説明

蓋体のロック構造

【課題】 蓋体のロック構造において、使い勝手を向上させる。
【解決手段】 アッパーケース3の開口部4を閉塞する蓋体5の被係合片15がアッパーケース3の係合突起8に係合することにより、蓋体5の矢印B方向への移動が規制される。蓋体5の係合片17がロアーケース2の係合片25の爪部26に係合することにより、蓋体5の上方への移動が規制される。蓋体5を傾斜させた状態で、被係合片15を係合突起8に係合させると、爪部25の傾斜面27と係合片17の傾斜面18とが当接する。蓋体5を下方に押圧すると、互いの傾斜面17,18のカム作用により、係合片25が弾性変形し、係合片17が係合片25の爪部26に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾電池等が収容される乾電池収容部の開口部を蓋体で閉塞する際に、蓋体をロック状態に保持する蓋体のロック構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の蓋体のロック構造としては特許文献1に開示されたものがある。これを図6を用いて説明する。同図において、筺体101には、乾電池やアクセサリー等が収容される収容部102が設けられており、この収容部102の開口部103は蓋体105によって閉塞される。蓋体105は、弾性係合片107の掛け止め部107aを筺体101の凸部106に係合させることにより矢印A−B方向への移動が規制され、係止片109を筺体101の凹部108に係入されることにより矢印A−B方向と直交する方向への移動が規制された状態で開口部103を閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−198158号公報(段落〔0002〕、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来のロック構造においては、蓋体105を矢印A方向へスライドさせることにより開口部103に取り付けるようにしているが、矢印A方向とわずかでも傾けた状態では、係止片109が凹部108内に係入しないため、蓋体105を開口部103に取り付けることができないというように使い勝手が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、使い勝手を向上させた蓋体のロック構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、開口部ならびに第1および第2の係合部が設けられた筺体と、一方向へ移動させることにより前記第1および第2の係合部に係合する第1および第2の被係合部を有し前記開口部を閉塞する蓋体とを備え、前記第1の被係合部が前記第1の係合部に係合することにより蓋体の前記一方向と反対方向への移動が規制され、前記第2の被係合部が前記第2の係合部に係合することにより蓋体の前記一方向と直交する方向への移動が規制される蓋体のロック構造であって、前記第2の係合部を弾性変形可能に形成するとともに、この第2の係合部と前記第2の被係合部とに、蓋体を前記一方向に対して傾斜させた状態で前記第1の係合部に前記第1の被係合部を係合させることにより、互いに当接する傾斜面を設け、これら傾斜面のカム作用により弾性変形する前記第2の係合部に前記第2の被係合部が係合するものである。
【0007】
本発明は、前記発明において、前記第2の係合部の弾性変形量を許容範囲内で規制するストッパを備えたものである。
【0008】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記蓋体の幅方向の両端に係入片を設け、前記筺体に、前記第1および第2の係合部に第1および第2の被係合部が係合することにより前記係入片が係入する係入穴を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓋体の移動方向の角度を変えても、蓋体を筺体の開口部に取り付けることができるため使い勝手が向上する。
【0010】
前記発明のうちの一つの発明によれば、第2の係合部が変形や破断するようなことがない。
【0011】
前記発明のうちの一つの発明によれば、蓋体は幅方向の位置決めがなされた上で、幅方向の移動が規制された状態で筺体にロックされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る蓋体のロック構造を採用した筺体の平面図である。
【図2】同図(A)は本発明に係る蓋体のロック構造を採用した筺体において、蓋体を取り外した状態を示す斜視図、同図(B)は蓋体を裏面側から視た斜視図である。
【図3】図1におけるIII-III 線断面図である。
【図4】図1におけるIV-IV 線断面図で、同図(A)は蓋体を取り付ける直前の状態を示し、同図(B)は蓋体を取り付けた状態を示す。
【図5】図1におけるIV-IV 線断面図で、蓋体を水平方向から角度αだけ傾けて取り付ける状態示す。
【図6】従来の蓋体のロック構造を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
【0014】
図2に示すように、全体を符号1で示す電子機器の筺体は、上方が開口されたロアーケース2と、このロアーケース2よりも矢印A−B方向の寸法が短く形成され下方および矢印B方向が開口されたアッパーケース3とを備え、両ケース2,3の互いの開口端を突き合わせるようにして、両ケース2,3が後述する保護カバー20を介して結合されることにより形成されている。このように形成された筺体1は、ロアーケース2とアッパーケース3との間に開口部4が形成され、この開口部4は蓋体5によって閉塞される。すなわち、ロアーケース2とアッパーケース3および蓋体5とによって、筺体1は密閉状態となる。
【0015】
アッパーケース3の上板6の裏面であって、開口部4側の中央部には、図4に示すように後述する被弾性係合片15が係合する係合突起8が突設されている。
【0016】
蓋体5は、図2(A)に示すように上板11と、両側板12,13と、前板14とによって、下方および矢印A方向が開口された箱状に形成されており、上板11の矢印A方向側の端部の中央には、先端部に係合突起8に係合される爪部16が形成された第1の被係合部としての弾性変形可能な被係合片15が矢印A方向に向かって突設されている。
【0017】
また、蓋体5の側板12と前板14とのそれぞれの下端および側板13と前板14とのそれぞれの下端には、同図(B)に示すように互いに跨るように形成された矩形状の第2の被係合部としての被係合片17,17が設けられている。この被係合片17の先端には、図4に示すように後述する係合片25の傾斜面27に当接する傾斜面18が形成されている。さらに、蓋体5の両側板12,13の矢印A方向の端部には、後述する係入穴30,30に係入される係入片19,19が、互いに対向するように矢印A方向に突設されている。
【0018】
図2(A)において、20はボルトによってロアーケース2の底部に固定された保護カバーであって、ロアーケース2に取り付けられたプリント基板に実装される電子部品等(いずれも図示せず)を覆うものである。この保護カバー20とロアーケース2との間には、乾電池が収容される乾電池収容部22が形成されている。
【0019】
ロアーケース2の底部の矢印B方向側の両端部には、第2の係合部としての弾性変形可能な係合片25,25が立設されており、この係合片25の上端部には、上部に傾斜面27を有する上記した被係合片17と係合する爪部26が設けられている。29,29は保護カバー20に一体に立設されたストッパであって、図4に示すように、弾性係合片25,25と矢印A方向側にわずかの間隔を隔てて設けられている。
【0020】
アッパーケース3の両側部7,7の矢印B方向の端部と、保護カバー20の両側部21,21との間には、図3に示すように上記した係入片19,19が嵌入される係入穴30,30が形成されている。
【0021】
次に、図2、図4、図5を用いて、このように構成された蓋体のロック構造において、蓋体5によって開口部4を閉塞する動作について説明する。図2において、ロアーケース2の開口部4に対応した上端面に蓋体5の下端面を突き合わせるようにして、図4に示すように蓋体5を矢印A方向に向かって水平方向にスライドさせる。蓋体5の被係合片15の爪部16が係合突起8に当接すると、同図(B)に示すように被係合片15が弾性変形して爪部16が係合突起8に係合し、蓋体5は矢印A方向と反対のB方向への移動が規制される。
【0022】
同時に、蓋体5の被係合片17が係合片25の爪部26に係合するので、蓋体5は矢印A−B方向と直交する方向、すなわち上方への移動が規制され、蓋体5によって開口部4が閉塞される。このとき、蓋体5の係入片19が係入穴30に係入されることにより、蓋体5は幅方向の位置決めがなされた上で、幅方向の移動が規制された状態で筺体1にロックされる。
【0023】
ここで、図5に示すように、蓋体5が矢印A方向に向かって水平方向ではなく、矢印A方向から角度αだけ傾斜した状態でスライドされた場合は、被係合片15が弾性変形しながら爪部16が係合突起8に係合したとき、被係合片17の傾斜面18が係合片25の傾斜面27に当接する。したがって、次に、爪部16が係合突起8に係合した状態で蓋体5を図中下方に押圧することにより、互いの傾斜面18,27のカム作用により係合片25が矢印A方向に弾性変形するため、図4(B)に示すように、被係合片17が係合片25の爪部26に係合し、蓋体5によって開口部4が閉塞される。
【0024】
係合片25が矢印A方向に弾性変形するとき、係合片25の弾性変形量が許容量を超えないように弾性係合片25を支承するストッパ29が設けられていることにより、弾性係合片25の変形や破断を防止することができる。
【0025】
このように、蓋体5を矢印A方向に向かって移動させるだけではなく、矢印A方向に対して傾斜させた状態で移動させても開口部4を閉塞することができる。このため、ロアーケース2を家屋の壁等に対接させた状態で筺体1が取り付けられていて、スペース的に蓋体5を矢印A方向に向かって移動させずらい場合でも、開口部4を蓋体5によって容易に閉塞することができるため使い勝手が向上する。
【符号の説明】
【0026】
1…筺体、4…開口部、5…蓋体、8…係合突起(第1の係合部)、15…被係合片(第1の被係合部)、17…被係合片(第2の被係合部)、18…傾斜面、19…係入片、25…係合片(第2の係合部)、26…爪部、27…傾斜面、29…ストッパ、30…係入穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部ならびに第1および第2の係合部が設けられた筺体と、
一方向へ移動させることにより前記第1および第2の係合部に係合する第1および第2の被係合部を有し前記開口部を閉塞する蓋体とを備え、
前記第1の被係合部が前記第1の係合部に係合することにより蓋体の前記一方向と反対方向への移動が規制され、前記第2の被係合部が前記第2の係合部に係合することにより蓋体の前記一方向と直交する方向への移動が規制される蓋体のロック構造であって、
前記第2の係合部を弾性変形可能に形成するとともに、この第2の係合部と前記第2の被係合部とに、蓋体を前記一方向に対して傾斜させた状態で前記第1の係合部に前記第1の被係合部を係合させることにより、互いに当接する傾斜面を設け、これら傾斜面のカム作用により弾性変形する前記第2の係合部に前記第2の被係合部が係合することを特徴とする蓋体のロック構造。
【請求項2】
前記第2の係合部の弾性変形量を許容範囲内で規制するストッパを備えたことを特徴とする請求項1記載の蓋体のロック構造。
【請求項3】
前記蓋体の幅方向の両端に係入片を設け、前記筺体に、前記第1および第2の係合部に第1および第2の被係合部が係合することにより前記係入片が係入する係入穴を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の蓋体のロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−59990(P2012−59990A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202951(P2010−202951)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】