薄型識別デバイス
【課題】太陽電池を備えながらも、太陽電池によるサイズの増大を小さく抑えることができる薄型識別デバイスを提供する。
【解決手段】太陽電池5の基材は省略し、通信機能部3の基材を共通基材Bc1として太陽電池5の基材に兼用する。太陽電池5の光電変換層5bと、通信機能部3の通信回路3bおよびアンテナ3cとは、いずれも共通基材Bc1の厚み方向の一面側に形成されるものとする。これにより、太陽電池5と通信機能部3とのそれぞれに個別の基材を用いる場合に比べて、太陽電池5の基材の厚み寸法分だけ太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態での太陽電池5と通信機能部3とが占める厚み寸法を小さくできる。
【解決手段】太陽電池5の基材は省略し、通信機能部3の基材を共通基材Bc1として太陽電池5の基材に兼用する。太陽電池5の光電変換層5bと、通信機能部3の通信回路3bおよびアンテナ3cとは、いずれも共通基材Bc1の厚み方向の一面側に形成されるものとする。これにより、太陽電池5と通信機能部3とのそれぞれに個別の基材を用いる場合に比べて、太陽電池5の基材の厚み寸法分だけ太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態での太陽電池5と通信機能部3とが占める厚み寸法を小さくできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側装置との間において非接触で通信を行う薄型識別デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが携帯可能な薄型識別デバイスを用いて、識別情報を薄型識別デバイスからリーダ装置(相手側装置)に非接触通信(無線通信)にて送信することにより自動改札機やゲートの通行可否を判断する個体識別システムが普及している。この個体識別システムでは、リーダ装置から送られてきた搬送波の電力を利用して送信する機能を薄型識別デバイスに備えた受動型RFタグ(パッシブタグ)方式を採用することが一般的であるため、通信可能距離が比較的短く、リーダ装置に薄型識別デバイスをかざす行為が求められる。
【0003】
これに対して、薄型識別デバイス自身に電池を電源として具備し、当該電池からの電力供給を受けてデータ送信する機能を薄型識別デバイスに備えた能動型RFタグ(アクティブタグ)方式を採用することで利便性を向上させることも提案されている。すなわち、自身に電源を備えた薄型識別デバイスでは、受動型RFタグ方式に比べてリーダ装置との通信距離を長く(たとえば10m)することが可能である。これにより、リーダ装置に薄型識別デバイスをかざす行為が不要となり、薄型識別デバイスを所持(携帯)しているユーザがリーダ装置に近づくだけでリーダ装置−薄型識別デバイス間の通信が可能になる。
【0004】
ただし、薄型識別デバイスに一次電池を具備する場合、定期的に電池交換等のメンテナンスが必要になるという不都合がある。この点については、光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池を電源として用いることで改善できると考えられる。
【0005】
また、薄型識別デバイスに電源として太陽電池を備え、薄型識別デバイスに設けた表示部を太陽電池で生成された電力により駆動して当該表示部に諸情報を表示させるということも考えられている(たとえば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002−32728号公報
【特許文献2】特開平10−240873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、薄型識別デバイスに電源として太陽電池が付加されると、電源を持たない従来の薄型識別デバイスに比較して、太陽電池の分だけ薄型識別デバイスの厚み寸法や薄型識別デバイスの厚み方向に直交する面内での占有面積が大きくなるという問題がある。薄型識別デバイスが大型化すると、薄型識別デバイスを携帯しにくくなって薄型識別デバイスの利便性が低下するという問題があるので、薄型識別デバイスのサイズの増大は極力小さく抑えたいという要求がある。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであって、太陽電池を備えながらも、太陽電池によるサイズの増大を小さく抑えることができる薄型識別デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明では、識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、太陽電池の構成部材の一部と、情報保持部および通信機能部の少なくとも一方の構成部材の一部とが共用されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、太陽電池の構成部材の一部と、情報保持部および通信機能部の少なくとも一方の構成部材の一部とが共用されているから、太陽電池の構成部材の一部を省略することができ、太陽電池と情報保持部および通信機能部とのそれぞれを個別に形成して互いに組み合わせる場合に比べると、太陽電池の構成部材の一部の分だけ薄型識別デバイスのサイズを小さく抑えることができる。その結果、太陽電池を備えながらも、太陽電池による薄型識別デバイスのサイズの増大を極力小さく抑えることが可能になる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記太陽電池および前記通信機能部は板状の基材を前記構成部材として具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、太陽電池の構成部材の一部と通信機能部の構成部材の一部とが共用されているから、太陽電池と通信機能部とのそれぞれを個別に形成して互いに組み合わせる場合に比べると、薄型識別デバイスのサイズを小さく抑えることができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記太陽電池と前記通信機能部とで共用される前記基材の厚み方向における同一面側に太陽電池および通信機能部が配設されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、太陽電池と通信機能部とで共用される基材の厚み方向の同一面側に、太陽電池と通信機能部との両方が配設されているから、太陽電池と通信機能部とが前記基材の厚み方向の両面に分かれて配設される場合に比べて、薄型識別デバイスの厚み寸法を小さく抑えることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記太陽電池と前記通信機能部とで共用される前記基材の厚み方向の一面側に太陽電池が配設され、他面側に通信機能部が配設されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、太陽電池と通信機能部とが、太陽電池と通信機能部とで共用される基材の厚み方向の両面に分かれて配設されているから、前記基材の厚み方向の同一面側に太陽電池と通信機能部との両方が配設される場合に比べて、薄型識別デバイスの厚み方向に直交する面内での占有面積を小さく抑えることができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記太陽電池が、透光性を有し光エネルギを電気エネルギに変換するセル本体と、セル本体と重ねて配置されセル本体を透過した光をセル本体側に反射する反射層とを有し、反射層が太陽電池以外の構成部材の一部と共用されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、太陽電池が反射層を有するから、太陽電池のセル本体を透過した光が反射層にて反射されてセル本体に戻されることとなり、セル本体での発電効率を高めることができる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明において、前記電源部が前記太陽電池が生成した電力を蓄電する蓄電部を有し、太陽電池の構成部材の一部と蓄電部の構成部材の一部とが共用されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、電源部が蓄電部を有するから、太陽電池に光が照射しない状況でも、蓄電部に蓄電された電力を使って通信機能部を駆動することが可能である。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記太陽電池および前記蓄電部が板状の基材を前記構成部材として具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、太陽電池と蓄電部とで基材を共用しているから、太陽電池と蓄電部とを合わせて一部材として扱うことができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0022】
請求項8の発明では、識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、電源部は太陽電池が生成した電力を蓄電する蓄電部を有し、太陽電池および蓄電部は板状の基材を具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、太陽電池と蓄電部とで基材を共用しているから、太陽電池と蓄電部とのそれぞれを個別に形成して互いに組み合わせる場合に比べると、太陽電池の基材の分だけ薄型識別デバイスのサイズを小さく抑えることができる。その結果、太陽電池を備えながらも、太陽電池による薄型識別デバイスのサイズの増大を極力小さく抑えることが可能になる。また、電源部が蓄電部を有するから、太陽電池に光が照射しない状況でも、蓄電部に蓄電された電力を使って通信機能部を駆動することが可能である。しかも、太陽電池と蓄電部とを合わせて一部材として扱うことができ、部品点数の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、太陽電池を備えながらも、太陽電池によるサイズの増大を小さく抑えることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下の各実施形態で説明する薄型識別デバイスは、専用のリーダ装置(相手側装置)と通信するものであって、リーダ装置から送出された電波を受信すると、リーダ装置に対して所定の情報をデータとして返信する。この薄型識別デバイスは、たとえば建造物などの出入口扉、自動ドア、自動改札機等において個人の認証をリーダ装置との間の非接触通信により行う個体識別システムに用いられる。すなわち、薄型識別デバイスには、各個人(薄型識別デバイスの所有者)を識別するための識別情報(ID)が格納された情報保持部が搭載されており、部屋の出入口等に設置されたリーダ装置との通信時に、当該識別情報をリーダ装置に送信する。そのため、上記個体識別システムを用いれば、ユーザに薄型識別デバイスを所持させておくだけで部屋の入退室管理等が可能となる。
【0026】
(実施形態1)
本実施形態の薄型識別デバイス1は、図2に示すように上記情報保持部(メモリ)2と、リーダ装置との間で非接触通信(無線通信)を行う通信機能部3と、通信機能部3に対して電力供給を行う電源部4とを備えている。この薄型識別デバイス1は、少なくとも情報保持部2に記憶した識別情報を、通信機能部3を介して相手側装置(リーダ装置)に発信する機能を有する。
【0027】
電源部4は、リーダ装置との通信に必要な電力を供給するものであって、外部から照射する光エネルギを電気エネルギに変換する光電変換素子である太陽電池5を有している。したがって、太陽電池5に対して十分な光量の光が照射する環境を確保することで、電池交換や充電等のメンテナンスを行うことなく、長期間に亘って安定した電力供給を実現することができる。
【0028】
また、電源部4においては、二次電池やキャパシタ等の蓄電部、あるいは一次電池を太陽電池5と併せて用いることで、太陽電池5に対して光が照射しない環境下においても、通信機能部3に対して安定した電力供給を継続的に行うことができる。特に蓄電部を用いる場合、太陽電池5の発電効率が高い日中に太陽電池5の出力で蓄電部を充電し、太陽電池5の発電効率が低下する夜間には蓄電部に蓄えた電力を活用することで、太陽電池5の出力を有効に利用できるという利点がある。本実施形態では、光電変換機能と蓄電機能とを一体に有する太陽電池5を用いることにより、太陽電池5と別体の蓄電部を用いる必要はないものとする。
【0029】
図3に、薄型識別デバイス1の各構成部品の組み合わせの一例を示す。本実施形態の薄型識別デバイス1は、矩形板状の基材3a(図4(a)参照)の一表面上に通信回路3b(図4(a)参照)およびアンテナ3c(図4(a)参照)を形成してなる通信機能部3と、矩形板状の基材5a(図4(a)参照)の一表面上に光電変換層5b(図4(a)参照)を形成してなる太陽電池5(電源部4)と、情報保持部2との各構成部品を、基材の厚み方向において、情報保持部2、通信機能部3、太陽電池5の順に重ね合わせて構成される。ここで、アンテナ3cは基材3aの周縁に沿ってループ状に形成されており、光電変換層5bは基材5aと反対側の受光面で受光した光エネルギを電気エネルギに変換する。
【0030】
ただし、各構成部品(情報保持部2、通信機能部3、太陽電池5)を単に重ね合わせた場合、薄型識別デバイス1全体の厚み寸法は少なくとも各構成部品の厚み寸法の総和となり、太陽電池5を設けない場合に比べて太陽電池5の厚み分だけ薄型識別デバイス1の厚み寸法が大きくなる。そこで、本実施形態では、薄型識別デバイス1の厚み寸法を極力小さく抑えるために、以下に説明する構成を採用している。
【0031】
すなわち、図4(a)に示す参考例のように通信機能部3と太陽電池5とで別々の基材3a,5aを用いている場合に、図4(b)に示すように通信機能部3の基材3aの前記一表面における通信回路3bおよびアンテナ3cを避けた部位に太陽電池5の基材5aを積層するようにすれば、基材5aの厚み寸法内に通信回路3bおよびアンテナ3cが位置することとなり、太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態での太陽電池5と通信機能部3とが占める基材3aの厚み方向における寸法は若干小さくなるものの、両基材3a,5aの厚み寸法の和に太陽電池5の光電変換層5bを加えた寸法を下回ることはない。
【0032】
これに対して、本実施形態では、薄型識別デバイス1の厚み寸法を小さく抑えるために、図1に示すように、通信機能部3の基材を第1の共通基材Bc1として太陽電池5の基材に兼用し、太陽電池5の基材5aを省略した構成を採用している。すなわち、図1の例では、太陽電池5の基材と通信機能部3の基材とが共用されているのであって、太陽電池5と通信機能部3とのそれぞれに個別の基材3a,5aを用いる場合に比べて、太陽電池5の基材5aの厚み寸法分だけ太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態での太陽電池5と通信機能部3とが占める厚み寸法を小さくすることができるという利点がある。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の薄型識別デバイス1は、太陽電池5の構成部材の一部(基材5a)と太陽電池5以外の構成部品(通信機能部3)における構成部材の一部(基材3a)とを共用することによって、全体として薄型化を図ることができるという効果がある。また、図1の例では、太陽電池5と通信機能部3とで共用される共通基材Bc1の厚み方向の一面側に太陽電池5の光電変換層5bと通信機能部3の通信回路3bおよびアンテナ3cとの全てが形成されているので、共通基材Bc1の他面側にさらに他の部材を重ねることが可能である。つまり、共通基材Bc1の他面を他部材(図示せず)に重ねる形で共通基材Bc1を前記他部材に固定すること等が可能となる。
【0034】
ところで、図1のように共通基材Bc1の片面側に太陽電池5および通信機能部3の両方が形成された構成に限らず、図5に示すように共通基材Bc1の厚み方向の一面側に太陽電池5(光電変換層5b)、他面側に通信機能部3(通信回路3bおよびアンテナ3c)をそれぞれ形成してもよい。
【0035】
図5の構成では、太陽電池5および通信機能部3が、共通基材Bc1の厚み方向の両面を利用して形成されることとなるから、共通基材Bc1の片面側に太陽電池5および通信機能部3の両方を形成する場合に比べて、共通基材Bc1の厚み方向の一面のサイズを小さく抑えることができる。つまり、共通基材Bc1における通信機能部3が形成された他面側においては、太陽電池5を形成するためのスペースを確保する必要がなく小面積化を図ることができ、結果的に薄型識別デバイス1の小型化を図ることができる。また、図6に示す参考例のように太陽電池5と通信機能部3とのそれぞれに個別の基材3a,5aを用いる場合に比べると、太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態での太陽電池5と通信機能部3とが占める厚み寸法を小さく抑えることができる。
【0036】
また、薄型識別デバイス1は、太陽電池5の構成部材の一部と情報保持部2の構成部材の一部とを共用したり、あるいは、太陽電池5の構成部材の一部と、情報保持部2および通信機能部3の両構成部材の一部とをそれぞれ共用したりすることによって、全体として薄型化を図るようにしてもよい。
【0037】
(実施形態2)
本実施形態の薄型識別デバイス1は、電源部4が、太陽電池5から出力される電気を蓄電する蓄電部6(図7参照)を有し、太陽電池5の基材と蓄電部6の基材とを共用するようにした点が実施形態1の薄型識別デバイス1と相違する。
【0038】
以下、太陽電池5と蓄電部6との各構成について図7を参照して説明する。
【0039】
本実施形態では、増感作用を持つ色素を用いた色素増感太陽電池を太陽電池5として採用する。色素増感型の太陽電池5は、図7(a)のように、ガラス基板からなり一表面上に透明導電体層(透明電極)からなる作用極電極5cが形成された作用極基材5dと、ガラス基板からなり一表面上に透明導電体層(透明電極)からなる対極電極5eが設けられた対極基材5fとを互いに電極5c,5eが対向する形で配置した構成を有する。ここで、作用極基材5d側の作用極電極5c上には、光を受けて電子を放出する色素(図示せず)が担持された半導体からなる半導体層5gを備えている。作用極電極5c−対極電極5e間は電解質層(電解液)5hで満たされており、さらに、半導体層5gの周囲には、両電極5c,5eと共に電解液を密封する封止材5iが半導体層5gの全周を包囲する形で設けられている。
【0040】
この構成によれば、太陽電池5に照射した可視光領域の光は、作用極基材5dおよび作用極電極5cを透過して、半導体層5g中の色素に吸収される。光を吸収した色素は電子を放出し、当該電子が半導体層5gに移動して半導体粒子間を通り作用極電極5cに到達する。さらに、電子は、作用極電極5c−対極電極5e間に導線等で接続された負荷(ここでは通信機能部3)を通って対極基材5f側の対極電極5eに移動する。色素は電解質層5hに含まれる還元状態の電解質(以下、還元体という)I−から電子を受け取ることで基底状態の色素へと戻り、酸化された電解質(以下、酸化体という)I3−は対極基材5f側の対極電極5eから電子を受け取って還元体I−へと戻る。つまり、電解質層5hは、作用極電極5c(半導体層5g)と対極電極5eとの間で電荷を運ぶ電荷輸送部として機能する。その結果、太陽電池5への光照射時には、太陽電池5から負荷(ここでは通信機能部3)に電流が流れることとなる。
【0041】
色素増感型の太陽電池5は、結晶シリコン太陽電池と比較すると、太陽光に比べて低照度となる屋内(室内)においても十分な電力を生成可能という特性を持ち、また、作用極基材5dおよび対極基材5fを透明材料から形成することで全体として透過性を有した構成とすることができる。
【0042】
一方、蓄電部6は、図7(a)のように一表面に電極層(正極層)6aが形成された正極基材6bと、一表面に電極層(負極層)6cが形成された負極基材6dとを互いに電極層6a,6cが対向する形で配置した構成を有する。ここで、正極基材6bと負極基材6dとの間には電解液6eが充填されており、電極層6a,6cの周囲には、正極基材6bおよび負極基材6dと共に電解液6eを封止する封止材6fが電極層6a,6cを包囲する形で設けられている。
【0043】
ここにおいて、図7(b)に示す参考例のように、太陽電池5と蓄電部6とを単に重ね合わせた場合、太陽電池5と蓄電部6とが占める厚み方向の寸法は、太陽電池5の厚み寸法と蓄電部6の厚み寸法との和になるから大きくなってしまうという問題がある。
【0044】
そこで、本実施形態では、図8に示すように蓄電部6の正極基材を第2の共通基材Bc2として太陽電池5の対極基材に兼用し、太陽電池5の対極基材5fを省略することで薄型識別デバイス1全体の薄型化を図っている。つまり、太陽電池5の構成部材の一部(対極基材5f)と太陽電池5以外(蓄電部6)の構成部材の一部(正極基材6b)とを共用する形となり、図7の参考例に比べて、太陽電池5と蓄電部6とを積層した状態で太陽電池5と蓄電部6とが占める厚み方向の寸法を小さくすることができ、薄型識別デバイス1の薄型化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態の構成は、実施形態1で説明したように通信機能部3の基材を太陽電池5の基材に兼用する構成と併せて採用してもよく、この場合、各構成を単独で採用する場合に比べて更なる薄型識別デバイス1の薄型化を図ることができる。すなわち、図9に示すように、共通基材Bc2の厚み方向の一面側に太陽電池5を配設し、他面側に蓄電部6および通信機能部3を配設することで、共通基材Bc2を太陽電池5と蓄電部6と通信機能部3とで共用することができ、薄型識別デバイス1の更なる薄型化を図ることできる。
【0046】
なお、図8の例では、対極基材兼正極基材として用いられる共通基材Bc2は透明性を有するものではないが、当該共通基材Bc2は透明性を有するものであってもよい。
【0047】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0048】
(実施形態3)
本実施形態の薄型識別デバイス1は、太陽電池5が、透光性を有し光エネルギを電気エネルギに変換するセル本体5A(図10参照)と、セル本体5Aに重ねて配置され、セル本体5Aを透過した光をセル本体5A側に反射する反射層5B(図10参照)とを具備し、この反射層5Bを通信機能部3の構成部材の一部と共用している点が実施形態1の薄型識別デバイス1と相違する。ここに、セル本体5Aは通信機能部3の基材3aと同サイズの矩形板状に形成されているものとする。
【0049】
すなわち、実施形態2で説明したように太陽電池5として色素増感太陽電池を用いた場合などには、セル本体5Aに可視光に対する透光性を付与することができ、この場合、セル本体5Aの前面側から照射した光がセル本体5Aを透過してセル本体5Aの後方に抜けてしまうことがある。そのため、図10に示す参考例のように、セル本体5Aの後方には反射層5Bを設け、セル本体5Aを一旦通過した光を再びセル本体5Aに戻すことによって、セル本体5Aへの光の照射効率を上げ、結果的に発電効率の向上を図ることが考えられる。ここで、反射層5Bは白色板のように光を拡散反射するものであってもよく、鏡面のように光を正反射するものであってもよい。
【0050】
本実施形態では、図11に示すように上述した反射層5Bと通信機能部3の基材3aとを共用する。つまり、通信機能部3の基材3aの厚み方向の一面側(セル本体5A側)には、可視光を反射する機能がめっき等によって付与されており、通信機能部3のアンテナ3cが、基材3aの前記一面上に形成されている。ここに、アンテナ3cは基材3aの周縁に沿ってループ状に形成されているため、基材3aにおいてアンテナ3cを除いた部位(アンテナ3cの内側および外側)が反射層5Aとして機能することとなる。
【0051】
以上説明したように、太陽電池5の構成部材の一部(反射層5B)と通信機能部3の構成部材の一部(基材3a)とを共用することによって、反射層5Bを省略することができ、太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態で太陽電池5と通信機能部3とが占める厚み寸法を小さく抑えることが可能となる。
【0052】
ところで、本実施形態の他の構成例として、図12に示すように通信機能部3のアンテナ3c自体を反射層5Bに兼用することも考えられる。つまり、アンテナ3cを基材3aの前記一面側(セル本体5A側)の略全面に形成するとともに、アンテナ3cの表面に光反射性を付与することで、太陽電池5の反射層5Bと通信機能部3のアンテナ3cとが共用される形となり、反射層5Bを別途設ける場合に比べると、図11の例と同様に薄型識別デバイス1の薄型化を図ることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の構成は、実施形態1で説明したように通信機能部3の基材3aを太陽電池5の基材5aに共用する構成と併せて採用してもよく、この場合、各構成を単独で採用する場合に比べて更なる薄型識別デバイス1の薄型化を図ることができる。
【0054】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0055】
ところで、上述した各実施形態の薄型識別デバイス1は、少なくとも太陽電池5の構成部材の一部と太陽電池5以外の構成部材の一部とを共用することで全体の薄型化を図っているが、携帯性の面から考えて望ましい厚み寸法は10mm以下である。また、携帯時に薄型識別デバイス1を財布やカードケースなどに収納することまで考慮すると厚み寸法を5mm以下に抑えることが望ましい。さらにまた、従来からあるクレジットカードと同程度の使い勝手を求めると、厚み寸法を2mm以下とすることが好ましい。
【0056】
以下に、上記各実施形態の薄型識別デバイス1を用いた個体識別システムの具体例について、図13を参照して説明する。ここでは、個体識別システムを部屋の入退室管理に用いる場合を例として説明する。
【0057】
すなわち、部屋の出入口に設置されたリーダ装置100は、LF帯(長波帯:30〜300kHz)の第1の通信方式にて薄型識別デバイス1と通信するためのLF帯送信部101およびLFアンテナ102と、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の第2の通信方式にて薄型識別デバイス1と通信するためのRF送受信部103およびRFアンテナ104と、LF帯送信部101およびRF送受信部103を制御する制御部105と、制御部105に接続された液晶ディスプレイ等からなる表示部106およびブザー107とを具備する。
【0058】
ユーザに所持される薄型識別デバイス1は、上記第1の通信方式にてリーダ装置100と通信するためのLF帯受信部31およびLFアンテナ32と、上記第2の通信方式にてリーダ装置100と通信するためのRF送受信部33およびRFアンテナ34と、LF帯受信部31およびRF送受信部33を制御する制御部35とを通信機能部3に備えている。ここで、図11に示す通信機能部3を例とすれば、LFアンテナ32はたとえば通信機能部3の基材3aの一面側に形成されたループアンテナ3cからなり、RFアンテナ33は基材3aの他面側に形成されたパッチアンテナ(図示せず)からなる。
【0059】
次に、上述した個体識別システムの動作例を示す。
【0060】
リーダ装置100は、制御部105で生成した起動信号を、LF帯送信部101において誘導磁界の信号成分に重畳し、増幅してLFアンテナ102から第1の通信方式(LF)にて、一定周期で間欠的に発信する。これにより、リーダ装置100の周囲(部屋の出入口付近)には前記起動信号が届く範囲内で認証エリアが形成される。
【0061】
薄型識別デバイス1を所持したユーザが上記認証エリア内に入ると、薄型識別デバイス1は、リーダ装置100からの起動信号をLFアンテナ32で受信した後に、LF帯受信部31が制御部35を起動し、制御部35にて情報保持部2内の識別情報を含む応答信号を生成し、RF送受信部33からRFアンテナ34を介して第2の通信方式(UHF)にて応答信号をリーダ装置100に返信する。ここにおいて、薄型識別デバイス1は、起動信号を受信するまでは、通信機能部3のうちLF帯受信部31のみに電源部4から電力供給を行いLF帯受信部31以外の各部(RF送受信部33、制御部35)への電力供給を行わない低消費電力モードで動作しており、起動信号を受信することで初めてLF帯受信部31以外の各部にも電力供給が行われる通常モードで動作する。
【0062】
リーダ装置100は、応答信号をRFアンテナ104を介してRF送受信部103で受信し、制御部105から図示しない上位装置に転送する。上位装置では識別情報の照合が行われ、正規の識別情報であると判断されて認証が正常に完了した場合には、リーダ装置100の制御部105は、認証完了した識別情報を含む確認信号(ACK信号)をRF送受信部103からRFアンテナ104を介して薄型識別デバイス1に送信する。また、リーダ装置100の制御部105は、識別情報の認証が正常に完了すれば表示部106やブザー107によってその旨を報知するとともに、部屋の出入口扉を解錠するための制御を行なう一方で、識別情報の認証に失敗した場合には、表示部106やブザー107によって警告を行うとともに、部屋の出入口扉の施錠を維持するための制御を行う。
【0063】
薄型識別デバイス1は、前記確認信号をRF送受信部33で受信すると、応答信号の送信を終了する。なお、リーダ装置100からの確認信号の送信に代えて、認証完了した識別情報を次回の起動信号に含むようにしてもよく、この場合、薄型識別デバイス1は自己の識別情報を含む起動信号をLF帯受信部31にて受信することで、応答信号の送信を終了する。
【0064】
このように、薄型識別デバイス1がLF帯の起動信号で起動し、UHF帯の応答信号を返信させることにより、前記認証エリアをたとえば1.5〜2mの範囲に正確に規定することができる。また、UHF帯の無線通信を行うRF送受信部33においては、消費電力が10〜20mAと大きいのに対して、LF帯の無線通信を行うLF帯受信部31においては、数μA程度の微弱な電力で起動するので、待機状態にてRF送受信部33への電力供給を行わない低消費電力モードを採用することによって、薄型識別デバイス1の待機電力を低く抑えることが可能である。
【0065】
ところで、以上説明した構成の薄型識別デバイス1は、自動車のエンジン始動やコンピュータの起動や、各種設備機器の起動に際して個人認証を行う個体識別システムにも用いることができる。また、たとえば不特定多数の来訪者のある管理領域への出入口にリーダ装置100を設置し、正規の(アポイントのある)来訪者には薄型識別デバイス1を予め渡しておくことで、面識の有無に関わらず正規の来訪者を識別して前記管理領域への入場を許可することが可能となる。さらに、保育施設や介護施設、学校、会社、団体旅行等で集団行動が必要となる状況下において、各個人に薄型識別デバイス1を携帯させることにより、点呼に代えて各個人の存在確認のために活用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態1の要部を示す概略断面図である。
【図2】同上の薄型識別デバイスを示す概略ブロック図である。
【図3】同上の薄型識別デバイスを示し、(a)は概略斜視図、(b)は概略断面図である。
【図4】同上の参考例を示し、(a)は組み合わせ前の概略断面図、(b)は組み合わせ後の概略断面図である。
【図5】同上の他の構成例を示す概略断面図である。
【図6】同上の参考例を示し、(a)は組み合わせ前の概略断面図、(b)は組み合わせ後の概略断面図である。
【図7】本発明の実施形態2の参考例を示し、(a)は組み合わせ前の概略断面図、(b)は組み合わせ後の概略断面図である。
【図8】同上の要部を示す概略断面図である。
【図9】同上の他の構成例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態3の参考例を示す概略分解斜視図である。
【図11】同上の要部を示す概略分解斜視図である。
【図12】同上の他の構成例を示す概略分解斜視図である。
【図13】同上の薄型識別デバイスを用いた個体識別システムを示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 薄型識別デバイス
2 情報保持部
3 通信機能部
3a 基材
3b 通信回路
3c アンテナ
4 電源部
5 太陽電池
5a 基材
5b 光電変換層
5f 対極基材
6 蓄電部
6b 正極基材
100 リーダ装置(相手側装置)
Bc1 (第1の)共通基材
Bc2 (第2の)共通基材
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側装置との間において非接触で通信を行う薄型識別デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが携帯可能な薄型識別デバイスを用いて、識別情報を薄型識別デバイスからリーダ装置(相手側装置)に非接触通信(無線通信)にて送信することにより自動改札機やゲートの通行可否を判断する個体識別システムが普及している。この個体識別システムでは、リーダ装置から送られてきた搬送波の電力を利用して送信する機能を薄型識別デバイスに備えた受動型RFタグ(パッシブタグ)方式を採用することが一般的であるため、通信可能距離が比較的短く、リーダ装置に薄型識別デバイスをかざす行為が求められる。
【0003】
これに対して、薄型識別デバイス自身に電池を電源として具備し、当該電池からの電力供給を受けてデータ送信する機能を薄型識別デバイスに備えた能動型RFタグ(アクティブタグ)方式を採用することで利便性を向上させることも提案されている。すなわち、自身に電源を備えた薄型識別デバイスでは、受動型RFタグ方式に比べてリーダ装置との通信距離を長く(たとえば10m)することが可能である。これにより、リーダ装置に薄型識別デバイスをかざす行為が不要となり、薄型識別デバイスを所持(携帯)しているユーザがリーダ装置に近づくだけでリーダ装置−薄型識別デバイス間の通信が可能になる。
【0004】
ただし、薄型識別デバイスに一次電池を具備する場合、定期的に電池交換等のメンテナンスが必要になるという不都合がある。この点については、光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池を電源として用いることで改善できると考えられる。
【0005】
また、薄型識別デバイスに電源として太陽電池を備え、薄型識別デバイスに設けた表示部を太陽電池で生成された電力により駆動して当該表示部に諸情報を表示させるということも考えられている(たとえば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002−32728号公報
【特許文献2】特開平10−240873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、薄型識別デバイスに電源として太陽電池が付加されると、電源を持たない従来の薄型識別デバイスに比較して、太陽電池の分だけ薄型識別デバイスの厚み寸法や薄型識別デバイスの厚み方向に直交する面内での占有面積が大きくなるという問題がある。薄型識別デバイスが大型化すると、薄型識別デバイスを携帯しにくくなって薄型識別デバイスの利便性が低下するという問題があるので、薄型識別デバイスのサイズの増大は極力小さく抑えたいという要求がある。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであって、太陽電池を備えながらも、太陽電池によるサイズの増大を小さく抑えることができる薄型識別デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明では、識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、太陽電池の構成部材の一部と、情報保持部および通信機能部の少なくとも一方の構成部材の一部とが共用されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、太陽電池の構成部材の一部と、情報保持部および通信機能部の少なくとも一方の構成部材の一部とが共用されているから、太陽電池の構成部材の一部を省略することができ、太陽電池と情報保持部および通信機能部とのそれぞれを個別に形成して互いに組み合わせる場合に比べると、太陽電池の構成部材の一部の分だけ薄型識別デバイスのサイズを小さく抑えることができる。その結果、太陽電池を備えながらも、太陽電池による薄型識別デバイスのサイズの増大を極力小さく抑えることが可能になる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記太陽電池および前記通信機能部は板状の基材を前記構成部材として具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、太陽電池の構成部材の一部と通信機能部の構成部材の一部とが共用されているから、太陽電池と通信機能部とのそれぞれを個別に形成して互いに組み合わせる場合に比べると、薄型識別デバイスのサイズを小さく抑えることができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記太陽電池と前記通信機能部とで共用される前記基材の厚み方向における同一面側に太陽電池および通信機能部が配設されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、太陽電池と通信機能部とで共用される基材の厚み方向の同一面側に、太陽電池と通信機能部との両方が配設されているから、太陽電池と通信機能部とが前記基材の厚み方向の両面に分かれて配設される場合に比べて、薄型識別デバイスの厚み寸法を小さく抑えることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記太陽電池と前記通信機能部とで共用される前記基材の厚み方向の一面側に太陽電池が配設され、他面側に通信機能部が配設されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、太陽電池と通信機能部とが、太陽電池と通信機能部とで共用される基材の厚み方向の両面に分かれて配設されているから、前記基材の厚み方向の同一面側に太陽電池と通信機能部との両方が配設される場合に比べて、薄型識別デバイスの厚み方向に直交する面内での占有面積を小さく抑えることができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記太陽電池が、透光性を有し光エネルギを電気エネルギに変換するセル本体と、セル本体と重ねて配置されセル本体を透過した光をセル本体側に反射する反射層とを有し、反射層が太陽電池以外の構成部材の一部と共用されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、太陽電池が反射層を有するから、太陽電池のセル本体を透過した光が反射層にて反射されてセル本体に戻されることとなり、セル本体での発電効率を高めることができる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明において、前記電源部が前記太陽電池が生成した電力を蓄電する蓄電部を有し、太陽電池の構成部材の一部と蓄電部の構成部材の一部とが共用されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、電源部が蓄電部を有するから、太陽電池に光が照射しない状況でも、蓄電部に蓄電された電力を使って通信機能部を駆動することが可能である。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記太陽電池および前記蓄電部が板状の基材を前記構成部材として具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、太陽電池と蓄電部とで基材を共用しているから、太陽電池と蓄電部とを合わせて一部材として扱うことができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0022】
請求項8の発明では、識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、電源部は太陽電池が生成した電力を蓄電する蓄電部を有し、太陽電池および蓄電部は板状の基材を具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、太陽電池と蓄電部とで基材を共用しているから、太陽電池と蓄電部とのそれぞれを個別に形成して互いに組み合わせる場合に比べると、太陽電池の基材の分だけ薄型識別デバイスのサイズを小さく抑えることができる。その結果、太陽電池を備えながらも、太陽電池による薄型識別デバイスのサイズの増大を極力小さく抑えることが可能になる。また、電源部が蓄電部を有するから、太陽電池に光が照射しない状況でも、蓄電部に蓄電された電力を使って通信機能部を駆動することが可能である。しかも、太陽電池と蓄電部とを合わせて一部材として扱うことができ、部品点数の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、太陽電池を備えながらも、太陽電池によるサイズの増大を小さく抑えることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下の各実施形態で説明する薄型識別デバイスは、専用のリーダ装置(相手側装置)と通信するものであって、リーダ装置から送出された電波を受信すると、リーダ装置に対して所定の情報をデータとして返信する。この薄型識別デバイスは、たとえば建造物などの出入口扉、自動ドア、自動改札機等において個人の認証をリーダ装置との間の非接触通信により行う個体識別システムに用いられる。すなわち、薄型識別デバイスには、各個人(薄型識別デバイスの所有者)を識別するための識別情報(ID)が格納された情報保持部が搭載されており、部屋の出入口等に設置されたリーダ装置との通信時に、当該識別情報をリーダ装置に送信する。そのため、上記個体識別システムを用いれば、ユーザに薄型識別デバイスを所持させておくだけで部屋の入退室管理等が可能となる。
【0026】
(実施形態1)
本実施形態の薄型識別デバイス1は、図2に示すように上記情報保持部(メモリ)2と、リーダ装置との間で非接触通信(無線通信)を行う通信機能部3と、通信機能部3に対して電力供給を行う電源部4とを備えている。この薄型識別デバイス1は、少なくとも情報保持部2に記憶した識別情報を、通信機能部3を介して相手側装置(リーダ装置)に発信する機能を有する。
【0027】
電源部4は、リーダ装置との通信に必要な電力を供給するものであって、外部から照射する光エネルギを電気エネルギに変換する光電変換素子である太陽電池5を有している。したがって、太陽電池5に対して十分な光量の光が照射する環境を確保することで、電池交換や充電等のメンテナンスを行うことなく、長期間に亘って安定した電力供給を実現することができる。
【0028】
また、電源部4においては、二次電池やキャパシタ等の蓄電部、あるいは一次電池を太陽電池5と併せて用いることで、太陽電池5に対して光が照射しない環境下においても、通信機能部3に対して安定した電力供給を継続的に行うことができる。特に蓄電部を用いる場合、太陽電池5の発電効率が高い日中に太陽電池5の出力で蓄電部を充電し、太陽電池5の発電効率が低下する夜間には蓄電部に蓄えた電力を活用することで、太陽電池5の出力を有効に利用できるという利点がある。本実施形態では、光電変換機能と蓄電機能とを一体に有する太陽電池5を用いることにより、太陽電池5と別体の蓄電部を用いる必要はないものとする。
【0029】
図3に、薄型識別デバイス1の各構成部品の組み合わせの一例を示す。本実施形態の薄型識別デバイス1は、矩形板状の基材3a(図4(a)参照)の一表面上に通信回路3b(図4(a)参照)およびアンテナ3c(図4(a)参照)を形成してなる通信機能部3と、矩形板状の基材5a(図4(a)参照)の一表面上に光電変換層5b(図4(a)参照)を形成してなる太陽電池5(電源部4)と、情報保持部2との各構成部品を、基材の厚み方向において、情報保持部2、通信機能部3、太陽電池5の順に重ね合わせて構成される。ここで、アンテナ3cは基材3aの周縁に沿ってループ状に形成されており、光電変換層5bは基材5aと反対側の受光面で受光した光エネルギを電気エネルギに変換する。
【0030】
ただし、各構成部品(情報保持部2、通信機能部3、太陽電池5)を単に重ね合わせた場合、薄型識別デバイス1全体の厚み寸法は少なくとも各構成部品の厚み寸法の総和となり、太陽電池5を設けない場合に比べて太陽電池5の厚み分だけ薄型識別デバイス1の厚み寸法が大きくなる。そこで、本実施形態では、薄型識別デバイス1の厚み寸法を極力小さく抑えるために、以下に説明する構成を採用している。
【0031】
すなわち、図4(a)に示す参考例のように通信機能部3と太陽電池5とで別々の基材3a,5aを用いている場合に、図4(b)に示すように通信機能部3の基材3aの前記一表面における通信回路3bおよびアンテナ3cを避けた部位に太陽電池5の基材5aを積層するようにすれば、基材5aの厚み寸法内に通信回路3bおよびアンテナ3cが位置することとなり、太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態での太陽電池5と通信機能部3とが占める基材3aの厚み方向における寸法は若干小さくなるものの、両基材3a,5aの厚み寸法の和に太陽電池5の光電変換層5bを加えた寸法を下回ることはない。
【0032】
これに対して、本実施形態では、薄型識別デバイス1の厚み寸法を小さく抑えるために、図1に示すように、通信機能部3の基材を第1の共通基材Bc1として太陽電池5の基材に兼用し、太陽電池5の基材5aを省略した構成を採用している。すなわち、図1の例では、太陽電池5の基材と通信機能部3の基材とが共用されているのであって、太陽電池5と通信機能部3とのそれぞれに個別の基材3a,5aを用いる場合に比べて、太陽電池5の基材5aの厚み寸法分だけ太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態での太陽電池5と通信機能部3とが占める厚み寸法を小さくすることができるという利点がある。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の薄型識別デバイス1は、太陽電池5の構成部材の一部(基材5a)と太陽電池5以外の構成部品(通信機能部3)における構成部材の一部(基材3a)とを共用することによって、全体として薄型化を図ることができるという効果がある。また、図1の例では、太陽電池5と通信機能部3とで共用される共通基材Bc1の厚み方向の一面側に太陽電池5の光電変換層5bと通信機能部3の通信回路3bおよびアンテナ3cとの全てが形成されているので、共通基材Bc1の他面側にさらに他の部材を重ねることが可能である。つまり、共通基材Bc1の他面を他部材(図示せず)に重ねる形で共通基材Bc1を前記他部材に固定すること等が可能となる。
【0034】
ところで、図1のように共通基材Bc1の片面側に太陽電池5および通信機能部3の両方が形成された構成に限らず、図5に示すように共通基材Bc1の厚み方向の一面側に太陽電池5(光電変換層5b)、他面側に通信機能部3(通信回路3bおよびアンテナ3c)をそれぞれ形成してもよい。
【0035】
図5の構成では、太陽電池5および通信機能部3が、共通基材Bc1の厚み方向の両面を利用して形成されることとなるから、共通基材Bc1の片面側に太陽電池5および通信機能部3の両方を形成する場合に比べて、共通基材Bc1の厚み方向の一面のサイズを小さく抑えることができる。つまり、共通基材Bc1における通信機能部3が形成された他面側においては、太陽電池5を形成するためのスペースを確保する必要がなく小面積化を図ることができ、結果的に薄型識別デバイス1の小型化を図ることができる。また、図6に示す参考例のように太陽電池5と通信機能部3とのそれぞれに個別の基材3a,5aを用いる場合に比べると、太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態での太陽電池5と通信機能部3とが占める厚み寸法を小さく抑えることができる。
【0036】
また、薄型識別デバイス1は、太陽電池5の構成部材の一部と情報保持部2の構成部材の一部とを共用したり、あるいは、太陽電池5の構成部材の一部と、情報保持部2および通信機能部3の両構成部材の一部とをそれぞれ共用したりすることによって、全体として薄型化を図るようにしてもよい。
【0037】
(実施形態2)
本実施形態の薄型識別デバイス1は、電源部4が、太陽電池5から出力される電気を蓄電する蓄電部6(図7参照)を有し、太陽電池5の基材と蓄電部6の基材とを共用するようにした点が実施形態1の薄型識別デバイス1と相違する。
【0038】
以下、太陽電池5と蓄電部6との各構成について図7を参照して説明する。
【0039】
本実施形態では、増感作用を持つ色素を用いた色素増感太陽電池を太陽電池5として採用する。色素増感型の太陽電池5は、図7(a)のように、ガラス基板からなり一表面上に透明導電体層(透明電極)からなる作用極電極5cが形成された作用極基材5dと、ガラス基板からなり一表面上に透明導電体層(透明電極)からなる対極電極5eが設けられた対極基材5fとを互いに電極5c,5eが対向する形で配置した構成を有する。ここで、作用極基材5d側の作用極電極5c上には、光を受けて電子を放出する色素(図示せず)が担持された半導体からなる半導体層5gを備えている。作用極電極5c−対極電極5e間は電解質層(電解液)5hで満たされており、さらに、半導体層5gの周囲には、両電極5c,5eと共に電解液を密封する封止材5iが半導体層5gの全周を包囲する形で設けられている。
【0040】
この構成によれば、太陽電池5に照射した可視光領域の光は、作用極基材5dおよび作用極電極5cを透過して、半導体層5g中の色素に吸収される。光を吸収した色素は電子を放出し、当該電子が半導体層5gに移動して半導体粒子間を通り作用極電極5cに到達する。さらに、電子は、作用極電極5c−対極電極5e間に導線等で接続された負荷(ここでは通信機能部3)を通って対極基材5f側の対極電極5eに移動する。色素は電解質層5hに含まれる還元状態の電解質(以下、還元体という)I−から電子を受け取ることで基底状態の色素へと戻り、酸化された電解質(以下、酸化体という)I3−は対極基材5f側の対極電極5eから電子を受け取って還元体I−へと戻る。つまり、電解質層5hは、作用極電極5c(半導体層5g)と対極電極5eとの間で電荷を運ぶ電荷輸送部として機能する。その結果、太陽電池5への光照射時には、太陽電池5から負荷(ここでは通信機能部3)に電流が流れることとなる。
【0041】
色素増感型の太陽電池5は、結晶シリコン太陽電池と比較すると、太陽光に比べて低照度となる屋内(室内)においても十分な電力を生成可能という特性を持ち、また、作用極基材5dおよび対極基材5fを透明材料から形成することで全体として透過性を有した構成とすることができる。
【0042】
一方、蓄電部6は、図7(a)のように一表面に電極層(正極層)6aが形成された正極基材6bと、一表面に電極層(負極層)6cが形成された負極基材6dとを互いに電極層6a,6cが対向する形で配置した構成を有する。ここで、正極基材6bと負極基材6dとの間には電解液6eが充填されており、電極層6a,6cの周囲には、正極基材6bおよび負極基材6dと共に電解液6eを封止する封止材6fが電極層6a,6cを包囲する形で設けられている。
【0043】
ここにおいて、図7(b)に示す参考例のように、太陽電池5と蓄電部6とを単に重ね合わせた場合、太陽電池5と蓄電部6とが占める厚み方向の寸法は、太陽電池5の厚み寸法と蓄電部6の厚み寸法との和になるから大きくなってしまうという問題がある。
【0044】
そこで、本実施形態では、図8に示すように蓄電部6の正極基材を第2の共通基材Bc2として太陽電池5の対極基材に兼用し、太陽電池5の対極基材5fを省略することで薄型識別デバイス1全体の薄型化を図っている。つまり、太陽電池5の構成部材の一部(対極基材5f)と太陽電池5以外(蓄電部6)の構成部材の一部(正極基材6b)とを共用する形となり、図7の参考例に比べて、太陽電池5と蓄電部6とを積層した状態で太陽電池5と蓄電部6とが占める厚み方向の寸法を小さくすることができ、薄型識別デバイス1の薄型化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態の構成は、実施形態1で説明したように通信機能部3の基材を太陽電池5の基材に兼用する構成と併せて採用してもよく、この場合、各構成を単独で採用する場合に比べて更なる薄型識別デバイス1の薄型化を図ることができる。すなわち、図9に示すように、共通基材Bc2の厚み方向の一面側に太陽電池5を配設し、他面側に蓄電部6および通信機能部3を配設することで、共通基材Bc2を太陽電池5と蓄電部6と通信機能部3とで共用することができ、薄型識別デバイス1の更なる薄型化を図ることできる。
【0046】
なお、図8の例では、対極基材兼正極基材として用いられる共通基材Bc2は透明性を有するものではないが、当該共通基材Bc2は透明性を有するものであってもよい。
【0047】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0048】
(実施形態3)
本実施形態の薄型識別デバイス1は、太陽電池5が、透光性を有し光エネルギを電気エネルギに変換するセル本体5A(図10参照)と、セル本体5Aに重ねて配置され、セル本体5Aを透過した光をセル本体5A側に反射する反射層5B(図10参照)とを具備し、この反射層5Bを通信機能部3の構成部材の一部と共用している点が実施形態1の薄型識別デバイス1と相違する。ここに、セル本体5Aは通信機能部3の基材3aと同サイズの矩形板状に形成されているものとする。
【0049】
すなわち、実施形態2で説明したように太陽電池5として色素増感太陽電池を用いた場合などには、セル本体5Aに可視光に対する透光性を付与することができ、この場合、セル本体5Aの前面側から照射した光がセル本体5Aを透過してセル本体5Aの後方に抜けてしまうことがある。そのため、図10に示す参考例のように、セル本体5Aの後方には反射層5Bを設け、セル本体5Aを一旦通過した光を再びセル本体5Aに戻すことによって、セル本体5Aへの光の照射効率を上げ、結果的に発電効率の向上を図ることが考えられる。ここで、反射層5Bは白色板のように光を拡散反射するものであってもよく、鏡面のように光を正反射するものであってもよい。
【0050】
本実施形態では、図11に示すように上述した反射層5Bと通信機能部3の基材3aとを共用する。つまり、通信機能部3の基材3aの厚み方向の一面側(セル本体5A側)には、可視光を反射する機能がめっき等によって付与されており、通信機能部3のアンテナ3cが、基材3aの前記一面上に形成されている。ここに、アンテナ3cは基材3aの周縁に沿ってループ状に形成されているため、基材3aにおいてアンテナ3cを除いた部位(アンテナ3cの内側および外側)が反射層5Aとして機能することとなる。
【0051】
以上説明したように、太陽電池5の構成部材の一部(反射層5B)と通信機能部3の構成部材の一部(基材3a)とを共用することによって、反射層5Bを省略することができ、太陽電池5と通信機能部3とを積層した状態で太陽電池5と通信機能部3とが占める厚み寸法を小さく抑えることが可能となる。
【0052】
ところで、本実施形態の他の構成例として、図12に示すように通信機能部3のアンテナ3c自体を反射層5Bに兼用することも考えられる。つまり、アンテナ3cを基材3aの前記一面側(セル本体5A側)の略全面に形成するとともに、アンテナ3cの表面に光反射性を付与することで、太陽電池5の反射層5Bと通信機能部3のアンテナ3cとが共用される形となり、反射層5Bを別途設ける場合に比べると、図11の例と同様に薄型識別デバイス1の薄型化を図ることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の構成は、実施形態1で説明したように通信機能部3の基材3aを太陽電池5の基材5aに共用する構成と併せて採用してもよく、この場合、各構成を単独で採用する場合に比べて更なる薄型識別デバイス1の薄型化を図ることができる。
【0054】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0055】
ところで、上述した各実施形態の薄型識別デバイス1は、少なくとも太陽電池5の構成部材の一部と太陽電池5以外の構成部材の一部とを共用することで全体の薄型化を図っているが、携帯性の面から考えて望ましい厚み寸法は10mm以下である。また、携帯時に薄型識別デバイス1を財布やカードケースなどに収納することまで考慮すると厚み寸法を5mm以下に抑えることが望ましい。さらにまた、従来からあるクレジットカードと同程度の使い勝手を求めると、厚み寸法を2mm以下とすることが好ましい。
【0056】
以下に、上記各実施形態の薄型識別デバイス1を用いた個体識別システムの具体例について、図13を参照して説明する。ここでは、個体識別システムを部屋の入退室管理に用いる場合を例として説明する。
【0057】
すなわち、部屋の出入口に設置されたリーダ装置100は、LF帯(長波帯:30〜300kHz)の第1の通信方式にて薄型識別デバイス1と通信するためのLF帯送信部101およびLFアンテナ102と、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の第2の通信方式にて薄型識別デバイス1と通信するためのRF送受信部103およびRFアンテナ104と、LF帯送信部101およびRF送受信部103を制御する制御部105と、制御部105に接続された液晶ディスプレイ等からなる表示部106およびブザー107とを具備する。
【0058】
ユーザに所持される薄型識別デバイス1は、上記第1の通信方式にてリーダ装置100と通信するためのLF帯受信部31およびLFアンテナ32と、上記第2の通信方式にてリーダ装置100と通信するためのRF送受信部33およびRFアンテナ34と、LF帯受信部31およびRF送受信部33を制御する制御部35とを通信機能部3に備えている。ここで、図11に示す通信機能部3を例とすれば、LFアンテナ32はたとえば通信機能部3の基材3aの一面側に形成されたループアンテナ3cからなり、RFアンテナ33は基材3aの他面側に形成されたパッチアンテナ(図示せず)からなる。
【0059】
次に、上述した個体識別システムの動作例を示す。
【0060】
リーダ装置100は、制御部105で生成した起動信号を、LF帯送信部101において誘導磁界の信号成分に重畳し、増幅してLFアンテナ102から第1の通信方式(LF)にて、一定周期で間欠的に発信する。これにより、リーダ装置100の周囲(部屋の出入口付近)には前記起動信号が届く範囲内で認証エリアが形成される。
【0061】
薄型識別デバイス1を所持したユーザが上記認証エリア内に入ると、薄型識別デバイス1は、リーダ装置100からの起動信号をLFアンテナ32で受信した後に、LF帯受信部31が制御部35を起動し、制御部35にて情報保持部2内の識別情報を含む応答信号を生成し、RF送受信部33からRFアンテナ34を介して第2の通信方式(UHF)にて応答信号をリーダ装置100に返信する。ここにおいて、薄型識別デバイス1は、起動信号を受信するまでは、通信機能部3のうちLF帯受信部31のみに電源部4から電力供給を行いLF帯受信部31以外の各部(RF送受信部33、制御部35)への電力供給を行わない低消費電力モードで動作しており、起動信号を受信することで初めてLF帯受信部31以外の各部にも電力供給が行われる通常モードで動作する。
【0062】
リーダ装置100は、応答信号をRFアンテナ104を介してRF送受信部103で受信し、制御部105から図示しない上位装置に転送する。上位装置では識別情報の照合が行われ、正規の識別情報であると判断されて認証が正常に完了した場合には、リーダ装置100の制御部105は、認証完了した識別情報を含む確認信号(ACK信号)をRF送受信部103からRFアンテナ104を介して薄型識別デバイス1に送信する。また、リーダ装置100の制御部105は、識別情報の認証が正常に完了すれば表示部106やブザー107によってその旨を報知するとともに、部屋の出入口扉を解錠するための制御を行なう一方で、識別情報の認証に失敗した場合には、表示部106やブザー107によって警告を行うとともに、部屋の出入口扉の施錠を維持するための制御を行う。
【0063】
薄型識別デバイス1は、前記確認信号をRF送受信部33で受信すると、応答信号の送信を終了する。なお、リーダ装置100からの確認信号の送信に代えて、認証完了した識別情報を次回の起動信号に含むようにしてもよく、この場合、薄型識別デバイス1は自己の識別情報を含む起動信号をLF帯受信部31にて受信することで、応答信号の送信を終了する。
【0064】
このように、薄型識別デバイス1がLF帯の起動信号で起動し、UHF帯の応答信号を返信させることにより、前記認証エリアをたとえば1.5〜2mの範囲に正確に規定することができる。また、UHF帯の無線通信を行うRF送受信部33においては、消費電力が10〜20mAと大きいのに対して、LF帯の無線通信を行うLF帯受信部31においては、数μA程度の微弱な電力で起動するので、待機状態にてRF送受信部33への電力供給を行わない低消費電力モードを採用することによって、薄型識別デバイス1の待機電力を低く抑えることが可能である。
【0065】
ところで、以上説明した構成の薄型識別デバイス1は、自動車のエンジン始動やコンピュータの起動や、各種設備機器の起動に際して個人認証を行う個体識別システムにも用いることができる。また、たとえば不特定多数の来訪者のある管理領域への出入口にリーダ装置100を設置し、正規の(アポイントのある)来訪者には薄型識別デバイス1を予め渡しておくことで、面識の有無に関わらず正規の来訪者を識別して前記管理領域への入場を許可することが可能となる。さらに、保育施設や介護施設、学校、会社、団体旅行等で集団行動が必要となる状況下において、各個人に薄型識別デバイス1を携帯させることにより、点呼に代えて各個人の存在確認のために活用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態1の要部を示す概略断面図である。
【図2】同上の薄型識別デバイスを示す概略ブロック図である。
【図3】同上の薄型識別デバイスを示し、(a)は概略斜視図、(b)は概略断面図である。
【図4】同上の参考例を示し、(a)は組み合わせ前の概略断面図、(b)は組み合わせ後の概略断面図である。
【図5】同上の他の構成例を示す概略断面図である。
【図6】同上の参考例を示し、(a)は組み合わせ前の概略断面図、(b)は組み合わせ後の概略断面図である。
【図7】本発明の実施形態2の参考例を示し、(a)は組み合わせ前の概略断面図、(b)は組み合わせ後の概略断面図である。
【図8】同上の要部を示す概略断面図である。
【図9】同上の他の構成例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態3の参考例を示す概略分解斜視図である。
【図11】同上の要部を示す概略分解斜視図である。
【図12】同上の他の構成例を示す概略分解斜視図である。
【図13】同上の薄型識別デバイスを用いた個体識別システムを示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 薄型識別デバイス
2 情報保持部
3 通信機能部
3a 基材
3b 通信回路
3c アンテナ
4 電源部
5 太陽電池
5a 基材
5b 光電変換層
5f 対極基材
6 蓄電部
6b 正極基材
100 リーダ装置(相手側装置)
Bc1 (第1の)共通基材
Bc2 (第2の)共通基材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、太陽電池の構成部材の一部と、情報保持部および通信機能部の少なくとも一方の構成部材の一部とが共用されていることを特徴とする薄型識別デバイス。
【請求項2】
前記太陽電池および前記通信機能部は板状の基材を前記構成部材として具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする請求項1記載の薄型識別デバイス。
【請求項3】
前記太陽電池と前記通信機能部とで共用される前記基材の厚み方向における同一面側に太陽電池および通信機能部が配設されていることを特徴とする請求項2記載の薄型識別デバイス。
【請求項4】
前記太陽電池と前記通信機能部とで共用される前記基材の厚み方向の一面側に太陽電池が配設され、他面側に通信機能部が配設されていることを特徴とする請求項2記載の薄型識別デバイス。
【請求項5】
前記太陽電池は、透光性を有し光エネルギを電気エネルギに変換するセル本体と、セル本体と重ねて配置されセル本体を透過した光をセル本体側に反射する反射層とを有し、反射層が太陽電池以外の構成部材の一部と共用されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄型識別デバイス。
【請求項6】
前記電源部は前記太陽電池が生成した電力を蓄電する蓄電部を有し、太陽電池の構成部材の一部と蓄電部の構成部材の一部とが共用されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の薄型識別デバイス。
【請求項7】
前記太陽電池および前記蓄電部は板状の基材を前記構成部材として具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする請求項6記載の薄型識別デバイス。
【請求項8】
識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、電源部は太陽電池が生成した電力を蓄電する蓄電部を有し、太陽電池および蓄電部は板状の基材を具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする薄型識別デバイス。
【請求項1】
識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、太陽電池の構成部材の一部と、情報保持部および通信機能部の少なくとも一方の構成部材の一部とが共用されていることを特徴とする薄型識別デバイス。
【請求項2】
前記太陽電池および前記通信機能部は板状の基材を前記構成部材として具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする請求項1記載の薄型識別デバイス。
【請求項3】
前記太陽電池と前記通信機能部とで共用される前記基材の厚み方向における同一面側に太陽電池および通信機能部が配設されていることを特徴とする請求項2記載の薄型識別デバイス。
【請求項4】
前記太陽電池と前記通信機能部とで共用される前記基材の厚み方向の一面側に太陽電池が配設され、他面側に通信機能部が配設されていることを特徴とする請求項2記載の薄型識別デバイス。
【請求項5】
前記太陽電池は、透光性を有し光エネルギを電気エネルギに変換するセル本体と、セル本体と重ねて配置されセル本体を透過した光をセル本体側に反射する反射層とを有し、反射層が太陽電池以外の構成部材の一部と共用されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄型識別デバイス。
【請求項6】
前記電源部は前記太陽電池が生成した電力を蓄電する蓄電部を有し、太陽電池の構成部材の一部と蓄電部の構成部材の一部とが共用されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の薄型識別デバイス。
【請求項7】
前記太陽電池および前記蓄電部は板状の基材を前記構成部材として具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする請求項6記載の薄型識別デバイス。
【請求項8】
識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、電源部は太陽電池が生成した電力を蓄電する蓄電部を有し、太陽電池および蓄電部は板状の基材を具備し、両者の基材が共用されていることを特徴とする薄型識別デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−67007(P2010−67007A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232680(P2008−232680)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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