)から段階(vi)までを反復。
(x) 放電電流を1Aにまで増大する段階(ii)から段階(vii)を反復。段階(v)での充電電流を1Aに増大。充電量が放電量と同じかそれ以上になるように、充電中(即ち、段階(v))に時間を調整することにより、放電に等しいか或いは放電より大きいように該セルに流入する充電の均衡。該放電電流が該セルをカット・オフ電圧に到達せしめるならば、そのときは、それは最大放電電流である。
(xi) 放電電流と充電電流を2Aまで増大する段階(ii)から段階(vii)までの反復。充電量が放電量と同じかそれより大きくなるように、充電中(段階(v))時間を調節することにより、該セルに流入される電荷の均衡。放電電流が2Aを超えて増大するならば、そのときは、充電電流を2Aに保ち、充電を放電とマッチし得るように時間を変更する。
【0146】
セル1についての実験結果は図13に、セル2についての実験結果は図14に、セル3についての実験結果は図15に、セル4についての実験結果は図16に夫々示す。セル1の結果は、放電電流を0.5Aまで維持することができることを示している。セル2、3及び4の結果は、放電電流は5A(89mAcm-2)まで増大し得られ、容量は4mAh/g-1まで増大し得られることを示している。
【0147】
7.弁制御セルの性能:
高率キャパシタ材料を含む炭素繊維不織シートの形状の電導性マットを含んでいる弁制御鉛酸(VRLA)2Vセルの性能を調べる実験も行った。図17に示されている装置を該実験に用いた。
【0148】
活性炭86重量%、カルボキシメチルセルロース4重量%及びネオプレン10重量%から成る高率電気活性(キャパシタ)組成物(350)を8000040炭素繊維不織シート(352)の8枚の部材に被覆した。これらのシートは75mmの高さと75mm幅をもつ形状に裁断され、その形状は鉛酸正極(354)及び鉛酸負極(356)と似ている。該セルは4枚の正極と5枚の負極を有する。次いで、これらの炭素繊維不織シートは、負極上に設置し、該炭素繊維不織シートを該負極と対面せしめた。これらの炭素不織布シートは、これらの負極がこれらの正極に対面しているならば、該負極に隣接させて挿入される。これらの正極は正極集電体(358)上にスポット溶接された。これらの負極は負極集電体(360)上にスポット溶接された。ガラス・マットセパレータ(362)はカーボンキャパシタ/炭素繊維不織シートと該正極の間に挿入された。交互に配置されたこれらの負極、カーボンキャパシタ/炭素繊維不織シート、これらの正極及びガラス・マットセパレータはアクリル製容器(364)内に収容され、且つ70kPaに圧縮された。該容器は圧力弁(368)を固設されたアクリル製の蓋(366)で密封された。正極での電位を記録するために、銀/硫酸銀参照電極(370)が該ガラス・マットセパレータ内に挿入された。
【0149】
比重1.30の硫酸溶液が該セル容器内にガラス・マットセパレータの頂面より僅か高いレベルまで注入された。該セルを8時間浸漬した後、該セルは2.55Vの最大電圧、6Aで24時間充電された。充電後、酸の比重を1.30に調整して、過剰な酸はセルから取り除いた。充電後、酸の比重を1.30に調節され、且つ過剰な酸を該セルから除去した。該セルにつき、以下の実験処理を行った。
1) 1時間容量(C1)の決定
2) マイルド・ハイブリッド運転条件下での操作をシミュレーションするべく42Vプロフィールを使用するセルのサイクリング性能の決定
【0150】
該セルの1時間容量を、以下の処理を用いて決定し、更に、42Vプロフィール・サイクリング試験中に達成された10000サイクル毎に決定した:
(i) 定電圧(2.45V)、2.5Aの最大電流で該セルを1時間充電;
(ii) セル電圧が1.67Vのカット・オフ値に達するまで、9.95Aの電流で該セルを放電;
(iv) 115%の充電又は30時間に達するまで、2.45Vの定電圧と9.95Aの最大電流で該セルを再充電;
(v) 段階(ii)を18回反復;。
(vi) 1時間容量を決定するべくピュカート方程式(Peukert’ Equation)を使用。
【0151】
該セルの初期容量は9.22Ahと決定された。それ故、C1率は9.22Aであった。この値を42Vサイクリング試験に用いた。
【0152】
次の実験は、図18に示す構成で、42Vサイクリングプロフィール下でのセルの性能を調べた。このプロフィールは、C1=9.4Aで、以下の段階を含んだ。
(i) 内部抵抗(iR)測定
100ミリ秒間、12Aの電流パルス
(ii) アイドリング・ストップ操作
1.4C1で60秒間放電。セル電圧が1.2Vのカット・オフ電圧(CoV)に達するなら、その時に、サイクリングを終了。
(iii) クランキング操作
12C1で0.5秒間放電。CoV<1.2になったら、サイクリングを終了。
(iv) パワーアシスト操作
6C1で0.5秒間放電。CoV<1.2Vとなったら、サイクリングを終了。
(v) エンジン充電操作
1.4C1で70秒間充電。或いは、ToCV(最高の充電電圧) 2.45V
0電流5秒間。
3.2C1で5秒間充電、或いはToCV=2.45V
(vi) 10,000サイクルに達するまで段階(i)を反復。
(vii) 残留容量テスト
C1で放電。CoV<1.67V
(viii) 24時間フル充電及び1時間容量試験
0.5C1で24時間充電、ToCV=2.45Vで
CoV<1.67Vとなるまで、CIで放電。
(ix) 24時間満充電-プロフィール終了
0.5C1で24時間充電、或いは、充電/放電容量=115%
(x) CoV<1.2Vとなるまで、次の10,000サイクル試験を開始。
【0153】
42Vサイクリングの結果を図19に示す。該容量は42Vサイクリング試験中に完了した10000サイクル毎に決定した。該グラフは、該セルが1.2Vのカット・オフ電圧に未だ到達してなかったこと、即ち、該セルは27389サイクル後に停電してなかったことを示している。該セルの容量は10000サイクル毎に測定した。最初の7389サイクル中は僅かに増大し、(該セルはこの時点で、停電によりこの時点でサイクリングを停止していた)それから、該セルがサイクリング処理が長時間に伴い徐々に減少した。
【0154】
8. 複合層の製造及び電極の実施例:
キャパシタ複合層、即ち、炭素繊維不織シートの形状である電導性マット上に被覆された高率(キャパシタ)電気活物質を含む複合層に係る2つの製造法の実施例を図20及び図21に示す。
【0155】
図20はキャパシタ複合層又はシートを製造する方法を示す。その製品は、貯蔵し得られ、その後、蓄電池組立中に負極板及び正極鉛酸板と、更にセパレータと共に使用し得る。1枚の負極鉛酸板は該負極鉛酸板の両側面に設置された2枚のキャパシタ複合シートと組み立てることができる(図21)。
【0156】
図20において、長手帯状の炭素繊維不織シート(350)を搬送ベルト(352)でペースト塗布装置、即ちホッパー(354)に搬送する。そこで、高率電気活物質を含むキャパシタペースト(356)を該長手シート上に塗布される。次いで、取り扱いを容易にするように、長手帯状の紙(358)を該キャパシタ複合帯状層の表面上に設置し、次いで、その複合層を回転カッター(360)で一定の長さを有する板状に切断する。これらの該キャパシタ複合板を次いで、気流乾燥器(362)を通して搬送し、茲で、該キャパシタ複合板の表面の水分を除去する。これらのキャパシタ複合板を積み重ね、その後、乾燥用オーブンに移送する。
【0157】
図21は高エネルギー電気活物質で被覆された集電体を含む電極層面を被覆する2枚の(高率)キャパシタ複合層の同時利用を示す。負極鉛酸高エネルギー(蓄電池用)ペースト(372)をペースト塗布装置(370)で該集電体上に塗布し電極層を形成する。該集電体は、連続鋳造鉛合金グリッド(366)の形状であり、搬送ベルト(368)により該ペースト塗布機に搬送される。事前に形成された2枚のキャパシタ複合層(376)をローラー対(378)により連続ペースト塗布することによって、該電極層(374)の両側に圧着させ、複合電極構成要素を形成する。該2枚のキャパシタ複合層の塗着は付属のペースト混合機及び塗布装置で同時に行うことができる。そして、この全体の複合電極構成要素(380)は、回転カッター(382)により一定の長さを有する板形状(384)に切断する。これらの複合板(384)は次いで、気流乾燥機(386)を通して移送され、これら複合板の表面水分を除去する。これらの複合板は積み重ねられ(388)、その後、熟成及び乾燥工程の段階に移送する。
【符号の説明】
【0158】
102 集電体
104 高エネルギー電気活物質
106 負極
108 電導性マット、炭素繊維マット
110 高率電気活物質、高率キャパシタ材料
112 電極
114 電極
302 負極
304 ガラス・マットセパレータ
306 正極
310 セル容器
312 硫酸溶液
313 銀/硫酸銀対照電極
320 正極
324 炭素繊維不織シート
326 キャパシタ材料
328 硫酸溶液
330 銀/硫酸銀対照電極
332 鉛塊
334 炭素繊維不織シート
336 キャパシタ材料
338 鉛金属シート
340 ガラス・マットセパレータ
342 正極鉛酸電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、第1電気活物質と、第2電気活物質、電導性マットから成る蓄電装置用の電極において、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有し、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方の構造上及び電導性上の支えとなっていることを特徴とする電極。
【請求項2】
該電導性マットは相互接続された電導性繊維の多孔性網状構造から成ることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
該電導性マットは炭素繊維シートであることを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項4】
該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方から成る1つ以上の被覆層、層、或いは領域で構成されていることを特徴とする請求項1-3のいずれか1つに記載の電極。
【請求項5】
該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の1つ以上の被覆層、層、或いは領域で構成され、随時に1種以上の添加物を添加されていることを特徴とする請求項1-4のいずれか1つに記載の電極。
【請求項6】
該電導性マットは該第2電気活物質から該第1電気活物質を離隔する介在層として設けられていることを特徴とする請求項1-5のいずれか1つに記載の電極。
【請求項7】
該第1電気活物質は鉛を基とした物質であることを特徴とする請求項1-6のいずれか1つに記載の電極。
【請求項8】
該第2電気活物質は高表面積カーボン、酸化ルテニウム、酸化銀、酸化コバルト及び電導ポリマーで構成される群から1種以上を選択されることを特徴とする請求項1-7のいずれか1つに記載の電極。
【請求項9】
高表面積カーボンは活性炭、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ及び炭素繊維で構成される群から1種以上選択されることを特徴とする請求項8に記載の電極。
【請求項10】
該高表面積カーボンは活性炭であることを特徴とする請求項9に記載の電極。
【請求項11】
少なくとも一対の負極と正極から成る蓄電装置において、少なくとも1つの電極は請求項1-10のいずれか1つに記載の電極であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項12】
該少なくとも1つの電極は、カドミウム、金属水素化物、鉛及び亜鉛から成る群から1種以上を選択された第1電気活物質を含む負極であることを特徴とする請求項11に記載の蓄電装置。
【請求項13】
該第1電気活物質は鉛であることを特徴とする請求項12に記載の蓄電装置。
【請求項14】
該少なくとも1つの電極は、酸化ニッケル、酸化鉛及び銀から成る群から1種以上を選択された第1電気活物質を含む正極であることを特徴とする請求項11-13のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項15】
該第1電気活物質は酸化鉛であることを特徴とする請求項14に記載の蓄電装置。
【請求項16】
該装置は弁制御装置であることを特徴とする請求項11-15のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項17】
該蓄電装置が約80kPa未満の圧縮力下で作動するように構成されていることを特徴とする請求項11-16のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項18】
硫酸電解質溶液内に配置された少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と、少なくとも1つの鉛を基にした負極とから成る蓄電装置において、該少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極は、
集電体と、
該集電体上に堆積されたスポンジ鉛から成る第1層と、
該第1層と接触されると共に、相互に接続された電導性炭素繊維の網状体から成る電導性マットで構成された第2層と、
該第2層上に堆積された第2電気活物質から成る第3層とで形成されており、更に
該スポンジ鉛は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該スポンジ鉛より高い高率可能出力を有していることを特徴とする蓄電装置。
【請求項19】
請求項1-10のいずれか1つに記載の電極の組立る方法において、該方法は、
該電導性マット上に及び/又は内に組み込まれて配置された該第1電気活物質と該第2電気活物質の少なくとも1つを含む複合層を形成すること、そして
該複合層を該集電体に結合させること
から成る該電極の組立方法。
【請求項20】
請求項19記載の電極の組立方法において、該方法は、更に、該集電体上に該第1電気活物質の被覆層を形成すること、そして、該複合層を該集電体上の第1電気活物質の被覆層に結合させることを特徴とする組立法。
【請求項1】
集電体と、第1電気活物質と、第2電気活物質、電導性マットから成る蓄電装置用の電極において、該第1電気活物質は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該第1電気活物質より高い高率可能出力を有し、該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方の構造上及び電導性上の支えとなっていることを特徴とする電極。
【請求項2】
該電導性マットは相互接続された電導性繊維の多孔性網状構造から成ることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
該電導性マットは炭素繊維シートであることを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項4】
該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の少なくとも一方から成る1つ以上の被覆層、層、或いは領域で構成されていることを特徴とする請求項1-3のいずれか1つに記載の電極。
【請求項5】
該電導性マットは該第1電気活物質及び該第2電気活物質の1つ以上の被覆層、層、或いは領域で構成され、随時に1種以上の添加物を添加されていることを特徴とする請求項1-4のいずれか1つに記載の電極。
【請求項6】
該電導性マットは該第2電気活物質から該第1電気活物質を離隔する介在層として設けられていることを特徴とする請求項1-5のいずれか1つに記載の電極。
【請求項7】
該第1電気活物質は鉛を基とした物質であることを特徴とする請求項1-6のいずれか1つに記載の電極。
【請求項8】
該第2電気活物質は高表面積カーボン、酸化ルテニウム、酸化銀、酸化コバルト及び電導ポリマーで構成される群から1種以上を選択されることを特徴とする請求項1-7のいずれか1つに記載の電極。
【請求項9】
高表面積カーボンは活性炭、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ及び炭素繊維で構成される群から1種以上選択されることを特徴とする請求項8に記載の電極。
【請求項10】
該高表面積カーボンは活性炭であることを特徴とする請求項9に記載の電極。
【請求項11】
少なくとも一対の負極と正極から成る蓄電装置において、少なくとも1つの電極は請求項1-10のいずれか1つに記載の電極であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項12】
該少なくとも1つの電極は、カドミウム、金属水素化物、鉛及び亜鉛から成る群から1種以上を選択された第1電気活物質を含む負極であることを特徴とする請求項11に記載の蓄電装置。
【請求項13】
該第1電気活物質は鉛であることを特徴とする請求項12に記載の蓄電装置。
【請求項14】
該少なくとも1つの電極は、酸化ニッケル、酸化鉛及び銀から成る群から1種以上を選択された第1電気活物質を含む正極であることを特徴とする請求項11-13のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項15】
該第1電気活物質は酸化鉛であることを特徴とする請求項14に記載の蓄電装置。
【請求項16】
該装置は弁制御装置であることを特徴とする請求項11-15のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項17】
該蓄電装置が約80kPa未満の圧縮力下で作動するように構成されていることを特徴とする請求項11-16のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項18】
硫酸電解質溶液内に配置された少なくとも1つの二酸化鉛を基とした正極と、少なくとも1つの鉛を基にした負極とから成る蓄電装置において、該少なくとも1つのスポンジ鉛を基とした負極は、
集電体と、
該集電体上に堆積されたスポンジ鉛から成る第1層と、
該第1層と接触されると共に、相互に接続された電導性炭素繊維の網状体から成る電導性マットで構成された第2層と、
該第2層上に堆積された第2電気活物質から成る第3層とで形成されており、更に
該スポンジ鉛は該第2電気活物質より高いエネルギー密度を有し、該第2電気活物質は該スポンジ鉛より高い高率可能出力を有していることを特徴とする蓄電装置。
【請求項19】
請求項1-10のいずれか1つに記載の電極の組立る方法において、該方法は、
該電導性マット上に及び/又は内に組み込まれて配置された該第1電気活物質と該第2電気活物質の少なくとも1つを含む複合層を形成すること、そして
該複合層を該集電体に結合させること
から成る該電極の組立方法。
【請求項20】
請求項19記載の電極の組立方法において、該方法は、更に、該集電体上に該第1電気活物質の被覆層を形成すること、そして、該複合層を該集電体上の第1電気活物質の被覆層に結合させることを特徴とする組立法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2013−502698(P2013−502698A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525822(P2012−525822)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001113
【国際公開番号】WO2011/029130
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001113
【国際公開番号】WO2011/029130
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】
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