説明

薄切片標本の保存方法

【課題】粘着性プラスチックフィルムを薄切片の支持材として用いて、凍結包埋試料から作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色を行った後、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で、光学顕微鏡で観察できる永久標本として封入保存する。
【解決手段】低温下(例えば、−25℃)でも強い粘着力を有する粘着性プラスチックフィルム用いて、形状が保たれた薄切片を作製する。次いで、薄切片を粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色を行なった後、光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させた後、同じ樹脂を塗布したガラス板に薄切片を密着し、次いで光照射あるいは加熱により水溶性樹脂を重合硬化し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板の間に永久標本として封入保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生命科学の分野に属し、凍結包埋試料から薄切片を作製する際に、粘着性プラスチックフィルムを薄切片の支持材として用いて作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色を行い、次いで粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で薄切片を永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生命科学の研究では、できるだけ新鮮な試料から形状の保たれた薄切片を作製し、その薄切片を染色し、それを永久標本として保存することが必要とされている。通常、新鮮試料からの薄切片は、凍結包埋試料から薄切片支持材を用いないで作製されるが、薄切片の作製中における薄切片の損壊を防ぐために粘着テープを薄切片支持材として用いて作製される場合がある。
【0003】
しかしながら、粘着テープに粘着支持された薄切片を従来の方法で封入保存する場合、有機溶媒(キシレン、アルコール等)を使用しなければならず、その有機溶媒によって薄切片の収縮、粘着テープの軟化、粘着力の低下、あるいは粘着テープの膨化が起こり、その結果、薄切片が変形あるいは損壊して薄切片を良好な状態で封入保存することができなかった。それを解決するために本願発明者は、非常に藩い粘着性プラスチックフィルムを用いて薄切片を作製し、染色後、その薄切片を水溶性封入剤(グリセリン等)を用いて粘着性プラスチックフィルムとガラス板の間に封入する方法(特開2002−31586号公報)を報告している。その方法により、薄切片を損壊のない状態で保存することができるようになったが、グリセリン等の水溶性封入剤で薄切片を封入保存するために、保存中に染色剤が染色された組織から水溶性封入剤中に溶出、あるいは拡散が起こり、薄切片の保存中に組織が不鮮明になる欠点があった。
【0004】
特許文献1には、従来の方法で生物試料の薄切片作製、及び薄切片処理についての開示があり、特許文献2には薄切片の作製に適した粘着性プラスチックフィルムに関する開示がある。
【特許文献1】 特開平9−101242号公報
【特許文献2】 特開2002−31586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生命科学の研究で必要とされる形状の保たれた薄切片(例えば、凍結薄切片)を作製する際、何らかの支持材で薄切片を粘着支持することは、薄切片の損壊を防ぐために合理的な方法である。しかし、上記に述べたように、粘着性プラスチックフィルムを用いて作製した薄切片を、染色後、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で、水溶性封入剤(例えば、グリセリン)で封入保存すると、染色剤が組織から水溶性封入剤中に拡散し、薄切片の組織像が不鮮明になる問題があり、薄切片を良好な状態で永久標本として封入保存することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するために、粘着性プラスチックフィルムを用いて作製した薄切片を粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色した後、光照射、紫外線照射、あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、次いで、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に薄切片を密着することにより薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板の間に挟み、その後、光照射、紫外線照射、あるいは加熱により薄切片の封入に用いた水溶性樹脂を短時間(例えば、5分以内)で重合硬化することにより、封入剤中への染色剤の拡散を防ぎ、効率良く、形状が保たれ、しかも鮮明な状態で薄切片を永久標本として封入保存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、粘着性プラスチックフィルムを粘着支持材として用いて作製した薄切片は、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で、容易に永久標本として封入保存することができるようになる。例えば、薄くて透明な粘着性プラスチックフィルムを粘着支持材として用いて作製した薄切片は、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で、染色処理後、本発明の方法により、例えば請求項5と請求項6に記載している水溶性樹脂を使って、薄切片を粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で、永久標本として保存することができるようになるため、従来の薄切片封入法で使用する有機溶媒(キシレン、アルコール等)による脱水、透徹操作が不要になるために、組織の収縮がなくなる。しかも、封入剤として用いた水溶性樹脂は、グリセリンと異なり、重合硬化するために封入剤中への染色剤の拡散が起こらず、組織像が鮮明な状態で永久標本とすることができるようになる。
【0008】
本発明の方法により、封入保存された薄切片は組織形状が正確に保たれ、しかも鮮明な組織像を保った状態で永久標本として保存でき、しかも光学顕微鏡で詳細に観察することができるため、多くの生命科学の研究(例えば、組織学的研究、組織化学的研究、酵素組織化学的研究、免疫組織化学的研究、遺伝子組織化学的研究)に利用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施例について説明する。
【0010】
粘着性プラスチックフィルムを薄切片の支持材として用いて、凍結ミクロトームで凍結包埋試料から作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色した後、薄切片を粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で、永久標本として封入保存する方法について、順に説明する。
i)まず、自然光や蛍光灯等による光照射、あるいは紫外線照射、あるいは加熱により水溶性樹脂を重合硬化させる重合開始剤(例えば、商品名:DAROCUR1173あるいはIRGACURE500(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製))を、水溶性樹脂(例えば、2−Hydroxypropyl Methacrylate, 2−Hydroxyethyl methacrylate、Acryloylmorpholine等)に加え、封入剤1とする。封入剤1に、重合促進物質(例えば、dimethyl sulfoxide等)を加えることにより水溶性樹脂の重合を促進することもできる。
ii)次いで、i)で準備した封入剤1を薄切片3に浸透させる。
iii)図1に示すように、i)で準備した封入剤1をガラス板2(プラスチック板、あるいはテープ状のプラスチックでも良い)上に塗布し、粘着性プラスチックフィルムに貼り付いた薄切片3を、そのガラス板2に密着する。
iv)その後、余分な封入剤1を濾紙等で押し出して除去する。
v)図2に示すように、iv)の操作で薄切片3を密着したガラス板2を、加熱板上(例えば、50〜60℃程度)に置き、封入剤1を重合硬化する。光で封入剤1を重合硬化する場合は、図3(A)あるいは図3(B)に示すように薄切片に集中的に光が照射するように光漏洩の遮蔽を兼ねた反射板8をランプ7の周囲に設け、ランプからの強い光により封入剤1を重合硬化する。使用するランプとしては、目に影響が少なくて光化学作用の強い近紫外線(UV−A、波長が310nm〜400nm)を放出するランプが適し、蛍光灯式のブラックライトを使用することもできる。封入剤1の重合硬化により、薄切片3はプラスチックフィルム5とガラス板2の間に永久標本として保存できる。
vi)更に、図4に示すように、カバーガラス9を用いて薄切片3を封入保存する場合は、i)〜v)の操作で作製した標本から粘着性プラスチックフィルム5を有機溶媒中で取り除き、その上にパラフィン切片用封入剤9を滴下し、その上にカバーガラス10を密着して永久標本として保存する。
【0011】
上記の手順により、包埋(例えば、凍結包埋)した試料(例えば、未固定非脱灰の硬組織、脳、実験動物の全身、植物)から作製された粘着性プラスチックフィルムに粘着支持された薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色を行った後、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で、薄切片を永久標本として封入保存した後、その標本を光学顕微鏡で詳細に観察することができる。
【0012】
即ち、凍結包埋試料の薄切面に、粘着剤で粘着処理した粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板、あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、光照射あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより、粘着性プラスチックフィルムとガラス板あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に薄切片を永久標本として封入保存することが可能となる。
【0013】
また、凍結包埋した生物組織試料の薄切面に、−20℃の低温度でも強い粘着力を有する粘着剤を厚さ2μmから30μmのプラスチックフィルムに塗布して作製した両端に非粘着領域を有する粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、光照射あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に永久標本として封入保存することが可能となる。
【0014】
また、凍結包埋した試料の薄切面に、−20℃の低温度でも強い粘着力を有する粘着剤を塗布して作製した粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、光照射あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化し、次いで粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを取り除き、ガラス板あるいはプラスチック板上に残った重合硬化樹脂と薄切片の上にパラフィン切片用封入剤あるいは封入で使用した水溶性樹脂を滴下し、その上からカバーガラスで覆うことにより、薄切片をカバーガラスとガラス板あるいはカバーガラスとプラスチック板の間に永久標本として封入保存することが可能となる。
【0015】
また、凍結包埋試料の薄切面に、厚さ2μmから30μmのプラスチックフィルムに粘着剤を塗布して作製した両端に非粘着領域を有する粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、光照射あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化し、次いで粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを取り除き、重合した樹脂の上にパラフィン切片用封入剤あるいは封入で使用した水溶性樹脂を滴下し、その上からカバーガラスで覆い、薄切片をカバーガラスとガラス板あるいはカバーガラスとプラスチック板の間に永久標本として封入保存することが可能となる。
【0016】
また請求項5に記載したように、これらの薄切片を永久標本として封入保存する場合に使用する封入剤として、低粘度で、水と容易に混合でき、しかも室温状態では重合硬化しない水溶性樹脂を使用し、自然光や蛍光灯などによる光照射、あるいは紫外線照射、あるいは加熱することにより水溶性樹脂を重合硬化させる重合開始剤を水溶性樹脂に加え、撹拌後、その樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板上に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、その後、光照射、あるいは紫外線照射、あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を永久標本として封入保存することが可能となる。
【0017】
また、薄切片を封入保存する際に使用する封入剤として、低粘度で、水と容易に混合でき、しかも室温状態では重合硬化しない水溶性樹脂を使用し、光照射あるいは紫外線照射により水溶性樹脂を重合硬化させる重合開始剤を水溶性樹脂に加え、重合開始剤の量は、水溶性樹脂を冷暗所に保存した時は1年以上、そして通常の部屋に保存した時は1ケ月以上の期間は水溶性樹脂が重合硬化しない量とし、水溶性樹脂に重合開始剤を加えて撹拌後、その樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板上に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、その後、光照射、あるいは紫外線照射、あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を永久標本として封入保存することが可能となる。
【0018】
また、粘着性プラスチックフィルムを凍結包埋試料の薄切面に貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、薄切片の封入に使用した樹脂を重合硬化する際に、目に影響の少ない近紫外線(UV−A波長、いわゆる波長が315nmから400nmの紫外線)を効率よく発生するランプの周囲に、薄切片に集中的に光が照射するように、薄切片試料側が開口した光漏洩遮蔽を兼ねた反射板を設け、薄切片の直上、あるいは直下から薄切片に紫外線を集中的に照射するようにした装置を使用して、薄切片に紫外線を照射して薄切片に浸透させた樹脂を短時間(例えば5分以内)で重合硬化することにより薄切片を永久標本として封入保存することが可能となる。
【0019】
さらに、粘着性プラスチックフィルムを凍結包埋試料の薄切面に貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、薄切片の封入に使用した樹脂を重合硬化する際に、目に影響が少なくて、しかも光化学作用の強いピーク波長が340nmから370nmの紫外線ランプ(いわゆるブラックライト)の周囲に、薄切片に集中的に光が照射するように、薄切片試料側が開口した光漏洩遮蔽を兼ねた反射板を設け、薄切片の直上、あるいは直下から効率よく薄切片に紫外線を照射する装置を使用して、薄切片に紫外線を照射して薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を永久標本として封入保存することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 粘着性プラスチックフィルムに粘着支持された薄切片を、薄切片封入剤(水溶性樹脂)を塗布したガラス板上に密着する状態を示す断面図である。
【図2】 薄切片が粘着性プラスチックフィルムとガラス板の間に封入された状態で、封入剤を加熱重合している状態を示す断面図である。
【図3】 薄切片が粘着性プラスチックフィルムとガラス板の間に封入された状態で、薄切片の上面から光照射により封入剤の重合を行っている状態を示す断面図(A)と、薄切片の下面から光照射により封入剤の重合を行っている状態を示す断面図(B)である。
【図4】 図2及び図3で封入した切片標本から粘着性プラスチックフィルムを取り除いた後、パラフィン用封入剤あるいは薄切片の封入で使用した樹脂を用いて、カバーガラス下に薄切片を封入した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1…薄切片封入剤(水溶性樹脂)、2…ガラス板(またはプラスチック板)、3…薄切片、4…粘着剤、5…プラスチックフィルム、6…加熱板、7…紫外線ランプ、8…反射板、9…パラフィン切片用封入剤、10…カバーガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結包埋試料の薄切面に、粘着剤で粘着処理した粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板、あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、光照射あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法。
【請求項2】
凍結包埋した生物組織試料の薄切面に、−20℃の低温度でも強い粘着力を有する粘着剤を厚さ2μmから30μmのプラスチックフィルムに塗布して作製した両端に非粘着領域を有する粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、光照射あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法。
【請求項3】
凍結包埋した試料の薄切面に、−20℃の低温度でも強い粘着力を有する粘着剤を塗布して作製した粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、光照射あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化し、次いで粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを取り除き、ガラス板あるいはプラスチック板上に残った重合硬化樹脂と薄切片の上にパラフィン切片用封入剤あるいは封入で使用した水溶性樹脂を滴下し、その上からカバーガラスで覆い、薄切片をカバーガラスとガラス板あるいはカバーガラスとプラスチック板の間に永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法。
【請求項4】
凍結包埋試料の薄切面に、厚さ2μmから30μmのプラスチックフィルムに粘着剤を塗布して作製した両端に非粘着領域を有する粘着性プラスチックフィルムを貼り付け、粘着性プラスチックフィルムを貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射あるいは加熱により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、光照射あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化し、次いで粘着性プラスチックフィルムのプラスチックフィルムを取り除き、重合した樹脂の上にパラフィン切片用封入剤あるいは封入で使用した水溶性樹脂を滴下し、その上からカバーガラスで覆い、薄切片をカバーガラスとガラス板あるいはカバーガラスとプラスチック板の間に永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の何れか1項に記載の薄切片標本の保存方法において、
前記薄切片を封入保存する際に使用する封入剤として、低粘度で、水と容易に混合でき、しかも室温状態では重合硬化しない水溶性樹脂を使用し、自然光や蛍光灯などによる光照射、あるいは紫外線照射、あるいは加熱することにより水溶性樹脂を重合硬化させる重合開始剤を水溶性樹脂に加え、撹拌後、その樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板上に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、その後、光照射、あるいは紫外線照射、あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の何れか1項に記載の薄切片標本の保存方法において、
前記薄切片を封入保存する際に使用する封入剤として、低粘度で、水と容易に混合でき、しかも室温状態では重合硬化しない水溶性樹脂を使用し、光照射あるいは紫外線照射により水溶性樹脂を重合硬化させる重合開始剤を水溶性樹脂に加え、重合開始剤の量は、水溶性樹脂を冷暗所に保存した時は6ケ月以上、そして通常の部屋に保存した時は1ケ月以上の期間は水溶性樹脂が重合硬化しない量とし、水溶性樹脂に重合開始剤を加えて撹拌後、その樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板上に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、その後、光照射、あるいは紫外線照射、あるいは加熱により薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5の何れか1項に記載の薄切片標本の保存方法において、粘着性プラスチックフィルムを凍結包埋試料の薄切面に貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、薄切片の封入に使用した樹脂を重合硬化する際に、目に影響の少ない近紫外線を効率よく発生するランプの周囲に、薄切片に集中的に光が照射するように、薄切片試料側が開口した光漏洩遮蔽を兼ねた反射板を設け、薄切片の直上、あるいは直下から薄切片に紫外線を集中的に照射するようにした装置を使用して、薄切片に紫外線を照射して薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法。
【請求項8】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5の何れか1項に記載の薄切片標本の保存方法において、粘着性プラスチックフィルムを凍結包埋試料の薄切面に貼り付けた状態で凍結ミクロトームにより作製した薄切片を、粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態で染色し、次いで光照射により重合硬化する水溶性樹脂を薄切片に浸透させ、同じ樹脂を塗布したガラス板あるいはプラスチック板に粘着性プラスチックフィルムに貼り付けた状態の薄切片を密着し、薄切片を粘着性プラスチックフィルムとガラス板、あるいは粘着性プラスチックフィルムとプラスチック板の間に挟み、その後、薄切片の封入に使用した樹脂を重合硬化する際に、目に影響が少なくて、しかも光化学作用の強いピーク波長が340nmから370nmの紫外線ランプの周囲に、薄切片に集中的に光が照射するように、薄切片試料側が開口した光漏洩遮蔽を兼ねた反射板を設け、薄切片の直上、あるいは直下から効率よく薄切片に紫外線を照射する装置を使用して、薄切片に紫外線を照射して薄切片に浸透させた樹脂を重合硬化することにより薄切片を永久標本として封入保存する薄切片標本の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−233080(P2008−233080A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64912(P2008−64912)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(500269820)
【Fターム(参考)】